説明

電池の製造方法

【課題】封止部材の被覆部と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査できる電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】電池100の製造方法は、挿入部183で貫通孔170を気密に仮封止する仮封止工程と、被覆部181を孔周囲部113mに気密に接合する本封止工程と、被覆部181と孔周囲部113mとの間の気密性を検査する気密検査工程とを備える。仮封止工程から本封止工程までは、挿入部183の弾性により貫通孔170を気密に仮封止可能な第1温度範囲内の環境温度で行い、気密検査工程は、挿入部183の弾性低下により貫通孔170の仮封止を維持不能な第2温度範囲内の環境温度で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、この電池ケース内に収容された電極体及び電解液と、電池ケースの貫通孔を外部から気密に封止してなる封止部材とを備える電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電解液を注入するための注液孔などの貫通孔を有する電池ケースと、この電池ケースに収容された電極体及び電解液と、電池ケースの貫通孔を外部から気密に封止してなる封止部材とを備える電池が知られている。封止部材としては、例えば、金属からなる金属蓋部に、ゴム状弾性体からなるゴム栓部が接合されたものがある。このうちゴム栓部は、電池ケースの貫通孔に外部から圧入され、貫通孔を気密に封止する。一方、金属蓋部は、ゴム栓部を電池ケースの外部から覆いつつ、ゴム栓部を電池ケースの内部に向けて押圧した状態で、電池ケースに接合されている。このようにすることで、ゴム栓部による貫通孔の気密封止をより確実なものとすることができる。
なお、ゴム栓部と金属蓋部とを有する封止部材で貫通孔を封止した形態の電池として、例えば特許文献1に開示された電池が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電池では、前述のように、貫通孔の気密封止はゴム栓部で行えば足りると考えられていたため、金属蓋部と電池ケースとの間の気密性まで厳密に要求されることはなかった。しかしながら、ゴム栓部は、経時的に劣化するため、ゴム栓部と貫通孔との間の気密性も経時的に低下する。特に、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用の電池は、例えば10年以上の長期間にわたり使用されるため、この経時劣化による気密性の低下が懸念される。
【0005】
ゴム栓部が劣化してゴム栓部と貫通孔との間の気密性が低下すると、電池ケース内に収容されていた電解液が、ゴム栓部と貫通孔との間に入り込み、更に、金属蓋部と電池ケースとの間の気密性も低い場合には、その電解液が金属蓋部と電池ケースとの間を通じて電池外部まで漏れ出てしまうことがある。すると、電池ケース内の電解液が不足して、電池特性が低下するおそれがある。また逆に、金属蓋部と電池ケースとの間、及び、ゴム栓部と貫通孔との間を通じて、大気中の水分が電池ケース内に入り込み、電池特性が低下するおそれもある。
【0006】
この問題を解決するためには、ゴム栓部が劣化してゴム栓部と貫通孔との間の気密性が低下しても、電池ケースの内部と外部が連通しないように、金属蓋部と電池ケースとの間を確実に気密に接合しておくことが考えられる。
しかしながら、このようにした電池は、製造直後にはゴム栓部がまだ劣化しておらず、ゴム栓部と貫通孔との間が気密に封止されている。つまり、この電池は、ゴム栓部と貫通孔との密着、及び、金属蓋部と電池ケースとの接合により、二重に封止されている。このため、金属蓋部と電池ケースとの接合の不具合で封止不良が生じていたとしても、この封止不良が生じた電池を検査により判別するのが難しい。従って、金属蓋部を電池ケースに確実に気密に接合した電池を製造するのが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、封止部材のうちの被覆部と電池ケースとを気密に接合して、電池ケースの貫通孔を気密に封止した電池において、封止部材の被覆部と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査した電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、前記電池ケース内に収容された電極体と、前記電池ケース内に収容された電解液と、前記貫通孔を前記電池ケースの外部から気密に封止してなる封止部材であって、ゴム状弾性体からなり、前記貫通孔に挿入された挿入部、及び、前記挿入部を前記外部から覆いつつ、前記電池ケースのうち前記貫通孔の周囲を囲む環状の孔周囲部に気密かつ環状に接合してなる被覆部、を有する封止部材と、を備える電池の製造方法であって、前記挿入部を、前記電解液が収容された前記電池ケースの前記貫通孔に前記外部から圧入し、前記挿入部で前記貫通孔を気密に仮封止する仮封止工程と、前記仮封止工程の後、前記挿入部を前記外部から覆いつつ、前記被覆部を前記電池ケースの前記孔周囲部に気密かつ環状に接合する本封止工程と、前記本封止工程の後、前記封止部材の被覆部と前記電池ケースの前記孔周囲部との間の気密性を検査する気密検査工程と、を備え、前記仮封止工程から前記本封止工程までを、前記挿入部の弾性によって、前記挿入部で前記貫通孔を気密に仮封止可能な第1温度範囲内の環境温度で行い、前記気密検査工程を、前記第1温度範囲よりも低温で、かつ、前記挿入部の弾性の低下により、前記挿入部による前記貫通孔の仮封止を維持不能な第2温度範囲内の環境温度で行う電池の製造方法である。
【0009】
この電池の製造方法では、仮封止工程から本封止工程までを、挿入部の弾性により挿入部で貫通孔を気密に仮封止可能な第1温度範囲内の環境温度で行う。このため、仮封止工程において、挿入部で貫通孔を確実に気密に封止できる。また、この仮封止後、本封止までの間に、電池ケース内に収容された電解液が貫通孔を通じて電池ケースの外部(孔周囲部等)に漏れ出るのを防止できる。従って、本封止工程の際に、貫通孔から漏れ出た電解液が封止部材の被覆部と電池ケースの孔周囲部との間に入り込んで、封止不良が生じるのを防止でき、被覆部と孔周囲部とを確実に接合できる。
【0010】
一方、気密検査工程は、第1温度範囲よりも低温で、かつ、挿入部の弾性の低下により、挿入部による貫通孔の仮封止を維持不能な第2温度範囲内の環境温度で行う。このため、この気密検査工程中は、仮封止が維持できず、挿入部と貫通孔との間の気密性が低下して、挿入部と貫通孔との間を気体が流通可能な状態となる。従って、電池ケース内の気体が電池ケースの外部に漏れ出ないか否かを検査することにより、被覆部と電池ケースの孔周囲部との間の気密性を容易かつ確実に検査することができる。そして、これらの間に封止不良が生じている電池を確実に排除できる。従って、封止部材の被覆部と電池ケースの孔周囲部との間の気密信頼性が高く、長期間にわたり封止部材(その被覆部)で注液孔を気密に封止できる電池を容易かつ確実に製造できる。よって、封止部材の被覆部と電池ケースとの間の気密性を容易かつ確実に検査した電池を製造できる。
【0011】
更に、上記の電池の製造方法であって、前記ゴム状弾性体は、前記第1温度範囲が20〜35℃の温度範囲を含み、かつ、前記第2温度範囲が−50〜10℃の温度範囲と少なくとも一部で重なる材質からなる電池の製造方法とすると良い。
【0012】
このような材質からなるゴム状弾性体で挿入部を形成することで、仮封止工程から本封止工程までを20〜35℃の温度範囲内の環境温度で行えば良く、これらの工程の環境温度を極端に高い温度や低い温度にしなくても済む。従って、これらの工程を容易に行うことができ、また、製造コストを低くできる。また、気密検査工程を−50〜10℃の温度範囲内のうち、第2温度範囲内となる環境温度で行えば良く、気密検査工程の環境温度についても、極端に高い温度や低い温度にしなくても済む。従って、気密検査工程を容易に行うことができ、また、製造コストを低くできる。
【0013】
更に、上記のいずれかに記載の電池の製造方法であって、前記仮封止工程は、減圧下で行い、前記本封止工程は、大気圧下で行う電池の製造方法とすると良い。
【0014】
仮封止工程を減圧下で行うことで、この仮封止後の電池ケース内を減圧状態(負圧)にすることができる。このため、本封止工程後に行うコンディショニング工程(初期充電工程)の際やその後の使用において、電池ケース内に気体が発生しても、電池ケースの内圧が早期に高くなるのを防止できる。一方、溶接などによる接合を行う本封止工程は、大気圧下で行うので、減圧下で行う場合に比して、本封止工程を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池を示す縦断面図である。
【図2】実施形態1に係り、電極体を示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、正極板及び負極板をセパレータを介して互いに重ねた状態を示す部分平面図である。
【図4】実施形態1に係り、ケース蓋部材、正極端子及び負極端子等を示す分解斜視図である。
【図5】実施形態1に係り、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】実施形態1に係り、図5の上方から見た、封止部材の近傍を示す部分拡大平面図である。
【図7】実施形態1に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図8】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法に関し、仮封止工程において、封止部材の挿入部材を注液孔に圧入して、挿入部材で注液孔を気密に仮封止する様子を示す説明図である。
【図9】試験用電池1,2について行った気密性試験における、環境温度とヘリウムガスのリーク量との関係を示すグラフである。
【図10】実施形態2に係るハイブリッド自動車を示す説明図である。
【図11】実施形態3に係るハンマードリルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池(電池)100(以下、単に電池100とも言う)を示す。また、図2及び図3に、この電池100を構成する捲回型の電極体120及びこれを展開した状態を示す。また、図4に、ケース蓋部材113、正極端子150及び負極端子160等の詳細を示す。また、図5及び図6に、注液孔(貫通孔)170及び封止部材180の近傍の形態を示す。なお、図1,図4及び図5における上方を電池100の上側、下方を電池100の下側として説明する。
【0017】
この電池100は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両や、ハンマードリル等の電池使用機器に搭載される角型電池である。この電池100は、直方体形状の電池ケース110、この電池ケース110内に収容された捲回型の電極体120、電池ケース110に支持された正極端子150及び負極端子160等から構成されている(図1参照)。また、電池ケース110内には、非水系の電解液117が保持されている。
【0018】
このうち電池ケース110は、金属(本実施形態1ではアルミニウム)により形成されている。この電池ケース110は、上側のみが開口した箱状のケース本体部材111と、このケース本体部材111の開口111hを閉塞する形態で溶接されたケース蓋部材113とから構成されている(図1及び図4参照)。ケース蓋部材113は、電池ケース110の内部を向く内側主面113cと、電池ケース110の外部を向く外側主面113dとを有する矩形板状をなす。
【0019】
ケース蓋部材113には、その長手方向の中央付近に、電池ケース110の内圧が所定圧力に達した際に破断する非復帰型の安全弁115が設けられている。また、この安全弁115の近傍には、ケース蓋部材113を貫通し、電池ケース110の内外を連通する後述する注液孔(貫通孔)170が設けられている。この注液孔170は、電池ケース110内が大気圧よりも減圧された状態(負圧状態)で、後述する封止部材180で気密に封止されている。また、ケース蓋部材113には、それぞれ電池ケース110の内部から外部に延出する形態の通電端子部材151からなる正極端子150及び負極端子160と、ボルト153,153とが、樹脂からなる絶縁部材155,155を介して固設されている(図1及び図4参照)。
【0020】
次に、電極体120について説明する。この電極体120は、絶縁フィルムを上側のみが開口した袋状に形成した絶縁フィルム包囲体119内に収容され、横倒しにした状態で電池ケース110内に収容されている(図1参照)。この電極体120は、帯状の正極板121と帯状の負極板131とを、帯状のセパレータ141を介して互いに重ねて(図3参照)、軸線AX周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである(図2参照)。
【0021】
正極板121は、芯材として、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔122を有する。この正極集電箔122の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上には、それぞれ正極活物質層123,123が長手方向(図3中、左右方向)に帯状に設けられている。これらの正極活物質層123,123は、正極活物質、導電剤及び結着剤から形成されている。
【0022】
正極板121のうち、自身の厚み方向に正極集電箔122及び正極活物質層123,123が存在する帯状の部位が、正極部121wである。この正極部121wは、電極体120を構成した状態において、その全域がセパレータ141を介して負極板131の後述する負極部131wと対向している(図3参照)。また、正極板121に正極部121wを設けたことに伴い、正極集電箔122のうち、幅方向の片方の端部(図3中、上方)は、長手方向に帯状に延び、自身の厚み方向に正極活物質層123が存在しない正極集電部121mとなっている。この正極集電部121mの幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の一方側SAに渦巻き状をなして突出しており(図2参照)、前述の正極端子150と接続している(図1参照)。
【0023】
また、負極板131は、芯材として、帯状の銅箔からなる負極集電箔132を有する。この負極集電箔132の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上には、それぞれ負極活物質層133,133が長手方向(図3中、左右方向)に帯状に設けられている。これらの負極活物質層133,133は、負極活物質、結着剤及び増粘剤から形成されている。
【0024】
負極板131のうち、自身の厚み方向に負極集電箔132及び負極活物質層133,133が存在する帯状の部位が、負極部131wである。この負極部131wは、電極体120を構成した状態において、その全域がセパレータ141と対向している。また、負極板131に負極部131wを設けたことに伴い、負極集電箔132のうち、幅方向の片方の端部(図3中、下方)は、長手方向に帯状に延び、自身の厚み方向に負極活物質層133が存在しない負極集電部131mとなっている。この負極集電部131mの幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の他方側SBに渦巻き状をなして突出しており(図2参照)、前述の負極端子160と接続している(図1参照)。
また、セパレータ141は、樹脂からなる多孔質膜であり、帯状をなす。
【0025】
次に、注液孔170及び封止部材180について説明する(図5〜図7参照)。
注液孔170は、電解液117を電池ケース110内に注入するために形成され、ケース蓋部材113の内側主面113cと外側主面113dとの間を貫通する形態で軸線BX方向に延びる孔であり、電池ケース110の内外を連通している。この注液孔170は、円孔をなす内側円筒部171と、これよりも径大な円孔をなす外側円筒部173とが同軸状に繋がった段付き孔である。
【0026】
内側円筒部171は、円筒状をなす円筒状内周面171fで構成されており、軸線BX方向の内側BC(電池内部側、図5中、下方)に位置し、内側主面113cに開口している。また、外側円筒部173は、円筒状をなす円筒状外周面173fで構成されており、軸線BX方向の外側BD(電池外部側、図5中、上方)に位置し、外側主面113dに開口している。内側円筒部171をなす円筒状内周面171fと、外側円筒部173をなす円筒状内周面173fとは、内側主面113c及び外側主面113dに平行な円環状の中間面172fを介して繋がっている。
【0027】
一方、封止部材180は、被覆部材(被覆部)181と、これに接合された挿入部材(挿入部)183とから構成されている。
このうち被覆部材181は、電池ケース110の材質と同じ材質、具体的には、アルミニウムからなる。この被覆部材181は、封止部材180の軸線CX方向の内側CC(ケース蓋部材113側、図5及び図7中、下方)に位置する主面である被覆部内側面181cと、これに平行で軸線CX方向の外側CD(ケース蓋部材113とは反対側、図5及び図7中、上方)に位置する主面である被覆部外側面181dとを有し、注液孔170(その外側円筒部173)の内径よりも径大な円板状をなす。
【0028】
この被覆部材181は、注液孔170を軸線BX方向の外側BDから覆い、注液孔170と同軸になる形態で、電池ケース110(そのケース蓋部材113)に固着されている(図5参照)。具体的には、被覆部材181の外周縁に沿う円環状の周縁部181mが、ケース蓋部材113のうち注液孔170の周囲を囲む円環状の孔周囲部113mに、全周にわたり溶接されて、平面視円環状の溶接部181yを形成している。これにより、被覆部材181の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間が気密に封止されている。
【0029】
また、挿入部材183は、ゴム状弾性体からなる。具体的には、パーフロロエラストマー(デュポン社製、カルレッツ)からなる。このゴム状弾性体のガラス転移点Tgは−5〜5℃である。このゴム状弾性体は、13〜200℃の温度範囲で、十分に高い弾性を有する。一方、9℃以下の温度範囲では明らかに弾性が低下し、0℃以下では弾性が殆ど消失する特性を有する。
【0030】
この挿入部材183は、径小な頂面183cと径大な底面183dとこれらの間を結ぶ側面183fとを有する円錐台状をなす。頂面183cは、注液孔170の内側円筒部171の内径よりも径小となっている。また、底面183dは、頂面183cよりも径大で、かつ、注液孔170の内側円筒部171の内径よりも径大で、かつ、注液孔170の外側円筒部173の内径よりも径小となっている。
【0031】
この挿入部材183は、その底面183dが被覆部材181の被覆部内側面181cの中央に接合されて、被覆部材181と一体化されている。この挿入部材183は、被覆部材181の被覆部内側面181cから軸線BX,CX方向の内側BC,CC(図5中、下方)に延びて、注液孔170内に挿入されている。
【0032】
より具体的には、挿入部材183をなすゴム状弾性体は、前述のように、20〜35℃の温度範囲を含む13〜200℃の温度範囲(前述の第1温度範囲に相当する)で、十分に高い弾性を有する。従って、この第1温度範囲内の環境温度(例えば25℃)で仮封止及びそれ以降の工程を行えば、挿入部材183の弾性によって、挿入部材183の側面183fが、注液孔170のうち、円筒状内周面171fと中間面172fとのなす角部171faに気密に圧接して、挿入部材183で注液孔170を気密に封止(密栓)した状態となる。このため、この範囲の環境温度とし続けることで、注液孔170は、封止部材180の被覆部材181と挿入部材183とにより二重にシールされ続ける。特に、この第1温度範囲が20〜35℃の温度範囲を含んでいるので、この20〜35℃の範囲内の温度を容易に保ちつつ、挿入部材183によるシールを保つことができる。
【0033】
一方、挿入部材183をなすゴム状弾性体は、前述のように、9℃以下の温度範囲(前述の第2温度範囲に相当する)で明らかに弾性が低下し、0℃以下では弾性が殆ど消失する。従って、この第2温度範囲内の環境温度(例えば−5℃)では、挿入部材183の側面183fが、注液孔170の角部171faに接触しているものの、挿入部183と注液孔170との間の仮封止を維持できず、これらの間は、気密ではなく、気体が流通可能な状態となる。このため、この温度環境下では、注液孔170は、封止部材180の被覆部材181でのみシールされる。
【0034】
次いで、上記電池100の製造方法について説明する。まず、別途形成した帯状の正極板121及び帯状の負極板131を、帯状のセパレータ141を介して互いに重ね(図3参照)、巻き芯を用いて軸線AX周りに捲回する。その後、これを扁平状に圧縮して電極体120を形成する(図2参照)。
また別途、被覆部材181と挿入部材183とからなる封止部材180(図7参照)を形成しておく。具体的には、金属板からなる被覆部材181を射出成形用の金型にセットし、前述のようにパーフロロエラストマー(デュポン社製、カルレッツ)を用いて、射出成形により挿入部材183を被覆部材181と一体に成形する。
【0035】
また、安全弁115及び注液孔170等を形成したケース蓋部材113と、通電端子部材151及びボルト153とを用意し、これらを射出成形用の金型にセットする。そして、射出成形により絶縁部材155を一体的に成形して、ケース蓋部材113に正極端子150及び負極端子160を固設する(図4参照)。
【0036】
次に、正極端子150と電極体120の正極集電部121mとを接続(溶接)する。また、負極端子160と電極体120の負極集電部131mとを接続(溶接)する。その後、ケース本体部材111及び絶縁フィルム包囲体119を用意し、ケース本体部材111内に絶縁フィルム包囲体119を介して電極体120を収容すると共に、ケース本体部材111の開口111hをケース蓋部材113で塞ぐ。そして、レーザ溶接により、ケース本体部材111とケース蓋部材113とを溶接して、電池ケース110を形成する(図1参照)。
【0037】
次に、溶接したケース本体部材111とケース蓋部材113との間の気密性を検査する。具体的には、この電池100をチャンバ内に入れて、チャンバ内をヘリウムガスで充満させると共に、ケース蓋部材113の注液孔170に吸引用ノズルを気密に装着して、電池ケース110の内部を減圧する。ケース本体部材111とケース蓋部材113との間に封止不良がある場合には、電池ケース110外のヘリウムガスが電池ケース110内に侵入するので、この侵入したヘリウムガスを検知することで、ケース本体部材111とケース蓋部材113との間の気密性を検査する。
【0038】
次に、25℃の温度環境下において、この電池を真空チャンバ内に入れて真空チャンバ内を減圧する。そして、注液用ノズルを注液孔170内に挿入して、注液用ノズルから電池ケース110内に電解液117を注液する。その後、注液孔170の周囲(孔周囲部113mを含む)を清掃する。具体的には、不織布により、注液孔170の周囲を拭く。電解液117の注入の際に、電解液117が注液孔170の周囲に付着するおそれがあるが、この清掃により注液孔170の周囲を清浄状態とすることができる。
【0039】
次に、この減圧下及び25℃の温度環境下において、仮封止工程を行う。即ち、挿入部材183を注液孔170に電池ケース110の外部から圧入し、挿入部材183で注液孔170を気密に仮封止する。より具体的には、封止部材180のうちの挿入部材183を、注液孔170にその軸線BX方向の外側BDから圧入し、挿入部材183の側面183fを注液孔170の角部171faに圧接させる(図8参照)。これにより、挿入部材183で注液孔170を気密に仮封止(密栓)する。
【0040】
本実施形態1では、この仮封止工程から後述する本封止工程までを、挿入部材183の弾性によって、挿入部材183で注液孔170を気密に封止可能な第1温度範囲(本実施形態1では13〜200℃)内の環境温度(本実施形態1では25℃)で行う。このため、仮封止工程から本封止工程までの期間中、挿入部材183は高い弾性を有するので、挿入部材183のうち、注液孔170の角部171faに当接した当接部183tは、自身の弾性により変形して、注液孔170の角部171faに密着する。
【0041】
引き続き25℃の温度環境下において、真空チャンバ内を大気圧に戻して、真空チャンバからこの電池を取り出す。電池ケース110は、仮封止工程で気密に封止されているので、電池100を大気圧下に戻しても、電池ケース110内はその減圧状態を保っている。
ところで、注液孔170が仮封止されていない場合には、電池ケース110内に収容された電解液117が、電池外部に漏れ出たり、電池ケース110の孔周囲部113mに付着するおそれがある。しかし、本実施形態1では、前述の仮封止工程において挿入部材183で注液孔170を気密に仮封止しているので、電解液117が電池外部に漏れ出るのを確実に防止できる。また、次述する本封止工程をも、電池ケース110内を減圧状態に保ったまま、大気圧下で行うことができる。
【0042】
次に、この大気圧下及び25℃の温度環境下において、本封止工程を行う。即ち、挿入部材183を電池ケース110の外部から覆う被覆部材181の周縁部181mを、電池ケース110(そのケース蓋部材113)の孔周囲部113mに気密かつ環状に接合する。より具体的には、封止部材180の被覆部材181を軸線BX,CX方向の内側BC,DCに押圧して、被覆部材181の周縁部181mをケース蓋部材113の孔周囲部113mに当接させる。そしてこの状態で、レーザ溶接を行い、被覆部材181の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとを全周にわたって溶接して平面視円環状の溶接部181yを形成する。これにより、被覆部材181の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間が気密に封止される。
【0043】
次に、コンディショニング工程において、この電池100の初期充電を行う。その際、電池ケース110内には、水素などの気体が発生する。このため、電池ケース110の内圧は、コンディショニング工程の前よりも高くなる(電池ケース110内の減圧度が低くなる)。
【0044】
次に、この電池100について気密検査工程を行う。即ち、封止部材180の被覆部材181と電池ケース110(そのケース蓋部材113)の孔周囲部113mとの間の気密性を検査する。この気密検査工程は、前述した仮封止工程から本封止工程までとは異なり、第1温度範囲(本実施形態1では13〜200℃)よりも低温で行う。しかも、挿入部材183の弾性の低下により、挿入部材183による注液孔170の仮封止を維持不能な第2温度範囲(本実施形態1では9℃以下)内の環境温度(本実施形態1では−5℃)で行う。前述のように、挿入部材183をなすゴム状弾性体は、9℃以下で明らかに弾性が低下し、0℃以下で弾性が殆ど消失するので、この−5℃の温度環境下では、硬化して(ガラス状態となり)弾性が殆ど消失する。このため、挿入部材183の当接部183tと注液孔170の角部171faとの密着性が殆どなくなり、挿入部材183と注液孔170との間で気体が流通可能な状態となる。
【0045】
この気密検査工程は、−5℃の温度環境下で、電池100を真空チャンバ内に置いて、真空チャンバ内を減圧する。そして、封止部材180の近傍に、水素ガス検知器(Hydrogen Leak Detector H2000:センシスター社製)を設置して、120秒間、水素ガスを検知することにより行う。前述のように、電池ケース110内には、初期充電の際に発生した水素ガスが存在する。このため、被覆部材181の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間に封止不良が生じている場合には、この水素ガスが、気体が流通可能な状態とされている挿入部材183と注液孔170との間を通じ、更に、封止不良のある被覆部材181の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間を通じて、電池ケース110の外部に漏れ出る。従って、水素ガス検知器により水素ガスが検知できれば、被覆部材181の周縁部181mと電池ケース110の孔周囲部113mとの間に封止不良が生じていることが判る。そこで、この封止不良のある電池を排除し、封止不良のない良品の電池100のみを選別する。かくして、電池100が完成する。
【0046】
以上で説明したように、本実施形態1に係る電池100は、自身の内外を連通する注液孔(貫通孔)170を有する電池ケース110と、これに収容された電極体120及び電解液117と、注液孔170を気密に封止してなる封止部材180とを備える。このうち封止部材180は、ゴム状弾性体からなり、注液孔170に挿入された挿入部材(挿入部)183と、挿入部材183を外部から覆いつつ、電池ケース110のうち注液孔170の周囲を囲む環状の孔周囲部113mに気密かつ環状に接合してなる被覆部材(被覆部)181とを有する。
【0047】
そして、本実施形態1に係る電池100の製造方法は、挿入部材183を注液孔170に外部から圧入し、注液孔170を気密に仮封止する仮封止工程と、その後、挿入部材183を外部から覆いつつ、被覆部材181を電池ケース110の孔周囲部113mに気密かつ環状に接合する本封止工程と、その後、被覆部材181と電池ケース110の孔周囲部113mとの間の気密性を検査する気密検査工程とを備える。そして、仮封止工程から本封止工程までを、挿入部材183の弾性によって、挿入部材183で注液孔170を気密に仮封止可能な第1温度範囲(本実施形態1では13〜200℃)内の環境温度(本実施形態1では25℃)で行う。一方、気密検査工程を、第1温度範囲よりも低温で、かつ、挿入部材183の弾性の低下により、挿入部材183による注液孔170の仮封止を維持不能な第2温度範囲(本実施形態1では9℃以下)内の環境温度(本実施形態1では−5℃)で行っている。
【0048】
このように、この電池100の製造方法では、仮封止工程から本封止工程までを、挿入部材183の弾性によって、挿入部材183で注液孔170を気密に仮封止可能な第1温度範囲(本実施形態1では13〜200℃)内の環境温度(本実施形態1では25℃)で行う。このため、仮封止工程で、挿入部材183で注液孔170を気密に封止できる。また、仮封止後、本封止までの間、電池ケース110内に収容された電解液117が注液孔170を通じて電池ケース110の外部(孔周囲部113m等)に漏れ出るのを防止できる。従って、本封止工程の際に、注液孔170から漏れ出た電解液117が封止部材180の被覆部材181と電池ケース110の孔周囲部113mとの間に入り込んで、封止不良が生じるのを防止でき、被覆部材181と孔周囲部113mとを確実に接合できる。
【0049】
一方、気密検査工程は、第1温度範囲(本実施形態1では13〜200℃)よりも低温で、かつ、挿入部材183の弾性の低下により、挿入部材183による注液孔170の仮封止を維持不能な第2温度範囲(本実施形態1では9℃以下)内の環境温度(本実施形態1では−5℃)で行う。このため、この気密検査工程中は、仮封止を維持できず、挿入部材183と注液孔170との間の気密性が低下して、挿入部材183と注液孔170との間を気体が流通可能な状態となる。従って、電池ケース110内の気体が電池ケース110の外部に漏れ出ないか否かを検査することにより、被覆部材181と電池ケース110の孔周囲部113mとの間の気密性を容易かつ確実に検査することができる。そして、これらの間に封止不良が生じている電池を確実に排除できる。従って、封止部材180の被覆部材181と電池ケース110の孔周囲部113mとの間の気密信頼性が高く、長期間にわたり封止部材180(その被覆部材181)で注液孔170を気密に封止できる電池100を容易かつ確実に製造できる。よって、封止部材180の被覆部材181と電池ケース110との間の気密性を容易かつ確実に検査した電池100を製造できる。
【0050】
更に、本実施形態1では、ゴム状弾性体は、第1温度範囲が20〜35℃の温度範囲を含み、かつ、第2温度範囲が−50〜10℃の温度範囲と少なくとも一部で重なる材質からなる。このような材質からなるゴム状弾性体で挿入部材183を形成することで、仮封止工程から本封止工程までを20〜35℃の温度範囲内の環境温度(本実施形態1では25℃)で行えば良く、これらの工程の環境温度を極端に高い温度や低い温度にしなくても済む。従って、これらの工程を容易に行うことができ、また、製造コストを低くできる。また、気密検査工程を−50〜10℃の温度範囲内のうち、第2温度範囲(本実施形態1では9℃以下)と重なる−50〜9℃の温度範囲内の環境温度(本実施形態1では−5℃)で行えば良く、気密検査工程の環境温度についても極端に高い温度や低い温度にしなくても済む。従って、気密検査工程を容易に行うことができ、また、製造コストを低くできる。
【0051】
また、本実施形態1では、仮封止工程は、減圧下で行い、本封止工程は、大気圧下で行う。仮封止工程を減圧下で行うことで、この仮封止後の電池ケース110内を減圧状態(負圧)にすることができる。このため、本封止工程後に行うコンディショニング工程(初期充電工程)の際やその後の使用において、電池ケース110内に気体が発生しても、電池ケース110の内圧が早期に高くなるのを防止できる。一方、溶接を行う本封止工程は、大気圧下で行うので、減圧下で行う場合に比して、本封止工程を容易に行うことができる。
【0052】
(試験結果)
次いで、本発明の効果を確認するために行った試験結果について説明する。この試験では、試験を容易かつ確実に行うために、電極体、絶縁フィルム包囲体及び電解液を電池ケース内に収容することなく、電池ケース、正極端子、負極端子及び封止部材のみにより試験用電池を作製した。また、電池外部から電池ケース内に気体を供給できるように、電池ケースのケース本体部材に配管を取り付けた。
【0053】
試験用電池1として、実施形態1と同様の電池ケース110、正極端子150、負極端子160及び封止部材180を用いて試験用電池を作製した。但し、本封止工程では、封止部材180の被覆部材181のうち周縁部181mの全周を、電池ケース110の孔周囲部113mに円環状に溶接するのではなく、周縁部181mのうち周方向の90%の部分を溶接して、孔周囲部113mにC字状の溶接部を形成した。従って、この試験用電池1は、被覆部材181と孔周囲部113mとの間を気体が流通可能な状態となっており、本封止工程での溶接時に被覆部材181と孔周囲部113mとの間に封止不良が生じている状態に相当する。
【0054】
また、試験用電池2として、挿入部材の材質を、前述のパーフロロエラストマーから、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)(ガラス転移点Tg=−50〜−40℃)に変更し、それ以外は実施形態1と同様とした封止部材を用いて、また、電池ケース110、正極端子150及び負極端子160は実施形態1と同様として、試験用電池を作製した。この試験用電池2も、試験用電池1と同様に、封止部材の被覆部材のうち、周縁部の周方向90%の部分を溶接して、電池ケースの孔周囲部にC字状の溶接部を形成した。従って、この試験用電池2も、被覆部材と孔周囲部との間を気体が流通可能な状態(封止不良に相当する)となっている。
【0055】
次に、これらの試験用電池1,2について気密性試験を行った。具体的には、これらの試験用電池1,2の電池ケース内に気体(具体的にはヘリウムガス)を送り込み、封止部材近傍からのガス漏れ(ヘリウムガスのリーク量)をヘリウムガス検知器を用いて測定した。この測定を環境温度を25℃から−30℃まで徐々に低下させながら行った。その結果を図9に示す。
【0056】
図9のグラフから明らかなように、試験用電池1では、環境温度が13℃以上で、ヘリウムガスのリーク量がごく僅か(1.0×10-9 程度)であった。一方、環境温度が9℃以下では、ヘリウムガスのリーク量が著しく増大した(1.0×10-5 程度)。また、この低温環境下におけるリーク量は、温度に拘わらずほぼ一定であった。
これに対し、試験用電池2は、25℃から−30℃のいずれの環境温度でも、ヘリウムガスのリーク量がごく僅か(1.0×10-9 程度)で、しかも、このリーク量が環境温度に拘わらずほぼ一定であった。
【0057】
このような試験結果を生じる理由は、以下であると考えられる。実施形態1でも説明したように、試験用電池1で用いた挿入部材をなすゴム状弾性体(パーフロロエラストマー)は、環境温度を低下させ、環境温度が9℃となると、明らかに硬化し弾性が低下し始める。一方、環境温度が13℃以上の状態では、挿入部材は十分に弾性を有するので、挿入部材と注液孔との間が密着し、気密に封止(仮封止)された状態にある。従って、電池ケース内に送り込まれたヘリウムガスは、挿入部材と注液孔との間を通過することができず、ヘリウムガスは電池外部に漏れ出ない。このため、環境温度が13℃以上では、ヘリウムガスのリークは殆ど認められない。
【0058】
一方、9℃以下の温度環境下では、挿入部材の弾性が低下する。更に環境温度を下げると、挿入部材の弾性は殆ど消失する。このため、挿入部材と注液孔との間の気密性が失われ、仮封止が維持できず、挿入部材と注液孔との間で気体が流通可能な状態となる。なお、前述したように、この試験用電池1は、被覆部材と孔周囲部との間で気体が流通可能な状態(封止不良に相当する状態)となっている。従って、電池ケース内に送り込まれたヘリウムガスは、挿入部材と注液孔との間を通り、更に、被覆部材と孔周囲部との間を通って、電池外部に漏れ出る。このため、試験用電池1では、環境温度が9℃以下であると、ヘリウムガスのリーク量が著しく増えたと考えられる。
【0059】
これに対し、試験用電池2では、封止部材の挿入部材をなすゴム状弾性体(EPDM)は、ガラス転移点Tgが−50〜−40℃であり、−39〜100℃の温度範囲で、十分に高い弾性を有する。一方、−40℃以下の温度範囲では、明らかに弾性が低下する特性を有する。上述の気密性試験で行った環境温度(−30〜25℃)は、いずれも−39℃よりも高いので、EPDMからなる挿入部材はどの場合でも十分な弾性を有し、挿入部材と注液孔との間が気密に封止された状態にある。従って、電池ケース内に送り込まれたヘリウムガスは、挿入部材と注液孔との間を通過することができず、ヘリウムガスは電池外部に漏れ出ない。このため、−30〜25℃のいずれの環境温度下においても、ヘリウムガスのリークは殆ど認められない。
【0060】
以上、試験用電池1,2についての気密性試験結果から判るように、挿入部材をなすゴム状弾性体の弾性が明らかに低下する或いは消失する温度環境下に電池を置くことで、挿入部材と注液孔との仮封止を破り、これらの間で気体が流通可能な状態とすることができる。従って、このような温度環境下で気密検査を行うことで、被覆部材と孔周囲部との気密性を容易かつ確実に検査できる。よって、封止不良のある電池を排除でき、被覆部材と孔周囲部との間の気密信頼性が高く、長期間にわたり封止部材で注液孔を気密に封止できる電池を製造できる。
【0061】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2に係るハイブリッド自動車(車両)700(以下、単に自動車700とも言う)は、実施形態1に係る電池100を搭載し、この電池100に蓄えた電気エネルギを、駆動源の駆動エネルギの全部または一部として使用するものである(図10参照)。
【0062】
この自動車700は、電池100を複数組み合わせた組電池710を搭載し、エンジン740、フロントモータ720及びリアモータ730を併用して駆動するハイブリッド自動車である。具体的には、この自動車700は、その車体790に、エンジン740と、フロントモータ720及びリアモータ730と、組電池710(電池100)と、ケーブル750と、インバータ760とを搭載する。そして、この自動車700は、組電池710(電池100)に蓄えられた電気エネルギを用いて、フロントモータ720及びリアモータ730を駆動できるように構成されている。
前述したように、電池100は、長期間にわたり封止部材180で注液孔170を気密に封止できるので、この自動車700の耐久性を高くできる。
【0063】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。本実施形態3のハンマードリル800は、実施形態1に係る電池100を搭載した電池使用機器である(図11参照)。このハンマードリル800は、本体820の底部821に、電池100を含むバッテリパック810が収容されており、このバッテリパック810を、ドリルを駆動するためのエネルギー源として利用している。
前述したように、電池100は、長期間にわたり封止部材180で注液孔170を気密に封止できるので、このハンマードリル800の耐久性を高くできる。
【0064】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0065】
例えば、実施形態1では、電池ケースの内外を連通する「貫通孔」として、電解液117を注入するための注液孔170を例示したが、貫通孔は注液孔に限られない。貫通孔としては、例えば、電池ケース内の気体を抜くための通気孔などが挙げられる。また、実施形態1では、「貫通孔」を、電池ケース110のうちケース蓋部材113に設けたが、貫通孔の形成位置はこれに限られない。貫通孔は、例えば、ケース本体部材111の側面や底面に設けてもよい。また、実施形態1では、「貫通孔」の形態を段付きの円孔としたが、貫通孔の形態も適宜変更できる。
【0066】
また、実施形態1では、「電極体」として、各々帯状をなす正極板121及び負極板131をセパレータ141を介して互いに重ねて捲回してなる捲回型の電極体120を例示したが、電極体の形態はこれに限られない。例えば、電極体を、各々所定形状(例えば矩形状など)をなす正極板及び負極板をセパレータを介して交互に複数積層してなる積層型としてもよい。
また、実施形態1では、「封止部材」として、被覆部材(被覆部)181と挿入部材(挿入部)183とが一体化されたものを例示したが、被覆部と挿入部とを別体として形成することもできる。また、被覆部の形状や大きさ、挿入部の形状や大きさは、適宜変更できる。
【0067】
また、実施形態1では、「被覆部」として、電池ケース110と同じ材質(アルミニウム)からなる被覆部材181を例示したが、被覆部の材質は適宜変更できる。また、実施形態1では、溶接により、被覆部材181を電池ケース110に固着したが、固着方法はこれに限られない。例えば、ロウ材やハンダ、接着剤等を用いて、被覆部を電池ケースに固着してもよい。
【0068】
また、実施形態1では、封止部材の「挿入部」として、円錐台状の挿入部材183を例示したが、挿入部の形状や大きさは適宜変更できる。また、実施形態1では、「挿入部」として、パーフロロエラストマーからなる挿入部材183を例示したが、挿入部をなすゴム状弾性体の材質はこれに限られない。ゴム状弾性体の材質として、例えば、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
【0069】
このような材質の中から、第1温度範囲が20〜35℃の温度範囲を含み、かつ、第2温度範囲が−50〜10℃の温度範囲と少なくとも一部で重なる材質を選択するのが特に好ましい。仮封止工程から本封止工程まで、及び、気密検査工程を、極端に高い環境温度或いは低い環境温度で行わなくても済むからである。
【0070】
また、実施形態1では、「仮封止工程」から「本封止工程」までを行う環境温度を25℃とする場合を例示したが、この環境温度は、挿入部の弾性により挿入部で貫通孔を気密に封止可能な第1温度範囲内で、適宜変更できる。
また、実施形態1では、「仮封止工程」を減圧下で行っているが、これを大気圧下で行うこともできる。
【0071】
また、実施形態1では、「気密検査工程」を行う環境温度を−5℃とする場合を例示したが、この環境温度は、第1温度範囲よりも低温で、かつ、挿入部の弾性の低下により、挿入部による貫通孔の仮封止を維持不能な温度範囲内で、適宜変更できる。
また、実施形態1では、「気密検査工程」として、電池100を減圧下に置き、ガス検知器を用いて電池ケース110内からの気体の漏れを検知しているが、気密検査の方法はこれに限られない。例えば、電池100を水などの液中に没して、電池ケース110内からの気体の漏れ(泡)を目視等により確認してもよい。
【0072】
また、実施形態2では、本発明に係る電池100を搭載する車両として、ハイブリッド自動車700を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する車両としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータなどが挙げられる。
【0073】
また、実施形態3では、本発明に係る電池100を搭載する電池使用機器して、ハンマードリル800を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する電池使用機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の電動工具、無停電電源装置など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。
【符号の説明】
【0074】
100 リチウムイオン二次電池(電池)
110 電池ケース
111 ケース本体部材
113 ケース蓋部材
117 電解液
120 電極体
150 正極端子
160 負極端子
170 注液孔(貫通孔)
171 内側円筒部
171fa 角部
173 外側円筒部
180 封止部材
181 被覆部材(被覆部)
181m (被覆部材の)周縁部
181y 溶接部
183 挿入部材(挿入部)
183f 側面
183t 当接部
700 ハイブリッド自動車(車両)
710 組電池
800 ハンマードリル(電池使用機器)
810 バッテリパック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、
前記電池ケース内に収容された電極体と、
前記電池ケース内に収容された電解液と、
前記貫通孔を前記電池ケースの外部から気密に封止してなる封止部材であって、
ゴム状弾性体からなり、前記貫通孔に挿入された挿入部、及び、
前記挿入部を前記外部から覆いつつ、前記電池ケースのうち前記貫通孔の周囲を囲む環状の孔周囲部に気密かつ環状に接合してなる被覆部、を有する封止部材と、を備える
電池の製造方法であって、
前記挿入部を、前記電解液が収容された前記電池ケースの前記貫通孔に前記外部から圧入し、前記挿入部で前記貫通孔を気密に仮封止する仮封止工程と、
前記仮封止工程の後、前記挿入部を前記外部から覆いつつ、前記被覆部を前記電池ケースの前記孔周囲部に気密かつ環状に接合する本封止工程と、
前記本封止工程の後、前記封止部材の被覆部と前記電池ケースの前記孔周囲部との間の気密性を検査する気密検査工程と、を備え、
前記仮封止工程から前記本封止工程までを、
前記挿入部の弾性によって、前記挿入部で前記貫通孔を気密に仮封止可能な第1温度範囲内の環境温度で行い、
前記気密検査工程を、
前記第1温度範囲よりも低温で、かつ、
前記挿入部の弾性の低下により、前記挿入部による前記貫通孔の仮封止を維持不能な第2温度範囲内の環境温度で行う
電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、
前記ゴム状弾性体は、
前記第1温度範囲が20〜35℃の温度範囲を含み、かつ、
前記第2温度範囲が−50〜10℃の温度範囲と少なくとも一部で重なる材質からなる
電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって、
前記仮封止工程は、減圧下で行い、
前記本封止工程は、大気圧下で行う
電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−20730(P2013−20730A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151147(P2011−151147)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】