説明

電気自動車用急速充電器及び急速充電システム

【課題】急速充電用のケーブルをコンパクトに収納でき、安全性に優れ、かつ、使用者の操作上の負担を少なくした電気自動車用急速充電器を提供する。
【解決手段】電気自動車用急速充電器は、本体筺体の前面に設けられた操作パネルと、本体筺体の一方の側面に設けられた充電ケーブルの出口と、本体筺体の他方の側面に設けられ電コネクタを本体筺体に保持する充電コネクタ収納部と、本体筺体の下部に設けられた充電ケーブル受けとを備え、充電ケーブル受けは充電ケーブルの中間部を保持する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用の急速充電器及び急速充電システムに係り、特に、使用者が自ら車への充電を操作するセルフサービス方式に適した急速充電スタンド及び急速充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車が本格的な普及段階を迎えつつある中で、充電インフラの整備が重要になっている。充電インフラには数時間かけてバッテリの充電を行う普通充電システムと、15分乃至30分程度の短い時間でバッテリを充電する急速充電システムとがある。電気自動車の利便性向上のために、急速充電システムのニーズが高まっている。
【0003】
電気自動車の急速充電方法に関しては、電気自動車の充電に利用する急速充電方式の共通規格として、例えば、CHAdeMO(チャデモ、商標)がある。
【0004】
特許文献1には、1台の急速充電器がディストリビュータを備え、複数台の電気自動車に対して同時に充電できるようにした急速充電装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、重量があって嵩張る充電ケーブルを、低コストでコンパクトかつ荷重バランス良く保持できる充電装置を提供する、という課題を解決するために、本体筺体スタンド内に扉付きの充電ケーブル収納部を設け、収納状態の充電ケーブルの少なくとも一部を外部から視認可能とする開口部を設けた充電装置が開示されている。
【0006】
また、急速充電装器において、充電スタンドの本体筺体の一方の側面の出口から充電ケーブルが外側に延び、この充電ケーブルの先端に設けられた充電コネクタを、この本体筺体の同じ側面あるいはこの側面に近い本体筺体の前面部分に設けて保持する方式も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−130592号公報
【特許文献2】特開2010−283946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車用充電器は、ガソリンの給油機と異なり、さまざまな場所に設置可能である。しかしながら、駐車場などの狭いスペースに設置される場合には、小型化・省スペース化が求められる。また、自動車側の充電口の配置が車種により異なるため、駐車方向が制約された駐車場でも充電口に到達するよう、充電ケーブルは十分な長さを有することが求められる。通常は3m〜5m程度のものが使用されている。一方、急速充電器の充電ケーブルは、高電圧の電力を供給するために内蔵する電線が太くなることと周りの被覆厚みを十分に取る必要から、径が太くて曲がり難くかつ重くなってしまい、操作性の問題がある。
【0009】
特に、使用者が自ら自動車への充電を操作するセルフサービス方式を前提とした場合、操作性や安全性に対する配慮が重要になる。
【0010】
特許文献1には、このような急速充電器における充電ケーブルの操作性や安全性に関する記載はない。
【0011】
特許文献2に記載された充電装置では、扉の内側の充電ケーブル収納部に設けられた引っ掛け保持部(フックなど)に長い充電ケーブルを巻き取って、収納するように構成されている。小型化・省スペース化を考えた場合、狭いスペースで急速充電用の充電ケーブルを巻き取って収納するのは操作性に難があると考えられる。逆に、充電する場合には、充電ケーブルを巻き戻す操作が必要になり、使用者の操作上の負担が大きい。また、充電ケーブルを巻いた状態では充電ケーブルに負荷が掛かって巻き癖が付きやすくなり、引き出したときに充電ケーブルが安定しない。
【0012】
一方、充電ケーブルの出口と充電コネクタの収納部とを本体筺体の外側の同じ側面あるいはそれに近い前面部分で保持する方式では、収納の手間は省けるものの、充電ケーブルが長い場合は、充電していない状態において充電ケーブルの中間部分が垂れ下がって地面(若しくは床面)に触れることになる。充電ケーブルの表面が地面に接すると擦れて傷がつき充電ケーブル自体を痛めてしまうという安全性に影響する問題がある。また、垂れ下がった充電ケーブルの位置が安定せず、狭い駐車場の場合、自動車に触れてその車の表面を傷つける可能性もある。また、利用者が充電ケーブルに躓く恐れがある。あるいはまた、地面に触れた充電ケーブルの表面の汚れを落とす処理も必要になる。
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、急速充電用のケーブルをコンパクトに収納することができ、安全性に優れ、かつ、使用者の操作上の負担を少なくした、電気自動車用急速充電スタンド及び急速充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の代表的なものの一例を示すと、次の通りである。本発明の電気自動車用急速充電器は、本体筺体と、前記本体筺体の内部に設置された制御部と、前記本体筺体の前面に設けられた操作パネルと、前記制御部と充電コネクタとを接続する充電ケーブルと、前記本体筺体の一方の側面に設けられた前記充電ケーブルの出口と、前記本体筺体の他方の側面に設けられ前記充電コネクタを該本体筺体に保持する充電コネクタ収納部と、前記本体筺体の下部に設けられた充電ケーブル受けとを備え、該充電ケーブル受けは、前記本体筺体の下部において前記充電ケーブルの中間部を保持する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化・省スペース化された装置でありながら、使用者の操作上の負担を軽減し、かつ安全性の高い電気自動車用急速充電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例に係る、セパレート型急速充電スタンドを備えた電気自動車の急速充電システムの構成を示す図である。
【図2A】第1の実施例のセパレート型急速充電スタンドの外観斜視図である。
【図2B】第1の実施例の急速充電スタンドの上面図である。
【図3A】第1の実施例の急速充電スタンドの正面断面図である。
【図3B】第1の実施例の急速充電スタンドの側面断面図である。
【図4】第1の実施例おける電気自動車の充電システムの回路構成の一例を示す模式図である。
【図5】第1の実施例おける、急速充電スタンドの本体筺体と充電ケーブル受けとの関係を示す図である。
【図6】第1の実施例おける、急速充電スタンドの本体筺体内部の冷却について説明する図である。
【図7】第1の実施例おける急速充電スタンドの本体筺体、充電ケーブル、及び、充電ケーブル受けの位置関係を説明する図である。
【図8A】第1の実施例おける、駐車場におけるセパレート型急速充電スタンドの設置状態を示す平面図である。
【図8B】第1の実施例おける、駐車場におけるセパレート型急速充電スタンドの設置状態を示す側面図である。
【図9】第1の実施例おける充電ケーブルの使用状態を説明する図である。
【図10】第1の実施例おける、前扉と充電ケーブル、及び充電ケーブル受けの関係を説明する図である。
【図11A】本発明の第2の実施例に係る、急速充電スタンドの充電ケーブル受けの内部の構成例を示す図である。
【図11B】本発明の第2の実施例に係る、急速充電スタンドの充電ケーブル受けの内部の他の構成例を示す図である。
【図11C】本発明の第2の実施例に係る、急速充電スタンドの充電ケーブル受けの内部の他の構成例を示す図である。
【図12A】本発明の第3の実施例に係る、セパレート型急速充電スタンドの本体筺体に対する充電ケーブルの保持方法の例を示す図である。
【図12B】本発明の第4の実施例に係る、セパレート型急速充電スタンドの本体筺体に対する充電ケーブルの保持方法の例を示す図である。
【図13A】本発明の第5の実施例に係る、充電ケーブル受けの構成例を示す図である。
【図13B】本発明の第5の実施例に係る、充電ケーブル受けの他の構成例を示す図である。
【図13C】本発明の第5の実施例に係る、充電ケーブル受けの他の構成例を示す図である。
【図14】本発明の第6の実施例に係る、可動式の充電コネクタ収納部を備えたセパレート型急速充電スタンドを示す正面図である。
【図15A】本発明の第7の実施例に係る、前扉側に充電コネクタ収納部を設けたセパレート型急速充電スタンドを示す正面図である。
【図15B】第7の実施例の側面図である。
【図15C】第7の実施例の平面図である。
【図16A】本発明の第8の実施例に係る、一体型急速充電スタンドを備えた電気自動車の急速充電システムの正面断面図である。
【図16B】第8の実施例に係る、一体型急速充電システムの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電気自動車用急速充電器は、本体筺体の前面に設けられた操作パネルと、本体筺体の一方の側面に設けられた充電ケーブルの出口と、本体筺体の他方の側面に設けられ充電コネクタを本体筺体に保持する充電コネクタ収納部と、本体筺体の下部に設けられた充電ケーブル受けとを備え、充電ケーブル受けは本体筺体の下部において充電ケーブルの中間部を保持する機能を有する。以下、図面を参照しながら本発明の実施例について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施例に係る、セパレート型急速充電スタンド(急速充電器)を備えた電気自動車の急速充電システムの構成を示す図である。図1において、10はコンバータであり、接続ケーブル12を介して4台のセパレート型急速充電スタンド20(20−1,20−2,20−3,20−4)に接続されている。40は駐車スペースである。コンバータ10は、操作パネル101を備えている。なお、図1の例では、各駐車スペースに1台の急速充電スタンドを設置しているが、1台で隣接する2つの駐車スペース40の車に対して共通に使用できるように、急速充電スタンド20の位置を設置しても良い。また、駐車スペースの状況に応じて、場合によっては、1台のコンバータと1台から4台の範囲で急速充電スタンドを組み合わせても良い。
【0019】
セパレート型急速充電スタンド20は、図2A、図2Bに示したように、直方体状の箱体で構成された本体筺体21と、この本体筺体21の前面に取り付けられた前扉22と、前扉22の外側の上部に設けられた操作表示パネル23と、本体筺体21の左上側部に設けられた充電ケーブル出口24と、充電ケーブル25の先端に形成された充電コネクタ26と、本体筺体21の右側中間部に設けられた充電コネクタ収納部27とを備えている。このように、充電ケーブル出口24と充電コネクタ収納部27は本体筺体21の左右に非対象に設けられている。充電コネクタ収納部27と同じ側に充電ケーブル出口24が無いので、充電コネクタ26の取り外し時に使用者の頭に接する可能性のある突起物が無くなり、操作上、安全である。なお、本体筺体21に対する充電ケーブル出口24と充電コネクタ収納部27の位置関係は、左右逆でも良い。
【0020】
充電ケーブル25は、例えば2本の動力線と1本のパイロットコントロール線等が押さえ巻きテープで一体化され、これらが円筒状の耐熱ビニールシース内に収納された構成となっている。
【0021】
前扉22の正面上部に設けられた操作表示パネル23は、本体筺体21の内部の制御装置に対する入出力手段である。操作表示パネル23は、GUI機能を備えており、例えば、スタートボタン、ストップボタン、非常停止ボタン、その他、充電に際して使用者が必要な情報の入力や操作を行うためのアイコン付きの入力画面や、急速充電スタンドの運転状態を表示する運転表示部等がある。充電コネクタ収納部27は、本体筺体21の筺体の側面にあり、しかも、収納時に充電コネクタ26が本体筺体21の筺体に対して横向きの方向に収納される。さらに、本体筺体21の前面でかつ、前扉22の下方に突出して充電ケーブル受け28が設けられ、充電ケーブル受け28の内側と本体筺体21の表面との間にケーブル受け空間29を形成している。充電コネクタ26が充電コネクタ収納部27に収納された状態において、充電ケーブル25の中間部はケーブル受け空間29で保持されている。
【0022】
本体筺体21の内部には、図3A、図3Bに示したように、急速充電スタンドの制御部としての電源装置や制御装置が収納されている。すなわち、基板30上に、直流充電電流制御部品31、32、12V/24Vの電源装置33、及び、制御基板34等の、直流充電電流を流す回路及びこの直流充電電流を制御する制御装置が実装されている。箱体内の最上部には、冷却用のファン35と放熱用のヒートシンク36とが一体に配置されている。箱体内の左下側部には、冷却用空気の吸い込み口211、箱体内の右上側部には排気口212が設けられている。電力供給用の接続ケーブル12が下方から本体筺体21内を上に延びて接続ケーブル13(図3B参照)となり制御部に接続され、この制御部からさらに接続ケーブル14(図3B参照)として上に延び本体箱体内の最上部のケーブル保持部37で、充電ケーブル25に接続される。充電ケーブル25は本体箱体の側部に設けられた穴240を経て本体筺体21の左側面の充電ケーブル出口24に至り、さらに本体筺体21の外側に延びている。ケーブル14から充電ケーブル25を経て自動車のバッテリに供給される電力は、制御部品31、32等の制御部により制御される。充電ケーブル受け28は、充電ケーブル25の中間部分を保持するためのケーブル受け部280を備えている(図3B参照)。なお、図3Aでは、本体筺体21内における接続ケーブル13、14の詳細な表示は省略してある。
【0023】
図4に、本実施例の充電システムの回路構成の一例を示す。コンバータ10は、外部の商用交流電源110に接続される昇圧用のトランス105と、交流−直流変換用の4つのコンバータ103と、スイッチ104を備えており、スイッチ104の出力側がセパレート型の各急速充電スタンド20−1,20−2,20−3,20−4に各々接続ケーブル12を介して接続されている。また、コンバータ10はコンバータ用制御部106及び操作部101を備えており、操作パネル101からの指示や急速充電スタンド20からの情報を受けて、コンバータの各被制御機器すなわちトランス105、コンバータ103及びスイッチ104を制御し、急速充電スタンド20に供給する電力を制御する。急速充電スタンド20の充電ケーブル25の先端の充電コネクタ26を自動車50の給電ポート51に接続することにより、バッテリ52への充電がなされる。急速充電スタンド20の制御部(電源装置や制御装置)300は、操作パネル23からの指示を受け、また、充電ケーブル25内の信号線を介して自動車50の制御部(ECU)53とバッテリ52の充電状態等に関するデータのやり取りを行い、それらの結果に基づき、バッテリ52への充電電力を制御する。例えば、Controller Area Network(CAN)通信により、急速充電器の動作情報を自動車に送り、自動車より充電許可信号を送り、自動車より充電指令値を送る、という情報の交換を経て、直流電流を自動車50に対して出力する。このように、急速充電器は、自動車側の制御部53やバッテリ52の状態に応じて最適な充電電流を指定し、自動車側から時々刻々送られる指令に従って直流電流を自動車側へ供給する。
【0024】
急速充電システムが、1台のコンバータと複数の急速充電スタンドとに分かれているため、各駐車スペースに近接して急速充電スタンドを設置し、スペースの確保できる他の位置にコンバータを配置することで、全体として急速充電システムの小型化・省スペース化を図ることができる。また、小型・省スペースな装置なので、既存の駐車場等にそのまま設置することも可能である。
【0025】
充電が終了した後、使用者が充電コネクタ26を充電コネクタ収納部27に収納する際に、充電ケーブル25に軽く手を添えるだけで、充電ケーブル25の中間部は充電ケーブル受け28内のケーブル受け空間29に保持される。
【0026】
充電ケーブル25の長さは3m〜5m程度であり、かつ、利用者の操作上の負担を軽減する工夫がなされているので、自動車50の給電ポート51の設置位置が、車のフロント部分、リア部分、あるいは、サイドの何れであっても、使用者は支障なく充電を行うことができる。
【0027】
図5に示したように、急速充電スタンドの本体筺体21と充電ケーブル受け28とは別の部材として着脱自在に構成されている。本体筺体21及び充電ケーブル受け28は、所定の強度を確保するために、例えば鉄板等、金属材料を使用し表面に焼き付け塗装が施されている。急速充電スタンドの本体筺体21の下部には、充電ケーブル受け28を収納するための収納空間213が設けられている。本体筺体21の急速充電スタンドの本体筺体21の底面は、充電ケーブル受け28を取り外した状態で、アンカーボルト214により床面に固定される。本体筺体21を床面に据え付けた後、ケーブル受け空間29が確保されるように充電ケーブル受け28を本体筺体21に対して位置決めし、その後、充電ケーブル受け28は、ねじ等の固定手段(図示略)により、本体筺体21に固定され、一体化される。本体筐体21を固定するアンカーボルト214が急速充電スタンド20の内部で構成されることにより、充電スタンドの地面に接する周囲がスッキリして、利用者がアンカーボルトに躓くことやゴミが溜ることを防ぐことができる。また、基板などの電子部品は充電ケーブル受けよりも上方に配置されることになり、床面から所定の高さが確保されるため、大雨等による浸水被害を免れることができる。
【0028】
また、このケーブル受け28は、本体筐体21の前面に限らず、側面、即ち、充電ケーブル出口24の取付面または充電コネクタ収納部27の取付面の下部に配置されてもよい。ケーブル受け28を側面に配置することにより、前面側への突出を抑えることができるので、前後方向に余裕のないスペースへの設置に有利な形状となる。以下、ケーブル受け28は本体筐体21の前面に配置するものとして説明するが、いずれの実施例も側面への配置も可能である。
【0029】
次に、急速充電スタンドの本体筺体内の冷却について、図6で説明する。図3A、図3Bに示したように、本体筺体21内には、自動車50のバッテリ52へ制御された電力を供給するための制御部としての電源装置や制御装置とが収納されている。急速充電は、例えば15分乃至30分程度でバッテリ52を高速に充電するものなので、急速充電スタンドの充電能力は50KW程度のものもある。このような大容量の電力を供給するために、電源装置や制御部の発熱量も多くなる。本実施例では、箱体内の最上部に冷却用のファン35と放熱用のヒートシンク36とを配置し、箱体内部の冷却を行っている。箱体内の左下側部に冷却用空気の吸い込み口211、右上側部には排気口212を設けている。本体筺体21の電源装置や制御装置を収納する空間と収納空間213とは、例えば仕切り板で分離されている。また、排気口212よりも下方に充電コネクタ収納部27が配置されている。
【0030】
そのため、冷却用のファン35を回転させると、図6に示したように、本体筺体の内部を下から上に向けた斜めの空気の流れ250が生じ、電源装置や制御部を効率的に冷却し、冷却後の空気は上部の排気口から斜上に排出される。なお、吸い込み口211を充電コネクタ収納部27と同じ側面に設けると、使用者の動きにより空気中に飛散したごみを含む空気の流れ251を本体筺体21内に吸い込んでしまう可能性があので、充電コネクタ収納部27とは反対の側面に吸い込み口211を設けるのが良い。
【0031】
次に、図7により、本実施例おける急速充電スタンドの本体筺体、充電ケーブル、及び、充電ケーブル受けの位置関係について説明する。
【0032】
前に述べたとおり、本発明では、急速充電システムに関し、使用者の操作上の負担を軽減すると共に、小型化・省スペース化を図ることを主たる課題としている。本実施例おけるセパレート型急速充電スタンドの本体筺体の高さをHs、正面の幅をWF、側面の幅をWSとし、具体的なサイズの一例をあげると、Hsは1700mm、WFは345mm、WSは270mmである。本体筺体の高さHsは搬送や取り付け工事、メンテナンス、設置環境等の条件から、1700mm程度のものが多く用いられている。これらのサイズHs、WF、WSは、駐車場などの狭いスペースでも各駐車スペースに近接してセパレート型急速充電スタンドを設置できる大きさである。
【0033】
このように本実施例におけるセパレート型急速充電スタンドは、コンパクトに構成できるため、例えば、屋内の駐車場やビルの間の駐車場のように、駐車スペースと建屋の壁との間のスペースが狭くても十分に設置できる。図8A、図8Bは、屋内やビルの間の駐車場におけるセパレート型急速充電スタンドの設置状態を示す平面図である。例えば、タイヤ止め43と建屋の壁41との間が1m程度、隣り合う駐車スペースの間隔が2.0m〜2.5m程度しか無い場合でも、WFが345mm、WSが270mmであり、しかも、充電コネクタ26の本体筺体からの取り出し方向が横方向なので、駐車スペース毎にセパレート型急速充電スタンド20を設置することに何ら障害はない。なお、給電ポート51‘がセパレート型急速充電スタンド20から遠い側にあって充電ケーブル25の長さが足りず給電できない場合には、自動車50の駐車の向きを逆にすることは言うまでもない。
【0034】
図7に戻って、充電コネクタ収納部の高さをHC、充電ケーブル受け28の上縁281までの高さをHF1、ケーブル受け部280の高さをHF2、冷却用空気の吸い込み口211の高さをHF1’、ケーブル受け部280から前扉22の下縁223までの高さの差をHF3とする。HCは、利用者が立った状態で充電コネクタ26を充電コネクタ収納部27に出し入れし易い高さとする。HF2は、利用者がケーブル受け空間29から充電ケーブル25を取り出し易い高さに設定される。また、HF2が高い程、充電ケーブルが地面に接する可能性を低減できる。一方、前扉22の内側において、制御部品31、32等の制御部を積層することなく実装するために、基板30には最小限の面積が必要である。この基板30面積を広くするという観点によれば、本体筺体の正面の幅WFを広くすると共に、前扉22の下縁223の高さ(HF2+HF3)を低くする方が良い。正面の幅WFは、コンパクト化の要求が有るので、あまり広くはできない。一方、前扉22の下縁223の高さは、大雨等による浸水時に電源装置や制御部が水没する危険性を回避するために床面から所定の高さを確保するという観点も重要である。HF1は、HF2に、ケーブルが勝手に飛び出さない壁高さを加えたものである。前扉22の下縁223と充電ケーブル受け28の上縁281との間の空間(ケーブル受け空間29の入り口部)は、充電ケーブル受け28の使い勝手を確保するために必要である。また、この下縁223と上縁281との間の高さの差(スペース)は、急速充電スタンドのメンテナンスのために、前扉22を開閉するのに支障が無いようにするためにも必要である。また、冷却用空気の吸い込み口211の高さHF1’は、基板30上に実装された電源装置や制御部の冷却が十分になされるように配慮する必要もある。
【0035】
以上の諸観点を満たす具体的なサイズの一例をあげると、HCは900mm、HF1及びHF1’は300mm、HF2は200mm、HF3は200mmである。また、壁高さ(HF1−HF2)は80mm乃至100mm程度が望ましい。さらに、{(HF3+HF2)−HF1}を100mm以上にすることで、充電ケーブル受け28の使い勝手を確保できる。
【0036】
また、ケーブル受け部280の高さHF2は、充電ケーブル25(長さL=3m乃至5m程度)を巻くことなく充電コネクタ収納部27に収納した場合に充電ケーブルが地面につかない高さに構成されるのが望ましい。本実施例によれば、充電ケーブル25の出口を本体筺体21の一方の側面上端付近に配置し、充電器本体筺体21の他方の側面中間部に充電コネクタ収納部27を配置し、本体筺体の前面下部に充電ケーブル受け28を設けたことで、セパレート型急速充電スタンドをコンパクトな形状にしながら、なおかつ、急速充電スタンドの本体筺体21の形状を利用して充電ケーブル25の全体を保持するための距離を確保している。そのため、充電ケーブルの長さLが、比較的短い場合には充電ケーブルを地面につかない高さに保持できる。これにより、充電ケーブルの表面の耐熱ビニールシースが地面で擦れて傷がつき充電ケーブルの絶縁特性等に悪影響を及ぼす可能性を抑えることができる。また、充電ケーブルが地面について表面に汚れが付着する可能性も低下する。
【0037】
他方、充電ケーブルの長さLが5mあるいはそれに近い長さの場合には、非充電時に、充電ケーブル受け28で保持された充電ケーブルの一部が地面に接する場合もある。しかし、この場合でも、充電ケーブル受け28により充電ケーブル25の中間部の位置が地面もしくは床より上に保持されているため、充電ケーブル25における地面との接触部が制限され、表面が擦れて傷がつく可能性を大幅に低減できる。また、充電ケーブル25の中間部の位置が固定されることで意図しない場所への放置を防げ、狭い駐車場の場合でも、駐車する自動車に触れて表面を傷つけつけてしまうことや、歩行者の障害となる可能性を低減できる。
【0038】
また、充電ケーブル25の出口と充電コネクタ収納部27とを本体筺体21の左右に設け、本体筺体の前面下部に充電ケーブル受け28を設け、充電ケーブル25を巻き取ることなく自然な状態で保持するようにしたため、充電ケーブル25に負荷が掛からず、しかも巻き癖がつくことが無く、充電時の使用者の操作性を低下させることがない。
【0039】
本発明の急速充電システムは、コンパクトで安全かつ使用者の操作性に優れており、セルフサービス方式の急速充電スタンドに用いるのに適している。使用者がセルフで充電する場合、充電コネクタ収納部27から充電コネクタ26を片手で取り出すだけで、(束ねた充電ケーブルを外す操作を必要とせずに)、自動車50に取り付けた後、操作表示パネル23を操作して充電開始の条件が整った時点で、直ちに自動車への充電を開始することができる。
【0040】
図9は、本実施例の急速充電スタンドで使用者が、例えばセルフで、充電する状態を示している。図9の(A)は充電ケーブル25を充電ケーブル受け28内に保持したままで充電しており、(B)は充電ケーブル25を充電ケーブル受け28から外した状態で充電している。何れの状態で使用するかは、急速充電スタンドと自動車50の給電ポート51の位置関係等に応じて、使用者が適宜選択すればよい。充電が終了したときは、充電ケーブル25の中間部が充電ケーブル受け28内に保持されるように配慮しながら、片手で充電コネクタ26を充電コネクタ収納部27にセットすれば良い。充電ケーブル25を、巻かずに簡単に所定位置に収納できる。このように、充電ケーブル受け28を設けたことにより、充電ケーブル25の長さが長く重い場合でも、充電時や充電ケーブル25の収納時における使用者の操作性上の負担が軽減される。
【0041】
図10は、急速充電スタンドの本体筺体内の電源装置や制御部のメンテナンスのために、管理者が前扉22を開いた状態を示している。電源装置や制御部のメンテナンスを行うとき、充電ケーブル25は充電ケーブル受け28に保持されているのが一般的である。この状態で、前扉22の開閉に支障を来さないようにするために、前扉22の下縁223と充電ケーブル受け28の上縁281との間に所定の高さの差(スペース)を確保している。
【0042】
このように、本実施例によれば、急速充電システムを1台のコンバータと複数の急速充電スタンドとで構成し、各駐車スペースに急速充電スタンドを設置し、スペースの確保できる他の位置にコンバータを配置することで、全体としての小型化・省スペース化を図ることができる。しかも、このような小型化・省スペース化された装置でありながら、急速充電用のケーブルを本体筺体の前面にコンパクトに収納することができ、安全性に優れ、かつ、使用者の操作上の負担を少なくした急速充電スタンドを提供することができる。
【実施例2】
【0043】
次に、図11A、図11Bを参照しながら、本発明の第2の実施例に係る、急速充電スタンドについて説明する。この例では、充電ケーブル受け28のケーブル受け部280には、充電ケーブルとの間の摩擦を軽減する部材が備えられている。すなわち、この実施例2は、実施例1に対して、ケーブル受け部280の構造が異なっている。なお、充電ケーブル受け28の前面部分は、分かりやすくするために表示を省略している。ケーブル受け部280以外の構成は、図5に示した実施例1の充電ケーブル受け28と同じである。
【0044】
図11Aの例では、ケーブル受け部280に充電ケーブル25を回転しながら保持するローラ291を設けている。使用者が充電コネクタ26を操作するのに伴い充電ケーブル25が左右何れかの方向に引かれた場合、ローラ291が回転するので、ケーブル受け部280と充電ケーブル25との間の摩擦を軽減することができる。これにより、充電ケーブル25の表面が損傷する可能性をより低減できると共に、充電ケーブル25の動きが良くなり、操作性も向上する。
【0045】
図11Bの例では、平坦なケーブル受け部281の上に充電ケーブル25を保持するための円柱状の固定ピン292を設けている。固定ピン292と充電ケーブル25とが接触することで、接触面積が減少し、それに伴い摩擦が軽減し、充電ケーブル表面の損傷を少なくすることができる。
【0046】
図11Cの例は、ケーブル受け部282の表面を円弧状にすることで、摩擦を軽減し、損傷を少なくしている。ケーブル受け部282の表面に摩擦軽減用のコーティング膜を設けても良い。このように、充電ケーブル25の動きを良くすることで、例えば、セルフサービス方式の急速充電スタンドにおける使用者の操作上の負担をより軽減することができる。
【0047】
本実施例によれば、小型化・省スペース化された装置でありながら、急速充電用のケーブルをコンパクトに収納することができ、安全性に優れ、かつ、使用者の操作上の負担をより少なくした急速充電スタンドを提供することができる。
【実施例3】
【0048】
図8Aに示した例では、屋内やビルの間の駐車場における駐車スペースが、前方には余裕が無いものの左右両側には余裕のある場合を示している。しかし、屋内の角部のように、前方のみならず左右の何れかあるいは双方にも余裕のない駐車スペースも考えられる。本実施例は、このような、制約のある駐車スペースに対応できる急速充電スタンドを提供するものである。
【0049】
まず、図12Aの例は、前方及び左側に余裕のない駐車スペースに対応できる急速充電スタンド20を示している。本体筺体21の一方の上側部に充電ケーブル出口24、右側中間部に充電コネクタ収納部27が設けられ、本体筺体の前面下部に充電ケーブル受け28が設けられている点は、実施例1と同じである。本実施例では、充電コネクタ収納部27の本体筺体21の右側面側への突出長さを長くし、左側面側への充電ケーブル25の突出長さを抑えることで、全体として右側のスペースを生かせる急速充電スタンドとしている。左側に余裕のない駐車スペースには、このような急速充電スタンドを設置するのが良い。
【0050】
本実施例によれば、安全性に優れ、使用者の操作上の負担を少なくし、かつ、コンパクトな急速充電スタンドを提供することができる。
【実施例4】
【0051】
次に、図12Bの例は、前方及び左右左側に余裕のない駐車スペースに対応できる急速充電スタンド20の他の例を示している。本体筺体21の一方の上側部に充電ケーブル出口24、右側中間部に充電コネクタ収納部27が設けられ、本体筺体の前面下部に充電ケーブル受け28が設けられている点は、図12Aの例と同じである。本実施例では、充電コネクタ収納部27に対する充電コネクタ26の装着方向を図12Aの例よりも、90度手前側に回転させている。充電コネクタ収納部27に対する充電コネクタ26の装着方向を変えることで、左右両側面側への充電ケーブル25の突出長さを抑えることで、全体として左右のスペースを生かせる急速充電スタンドとしている。左右に余裕が無く前後方向に若干の余裕がある駐車スペースには、このような急速充電スタンドを設置するのが良い。
【0052】
本実施例によれば、安全性に優れ、使用者の操作上の負担を少なくし、かつ、コンパクトな急速充電スタンドを提供することができる。
【実施例5】
【0053】
充電ケーブル受けの構成は、実施例1に示したものに限定されない。実施例1では、充電ケーブル受け28が本体筺体21に固定されているが、非充電時には、これを本体筺体内側に収納するようにしても良い。
【0054】
図13Aは、本発明の第5の実施例に係る、セパレート型充電ケーブル受けの構成例を示す図である。充電ケーブル受け28は、本体筺体21の底面の前方において軸で回転自在に支持された充電ケーブル受け板283と、これに一体に設けられた円弧状のケーブル受け部281Bで構成され、ケーブル受け部281Bを収納空間(図5参照)に収納可能に構成されている。非充電時には図に示したようにケーブル受け部281Bを本体筺体21の手前に出した状態(第1の位置)で固定し、ケーブル受け空間29を確保する。充電時には、ケーブル受け部281Bを本体筺体21の収納空間に収納した状態(第2の位置)で固定する。ケーブル受け部281Bを第1の位置から更に回転させると、本体筺体21とケーブル受け部281Bとの間に、収納空間につながる空間ができる(第3の位置)。この第3の位置において、図5で述べたようにして、本体筺体21を床に固定する作業ができる。このように、ケーブル受け部281Bは、3つの異なる位置で本体筺体21に固定可能に構成されている。
【0055】
本実施例によれば、充電ケーブル受け28が、非充電時には充電ケーブル25を安定した位置で保持しケーブルの損傷を防ぎ、充電時には狭いスペースにおける使用者の充電操作の障害にならないように折り畳むことができる。
【0056】
また、図13Bに示した、充電ケーブル受けの他の構成例によれば、充電ケーブル受け28は、収納空間に水平に出し入れ可能であり、図13Aの場合と同様に、3つの異なる位置で本体筺体21に固定可能に構成されている。本実施例によれば、充電ケーブル受け28が引き出された状態になることで、非充電時には充電ケーブル25を安定した位置に保持しケーブルの損傷を防ぎ、充電時には本体筺体21側に押し込まれて狭いスペースにおける使用者の充電操作の障害にならないようにすることができる。さらに、充電ケーブル受け28を本体筺体21から引き抜くことで、本体筺体21を床に固定する作業ができる。
【0057】
さらに、図13Cに示した、充電ケーブル受けの他の構成例によれば、充電ケーブル受け28は、充電ケーブル受け用フレーム286と、これに一体に設けられたフレーム製のケーブル受け部281Dで構成され、軸部287を中心にして矢印で示したように本体筺体21に回転可能に構成されており、第1、第2の異なる位置で本体筺体21に固定可能に構成されている。本実施例によれば、充電ケーブル受け28が、非充電時には充電ケーブル25を安定した位置で保持しケーブルの損傷を防ぎ、充電時には狭いスペースにおける使用者の充電操作の障害にならないようにすることができる。なお、ケーブル受け部281Dの後方の本体筺体21には着脱できるカバー(図示略)を設け、このカバーを外すことで、本体筺体21を床に固定する作業ができる。ケーブル受け部281Dは底面が無いので、ケーブル受け部に汚れが溜まるを防止できる。
【0058】
なお、図13A乃至図13Cの何れの場合でも、第1の位置と第2の位置は、ケーブル受け部に作用する充電ケーブル25の重さ(充電ケーブルの有無)とばね力との関係を利用して、ケーブル受け部281B若しくは281Dが自動的に移動するように構成することで、利用者の負担をより軽減できる。図13Bにおいても、手動若しくは自動で開閉できる。
【0059】
本実施例によれば、小型化・省スペース化された装置でありながら、急速充電用のケーブルをコンパクトに収納することができ、安全性に優れ、かつ、使用者の操作上の負担を軽減した急速充電スタンドを提供することができる。
【実施例6】
【0060】
充電ケーブルの一部が地面に着くのをできるだけ避けたい場合には、充電ケーブル出口24のみならず充電コネクタ収納部27も本体筺体21の高い位置に設ければ良い。しかし、充電コネクタ収納部27が高い位置にあると、充電時に使用者が操作しにくい欠点がある。
【0061】
図14に、本発明の第6の実施例に係る、可動式の充電コネクタ収納部を備えたセパレート型急速充電スタンドを示す。本実施例では、充電コネクタ収納部273を可動式とし、モータ等の駆動機構274により充電コネクタ収納部273の位置を本体筺体21の側面で可変としている。すなわち、充電時には本体筺体21の中間位置に充電コネクタ収納部273−Aが位置し、非充電時には本体筺体21の高い位置に充電コネクタ収納部273−Bが位置するように構成されている。充電コネクタ収納部273の位置の操作は、使用者が操作表示パネル23で直接操作しても良く、あるいは、充電のために操作表示パネル23を使用者が操作した行為を検知して、駆動機構274を自動的に動作させ、充電コネクタ収納部273の位置を自動操作しても良い。
【0062】
本実施例によれば、充電ケーブルの長さLが長い場合でも、充電ケーブル25が地面に着くのをできるだけ少なくし、かつ、利用者の操作上の負担も軽減できる。
【実施例7】
【0063】
次に、本発明の第7の実施例に係る、前扉側に充電コネクタ収納部を設けたセパレート型急速充電スタンドについて、説明する。図15Aは第7の実施例の正面図、図15Bは側面図、図15Cは平面図である。
【0064】
今まで述べた実施例では、いずれも、充電コネクタ収納部が本体筺体21の側面に形成されていた。本実施例では、本体筺体21の一方の上側部に充電ケーブル25の出口24が設けられ、前扉22の上または前扉22を切り欠いて本体筐体21に充電コネクタ収納部275が設けられている。充電コネクタ収納部27に対する充電コネクタ26の装着方向は、前扉22の面と同じである。可動式充電コネクタ収納部275の設置位置を変えることで、全体としての急速充電スタンドの左右の幅を狭くしている。左右に余裕が無く前後方向に若干の余裕がある駐車スペースには、このような急速充電スタンドを設置することで、システム全体としての小型化・省スペース化を図っても良い。
【実施例8】
【0065】
次に、本発明の第8の実施例に係る、一体型急速充電スタンドを備えた電気自動車の急速充電システムについて説明する。図16Aは第8の実施例に係る、電気自動車の急速充電システムの正面断面図、図16Bは急速充電システムの側面断面図である。この実施例は、今まで述べたセパレート型急速充電スタンドとは異なり、1台の装置に急速充電スタンド部とコンバータ部が収納されている急速充電システムである。コンバータ部の構成や、急速充電スタンド部の構成は、今まで述べた実施例のコンバータや急速充電スタンドと同様である。
【0066】
すなわち、一体型急速充電スタンド120は、直方体状の箱体で構成された本体筺体121と、本体筺体内の同じ平面(基板)上に設置されたコンバータ部及び急速充電スタンド部と、本体筺体121の左上側部に設けられた急速充電スタンド部からの充電ケーブル出口24と、充電ケーブル25の先端に形成された充電コネクタ26と、本体筺体121の右側中間部に設けられた充電コネクタ収納部27とを備えている。本体筺体21の前面でかつ、前扉22の下方に突出して充電ケーブル受け28が設けられ、充電ケーブル受け28のケーブル受け部280と本体筺体21との間にケーブル受け空間29を形成している。充電コネクタ26が充電コネクタ収納部27に収納された状態において、充電ケーブル25の中間部はケーブル受け空間29に保持されている。本体筺体121の内部には、コンバータ部を構成するコンバータ123、トランス125、ブレーカ/端子台133、ヒートシンク一体ファン135が設置され、また、急速充電スタンド部は、図3Aの急速充電スタンドの制御部と同様な構成の制御部を備えている。本体筺体121の前面に取り付けられた前扉の上部には、操作表示パネルが設けられている。本体箱体の左下側部には冷却用空気の吸い込み口211、本体箱体の右上側部には排気口212が設けられている。
【0067】
コンバータ部のトランス125に接続された電力供給用の接続ケーブル13が充電スタンド部の制御部に接続され、この制御部からさらに接続ケーブル14として上に延び箱体内の最上部のケーブル保持部37で、充電ケーブル25に接続される。充電ケーブル25は本体箱体121の側部に設けられた穴240を経て本体筺体21の充電ケーブル出口24に至り、さらに本体筺体21の外に延びている。ケーブル14から充電ケーブル25を経て自動車のバッテリに供給される電力は、スタンド部の制御部を構成する制御部品31、32等により制御される。なお、本体筺体21に対する充電ケーブル出口24と充電コネクタ収納部27の位置関係は、左右逆でも良い。
【0068】
本実施例おける一体型急速充電スタンドは、コンバータ一体型の装置として比較的コンパクトに構成できる。しかも、充電コネクタ26の本体筺体からの取り出し方向が横方向である。そのため、1台の急速充電スタンドで、1台の車若しくは隣接する2つの駐車スペースの2台の車に対して共通に充電できる。例えば、屋内の駐車場やビルの間の駐車場のように、駐車スペースと建屋の壁との間のスペースが狭くても十分に設置できる。セパレート型急速充電スタンドに比べると、正面の幅WFが長くなり充電ケーブル受け28も長くなるので、充電ケーブル25をより安定的に保持できる。他方、コンバータ一体型のため、側面の幅WSが大きくなり、前後方向に余裕の無い駐車スペースには対しては設置するのがやや困難になる。一例として、WFが900mm、WSが350mmである。従って、例えば、タイヤ止め43と建屋の壁41との間が1m程度しか無い場合でも、一体型急速充電スタンド20を設置することに何ら障害はない。
【0069】
本実施例によれば、小型化・省スペース化されたコンバータ一体型の装置でありながら、急速充電用のケーブルをコンパクトに収納することができ、安全性に優れ、かつ、使用者の操作上の負担を少なくした一体型急速充電スタンドを提供することができる。
【0070】
なお、本発明の第1の実施例乃至第7の実施例で述べた構成については、用途に応じて、第8の実施例にも同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
10…コンバータ、12…接続ケーブル、13…接続ケーブル、14…接続ケーブル、20(20−1,20−2,20−3,20−4)…セパレート型急速充電スタンド、21…本体筺体、22…前扉、23…操作表示パネル、24…充電ケーブル出口、25…充電ケーブル、26…充電コネクタ、27…充電コネクタ収納部、28…充電ケーブル受け、29…ケーブル受け空間、30…基板、31…制御部品、32…制御部品、33…12V/24Vの電源装置、34…制御基板、35…冷却用のファン、36…放熱用のヒートシンク、37…ケーブル保持部、40…駐車スペース、50…自動車、51…給電ポート、52…バッテリ、53…制御部(ECU)、101…操作パネル、103…コンバータ、104…スイッチ、105…トランス、106…制御部、110…商用交流電源、120…一体型急速充電スタンド、121…本体筺体、123…コンバータ、133…ブレーカ/端子台、135…ヒートシンク一体ファン、211…冷却用空気の吸い込み口、212…排気口、223…前扉の下縁、240…穴、280…ケーブル受け部、281…充電ケーブル受けの上縁、300…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体筺体と、
前記本体筺体の内部に設置された制御部と、
前記本体筺体の前面に設けられた操作パネルと、
前記制御部と充電コネクタとを接続する充電ケーブルと、
前記本体筺体の一方の側面に設けられた前記充電ケーブルの出口と、
前記本体筺体の他方の側面に設けられ前記充電コネクタを該本体筺体に保持する充電コネクタ収納部と、
前記本体筺体の下部に設けられた充電ケーブル受けとを備え、
該充電ケーブル受けは、前記充電ケーブルの中間部を保持する機能を有する
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項2】
請求項1において、
前記充電ケーブル受けは前記本体筐体の前面の下部に設けられ、
前記本体筐体の前面において前記充電ケーブルの中間部を保持する
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項3】
請求項1において、
前記本体筺体の前面に取り付けられた前扉を備え、
該前扉上に前記操作パネルが設置され、
前記充電ケーブル受けの上縁は、前記前扉の下縁よりも低い位置にある
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項4】
請求項3において、
前記充電ケーブル受けは、前記充電ケーブルを保持するためのケーブル受け部を有し、
前記ケーブル受け部と前記本体筺体との間に、ケーブル受け空間が形成され、
該ケーブル受け空間は、前記ケーブル受け部から前記充電ケーブルが飛び出さない壁高さで囲まれている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項5】
請求項3において、
前記充電ケーブルの出口は、前記本体筺体の一方の側面の最上部に設けられ、
前記充電コネクタ収納部は、前記本体筺体の一方の側面の中間部に設けられている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項6】
請求項3において、
前記ケーブル受け部は、前記充電コネクタを前記充電コネクタ収納部に収納したときに、前記充電ケーブルの中間部が前記本体筺体を設置している地面につかない高さと幅に構成されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項7】
請求項1において、
前記充電コネクタ収納部は、収納時に前記充電コネクタが前記本体筺体の前面に対して横向きの方向に収納される向きに設置されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項8】
請求項1において、
前記本体筺体の一方の側面の下部に該本体筺体の内部に空気を流通させて冷却するための吸気口が配置され、
前記本体筺体の他方の側面の上部に該本体筺体内部を冷却した後の空気を排出するための排気口が配置され、
該排気口よりも下方に前記充電コネクタ収納部が配置されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項9】
請求項3において、
前記ケーブル受け部には、該ケーブル受け部と前記充電ケーブルとのとの間の摩擦を軽減する部材が備えられている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項10】
請求項1において、
前記本体筺体下部には、前記充電ケーブル受けを収納するための収納空間が設けられており、
前記本体筺体底面は、前記充電ケーブル受けを取り外した状態で、アンカーボルトにより床面に固定されるように構成されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項11】
請求項1において、
前記充電コネクタ収納部は、収納時に前記充電コネクタが前記本体筺体に対して垂直の方向に収納される向きに設置されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項12】
請求項1において、
前記充電ケーブル受けが前記本体筺体側に収納可能に構成されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項13】
請求項1において、
前記充電コネクタ収納部が、前記本体筺体の側面で高さを変更可能であり、非充電時には前記本体筺体の高い位置に前記充電コネクタ収納部を位置させる可動式の充電コネクタ収納部として構成されている
ことを特徴とする電気自動車用急速充電器。
【請求項14】
制御部を有する1台のコンバータと、
該コンバータに接続ケーブルを介して接続された少なくとも1台のセパレート型急速充電スタンドとを備え、
前記各セパレート型急速充電スタンドは、
本体筺体と、
前記本体筺体の内部に設置され、前記接続ケーブルに接続された制御部と、
前記本体筺体の前面に設けられ、前記制御部に対する入出力部として機能する操作パネルと、
前記制御部と充電コネクタとを接続する充電ケーブルと、
前記本体筺体の一方の側面に設けられた前記充電ケーブルの出口と、
前記本体筺体の他方の側面に設けられ前記充電コネクタを該本体筺体に保持する充電コネクタ収納部と、
前記本体筺体の前面下部に設けられた充電ケーブル受けとを備え、
該充電ケーブル受けは、前記本体筺体の前面において前記充電ケーブルの中間部を保持する機能を有する
ことを特徴とする急速充電システム。
【請求項15】
本体筺体と、
前記本体筺体の内部に設置され、コンバータ及びコンバータ用制御部を有するコンバータ部と
前記本体筺体の内部に、前記コンバータ部と同じ平面に設置され、制御部を有する急速充電スタンド部と、
前記本体筺体の前面に設けられた操作パネルと、
前記急速充電スタンド部の制御部と充電コネクタとを接続する充電ケーブルと、
前記本体筺体の一方の側面に設けられた前記充電ケーブルの出口と、
前記本体筺体の他方の側面に設けられ前記充電コネクタを該本体筺体に保持する充電コネクタ収納部と、
前記本体筺体の外側の前面下部に設けられた充電ケーブル受けとを備え、
該充電ケーブル受けは、前記本体筺体の前面において前記充電ケーブルの中間部を保持する機能を有する
ことを特徴とする急速充電システム。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate


【公開番号】特開2013−70479(P2013−70479A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206095(P2011−206095)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】