電池トレイ
【課題】一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を収納可能な電池トレイを提供する。
【解決手段】第1傾斜面4と第2傾斜面5とが対向しており、第1傾斜面4と第2傾斜面5との間隔は、開口11に向かうにつれて広がっており、収納部2底部の対角方向のうち、一方の対角方向に一対の第1傾斜面4が配置され、他方の対角方向に1対の第2傾斜面5が配置され、第2傾斜面5は、第1傾斜面4に比べ直立面に近接しており、電池3の収納状態において、第2傾斜面5は、電池3の幅方向における中心に向かうにつれて、電池3から遠ざかるように傾斜しており、電池3の幅方向移動を規制する規制面があり、開口11対角位置に、電池3の回転移動を規制する規制面16、17があり、幅方向移動を規制する規制面と、回転移動を規制する規制面16、17とが鈍角で交わっている。
【解決手段】第1傾斜面4と第2傾斜面5とが対向しており、第1傾斜面4と第2傾斜面5との間隔は、開口11に向かうにつれて広がっており、収納部2底部の対角方向のうち、一方の対角方向に一対の第1傾斜面4が配置され、他方の対角方向に1対の第2傾斜面5が配置され、第2傾斜面5は、第1傾斜面4に比べ直立面に近接しており、電池3の収納状態において、第2傾斜面5は、電池3の幅方向における中心に向かうにつれて、電池3から遠ざかるように傾斜しており、電池3の幅方向移動を規制する規制面があり、開口11対角位置に、電池3の回転移動を規制する規制面16、17があり、幅方向移動を規制する規制面と、回転移動を規制する規制面16、17とが鈍角で交わっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電池の製造工程において、電池を収納する電池トレイに関し、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を収納可能な電池トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造工程においては、電池をトレイに収納した状態で、処理を進める工程がある。また、製造工程間の受渡しや、保管にもトレイが用いられる。特許文献1、2には、軽量化を図ると同時に必要強度を確保できる電池トレイが提案されている。
【0003】
また、電池の化成(充電)工程においては、多数の電池をトレイに収納した状態で、電池の上下端子に電極を押し当てた状態で充電をする。この場合、電池の上下端子と電極との間の位置精度を確保し、確実な充電をする必要がある。
【0004】
図17(a)に、従来の電池トレイの一例の平面図を示している。本図は角形電池用のトレイの例を示している。四角形状の電池トレイ100に多数の電池収納部101を設けている。図17(b)は、電池収納部101の1個分の拡大図を示している。本図は、角形電池102(斜線部)を収納した状態を示している。
【0005】
電池収納部101の両端部103は幅を狭めており、この部分に角形電池101の両端部が係合している。このことにより、角形電池102を安定して電池収納部101に載置することができる。したがって、化成工程においては、角形電池101の上下端子と、充電用の上下の電極との位置関係の精度が確保され、確実に充電を完了することができる。
【特許文献1】特開2000−53182号公報
【特許文献2】特開2002−362566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図17に示したような電池トレイ100は、前記のように、電池収納部101の両端部103の幅を、角形電池102の厚さに合わせた設計にしている。このため、厚さの異なる角形電池毎に専用のトレイを用意する必要であった。この場合、トレイを成形する金型もトレイ毎に専用になり、コスト面で不利であった。
【0007】
また、製造工程においては、角形電池の厚さに応じて、対応するトレイを切り換える必要があり、生産効率の点でも不利であった。さらに、化成工程において、トレイと電池との隙間が小さいために、電池が放熱されにくい問題があった。
【0008】
また、前記の特許文献1、2には、多品種の電池を収納可能な構造については、特別提案はされていなかった。
【0009】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を安定して収納可能な電池トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の電池トレイは、電池を収納する電池トレイであって、開口と、前記開口の奥側に設けた収納部とを備え、前記収納部の底部に、第1傾斜面と第2傾斜面とが対向しており、前記対向する前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、前記収納部の底部における対角方向のうち、一方の対角方向に一対の第1傾斜面が配置され、他方の対角方向に1対の第2傾斜面が配置され、前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に比べ直立面に近接しており、前記電池の収納状態において、前記第2傾斜面は、前記電池の幅方向における中心に向かうにつれて、前記電池から遠ざかるように傾斜しており、前記電池の収納状態を前記開口に対向する側から見たときに、前記電池の幅方向の移動を規制する規制面があり、前記開口の1対の対角位置に、前記電池の回転移動を規制する規制面があり、前記幅方向の移動を規制する規制面と、前記回転移動を規制する規制面とが鈍角で交わっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を安定して収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る電池トレイは、厚さの異なる電池を収納でき、厚さの増加分に応じて回転移動し、かつ載置位置の高さを変えた状態で、各電池は直立状態を保つことができる。この際、電池の幅方向の端部において、電池底部と第2傾斜面との隙間を小さくできるので、電池のがたつきを防止でき、電池の保持が安定する。
【0013】
前記本発明の電池トレイにおいては、前記第2傾斜面は、異なる厚さの前記電池を収納したときに、前記各電池の幅方向の端部において、前記各電池の底部と点状に接するように形成していることが好ましい。この構成によれば、電池の支持点数が増え、電池をより安定して保持することができる。
【0014】
また、前記電池トレイは、前記第1傾斜面及び第2傾斜面を形成した第1のトレイと、前記開口を形成した第2のトレイとを組み合わせたものであることが好ましい。この構成によれば、トレイを樹脂成型する場合の金型の構造が簡単になる。
【0015】
前記第2のトレイは、交換可能であることが好ましい。この構成によれば、第1のトレイは共用しつつ、第2のトレイを開口形状を変えたものに交換することにより、収納できる電池の厚さの範囲を広範囲にすることができる。
【0016】
また、前記開口の内周面と前記収納部の内周面とが同一面上にあることが好ましい。この構成によれば、トレイの一体成形が容易になる。
【0017】
また、前記開口は、複数の開口列を形成しており、前記各開口列同士が平行に配置されていることが好ましい。
【0018】
また、前記開口は、前記収納部と反対側にテーパ面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、電池の収納が容易になる。
【0019】
また、前記収納部の奥部に貫通孔が形成されており、前記貫通孔を通過させた電極と、前記開口側の電極とで前記収納部に収納した電池を挟み込むことができることが好ましい。この構成によれば、電池トレイを化成工程で用いることができるとともに、化成工程で放熱効果を発揮させることができる。すなわち、この構成の前提とする前記本発明の電池トレイは、トレイと電池とを面状に接触させて電池の移動を拘束する構成ではないので、放熱性が良好である。
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係る上下の電池トレイのうち、下トレイを示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。下トレイ1には、多数の電池収納部2を設けており、各電池収納部2に角形電池を1個ずつ収納することができる。
【0022】
図2は電池収納部2の拡大図を示している。図2(a)は平面図、図2(b)は、図2(a)のAA線における断面図である。図1では、電池収納部2は傾斜して配置されているが、図2では理解を容易にするため、垂直に図示した。また2点鎖線で収納時の角形電池3を示している。
【0023】
図2(a)において、電池収納部2の底部には、第1傾斜面4、第2傾斜面5及び貫通孔6を設けている。電池収納部2の底部における対角方向のうち、一方の対角方向(矢印a方向)に1対の第1傾斜面4を設け、他方の対角方向(矢印b方向)に1対の第2傾斜面5を設けている。第1傾斜面4と第2傾斜面5とは対向している。
【0024】
貫通孔6は、下トレイ1の底部を貫通するように形成されている。化成工程において、貫通孔6に電極を通過させ、この電極と上側から降下させた別の電極とを角形電池3の上下の端子部に押し当てて、角形電池3を充電することができる。充電の詳細は後に具体的に説明する。
【0025】
図2(b)は、1対の第1傾斜面4の形状を説明するために、1対の第1傾斜面4の双方を通るAA線における断面図である。図2(b)のように、第1傾斜面4同士を対向させて図示した場合には、第1傾斜面4は、下トレイ1の表面側に向かうにつれて、第1傾斜面4同士の間隔が広がるように形成されている。
【0026】
角形電池3を収納した際には、少なくとも1対の第1傾斜面4の双方に、角形電池3の底部の稜線が当接することになる。このことにより、角形電池3の高さ方向(矢印d方向)の位置が決定されることになる。
【0027】
図3は、収納部2の要部斜視図である。図3(a)は、第1傾斜面4と第2傾斜面5とが対向している状態を示している。図3(b)は、第2傾斜面5を図3(a)とは別の角度から見た斜視図である。
【0028】
第1傾斜面4は、角形電池3の高さ方向(矢印d方向)においては傾斜しているが、角形電池3の幅方向(矢印c方向)においては、傾斜していない。これに対し、第2傾斜面5は、図3(a)、(b)に示したように、角形電池3の高さ方向(矢印d方向)及び幅方向(矢印c方向)の双方において傾斜している。より具体的には、図2(a)、図3(a)、(b)の図示から分かるように、角型電池3の収納状態において、第2傾斜面5は、角型電池3の幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角型電池3から遠ざかるように傾斜している。
【0029】
図4は、上トレイを示す図である。図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。上トレイ10は、平板状部材に多数の開口11を形成したものである。図1の下トレイ1と図4の上トレイ10とを組み合わせたときは、開口11の1個分は、下トレイ1の電池収納部2の1個分に対応することになる。
【0030】
図5は、上トレイ10と下トレイ1とを組み合わせた状態の図である。図5(a)は平面図、図5(b)は側面図である。図5(b)に示したように、下トレイ1の上側に上トレイ10があり、図5(a)の図示では、上トレイ10の開口11の奥側(下側)に、電池収納部2があることになる。
【0031】
本実施の形態では、電池トレイを上トレイ10と下トレイ1とに分割して構成している。このような構成によれば、樹脂成型する場合の金型の構造が簡単になる。また、上下トレイの位置決めは、位置決めピンと位置決め孔とを嵌合させて行うことができる。樹脂成型する場合は、位置決めピンと位置決め孔とを一体成型するようにすればよい。
【0032】
図6は、下トレイ1と上トレイ10とを組み合わせた状態において、角形電池3を収納した状態の平面図である。図4、5では、開口11は傾斜して配置されているが、図6では理解を容易にするため、垂直に図示した。図7(a)は図6のBB線における断面図、図7(b)は図6のEE線における断面図である。
【0033】
本実施の形態に係る電池トレイは、異なる厚さの角形電池を収納可能であるが、図6は収納可能な角形電池のうち最も薄い厚さ(例えば厚さ4mm)の角形電池3を収納した場合に相当する。
【0034】
図7(a)、(b)に示したように、開口11は、上トレイ10を厚さ方向に貫通するように形成したものである。また、図6に示したように、それぞれ一対の垂直面12,13、水平面14,15、及び傾斜面16,17で囲まれた部分が開口11を形成しており、開口11は多角形状に形成されている。傾斜面16と17は、開口11の一対の対角位置、すなわち収納した電池3の一対の対角位置に配置されている。水平面14と傾斜面16とのなす角、水平面15と傾斜面17とのなす角は、それぞれ鈍角である。具体的には、これらの角度は、それぞれ100度以上150度以下の鈍角であることが好ましい。
【0035】
詳細は後に説明するが、水平面14、15は、電池の幅方向(矢印c方向)の移動を規制する規制面であり、傾斜面12、13は、電池の2方向(矢印e、f方向)の回転移動のうち、1方向(矢印f方向)の回転移動を規制する規制面である。
【0036】
角形電池3を電池収納部2に収納する際には、角形電池3を開口11の上側から開口11を経て電池収納部2に挿入させることになる。この挿入を容易にするため、開口11の上側にテーパ面18を設けている。図6に示したように、角形電池3は、水平面14,15、及び傾斜面16,17で位置が規制されている。このため、テーパ面18は少なくともこれらの各面に設けるとよい。
【0037】
図6のA部に示したように、角形電池3の一方の端部は、開口11の水平面14及び傾斜面16の双方により位置が規制されている。角形電池3の端部が、傾斜面16で位置が規制されている様子は、図7(a)のC部に示されている。図6のB部に示したように、角形電池3の他方の端部は、開口11の水平面15及び傾斜面17の双方で位置が規制されている。角形電池3の端部が、傾斜面17で位置が規制されている様子は、図7(b)のD部に示されている。
【0038】
図7(a)、(b)に示したように、角形電池3は第1傾斜面4及び第2傾斜面5上に載置されている。この状態では、角形電池3底部の2本の稜線は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5に線状に接している。このことにより、角形電池3は高さ方向(矢印d方向)の位置が定まっており、角形電池3底部はトレイ1底面から高さh1の位置にある。
【0039】
角形電池3は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5上に載置された状態では、直立状態を保つには不安定である。前記の通り、角形電池3は開口11内にあり、角形電池3は、傾斜面16によって矢印g方向の移動が規制され、傾斜面17によって矢印h方向の移動が規制されている(図6、7参照)。このことにより、角形電池3は倒れることがなく、直立状態を保つことができる。
【0040】
図8(a)は、図6のCC線における断面図であり、図8(b)は図6のDD線における断面図である。第1傾斜面4は、角形電池3の幅方向(図6の矢印c方向)においては傾斜していないので、図7(a)と図8(a)における第1傾斜面4の断面形状は同じである。他方、図3、6に示したように、第2傾斜面5は、角型電池3の幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角型電池3から遠ざかるように傾斜している。
【0041】
このため、図7(a)の第2傾斜面5の断面形状と、図8(a)の第2傾斜面5の断面形状とを比較すると、図8(a)の断面形状における角形電池3の側面と第2傾斜面5との間隔は、図7(a)の断面形状における角形電池3の側面と第2傾斜面5との間隔に比べ大きくなっている。このことは、図7(b)の第2傾斜面5の断面形状と、図8(b)の第2傾斜面5の断面形状との比較においても同様である。
【0042】
このように、角型電池3の幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角形電池3の側面と第2傾斜面5との間隔を大きくしているのは、厚さの大きい角形電池を収納したときに、角形電池が回転移動した状態で安定することの妨げにならないようにするためである。このことの詳細は後に説明する。
【0043】
次に、電池の化成工程について説明する。図9(a)は充電前の状態を示す断面図、図9(b)は充電時の状態を示す断面図を示している。各断面図は、図7(b)の断面図に相当する。図9(a)に示したように、化成工程においては、角形電池3の上下にそれぞれ上側電極20、下側電極21がある。
【0044】
充電時には上側電極20は降下し、角形電池3の正極端子22に近づくように移動する。下側電極21は上昇し、貫通孔6内を通過して角形電池3の負極端子23に近づくように移動する。図9(b)の状態では、上下の電極20、21がそれぞれ正極端子22、負極端子23に接している。
【0045】
下側電極21は角形電池3を上側に押圧しており、この押圧により角形電池3は上昇している。この状態で角形電池3は充電され、充電後は上下の電極20、21は、前記とは逆方向に移動し、角形電池3から離れることになる。
【0046】
次に、厚さが異なる角形電池の収納について説明する。図10は、図6の角形電池3に比べ厚さの大きい角形電池3aを収納した状態の平面図である。図6の角形電池3の厚さが4mmとすれば、図10の角形電池3aの厚さは例えば6mmである。角形電池3と角形電池3aの幅は同じである。
【0047】
図11(a)は図10のBB線における断面図であり、図11(b)は、図10のEE線における断面図である。図7(a)と図11(a)とを比較すると、トレイ1の断面形状は同じであるが、角形電池と第1傾斜面4及び第2傾斜面5との位置関係が異なっている。図7(b)と図11(b)との比較についても同様である。
【0048】
図11(a)、(b)に示したように、第1傾斜面4と第2傾斜面5とで、略V字の断面形状を形成している。このため、角形電池3より厚さを大きくしている角形電池3aの底面は、図7(a)、(b)の高さh1より高い高さh2の位置にある。
【0049】
図10のA部に示したように、角形電池3aの一方の端部は、開口11の水平面14及び傾斜面16の双方により位置が規制されている。角形電池3aの端部が、傾斜面16で位置が規制されている様子は、図11(a)のC部に示されている。図10のB部に示したように、角形電池3aの他方の端部は、開口11の水平面15及び傾斜面17の双方で位置が規制されている。角形電池3aの端部が、傾斜面17で位置が規制されている様子は、図11(b)のD部に示されている。
【0050】
これらの状態は、図6、7を用いて説明した角形電池3の場合と同様である。しかしながら、角形電池3aは角形電池3に比べ、厚さが増加したことにより,図6の位置から回転移動した位置にある。このことについて、図10、11の各図を参照しながら具体的に説明する。
【0051】
図10に示したように、角形電池3aは1対の対角位置において、それぞれ傾斜面16、17によって、位置規制されている。このため、角形電池3aは、その両端部が傾斜面16、17に沿って、矢印f方向に回転移動することはできない。これは、開口7の対角位置にある傾斜面16と傾斜面17との間の距離は、角形電池3aの幅より小さいためである。
【0052】
しかしながら、角形電池3aの両端部のうち、傾斜面16、17と反対側は、開口11による位置規制はない。また、前記のように、角形電池3aは幅方向(矢印c方向)において、水平面14と水平面15とで位置規制されているが、各端部の形状は曲面形状である。このため、角形電池3aの両端部が水平面14、115に沿って移動しながら、角形電池3aが矢印e方向に回転移動することは可能である。
【0053】
ここで、仮に角形電池3a底部の稜線が、第1傾斜面4に線状に接した状態で載置されていたとする。この状態で、角形電池3aを矢印e方向にねじるように回転させると、角形電池3a底部の稜線は、第1傾斜面4から離れるように移動する。このことにより、角形電池3a底部の2本の稜線が1対の第1傾斜面4のそれぞれに線状に接していた状態から、2つの第1傾斜面4のそれぞれに1点、合計2点で接する状態に変化することになる。
【0054】
すなわち、角形電池3aは角形電池3に比べ厚さが大きくなったことにより、図6のように、角形電池3の側面と開口11の垂直面12、13とが平行な状態は維持できない。しかしながら、図10に示したように、矢印e方向に角度θ1だけ回転移動し、かつ角形電池3a底部の第1傾斜面4上の当接状態が、線接触から点接触に変化した状態で、倒れの無い安定状態を保つことができる。角度θ1は、角形電池3aの幅方向の中心線の回転角度である。
【0055】
ここで、図11(a)、(b)において、2点鎖線で示した傾斜面4aは、第1傾斜面4と同一形状の傾斜面を第1傾斜面4と対向する側に設けた場合の架空の傾斜面である。角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態においては、図11(a)において、角形電池3aの底部の稜線30の一部が点状に第1傾斜面4上に接触していることになる。同様に、図11(b)においては、角形電池3aの底部の稜線31の一部が点状に第1傾斜面4上に接触していることになる。
【0056】
これに対し、図11(a)において、稜線30と反対側における角形電池3a底部の稜線32は、角形電池3aが角度θ1(図10)だけ回転移動した状態においては、2点鎖線で示した傾斜面4aから遠ざかるように移動することになる。同様に、図11(b)において、稜線31と反対側における角形電池3a底部の稜線33は、角形電池3aが角度θ1(図10)だけ回転移動した状態においては、2点鎖線で示した傾斜面4aから遠ざかるように移動することになる。
【0057】
この状態においては、角形電池3aの矢印e方向(図10)への回転は、角形電池3aの底部の稜線30、31の一部が点状に第1傾斜面4上に接触していることにより規制される。矢印f方向(図10)への回転は、上トレイの傾斜面16、17により規制される。したがって、角形電池3aは収納部2内に直立状態を保って保持されることになる。
【0058】
ここで、第1傾斜面4に対向する傾斜面が、第2傾斜面5ではなく2点鎖線で示した傾斜面4aである場合は、角形電池3aの角度θ1の回転により、図11(a)においては、角形電池3a底部の稜線32と傾斜面4aとの間に隙間ができ、図11(b)においては、角形電池3a底部の稜線33と傾斜面4aとの間に隙間ができることになる。このような隙間があると、角形電池3a底部が傾斜面4a側に変位する余地があり、角形電池3aが傾いてがたつく可能性がある。
【0059】
本実施の形態の第2傾斜面5は、第1傾斜面4に比べ直立面に近接した傾斜面としている。すなわち、第2傾斜面5は、角形電池3aが角度θ1回転した状態において、角形電池3a底部の稜線に当接またはできるだけ近接するように形成している。このことにより、角形電池3a底部の変位による角形電池3aのがたつきを防止するようにしている。
【0060】
より具体的には、角形電池3aが角度θ1回転した状態において、第2傾斜面5が角形電池3a底部の稜線に当接するように、第2傾斜面5を形成した場合は、角形電池3aの幅方向の端部(図10のBB線と交差する部分)においては、図11(a)に示したように角形電池3a底部は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5に各1点、合計2点で接していることになる。同様に、図11(b)に示したように、角形電池3aの幅方向の端部(図10のEE線と交差する部分)においては、角形電池3a底部は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5に各1点、合計2点で接していることになる。したがって、角形電池3a底部は合計4点で支持され、一対の第1傾斜面4のみに合計2点で支持されている場合に比べ、支持が安定する。
【0061】
図12(a)は図10のCC線における断面図であり、図12(b)は、図10のDD線における断面図である。図8(a)と図12(a)とを比較すると、トレイ1の断面形状は同じであるが、角形電池と第1傾斜面4及び第2傾斜面5との位置関係が異なっている。図8(b)と図12(b)との比較についても同様である。図12(a)においては、比較のため、図10のBB線と交差する部分における角形電池3aの断面形状を2点鎖線で示した。同様に、図12(b)においては、図10のEE線と交差する部分における角形電池3aの断面形状を2点鎖線で示した。
【0062】
図12(a)において、角形電池3aの底部の稜線34と第1傾斜面4の間に隙間がある。図12(b)において、角形電池3aの底部の稜線35との間に第1傾斜面4との間に隙間がある。
【0063】
これは、図10に示したように、角形電池3aが角度θ1の回転移動した状態は、第1傾斜面4の位置においては、角型電池3aの幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角形電池3aの側面は、垂直面12、13から離れるように傾いているためである。
【0064】
また、図10に示したように、角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態は、第2傾斜面5の位置においては、角形電池3aの側面は、角型電池3aの幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、垂直面12、13に近づくように、傾いている。
【0065】
一方、図12(a)においては、角形電池3aの底部の稜線36と第2傾斜面5との間に隙間がある。図12(b)においては、角形電池3aの底部の稜線37と第2傾斜面5との間に隙間がある。これは、図3、10に示したように、第2傾斜面5は、角型電池3aの幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角型電池3aから遠ざかるように傾斜しているためである。したがって、角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態において、第2傾斜面5は、角形電池3aの幅方向(矢印c方向)の両端部を除き、角形電池3底部に接しないように傾斜していることになる。すなわち、第2傾斜面5は、角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態になることの妨げにならないように傾斜していることになる。このことにより、厚さの異なる角形電池を搭載した場合であっても、角形電池の幅方向(矢印c方向)の両端部においては、常に角形電池底部と第2傾斜面5とが接触できることになる。
【0066】
以下、前記の説明と重複する部分もあるが、角形電池の厚さが変化した場合の角形電池と第2傾斜面5との位置関係について以下に整理する。図13は、厚さの異なる3種類の角形電池(例えば厚さ4mm、6mm、8mm)と第2傾斜面5との位置関係を示した図である。本図は、角形電池の幅方向の端部におけるトレイ1の断面図であり、図10のBB線における断面図に相当する。以下の説明は、角形電池の幅方向の他方の端部、すなわち図10のEE線における断面図の場合であっても同様である。
【0067】
本図においても、説明の便宜のために、図11と同様に架空の傾斜面4aを図示している。傾斜面4aは、第1傾斜面4と同一形状の傾斜面を第1傾斜面4と対向する側に設けた場合の傾斜面である。
【0068】
角形電池3は、底部がトレイ1の底部から高さh1の位置に直立している。角形電池3より厚さの厚い角形電池3aを搭載すると、角形電池3a底部は高さh1より高い高さh2の位置に移動し、図10に示した通り、角形電池3aが角度θ1の回転移動をした状態になる。この状態では、角形電池3a底部の稜線は傾斜面4aから遠ざかることになるが、第2傾斜面5には当接している。
【0069】
このことにより、角形電池3a底部は、図13のように2点で支持され、他方の端部においても同様に2点で支持され、合計4点で支持されることになる。すなわち角形電池3aは、角形電池3に対し角度θ1だけ回転移動した状態で、安定して直立状態を保つことになる。
【0070】
角形電池3aより厚さの厚い角形電池3bを搭載すると、角形電池3b底部は高さh2より高い高さh3の位置に移動する。この場合、角形電池3bは図10に示した角度θ1より大きな角度θ2の回転移動をした状態になる。この状態では、角形電池3a底部の稜線は傾斜面4aから遠ざかることになるが、第2傾斜面5には当接している。
【0071】
このことにより、角形電池3b底部は、図13のように2点で支持され、他方の端部においても同様に2点で支持され、合計4点で支持されることになる。すなわち角形電池3bは、角形電池3に対し角度θ2だけ回転移動した状態で、安定して直立状態を保つことになる。
【0072】
前記のように、角形電池の厚さが増した場合はいずれも、角形電池底部の稜線は、傾斜面4aからは遠ざかることになるが、第2傾斜面5には当接している。これは、第2傾斜面5の傾斜を、第1傾斜面4(4a)に比べ直立状態に近接させて、角形電池の厚さ増加に伴なう角形電池底部の稜線の変位に追従するように形成しているためである。
【0073】
他方、前記の通り、角形電池が回転移動した状態において、角形電池の幅方向においては、第2傾斜面5は、角形電池3aの幅方向の両端部を除き、角形電池底部に接しないように傾斜している。すなわち、第2傾斜面5は角形電池の両端部以外の部分において、角形電池が回転移動した状態になることの妨げにならないようにしている。
【0074】
すなわち、本実施の形態に係る電池トレイによれば、厚さの異なる多品種の電池を収納でき、収納する電池の厚さが大きくなる毎に、収納した電池は厚さの増加分に応じた回転移動をした状態で、安定した直立状態を保つことができる。
【0075】
以上、本実施の形態に係る電池トレイは、厚さの異なる多品種の角形電池を収納可能であることについて説明した。前記の通り、厚さを増加させた角形電池を収納すると、厚さの増加分に応じて、角形電池の回転角度も大きくなる。
【0076】
しかしながら、上下電極20、21(図9)が当接する角形電池の中央部は、回転軸の近傍である。このため、回転角度が増加しても、中央部にある上下電極20、21と角形電池の各端子との当接部の面積は、同じであるか又はほとんど変らない。したがって、回転移動しても、上下電極20、21と角形電池の端子との接触面積は確保され、化成工程において確実な充電をすることができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、厚さの異なる角形電池を収納可能であるが、厚さの範囲は、上トレイの開口の形状により制限を受けることになる。より広範囲な角形電池の厚さに対応するために、開口形状の異なる複数種類の上トレイを用意しておいてもよい。このようにすれば、下トレイは共用しつつ、上トレイを交換するだけで、収納できる角形電池の厚さの範囲を広範囲にすることができる。
【0078】
また、同様に広範囲な角形電池の幅寸法に対応するために、幅方向の開口形状の異なる上トレイを用いることにより、収容できる角形電池の幅の範囲を広範囲にすることができる。さらに、厚さ対応、幅対応の上トレイを組み合わせて使用しても良い。
【0079】
なお、本実施の形態に係る電池トレイは、図6に示したように角形電池3を収納したときに、角形電池3の回転角度がゼロになる例で説明したが、これに限るものではなく、適宜決定すればよい。
【0080】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、化成工程で使用する例で、説明したが、用途はこれに限るものではない。例えば製造工程間で電池を受渡す際に用いる運搬用キャリアとして用いたり、電池の保管用として用いたりすることもできる。また、工程に合わせて、1個から数個を収納する形状としてもよい。
【0081】
また、本発明のトレイは、収納部が従来のトレイよりも開口部が大きく、トレイ作成に必要な樹脂量を削減でき、コスト低減と、軽量化も可能である。
【0082】
(実施の形態2)
以下、図面を参照しながら、実施の形態2、3について説明する。以下の説明は、前記実施の形態1と異なる部分についてのみ説明する。他の構成については、前記実施の形態1と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0083】
図14は、実施の形態2に係る上下の電池トレイのうち、下トレイ40を示す平面図である。側面の形状は、前記実施の形態1の図1(b)と同様であるので省略する。図1では電池収納部2は、下トレイ1の外周の辺に対して傾斜して配置されている。この傾斜の方向に電池収納部2は列状に配置され、各列同士は平行になっている。
【0084】
これに対し、図14の構成では、列状に配置された電池収納部41の各列同士が平行である点は、図1と同様であるが、各列は下トレイ40の外周の辺にも平行になるように配置されている。
【0085】
図15は、図14の下トレイ40に対応する上トレイ42を示す平面図である。側面の形状は、前記実施の形態1の図3(b)と同様であるので省略する。上トレイ42は、開口の配置を除き、図4の上トレイ10と同様である。図15の開口43は、上トレイ42を図14の下トレイ40に載置したときに、電池収納部41に対応するように、配置している。すなわち、開口43の各列は上トレイ42の外周の辺に平行になるように配置されている。
【0086】
本実施の形態は、前記実施の形態1のトレイに比べ、単位面積当たりの電池の収納個数は少なくなるが、電池収納部41及び開口43の配置が単純化される。このため、トレイを設置する設備、トレイに電池を出し入れする設備等の設定が容易になる場合がある。
【0087】
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2のトレイは、上トレイと下トレイとに分離したものであるが、実施の形態3のトレイは、上下トレイを一体に形成したものである。図16(a)は開口50部分を示す平面図、図16(b)は図16(a)のFF線における断面図、図16(c)は図16(a)のGG線における断面図である。
【0088】
図7(a)、(b)のような構成で上下トレイを一体に成形しようとすると、収納部2における金型を収納部2から抜き出すことが困難になる。図16(b)の断面図では、開口50の内周面と収納部51の内周面とが同一面上にある。同様に、図16(c)の断面図においても、開口50の内周面と収納部51の内周面とが同一面上にある。この構成は、収納部51から金型を抜き出すことが容易であり、上下トレイを一体にしたトレイを容易に成形することができる。
【0089】
本実施の形態は成形が容易であり、収納する電池の幅寸法が限定されている場合には有効である。
【0090】
なお、前記各実施の形態で説明した電池トレイは、ノートパソコン、携帯電話、PDA、ゲーム機などの小型の携帯機器で用いられるような形状の電池用に限定されるものではなく、例えば電気自動車、ゴルフカート、電気カート、セキュリティシステム、電力貯蔵システムなどの電源として使用されるような大型の電池用であっても同様に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明によれば、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を安定して収納できるので、本発明に係る電池トレイは、例えば化成工程で充電する際のトレイ、製造工程間で受渡す際のトレイ、又は電池の保管用とトレイとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)図は本発明の一実施の形態に係る下トレイを示す平面図、(b)図は側面図。
【図2】(a)図は本発明の一実施の形態に係る電池収納部の拡大平面図、(b)図は(a)図のAA線における断面図。
【図3】本発明の一実施の形態に係る収納部2の要部斜視図であり、(a)図は第1傾斜面4と第2傾斜面5とが対向している状態を示す斜視図、(b)図は第2傾斜面5を(a)図とは別の角度から見た斜視図である。
【図4】(a)図は本発明の一実施の形態に係る上トレイを示す平面図、(b)図は側面図。
【図5】(a)図は本発明の一実施の形態に係る上トレイと下トレイとを組み合わせた状態の平面図、(b)図は(a)図の側面図。
【図6】本発明の一実施の形態に係る下トレイ1と上トレイ10とを組み合わせた状態において、角形電池3を収納した状態の平面図。
【図7】(a)図は図6のBB線における断面図、(b)図は図6のEE線における断面図。
【図8】(a)図は図6のCC線における断面図、(b)図は図6のDD線における断面図。
【図9】(a)図は本発明の一実施の形態に係る化成工程における充電前の状態を示す断面図、(b)図は充電時の状態を示す断面図。
【図10】本発明の一実施の形態に係る下トレイ1と上トレイ10とを組み合わせた状態において、角形電池3aを収納した状態の平面図。
【図11】(a)図は図10のBB線における断面図、(b)図は図10のEE線における断面図。
【図12】(a)図は図10のCC線における断面図、(b)図は図10のDD線における断面図。
【図13】厚さの異なる角形電池と第2傾斜面との位置関係を説明するための断面図。
【図14】実施の形態2に係る上下の電池トレイのうち、下トレイを示す平面図。
【図15】実施の形態2に係る下トレイ40に対応する上トレイ42を示す平面図。
【図16】(a)図は本発明の実施の形態2に係る開口部分を示す平面図、(b)図は(a)図のFF線における断面図、(c)図は(a)図のGG線における断面図。
【図17】(a)図は従来の電池トレイの一例の平面図、(b)図は電池収納部101の1個分の拡大図。
【符号の説明】
【0093】
1,40 下トレイ
2,41,51 収納部
3,3a,3b 角形電池
4 第1傾斜面
5 第2傾斜面
6 貫通孔
10,42 上トレイ
11,43,50 開口
12,13 垂直面
14,15 水平面
16,17 傾斜面
20 上側電極
21 下側電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電池の製造工程において、電池を収納する電池トレイに関し、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を収納可能な電池トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造工程においては、電池をトレイに収納した状態で、処理を進める工程がある。また、製造工程間の受渡しや、保管にもトレイが用いられる。特許文献1、2には、軽量化を図ると同時に必要強度を確保できる電池トレイが提案されている。
【0003】
また、電池の化成(充電)工程においては、多数の電池をトレイに収納した状態で、電池の上下端子に電極を押し当てた状態で充電をする。この場合、電池の上下端子と電極との間の位置精度を確保し、確実な充電をする必要がある。
【0004】
図17(a)に、従来の電池トレイの一例の平面図を示している。本図は角形電池用のトレイの例を示している。四角形状の電池トレイ100に多数の電池収納部101を設けている。図17(b)は、電池収納部101の1個分の拡大図を示している。本図は、角形電池102(斜線部)を収納した状態を示している。
【0005】
電池収納部101の両端部103は幅を狭めており、この部分に角形電池101の両端部が係合している。このことにより、角形電池102を安定して電池収納部101に載置することができる。したがって、化成工程においては、角形電池101の上下端子と、充電用の上下の電極との位置関係の精度が確保され、確実に充電を完了することができる。
【特許文献1】特開2000−53182号公報
【特許文献2】特開2002−362566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図17に示したような電池トレイ100は、前記のように、電池収納部101の両端部103の幅を、角形電池102の厚さに合わせた設計にしている。このため、厚さの異なる角形電池毎に専用のトレイを用意する必要であった。この場合、トレイを成形する金型もトレイ毎に専用になり、コスト面で不利であった。
【0007】
また、製造工程においては、角形電池の厚さに応じて、対応するトレイを切り換える必要があり、生産効率の点でも不利であった。さらに、化成工程において、トレイと電池との隙間が小さいために、電池が放熱されにくい問題があった。
【0008】
また、前記の特許文献1、2には、多品種の電池を収納可能な構造については、特別提案はされていなかった。
【0009】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を安定して収納可能な電池トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の電池トレイは、電池を収納する電池トレイであって、開口と、前記開口の奥側に設けた収納部とを備え、前記収納部の底部に、第1傾斜面と第2傾斜面とが対向しており、前記対向する前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、前記収納部の底部における対角方向のうち、一方の対角方向に一対の第1傾斜面が配置され、他方の対角方向に1対の第2傾斜面が配置され、前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に比べ直立面に近接しており、前記電池の収納状態において、前記第2傾斜面は、前記電池の幅方向における中心に向かうにつれて、前記電池から遠ざかるように傾斜しており、前記電池の収納状態を前記開口に対向する側から見たときに、前記電池の幅方向の移動を規制する規制面があり、前記開口の1対の対角位置に、前記電池の回転移動を規制する規制面があり、前記幅方向の移動を規制する規制面と、前記回転移動を規制する規制面とが鈍角で交わっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を安定して収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る電池トレイは、厚さの異なる電池を収納でき、厚さの増加分に応じて回転移動し、かつ載置位置の高さを変えた状態で、各電池は直立状態を保つことができる。この際、電池の幅方向の端部において、電池底部と第2傾斜面との隙間を小さくできるので、電池のがたつきを防止でき、電池の保持が安定する。
【0013】
前記本発明の電池トレイにおいては、前記第2傾斜面は、異なる厚さの前記電池を収納したときに、前記各電池の幅方向の端部において、前記各電池の底部と点状に接するように形成していることが好ましい。この構成によれば、電池の支持点数が増え、電池をより安定して保持することができる。
【0014】
また、前記電池トレイは、前記第1傾斜面及び第2傾斜面を形成した第1のトレイと、前記開口を形成した第2のトレイとを組み合わせたものであることが好ましい。この構成によれば、トレイを樹脂成型する場合の金型の構造が簡単になる。
【0015】
前記第2のトレイは、交換可能であることが好ましい。この構成によれば、第1のトレイは共用しつつ、第2のトレイを開口形状を変えたものに交換することにより、収納できる電池の厚さの範囲を広範囲にすることができる。
【0016】
また、前記開口の内周面と前記収納部の内周面とが同一面上にあることが好ましい。この構成によれば、トレイの一体成形が容易になる。
【0017】
また、前記開口は、複数の開口列を形成しており、前記各開口列同士が平行に配置されていることが好ましい。
【0018】
また、前記開口は、前記収納部と反対側にテーパ面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、電池の収納が容易になる。
【0019】
また、前記収納部の奥部に貫通孔が形成されており、前記貫通孔を通過させた電極と、前記開口側の電極とで前記収納部に収納した電池を挟み込むことができることが好ましい。この構成によれば、電池トレイを化成工程で用いることができるとともに、化成工程で放熱効果を発揮させることができる。すなわち、この構成の前提とする前記本発明の電池トレイは、トレイと電池とを面状に接触させて電池の移動を拘束する構成ではないので、放熱性が良好である。
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係る上下の電池トレイのうち、下トレイを示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。下トレイ1には、多数の電池収納部2を設けており、各電池収納部2に角形電池を1個ずつ収納することができる。
【0022】
図2は電池収納部2の拡大図を示している。図2(a)は平面図、図2(b)は、図2(a)のAA線における断面図である。図1では、電池収納部2は傾斜して配置されているが、図2では理解を容易にするため、垂直に図示した。また2点鎖線で収納時の角形電池3を示している。
【0023】
図2(a)において、電池収納部2の底部には、第1傾斜面4、第2傾斜面5及び貫通孔6を設けている。電池収納部2の底部における対角方向のうち、一方の対角方向(矢印a方向)に1対の第1傾斜面4を設け、他方の対角方向(矢印b方向)に1対の第2傾斜面5を設けている。第1傾斜面4と第2傾斜面5とは対向している。
【0024】
貫通孔6は、下トレイ1の底部を貫通するように形成されている。化成工程において、貫通孔6に電極を通過させ、この電極と上側から降下させた別の電極とを角形電池3の上下の端子部に押し当てて、角形電池3を充電することができる。充電の詳細は後に具体的に説明する。
【0025】
図2(b)は、1対の第1傾斜面4の形状を説明するために、1対の第1傾斜面4の双方を通るAA線における断面図である。図2(b)のように、第1傾斜面4同士を対向させて図示した場合には、第1傾斜面4は、下トレイ1の表面側に向かうにつれて、第1傾斜面4同士の間隔が広がるように形成されている。
【0026】
角形電池3を収納した際には、少なくとも1対の第1傾斜面4の双方に、角形電池3の底部の稜線が当接することになる。このことにより、角形電池3の高さ方向(矢印d方向)の位置が決定されることになる。
【0027】
図3は、収納部2の要部斜視図である。図3(a)は、第1傾斜面4と第2傾斜面5とが対向している状態を示している。図3(b)は、第2傾斜面5を図3(a)とは別の角度から見た斜視図である。
【0028】
第1傾斜面4は、角形電池3の高さ方向(矢印d方向)においては傾斜しているが、角形電池3の幅方向(矢印c方向)においては、傾斜していない。これに対し、第2傾斜面5は、図3(a)、(b)に示したように、角形電池3の高さ方向(矢印d方向)及び幅方向(矢印c方向)の双方において傾斜している。より具体的には、図2(a)、図3(a)、(b)の図示から分かるように、角型電池3の収納状態において、第2傾斜面5は、角型電池3の幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角型電池3から遠ざかるように傾斜している。
【0029】
図4は、上トレイを示す図である。図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。上トレイ10は、平板状部材に多数の開口11を形成したものである。図1の下トレイ1と図4の上トレイ10とを組み合わせたときは、開口11の1個分は、下トレイ1の電池収納部2の1個分に対応することになる。
【0030】
図5は、上トレイ10と下トレイ1とを組み合わせた状態の図である。図5(a)は平面図、図5(b)は側面図である。図5(b)に示したように、下トレイ1の上側に上トレイ10があり、図5(a)の図示では、上トレイ10の開口11の奥側(下側)に、電池収納部2があることになる。
【0031】
本実施の形態では、電池トレイを上トレイ10と下トレイ1とに分割して構成している。このような構成によれば、樹脂成型する場合の金型の構造が簡単になる。また、上下トレイの位置決めは、位置決めピンと位置決め孔とを嵌合させて行うことができる。樹脂成型する場合は、位置決めピンと位置決め孔とを一体成型するようにすればよい。
【0032】
図6は、下トレイ1と上トレイ10とを組み合わせた状態において、角形電池3を収納した状態の平面図である。図4、5では、開口11は傾斜して配置されているが、図6では理解を容易にするため、垂直に図示した。図7(a)は図6のBB線における断面図、図7(b)は図6のEE線における断面図である。
【0033】
本実施の形態に係る電池トレイは、異なる厚さの角形電池を収納可能であるが、図6は収納可能な角形電池のうち最も薄い厚さ(例えば厚さ4mm)の角形電池3を収納した場合に相当する。
【0034】
図7(a)、(b)に示したように、開口11は、上トレイ10を厚さ方向に貫通するように形成したものである。また、図6に示したように、それぞれ一対の垂直面12,13、水平面14,15、及び傾斜面16,17で囲まれた部分が開口11を形成しており、開口11は多角形状に形成されている。傾斜面16と17は、開口11の一対の対角位置、すなわち収納した電池3の一対の対角位置に配置されている。水平面14と傾斜面16とのなす角、水平面15と傾斜面17とのなす角は、それぞれ鈍角である。具体的には、これらの角度は、それぞれ100度以上150度以下の鈍角であることが好ましい。
【0035】
詳細は後に説明するが、水平面14、15は、電池の幅方向(矢印c方向)の移動を規制する規制面であり、傾斜面12、13は、電池の2方向(矢印e、f方向)の回転移動のうち、1方向(矢印f方向)の回転移動を規制する規制面である。
【0036】
角形電池3を電池収納部2に収納する際には、角形電池3を開口11の上側から開口11を経て電池収納部2に挿入させることになる。この挿入を容易にするため、開口11の上側にテーパ面18を設けている。図6に示したように、角形電池3は、水平面14,15、及び傾斜面16,17で位置が規制されている。このため、テーパ面18は少なくともこれらの各面に設けるとよい。
【0037】
図6のA部に示したように、角形電池3の一方の端部は、開口11の水平面14及び傾斜面16の双方により位置が規制されている。角形電池3の端部が、傾斜面16で位置が規制されている様子は、図7(a)のC部に示されている。図6のB部に示したように、角形電池3の他方の端部は、開口11の水平面15及び傾斜面17の双方で位置が規制されている。角形電池3の端部が、傾斜面17で位置が規制されている様子は、図7(b)のD部に示されている。
【0038】
図7(a)、(b)に示したように、角形電池3は第1傾斜面4及び第2傾斜面5上に載置されている。この状態では、角形電池3底部の2本の稜線は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5に線状に接している。このことにより、角形電池3は高さ方向(矢印d方向)の位置が定まっており、角形電池3底部はトレイ1底面から高さh1の位置にある。
【0039】
角形電池3は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5上に載置された状態では、直立状態を保つには不安定である。前記の通り、角形電池3は開口11内にあり、角形電池3は、傾斜面16によって矢印g方向の移動が規制され、傾斜面17によって矢印h方向の移動が規制されている(図6、7参照)。このことにより、角形電池3は倒れることがなく、直立状態を保つことができる。
【0040】
図8(a)は、図6のCC線における断面図であり、図8(b)は図6のDD線における断面図である。第1傾斜面4は、角形電池3の幅方向(図6の矢印c方向)においては傾斜していないので、図7(a)と図8(a)における第1傾斜面4の断面形状は同じである。他方、図3、6に示したように、第2傾斜面5は、角型電池3の幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角型電池3から遠ざかるように傾斜している。
【0041】
このため、図7(a)の第2傾斜面5の断面形状と、図8(a)の第2傾斜面5の断面形状とを比較すると、図8(a)の断面形状における角形電池3の側面と第2傾斜面5との間隔は、図7(a)の断面形状における角形電池3の側面と第2傾斜面5との間隔に比べ大きくなっている。このことは、図7(b)の第2傾斜面5の断面形状と、図8(b)の第2傾斜面5の断面形状との比較においても同様である。
【0042】
このように、角型電池3の幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角形電池3の側面と第2傾斜面5との間隔を大きくしているのは、厚さの大きい角形電池を収納したときに、角形電池が回転移動した状態で安定することの妨げにならないようにするためである。このことの詳細は後に説明する。
【0043】
次に、電池の化成工程について説明する。図9(a)は充電前の状態を示す断面図、図9(b)は充電時の状態を示す断面図を示している。各断面図は、図7(b)の断面図に相当する。図9(a)に示したように、化成工程においては、角形電池3の上下にそれぞれ上側電極20、下側電極21がある。
【0044】
充電時には上側電極20は降下し、角形電池3の正極端子22に近づくように移動する。下側電極21は上昇し、貫通孔6内を通過して角形電池3の負極端子23に近づくように移動する。図9(b)の状態では、上下の電極20、21がそれぞれ正極端子22、負極端子23に接している。
【0045】
下側電極21は角形電池3を上側に押圧しており、この押圧により角形電池3は上昇している。この状態で角形電池3は充電され、充電後は上下の電極20、21は、前記とは逆方向に移動し、角形電池3から離れることになる。
【0046】
次に、厚さが異なる角形電池の収納について説明する。図10は、図6の角形電池3に比べ厚さの大きい角形電池3aを収納した状態の平面図である。図6の角形電池3の厚さが4mmとすれば、図10の角形電池3aの厚さは例えば6mmである。角形電池3と角形電池3aの幅は同じである。
【0047】
図11(a)は図10のBB線における断面図であり、図11(b)は、図10のEE線における断面図である。図7(a)と図11(a)とを比較すると、トレイ1の断面形状は同じであるが、角形電池と第1傾斜面4及び第2傾斜面5との位置関係が異なっている。図7(b)と図11(b)との比較についても同様である。
【0048】
図11(a)、(b)に示したように、第1傾斜面4と第2傾斜面5とで、略V字の断面形状を形成している。このため、角形電池3より厚さを大きくしている角形電池3aの底面は、図7(a)、(b)の高さh1より高い高さh2の位置にある。
【0049】
図10のA部に示したように、角形電池3aの一方の端部は、開口11の水平面14及び傾斜面16の双方により位置が規制されている。角形電池3aの端部が、傾斜面16で位置が規制されている様子は、図11(a)のC部に示されている。図10のB部に示したように、角形電池3aの他方の端部は、開口11の水平面15及び傾斜面17の双方で位置が規制されている。角形電池3aの端部が、傾斜面17で位置が規制されている様子は、図11(b)のD部に示されている。
【0050】
これらの状態は、図6、7を用いて説明した角形電池3の場合と同様である。しかしながら、角形電池3aは角形電池3に比べ、厚さが増加したことにより,図6の位置から回転移動した位置にある。このことについて、図10、11の各図を参照しながら具体的に説明する。
【0051】
図10に示したように、角形電池3aは1対の対角位置において、それぞれ傾斜面16、17によって、位置規制されている。このため、角形電池3aは、その両端部が傾斜面16、17に沿って、矢印f方向に回転移動することはできない。これは、開口7の対角位置にある傾斜面16と傾斜面17との間の距離は、角形電池3aの幅より小さいためである。
【0052】
しかしながら、角形電池3aの両端部のうち、傾斜面16、17と反対側は、開口11による位置規制はない。また、前記のように、角形電池3aは幅方向(矢印c方向)において、水平面14と水平面15とで位置規制されているが、各端部の形状は曲面形状である。このため、角形電池3aの両端部が水平面14、115に沿って移動しながら、角形電池3aが矢印e方向に回転移動することは可能である。
【0053】
ここで、仮に角形電池3a底部の稜線が、第1傾斜面4に線状に接した状態で載置されていたとする。この状態で、角形電池3aを矢印e方向にねじるように回転させると、角形電池3a底部の稜線は、第1傾斜面4から離れるように移動する。このことにより、角形電池3a底部の2本の稜線が1対の第1傾斜面4のそれぞれに線状に接していた状態から、2つの第1傾斜面4のそれぞれに1点、合計2点で接する状態に変化することになる。
【0054】
すなわち、角形電池3aは角形電池3に比べ厚さが大きくなったことにより、図6のように、角形電池3の側面と開口11の垂直面12、13とが平行な状態は維持できない。しかしながら、図10に示したように、矢印e方向に角度θ1だけ回転移動し、かつ角形電池3a底部の第1傾斜面4上の当接状態が、線接触から点接触に変化した状態で、倒れの無い安定状態を保つことができる。角度θ1は、角形電池3aの幅方向の中心線の回転角度である。
【0055】
ここで、図11(a)、(b)において、2点鎖線で示した傾斜面4aは、第1傾斜面4と同一形状の傾斜面を第1傾斜面4と対向する側に設けた場合の架空の傾斜面である。角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態においては、図11(a)において、角形電池3aの底部の稜線30の一部が点状に第1傾斜面4上に接触していることになる。同様に、図11(b)においては、角形電池3aの底部の稜線31の一部が点状に第1傾斜面4上に接触していることになる。
【0056】
これに対し、図11(a)において、稜線30と反対側における角形電池3a底部の稜線32は、角形電池3aが角度θ1(図10)だけ回転移動した状態においては、2点鎖線で示した傾斜面4aから遠ざかるように移動することになる。同様に、図11(b)において、稜線31と反対側における角形電池3a底部の稜線33は、角形電池3aが角度θ1(図10)だけ回転移動した状態においては、2点鎖線で示した傾斜面4aから遠ざかるように移動することになる。
【0057】
この状態においては、角形電池3aの矢印e方向(図10)への回転は、角形電池3aの底部の稜線30、31の一部が点状に第1傾斜面4上に接触していることにより規制される。矢印f方向(図10)への回転は、上トレイの傾斜面16、17により規制される。したがって、角形電池3aは収納部2内に直立状態を保って保持されることになる。
【0058】
ここで、第1傾斜面4に対向する傾斜面が、第2傾斜面5ではなく2点鎖線で示した傾斜面4aである場合は、角形電池3aの角度θ1の回転により、図11(a)においては、角形電池3a底部の稜線32と傾斜面4aとの間に隙間ができ、図11(b)においては、角形電池3a底部の稜線33と傾斜面4aとの間に隙間ができることになる。このような隙間があると、角形電池3a底部が傾斜面4a側に変位する余地があり、角形電池3aが傾いてがたつく可能性がある。
【0059】
本実施の形態の第2傾斜面5は、第1傾斜面4に比べ直立面に近接した傾斜面としている。すなわち、第2傾斜面5は、角形電池3aが角度θ1回転した状態において、角形電池3a底部の稜線に当接またはできるだけ近接するように形成している。このことにより、角形電池3a底部の変位による角形電池3aのがたつきを防止するようにしている。
【0060】
より具体的には、角形電池3aが角度θ1回転した状態において、第2傾斜面5が角形電池3a底部の稜線に当接するように、第2傾斜面5を形成した場合は、角形電池3aの幅方向の端部(図10のBB線と交差する部分)においては、図11(a)に示したように角形電池3a底部は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5に各1点、合計2点で接していることになる。同様に、図11(b)に示したように、角形電池3aの幅方向の端部(図10のEE線と交差する部分)においては、角形電池3a底部は、第1傾斜面4及び第2傾斜面5に各1点、合計2点で接していることになる。したがって、角形電池3a底部は合計4点で支持され、一対の第1傾斜面4のみに合計2点で支持されている場合に比べ、支持が安定する。
【0061】
図12(a)は図10のCC線における断面図であり、図12(b)は、図10のDD線における断面図である。図8(a)と図12(a)とを比較すると、トレイ1の断面形状は同じであるが、角形電池と第1傾斜面4及び第2傾斜面5との位置関係が異なっている。図8(b)と図12(b)との比較についても同様である。図12(a)においては、比較のため、図10のBB線と交差する部分における角形電池3aの断面形状を2点鎖線で示した。同様に、図12(b)においては、図10のEE線と交差する部分における角形電池3aの断面形状を2点鎖線で示した。
【0062】
図12(a)において、角形電池3aの底部の稜線34と第1傾斜面4の間に隙間がある。図12(b)において、角形電池3aの底部の稜線35との間に第1傾斜面4との間に隙間がある。
【0063】
これは、図10に示したように、角形電池3aが角度θ1の回転移動した状態は、第1傾斜面4の位置においては、角型電池3aの幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角形電池3aの側面は、垂直面12、13から離れるように傾いているためである。
【0064】
また、図10に示したように、角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態は、第2傾斜面5の位置においては、角形電池3aの側面は、角型電池3aの幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、垂直面12、13に近づくように、傾いている。
【0065】
一方、図12(a)においては、角形電池3aの底部の稜線36と第2傾斜面5との間に隙間がある。図12(b)においては、角形電池3aの底部の稜線37と第2傾斜面5との間に隙間がある。これは、図3、10に示したように、第2傾斜面5は、角型電池3aの幅方向(矢印c方向)における中心に向かうにつれて、角型電池3aから遠ざかるように傾斜しているためである。したがって、角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態において、第2傾斜面5は、角形電池3aの幅方向(矢印c方向)の両端部を除き、角形電池3底部に接しないように傾斜していることになる。すなわち、第2傾斜面5は、角形電池3aが角度θ1だけ回転移動した状態になることの妨げにならないように傾斜していることになる。このことにより、厚さの異なる角形電池を搭載した場合であっても、角形電池の幅方向(矢印c方向)の両端部においては、常に角形電池底部と第2傾斜面5とが接触できることになる。
【0066】
以下、前記の説明と重複する部分もあるが、角形電池の厚さが変化した場合の角形電池と第2傾斜面5との位置関係について以下に整理する。図13は、厚さの異なる3種類の角形電池(例えば厚さ4mm、6mm、8mm)と第2傾斜面5との位置関係を示した図である。本図は、角形電池の幅方向の端部におけるトレイ1の断面図であり、図10のBB線における断面図に相当する。以下の説明は、角形電池の幅方向の他方の端部、すなわち図10のEE線における断面図の場合であっても同様である。
【0067】
本図においても、説明の便宜のために、図11と同様に架空の傾斜面4aを図示している。傾斜面4aは、第1傾斜面4と同一形状の傾斜面を第1傾斜面4と対向する側に設けた場合の傾斜面である。
【0068】
角形電池3は、底部がトレイ1の底部から高さh1の位置に直立している。角形電池3より厚さの厚い角形電池3aを搭載すると、角形電池3a底部は高さh1より高い高さh2の位置に移動し、図10に示した通り、角形電池3aが角度θ1の回転移動をした状態になる。この状態では、角形電池3a底部の稜線は傾斜面4aから遠ざかることになるが、第2傾斜面5には当接している。
【0069】
このことにより、角形電池3a底部は、図13のように2点で支持され、他方の端部においても同様に2点で支持され、合計4点で支持されることになる。すなわち角形電池3aは、角形電池3に対し角度θ1だけ回転移動した状態で、安定して直立状態を保つことになる。
【0070】
角形電池3aより厚さの厚い角形電池3bを搭載すると、角形電池3b底部は高さh2より高い高さh3の位置に移動する。この場合、角形電池3bは図10に示した角度θ1より大きな角度θ2の回転移動をした状態になる。この状態では、角形電池3a底部の稜線は傾斜面4aから遠ざかることになるが、第2傾斜面5には当接している。
【0071】
このことにより、角形電池3b底部は、図13のように2点で支持され、他方の端部においても同様に2点で支持され、合計4点で支持されることになる。すなわち角形電池3bは、角形電池3に対し角度θ2だけ回転移動した状態で、安定して直立状態を保つことになる。
【0072】
前記のように、角形電池の厚さが増した場合はいずれも、角形電池底部の稜線は、傾斜面4aからは遠ざかることになるが、第2傾斜面5には当接している。これは、第2傾斜面5の傾斜を、第1傾斜面4(4a)に比べ直立状態に近接させて、角形電池の厚さ増加に伴なう角形電池底部の稜線の変位に追従するように形成しているためである。
【0073】
他方、前記の通り、角形電池が回転移動した状態において、角形電池の幅方向においては、第2傾斜面5は、角形電池3aの幅方向の両端部を除き、角形電池底部に接しないように傾斜している。すなわち、第2傾斜面5は角形電池の両端部以外の部分において、角形電池が回転移動した状態になることの妨げにならないようにしている。
【0074】
すなわち、本実施の形態に係る電池トレイによれば、厚さの異なる多品種の電池を収納でき、収納する電池の厚さが大きくなる毎に、収納した電池は厚さの増加分に応じた回転移動をした状態で、安定した直立状態を保つことができる。
【0075】
以上、本実施の形態に係る電池トレイは、厚さの異なる多品種の角形電池を収納可能であることについて説明した。前記の通り、厚さを増加させた角形電池を収納すると、厚さの増加分に応じて、角形電池の回転角度も大きくなる。
【0076】
しかしながら、上下電極20、21(図9)が当接する角形電池の中央部は、回転軸の近傍である。このため、回転角度が増加しても、中央部にある上下電極20、21と角形電池の各端子との当接部の面積は、同じであるか又はほとんど変らない。したがって、回転移動しても、上下電極20、21と角形電池の端子との接触面積は確保され、化成工程において確実な充電をすることができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、厚さの異なる角形電池を収納可能であるが、厚さの範囲は、上トレイの開口の形状により制限を受けることになる。より広範囲な角形電池の厚さに対応するために、開口形状の異なる複数種類の上トレイを用意しておいてもよい。このようにすれば、下トレイは共用しつつ、上トレイを交換するだけで、収納できる角形電池の厚さの範囲を広範囲にすることができる。
【0078】
また、同様に広範囲な角形電池の幅寸法に対応するために、幅方向の開口形状の異なる上トレイを用いることにより、収容できる角形電池の幅の範囲を広範囲にすることができる。さらに、厚さ対応、幅対応の上トレイを組み合わせて使用しても良い。
【0079】
なお、本実施の形態に係る電池トレイは、図6に示したように角形電池3を収納したときに、角形電池3の回転角度がゼロになる例で説明したが、これに限るものではなく、適宜決定すればよい。
【0080】
また、本実施の形態に係る電池トレイは、化成工程で使用する例で、説明したが、用途はこれに限るものではない。例えば製造工程間で電池を受渡す際に用いる運搬用キャリアとして用いたり、電池の保管用として用いたりすることもできる。また、工程に合わせて、1個から数個を収納する形状としてもよい。
【0081】
また、本発明のトレイは、収納部が従来のトレイよりも開口部が大きく、トレイ作成に必要な樹脂量を削減でき、コスト低減と、軽量化も可能である。
【0082】
(実施の形態2)
以下、図面を参照しながら、実施の形態2、3について説明する。以下の説明は、前記実施の形態1と異なる部分についてのみ説明する。他の構成については、前記実施の形態1と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0083】
図14は、実施の形態2に係る上下の電池トレイのうち、下トレイ40を示す平面図である。側面の形状は、前記実施の形態1の図1(b)と同様であるので省略する。図1では電池収納部2は、下トレイ1の外周の辺に対して傾斜して配置されている。この傾斜の方向に電池収納部2は列状に配置され、各列同士は平行になっている。
【0084】
これに対し、図14の構成では、列状に配置された電池収納部41の各列同士が平行である点は、図1と同様であるが、各列は下トレイ40の外周の辺にも平行になるように配置されている。
【0085】
図15は、図14の下トレイ40に対応する上トレイ42を示す平面図である。側面の形状は、前記実施の形態1の図3(b)と同様であるので省略する。上トレイ42は、開口の配置を除き、図4の上トレイ10と同様である。図15の開口43は、上トレイ42を図14の下トレイ40に載置したときに、電池収納部41に対応するように、配置している。すなわち、開口43の各列は上トレイ42の外周の辺に平行になるように配置されている。
【0086】
本実施の形態は、前記実施の形態1のトレイに比べ、単位面積当たりの電池の収納個数は少なくなるが、電池収納部41及び開口43の配置が単純化される。このため、トレイを設置する設備、トレイに電池を出し入れする設備等の設定が容易になる場合がある。
【0087】
(実施の形態3)
前記実施の形態1、2のトレイは、上トレイと下トレイとに分離したものであるが、実施の形態3のトレイは、上下トレイを一体に形成したものである。図16(a)は開口50部分を示す平面図、図16(b)は図16(a)のFF線における断面図、図16(c)は図16(a)のGG線における断面図である。
【0088】
図7(a)、(b)のような構成で上下トレイを一体に成形しようとすると、収納部2における金型を収納部2から抜き出すことが困難になる。図16(b)の断面図では、開口50の内周面と収納部51の内周面とが同一面上にある。同様に、図16(c)の断面図においても、開口50の内周面と収納部51の内周面とが同一面上にある。この構成は、収納部51から金型を抜き出すことが容易であり、上下トレイを一体にしたトレイを容易に成形することができる。
【0089】
本実施の形態は成形が容易であり、収納する電池の幅寸法が限定されている場合には有効である。
【0090】
なお、前記各実施の形態で説明した電池トレイは、ノートパソコン、携帯電話、PDA、ゲーム機などの小型の携帯機器で用いられるような形状の電池用に限定されるものではなく、例えば電気自動車、ゴルフカート、電気カート、セキュリティシステム、電力貯蔵システムなどの電源として使用されるような大型の電池用であっても同様に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明によれば、一つのトレイで厚さの異なる多品種の電池を安定して収納できるので、本発明に係る電池トレイは、例えば化成工程で充電する際のトレイ、製造工程間で受渡す際のトレイ、又は電池の保管用とトレイとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)図は本発明の一実施の形態に係る下トレイを示す平面図、(b)図は側面図。
【図2】(a)図は本発明の一実施の形態に係る電池収納部の拡大平面図、(b)図は(a)図のAA線における断面図。
【図3】本発明の一実施の形態に係る収納部2の要部斜視図であり、(a)図は第1傾斜面4と第2傾斜面5とが対向している状態を示す斜視図、(b)図は第2傾斜面5を(a)図とは別の角度から見た斜視図である。
【図4】(a)図は本発明の一実施の形態に係る上トレイを示す平面図、(b)図は側面図。
【図5】(a)図は本発明の一実施の形態に係る上トレイと下トレイとを組み合わせた状態の平面図、(b)図は(a)図の側面図。
【図6】本発明の一実施の形態に係る下トレイ1と上トレイ10とを組み合わせた状態において、角形電池3を収納した状態の平面図。
【図7】(a)図は図6のBB線における断面図、(b)図は図6のEE線における断面図。
【図8】(a)図は図6のCC線における断面図、(b)図は図6のDD線における断面図。
【図9】(a)図は本発明の一実施の形態に係る化成工程における充電前の状態を示す断面図、(b)図は充電時の状態を示す断面図。
【図10】本発明の一実施の形態に係る下トレイ1と上トレイ10とを組み合わせた状態において、角形電池3aを収納した状態の平面図。
【図11】(a)図は図10のBB線における断面図、(b)図は図10のEE線における断面図。
【図12】(a)図は図10のCC線における断面図、(b)図は図10のDD線における断面図。
【図13】厚さの異なる角形電池と第2傾斜面との位置関係を説明するための断面図。
【図14】実施の形態2に係る上下の電池トレイのうち、下トレイを示す平面図。
【図15】実施の形態2に係る下トレイ40に対応する上トレイ42を示す平面図。
【図16】(a)図は本発明の実施の形態2に係る開口部分を示す平面図、(b)図は(a)図のFF線における断面図、(c)図は(a)図のGG線における断面図。
【図17】(a)図は従来の電池トレイの一例の平面図、(b)図は電池収納部101の1個分の拡大図。
【符号の説明】
【0093】
1,40 下トレイ
2,41,51 収納部
3,3a,3b 角形電池
4 第1傾斜面
5 第2傾斜面
6 貫通孔
10,42 上トレイ
11,43,50 開口
12,13 垂直面
14,15 水平面
16,17 傾斜面
20 上側電極
21 下側電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収納する電池トレイであって、
開口と、前記開口の奥側に設けた収納部とを備え、
前記収納部の底部に、第1傾斜面と第2傾斜面とが対向しており、
前記対向する前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、
前記収納部の底部における対角方向のうち、一方の対角方向に一対の第1傾斜面が配置され、他方の対角方向に1対の第2傾斜面が配置され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に比べ直立面に近接しており、
前記電池の収納状態において、前記第2傾斜面は、前記電池の幅方向における中心に向かうにつれて、前記電池から遠ざかるように傾斜しており、
前記電池の収納状態を前記開口に対向する側から見たときに、前記電池の幅方向の移動を規制する規制面があり、前記開口の1対の対角位置に、前記電池の回転移動を規制する規制面があり、
前記幅方向の移動を規制する規制面と、前記回転移動を規制する規制面とが鈍角で交わっていることを特徴とする電池トレイ。
【請求項2】
前記第2傾斜面は、異なる厚さの前記電池を収納したときに、前記各電池の幅方向の端部において、前記各電池の底部と点状に接するように形成している請求項1に記載の電池トレイ。
【請求項3】
前記電池トレイは、前記第1傾斜面及び第2傾斜面を形成した第1のトレイと、前記開口を形成した第2のトレイとを組み合わせたものである請求項1又は2に記載の電池トレイ。
【請求項4】
前記第2のトレイは、交換可能である請求項3に記載の電池トレイ。
【請求項5】
前記開口の内周面と前記収納部の内周面とが同一面上にある請求項1から4のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項6】
前記開口は、複数の開口列を形成しており、前記各開口列同士が平行に配置されている請求項1から5のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項7】
前記開口は、前記収納部と反対側にテーパ面が形成されている請求項1から6のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項8】
前記収納部の奥部に貫通孔が形成されており、前記貫通孔を通過させた電極と、前記開口側の電極とで前記収納部に収納した電池を挟み込むことができる請求項1から7のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項1】
電池を収納する電池トレイであって、
開口と、前記開口の奥側に設けた収納部とを備え、
前記収納部の底部に、第1傾斜面と第2傾斜面とが対向しており、
前記対向する前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間隔は、前記開口に向かうにつれて広がっており、
前記収納部の底部における対角方向のうち、一方の対角方向に一対の第1傾斜面が配置され、他方の対角方向に1対の第2傾斜面が配置され、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に比べ直立面に近接しており、
前記電池の収納状態において、前記第2傾斜面は、前記電池の幅方向における中心に向かうにつれて、前記電池から遠ざかるように傾斜しており、
前記電池の収納状態を前記開口に対向する側から見たときに、前記電池の幅方向の移動を規制する規制面があり、前記開口の1対の対角位置に、前記電池の回転移動を規制する規制面があり、
前記幅方向の移動を規制する規制面と、前記回転移動を規制する規制面とが鈍角で交わっていることを特徴とする電池トレイ。
【請求項2】
前記第2傾斜面は、異なる厚さの前記電池を収納したときに、前記各電池の幅方向の端部において、前記各電池の底部と点状に接するように形成している請求項1に記載の電池トレイ。
【請求項3】
前記電池トレイは、前記第1傾斜面及び第2傾斜面を形成した第1のトレイと、前記開口を形成した第2のトレイとを組み合わせたものである請求項1又は2に記載の電池トレイ。
【請求項4】
前記第2のトレイは、交換可能である請求項3に記載の電池トレイ。
【請求項5】
前記開口の内周面と前記収納部の内周面とが同一面上にある請求項1から4のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項6】
前記開口は、複数の開口列を形成しており、前記各開口列同士が平行に配置されている請求項1から5のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項7】
前記開口は、前記収納部と反対側にテーパ面が形成されている請求項1から6のいずれかに記載の電池トレイ。
【請求項8】
前記収納部の奥部に貫通孔が形成されており、前記貫通孔を通過させた電極と、前記開口側の電極とで前記収納部に収納した電池を挟み込むことができる請求項1から7のいずれかに記載の電池トレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−218077(P2009−218077A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60124(P2008−60124)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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