説明

電気集塵装置

【課題】固定部の空気層開口から水や油などの異物の浸入を防ぐことでラミネートフィルムの剥れがないだけでなく、電圧印加極板にラミネートフィルムを貼り付ける際の作業性にも優れ、品質・性能ともに安定した電気集塵装置を提供する。
【解決手段】集塵部の電圧印加極板13を、電気絶縁性のあるラミネートフィルム24で両面から貼り合せて覆うとともに、電圧印加極板13の周囲にラミネートフィルム24同士を貼り合せる貼り代31を設け、この貼り代31から電圧印加極板13の固定部23を露出させ、この露出した固定部23の固定部出口30端部に電圧印加極板13と貼り代31の厚さ差によってできた空気層の空気層開口にシール材を設けることで、空気層開口からの異物(水や油など)の浸入によるラミネートフィルム24の剥れを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊粒子である塵埃などを捕集する電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭用や業務用では空気清浄機や分煙機器、産業用ではトンネル換気用集塵装置やオイルミスト除去装置として、大気中の浮遊物(粉塵やオイルミスト・煙など)に電荷を与えることで、居室内やトンネル内・工場内で発生する大気中の浮遊物(塵埃やオイルミスト・煙など)を捕集する電気集塵装置が採用されていることは周知のとおりである。また、集塵方式としては、一般的にフィルター(機械)式、静電フィルター式、電気式などが知られている。フィルター(機械)式は高性能ではあるが、使用するにつれて目詰まり(圧力損失増大)により処理風量が低下し、静電フィルター式は集塵性能が低いなどの性能上の課題がある。これに対して電気式は集塵性能が比較的高く、使用していても圧力損失による風量の低下が少なく、洗浄による再利用もできる等の理由により将来的な需要増が期待されている。
【0003】
そして、かかる用途の電気集塵装置の集塵部においては、電圧印加極板と接地極板の間に埃やゴミが堆積することで極板間の絶縁破壊によるスパークが発生し、このスパークのエネルギーによって埃やゴミに着火し、機器からの発煙・発火という安全上の課題があった。
【0004】
そこで、最近では電極板を絶縁樹脂で一体成形したものや、絶縁フィルムで電極板をラミネートし電圧印加極板と接地極板の間に埃やゴミが堆積してもスパークしにくいことを特徴とした電気集塵装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平8−112553号公報
【特許文献2】特許第2780906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気集塵装置の集塵部においては、スパーク対策として電圧印加極板を絶縁樹脂で一体成形する方法や電圧印加極板を絶縁フィルムでラミネートする方法があるが、電圧印加極板を絶縁樹脂で一体成形する場合、成形加工するにあたり大掛かりな樹脂成型設備が必要なる。また、電圧印加極板の寸法精度の影響などにより樹脂の厚さを均一にすることが非常に難しく、厚さが厚くなると集塵性能が悪くなり、薄くなると絶縁破壊が起こり、スパークが発生する可能性があった。
【0007】
また、絶縁フィルムで電圧印加極板をラミネートする場合、ラミネートフィルムの貼り代と電圧印加極板端部の間にできる段差によって空気層ができ、固定部の空気層の開口から水や油などの異物が浸入し、ラミネートフィルムの剥れの原因になるという課題や、電圧印加極板の周囲は外力による電圧印加極板端部の損傷、ラミネートフィルムを貼り合せる際の加工上のズレによる電圧印加極板露出によって絶縁不良を起こしやすいという課題があった。
【0008】
さらに、ラミネートフィルムを電圧印加極板に貼り付ける際、常温接着性の接着剤が色々な所にくっつくことで接着位置が定まり難かったり、電圧印加極板とラミネートフィルムの間の空気が残ってしまったり、固定部を露出させる際に接着剤が固定部に残ってしまい導通不良を起こすなどの課題があった。
【0009】
そこで本発明は、厚みを均一にできるラミネート式とし、固定部の空気層開口から水や油などの異物の浸入を防ぐことでラミネートフィルムの剥れがないだけでなく、電圧印加極板にラミネートフィルムを貼り付ける際の作業性にも優れ、品質・性能ともに安定した電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明は、電圧印加極板と接地極板との間でコロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、この下流側に設けた前記イオン化部で帯電された塵埃等を捕集する集塵部からなる電気集塵装置において、前記集塵部の電圧印加極板を、電気絶縁性のあるラミネートフィルムで両面から貼り合せて覆うとともに、前記電圧印加極板の周囲に前記ラミネートフィルム同士を貼り合せる貼り代を設け、前記電圧印加極板の端部より突出させて形成した固定部を前記ラミネートフィルムの前記貼り代から露出させ、この露出した前記固定部の固定部出口端部にできた空気層開口にシール材を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
この手段により、ラミネートフィルムの貼り代と電圧印加極板の境界に電圧印加極板の厚みの段差によってできた空気層にシール材が入り込むことで、空気層開口からの異物(水や油など)の浸入を防ぎ、ラミネートフィルムを剥れ難くくすることができる。また、貼り代を周囲に設けることで、貼り代部分で電圧印加極板の端部を外力による損傷から守ることができるだけでなく、多少の加工上のズレが発生してもズレ以上に貼り代を設けることで、電圧印加極板の露出による絶縁不良を防ぐことのできる電気集塵装置および製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0012】
電圧印加極板と接地極板との間でコロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、この下流側に設けた前記イオン化部で帯電された塵埃等を捕集する集塵部からなる電気集塵装置において、前記集塵部の電圧印加極板を、電気絶縁性のあるラミネートフィルムで両面から貼り合せて覆うとともに、前記電圧印加極板の周囲に前記ラミネートフィルム同士を貼り合せる貼り代を設け、前記電圧印加極板の端部より突出させて形成した固定部を前記ラミネートフィルムの前記貼り代から露出させ、この露出した前記固定部の固定部出口端部にできた空気層開口にシール材を設けることにより、ラミネートフィルムの貼り代と電圧印加極板の境界に電圧印加極板の厚みの段差によってできた空気層にシール材が入り込むことで、空気層開口からの異物(水や油など)の浸入を防ぎ、ラミネートフィルムを剥れ難くくすることができる。また、貼り代を周囲に設けることで、貼り代部分で電圧印加極板の端部を外力による損傷から守ることができるだけでなく、多少の加工上のズレが発生してもズレ以上に貼り代を設けることで電圧印加極板の露出による絶縁不良を防ぐことのできる電気集塵装置および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1による電気集塵装置の概略と風の流れを示した図
【図2】同装置集塵部の集塵部Aを示す斜視図
【図3】同装置の集塵部Aまたは集塵部Bの分解斜視図
【図4】同装置の集塵部Aまたは集塵部Bの分解斜視図(図3の別方向)
【図5】同装置集塵部の回路図
【図6】同装置集塵部の電圧印加極板を示す図
【図7】同電圧印加極板の固定部を示す部分斜視図
【図8】同電圧印加極板の固定部にシール材を設ける位置を示す部分詳細図
【図9】同電圧印加極板の固定部にシート状のシール材を設ける位置を示す部分詳細図
【図10】同電圧印加極板の固定部端部にシール材を注入する様子を示す斜視図
【図11】同電圧印加極板のラミネートフィルムの貼り代を熱プレスしている様子を示す断面図
【図12】同ラミネートフィルムの貼り代を熱プレスする際にできる浮上がり空気層を示す断面図
【図13】同ラミネートフィルムの貼り代と電圧印加極板の縁部も同時に押えた様子を示す断面図
【図14】同ラミネートフィルムの貼り代を残してカットするカットラインを示した図
【図15】同電圧印加極板とラミネートフィルムの間の空気を外へ出す様子を示した図
【図16】同熱プレスで仮接着あるいは真空熱プレスを行なう際、シール材を置いた状態を示した図
【図17】同真空熱プレスを行なう際に溶けたシール材が空気層に流れ込む様子を示した図
【図18】同ラミネートフィルムの貼り代を残してカットし、固定部を露出させる様子を示した図、(a)固定部を示す図、(b)カットされたラミネートフィルムを示す図
【図19】同固定部をマスキングして熱プレスした後、外形をカットして固定部を露出させる様子を示した図、(a)固定部を示す図、(b)カットされたラミネートフィルムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求項1記載の発明は、電圧印加極板と接地極板との間でコロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、この下流側に設けた前記イオン化部で帯電された塵埃等を捕集する集塵部からなる電気集塵装置において、前記電圧印加極板は、導電性を有する金属製の極板本体の両面に電気絶縁性のあるラミネートフィルムを貼り合せて構成し、前記ラミネートフィルムは、その周囲に前記ラミネートフィルム同士を貼り合せる貼り代を設け、さらに、前記極板本体には、この極板本体の端部より突出した前記電圧印加極板の固定部を設け、この固定部は、前記ラミネートフィルムの貼り代より露出させ、この露出した前記固定部の貼り代からの出口部分にできた前記ラミネートフィルム間にシール材を設けたものであり、電圧印加極板を両面からラミネートフィルムを貼り付けると、ラミネートフィルムの貼り代と電圧印加極板の境界に電圧印加極板の厚みの段差によってできた空気層にシール材が入り込むことで、空気層開口からの異物(水や油など)の浸入を防ぎ、ラミネートフィルムを剥れ難くくすることができる。また、貼り代を周囲に設けると、この貼り代部分によって電圧印加極板の端部を外力による損傷から守ることができる。さらに、多少の加工上のズレが発生してもズレ以上に貼り代を設けているため、電圧印加極板の露出による絶縁不良を防ぐことができるという作用を有する。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1に示すように、電気集塵装置1は、処理する空気に対して上流側のイオン化部2と下流側の集塵部3で構成されている。集塵部3は、集塵部A3aと集塵部B3bで構成され、風が電圧印加極板13や接地極板14と平行に流れるように並べられている。また、図2から図4に示すように、この集塵部A3a・集塵部B3bは、それぞれ大きく分けてステンレス材主体の電圧印加極板群16とアルミニウム材主体の接地極板群17で構成されている。
【0017】
電圧印加極板群16は、風下側を電圧印加極板保持枠7の3本の横保持枠22に電圧印加極板13をリベット26で等間隔に固定して構成されている。また、フレーム4は、フレーム固定バーA20を風下側のフレーム4間に渡し、フレーム固定バーB21は風上側のフレーム4間の上部と下部に渡して構成されている。接地極板群17は、このフレーム固定バーA20とフレーム固定バーB21に風方向と平行になるようにリベット26で等間隔に配して構成されている。そして、接地極板群17の2本のフレーム固定バーB21間に設けた電圧印加極板群挿入口28から電圧印加極板群16の電圧印加極板13の風上側を差し込むことで電圧印加極板13と接地極板14が交互に一定の間隔を保持して配する形となる。集塵部A3aと集塵部B3bそれぞれの左右両端のフレーム4には上下に各2個の絶縁碍子5が取り付けられ、この絶縁碍子5に給電バー9が固定されている。
【0018】
電圧印加極板13は、図6から図8に示すように、電圧印加極板保持バー18(図6〜8には図示せず)を挿入する固定部23を突出させて形成している。この固定部23の先端には、電圧印加極板保持バー18を上下で挟む形で突出部25を設けている。また、電圧印加極板13は、固定部23以外の表面を絶縁材料でできたラミネートフィルム24(例えばPP・PET・フッ素樹脂など)で両面から貼り合せて覆われている。さらに、電圧印加極板13の周囲にはラミネートフィルム24同士を貼り合せる貼り代31を設ける。固定部23は、電圧印加極板保持バー18で固定されるため、ラミネートフィルム24からはみ出した状態となる。すなわち、固定部23のラミネートフィルム24からの出口(固定部出口30)では、電圧印加極板13の厚み分の空気層33ができることになる。この貼り代31からの固定部出口30の空気層33に有色のシール材29を設ける。このシール材29は、熱を加えると軟化あるいは溶解して接着あるいはシールできるエチレン酢酸ビニル重合体を主成分としたホットメルト(熱可塑性接着剤)を使用している。また、ラミネートフィルム24と電圧印加極板13の接着は、ラミネートフィルム24の接着面に熱溶着性の接着剤が設けられている。この時、ラミネートフィルム24の接着剤は、シール材29(ホットメルト)の熱溶融温度より高く設定されている。
【0019】
ラミネートする際の工程は、大きく分けて6つの工程に分けられる。
1)ラミネートフィルム24を電圧印加極板13より大きくカットし、2枚のラミネートフィルム24の接着面を内側にして重ね、間に電圧印加極板13を入れる。(図14)
2)固定部出口30のラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間にホットメルト(熱可塑性接着剤)を塗布する。
3)ラミネートフィルム24の接着定格よりも温度や時間・圧力を低く設定して仮接着を行なう。
4)ラミネートフィルム24の周囲の貼り代31を残して外形をカットする。この時、固定部23を覆っているラミネートフィルム24もカットすることで、正確に固定部23を露出させることができる。(図6)
5)ラミネートフィルム24の接着定格条件(温度・圧力・時間)で本接着(熱プレス)を行なう。
6)最後にラミネートの貼り代31のみを接着定格条件(温度・圧力・時間)で本接着(熱プレス)を行なう。
【0020】
そして、この電圧印加極板13は、重ね並べて電圧印加極板群16を構成する。図3,4に示すように、電圧印加極板13と接地極板14とが交互に、かつ、平行になるように、電圧印加極板群16を接地極板群17に挿入するようにして集塵部A3a・集塵部B3bが構成される。電圧印加極板13の端部(固定部23)には、挿入方向反対側から櫛状の極板スリット27を有した電圧印加極板保持バー18が差し込まれる。逆の挿入口(電圧印加極板群挿入口28)側では、接地極板14の端部に、挿入側から櫛状の極板スリット27を有した接地極板保持バー19を差し込むことで接地極板14を保持する。給電縦バー8は、フレーム4上下の絶縁碍子5に取り付けられた給電バー9を連結する形で設けられる。さらに、集塵部A3a、集塵部B3bの風向と平行な一方の側面には、電圧印加極板保持枠7と給電縦バー8を渡す形で給電板6が設けられている。また、図示しないが、他方の側面の下部には電圧印加極板保持枠7と給電縦バー8を渡す形で給電補助板が設けられ、集塵部A3a、または集塵部B3bのどちらか一方の給電補助板には、給電補助バネが設けられている。集塵部A3a、集塵部B3bは、給電補助板同士が向かい合うように設置され、給電補助バネを介して給電補助板が電気的に接続されることになる。そして、図5に示すように、電気的な接続は、フレーム4はアース15に接続され、給電板6は高電圧発生装置12に接続された構成となっている。
【0021】
上記構成により、イオン化部2を設けた側を風上側として、粉塵等を含んだ汚染空気を流入させるが、その動力としては電気集塵装置1の風下側に設けた送風機などにより吸引する方式をとると、送風機の汚れ等を考えると最も良い方法であると言える。そして高電圧発生装置12に電気を供給すると、イオン化部2に直流−8kV、集塵部3に直流−8kVの高電圧が印加され、イオン化部2の異極間でコロナ放電が発生する。これにより、汚染空気の粉塵等に電荷が与えられ、帯電した状態で集塵部3内に流入する。
【0022】
集塵部3の集塵部A3aでは、給電板6に印加された高電圧は電圧印加極板保持枠7から横保持枠22や給電縦バー8から電圧印加極板保持バー18を通じて電圧印加極板13の固定部23から給電される。また、集塵部A3aの給電補助板に設けた給電補助バネが集塵部B3bの給電補助板に接触することで高電圧が集塵部B3bにも印加される。すなわち、集塵部B3bにおいても、集塵部A3aと同様に、電圧印加極板保持枠7から横保持枠22や給電縦バー8から電圧印加極板保持バー18を通じて電圧印加極板13に給電される。一方、アース15側は集塵部A3a・集塵部B3b共に接地極板14からフレーム固定バーA20やフレーム固定バーB21・接地極板保持バー19を通じてフレーム4に導通されてアース15を介して接地される。そして、電圧印加極板13と接地極板14の間を汚染空気が流れようとした場合、クーロン力によって粉塵等が接地極板14側に吸着捕集される。
【0023】
この電圧印加極板13は、固定部23以外をPP・PET・フッ素樹脂などの表面抵抗率の高い絶縁材で覆われているため、もし埃やゴミが極板に堆積しても接地極板14との間でのスパークを防ぐものである。
【0024】
また、図7、8に示すように、上記の製造方法によれば、ラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の段差によってできる空気層には、シール材29が入り込むことになる。従って、ラミネートフィルム24間には、外から水や油などの異物が浸入を防ぎ、ラミネートフィルム24が剥れ難くなる。このシール材29は、熱を加えることによって軟化あるいは溶解する材料を使用しているため、シール材29が熱によって溶けて所定の位置に塗布でき、位置合せ時や塗布時に他の部分への付着を防ぐこととなる。
【0025】
図9に示すように、熱プレスする前にシール材29を入れておくことでシール材29が入れやすくなる。また、ラミネートフィルム24とシール材29を熱プレスする際に同時に溶着させることができるため、空気層33への浸透が良く封止状態の確実性を上げることができる。
【0026】
また、シート状のシール材29(シート状ホットメルト)を必要な大きさにカットし、あらかじめラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の段差部分に置いておくと、熱プレスの加熱によりシール材29が溶ける。これにより、ラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の段差によってできる空気層33に入り込む。シート状のシール材29は、液状でないため、塗布時に他の部分への付着がなくなり、作業性が良くなるだけでなく一定量のシール材29を一定の位置に塗布できるため品質的にも安定する。なお、本文ではシール材29をホットメルトとしたが、ウレタン系やゴム系のスポンジ状のパッキンでも熱プレスにより圧縮した状態でラミネートされるため、効果は同じである。
【0027】
また、図10に示すように、シール材29は安価で汎用性・入手性のあるホットメルト(熱可塑性接着剤)にすることにより、低コストで作業性も良くなる。さらに、シール材29は有色にしたので、ラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の段差によってできる空気層開口38の封止状態を目視で容易に確認でき、作業漏れも少なくなる。
【0028】
また、ホットメルト(熱可塑性接着剤)は、ラミネートフィルム24が接着した後に、固定部出口30の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の空気層33にホットメルトガン32で注入する。そのため、熱プレスの圧力によって貼り代31内に広がることなく、必要な空気層33部分だけにホットメルト(熱可塑性接着剤)を注入できる。また、ラミネートフィルム24の貼り代31の接着強度低下による剥れも防ぐこととなる。なお、本文ではシール材29をホットメルトとしたが、空気層を封鎖できれば良いため、液体のコーキング剤やシール材でも効果は同じである。
【0029】
また、電圧印加極板13の周囲の貼り代31によって端部に外力が加わることによる損傷を防ぐ。また、多少の加工上のズレが発生してもズレ以上に貼り代31を設けているため、電圧印加極板13が露出して絶縁不良を起こすことを防ぐこととなる。ラミネートフィルム24の接着剤は、熱溶着性で熱を加えないと接着しないため、接着位置が定まりやすく作業性が良くなる。
【0030】
また、図11に示すように、電圧印加極板13面を先に熱プレスでプレスした後、ラミネートフィルム24の貼り代31を熱プレスする。この方法によれば、電圧印加極板13面とラミネートフィルム24の間の空気を外部に押し出すことになるため、電圧印加極板13面とラミネートフィルム24の間には空気溜まり39はできない。これにより、電圧印加極板13面とラミネートフィルム24の間の空気溜まり39による見栄えや集塵性能の悪化を防ぐことができる。
【0031】
さらに、図12に示すように、ラミネートフィルム24の貼り代31をプレス金型34で熱プレスした際には、電圧印加極板13とラミネートフィルム24の段差(厚み差)によってラミネートフィルム24を貼り代31側に押し下げることになる。この時、電圧印加極板13の端部が支点となって電圧印加極板13の端部内側のラミネートフィルム24が浮き上がり、浮上がり空気層36を形成してしまう。しかし、図13に示すように、ラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13の縁を段付きプレス金型35により同時に熱プレスすることで浮き上がろうとするラミネートフィルム24を強制的に押さえ込み、浮上がり空気層36の形成を防ぐことができる。
【0032】
また、集塵部3の接地極板14はアルミ二ウム材とし、電圧印加極板13をステンレス材としているため、強度を保ちながら薄くできるため、ラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の段差を小さくでき、空気層33も小さく抑えられる。
【0033】
また、図14に示すように、電圧印加極板13全体を電圧印加極板13より一回り大きめのラミネートフィルム24で両面から覆って貼り合せて、その後、周囲にラミネートフィルム24同士を貼り合せる貼り代31を残してカットする。そのため、電圧印加極板13と二枚のラミネートフィルム24の位置ズレが無くなる。さらに、ラミネートフィルム24を電圧印加極板13に重ね、仮接着した後、定格温度・圧力を加えて本接着を行なうことで、電圧印加極板13面とラミネートフィルム24の間の空気溜まり39ができにくくなる。また、ラミネートフィルム24を電圧印加極板13に重ね、仮接着した後、周囲にラミネートフィルム24同士を貼り合せる貼り代31を残して電圧印加極板13形状にカットすることで、仮接着のまだ強く接着されていない段階で固定部23のラミネートフィルム24をカットするため、固定部23のラミネートフィルム24が剥がしやすくなり、固定部23を露出の加工が容易になる。
【0034】
また、高電圧印加側である電圧印加極板群16は、主材料をステンレス材、それ以外(接地極板群17)を、アルミ材を主材料としており、絶縁碍子5によって接地極板群17やフレーム4などから完全に絶縁されるため、軽量化を図りながら強度を向上させることができ電腐で侵されることはない。
【0035】
また、ホットメルト(熱可塑性接着剤)の熱溶着温度をラミネートフィルムの接着剤の熱溶着温度と同じ、または低くしたので、ラミネートフィルムで電圧印加極板をラミネートする際の熱プレスの熱によりホットメルトも同時に溶け、作業工程を少なくできる。
【0036】
また、図15〜18に示すように、熱プレス方法を真空熱プレスにすることで、ラミネートフィルム24の貼り代31と電圧印加極板13端部の間の段差によってできる空気層33内が真空になり、余分な溶けたシール材29が空気層33内の隙間だけに吸い込まれ、広がることなく空気層33内を封止する。
【0037】
また、図19に示すように、固定部23をマスキング37して真空熱プレスすることで、ラミネートフィルム24が固定部23に直接接着されないため、ラミネートフィルム24を固定部23から剥がしやすくなる。さらに、固定部23に接着剤が残らないため導通不良がなくなることになる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の電気集塵装置およびその製造方法は、コロナ放電によって粉塵に電荷を与えて帯電させ、帯電した粉塵をクーロン力によって捕集する電気集塵装置に適用でき、特に家庭用や業務用では空気清浄機や分煙機器、産業用ではトンネル換気用集塵装置やオイルミスト除去装置などにおいても利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 電気集塵装置
2 イオン化部
3 集塵部
13 電圧印加極板
14 接地極板
23 固定部
24 ラミネートフィルム
29 シール材
30 固定部出口
31 貼り代
37 マスキング
38 空気層開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加極板と接地極板との間でコロナ放電を発生させて空気中の塵埃等に帯電させるイオン化部と、この下流側に設けた前記イオン化部で帯電された塵埃等を捕集する集塵部からなる電気集塵装置において、前記電圧印加極板は、導電性を有する金属製の極板本体の両面に電気絶縁性のあるラミネートフィルムを貼り合せて構成し、前記ラミネートフィルムは、その周囲に前記ラミネートフィルム同士を貼り合せる貼り代を設け、さらに、前記極板本体には、この極板本体の端部より突出した前記電圧印加極板の固定部を設け、この固定部は、前記ラミネートフィルムの貼り代より露出させ、この露出した前記固定部の貼り代からの出口部分にできた前記ラミネートフィルム間にシール材を設けたことを特徴とした電気集塵装置。
【請求項2】
前記シール材は、熱を加えることによって軟化あるいは溶解する材料である請求項1記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記シール材は、ホットメルト(熱可塑性接着剤)である請求項2記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記ラミネートフィルムは、透明な材料で、前記シール材は、有色の材料とした請求項1〜3いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記ラミネートフィルムの接着面に熱溶着性のフィルム接着剤を設け、熱プレスにて適当な熱と圧力を加えてラミネートしたことを特徴とした請求項1〜4いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項6】
真空熱プレスでラミネートした請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
真空熱プレスで熱プレスする際、あらかじめ前記固定部をマスキングしておくことを特徴とした請求項6記載の電気集塵装置。
【請求項8】
前記シール材の熱溶着温度を前記フィルム接着剤の熱溶着温度以下にしたことを特徴とした請求項5〜7いずれかひとつに記載の電気集塵装置。
【請求項9】
接着面を内側に向けた二枚の前記ラミネートフィルムの間に前記極板本体を入れ、前記固定部が露出する部分の貼り代に前記シール材を塗布した状態で熱プレスする請求項5〜8いずれかひとつに記載の電気集塵装置。
【請求項10】
前記シール材を、シート状とした請求項9記載の電気集塵装置。
【請求項11】
前記固定部が露出する部分の貼り代に、熱プレス後に前記シール材を注入する請求項5〜7いずれかひとつに記載の電気集塵装置。
【請求項12】
前記極板本体部分を熱プレスでプレスした後、前記ラミネートフィルムの貼り代を熱プレスする請求項1〜11いずれかに記載の電気集塵装置および製造方法。
【請求項13】
前記極板本体部分を熱プレスでプレスした後、前記ラミネートフィルムの貼り代と電圧印加極板の縁を同時に熱プレスすることを特徴とした請求項1〜12いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項14】
前記接地極板をアルミ二ウム材とし、前記電圧印加極板をステンレス材とした請求項1〜13いずれかに記載の電気集塵装置および製造方法。
【請求項15】
前記電圧印加極板の極板本体全体を一回り大きめの前記ラミネートフィルムで両面から覆って貼り合せて、その後、周囲にラミネートフィルム同士を貼り合せる貼り代を残して電圧印加極板形状にカットしたことを特徴とした請求項1〜14いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項16】
前記ラミネートフィルムを前記電圧印加極板の極板本体に重ね、仮接着した後、定格温度・圧力を加えて本接着を行なうことを特徴とした請求項1〜15いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項17】
前記ラミネートフィルムを前記電圧印加極板に重ね、仮接着した後、周囲にラミネートフィルム同士を貼り合せる貼り代を残して電圧印加極板形状にカットしたことを特徴とした請求項16記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−247082(P2010−247082A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99826(P2009−99826)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】