説明

電気自動車

【課題】ユーザ固有の走行ルートを走行するのに必要な電力量とマージン電力量との和の電力量を充電する際に、より適切なマージン電力量を用いる。
【解決手段】外部電源からの電力により充電器を用いて高圧バッテリを充電するときには、ユーザによるマージンスイッチのアップ操作やダウン操作の回数に応じてマージン電力量Qmを変更し(S110)、予め定められた走行ルートを走行したときに消費されたことにより充電すべき必要電力量Qrtとマージン電力量Qmとの和として目標充電電力量Qtgを計算し(S130)、高圧バッテリの充電電力量Qchgが目標充電電力量Qtgに至るまで充電する(S140〜S170)。ユーザは所望のマージン電力量Qmを設定することができるから、より適正な目標充電電力量Qtgにより高圧バッテリを充電することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関し、詳しくは、走行用のモータと、モータに電力を供給するバッテリと、外部電源に接続されて外部電源からの電力によりバッテリを充電する充電器と、を備える電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気自動車としては、通勤や通学といったユーザ固有の走行パターンを記憶し、走行パターンに応じた充電量を決定し、決定した充電量によりバッテリを充電する、いわゆるプラグインハイブリッド自動車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この自動車では、走行パターンとして、所定の回数以上運転開始をしたことがある第1の位置を第1の情報とし、運転開始後に所定の回数以上停止したことがある第2の位置を第2情報とし、第1の位置および第2の位置の間における所定の回数以上通ったことがあるルートを第3の情報として記憶し、記憶した情報に基づいて充電量を決定している。そして、こうした走行パターンに応じた充電量とすることより、適正な電気エネルギを得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−035016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車に搭載されるバッテリ、特にリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリは、満充電として放置すると、早期にバッテリの劣化が進行することが知られている。このため、バッテリのロングライフ制御として80%充電することも提案されているが、更なるバッテリの劣化の抑制のためには、必要に応じて電力量を定めて充電するのが好ましい。上述の電気自動車のように、ユーザ固有の走行パターンを記憶して走行パターンを走行するのに必要な電力量を計算し、この電力量にマージン電力量を加えた電力量を充電することにより、これを実現することができるが、季節変化やアクセルワークの変化、エアコン消費量の変化、渋滞や事故などを考慮すると、充電量にどの程度の余裕を持たせるかが課題となる。
【0005】
本発明の電気自動車は、ユーザ固有の走行ルートを走行するのに必要な電力量とマージン電力量との和の電力量を充電する際に、より適切なマージン電力量を用いることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
走行用のモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、外部電源に接続されて外部電源からの電力により前記バッテリを充電する充電器と、ユーザ固有の走行ルートを走行するのに消費されるルート消費電力量とマージン電力量との和としての目標充電電力量が前記外部電源からの電力により充電されるように前記充電器を制御する充電制御手段と、を備える電気自動車において、
前記マージン電力量を設定するマージン設定スイッチを有し、
前記充電制御手段は、前記マージン設定スイッチにより設定されたマージン電力量を用いて前記充電器を制御する手段である、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、マージン設定スイッチにより設定されたマージン電力量を用いて外部電源からの電力によりバッテリを充電する充電器を制御する。ユーザはマージン設定スイッチにより所望のマージン電力量を設定することができるから、ユーザにとって適正なマージン電力量を設定することにより、より適切なマージン電力量を用いてバッテリを充電することができる。即ち、ユーザは、季節変化やアクセルワークの変化、エアコン消費量の変化、渋滞や事故,寄り道の有無などを考慮して所望のマージン電力量を設定することができるのである。
【0009】
こうした本発明の電気自動車において、前記マージン設定スイッチは、それまでに設定されているマージン電力量の増減を指示することによってマージン電力量を設定するスイッチである、ことを特徴とするものとすることもできる。この場合、運転席近傍に取り付けられ、前記バッテリに残存する電力量を目盛りを用いて表示する電力量表示装置を備え、前記マージン設定スイッチは、前記電力量表示装置における1目盛り分を増減の単位としてマージン電力量の増減を指示するスイッチである、ことを特徴とするものとすることもできる。こうすれば、外部電源によりバッテリを充電するときに、電力量表示装置に表示されるバッテリに残存する電力量を見て、表示の1目盛りを単位としてマージン電力量を増減して設定することができ、マージン電力量の設定を視覚的に容易なものとすることができる。更にこの場合、前記充電制御手段は、前記電力量表示装置により表示された電力量が少ないか否かを運転者に向けて音声または文字表示によりアナウンスする手段である、ものとすることもできる。こうすれば、マージン電力量の設定をユーザに促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電子制御ユニット70により実行される充電制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、例えば同期発電電動機として構成されて駆動輪26a,26bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸22に回転子が接続されたモータ30と、モータ30を駆動するためのインバータ32と、インバータ32が接続された高圧系の電力ライン40に接続されリチウムイオン二次電池として構成された高圧バッテリ42と、電力ライン40の電力を降圧して低圧系の電力ライン50に供給するDC/DCコンバータ44と、電力ライン50に接続された低圧バッテリ52と、車外の電源である交流の外部電源(例えば、家庭用電源(AC100V)など)100の外部電源側コネクタ102に接続される車両側コネクタ61と、車両側コネクタ61と電力ライン40との接続や接続の解除を行なう充電用リレー64と外部電源100からの交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ66と変換した直流電力の電圧を変換して高圧バッテリ42側に供給するDC/DCコンバータ68とを有する充電器60と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット70と、を備える。
【0013】
電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,充電器60を用いて高圧バッテリ42を充電する際の目標充電電力量Qtgを計算するのに用いるマージン電力量Qmを設定するためのマージンスイッチ90からのスイッチ信号SWM,モータ30のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ31からの回転位置,インバータ32の三相電力ラインに取り付けられた図示しない相電流センサからの相電流Iu,Iv,高圧バッテリ41の出力端子間に取り付けられた電圧センサ41aからのバッテリ電圧Vb,高圧バッテリ41の出力端子近傍の高圧系の電力ライン40に取り付けられた電流センサ41bからの充放電電流Ibなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット70からは、インバータ32へのスイッチング制御信号,充電用リレー64への駆動信号,AC/DCコンバータ66やDC/DCコンバータ68への駆動信号,DC/DCコンバータ44への駆動信号,運転席近傍に取り付けられたスピーカ92への音声出力信号,運転席前方のインストルパネルに取り付けられた高圧バッテリ42に残存する電力量としての蓄電割合SOCを10%刻みの目盛りで表示する電力量表示装置94への表示制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、電子制御ユニット70は、高圧バッテリ42を管理するために電流センサ41bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算したり、回転位置検出センサ31からの信号に基づいてモータ30の回転数Nmも演算している。また、マージンスイッチ90は、運転席近傍に設けられ、アップ操作とダウン操作とが可能なスイッチとして構成されている。
【0014】
次に、こうして構成された電気自動車20の動作、特に車両側コネクタ61を外部電源100の外部電源側コネクタ102に接続し、外部電源100からの電力により高圧バッテリ42を充電する際の動作について説明する。図2は、外部電源100からの電力により高圧バッテリ42を充電する際に電子制御ユニット70により実行される充電制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0015】
充電制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70のCPU72は、まず、マージン電力量Qmの増減についてのアナウンスを行なう処理を実行する(ステップS100)。ここで、マージン電力量Qmの増減についてのアナウンスは、例えば、「蓄電割合SOCが少なくて不安ですか。マージンスイッチのアップ操作やダウン操作により充電する電力量を変更できます。」などの予め定められたアナウンス内容をスピーカ92から音声出力することにより実行することができる。そして、マージンスイッチ90のアップ操作やダウン操作の回数に応じてマージン電力量Qmを設定する(ステップS110)。マージンスイッチ90の1回のアップ操作やダウン操作は、電力量表示装置94の1目盛り(実施例では10%)の増加や減少に相当し、例えば、アップ操作が1回行なわれたときには、蓄電割合SOCが10%に相当する電力量のマージン電力量Qmの増加が行なわれ、ダウン操作が1回行なわれたときには、蓄電割合SOCが10%に相当する電力量のマージン電力量Qmの減少が行なわれ、アップ操作もダウン操作も行なわれないときには、それまで設定されていたマージン電力量Qmの変更は行なわれないことになる。
【0016】
続いて、予め設定された走行ルートを走行したときに消費されたことにより充電すべき必要電力量Qrtを計算する(ステップS120)。これは、過去の所定回数(例えば、10回)の走行ルートの走行により消費された消費電力量の平均値や最大値などとし計算することができる。必要電力量Qrtを計算すると、必要電力量Qrtとマージン電力量Qmとの和として目標充電電力量Qtgを計算し(ステップS130)、高圧バッテリ42の充電器60による充電を開始する(ステップS140)。そして、高圧バッテリ42の充電電力量Qchgが目標充電電力量Qtgに至ったときに(ステップS150,S160)、充電を終了して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。高圧バッテリ42の充電電力量Qchgは、電圧センサ41aからのバッテリ電圧Vbと電流センサ41bからの充放電電流Ibとの積による電力の積算により求めたり、外部電源100側に取り付けられた図示しない電力計により求めたり、充電器60から高圧バッテリ42側に供給する電力を積算することにより求めたりすることができる。
【0017】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、外部電源100からの電力により充電器60を用いて高圧バッテリ42を充電するときには、マージンスイッチ90のアップ操作やダウン操作の回数に応じてマージン電力量Qmを変更して設定し、予め定められた走行ルートを走行したときに消費されたことにより充電すべき必要電力量Qrtとマージン電力量Qmとの和として目標充電電力量Qtgを計算し、高圧バッテリの充電電力量Qchgが目標充電電力量Qtgに至るまで充電するから、するから、ユーザは所望のマージン電力量Qmを設定して高圧バッテリ42を充電することができる。即ち、ユーザは、季節変化やアクセルワークの変化、エアコン消費量の変化、渋滞や事故,寄り道の有無などを考慮して所望のマージン電力量を設定することができる。しかも、電力量表示装置94に表示される蓄電割合SOCの1目盛りに応じてマージン電力量Qmを変更するから、マージン電力量Qmの設定を視覚的に容易なものとすることができる。更に、「蓄電割合SOCが少なくて不安ですか。マージンスイッチのアップ操作やダウン操作により充電する電力量を変更できます。」などのアナウンスを行なうから、マージン電力量Qmの設定をユーザに促すことができる。これらの結果、より適正なマージン電力量Qmを設定することができ、より適正な目標充電電力量により高圧バッテリ42を充電することができる。もとより、高圧バッテリ42を満充電しないから、高圧バッテリ42の劣化を抑制することができる。
【0018】
実施例の電気自動車20では、電力量表示装置94の1目盛りを蓄電割合SOCの10%に相当する電力量としたが、1目盛りを蓄電割合SOCの5%や1%などとしてもよい。また、実施例の電気自動車20では、マージンスイッチ90の1回のアップ操作やダウン操作が電力量表示装置94の1目盛り(実施例では、蓄電割合SOCの10%の電力量)の増加や減少に相当するものとしたが、マージンスイッチ90の1回のアップ操作やダウン操作が電力量表示装置94の1目盛りに対応しないものとしても構わない。
【0019】
実施例の電気自動車20では、外部電源100により高圧バッテリ42を充電する際に、「蓄電割合SOCが少なくて不安ですか。マージンスイッチのアップ操作やダウン操作により充電する電力量を変更できます。」などと音声によりアナウンスするものとしたが、電力量表示装置94やその他の表示装置により同様の内容を文字として表示することによりアナウンスするものとしてもよい。
【0020】
実施例では、本発明を走行用のモータ30と高圧バッテリ42と充電器60とを備える電気自動車に適用するものとしたが、エンジンと走行用のモータとバッテリと充電器とを備えるハイブリッド自動車に適用するものとしてもよい。
【0021】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ30が「モータ」に相当し、高圧バッテリ42が「バッテリ」に相当し、充電器60が「充電器」に相当し、図2の充電制御ルーチンを実行する電子制御ユニット70が「充電制御手段」に相当する。
【0022】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0023】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、電気自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
20 電気自動車、22 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、26a,26b 駆動輪、30 モータ、32 インバータ、40 高圧系の電力ライン、42 高圧バッテリ、44 DC/DCコンバータ、50 低圧系の電力ライン、52 低圧バッテリ、60 充電器、61 車両側コネクタ、62 コネクタセンサ、64 充電用リレー、66 AC/DCコンバータ、68 DC/DCコンバータ、70 電子制御ユニット、72 CPU、74 RAM、76 ROM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 マージンスイッチ、92 スピーカ、94 電力量表示装置、100 外部電源、102 外部電源側コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、外部電源に接続されて外部電源からの電力により前記バッテリを充電する充電器と、ユーザ固有の走行ルートを走行するのに消費されるルート消費電力量とマージン電力量との和としての目標充電電力量が前記外部電源からの電力により充電されるように前記充電器を制御する充電制御手段と、を備える電気自動車において、
前記マージン電力量を設定するマージン設定スイッチを有し、
前記充電制御手段は、前記マージン設定スイッチにより設定されたマージン電力量を用いて前記充電器を制御する手段である、
ことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車であって、
前記マージン設定スイッチは、それまでに設定されているマージン電力量の増減を指示することによってマージン電力量を設定するスイッチである、
ことを特徴とする電気自動車。
【請求項3】
請求項2記載の電気自動車であって、
運転席近傍に取り付けられ、前記バッテリに残存する電力量を目盛りを用いて表示する電力量表示装置を備え、
前記マージン設定スイッチは、前記電力量表示装置における1目盛り分を増減の単位としてマージン電力量の増減を指示するスイッチである、
ことを特徴とする電気自動車。
【請求項4】
請求項3記載の電気自動車であって、
前記充電制御手段は、前記電力量表示装置により表示された電力量が少ないか否かを運転者に向けて音声または文字表示によりアナウンスする手段である、
電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−99176(P2013−99176A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241716(P2011−241716)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】