説明

電気音響トランスジューサ用の膜体の特性を変更する方法及び装置

電気音響トランスジューサ用の膜体(1)を製造する方法及び装置において、当該手順は、例えば深絞りにより作製された膜体(1)が、少なくとも1つの表面上で、特にはプラスチック接着剤等の液状プラスチック(7)により少なくとも部分的に被覆され、この液状プラスチックが硬化されるようなものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する方法に関する。本発明は、更に、電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
電気音響トランスジューサ用の、特にはスピーカ用の(例えば携帯電話のための小型のスピーカ用の)膜体の製造に関しては、例えば深絞り加工により製造された現在得られる膜体の場合、益々高い音響圧が発生されるべきであるのに、斯様なスピーカが小さい場合、動作中に膜体がひずみ易い。その理由は、斯かる膜体の薄い膜状構造によると共に、比較的平らな膜状椀体によるもので、これは当該携帯電話のユーザにより音響的に知覚され得ると共に、破壊的であり、不快なものである。従って、狙いは、例えば深絞り加工されたプラスチック膜体により形成される薄い膜体を使用する場合にさえ、斯様な膜体の少なくとも部分的領域を一層剛性にして、スピーカ用の小さな膜体の場合にも必要な強度を提供することである。深絞り加工により製造されるような今日得られる膜体においては、所望の小さな寸法の場合、特に硬い膜中心部又は膜状椀体を作製するために所要の剛性を達成することは可能ではない。更に、深絞り加工によりスピーカ用の膜体を製造する場合、斯かる膜体に、例えば異なる材料厚さにより、異なる部分領域に異なる剛性特性を付与することは不可能であるか、又は容易に可能ではない。
【0003】
スピーカ用の、異なる剛性特性又は材料特性を有する膜体の製造に関しては、例えば国際特許出願公開第WO89/00372号から、多層膜体を製造することが知られており、斯かる多層膜体においては、形状を安定化させるために設けられた第1プラスチックフィルムに第2プラスチックフィルムが被着され、部分振動に対して所望の減衰特性を達成する。斯様な多層膜体の製造は極めて複雑であるのみならず、上下に配置されるべき又は互いに被着されるべきフィルムが全領域にわたり一定の材料厚さを有し、かくして一定の材料特性を有するという問題も存在する。従って、この既知の構成においても、異なる材料特性の部分領域を有するような膜体を製造することは可能ではない。
【0004】
スピーカ又は電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する方法に関しては、特許文献AT403751Bから、多段階製造方法において膜体の部分領域を固定すると共に、他の非固定部分領域に熱的及び/又は機械的応力を施し、これにより、当該膜体の異なる材料厚さの、従って異なる材料特性の部分領域を得ることも知られている。この方法も、製造の間に極めて複雑な方法ステップが必要とされる点で不利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述したタイプの方法及び上述したタイプの装置であって、上述した欠点が回避されるような方法及び装置を提供することであり、特には、電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する方法及び装置であって、狙った態様で影響を与える又は修正することが可能な材料特性(特には、剛性)を持つような、電気音響トランスジューサ用の膜体の素早い製造が、簡単な方法ステップ及び手段を用いて可能となるような方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する方法において、本発明によるフィーチャは、本発明による方法が下記を特徴とすることにより提供される。
【0007】
電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する方法において、特には接着特性を持つ液状プラスチックであるような少なくとも1つの液状プラスチックが当該膜体の少なくとも1つの表面の少なくとも部分領域に塗布され、該少なくとも1つの塗布された液状プラスチックが硬化される。
【0008】
上述した目的を達成するために、電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する装置において、本発明によるフィーチャは、本発明による装置が下記を特徴とすることにより提供される。
【0009】
電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する装置であって、膜体を保持する保持手段を有すると共に、特には接着特性を持つ液状プラスチックであるような少なくとも1つの液状プラスチックを上記膜体の少なくとも1つの表面の少なくとも部分領域に塗布するための少なくとも1つの塗布装置を有し、且つ、上記少なくとも1つの塗布された液状プラスチックを硬化させる硬化装置を有する。
【0010】
本発明による上記フィーチャを提供することは、簡単な方法ステップ及び手段を用いて、例えば深絞り加工により作製された膜体を、少なくとも1つの液状プラスチックにより、特には接着特性を有する液状プラスチックにより(即ち、プラスチック接着剤により)狙った態様で被覆することができることを意味する。該液状プラスチックは、硬化後に、当該電気音響トランスジューサ用の膜体材料の対応した所望の材料特性(特には、剛性)の変化を生じ、小さな寸法のものであるにも拘わらす、該電気音響トランスジューサの所望の音響特性を達成することができる。
【0011】
請求項2及び請求項12のフィーチャによれば、電気音響トランスジューサ用の膜体の表面の少なくとも部分領域の高速且つ均一な被覆を実行することができるという利点が得られる。
【0012】
請求項3及び請求項13のフィーチャによれば、電気音響トランスジューサの膜体における異なる材料特性を有すべき部分領域を、一様な材料特性を持つ膜体又は膜状フィルムから開始して、簡単且つ狙った態様で処理することができるという利点が得られる。例えば、電気音響トランスジューサの膜体の部分領域の、異なった剛性等の斯様な異なった材料特性は、この場合、所望の音響特性及び減衰特性を達成するために使用される。例えば、スピーカに軟らかい膜状フィルムを使用する場合、この膜状フィルムは高い温度感受性を有するので、斯様な膜体を備えるスピーカは相対的に狭い温度範囲内でしか使用することができないと推定される。対照的に、斯様な膜体が一層大きな堅さを達成すべく適切に被覆された場合、本発明により被覆された膜体を備えるスピーカの一層大きな使用温度範囲を達成することができ、その場合において、斯かる一層大きな使用温度範囲に加え、該膜体の一層大きな堅さの結果として、一層高い共鳴品質も可能となる。
【0013】
請求項4及び請求項16の対策によれば、当該膜体を被覆するために使用される液状プラスチック(特には、プラスチック接着剤)の急速且つ信頼性のある硬化を達成することができ、この場合、適切なアクリル接着剤(acrylate adhesive)を採用又は使用することができる。
【0014】
請求項5及び請求項19の対策によれば、当該膜体への液状プラスチックの塗布に続いて、該液状プラスチックの高信頼度の且つ一様な分配が加熱処理により補助され、かくして、後続の硬化過程において、各部分領域における一様な被覆を達成することができ、各々の場合において当該膜体の一様な材料特性を得ることができるという利点が得られる。
【0015】
請求項6及び請求項14の対策によれば、当該液状プラスチックを塗布するために、例えばノズル等の、一層小さな装置を使用することができ、この場合、被覆されるべき部分領域を、該液状プラスチックを塗布する少なくとも1つの塗布装置と当該膜体又は該膜体の保持手段との間に相対運動を生成することにより短時間内に一様に被覆することができるという利点が得られる。これに関連して、請求項5の対策によれば、特に円形膜体のための構造的に簡素な解決策が提供される。
【0016】
上に既述したように、本発明による方法及び本発明による装置を使用すれば、膜体に液状プラスチックを塗布するか又は膜体を液状プラスチックにより被覆することにより、該膜体に必要なら異なる部分領域において異なる材料特性を付与することが可能である。請求項7の対策によれば、被覆材料の異なる材料特性及び、恐らくは、被覆されるべき膜体の異なる表面凹凸(features)をも考慮することができるという利点が得られる。
【0017】
請求項8のフィーチャによれば、窪み(depressions)及び皺(creases)を伴って設計された斯様な膜体の場合、液状プラスチックを用いて一様な被覆を行った場合においてさえも、より長い滞留時間を維持することにより、より多くの量の被覆材料が斯かる窪みの底部の領域に集められることが可能になり、かくして、液状プラスチックの急速な被覆又は塗布にも拘わらず、上記窪み又は皺の領域における材料の一層大きな集積(これは一層長い滞留時間により得られる)により例えば一層高い減衰を達成することができるという利点が得られ、その場合において、塗布された液状プラスチックの厚さは個々の窪みの間の高い領域において最小化されるので、当該膜体の元々の特性は実質的に維持される。
【0018】
塗布されたプラスチックの厚さが異なるような部分領域の一設計に関連する、請求項17及び請求項18の対策によれば、短いサイクル又は速い手順にも拘わらず、簡単な手段を使用することが可能であるという利点が得られる。
【0019】
請求項9の対策によれば、特にはスピーカ等の電気音響トランスジューサの膜体の所望の(特には、機械的及び音響的)特性を、膜体のフィルム及び塗布されるべき液状プラスチック(即ち、被覆材料、特にはプラスチック接着剤)の両方の薄い材料厚により得ることができるという利点が得られる。この場合、該膜体は10μmと150μmとの間の範囲内の厚さを有することができる。
【0020】
請求項10のフィーチャによれば、例えば1種のプラスチック接着剤を用いて、選択された数の被覆処理に依存して、斯かる被覆処理の繰り返し数を選択することにより、当該膜体フィルムの部分領域において異なる材料特性を達成することができるという利点が得られる。
【0021】
本発明による上記対策は、電気信号を音に変換するための電気音響トランスジューサの場合に(即ち、スピーカに)使用することができるのみならず、これら対策は音を電気信号に変換するための電気音響トランスジューサに(即ち、マイクロフォンに)使用することもできる。
【0022】
本発明の上述した及び他の態様は、下記実施例から明らかとなり、これら実施例を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示される実施例を参照して説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0024】
図1は、スピーカ(図示略)用の膜体1を製造する装置DEVを示すもので、該図において当該スピーカの膜体1及び可動コイル2のみは断面で示されている。膜体1は、椀状の中央領域3と、(図4から明瞭に分かるように)皺折りされた領域4と、縁領域5とを有している。コイル2は、中央領域3と皺折り領域4との間の移行領域TRにおいて膜体1に接続されている。この時点において、膜体1は縁領域5により当該スピーカ(図示略)のケーシングCAに接続され、該ケーシングCAは膜体1を最終的に保持する保持手段を形成するもので、図1及び図2では1点鎖線により示されていることに注意されたい。
【0025】
膜体1に対して略中央に示されているものは液状プラスチック7(特には、プラスチック接着剤)を塗布するための塗布装置6であり、液状プラスチックを塗布する該塗布装置6は噴霧ノズル6Aにより形成されている。
【0026】
噴霧ノズル6Aの噴霧角又は開口角に依存して、膜体1の種々の部分領域が液状プラスチック7により、斯かる部分領域の、従って当該膜体1の達成されるべき特性の関数として被覆される。この場合において、噴霧ノズル6Aから第1噴霧領域7’に到来するプラスチック7は膜体1の中央領域3を被覆することを意図し、噴霧ノズル6Aから第2噴霧領域7”に到来するプラスチック7は膜体1の皺折り領域4を被覆することを意図するものである。
【0027】
実質的に回転が対称的である膜体1の均一な被覆のために、更に、膜体1は、矢印9により示すように、前記ケーシングCAを介して且つ駆動手段(図示略)により略中心軸8のまわりに回転するように駆動することができるようになされる。
【0028】
膜体1が液状プラスチック7により一旦被覆されたら、達成されるべき材料特性に依存する待ち時間に続いて、及び当該被覆処理に使用されるプラスチック7の特性の関数として、該プラスチック7は図3を参照して後に詳述するように硬化される。
【0029】
図2は、変形実施例によるスピーカ用の膜体1を製造する装置DEVを示している。
【0030】
図1に示した装置DEVとは異なり、図2に示す装置DEVにおいては、液状プラスチック7を塗布するための第1噴霧ノズル10が膜体1の中央領域3の内側ゾーンのために設けられるようになされる。更に、第2噴霧ノズル11が中央領域3と皺折り領域4との間の移行領域TRに液状プラスチック7を塗布するために設けられ、第3噴霧ノズル12が当該膜体1における皺折り領域4の表面に液状プラスチック7を塗布するために設けられる。
【0031】
膜体1の表面に液状プラスチック7を塗布するための塗布装置として複数の噴霧ノズル10、11及び12を設けることにより、製造されるべき膜体に対して恐らくは異なる液状プラスチックを選択することによって、スピーカ用の膜体の異なる材料特性を達成することができ、かくして、斯かるスピーカは異なる所要プロファイルに仕立てられる。ここでも、膜体1は中心軸8のまわりに矢印9の方向に回転駆動され得るので、膜体1の選択された部分領域の完全な被覆、例えば略円形の膜体1の皺折り領域4の全接線方向範囲に沿った噴霧ノズル12による該皺折り領域4の全表面被覆を、液状プラスチック7を塗布するための適切に寸法決めされた噴霧ノズル10、11及び12により実施することができる。
【0032】
塗布されるべき、異なる液状プラスチックを種々の噴霧ノズル10、11及び12に使用することとは別に、種々の噴霧ノズル10、11及び12を用いて単位時間当たり又は単位面積当たり異なる量を膜体1の異なる部分領域に塗布することも可能であり、この様にして、均一な厚さ、従って均一な材料特性を持つ膜体1から開始して、被覆後に異なる材料特性(例えば、異なる剛性及び減衰)を持つような膜体1の部分領域を生成し、かくして、製造されるべきスピーカが所望の音響特性を有することができ、斯かる特性は該膜体1の上記材料特性により決まるようになる。
【0033】
図3は、製造方法の流れ図を概略示し、該図において液状プラスチック7を塗布するステップは極めて概念的に示されているが、このステップは図1及び2に詳細に示されているものである。
【0034】
図3において、液状プラスチック7を塗布するための塗布装置6、被覆されるべき膜体1及び該膜体1を保持するための保持手段13は、極めて概念的に示されている。図3に示す流れ図において、保持手段13の個々の位置は、該保持手段13により保持された膜体1と共に、例えば1秒なる時計時間の後に示されている。被覆ステップ後に膜体1上に存在するプラスチック層14も、極めて概念的に示されている。
【0035】
プラスチック層14を生成するために使用される液状プラスチック7及び達成されるべき材料特性に依存して、例えば2時計単位の間に被覆処理が実行されたなら、当該膜体1は、塗布された液状プラスチック7を硬化するための硬化装置15に直接供給することができ、該硬化装置においては硬化が、これも使用された液状プラスチック7に依存して、例えば可視光又はUV光16により行われる。
【0036】
特に図5を参照して後に詳細に説明するように、塗布装置6による塗布と硬化装置15による硬化との間に短い休止時間(即ち滞留時間)が維持された場合、膜体1の全被覆表面にわたり実質的に均一な被覆が達成される。
【0037】
膜体1が上に配置された保持手段13の別個の位置は、各々、好ましくは自動的に駆動されるような搬送システムにより達成される。
【0038】
図3の上側のラインに沿う直接的な第1処理経路21により示されるように被覆処理と硬化処理との間に短い滞留時間を維持する代わりに、上記搬送システムを適切に制御又は管理することにより、更なる時計単位が設けられ、これにより、第2処理経路17(第1処理経路21より長い)により示されると共に、第3処理経路18(第1処理経路21より長い)によっても示されるように、被覆処理と硬化処理との間に一層長い休止時間(即ち、滞留時間)を達成することができるようになる。第2処理経路17又は第3処理経路18が辿られる場合、膜体1及び該膜体上に配置されたプラスチック層14を伴う保持手段13は、更に、被覆処理と硬化処理との間においてプラスチック層14を加熱するための加熱装置19(概念的に示す)を介して案内されるようにすることができ、その結果として、被覆された膜体1の表面上のプラスチック層14のより均一な又は余り均一でない分布を、例えば温度の関数として達成することができる。
【0039】
本例の場合、例えば350nmと450nmとの間の波長を持つ光の作用の下で硬化するような光開始アクリレート(photoinitiated acrylates)が、液状プラスチックとして使用される。温度範囲は、例えば室温と70℃との間である。硬化時間は、200mW/cm〜5000mW/cmの光強度において約0.5秒〜6秒である。
【0040】
しかしながら、この点において、例えば光活性化エポキシ樹脂等の他の材料が使用された場合、他の処理パラメータも存在することに注意すべきである。この場合、硬化は例えば室温と160℃との間の温度範囲において生じる。硬化時間は、同様に、200mW/cm〜5000mW/cmの光強度において約0.5秒〜6秒である。
【0041】
膜体1が、図4に示すように凹部20と高い領域22とを有するような皺領域4を伴って設計された場合、図5bに詳細に示すように、より長い処理経路17又は18を維持又は選択することにより、プラスチックの(即ち、被覆材料の)一層大きな堆積を凹部20で達成することができる。
【0042】
被覆処理と硬化処理との間で例えば2秒なる短い滞留時間を維持することにより、図5aに示すように略均一なプラスチック層14を達成することができる一方、図5bの図からは、各凹部20において被覆材料は一層大きな材料厚を有し、これが一層長い処理経路17又は18に従って一層長い滞留時間、即ち処理時間を維持することにより達成され得ることが分かる。加熱目的のための加熱装置19を設けることにより、斯様な被覆材料の堆積を付加的に補助することができる。この点において、加熱目的のための上記加熱装置19は、特定の領域を、即ち例えば皺領域4に又は中央領域3に塗布されたプラスチック7を加熱するように設計することもできることに注意すべきである。
【0043】
図3には、個々のステップの間の時間間隔が例えば1秒であることが示されており、従って、スピーカ用の被覆された膜体1を短い時間率で、即ち短い期間で製造することができることが直に明らかである。
【0044】
例えば楕円又は長方形形状等の、実質的に円形な形状以外の形状を持つ膜体1にさえも、液状プラスチックで被覆し、該液状プラスチックを硬化させることにより、材料特性に関して狙った態様で同様に影響を与えることができると言うことができる。
【0045】
更に、前記プラスチック接着剤の代わりに、膜体1の被覆された表面を達成すべく、塗布後に同様の態様で硬化させることができるような他の液状プラスチックも使用することができると言うことができる。
【0046】
更に、図1及び図2に示した膜体1用の保持手段2の回転運動の代わりに、特に図2から理解されるように、膜体1の例えば周領域に設けられる装置又はノズルを、静止した膜体1に対して移動させることもできると言うことができる。
【0047】
更に、例えば図2に示される周領域に対して液状プラスチック7を塗布するための塗布装置としての実質的に点状の噴霧ノズル6、10、11及び12の代わりに、膜体1の周形状に適合された寸法を持つようなスリット状ノズル又はノズル配列を使用することもできると言うことができる。
【0048】
更に、特定の使用目的に適合された所望の減衰を達成するための異なる材料特性(特に、剛性)を持つようなスピーカ用の膜体を、単に適切な被覆材料を選択することにより、例えば図1及び2に示した装置DEVを実質的に使用することなしに簡単な手法で得ることもできると言うことができる。
【0049】
更に、製造されるべき膜体1用の被覆材料の減衰特性を利用することができるのみならず、例えば小さな壁厚により特定の使用目的のためのスピーカ用の膜体の製造にとっては軟らかすぎる又は過度に小さな機械強度を有するような膜体にも、特に製造される膜体の硬度を増加させるような適切な被覆材料を選択することにより、必要な音響的剛性を付与することができると言うことができる。これは、有利にも、例えば膜体用の単一の材料から開始して、液状プラスチック又はプラスチック接着剤を用いた目標を定めた噴霧により、広範なタイプのスピーカ用を意図し、且つ、斯かる種々のタイプのスピーカの固有の所要プロファイルに適合された、所謂、基本膜体を製造することができることを意味する。更に、この関連では、スピーカ又はスピーカを有する、所謂、音響モジュールが、プラスチック又はプラスチック接着剤を用いた噴霧により最終製造ステップにおいてタイプ固有の所要プロファイルに適合されるならば、特に有利であることが分かった。
【0050】
更に、本発明による利点を得るために、膜体に対し少なくとも部分的にプラスチック層を両表面上に設けることも可能であると言うことができる。
【0051】
更に、前記硬化処理は前記塗布処理が完了した後に開始する必要はなく、むしろ、斯かる2つの処理は時間に関し少なくとも部分的に重なり、当該硬化処理の開始が当該塗布処理の終了よりも前となるようにすることもできると言うことができる。
【0052】
更に、前記膜体は、未取付状態においてさえ、即ち深絞り処理の後、パレット(paletting)又は格納装置への途上の膜体サポート上で液状プラスチックを用いて噴霧されることができることに注意すべきであり、該プラスチックは上述したようにして硬化される。更に、既にスピーカに取り付けられた膜体は、ケーシングが該スピーカを未だ閉じていない限りにおいて、それに応じて取り扱われるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の第1実施例に基づく本発明による装置の概念図を示すもので、該装置は本発明の方法を実施するように設計されている。
【図2】図2は、本発明による方法を実施するための変形実施例に基づく本発明による装置を図1と同様の図で示すもので、膜体の表面に液状プラスチックを塗布するために複数のノズルが設けられている。
【図3】図3は、本発明による方法に基づくスピーカ用の膜体を製造する製造方法の概略流れ図を示すもので、特に、膜体の被覆と塗布された液状プラスチックの硬化との間に異なる待ち時間又は滞留時間を設けられることが分かる。
【図4】図4は、本発明による方法に使用される膜体を斜視図で且つ部分的に断面で示す。
【図5a】図5aは、図4の膜体の一部を断面で且つ図4より拡大して示すもので、該膜体は相対的に短い滞留時間後に硬化された被覆を有する。
【図5b】図5bは、膜体の一部を図5aと同様の図で示すもので、該膜体は相対的に長い滞留時間後に、且つ、恐らくは中間加熱の後に硬化された被覆を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する方法において、特には接着特性を備える液状プラスチックであるような少なくとも1つの液状プラスチックが前記膜体の少なくとも1つの表面における少なくとも部分領域に塗布され、該塗布された少なくとも1つの液状プラスチックが硬化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記膜体への前記少なくとも1つの液状プラスチックの塗布が、前記少なくとも1つの液状プラスチックを前記膜体の少なくとも1つの表面における少なくとも前記部分領域へ噴霧することにより行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、異なる量の及び/又は異なるタイプの液状プラスチックが前記膜体の異なる部分領域に塗布されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つの液状プラスチックの硬化が、可視光により又はUV光により実行されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つの液状プラスチックは前記膜体への塗布に続いて、且つ、前記硬化の処理より前に加熱されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の方法において、前記膜体及び/又は前記少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する装置が、前記少なくとも1つの液状プラスチックの塗布の間において、移動され、特には前記膜体の中心軸のまわりに回転されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つの液状プラスチックの塗布と前記少なくとも1つの液状プラスチックの硬化との間において、1秒と15秒との間の異なる待ち時間又は滞留時間が選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記膜体が複数の高い領域及び凹部を有する場合、滑らかな表面を持つ膜体の場合における待ち時間又は滞留時間より長い待ち時間又は滞留時間が選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の方法において、塗布された前記少なくとも1つの液状プラスチックの層厚と前記膜体の厚さとの間の比が、0.5:1と3:1との間、特には約1:1と2:1との間に選定されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つの液状プラスチックが前記膜体に順次複数回塗布され、前記液状プラスチックは各塗布の後に硬化されることを特徴とする方法。
【請求項11】
電気音響トランスジューサ用の膜体を製造する装置において、前記膜体を保持する保持手段を有すると共に、前記膜体の少なくとも1つの表面における少なくとも部分領域に特には接着特性を有する液状プラスチックであるような少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する少なくとも1つの塗布装置を有し、且つ、塗布された前記少なくとも1つの液状プラスチックを硬化させる硬化装置を有することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、前記少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する塗布装置が、少なくとも1つの噴霧ノズルにより形成されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、複数の塗布装置が設けられ、これら塗布装置が異なる量の液状プラスチック及び/又は異なるタイプの液状プラスチックを放出する複数の噴霧ノズルにより形成されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11ないし13の何れか一項に記載の装置において、前記膜体を保持する保持手段と、特には前記少なくとも1つの噴霧ノズルであるような前記少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する塗布装置とが、相対的に移動可能であることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、前記膜体を保持する保持手段が、回転駆動部に結合されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項11ないし15の何れか一項に記載の装置において、前記塗布された少なくとも1つの液状プラスチックを硬化させる硬化手段が、前記塗布された少なくとも1つのプラスチックに向かって光又はUV光を放出するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項11ないし16の何れか一項に記載の装置において、前記保持手段は該保持手段により保持された前記膜体と共に、特には自動的に駆動される搬送システムにより、前記保持手段が前記膜体と共に前記少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する塗布装置に実質的に対向して位置するような第1位置から、前記保持手段が前記膜体と共に前記塗布された少なくとも1つの液状プラスチックを硬化させる硬化装置に対向して位置するような第2位置へ移送可能であることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、前記保持手段を前記少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する塗布装置と前記塗布された少なくとも1つの液状プラスチックを硬化させる硬化装置との間で移送する場合に、前記保持手段に対する異なる搬送速度若しくは移送速度及び/又は待ち時間若しくは滞留時間が選択可能であるか又は設けられることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項11ないし18の何れか一項に記載の装置において、前記塗布された少なくとも1つの液状プラスチックを加熱する加熱装置が、前記少なくとも1つの液状プラスチックを塗布する塗布装置と前記塗布された少なくとも1つの液状プラスチックを硬化させる硬化装置との間に設けられることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2007−522756(P2007−522756A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552753(P2006−552753)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050500
【国際公開番号】WO2005/084076
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】