説明

電気集じん機

【課題】集じん機能を維持しつつ、軽量化を行い、さらに火花放電の発生を抑え、温度の異常上昇を未然に防止することを目的とする。
【解決手段】帯電部11の接地電極板13、集じん部21の荷電極板22、集じん部21の接地極板23のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルム32の間に導電性の第2フィルム33を挟んだ3層フィルム31で構成され、極板に第2フィルム33の表面露出部36を設け通電板37を接触させる、もしくは、極板の3層フィルム31の表面方向に垂直または平行に通電棒42を差し込み第2フィルム33に接触させることによって、第2フィルム33を高圧電源3に電気的に導通させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊粒子状物質を捕集し空気清浄を行うための電気集じん機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気集じん機は、コロナ放電を発生させ空気中の浮遊粒子状物質を帯電させる帯電部と、空気中の浮遊粒子状物質を捕集する集じん部から構成されており、例えば、特許文献1のようなものが知られている。
【0003】
以下、その電気集じん機について図7を参照しながら説明する。帯電部101は様々な形状(例えば線やトゲや針など)をした放電電極102と金属製の薄板からなる接地電極板103とが交互に積層されている。集じん部105は金属製の薄板からなる荷電極板106と金属製の薄板からなる接地極板107とが交互に積層されている。放電電極102には電源104から高電圧が印加され接地電極板103との間でコロナ放電が発生し、荷電極板106には電源104から高電圧が印加され接地極板107との間に電界が形成される。空気中の浮遊粒子状物質は、帯電部101でコロナ放電によって帯電され、集じん部105で電界によって接地極板107に付着、捕集され、空気清浄を行うものである。
【0004】
大風量を処理する電気集じん機では(例えば1ユニット当たり300m3/min)その処理風量から1ユニット当たりの大きさが大きくなるため、使用する接地電極板103、荷電極板106、および接地極板107の1枚当りの大きさが大きくなるとともに、使用枚数も多く、そのため重量が重くなっていた。
【0005】
このため、出来る限り軽量化をするために、接地電極板103、荷電極板106、および接地極板107の厚みを薄くしたり、特許文献1のように集じん部105の接地極板107にパンチング穴108を設けるなどしていた。
【特許文献1】特開平11−057531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の電気集じん機では、軽量化のために極板の厚みを薄くしすぎると剛性がなくなり極板同士の距離を保つことが困難となり、また、極板に穴を設けすぎると導電部分が減少し電界強度が弱まるため、いずれにしても集じん機能が低下するという課題があった。
【0007】
また、帯電部や集じん部において火花放電が発生し、浮遊粒子状物質が可燃性の場合は温度が異常上昇し、極板などが熱により変形し耐久寿命が短くなるという課題があり、これを避けるために、印加電圧を下げたり、極板間隔を広げたりすると集じん機能が低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、集じん機能を維持しつつ、軽量化を行い、さらに火花放電の発生を抑え、温度の異常上昇を未然に防止する電気集じん機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気集じん機は、上記目的を達成するために、帯電部の接地電極板、集じん部の荷電極板、集じん部の接地極板のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルムの間に導電性の第2フィルムを挟んだ3層フィルムで構成され、極板には第2フィルムの表面露出部を設け、高圧電源に電気的に導通させた通電板を表面露出部に接触させ、第2フィルムを高圧電源に電気的に導通させるようにしたものである。この手段により、集じん機能を維持した上で、金属製極板に比べて軽量化を図ることができる。また、表面露出部を通電板に接触させることにより、極板の電位を確実に高圧電源に導通させることができる。
【0010】
また、他の手段は、表面露出部を通電板に接触させる構成において、帯電部の接地電極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109〜1012Ω・cmであり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたものである。これにより、集じん機能を維持した上で、帯電部の火花放電の発生を抑えることができる。
【0011】
また、他の手段は、表面露出部を通電板に接触させる構成において、集じん部の荷電極板または接地極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109Ω・cm以上であり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたものである。これにより、集じん機能を維持した上で、集じん部の火花放電を抑えることができる。
【0012】
また、他の手段は、極板の3層フィルムに、少なくとも1辺の端面に平行に所定の幅で1枚の第1フィルムと1枚の第2フィルムの2層のみで構成された表面露出部を設けたものである。これにより、3層フィルムの表面露出部を、簡単に形成することができる。
【0013】
また、他の手段は、極板の3層フィルムの少なくとも1辺の端面において、3層フィルムの表面方向に対し5〜30°の角度で斜めに切除することによって、表面露出部を形成したものである。これにより、3層フィルムの表面露出部を、あと加工で容易に形成することができる。
【0014】
また、他の手段は、極板の3層フィルムの周囲にフレームを設け、フレームに通電板を挟み込む構成としたものである。これにより、極板を簡単に組立てることができる。
【0015】
また、他の手段は、帯電部の接地電極板、集じん部の荷電極板、集じん部の接地極板のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルムの間に導電性の第2フィルムを挟んだ3層フィルムで構成され、極板の3層フィルムの表面方向に垂直または平行に高圧電源に電気的に導通させた通電棒を差し込むことによって、通電棒を第2フィルムに接触させ、第2フィルムを高圧電源に電気的に導通させるようにしたものである。この手段により、集じん機能を維持した上で、金属製極板に比べて軽量化を図ることができる。また、通電棒を3層フィルムのに差し込むことによって、極板の電位を確実に高圧電源に導通させることができる。
【0016】
また、他の手段は、通電棒を3層フィルムに差し込む構成において、帯電部の接地電極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109〜1012Ω・cmであり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたものである。これにより、集じん機能を維持した上で、帯電部の火花放電の発生を抑えることができる。
【0017】
また、他の手段は、通電棒を3層フィルムに差し込む構成において、集じん部の荷電極板または接地極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109Ω・cm以上であり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたものである。これにより、集じん機能を維持した上で、集じん部の火花放電を抑えることができる。
【0018】
また、他の手段は、通電棒は先端が尖った円錐形であり、3層フィルムに対してくさび状に差し込まれたものである。これにより、極板の電位を確実に高圧電源に導通させることができる。
【0019】
また、他の手段は、極板の3層フィルムの周囲にフレームを設け、フレームには少なくとも通電棒の数と同数のネジが設けられ、ネジに通電棒をねじ込むことにより、3層フィルムに対しくさび状に差し込むようにしたものである。これにより、極板の電位を確実に高圧電源に導通させることができる。
【0020】
また、他の手段は、第1フィルムおよび第2フィルムは、いずれもポリフッ化ビニリデン系樹脂であり、各フィルムは基材にイオン性導電剤を混ぜ込むことによって電気抵抗が調整され、各フィルムを熱溶着することによって3層フィルムが構成されたものである。これにより、3層フィルムの密着性をより確実にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、集じん機能を維持しつつ、軽量化を図り、さらに火花放電の発生を抑え、温度の異常上昇を未然に防止するという効果のある電気集じん機を提供できる。
【0022】
また、極板の電位を確実に高圧電源に導通させ、信頼性を高めるという効果も奏する。
【0023】
また、3層フィルムの密着性をより確実にし、信頼性を高めるという効果も奏する。
【0024】
また、加工性、組立性を向上させ、製造コストを安価にするという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の請求項1記載の発明は、帯電部の接地電極板、集じん部の荷電極板、集じん部の接地極板のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルムの間に導電性の第2フィルムを挟んだ3層フィルムで構成され、極板には第2フィルムの表面露出部を設け、高圧電源に電気的に導通させた通電板を表面露出部に接触させ、第2フィルムを高圧電源に電気的に導通させるようにしたため、集じん機能を維持した上で、金属製極板に比べて軽量化を図り、また、表面露出部を通電板に接触させることにより、極板の電位を確実に高圧電源に導通させるという作用を有する。
【0026】
本発明の請求項2記載の発明は、表面露出部を通電板に接触させる構成において、帯電部の接地電極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109〜1012Ω・cmであり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたため、集じん機能を維持した上で、帯電部の火花放電の発生を抑えるという作用を有する。
【0027】
本発明の請求項3記載の発明は、表面露出部を通電板に接触させる構成において、集じん部の荷電極板または接地極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109Ω・cm以上であり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたため、集じん機能を維持した上で、集じん部の火花放電を抑えるという作用を有する。
【0028】
本発明の請求項4記載の発明は、極板の3層フィルムに、少なくとも1辺の端面に平行に所定の幅で1枚の第1フィルムと1枚の第2フィルムの2層のみで構成された表面露出部を設けたため、3層フィルムの表面露出部を、簡単に形成できるという作用を有する。
【0029】
本発明の請求項5記載の発明は、極板の3層フィルムの少なくとも1辺の端面において、3層フィルムの表面方向に対し5〜30°の角度で斜めに切除することによって、表面露出部を形成したため、3層フィルムの表面露出部を、あと加工で容易に形成できるという作用を有する。
【0030】
本発明の請求項6記載の発明は、極板の3層フィルムの周囲にフレームを設け、フレームに通電板を挟み込む構成としたため、極板を簡単に組立てられるという作用を有する。
【0031】
本発明の請求項7記載の発明は、帯電部の接地電極板、集じん部の荷電極板、集じん部の接地極板のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルムの間に導電性の第2フィルムを挟んだ3層フィルムで構成され、極板の3層フィルムの表面方向に垂直または平行に高圧電源に電気的に導通させた通電棒を差し込むことによって、通電棒を第2フィルムに接触させ、第2フィルムを高圧電源に電気的に導通させるようにしたため、集じん機能を維持した上で、金属製極板に比べて軽量化を図り、また、通電棒を3層フィルムのに差し込むことによって、極板の電位を確実に高圧電源に導通させるという作用を有する。
【0032】
本発明の請求項8記載の発明は、通電棒を3層フィルムに差し込む構成において、帯電部の接地電極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109〜1012Ω・cmであり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたため、集じん機能を維持した上で、帯電部の火花放電の発生を抑えるという作用を有する。
【0033】
本発明の請求項9記載の発明は、通電棒を3層フィルムに差し込む構成において、集じん部の荷電極板または接地極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率が109Ω・cm以上であり、第2フィルムの体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしたため、集じん機能を維持した上で、集じん部の火花放電を抑えるという作用を有する。
【0034】
本発明の請求項10記載の発明は、通電棒は先端が尖った円錐形であり、3層フィルムに対してくさび状に差し込まれたため、極板の電位を確実に高圧電源に導通させるという作用を有する。
【0035】
本発明の請求項11記載の発明は、極板の3層フィルムの周囲にフレームを設け、フレームには少なくとも通電棒の数と同数のネジが設けられ、ネジに通電棒をねじ込むことにより、3層フィルムに対しくさび状に差し込むようにしたため、極板の電位を確実に高圧電源に導通させるという作用を有する。
【0036】
本発明の請求項12記載の発明は、第1フィルムおよび第2フィルムは、いずれもポリフッ化ビニリデン系樹脂であり、各フィルムは基材にイオン性導電剤を混ぜ込むことによって電気抵抗が調整され、各フィルムを熱溶着することによって3層フィルムが構成されたため、3層フィルムの密着性をより確実にできるという作用を有する。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0038】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1〜4を示す電気集じん機の構成図、図2は本発明の実施の形態1〜4を示す帯電部と集じん部の斜視図である。
【0039】
図1に示すように、ダクト1内に、空気中の浮遊粒子状物質を帯電させる帯電部11と、帯電された浮遊粒子状物質を捕集する集じん部21とを備え、集じん部21の下流には、ダクト1内に浮遊粒子状物質を含んだ空気を引き込むための送風機2(一例として軸流ファン)を備えている。3は、帯電部11と集じん部21に高電圧を供給する高圧電源である。
【0040】
図2は、帯電部11と集じん部21の斜視図であり、帯電部11は、高圧電源3の正極側に電気的に導通させた放電電極12と同アース側に電気的に導通させた接地電極板13とが交互に配置されており、集じん部21は、高圧電源3の正極側に電気的に導通させた荷電極板22と同アース側に電気的に導通させた接地極板23とが交互に配置されている。放電電極12の形状は、線状、トゲ状、針状など、放電しやすい形状ならいずれでもよく、また材質は、ステンレス、タングステンなどの金属をはじめ、導電性塗料や導電性フィルムなど、導電性物質ならいずれでもよい。また、放電電極12および荷電極板22は、高圧電源3の正極側に接続されているが、アース極に対して負極側に接続してもよい。
【0041】
図2において、帯電部11の放電電極12と接地電極板13との隙間、および集じん部21の荷電電極22と接地電極23との隙間を矢印の如く空気が流れ、帯電部11において放電電極12と接地電極板13との間に発生したコロナ放電によって空気中の浮遊粒子状物質が帯電され、集じん部21において荷電極板22と接地極板23との間に発生した電界によって、帯電した浮遊粒子状物質がクーロン力により接地極板23に付着、捕集される。これによって、空気中の浮遊粒子状物質を捕集し空気清浄を行うことができる。
【0042】
図3は、図1および図2における、帯電部11の接地電極板13、集じん部21の荷電極板22、集じん部21の接地極板23のうち、いずれかまたは複数種に用いられる3層フィルム31を含む極板の、実施の形態1を示す詳細図および断面図である。なお、3層フィルム31を用いない極板は、ステンレスやアルミニウムなどの金属板であってもよい。
【0043】
図3において、3層フィルム31は、2枚の第1フィルム32の間に、第2フィルム33を挟んで構成されている。ここで、第1フィルム32および第2フィルム33の材質としては、いずれもポリフッ化ビニリデン系樹脂(以降、PVDFと呼ぶ)を用いている。PVDFは、耐熱性、耐オゾン性、耐薬品性、耐油性などに優れ、耐久性を十分確保することが出来るとともに、フィルム基材にイオン性導電剤を混ぜ込むことによって、体積抵抗率が違う複数種のフィルムを製作することができる。一般に体積抵抗率を調整する手段としては、カーボンなどの導電性フィラーを混ぜ込む方式があるが、この方式は樹脂材料に高電圧をかけた時にカーボン粒子の部分で絶縁破壊を起こしやすく、絶縁破壊電圧が低いといった欠点があるため、これを解決する手段として本実施の形態1では、カーボンなどの導電性フィラーに代わって、イオン性導電剤を混ぜ込む方式を用いている。その結果、体積抵抗率の異なる第1フィルム32と第2フィルム33が同種の樹脂材料で製作でき、これに熱をかけて接触面を溶解して密着させる熱溶着を行うことによって、3層フィルム31の密着性が良くなり、3層フィルム31の「はがれ」に対する信頼性を大幅に向上させることができる。
【0044】
この3層フィルム31を帯電部11の接地電極板13に用いる場合は、第1フィルム32の体積抵抗率が109〜1012Ω・cmであり、第2フィルム33の体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしている。
【0045】
帯電部11における第2フィルム33は、帯電部11でコロナ放電を行う際の電流を集め導通させる役目があるが、体積抵抗率が104Ω・cmより高いと電流が流れる際に第2フィルム33自体がジュール熱によって発熱量が大きくなってしまうため、104Ω・cm以下としている。厚みに関しては100〜500μmが良く、100μmより薄いと、同様に電流が流れる際に第2フィルム33自体がジュール熱によって発熱してしまい、500μmより厚いと第2フィルム33の重量が重くなり軽量化に寄与できなくなる。
【0046】
帯電部11における第1フィルム32は、帯電部11でコロナ放電を行う際に火花放電の発生を抑える役目がある。通常、接地電極板13表面が導電性であると、コロナ放電中に空気の絶縁破壊が起きた時に、その箇所の空気の電気抵抗が限りなくゼロに近づき、集中して電流が流れ火花放電が発生する。一方、接地電極板13の表面を、電気抵抗を持ったの第1フィルム32で覆った場合は、もし、コロナ放電中に空気の絶縁破壊が起き、その箇所の空気の電気抵抗が限りなくゼロに近づいた時でも、第1フィルム32の抵抗が直列にあるため、他の箇所の抵抗(空気抵抗+フィルム抵抗)と比べて抵抗値の差が少なく、電流を分散させ一箇所に集中して電流が流れずに火花放電の発生を防止することができる。この時の第1フィルム32の体積抵抗率は109〜1012Ω・cm、また、厚みは100〜500μmとすることが適正である。
【0047】
以下、その理由について述べる。体積抵抗率が同じでも厚みが変わるとフィルムの厚み方向に流れる電流に対する抵抗は変わってくる。そのため、フィルムの厚み方向に流れる電流に対する単位面積あたりの抵抗(つまり、体積抵抗率と厚みの積、以降、面積抵抗率Ω・cm2と呼ぶ)を考えると、本発明者らはこの面積抵抗率が108〜1010Ω・cm2とすることが最適であることを見出した。例えば厚さ100μmのフィルムでは、体積抵抗率1×1010〜1×1012Ω・cmが、また厚さ500μmのフィルムでは、体積抵抗率2×109〜2×1011Ω・cmが最適となる。この面積抵抗率が108Ω・cm2より小さいと電流が流れやすくなりコロナ放電は発生するが火花放電も発生し、逆に1010Ω・cm2より大きいと火花放電は発生しないが、コロナ放電も発生しなくなる。最適設計の一例として、第1フィルム32の面積抵抗率を1×109Ω・cm2(この時、体積抵抗率は2.5×1010Ω・cm、厚みは400μm)とするとよい。
【0048】
一方、この3層フィルム31を集じん部21の荷電極板22または接地極板23に用いる場合は、第1フィルム32の体積抵抗率が109Ω・cm以上であり、第2フィルム33の体積抵抗率が104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みを100〜500μmとしている。
【0049】
集じん部21における第2フィルム33は、集じん部21で電界をかけた際に電位を保つ役目があるが、体積抵抗率が104Ω・cmより高いと電圧降下によって極板の電位を保つことができなくなってしまうため、104Ω・cm以下としている。厚みに関しては100〜500μmが良く、100μmより薄いと電圧降下によって極板の電位を保つことができなくなり、500μmより厚いと第2フィルム33の重量が重くなり軽量化に寄与できない。
【0050】
集じん部21における第1フィルム32も、帯電部11同様に火花放電の発生を抑える役目がある。ただし、帯電部11と違いコロナ放電を行う必要がなく、第2フィルム33において電界を保てばよいため、第1フィルム32は絶縁性を高くすることが望ましい。よって、帯電部11と同様の理由で、体積抵抗率は109Ω・cm以上とし、また、厚みは100〜500μm(上限は絶縁性には関係ないが、厚すぎると軽量化に寄与できないため)とすることが適正である。
【0051】
以上のことから、帯電部11または集じん部21において火花放電の発生を抑えることにより温度の異常上昇を未然に防止するとともに、印加電圧を下げたり極板間隔を広げたりすることなく集じん機能を維持しつつ、極板を3層フィルム31にすることにより、金属製極板に比べて大幅な軽量化を図ることができるものである。
【0052】
3層フィルム31は単独では剛性がないため、図3に示すように、周囲を剛体としてのフレーム34(フレームA34a、フレームB34b)に挟み、4箇所の穴35にボルトとナット(図示せず)を通すことにより締結し、剛性を保っている。この方式は、極板を簡単に組立てることが可能となる。なお、フレーム34は、剛性があれば金属であっても樹脂であってもよい。
【0053】
一方、いずれの極板の使い方であっても、第2フィルム33は、高圧電源3に電気的に導通させる必要があり、本実施の形態1では、3層フィルム31が、少なくとも1辺の端面に平行に所定の幅(例えば10mm)で1枚の第1フィルム32と1枚の第2フィルム33の2層のみで構成された表面露出部36を設けている。そして、第2フィルム33の表面露出部36に導電性の通電板37を接触させ、さらに、フレームA34a、フレームB34bによって両側から挟み込んでいる。通電板37の少なくとも一端は、通電端子38としてフレーム34の外側に突出させ、この通電端子38をリード線(図示せず)などを介して高圧電源3に接続することにより、第2フィルム33を確実に高圧電源3に導通させることができるものである。これにより、信頼性を高めることができる。
【0054】
また、本実施の形態1では、3層フィルム31の全幅寸法がB=200mm、表面露出部の幅寸法が10mmとすると、全幅200mmのうち、幅190mmが3層構成、幅10mmが2層構成のフィルムを長尺で製作し、長手方向に所定長さ(例えば400mm)に裁断することによって、3層フィルム31を安価で簡単に形成することができるものである。
【0055】
(実施の形態2)
図4は、図1および図2における、帯電部11の接地電極板13、集じん部21の荷電極板22、集じん部21の接地極板23のうち、いずれかまたは複数種に用いられる3層フィルム31を含む極板の、実施の形態2を示す詳細図および断面図である。図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。なお、3層フィルム31を用いない極板は、ステンレスやアルミニウムなどの金属板であってもよい。
【0056】
図4において、3層フィルム31は、2枚の第1フィルム32の間に、第2フィルム33を挟んで構成されている。ここで、第1フィルム32および第2フィルム33の材質としては、いずれも厚さ100〜500μmのポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いている。3層フィルム31の周囲は、金属や樹脂などの剛体としてのフレーム34(フレームA34a、フレームB34b)によって挟まれ、4箇所の穴35にボルトとナット(図示せず)を通すことにより締結し、剛性を保っている。
【0057】
第2フィルム33は、高圧電源3に電気的に導通させる必要があり、本実施の形態2では、3層フィルム31の少なくとも1辺の端面において、3層フィルム31の表面方向に対しα=5〜30°(本実施の形態2では、α=25°)の角度で斜めに切除することによって、表面露出部36を形成している。そして、第2フィルム33の表面露出部36に導電性の通電板37を接触させ、さらに、フレームA34a、フレームB34bによって両側から挟み込んでいる。角度をα=5〜30°とした理由は、角度が30°より大きいと、通電板37と第2フィルム33との接触長さが小さくなり電気の導通を阻害するおそれがあり、角度が5°より小さいと、3層フィルム31が3層として機能する有効面積が小さくなるためである。なお、フレームA34aの通電板37に対応する部分は、3層フィルム31の切除角を考慮して、3層フィルム31の表面方向に対し、部分的に斜めに形成されている。さらに、通電板37の少なくとも一端は、通電端子38としてフレーム34の外側に突出させ、この通電端子38をリード線(図示せず)などを介して高圧電源3に接続することにより、第2フィルム33を確実に高圧電源3に導通させることができるものである。これにより、信頼性を高めることができる。
【0058】
この方式は、3層フィルム31の表面露出部36を、フィルムの3層構造成形後の、あと加工で形成することができるため、3層フィルム31を広い面積で大量に成形することができ、3層フィルムの製造コストを低減することができるものである。
【0059】
(実施の形態3)
図5は、図1および図2における、帯電部11の接地電極板13、集じん部21の荷電極板22、集じん部21の接地極板23のうち、いずれかまたは複数種に用いられる3層フィルム31を含む極板の、実施の形態3を示す詳細図および断面図である。図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。なお、3層フィルム31を用いない極板は、ステンレスやアルミニウムなどの金属板であってもよい。
【0060】
図5において、3層フィルム31は、2枚の第1フィルム32の間に、第2フィルム33を挟んで構成されている。ここで、第1フィルム32および第2フィルム33の材質としては、いずれも厚さ100〜500μmのポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いている。3層フィルム31の周囲は、金属や樹脂などの剛体としてのフレーム34(フレームA34a、フレームB34b)によって挟まれ、4箇所の穴35にボルトとナット(図示せず)を通すことにより締結し、剛性を保っている。
【0061】
フレームA34aには、内面に3層フィルム31の表面方向に垂直方向にメネジ41aを設けたボス41が4箇所備えられている。このボス41に、先端42aが尖った円錐形で中央部にオネジ42bを設けた導電性の通電棒42をねじ込むことにより、3層フィルム31に対しくさび状に差し込むようにしてある。ここで、通電棒42の先端42aを円錐形にした理由は、通電棒42が第2フィルム33に接触する部分において、常に第2フィルム33の穴を拡大する力が働き、第2フィルム33の僅かな厚み(100〜500μm)であっても、通電棒42と第2フィルム33とを確実に接触させるためである。この通電棒42をリード線(図示せず)などを介して高圧電源3に接続することにより、第2フィルム33を確実に高圧電源3に導通させることができるものである。これにより、信頼性を高めることができる。
【0062】
この方式は、既に成形された3層フィルム31に加工を施すことなく、第2フィルム33を確実に高圧電源3に導通させることができるもので、3層フィルム31を用いた極板の製作を安価で簡単に行なうことができるものである。
【0063】
(実施の形態4)
図6は、図1および図2における、帯電部11の接地電極板13、集じん部21の荷電極板22、集じん部21の接地極板23のうち、いずれかまたは複数種に用いられる3層フィルム31を含む極板の、実施の形態4を示す詳細図および断面図である。図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。なお、3層フィルム31を用いない極板は、ステンレスやアルミニウムなどの金属板であってもよい。
【0064】
図6において、3層フィルム31は、2枚の第1フィルム32の間に、第2フィルム33を挟んで構成されている。ここで、第1フィルム32および第2フィルム33の材質としては、いずれも厚さ100〜500μmのポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いている。3層フィルム31の周囲は、金属や樹脂などの剛体としてのフレーム34(フレームA34a、フレームB34b)によって挟まれ、4箇所の穴35にボルトとナット(図示せず)を通すことにより締結し、剛性を保っている。
【0065】
フレームA34aには、内面に3層フィルム31の表面方向に平行方向にメネジ41aを設けたボス41が4箇所備えられている。このボス41に、先端42aが尖った円錐形で中央部にオネジ42bを設けた導電性の通電棒42をねじ込むことにより、3層フィルム31の第2フィルム33に対しくさび状に差し込むようにしてある。ここで、通電棒42の先端42aを円錐形にした理由は、通電棒42が第2フィルム33に接触する部分において、常に第2フィルム33の穴を拡大する力が働き、通電棒42と第2フィルム33とを確実に接触させるためである。この通電棒42をリード線(図示せず)などを介して高圧電源3に接続することにより、第2フィルム33を確実に高圧電源3に導通させることができるものである。これにより、信頼性を高めることができる。
【0066】
この方式は、既に成形された3層フィルム31に加工を施すことなく、第2フィルム33をより確実に高圧電源3に導通させることができるもので、3層フィルム31を用いた極板の製作を安価で簡単に行なうことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、大風量を処理する電気集じん機に有効であり、重量を軽量化することが出来る電気集じん機を提供できる。また、空気中の浮遊粒子状物質に可燃性物質が含まれているものを処理する場合にも有効であり、火花放電を発生させずに、安全に捕集することが出来る電気集じん機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1〜4を示す電気集じん機の構成図
【図2】本発明の実施の形態1〜4を示す帯電部と集じん部の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1を示す極板の図((a)極板の詳細図、(b)極板の断面図)
【図4】本発明の実施の形態2を示す極板の図((a)極板の詳細図、(b)極板の断面図)
【図5】本発明の実施の形態3を示す極板の図((a)極板の詳細図、(b)極板の断面図)
【図6】本発明の実施の形態4を示す極板の図((a)極板の詳細図、(b)極板の断面図)
【図7】従来の電気集じん機を示す構成図
【符号の説明】
【0069】
2 送風機
3 高圧電源
11 帯電部
12 放電電極
13 接地電極板
21 集じん部
22 荷電極板
23 接地極板
31 3層フィルム
32 第1フィルム
33 第2フィルム
34 フレーム
36 表面露出部
37 通電板
41a メネジ
42 通電棒
42a 先端
42b オネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と接地電極板とを空気の流れ方向に平行に積層配置し空気中の浮遊粒子状物質を帯電させる帯電部と、荷電極板と接地極板とを空気の流れ方向に平行に積層配置し前記帯電部で帯電された空気中の浮遊粒子状物質を捕集する集じん部と、前記帯電部と前記集じん部内に浮遊粒子状物質を含んだ空気を流入させる送風機と、浮遊粒子状物質を捕集するために前記帯電部と前記集じん部に高電圧を供給する高圧電源とを備え、前記帯電部の前記接地電極板、前記集じん部の前記荷電極板、前記集じん部の前記接地極板のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルムの間に導電性の第2フィルムを挟んだ3層フィルムで構成され、前記極板には前記第2フィルムの表面露出部を設け、前記高圧電源に電気的に導通させた通電板を前記表面露出部に接触させ、前記第2フィルムを前記高圧電源に電気的に導通させるようにした電気集じん機。
【請求項2】
帯電部の接地電極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率は109〜1012Ω・cmであり、第2フィルムの体積抵抗率は104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みが100〜500μmである請求項1記載の電気集じん機。
【請求項3】
集じん部の荷電極板または接地極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率は109Ω・cm以上であり、第2フィルムの体積抵抗率は104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みが100〜500μmである請求項1記載の電気集じん機。
【請求項4】
極板の3層フィルムは、少なくとも1辺の端面に平行に所定の幅で1枚の第1フィルムと1枚の第2フィルムの2層のみで構成された表面露出部を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の電気集じん機。
【請求項5】
極板の3層フィルムの少なくとも1辺の端面において、3層フィルムの表面方向に対し5〜30°の角度で斜めに切除することによって、表面露出部を形成した請求項4記載の電気集じん機。
【請求項6】
極板の3層フィルムの周囲にフレームを設け、前記フレームに通電板を挟み込む構成とした請求項4または5記載の電気集じん機。
【請求項7】
放電電極と接地電極板とを空気の流れ方向に平行に積層配置し空気中の浮遊粒子状物質を帯電させる帯電部と、荷電極板と接地極板とを空気の流れ方向に平行に積層配置し前記帯電部で帯電された空気中の浮遊粒子状物質を捕集する集じん部と、前記帯電部と前記集じん部内に浮遊粒子状物質を含んだ空気を流入させる送風機と、浮遊粒子状物質を捕集するために前記帯電部と前記集じん部に高電圧を供給する高圧電源とを備え、前記帯電部の前記接地電極板、前記集じん部の前記荷電極板、前記集じん部の前記接地極板のうち、いずれか1つ以上は、2枚の絶縁性もしくは半導電性の第1フィルムの間に導電性の第2フィルムを挟んだ3層フィルムで構成され、前記極板の3層フィルムの表面方向に垂直または平行に前記高圧電源に電気的に導通させた通電棒を差し込むことによって、前記通電棒を前記第2フィルムに接触させ、前記第2フィルムを前記高圧電源に電気的に導通させるようにした電気集じん機。
【請求項8】
帯電部の接地電極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率は109〜1012Ω・cmであり、第2フィルムの体積抵抗率は104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みが100〜500μmである請求項7記載の電気集じん機。
【請求項9】
集じん部の荷電極板または接地極板に用いる3層フィルムのうち、第1フィルムの体積抵抗率は109Ω・cm以上であり、第2フィルムの体積抵抗率は104Ω・cm以下であり、いずれのフィルムも厚みが100〜500μmである請求項7記載の電気集じん機。
【請求項10】
通電棒は先端が尖った円錐形であり、3層フィルムに対してくさび状に差し込まれた請求項7〜9のいずれかに記載の電気集じん機。
【請求項11】
極板の3層フィルムの周囲にフレームを設け、前記フレームには少なくとも通電棒の数と同数のネジが設けられ、前記ネジに前記通電棒をねじ込むことにより、前記3層フィルムに対しくさび状に差し込むようにした請求項10記載の電気集じん機。
【請求項12】
第1フィルムおよび第2フィルムは、いずれもポリフッ化ビニリデン系樹脂であり、前記各フィルムは基材にイオン性導電剤を混ぜ込むことによって電気抵抗が調整され、前記各フィルムを熱溶着することによって3層フィルムが構成された請求項1〜11のいずれかに記載の電気集じん機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−112938(P2009−112938A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288362(P2007−288362)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】