説明

電気集塵装置

【課題】装置寸法の増加及び電力消費を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を向上する。
【解決手段】電気集塵装置では、集塵電極を構成する電極ユニット62、64、66における放電電極の放電線60との対向部に、放電線60を曲率中心とするように円弧状に湾曲した凹形状部68が形成されている。これにより、放電線60から凹形状部68における任意の部位までの距離が一定となり、放電線60と凹形状部68との間に電界の分布状態が略均一となる帯電空間を形成できるので、この帯電空間内ではガス中に含まれる塵状体を効率的に帯電できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉、溶融炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置から排出される煤塵等の塵状体を含むガスの浄化を行うための電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉、溶融炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置では、その操業時に燃焼、加熱反応等に伴って煤塵等の塵状体を含む高温の排出ガス(以下、単に「ガス」という。)が発生する。産業装置から排出されるガスは、ある程度の温度まで冷却された後、フィルタ式集塵装置や電気集塵装置へ送られ、集塵装置により塵状体が捕集、除去される。
フィルタ式の集塵装置と電気集塵装置とを比較すると、ガス中に分散する塵状体に対する集塵性能は、バグフィルタを用いるフィルタ式集塵装置が一般的に優れているとされているが、ガス温度が高温になる場合には、バグフィルタが使用不能になるため、このような場合には、塵状体を静電的な力(捕集力)により捕集除去する電気集塵装置が使用される。
【0003】
上記のような電気集塵装置としては、図10に示されるように、ガス導入口102及びガス排出口104がそれぞれ形成された中空状のケーシング100と、このケーシング100内にそれぞれ配置される放電電極106及び集塵電極108と、放電電極106に接続され、この放電電極106と集塵電極108との間に駆動電圧を印加する高圧電源(図示省略)と、を備えたものがある。この電気集塵装置では、図11に示されるように、塵状体Pを含むガスGを放電電極106と集塵電極108との間を流通させつつ、放電電極106からのコロナ放電によりガスG中に含まれる塵状体に電荷を与え、帯電することにより、この塵状体を静電気力EFにより集塵電極108に引き寄せて吸着する。
【0004】
電気集塵装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1記載の電気集塵装置には、ケーシング内にガスの流れ方向に沿って上流側に第1集塵部が設けられると共に、この第1集塵部の下流側に第2集塵部が設けられている。
ここで、第1集塵部には、プレート状の集塵電極が複数配置されると共に、一対の集塵電極の間に棒状の放電電極が、集塵電極の長手方向に沿って一定ピッチで略全長に亘って複数配設されている。第2集塵部も、基本的に第1集塵部と同様な構造とされており、複数の集塵電極及び放電電極をそれぞれ有している。第1及び第2集塵部における複数の放電電極にはそれぞれ高圧電源が接続される。
【0005】
特許文献1記載の電気集塵装置では、集塵電極がガスの流れ方向に沿って細長いメッシュプレート状に形成されており、放電電極がガスの流れ方向に略直交する上下方向に延在する細長い棒状に形成され、集塵電極の表面部又は裏面部に対向するように支持されている。これにより、ガスの流れ方向に沿って集塵電極とガスとの接触長を長くし、集塵電極の全長に亘ってガスにコロナ放電を作用させることができるので、ガス中の塵状体に対する集塵効率を向上できるとされている。
【0006】
特許文献1には、上流側の第1集塵部に配置された放電電極及び集塵電極に対し、下流側の第2集塵部に放電電極及び集塵電極を高密度に配置することより、塵状体の濃度が低いガスを集塵処理する場合でも、上流側の第1集塵部で捕集し損ねた塵状体も、下流側の第2集塵部で効率的に捕集できる、と開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−160286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の電気集塵装置のように、集塵電極とガスとの接触長を延長するため、ガスの流れ方向に沿って集塵電極を細長いものにすると共に、第1及び第2集塵部を直列的に配置した場合、ガスの流れ方向に沿ったケーシングの寸法が不可避的に長いものになり、装置の設置スペースの関係で不利になることがある。
また特許文献1に記載されているように、塵状体の濃度が低いガスから効率的に塵状体を捕集するため、上流側の第1集塵部に配置された放電電極及び集塵電極に対し、下流側の第2集塵部に放電電極及び集塵電極を高密度に配置した場合は、上流側の集塵部の集塵能力が下流側の集塵部の集塵能力よりも劣るので、塵状体の濃度が高いガスを集塵処理するとき際には、上流側の集塵部と下流側の集塵部との負荷バランスを適切に保つことが困難になり、装置の集塵効率が低下すると共に、消費電力が増大することがある。
【0009】
本発明の目的は、上記事実を考慮し、装置寸法の増加及び電力消費を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を効率的に向上できる電気集塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る電気集塵装置は、ガス中に含まれる塵状体を静電的な力により捕集する電気集塵装置において、ガスが内部を流通するケーシングと、前記ケーシング内に配置され、複数本の放電線が設けられた放電電極と、前記ケーシング内に配置され、一端部に排気口が開口したボックス状に形成されると共に、内外空間を区画する隔壁部の少なくとも一部が金属製のメッシュフィルタにより形成された集塵電極と、前記放電電極と前記集塵電極との間に駆動電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、前記ケーシング内におけるガスの流れを、前記メッシュフィルタを通して前記集塵電極の内部へ流入した後、前記排気口を通して前記集塵電極の外部へ排気されるように制御すると共に、前記メッシュフィルタにおける前記放電線との対向部に、該放電線を曲率中心とするように円弧状に湾曲した凹形状部を形成したことを特徴とする。
【0011】
上記請求項1に係る電気集塵装置では、ケーシング内におけるガスの流れを、メッシュフィルタを通して集塵電極の内部へ流入した後、排気口を通して集塵電極の外部へ排気されるように制御する。これにより、ケーシング内に供給されたガスを、単位体積当りの表面積が大きいメッシュフィルタを通して、この集塵電極の外部から内部空間に流入させた後、装置外部へ排出できるので、集塵電極及びケーシングの寸法を特定の方向へ長くしなくても、放電電極からのコロナ放電により帯電された塵状体を含むガスと集塵電極との接触面積を効率的に増大させることができる。
【0012】
このとき、メッシュフィルタの表面における放電線との対向部に、この放電線を曲率中心とするように円弧状に湾曲した凹形状部が形成されていることにより、放電線と凹形状部との間に電界の分布状態が略均一となる空間(帯電空間)を形成できるので、この帯電空間内でガス中に含まれる塵状体を更に効率的にメッシュフィルタにより捕集できる。
また、例えば、ガス中における塵状体の濃度や粒径分布に応じてメッシュフィルタの目の細かさ(メッシュ数)や、織り方を適宜選択するようにすれば、静電的な吸着力に加え、メッシュフィルタ自体による濾過作用によってもガス中に含まれる塵状体を集塵除去できることから、塵状体の含有率が高いガスを集塵処理する際に、装置全体として集塵効率を向上できる。
【0013】
また本発明の請求項2に係る電気集塵装置は、請求項1記載の電気集塵装置において、前記放電電極は、前記ガスの流れ方向に沿って配列される3個以上の連結材及び、前記ガスの流れ方向に沿って隣接する一対の前記連結材の間に掛け渡される複数本の前記放電線を有しており、一対の前記連結材の間に掛け渡される前記放電線の本数を、前記ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へ向かって段階的に減少させたことを特徴とする。
【0014】
また上記請求項2に係る電気集塵装置では、放電電極が、ガスの流れ方向に沿って配列される3個以上の連結材及び、ガスの流れ方向に沿って隣接する一対の前記連結材の間に掛け渡される複数本の放電線を有しており、一対の連結材の間に掛け渡される前記放電線の本数が、ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へ向かって段階的に減少している。これにより、電荷エネルギの分布を、ガス中に含まれる塵状体の濃度分布に対応するものにできるので、無駄な電力消費を少なくして、装置のエネルギ効率を向上できると共に、メッシュフィルタに形成される凹形状部の個数を減少できるので、凹形状部を有するメッシュフィルタの作製も容易になる。
【0015】
また本発明の請求項3に係る電気集塵装置は、請求項1又は2記載の電気集塵装置において、前記集塵電極は、前記排気口及び前記メッシュフィルタがそれぞれ設けられた複数の電極ユニットが前記ガスの流れ方向に沿って積み重ねられて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明に係る電気集塵装置によれば、装置寸法の増加及び電力消費を抑制しつつ、ガス中に含まれる塵状体に対する集塵能力を効率的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電気集塵装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される電気集塵装置の模式的に構成を示す平面断面図である。
【図3】図1に示される電気集塵装置における放電電極の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示される電気集塵装置における集塵電極の構成を示す斜視図である。
【図5】図1に示される電気集塵装置における集塵電極の構成を示す斜視図であり、集塵電極が3個の電極ユニットに分解された状態を示している。
【図6】図1に示される電気集塵装置における帯電流路、集塵電極及びガスの流れを示す平面図である。
【図7】図1に示される電気集塵装置における放電線及びメッシュフィルタと塵状体との関係を示す平面図である。
【図8】図1に示される集塵電極を構成する3個の電極ユニット及び放電線の構成を示す平面図である。
【図9】(A)は凹形状部を有するメッシュフィルタと放電線との位置関係を示す平面図、(B)は凹形状部を有していないメッシュフィルタと放電線との位置関係を示す平面図である。
【図10】従来の電気集塵装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図11】従来の電気集塵装置における放電線及び集塵電極と塵状体との関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る電気集塵装置について図面を参照して説明する。
図1及び図2には、本発明の実施形態に係る電気集塵装置の構成が示されている。この電気集塵装置10は、略長方体状に形成された中空のケーシング12と、このケーシング12の内部に配置される放電電極14及び集塵電極16を備えている。図1に示されるように、ケーシング12には、その底板部に漏斗状のホッパ18が下方へ突出するように設けられている。このホッパ18は、上端側から下端側へ向かって断面積が徐々に縮小し、装置の高さ方向(矢印H方向)へ貫通している。
【0019】
ホッパ18の下端部にはフランジ部材19が配置されており、このフランジ部材19には、ケーシング12内で捕集された塵状体を系外へ排出させるための排出装置(例えば、スクリューコンベアやロータリバルブ)が取り付けられる。またホッパ18には、装置の長手方向(矢印L方向)に沿った一端側(図1では、左側)の側板部にガス導入口20が開口しており、このガス導入口20には、ガスGの流通路を構成する導入ダクト22の先端部が接続されている。
【0020】
ここで、導入ダクト22は、その基端部が焼却炉、溶融炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置(図示省略)の排ガス口に接続されている。この排ガス口から排出されるガスGは、通常、煤塵、塵埃等の塵状体P(図7参照)を高濃度で含んでおり、導入ダクト22を通してケーシング12内へ送り込まれる。ただし、導入ダクト22は産業装置の排気口の形状、配置によっては、形状及び取付位置が変わる場合がある。
【0021】
なお、産業装置の排気口から排出されるガスGの温度が非常に高温である場合には、例えば、導入ダクト22の途中に設けられたガス冷却装置によりガスGを電気集塵装置10の耐用温度以下まで冷却した後、このガスGをケーシング12内へ送り込む。
図1に示されるように、ケーシング12には、装置の幅方向(矢印W方向)に沿って他端側(図1の紙面奥側)の後板部12Bにガス排出口24が開口している。ガス排出口24は、後板部12Bにおける上端付近であって、長手方向Lに沿ってガス導入口20とは反対側の端部付近に開口している。ガス排出口24には、ガスGの流通路を構成する排出ダクト26の基端部が接続されている。後述するように、ケーシング12内で集塵処理が行われたガスGは、排出ダクト26を通り、必要に応じてガスGに対して他の処理を行う処理装置に送られ、あるいは大気中へ排出される。
【0022】
また排出ダクト26の途中には誘引ファン(図示省略)が配置されており、この誘引ファンは、排出ダクト26を通してケーシング12の内部空間からガスGを吸い込む。これにより、ケーシング12の内部には、全体として、ケーシング12のガス導入口20からケーシング12のガス排出口24へ向かってガスGが流れるガス流が形成される。
【0023】
ケーシング12内に配置された複数個(本実施形態では、3個)の集塵電極16は、その外形形状がそれぞれ肉厚プレート状に形成されており、中空とされている。集塵電極16は、その厚さ方向が幅方向Wと一致するようにブラケット(図示省略)を介してケーシング12により支持されている。図2に示されるように、集塵電極16の内部には、後述するメッシュフィルタ30を通過したガスGがそれぞれ流通する3個の内部流路44、46、48が形成されている。集塵電極16には、図4に示されるように、長手方向Lに沿った一端側(図4では、左側)の側端面に3個の排出口45、47、49が開口している。内部流路44、46、48を流通したガスGは、それぞれ排出口45、47、49を通ってケーシング12内へ排出される。ケーシング12の内部には、図2に示されるように、排出口45、47、49に面してガスGの集合室33が形成されており、この集合室33には、集塵電極16の排出口45、47、49から排出されたガスGが流入する。
【0024】
集塵電極16には、図4に示されるように、長手方向Lに沿って排出口45、47、49側の一端部に支持フレーム34が配置されると共に、他端部に閉塞板36が配置されている。支持フレーム34は形鋼で矩形の枠状に形成されている。閉塞板36は高さ方向Hに細長く形成されており、集塵電極16の他端部を閉塞している。
集塵電極16は、支持フレーム34の上端部と閉塞板36の上端部との間に架渡された上側閉塞板38と、支持フレーム34の下端部と閉塞板36の下端部との間に架渡された下側閉塞板40を備えている。集塵電極16には、その内部空間を3個の内部流路44、46、48に区画する上側隔壁部42及び下側隔壁部43が設けられている。
【0025】
集塵電極16は、支持フレーム34と閉塞板36との間が通気性を有するメッシュフィルタ30により形成されている。メッシュフィルタ30は、導電性金属からなる繊維状材料、ワイヤ状材料等を編んで網状体とすることにより構成されている。メッシュフィルタ30は、それぞれ平面状に形成された複数の分割片により構成されており、これらの分割片は、それぞれ形鋼により枠状に形成されたフレーム部材(図示省略)に取付けられると共に、このフレーム部材を介して支持フレーム34及び閉塞板36に取り付けられている。集塵電極16における頂面部及び底面部については、それぞれ上側閉塞板38及び下側閉塞板40によりガスGが通気しない閉塞状態とされている。
【0026】
メッシュフィルタ30の目の細かさ(メッシュ数)については、ガスGの単位時間当りの通気量、ガスGに含まれる塵状体P(図7参照)の単位体積当りの数、塵状体Pの平均粒径及び粒径分布等に応じて適宜設定される。ここで、メッシュフィルタ30は、通常、目が細かい(メッシュ数が大きい)方が塵状体Pに対する集塵効率が高くなるが、目詰まりが生じ易くなり、かつ目詰まりが生じるまでの時間も短くなるので、これらのバランスを考慮してメッシュ数を適正に設定する必要がある。
【0027】
また、メッシュフィルタ30の織り方についても、通常、メッシュ数が一定の場合には、通常の平織より、例えば畳織のような立体的な織り方の方が塵状体Pに対する集塵効率が高くなるが、部品コストが高くなると共に、塵状体Pの除去作業が煩雑になるので、これらのバランスを考慮してメッシュフィルタ30の織り方も適正に設定する必要がある。なお、メッシュフィルタ30については、メッシュ数が同一のものや、異なるものを重ね合わせた積層構造のものを用いても良い。
【0028】
図2に示されるように、複数個(3個)の集塵電極16は、幅方向Wに沿って等ピッチで配列されおり、互いに隣接する一対の集塵電極16間には、幅方向W及び高さ方向Hに沿って貫通する空間が形成される。この空間は、後述する放電電極14によりガスG中の塵状体Pに電荷を付与するための帯電流路58とされる。また集塵電極16とケーシング12の前板部12Fとの間及び集塵電極16とケーシング12の後板部12Bとの間にも帯電流路58が形成されている。
【0029】
図2に示されるように、ケーシング12内には、幅方向Wに沿って互いに隣接する一対の集塵電極16間、集塵電極16と前板部12Fとの間及び集塵電極16と後板部12Bとの間にそれぞれ放電電極14が配置されている。放電電極14は、図3に示されるように、全体として梯子状の構造(所謂、ラダー構造)を有しており、それぞれ集塵電極16のメッシュフィルタ30に対向するように配置される。
【0030】
放電電極14には、高さ方向Hに沿って複数段(本実施形態では、3段)の放電線支持部50が設けられている。放電線支持部50には、上下一対の連結材52及び、一対の連結材52間に掛け渡される複数本の放電線60が設けられている。放電線60は、導電性の金属材料により帯状に形成されており、その上端部及び下端部がそれぞれ鋼管製の連結材52に連結されている。放電電極14では、連結材52を通して放電線支持部50における放電線60に高圧電流が流れる。
【0031】
連結材52は長手方向Lと平行に延在しており、放電線60は高さ方向Hと平行に延在している。放電線60の外周部には、図7に示されるように、多数の放電突起61が放射状に形成されている。これにより、電圧印加時に、放電突起61の先端部からコロナ放電が発生しやすいようになっている。なお、放電線60の放電突起は、図7に示すように、必ずしも針状部材を芯材に対して放射状に配設する必要はなく、先端を尖らせた突起が任意の方向へ突出するように設けられていればよく、また該突起の先端が芯材表面から必ずしも突出している必要もない。
【0032】
図1に示されるように、ケーシング12の頂板部には、長手方向Lの中央部にボックス状の収納部28が形成されており、この収納部28内には、駆動電圧電源(図示省略)を放電電極14へ導通させるための導通部材(図示省略)、この導通部材とケーシング12とを絶縁するための碍子(図示省略)等が収納されている。一方、放電電極14における最上部の連結材52には、図3に示されるように、長手方向Lの中央部に導電性材料からなる吊下管54が連結されている。吊下管54は、給電ケーブル55を介して収納部28内に配置された給電部材(図示省略)に接続されており、給電部材は、高圧ケーブル55、吊下管54及び連結材52を通して放電電極14に給電している。
【0033】
放電線支持部50では、長手方向Lに沿って等間隔で放電線60が配置されている。放電電極14では、複数段の放電線支持部50にそれぞれ配置される放電線60の本数が下側に位置する放電線支持部50から上側に位置する放電線支持部50へ向かって段階的に減少している。具体的には、本実施形態では、放電電極14には3段の放電線支持部50が設けられており、下段の放電線支持部50には12本の放電線60が配置され、中段の放電線支持部50には8本の放電線60が配置され、上段の放電線支持部50には5本の放電線60が配置されている。但し、放電電極14に設けられる放電線支持部50の段数及び、各放電線支持部50に配置される放電線60の本数は、それぞれ本実施形態のものに限定されない。
【0034】
集塵電極16は、図4及び図5に示されるように、複数個(本実施形態では、3個)の電極ユニット62、64、66を備えている。3個の電極ユニット62、64、66は、高さ方向に沿って積み重ねられた状態で一体に組立てられており、この組立状態で1個の集塵電極16を構成している。また3個の電極ユニット62、64、66は、ボルト等の締結部材(図示省略)により連結され集塵電極16として組立てられている。従って、集塵電極16は、前記締結部材による連結状態を解除することにより、3個の電極ユニット62、64、66に分解することも可能になっている。
【0035】
ここで、高さ方向(矢印H方向)は、帯電流路58内におけるガスGの流れ方向と略一致している。また3個の電極ユニット62、64、66は、それぞれ高さ方向H及び長手方向Lに沿って放電電極14における3段の放電線支持部50と略同一位置に配置されている。これにより、下段の電極ユニット62のメッシュフィルタ30は下段の放電線支持部50に正対し、中段の電極ユニット64のメッシュフィルタ30は中段の放電線支持部50に正対し、上段の電極ユニット66のメッシュフィルタ30は上段の放電線支持部50に正対する。
【0036】
電極ユニット62、64、66におけるメッシュフィルタ30には、それぞれ複数個の凹形状部68が形成されている。ここで、図8(C)に示されるように、下段の電極ユニット62のメッシュフィルタ30には、下段の放電線支持部50における複数本の放電線60とそれぞれ対向する部位に凹形状部68が形成されている。また図8(B)に示されるように、中段の電極ユニット64のメッシュフィルタ30には、中段の放電線支持部50における複数本の放電線60とそれぞれ対向する部位に凹形状部68が形成されている。また図8(A)に示されるように、上段の電極ユニット66のメッシュフィルタ30には、上段の放電線支持部50における複数本の放電線60とそれぞれ対向する部位に凹形状部68が形成されている。
【0037】
各電極ユニット62、64、66における凹形状部68は、高さ方向Hに沿って細長く形成されており、長手方向Lのピッチが放電線支持部50における放電線60のピッチと実質的に一致している。また凹形状部68は、高さ方向Hに沿った寸法が放電線60の長さと略等しくなっている。
凹形状部68は、メッシュフィルタ30の一部がプレス加工等により凹状に湾曲されることにより成形されている。ここで、凹形状部68は、図9(A)に示されるように、対向位置にある1本の放電線60を中心軸(曲率中心線)とするように円弧状に湾曲しており、凹形状部68では、その任意の部位(微小領域)から対向位置にある1本の放電線60までの距離(曲率半径R)が一定になっている。なお、凹形状部68は放電線60を曲率中心線として湾曲する形状が最も好ましいが、このような湾曲面に沿って複数箇所で屈曲された多角形形状としても良い。
【0038】
次に、上記のように構成された電気集塵装置10によるガスGに対する集塵処理について説明する。
焼却炉、溶解炉、発電ボイラ、金属溶解炉等の産業装置の操業時には、電気集塵装置10は、排出ダクト26の途中に配置された誘引ファン(図示省略)を作動させる。これにより、誘引ファンに対して産業装置側の空間である導入ダクト22、ケーシング12及び排出ダクト26の上流側がそれぞれ負圧状態となって、産業装置が発生した塵状体Pを含むガスGが導入ダクト22を通してケーシング12の内部に吸引される。
【0039】
ここで、ケーシング12内の空間のうち、ホッパ18の内側部分は、図2に示されるように、ガス導入口20からケーシング12内に流入したガスGの分配室90とされており、この分配室90に流入したガスGは、複数本(本実施形態では、4本)の帯電流路58にそれぞれ分配されて流入する。
【0040】
帯電流路58に流入したガスGは、誘引ファンが発生する負圧の作用により全体としては、帯電流路58の下端(開口端)から上端(閉塞端)へ向かって流れる。但しガスGは、慣性の作用によって帯電流路58の入口から奥側へ向う速度成分も有している。このとき、帯電流路58内には、放電電極14が配置されており、放電電極14の放電線60には高圧電源(図示省略)により駆動電圧が印加されている。これにより、帯電流路58内では、放電線60が発生するコロナ放電の影響により、この放電線60から集塵電極16のメッシュフィルタ30側へ流れるイオン流IJ(図6参照)が形成されると共に、図7に示されるように、ガスGに含まれる塵状体Pに電荷Cが付与されて所定の極性に帯電される。このため、帯電流路58内を流れるガスG及び塵状体Pは、帯電流路58内を流れつつ、静電気力EFによりメッシュフィルタ30へ引き寄せられる。これにより、塵状体Pはメッシュフィルタ30の内部を通過して内部流路44、46、48内に流入する。
【0041】
ここで、メッシュフィルタ30は、所定極性に帯電された塵状体Pに対して静電的に吸着力を作用させるので、ガスGがメッシュフィルタ30を通過する際には、ガスG中の塵状体Pは、メッシュフィルタ30の外部表面に吸着されると共に、メッシュフィルタ30を通過する際に、メッシュフィルタ30内部の微小間隙(内部表面)にもトラップされる。従って、ガスGがメッシュフィルタ30を通過することにより、メッシュフィルタ30によりガスGに含まれる塵状体Pを効率良く除去でき、メッシュフィルタ30からは、塵状体Pが除去されて清浄化されたガスGが内部流路44、46、48内へ送り込まれる。
【0042】
内部流路44、46、48内に送り込まれたガスGは、図2に示されるように、集塵電極16の排出口45、47、49(図4参照)を通して集合室33内に流入する。集合室33の上端部にはガス排出口24が開口していることから、集合室33内に流入したガスGは、ガス排出口24を通して排出ダクト26へ排出され、この排出ダクト26から必要に応じてガスGに対して他の処理を行う装置へ送り込まれ、あるいは他の処理を行うことなく大気中に放出される。
【0043】
本実施形態に係る電気集塵装置10では、ケーシング12内の分配室90に流入したガスGは、複数の帯電流路58に分配され、各帯電流路58から集塵電極16のメッシュフィルタ30を通して内部流路44、46、48へ流入した後、排出口45、47、49を通して集合室33へ排出される。
これにより、ケーシング12内に流れ込んだガスGを単位体積当りの表面積が極めて大きいメッシュフィルタ30を通過させた後、装置外部へ排出できるので、集塵電極16及びケーシング12の寸法を特定の方向へ長くしなくても、帯電された塵状体Pを含むガスGと集塵電極16(メッシュフィルタ30)との接触面積を効率的に増大させることができる。
【0044】
また、例えば、ガスG中における塵状体Pの濃度や粒径に応じてメッシュフィルタ30のメッシュ数や、メッシュの織り方を適宜選択するようにすれば、静電的な吸着力に加え、メッシュフィルタ30自体による濾過作用によってもガスG中に含まれる塵状体Pを除去できることから、塵状体Pの含有率が高いガスGを集塵処理する際に、装置全体として集塵効率を向上できる。
【0045】
また電気集塵装置10では、ケーシング12の分配室90から帯電流路58内に送り込まれたガスGがメッシュフィルタ30までへ移動し、メッシュフィルタ30を通過して内部流路44、46、48へ流れ込む。このとき、塵状体Pに作用する静電的な力の方向と、ガスGの流れの方向が実質的に一致しているので、メッシュフィルタ30による集塵を確実かつ効率良く行える。
【0046】
また電気集塵装置10では、3個の電極ユニット62、64、66における各メッシュフィルタ30における放電線60との対向部に、この放電線60を曲率中心とするように円弧状に湾曲した凹形状部68が形成されている。これにより、図9(A)に示されるように、放電線60から凹形状部68における任意の部位までの距離が一定(=曲率半径R)となり、放電線60と凹形状部68との間に電界EDの分布状態が略均一となる空間(帯電空間SC)を形成できるので、この帯電空間SCA内ではガスG中に含まれる塵状体Pを効率的に帯電できる。
【0047】
この結果、電気集塵装置10全体としての塵状体Pに対する帯電効率を向上できるので、装置の寸法増加及び電力消費を抑制しつつ、ガスG中に含まれる塵状体Pに対する集塵能力を効率的に向上できる。
一方、図9(B)に示されるように、凹形状部68がメッシュフィルタ30における放電線60との対向部に形成されていない場合、放電線60からメッシュフィルタ30の対向部までの距離が長手方向Lの位置に応じて変化する。これにより、放電線60からメッシュフィルタ30の対向部までの距離変化に従って、放電線60とメッシュフィルタ30の対向部との間の空間における電界EDの分布状態が変化するので、この空間内では帯電空間SCと比較して、ガスG中に含まれる塵状体Pに対する帯電が不均一になり、集塵電極16による捕集効率が低下する。
【0048】
また電気集塵装置10では、複数段(3段)の放電線支持部50を有する放電電極14を帯電流路58に配置すると共に、複数段の放電線支持部50にそれぞれ配置された放電線60の本数を下端側から上端側へ向かって段階的に減少させている。これにより、放電線60が発生するコロナ放電量が帯電流路58における下端側では多くなり、上端側へ向かって徐々に減少するので、帯電流路58における電荷エネルギの分布を、電荷エネルギの分布を下端側で高く、上端側へ向かって徐々に低いものにできる。一方、帯電流路58内ではガスGが全体としては下端側から上端側へ向かって流れつつ、このガスGに含まれる塵状体Pが徐々にメッシュフィルタ30により吸着除去されて、ガスG中の塵状体Pの含有率が徐々に低下する。
【0049】
この結果、帯電流路58内における高さ方向Hに沿った電荷エネルギ分布をガスG中に含まれる塵状体Pの含有率に対応するものできるので、塵状体Pの含有率が少ない領域で過剰なコロナ放電を発生させ、無駄な電力を消費することを防止できるので、電力エネルギの使用効率を向上できる。
また、集塵効率を低下させることなく、放電電極14全体での放電線60の個数を減少でき、集塵電極16全体での凹形状部68の個数を減少できるので、
凹形状部68を有するメッシュフィルタ30の作製も容易になる。
【0050】
次に、本実施形態に係る電気集塵装置10のメンテナンスを行う場合について説明する。電気集塵装置10では、所定の間隔毎に集塵電極16を槌打ちすることで、集塵電極16が捕集した塵状体Pを払い落とすと共に、定期的にケーシング12の内部を清掃する必要がある。また、腐食、経年劣化等により集塵電極16が破損した場合には、集塵電極16を補修又は交換する必要がある。
【0051】
電気集塵装置10では、集塵電極16が複数(本実施形態では、3個)の電極ユニット62、64、66が一体に組み立てられて構成され、かつ複数の電極ユニット62、64、66に分解可能とされている。
これにより、集塵電極16を補修し、又は交換する場合や、ケーシング12内の清掃作業を行う場合には、ケーシング12の内部で集塵電極16を複数の電極ユニット62、64、66に分解し、電極ユニット62、64、66毎にケーシング12内から取り出すことができるので、集塵電極16を分解することなく、そのままでケーシング12内から取り出す場合と比較し、ケーシング12内から集塵電極16を取り出す際の作業員の作業負荷を軽減でき、かつ集塵電極16をケーシング12内に組付ける際の作業負荷も軽減できる。
【0052】
この結果、本実施形態の電気集塵装置10のように、集塵電極16として比較的嵩が大きくなり、重量が増大しがちなボックス構造のものを用いても、集塵電極16を複数の電極ユニット62、64、66に分割して、ハンドリング及び組付作業を行えるので、電気集塵装置10のメンテナンス性を非常に良好にできる。
なお、本実施形態の電気集塵装置10では、集塵電極16として電極ユニット62、64、66からなる3分割構造のものを用いたが、2分割又は4分割以上に分割可能な集塵電極を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 電気集塵装置
12 ケーシング
12B 後板部
12F 前板部
14 放電電極
16 集塵電極
18 ホッパ
19 フランジ部材
20 ガス導入口
22 導入ダクト
24 ガス排出口
26 排出ダクト
28 収納部
30 メッシュフィルタ
33 集合室
34 支持フレーム
36 閉塞板
38 上側閉塞板
40 下側閉塞板
42 上側隔壁部
43 下側隔壁部
44、46、48 内部流路
45、47、49 排出口
50 放電線支持部
52 連結材
54 吊下管
55 高圧ケーブル
58 帯電流路
60 放電線
61 放電突起
62、64、66 電極ユニット
68 凹形状部
90 分配室
100 ケーシング
102 ガス導入口
104 ガス排出口
106 放電電極
108 集塵電極
C 電荷
G ガス
IJ イオン流
P 塵状体
SCA 帯電空間
SCB 帯電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中に含まれる塵状体を静電的な力により捕集する電気集塵装置において、
ガスが内部を流通するケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、複数本の放電線が設けられた放電電極と、
前記ケーシング内に配置され、一端部に排気口が開口したボックス状に形成されると共に、内外空間を区画する隔壁部の少なくとも一部が金属製のメッシュフィルタにより形成された集塵電極と、
前記放電電極と前記集塵電極との間に駆動電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記ケーシング内におけるガスの流れを、前記メッシュフィルタを通して前記集塵電極の内部へ流入した後、前記排気口を通して前記集塵電極の外部へ排気されるように制御すると共に、
前記メッシュフィルタにおける前記放電線との対向部に、該放電線を曲率中心とするように円弧状に湾曲した凹形状部を形成したことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記放電電極は、前記ガスの流れ方向に沿って配列される3個以上の連結材及び、前記ガスの流れ方向に沿って隣接する一対の前記連結材の間に掛け渡される複数本の前記放電線を有しており、
一対の前記連結材の間に掛け渡される前記放電線の本数を、前記ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へ向かって段階的に減少させたことを特徴とする請求項1記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記集塵電極は、前記排気口及び前記メッシュフィルタがそれぞれ設けられた複数の電極ユニットが前記ガスの流れ方向に沿って積み重ねられて構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−207676(P2010−207676A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54805(P2009−54805)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】