説明

電池システム

【課題】温度管理を適切に行える電池システム100を提供する。
【解決手段】複数の電池セル1を備えた電池セル群1Aと、電池セル1毎の電圧を検出するための電圧検出回路21を有する検出回路基板7とを、筐体5e、8、9、10に収納する電池システム100であって、筐体5e、8、9、10が、隔離壁5a、5bによって、セル群収納室17と基板収納室18に分けられ、セル群収納室17に電池セル群1Aが配置され、基板収納室18に検出回路基板7が配置され、セル群収納室17には、電池セル群1Aで発生した熱をセル群収納室17の外に放熱するセル室放熱部2、3が設けられ、基板収納室18には、検出回路基板7で発生した熱を基板収納室18の外に放熱する基板室放熱部19が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備えた電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池システムは、自然エネルギを利用して発電した電力の蓄電、スマートグリッドの電源、施設のバックアップ電源として利用され、複数の電池システムを組み合わせることによって、メガワット級の電源も構築することができる。電池システムには、複数の電池セルと、この複数の電池セル毎の電圧を検出するための検出回路などの回路基板(電子部品)とが備えられている。電池セルは、充電・放電の際に発熱し、温度が上昇する。電池セルの温度上昇は、充電・放電の特性を低下させるので、温度上昇を抑制するために、放熱構造が提案されている(特許文献1と2等参照)。また、検出回路基板(電子部品)の電池セルの温度上昇による弊害を防止するための放熱構造が、提案されている(特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123371号公報
【特許文献2】特開2010―160931号公報
【特許文献3】特開2010―170870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電池システムでは、回路基板(電子部品)が発熱し、温度が上昇することで、回路基板(電子部品)自体に弊害を及ぼしたり、電池セルの温度を上昇させ充電・放電の特性を低下させたりする場合があると考えられた。特に、回路基板(電子部品)の発熱では、特定の電子部品が主に発熱するため、回路基板(電子部品)内が局所的に発熱し、複数の電池セルの内の一部(局所)の電池セルの温度が上昇することになる。これにより、複数の電池セルの内の一部(局所)の電池セルの充電・放電の特性が低下し、複数の電池セルの充電・放電の特性がばらつきやすくなると考えられた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、温度管理を適切に行える電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、
複数の電池セルを備えた電池セル群と、前記電池セル毎の電圧を検出するための電圧検出回路を有する検出回路基板とを、筐体に収納する電池システムであって、
前記筐体が、隔離壁によって、セル群収納室と基板収納室に分けられ、
前記セル群収納室に、前記電池セル群が配置され、
前記基板収納室に、前記検出回路基板が配置され、
前記セル群収納室には、前記電池セル群で発生した熱を前記セル群収納室の外に放熱するセル室放熱部が設けられ、
前記基板収納室には、前記検出回路基板で発生した熱を前記基板収納室の外に放熱する基板室放熱部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度管理を適切に行える電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電池システムの斜視図であり、(a)は前方斜め上方から見た斜視図であり、(b)は後方斜め上方から見た斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る電池システムの側面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る電池システムの背面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電池システムの分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る電池システムの回路図である。
【図5】図2(a)のB−B方向の矢視断面図である。
【図6】図2(b)のC−C方向の矢視断面図である。
【図7】図2(a)のA−A方向の矢視断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る電池システムを搭載した統合システムの斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る電池システムを搭載した統合システムの分解斜視図である。
【図10】統合システムに搭載された状態の複数の電池システムの正面図である。
【図11】統合システムに搭載された状態の複数の電池システムの前方斜め上方から透視した斜視図である。
【図12】統合システムに搭載された状態の複数の電池システムの後方斜め上方から透視した斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る電池システムの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略している。
【0010】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100の斜視図を示す。図1(a)に、電池システム100を、前方斜め上方から見た斜視図を示し、図1(b)に、電池システム100を、後方斜め上方から見た斜視図を示す。電池システム100の上面部と側壁上部には、筐体の一部をなす筐体上部10が設けられている。
【0011】
電池システム100の前面には、筐体の一部をなす筐体前面部8が設けられている。筐体前面部8(電池システム100)は、正面視で、アルファベットの大文字Tの形をしている。筐体前面部8の上部には、インジケータ15と、デバッグ用コネクタ16と、通気用の開口(第1開口、基板室放熱部)19a(19)とが設けられている。インジケータ15には、電池システム100の状態、例えば、運転中とか、スリープ状態とか、異常発生状態とかの状態を、表示することができる。筐体前面部8の上下には、固定用のネジ孔の設けられたストッパ24が設けられている。デバッグ用コネクタ16は外部情報処理装置との結合部であり、後述する電圧検出基板7に実装されたマイクロコントローラのソフトウエア(プログラムなど)の書き換えや書き込みが必要な時、マイクロコントローラ或いはメモリに記憶された記憶情報(電池の特性情報、使用履歴情報など)の読み出しが必要な時などに外部情報処理装置が結合される。外部情報処理装置による書き換え処理、書き込み処理及び読み出し処理は、電池システム100の初期設置時や、サービスマンによる電池システム100のメンテナンス時に行われる。
【0012】
電池システム100の後面には、筐体の一部をなす筐体後面部9が設けられている。筐体後面部9は、後面視で、アルファベットの大文字Tの形をしている。筐体後面部9の上部には、信号が送受信される通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13と、通気用の開口(第2開口、基板室放熱部)19b(19)とが設けられている。筐体後面部9の中部には、充電・放電の電流が流れる電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12が設けられている。筐体後面部9の下部には、通気用の開口(第3開口、基板室放熱部)19c、19d(19)が設けられている。開口(第3開口、基板室放熱部)19d(19)は、後方に向かって開口している。開口(第3開口、基板室放熱部)19c(19)は、側方に向かって開口している。
【0013】
電池システム100の前方から見て筐体前面部8の右側には、筐体の一部をなす筐体側面下部6が設けられ、左側(電池システム100の後方から見て筐体後面部9の右側)には、筐体の一部をなす筐体側面下部5cが設けられている。電池システム100の底面には、筐体の一部をなす筐体底面部5eが設けられている。電池システム100の筐体は、筐体上部10と、筐体前面部8と、筐体後面部9と、筐体側面下部6、5cと、筐体底面部5eと有し、外界からの衝撃等から電池システム100の内部を保護している。
【0014】
図2(a)に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100の側面図を示す。側面視で、筐体後面部9の幅は、筐体前面部8の幅より大きくなっている。
【0015】
図2(b)に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100の後面図を示す。筐体後面部9(電池システム100)は、前記のとおり後面視で、アルファベットの大文字Tの形をしており、筐体後面部9(電池システム100)の上部の幅W2は、筐体後面部9(電池システム100)の中部と下部の幅W1より広くなっている。
【0016】
図3に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100の分解斜視図を示す。電池システム100は、金属容器5と、金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)6とを有している。金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)6は、前記した筐体の一部をなす筐体側面下部6を兼ねている。金属容器5と、金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)6とは、いわゆる、容器とその蓋の関係にあり、金属容器5を、金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)6で閉じることにより、孔5fを除くと、内部空間(セル群収納室17(図4参照))を密閉状態にすることができる。その内部空間(セル群収納室17(図4参照))に、複数の電池セル1(図4参照)を有する電池セル群1Aと、緩衝部材(セル室放熱部)3、4が収められる。電池セル群1Aの周囲は、まず、緩衝部材(セル室放熱部)3、4で覆われ、その外側を、金属容器5と金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)6で覆われることになる。緩衝部材(セル室放熱部)3、4は、電池システム100の外部からの衝撃などを緩衝する役割と、電池セル1の膨張を吸収する役割と、伝熱をよくする役割を備えている。
【0017】
金属容器5は、右側側面が開いている。この右側側面に、金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)6が配置される。このため、金属容器5は、容器上面部をなす上下間隔離壁(容器上面部)5aと、容器後面部をなす前後間隔離壁(容器後面部)5bと、左側の容器側面部をなす筐体側面下部(容器側面部)5cと、容器前面部5dと、容器底面部をなす筐体底面部(容器底面部)5eとを有している。前後間隔離壁(容器後面部)5bに、孔5fが設けられている。
【0018】
上下間隔離壁(容器上面部)5aの上には、絶縁シート14が配置されている。上下間隔離壁(容器上面部)5aの上方には、絶縁シート14を介して、検出回路基板7が配置されている。筐体上部10は、上下間隔離壁(容器上面部)5aに固定され、検出回路基板7の両側方と上方を覆う。検出回路基板7は、上下間隔離壁(容器上面部)5aと、筐体上部10とで囲まれた内部空間(基板収納室18(図4参照:なお、図4は、デフォルメしてあり、基板収納室18が実際より誇張されている))内に配置されることになる。この内部空間(基板収納室18(図4参照))の前方は、筐体前面部8によって閉じられ、後方は、筐体後面部9によって閉じられている。
【0019】
筐体前面部8は、容器前面部5dを覆っている。筐体後面部9は、前後間隔離壁(容器後面部)5bを覆っている。保護回路基板11と、電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12と、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13は、前後間隔離壁(容器後面部)5bと、筐体後面部9とで囲まれた内部空間(基板収納室18(図4参照))内に配置されることになる。この内部空間(基板収納室18(図4参照))は、上下間隔離壁(容器上面部)5aと、前後間隔離壁(容器後面部)5bと、筐体前面部8と、筐体後面部9と、筐体上部10とによって区画され、この内部空間(基板収納室18(図4参照))には、検出回路基板7と、保護回路基板11と、電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12と、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13が設けられている。
【0020】
図4に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100の回路図を示す。なお、図4は、デフォルメしてあり、基板収納室18が実際より誇張されている。電池システム100は、電池セル群1Aを有している。電池セル群1Aは、複数(図4では6個)の電池セル1を備えている。図4では、電池セル1は直列接続されているが、これに限らず、並列接続でも、直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。複数の電池セル1が接続された電池セル群1Aの負(−)極は、電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12の一方に接続されている。複数の電池セル1が接続された電池セル群1Aの正(+)極は、定格以上の大電流から電池セル群1Aを保護するための保護回路(ヒューズ)22の一方の端子に接続されている。保護回路(ヒューズ)22の他方の端子は、電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12の他方に接続されている。保護回路(ヒューズ)22は、定格以上の大電流が流れると、発熱して、昇温し、所定温度以上に昇温すると溶断し電流を遮断する。このため、保護回路(ヒューズ)22は、通常使用時の定格未満の電流でも、溶断しない温度未満ではあるが昇温している。保護回路(ヒューズ)22がこのような温度範囲で昇温すると、従来であれば、複数の電池セル1の内の一部(局所)の電池セル1の充電・放電の特性が低下(変化)し、複数の電池セル1の充電・放電の特性がばらつきやすくなると考えられたが、第1の実施形態によれば、詳細は後記するが、保護回路(ヒューズ)22を有する保護回路基板11を冷却することができるので、保護回路(ヒューズ)22が発熱しても、保護回路基板11の昇温を抑制することができる。
【0021】
電池セル群1Aの負(−)極と正(+)極は、検出回路基板7に設けられているDC/DCコンバータ(DC/DC)に接続している。DC/DCコンバータ(DC/DC)は、検出回路基板7に設けられている電圧検出回路21に接続されている。電圧検出回路21は、DC/DCコンバータ(DC/DC)を介して、電池セル群1Aから電力が供給されている。電圧検出回路21には、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13が接続されている。電圧検出回路21は、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13を介して、外部配線基板(外部装置)23に接続し、外部配線基板(外部装置)23と通信することができる。
【0022】
電池セル群1Aの電池セル1毎の負(−)極と正(+)極は、電圧検出回路21に接続されている。電池セル1毎の負(−)極と正(+)極の間には、バランシング抵抗25と、スイッチ26とが直列に接続されている。スイッチ26のオン・オフは、電圧検出回路21によって行われる。電圧検出回路21は、電池セル1毎に電圧を測定する。電圧検出回路21は、測定結果に基づいて、電池セル群1Aの複数の電池セル1の電圧のばらつき(偏差)を算出する。電圧検出回路21は、ばらつき(偏差)が所定値を超えている場合は、電池セル群1Aの複数の電池セル1の中から、電圧の大きい順に少なくとも1つ抽出する。電圧検出回路21は、抽出された電池セル1の負(−)極と正(+)極の間に接続されたスイッチ26をオンにし、バランシング抵抗25に抽出された電池セル1から電流を流し、バランシング抵抗25で電力を消費させる。電圧検出回路21は、抽出された電池セル1の電圧が、抽出されていない電池セル1の1つの電圧に等しくなるまで、電流を流す。これにより、電池セル群1Aの複数の電池セル1の電圧のばらつき(偏差)を小さくでき、充電・放電の特性を向上させることができる。バランシング抵抗25で電力を消費させる際には、バランシング抵抗25が発熱し、温度が上昇する。バランシング抵抗25の発熱によって、検出回路基板7内が局所的に昇温すると、従来であれば、複数の電池セル1の内の一部(局所)の電池セル1の温度が上昇し、充電・放電の特性が低下(変化)し、複数の電池セル1の充電・放電の特性がばらつきやすくなると考えられたが、第1の実施形態によれば、詳細は後記するが、検出回路基板7を冷却することができるので、バランシング抵抗25が発熱しても、バランシング抵抗25の昇温、すなわち、検出回路基板7内の局所的な昇温を、抑制することができる。
【0023】
図4に示すように、電池システム100は、筐体前面部8、筐体後面部9、筐体上部10、筐体底面部5e等で構成される筐体(8、9、10、5e等)を有している。この筐体(8、9、10、5e等)は、電池セル群1Aと、検出回路基板7と、保護回路基板11とを、収納している。この筐体(8、9、10、5e等)内の内部空間は、上下間隔離壁5aと、前後間隔離壁5bと、容器前面部5dとによって、セル群収納室17と基板収納室18とに分けられている。電池セル群1Aと検出回路基板7の間には、上下間隔離壁5aが設けられているので、電池セル群1Aと検出回路基板7の相互間の対流や輻射等による伝熱が抑制され、相互の熱の行き来を抑制することができる。電池セル群1Aと保護回路基板11の間には、前後間隔離壁5bが設けられているので、電池セル群1Aと保護回路基板11の相互間の対流や輻射等による伝熱が抑制され、相互の熱の行き来を抑制することができる。セル群収納室17と基板収納室18とは、前後間隔離壁5bに開口された孔5fを介して、連通している。
【0024】
セル群収納室17に、電池セル群1Aが配置されている。基板収納室18に、検出回路基板7と保護回路基板11と電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12が、配置されている。このため、電池セル群1Aと検出回路基板7の間の配線と、電池セル群1Aと保護回路基板11の間の配線と、電池セル群1Aと電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12の間の配線とは、孔5fを通るように引き回されている。
【0025】
セル群収納室17は、金属容器5(5a、5b、5d、5e等(図3の金属容器蓋部6も含む))によって仕切られている。電池セル群1Aが、一体構造の金属容器5(5a、5b、5d、5e等)内に配置されていることで、強力な外力からも確実に電池セル群1Aを保護することができる。セル群収納室17には、電池セル群1Aで発生した熱を、セル群収納室17の外に放熱するセル室放熱部2、3が設けられている。
【0026】
セル室放熱部2、3は、複数の電池セル1の間に挟まれた伝熱板2と、伝熱板2と筐体(8、9、10、5e等)の一部(筐体底面部5e)とを、熱的に接続する緩衝部材3(4、図3の緩衝部材4も含む)とを有している。電池セル群1Aで発生した熱は、伝熱板2と緩衝部材3(4)とを介し、筐体5e等へ伝熱され、筐体5eからセル群収納室17の外に放熱される。これにより、電池セル群1Aの発熱による昇温を抑制することができる。なお、金属容器5(5a、5b、5d、5e等(図3の金属容器蓋部6も含む))は、アルミニウムやアルミニウム合金や鉄などの部材により形成されることが、伝熱・放熱性の観点から望ましいが、これに限らず、合成樹脂を成型して形成してもよい。
【0027】
基板収納室18には、検出回路基板7と保護回路基板11とが、配置されており、基板収納室18には、検出回路基板7と保護回路基板11で発生した熱を、基板収納室18の外に放熱する基板室放熱部19(19a、19b、19c、19d)が設けられている。
【0028】
基板室放熱部19(19a、19b、19c、19d)は、筐体(8、9、10、5e等)の一部(筐体前面部8、筐体後面部9)に設けられた開口(基板室放熱部)19(19a、19b、19c、19d)を有している。開口(基板室放熱部)19(19a、19b、19c、19d)を介して、基板収納室18内の空気と外気とを入れ換えることで、検出回路基板7と保護回路基板11で発生した熱を、空気を介して基板収納室18の外に放熱することができる。
【0029】
電池セル群1Aは、電池システム100の下部に配置されている。これに伴い、セル群収納室17も、電池システム100の下部に配置されている。検出回路基板7は、電池システム100の上部に配置され、保護回路基板11は、電池システム100の後部に配置されている。これに伴い、基板収納室18は、電池システム100の上部から後部にかけて鉤状に(アルファベットの大文字Lを横にした鏡像状に)配置されている。基板収納室18は、上下間隔離壁5aを介してセル群収納室17の上方に配置され、前後間隔離壁5bを介してセル群収納室17の側方に配置されている。電池セル群1Aに対して、検出回路基板7は上下間隔離壁5aを介して上方に、保護回路基板11は前後間隔離壁5bを介して後方に配置されている。検出回路基板7は、電池セル群1Aの上方に配置されているので、電池セル群1Aで液漏れが発生しても検出回路基板7にかかることはない。
【0030】
開口(基板室放熱部)19(19a、19b、19c、19d)は、第1開口(基板室放熱部)19a(19)と、第2開口(基板室放熱部)19b(19)と、第3開口(基板室放熱部)19c、19d(19)とを有している。
【0031】
第1開口19aは、筐体前面部8の上部に形成されている。第1開口19aは、基板収納室18の前方に設けられている。第1開口19aは、電池システム100の前方に向かって開口している。
【0032】
第2開口19bは、筐体後面部9の上部に形成されている。第2開口19bは、基板収納室18の後方の上部に設けられている。第2開口19bは、電池システム100の後方に向かって開口している。
【0033】
第1開口19aと、検出回路基板7と、第2開口19bとは、略同じ高さに配置され、略水平な略一直線上に配置されている。外気(空気)が、第1開口19aから入って、第2開口19bから出る場合に、第1開口19aから第2開口19bへの空気の流れる道(風路)27a上に、検出回路基板7が配置されている。空気が入れ替わりながら、検出回路基板7から熱を奪うことで、検出回路基板7の昇温を抑制することができる。なお、電池システム100の後方に、外部配線基板(外部装置)23を配置し、外部配線基板(外部装置)23に設けられたファン23aで、風路27a上に空気の流れ(風)を強制的に発生させてもよい。検出回路基板7の昇温の抑制効果を高めることができる。
【0034】
第3開口19c、19dは、筐体後面部9の下部に形成されている。第3開口19c、19dは、基板収納室18の後方の下部に設けられている。第3開口19c(図1(b)参照)は、電池システム100の側方に向かって開口している。第3開口19d(図1(b)参照)は、電池システム100の後方に向かって開口している。第3開口19c、19dは、保護回路基板11と略同じか低い高さに配置されている。第3開口19cは、保護回路基板11より低く配置されている。第3開口19dは、保護回路基板11と略同じ高さに配置されている。保護回路基板11で、発熱すると、周囲の空気が暖められて膨張し比重が小さくなるので、上昇流が生じる。この上昇流に沿って、風路27bが形成される。風路27bの上流側は、第3開口19cから外気(空気)が流れ込むことで形成される。風路27bの下流側は、第2開口19bから空気が流れ出ることで形成される。そして、上昇する風路27bが形成され、第3開口19cから外気(空気)が吸い込まれるようになると、第3開口19cから吸い込まれた空気が、第3開口19dから流れ出る流路27bも形成される。空気が入れ替わりながら、保護回路基板11から熱を奪うことで、保護回路基板11の昇温を抑制することができる。
【0035】
なお、風路27aに対しては、第1開口19aと第2開口19bだけでなく、風路27aの周囲に配置される筐体上部10と上下間隔離壁5aも、前方から後方へ一直線に導くガイドとして機能していると考えることができる。同様に、風路27bに対しては、第3開口19cと第2開口19bだけでなく、風路27bの周囲に配置される筐体後面部9と前後間隔離壁5bも、下方から上方へ一直線に導くガイドとして機能していると考えることができる。また、風路27aを流れる空気によって、風路27bを流れる空気が風路27aに引き寄せられることで、風路27bを流れる空気の流量を増加させている。また、筐体前面部8、筐体後面部9、筐体上部10は、合成樹脂を成型して形成することができるが、これに限られず、冷却性を向上させるために空冷に加えて熱伝導・放熱を考慮して、アルミニウムや鉄等の金属材料を成型して形成してもよい。また、第1開口19aと第2開口19bと第3開口19c、19dの開口形状と、開口位置は、検出回路基板7と保護回路基板11で必要と考えられる冷却能力や、外部配線基板(外部装置)23のファン23aから供給される風量や、外気の温度や湿度等に応じて変更すればよい。
【0036】
電池システム100は、電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12と、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13を有している。電力接続用端子12は、電池セル群1Aを、外部配線基板(外部装置)23に接続することができる。電力接続用端子12は、外部配線基板(外部装置)23の電力接続用端子(主回路コネクタ)23bと着脱する。
【0037】
通信接続用端子13は、電圧検出回路21を、外部配線基板(外部装置)23に接続することができる。通信接続用端子13は、外部配線基板(外部装置)23の通信接続用端子(通信コネクタ)23cと着脱する。
【0038】
電力接続用端子12の着脱方向と、通信接続用端子13の着脱方向とが、互いに一致し、それらの着脱方向が、電池システム100の前後方向と平行(一致)になっている。電力接続用端子12と通信接続用端子13は、筐体後面部9、すなわち、電池システム100の一平面をなす後面上に設けられている。外部配線基板(外部装置)23の電力接続用端子(主回路コネクタ)23bと通信接続用端子(通信コネクタ)23cは、外部配線基板(外部装置)23の一平面をなす正面上に設けられている。これらにより、電池システム100を、前方から後方へスライドさせるだけで、電力接続用端子12を、電力接続用端子23bに接続し、通信接続用端子13を、通信接続用端子23cに接続することができる。逆に、電池システム100を、後方から前方へスライドさせるだけで、電力接続用端子12と電力接続用端子23bの接続を切断し、通信接続用端子13と通信接続用端子23cの接続を切断することができる。
【0039】
図5に、図2(a)のB−B方向の矢視断面図を示す。図2(a)の例では、電池セル1として、ラミネート型電池セルを示している。ラミネート型の電池セル1は、平板形状であり、隣接する電池セル1との間に伝熱板(セル室放熱部)2が挟み込まれている。電池セル1で発生した熱は、伝熱板(セル室放熱部)2を伝導して、伝熱板(セル室放熱部)2の端部に達し、その端部から緩衝部材(セル室放熱部)3に伝導し、緩衝部材(セル室放熱部)3から金属容器5に伝導する。
【0040】
また、電池セル1と緩衝部材(セル室放熱部)4の間にも伝熱板(セル室放熱部)2が挟み込まれている。電池セル1で発生した熱は、伝熱板(セル室放熱部)2を伝導して緩衝部材(セル室放熱部)4に達し、緩衝部材(セル室放熱部)4から金属容器蓋部6に伝導する。
【0041】
金属容器5と金属容器蓋部6に伝導した熱は、周囲の空気を暖め、放熱路28が形成される。電池システム100の前後方向に流れる風路27cを、筐体側面下部5cと金属容器蓋部6に対向する電池システム100の側方に形成することで、暖められる空気を入れ替えることができ、冷却効果を向上させることができる。
【0042】
また、基板収納室18内には、検出回路基板7と筐体上部10の隙間と、検出回路基板7と上下間隔離壁の隙間とに、風路27aが形成される。検出回路基板7の周囲に風路27aが形成されることで、効率よく検出回路基板7を冷却することができる。
【0043】
図6に、図2(b)のC−C方向の矢視断面図を示す。第1開口19aは、筐体前面部8の上部に形成されている。第1開口19aは、基板収納室18の前方に設けられている。第2開口19bは、筐体後面部9の上部に形成されている。第2開口19bは、基板収納室18の後方の上部に設けられている。第1開口19aと、検出回路基板7と、第2開口19bとは、略同じ高さに配置され、略水平な略一直線上に配置されている。外気(空気)が、第1開口19aから入って、第2開口19bから出るように、風路27aが形成され、その風路27a上に検出回路基板7が配置されている。空気が入れ替わりながら、検出回路基板7から熱を奪うことで、検出回路基板7の昇温を抑制することができる。
【0044】
また、保護回路基板11の上方には、風路27bが形成される。風路27bの上流側は、第3開口19c(図4参照)から外気(空気)が流れ込むことで形成される。風路27bの下流側は、第2開口19bから空気が流れ出ることで形成される。空気が入れ替わりながら、保護回路基板11から熱を奪うことで、保護回路基板11の昇温を抑制することができる。
【0045】
図7に、図2(a)のA−A方向の矢視断面図を示す。電池セル群1Aは、放熱路28と風路27cを用いて、放熱する。保護回路基板11は、第3開口19c(図4参照)から流れ込み第3開口19dから流れ出る風路27bを用いて、放熱する。このように、電池セル群1Aと、保護回路基板11は、それぞれ、異なるルートに熱を伝え冷却する冷却手段により、冷却していることがわかる。
【0046】
図8に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100を搭載した統合システム101の斜視図を示す。統合システム101は、多段(図8の例では7段)の棚を有するラック31を有している。ラック31の最上段には、統合制御部32が収められている。ラック31の最上段以外の6段には、電池システム100が収められている。ラック31の1段毎に、複数(図8の例では4個)の電池システム100が収められている。ラック31の後面には、外部配線基板23が設けられている。
【0047】
図9に、本発明の第1の実施形態に係る電池システム100を搭載した統合システム101の分解斜視図を示す。電池システム100は、ラック31に対して、後方に押し込むことによって、装着することができる。また、電池システム100は、ラック31に対して、前方に引き出すことによって、脱離させることができる。
【0048】
外部配線基板23には、それぞれの電池システム100に対応するように、ファン23aと、電力接続用端子(主回路コネクタ)23bと、通信接続用端子(通信コネクタ)23cとが設けられている。電池システム100をラック31に装着することで、同時に、電池システム100の電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12と、電力接続用端子(主回路コネクタ)23bとを接続し、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13と、通信接続用端子(通信コネクタ)23cとを接続することができる。電池システム100をラック31から脱離させることで、同時に、電池システム100の電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)12と、電力接続用端子(主回路コネクタ)23bとの接続を切断し、通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)13と、通信接続用端子(通信コネクタ)23cとの接続を切断することができる。
【0049】
また、外部配線基板23の通信接続用端子(通信コネクタ)23cと、外部配線基板23内の配線を介して、それぞれの電池システム100は、統合制御部32に接続している。統合制御部32は、それぞれの電池システム100に対して、充放電の制御をすることができる。
【0050】
図10に、統合システム101に搭載された状態に並べられた複数(図10の例では4個)の電池システム100の正面図を示す。電池システム100はそれぞれ、ストッパ24が、ラック31の棚に当るまで押し込まれ、ストッパ24に設けられたネジ孔を用いて、ラック31の棚にネジ止めされる。
【0051】
また、図2(b)で説明したように、電池システム100は、正面視で、アルファベットの大文字Tの形をしており、電池システム100の上部の幅W2は、電池システム100の中部と下部の幅W1より大きくなっている。そして、幅が広い電池システム100の上部には、基板収納室18(図5参照)が配置され、幅が狭い電池システム100の中部と下部には、セル群収納室17(図5参照)が配置されている。これにより、図10に示すように、電池システム100の金属容器蓋部6と、隣接する電池システム100の筐体側面下部5cの間には、隙間が生じ、風路27cを形成することができる。同様に、電池システム100の金属容器蓋部6とラック31の間にも隙間が生じ、風路27cを形成することができる。電池システム100の筐体側面下部5cとラック31の間にも隙間が生じ、風路27cを形成することができる。また、第1開口19aの正面には、風路27aが形成されることになる。
【0052】
図11に、統合システム101に搭載された状態に並べられた複数の電池システム100の前方斜め上方から透視した斜視図を示し、図12に、同様の複数の電池システム100の後方斜め上方から透視した斜視図を示す。図10、図11と図12に示すように、風路27aに対して、風路27cは、離れており、それぞれ、異なるルートに熱を伝え冷却する冷却(手段)であることがわかる。
【0053】
(第2の実施形態)
図13に、本発明の第2の実施形態に係る電池システム100の分解斜視図を示す。第2の実施形態の電池システム100が、第1の実施形態の電池システム100と異なっている点は、電池セル1が、ラミネート型電池セルではなく、円筒型電池セルである点である。円筒型電池セルは、外側が金属製の筒に覆われている場合があるので、図13に示すように伝熱板2を省くことができるが、伝熱板2を用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 電池セル
1A 電池セル群
2 伝熱板(セル室放熱部)
3、4 緩衝部材(セル室放熱部)
5 金属容器
5a 上下間隔離壁(容器上面部)
5b 前後間隔離壁(容器後面部)
5c 筐体側面下部(容器側面部)
5d 容器前面部
5e 筐体底面部(容器底面部)
5f 孔
6 金属容器蓋部(筐体側面下部、容器側面部)
7 検出回路基板
8 筐体前面部
9 筐体後面部
10 筐体上部(上面部と側面上部)
11 保護回路基板
12 電力接続用端子(主回路コネクタ、第2コネクタ)
13 通信接続用端子(通信コネクタ、第1コネクタ)
14 絶縁シート
15 インジケータ
16 デバッグ用コネクタ
17 セル群収納室
18 基板収納室
19 開口(基板室放熱部)
19a 第1開口(基板室放熱部)
19b 第2開口(基板室放熱部)
19c、19d 第3開口(基板室放熱部)
21 電圧検出回路
22 保護回路
23 外部配線基板(外部装置)
23a ファン
23b 電力接続用端子(主回路コネクタ)
23c 通信接続用端子(通信コネクタ)
24 ストッパ
25 バランシング抵抗
26 スイッチ
27a、27b、27c 風路
28 放熱路
31 ラック
32 統合制御部
100 電池システム
101 統合システム
W1、W2 筐体の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを備えた電池セル群と、前記電池セル毎の電圧を検出するための電圧検出回路を有する検出回路基板とを、筐体に収納する電池システムであって、
前記筐体が、隔離壁によって、セル群収納室と基板収納室に分けられ、
前記セル群収納室に、前記電池セル群が配置され、
前記基板収納室に、前記検出回路基板が配置され、
前記セル群収納室には、前記電池セル群で発生した熱を前記セル群収納室の外に放熱するセル室放熱部が設けられ、
前記基板収納室には、前記検出回路基板で発生した熱を前記基板収納室の外に放熱する基板室放熱部が設けられていることを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記セル室放熱部は、
複数の前記電池セルの間に挟まれた伝熱板と、
前記伝熱板と前記筐体とを熱的に接続する緩衝部材とを有し、
前記電池セル群で発生した熱を、前記伝熱板と前記緩衝部材とを介し、前記筐体から前記セル群収納室の外に放熱することを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記基板室放熱部は、
前記筐体に設けられた開口を有し、
前記開口を介して、前記基板収納室内の空気と外気とを入れ換えることで、前記検出回路基板で発生した熱を、前記空気を介して前記基板収納室の外に放熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記基板収納室は、前記セル群収納室の上方に配置され、
前記開口は、第1開口と第2開口とを有し、
前記第1開口と、前記検出回路基板と、前記第2開口とは、略水平な略一直線上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記筐体に収納され、定格以上の大電流から前記電池セル群を保護するための保護回路を有する保護回路基板を有し、
前記保護回路基板は、前記基板収納室に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項6】
前記基板収納室は、前記セル群収納室の上方から後方へ配置され、
前記電池セル群に対して、前記検出回路基板は上方に、前記保護回路基板は後方に配置され、
前記開口は、第1開口と第2開口と第3開口とを有し、
前記第1開口と、前記検出回路基板と、前記第2開口とは、略水平な略一直線上に配置され、
前記第3開口は、前記保護回路基板と略同じか低い高さに配置されていることを特徴とする請求項5に記載の電池システム。
【請求項7】
前記略一直線の方向と直交する水平方向における、前記セル群収納室を区画する領域の前記筐体の幅は、前記基板収納室を区画する領域の前記筐体の幅より、狭くなっていることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の電池システム。
【請求項8】
前記電圧検出回路を外部装置に接続するための第1コネクタと、
前記電池セル群を外部装置に接続するための第2コネクタとを有し、
前記第1コネクタの着脱方向と前記第2コネクタの着脱方向とが、前記略一直線の方向と平行になっていることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−182004(P2012−182004A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43924(P2011−43924)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】