説明

電気部品用ソケット

【課題】簡単な構造で、ダンパー機能を発揮させることができる電気部品用ソケットを提供する。
【解決手段】配線基板上に配設され、ICパッケージ12が収容されるICソケット11であって、配線基板上に配設され、ICパッケージが収容されるソケット本体14と、ソケット本体14に回動自在に設けられたカバー部材17とを有し、カバー部材17は、ソケット本体14に回動自在に設けられた四角形の枠体19と、枠体19に支持され、カバー部材17の閉時のICパッケージ12を押圧する押圧部材20とを有し、枠体19は、押圧部材20の押圧時に、押圧部材20からの力が作用したときに、弾性変形するように形成されたICソケット11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板上に配設され、半導体装置(以下「ICパッケージ」という)等の電気部品の試験等を行うため、この電気部品を収容する電気部品用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の「電気部品用ソケット」としては、「電気部品」であるICパッケージを着脱自在に収容するICソケットがある(特許文献1参照)。
【0003】
そのICパッケージとしては、例えば方形状のパッケージ本体(電気部品本体)を有し、このパッケージ本体に端子が設けられている。
【0004】
一方、そのICソケットは、ソケット本体にICパッケージが収容されるようになっていると共に、このソケット本体にカバー部材が開閉自在に設けられ、このカバー部材を閉じた状態で、ICパッケージが押圧されると共に、このICパッケージの端子がコンタクトピンに接触されるようになっている。
【0005】
このカバー部材は、ソケット本体に回動自在に取り付けられた枠体と、この枠体の内側に支持され、ICパッケージを押圧する押圧部材とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−135155号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のものにあっては、カバー部材の押圧部材で、ICパッケージを押圧する場合、各種部品の成形誤差等により、押圧部材で強く押し過ぎたり、押圧力が弱すぎたりする場合があるため、押圧部材と枠体との間にスプリング等のダンパー機構を配設することにより、押圧部材のICパッケージに対する押圧力を適正にするようにしていることから、構造が複雑になるという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、簡単な構造で、ダンパー機能を発揮させることができる電気部品用ソケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を達成するために、この発明は、配線基板上に配設され、端子を有する電気部品が収容される電気部品用ソケットであって、前記配線基板上に配設され、前記電気部品が収容されるソケット本体と、該ソケット本体に回動自在に設けられたカバー部材とを有し、該カバー部材は、前記ソケット本体に回動自在に設けられた四角形の枠体と、該枠体に支持され、前記カバー部材の閉時の前記電気部品を押圧する押圧部材とを有し、前記枠体は、前記押圧部材の前記電気部品押圧時に、該押圧部材からの力が作用したときに、弾性変形するように形成された電気部品用ソケットとしたことを特徴とする。
【0010】
他の特徴は、前記枠体は、四角枠形状の樹脂部材に、四角枠形状の金属プレートがインサート成形されて形成されたことにある。
【0011】
他の特徴は、前記四角枠形状の金属プレートは、前記押圧部材から力を受ける部位の近傍部位が、他の部位より剛性が低下していることにある。
【0012】
他の特徴は、前記押圧部材には、ヒートシンクが配設されていることにある。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、枠体自体を弾性変形可能としてダンパー機能を果たさせるようにしているため、従来のように、枠体と、押圧部材との間にスプリング等の部品から成るダンパー機構を配設する必要がないことから、部品点数を減少させることができる。
【0014】
他の特徴によれば、枠体は、四角枠形状の樹脂部材に、四角枠形状の金属プレートがインサート成形されて形成されているため、枠体全体を金属製でなく、金属プレートを樹脂部材で埋設することにより、枠体の絶縁性を確保することができると共に、全体が金属製のものに比較して重量の低減を図ることができ、しかも、金属プレートにより、ばね性要素を有しつつ強度確保もできる。
【0015】
さらに、成形型にセットされた金属プレートの周囲に溶融樹脂を充填して樹脂部材を成形することにより、溝部等、形状の複雑な部分も容易に成形できる。
【0016】
しかも、金属プレートの形状、大きさ、材質等を適宜変更することで、ダンパー荷重や変形量等も制御することも可能である。
【0017】
他の特徴によれば、四角枠形状の金属プレートは、押圧部材から力を受ける部位の近傍部位が、他の部位より剛性が低下しているため、金属プレートがその近傍部位から変形し易く、枠体を弾性変形させ易い。
【0018】
他の特徴によれば、押圧部材には、ヒートシンクが配設されているため、そのダンパー機構を配設していたスペースを使い、ヒートシンクのフィン構造の放熱部を拡大することができ、冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態に係るICソケットの平面図である。
【図2】同実施の形態に係るICソケットの正面図である。
【図3】同実施の形態に係る図2の左側面図である。
【図4】同実施の形態に係るICソケットのカバー部材を開いた状態を示す断面図である。
【図5】同実施の形態に係るICソケットのカバー部材を途中まで閉じた状態を示す図4に相当する断面図である。
【図6】同実施の形態に係るICソケットのカバー部材を完全に閉じた状態を示す図4に相当する断面図である。
【図7】同実施の形態に係るICソケットのコンタクトピンの配設状態を示す拡大断面図である。
【図8】同実施の形態に係るICソケットの枠体の平面図である。
【図9】同実施の形態に係る図8のA−A線に沿う断面図である。
【図10】同実施の形態に係るICソケットの枠体を斜め上方から見た斜視図である。
【図11】同実施の形態に係るICソケットの枠体を裏返した状態の斜視図である。
【図12】同実施の形態に係るICソケットの枠体の金属プレートの平面図である。
【図13】同実施の形態に係るICソケットの枠体の金属プレートの正面図である。
【図14】同実施の形態に係るICソケットの枠体の金属プレートを斜め上方から見た斜視図である。
【図15】同実施の形態に係るICソケットの枠体を裏返した状態の斜視図である。
【図16】同実施の形態に係るICソケットのカバー部材の枠体と押圧部材との取付部位等を示す部分斜視図である。
【図17】同実施の形態に係るICパッケージを示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1乃至図17には、この発明の実施の形態を示す。
【0022】
まず構成を説明すると、図中符号11は、「電気部品用ソケット」としてのICソケットで、このICソケット11は、配線基板P上に配設されるようになっており、「電気部品」であるICパッケージ12等のバーンイン試験等を行うために、このICパッケージ12の「端子」としての球状端子12bとその配線基板Pとの電気的接続を図るものである。
【0023】
このICパッケージ12は、図17に示すように、平面視で方形状のパッケージ本体12aを有し、このパッケージ本体12aの下面に「端子」としての球状端子12bがマトリックス状に複数突出して形成されている。
【0024】
一方、ICソケット11は、図1,図2等に示すように、配線基板P上に固定されるソケット本体14と、このソケット本体14に対して上方に付勢された状態で、ICパッケージ12を収容するフローティングプレート15と、そのソケット本体14に設けられ、ICパッケージ球状端子12bの下面に接触して電気的に接続されるコンタクトピン16と、ソケット本体14に開閉自在に設けられ、ICパッケージ12を押圧するカバー部材17と、このカバー部材17の閉状態でロックするロック機構18とを有している。
【0025】
より詳しくは、そのソケット本体14には、図7に示すように、コンタクトピン16が挿通される上側挿通孔14a及び下側挿通孔14bが形成されている。
【0026】
また、フローティングプレート15は、図7等に示すように、図示省略のスプリングにより上方に付勢され、コンタクトピン16が挿通される貫通孔15aが多数形成されると共に、図1に示すように、ICパッケージ12の各角隅部をガイドするガイド部15bが形成されている。
【0027】
このコンタクトピン16は、図7に示すように、配線基板Pの電極部に接触される下側接触部16aと、ICパッケージ12の球状端子12bに接触される上側接触部16bと、これら両接触部16a,16bの間に湾曲して形成されたバネ部16cとを有している。
【0028】
さらに、カバー部材17は、図4等に示すように、ソケット本体14に回動自在に設けられ、四角形の枠体19と、この枠体19内に支持され、カバー部材17の閉時にICパッケージ12を押圧する押圧部材20と、この押圧部材20に設けられたヒートシンク26とを有している。
【0029】
この枠体19は、押圧部材20のICパッケージ12押圧時に、この押圧部材20からの力が作用したときに、後述するように弾性変形するように形成されている。
【0030】
より詳しくは、枠体19は、図8乃至図11に示すように、合成樹脂製の四角枠形状の樹脂部材21に、四角枠形状の金属プレート22がインサート成形されて形成されている。この枠体19には、ソケット本体14に回動自在に取り付けられる回動軸23が挿入される軸孔19aが形成されている。
【0031】
その樹脂部材21には、図9,図16等に示すように、押圧部材20の上面に当接する突部21aが形成され、この押圧部材20がICパッケージ12を押圧したときに、この押圧部材20からその突部21aを介して枠体19に上方に向けて力が作用するようになっている。また、この樹脂部材21には、図1に示すような配線24を嵌合して配設する複数の溝部21bが形成されている(図10及び図11参照)。
【0032】
また、その四角枠形状の金属プレート22は、図12乃至図15に示すように、ステンレス(SUS)製の板材がプレス成形されて形成され、枠体19の押圧部材20から力を受ける両辺は、板材が縦を向くように配設され、力を受ける部位(突部21a)の近傍部位22aが、他の部位より、板幅(図14中上下方向の幅H)が円弧状に狭く形成されて、剛性が低下するように構成されている。これにより、押圧部材20のICパッケージ12押圧時に、押圧部材20からの力が作用したときに、枠体19が弾性変形するように形成されている。
【0033】
この押圧部材20は、平面視で、四角形の枠形状を呈し、図16に示すように、支持軸25を介して枠体19に支持されている。この支持軸25は、枠体19の樹脂部材21に形成された支持孔21cと、図16に示すように、押圧部材20の支持片20aに形成された所謂ばか孔である挿通孔20bとに挿入されている。
【0034】
そして、そのヒートシンク26は、押圧部材20にねじ止め等により配設されており、枠形状の押圧部材20内に挿入されてICパッケージ12上面の中央部に当接される中央突部26aと、この中央突部26aから上方に突設されたフィン形状の放熱部26bとを有している。
【0035】
さらに、ロック機構18は、図5及び図6に示すように、枠体19の先端部に係止されるラッチ部材28と、回動されることにより図示省略のカム機構を介してラッチ部材28を下方に移動させるロックレバー29とを有している。図5に示す状態からロックレバー29を図5中矢印方向に回動させて略水平状態に倒すことにより、ラッチ部材28を下方に移動させて、図6に示すように、押圧部材20で、ICパッケージ12を押圧すると共に、この押圧状態で、ロック状態とするようになっている。
【0036】
次に、かかるICソケット11の使用方法について説明する。
【0037】
まず、図4に示すように、ICソケット11のカバー部材17を開いた状態で、ICパッケージ12をフローティングプレート15上に収容する。この収容時には、ICパッケージ12は、フローティングプレート15のガイド部15bにガイドされる。
【0038】
その後、図5に示すように、カバー部材17を閉じて行き、枠体19の先端部にラッチ部材28を係止する。その後、ロックレバー29を図5中矢印方向に回動させて図6に示すように倒すことにより、ラッチ部材28を下方に移動させて、押圧部材20で、ICパッケージ12を押圧すると共に、この押圧状態で、ロック状態とする。
【0039】
これにより、押圧部材20にて、ICパッケージ12が下方に押圧されることにより、フローティングプレート15がスプリングの付勢力に抗して下方に押し下げられる。
【0040】
そして、この押圧部材20から上方への力が、枠体19の突部21aに作用する。この際には、押圧部材20の挿通孔20bに支持軸25が挿入されているため、この押圧部材20が多少上昇したとしても、その支持軸25には、上記押圧部材20からの上方への大きな力は殆ど作用しない。
【0041】
その枠体19の突部21aに押圧部材20から上方への力が作用すると、この突部21aの近傍の、金属プレート22の近傍部位22aの剛性が低下しているため、この枠体19は、図6に示すように、上方に僅かに凸となるように、弾性変形して湾曲する。
【0042】
このように、枠体19が弾性変形することにより、ダンパー機能が発揮され、ICパッケージ12や、ICソケット11の成形部品等に成形誤差等があった場合でも、押圧部材20によるICパッケージ12の押圧力が強すぎたり、弱すぎたりすることなく、適正な押圧力を確保することができる。
【0043】
この状態で、コンタクトピン16のバネ部16cが弾性変形されることにより、コンタクトピン16の上側接触部16bが、ICパッケージ12の球状端子12bに、又、下側接触部16aが、配線基板Pの電極部に、それぞれ所定の接圧で接触されることとなる。また、ヒートシンク26の中央突部26aが、ICパッケージ12に接触して放熱部26bから放熱されるようになっている。
【0044】
この状態で、ICパッケージ12に電流を流してバーンイン試験等を行う。
【0045】
してみれば、上述のように、枠体19自体を弾性変形可能としてダンパー機能を果たさせるようにしているため、従来のように、枠体19と、押圧部材20との間にスプリング等の部品から成るダンパー機構を配設する必要がないことから、部品点数を減少させることができると共に、そのダンパー機構を配設していたスペースを使い、ヒートシンク26のフィン構造の放熱部26bを拡大することができ、冷却性能を向上させることができる。
【0046】
また、枠体19全体を金属製でなく、金属プレート22を樹脂部材21で埋設することにより、枠体19の絶縁性を確保することができると共に、全体が金属製のものに比較して重量の低減を図ることができ、しかも、金属プレート22により、ばね性要素を有しつつ強度確保もできる。
【0047】
さらに、成形型にセットされた金属プレート22の周囲に溶融樹脂を充填して樹脂部材21を成形することにより、溝部21b等、形状の複雑な部分も容易に成形できる。
【0048】
しかも、金属プレート22の形状、大きさ、材質等を適宜変更することで、ダンパー荷重や変形量等も制御することも可能である。
【0049】
なお、上記実施の形態では、「電気部品用ソケット」としてICソケット11に、この発明を適用したが、これに限らず、他の装置にも適用できることは勿論である。また、この発明の枠体は、押圧部材からの力を受けて弾性変形して、ダンパー機能を発揮するものであれば、金属材料のみで成形されていても良いし、樹脂材料のみで成形されていても良い。
【符号の説明】
【0050】
11 ICソケット(電気部品用ソケット)
12 ICパッケージ(電気部品)
12a パッケージ本体(電気部品本体)
12b 球状端子(端子)
14 ソケット本体
15 フローティングプレート
16 コンタクトピン
17 カバー部材
18 ロック機構
19 枠体
20 押圧部材
21 樹脂部材
21a 突部
22 金属プレート
22a 近傍部位
P 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板上に配設され、端子を有する電気部品が収容される電気部品用ソケットであって、
前記配線基板上に配設され、前記電気部品が収容されるソケット本体と、
該ソケット本体に回動自在に設けられたカバー部材とを有し、
該カバー部材は、前記ソケット本体に回動自在に設けられた四角形の枠体と、該枠体に支持され、前記カバー部材の閉時の前記電気部品を押圧する押圧部材とを有し、
前記枠体は、前記押圧部材の前記電気部品押圧時に、該押圧部材からの力が作用したときに、弾性変形するように形成されたことを特徴とする電気部品用ソケット。
【請求項2】
前記枠体は、四角枠形状の樹脂部材に、四角枠形状の金属プレートがインサート成形されて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電気部品用ソケット。
【請求項3】
前記四角枠形状の金属プレートは、前記押圧部材から力を受ける部位の近傍部位が、他の部位より剛性が低下していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気部品用ソケット。
【請求項4】
前記押圧部材には、ヒートシンクが配設されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の電気部品用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−69460(P2012−69460A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215002(P2010−215002)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】