説明

電池パック用インシュレータ構造及び電池パック構造

【課題】電池パックの小型化を可能とし、生産性を向上できる電池パック用インシュレータ構造及び電池パック構造を提供する。
【解決手段】電池のセル面と該セル面上に配置する保護回路基板7との間に設置する絶縁性シートでなる電池パック用インシュレータ構造であって、前記保護回路基板7上の部品実装部8を収容する空間を形成可能に前記セル面側の一部に切り欠き部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池のセル面と該セル面上に配置する保護回路基板との間を絶縁する電池パック用インシュレータ構造及び電池パック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話装置の小型、薄型化に伴い、電池パックも小型・薄型化が要求されている。そのためには、電池パックの内部構造の空間は出来るだけ排除するように構成しなければならない。
【0003】
このための関連技術として、電池のセルの2面に両面粘着テープで絶縁板を接着し、その上に金型成形したスペーサを両面粘着テープで接着し、更にスペーサの上に保護回路基板とPTCサーミスタとからなる保護回路を搭載した電池パックの内部構造や、電池のセルの隣接する2又は3面に、両面粘着テープにより金型成形した絶縁板を兼ねた外装ケースの突起部の溝と係合するリブを備えるスペーサを係合し、その上に保護回路基板とPTCサーミスタとからなる保護回路を搭載した電池パックの内部構造が知られている(特許文献1、図8及び図1、2、段落0022,0033,0034,0047等参照)。
【0004】
しかし、このような構造の電池パックは、複雑な構造のスペーサを必要とし、しかもスペーサ自体は金型成形で製作するという大掛かりな別工程を必要とするもので、生産性、コスト、小型化等の点で問題がある。
【0005】
これに対し、電池のセル面と該セル面上に配置する保護回路基板との間に絶縁性シート(電池パック用インシュレータという。)を配置するという方法が考えられ、この方法はインシュレータの製作自体も簡便に実現可能であり、電池パックの小型化が図れることから有用である。
【0006】
図5は、本発明の関連技術のインシュレータが使用されている電池パック内部を示す図である。電池のセル6、保護回路基板7、保護回路基板7に搭載された部品実装部8、PTC(サーミスタ)9、金属TAB(金属板)10、インシュレータ13で構成されている。
【0007】
この電池パックにおける絶縁用のインシュレータ13は、所定長の一様な厚みの絶縁材料で構成し、電池のセル6の面に端部までに貼り付けるタイプのものであるが、インシュレータ13の上に保護回路基板7の部品実装部8が配置されるため、保護回路基板7等とインシュレータ13の間には無駄な空間が形成され、電池パックの小型化のためには難点がある。
【特許文献1】特開2007−157452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、保護回路基板7の部品実装部8が位置するインシュレータの端部側を除去し、部品実装部8のインシュレータと反対側に別のスペーサを追加する構造が考えられる。
【0009】
図6は、このようなインシュレータとスペーサを用いる電池パック内部を示す図である。電池のセル6、保護回路基板7、保護回路基板の部品実装部8、PTC9、金属TAB10、インシュレータ14、スペーサ15で構成されている。
【0010】
この構成によれば、セル6の面上のインシュレータ14の端部とスペーサ15との間に、空間が形成され部品実装部8を収容可能となるため、図3に示すような無駄な空間を無くすことができるから、一層の電池パックの小型化が図れる。
【0011】
しかしながら、このインシュレータ構造では、絶縁用の部品としては2点となるため生産性が低下するという問題がある。
【0012】
(目的)
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は電池パックの小型化を可能とし、生産性を向上できる電池パック用インシュレータ構造及び電池パック構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の電池パック用インシュレータ構造は、電池のセル面と該セル面上に配置する保護回路基板との間に設置する絶縁性シートでなる電池パック用インシュレータ構造であって、前記保護回路基板上の部品実装部を収容する空間を形成可能に前記セル面側の一部に切り欠き部を設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第1の電池パック構造は、電池のセルと、前記セルのセル面上に配置したセル面側の一部に切り欠き部を設けた絶縁シートでなる電池パック用インシュレータと、前記切り欠き部の上面に空間を形成して保護回路基板上の部品実装部を収容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成で電池のセル面と保護回路との絶縁を可能とし、電池パックの小型化と生産性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の電池パック用インシュレータ構造及び該電池パック用インシュレータを使用した電池パック構造の一実施形態について説明する。
【0017】
(構成の説明)
図1は、第1の実施形態の電池パック用インシュレータの構造を示す斜視図である。ポリエチレン テレフタレート(Polyethylene Terephthalate:PET)の可撓性のフィルムでなるPET部1、可撓性の絶縁性紙素材の紙素材部2、同絶縁性紙素材の先端紙素材部3、電池のセルのコーナ部に対応する折り曲げ部4、電池のセルの負極端子を露出させる貫通孔のセル負極用穴部5で構成されている。
【0018】
本電池パック用インシュレータは、絶縁性素材のポリエチレン テレフタレートのフィルムでなるPET部1に、絶縁性素材の紙素材部2及び先端紙素材部3を積層して絶縁性シートとし、更にインシュレータの折り曲げ部4とセル負極用穴部5を形成したものであるが、前記絶縁性シートとしては、例えば、絶縁性素材のポリエチレン テレフタレートのフィルムに均一な厚みの絶縁性素材の紙素材を両面粘着テープ等の粘着層により接着(積層)し、紙素材の一部を切り欠き(剥ぎ取る)ことにより製作することが可能である。
【0019】
図2は、第1の実施形態のインシュレータが使用された電池パック内部を示す断面図であり、図3は電池パックの上面側からみた正面図である。
【0020】
図2に示すように、電池パック用インシュレータを構成するPET部1、紙素材部2及び先端紙素材部3、電池のセル6、保護回路を構成する保護回路基板7、保護回路基板の部品実装部8、Positive Temperature Coefficient(PTC)素子のPTC9及び金属板(タブ)の金属TAB10で構成されている。以下、電池パックの各部の構成を説明する。
【0021】
電池のセル6は、その内部に例えばリチウムイオン二次電池等の二次電池を備え、これをアルミニウム等のケースに収納して構成され、セル6の一端面には絶縁板(図示せず)を介して突出した負極端子(−端子)が設けられ、この負極端子が設けられた部分以外のセルの全体が正極端子(+端子)として構成されている。
【0022】
図1に示す電池パック用インシュレータは、折り曲げ部4で折り曲げられ、セル6の隣接する2面(上面と左側面)に配置され、先端紙素材部3がセル6の上面端部に位置し、前記切り欠き部のPET部1がセル6の上面に貼り付くことにより、当該切り欠き部と反対側のPET部1の上面に空間が形成される。
【0023】
なお、PET部1の厚みは紙素材部2及び先端紙素材部3の絶縁性紙素材の厚みより薄くすることにより形成される空間を増大させることができ、また、部品1点としてのインシュレータの扱い易さ、及び空間形成の容易さ等の要素を考慮してPET部1の可撓性等が選定される。
【0024】
また、前記切り欠き部のPET部1のセル6の上面への貼り付けは、前記紙素材の一部の切り欠き(剥ぎ取り)により現れた前記両面粘着テープ等の粘着層を利用すると好適に実現できる。
【0025】
保護回路基板7は、電池パック用インシュレータの切り欠き部の反対側のPET部1の上部に形成された空間に、樹脂封止された部品実装部8の少なくとも一部が収容され、紙素材部2及び先端紙素材部3の存在するPET部1の上部に保護回路基板7の端部又はその端子部等が当接するように搭載される。
【0026】
保護回路基板7の正極側の端子部の金属TAB10はセル6の側面に沿って延在し、該セル6の+端子と接続され、同保護回路基板7の負極側の端子部はPTC9の素子の一方の金属プレートと接続され、PTC9の他方の金属プレートがインシュレータの上面及び側面に沿って延在し、セル負極用穴部5に位置する−端子と接続される。
【0027】
なお、保護回路はセル6の過充電又は過放電等を防止するための回路であり、保護回路基板7とPTC9により構成されている。保護回路基板7にはセル6と対向する面に部品実装部8が配置され、反対側の面の一端部側には、図3に示すように、外部へ電力を出力し、また逆に充電のために外部から電力を入力するための+端子、−端子及び温度異常を感知するためのPTC9と接続されたT端子等の金メッキの電極端子等が設けられている。
【0028】
(動作の説明)
図1〜3に示すように、電池パック用インシュレータの紙素材に一部に切り欠きを設けることで、インシュレータの当該部分のPET部1がセル6の面に貼り付き、保護回路基板7の部品実装部8が切り欠き部により形成される上部の空間に収まる構造となり、電池パック用インシュレータを1点の部品とし、保護回路基板7等と電池パック用インシュレータ2、セル6との間の空間を排除し、保護回路基板7とセル6の面を平行に配置する。
【0029】
(第2の実施形態)
以上の実施形態では、インシュレータをPETと紙素材の積層により構成した例を示したが、本発明は例えば紙素材等の絶縁シートで構成し、当該絶縁シートのセル側の一部を切り欠いて保護回路基板の部品実装部の収容スペースを確保するように構成することが可能である。
【0030】
図4は、第2の実施形態の電池パック用インシュレータの構造を示す斜視図である。
絶縁性シートを絶縁素材11により成形し、保護回路基板の部品実装部が位置する部分のセル側の部分の一部を切り欠いて、当該切り欠き部分の底部に両面粘着テープ等による粘着層12を形成して電池パック用インシュレータを構成する。なお、絶縁素材及び切り欠き部の絶縁素材の厚さ等は第1の実施形態と同様な要素を考慮して選定される。
【0031】
図4に示す電池パック用インシュレータは、第1の実施形態と同様にセル面(図示せず)に搭載し、切り欠き部分の可撓性のある絶縁素材11を上部から押下するなどによりセル面に張り付け、前記部品実装部の収容スペースを当該部分の上部に形成する。前記収容スペースに部品実装部の少なくとも一部を収容するように保護回路基板を搭載する。
【0032】
以上のように本発明によれば、インシュレータの一部を切り欠き、その切り欠き部により形成可能な空間に保護回路基板の部品実装部を配置することで、電池パックの内部構造の保護回路基板とインシュレータやセルの間の空間を排除でき、電池パックの一層の小型化を実現することが可能である。
【0033】
また、インシュレータの一部を切り欠くことで、先端の同じ厚み部の存在により保護回路基板をセルの面と平行な配置を保つことができ、電池パックの保護回路基板の上面の+端子、−端子等の複数の電極端子間の高低差を低減できる。
【0034】
また、インシュレータを1点の部品とすることが可能であり、2点の部品を必要とする方法と比較すると、電池パックの製造が容易であるのみならず、保護回路基板とセルの面を平行に保つことが可能であり、保護回路基板の上面の+端子、−端子等に対応する貫通孔を有するケースへの高精度な収容も容易となり生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態の電池パック用インシュレータの構造を示す図である。
【図2】第1の実施形態のインシュレータが使用されている電池パック内部を示す図である。
【図3】第1の実施形態の電池パックの上面を示す図である。
【図4】第2の実施形態の電池パック用インシュレータの構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の関連技術のインシュレータが使用された電池パック内部を示す図である。
【図6】本発明の関連技術のインシュレータとスペーサが使用されている電池パック内部を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 PET部(Polyethylene Terephthalate)
2 紙素材部
3 先端紙素材部
4 折り曲げ部
5 セル負極用穴部
6 セル
7 保護回路基板
8 部品実装部(樹脂封止部)
9 PTC(Positive Temperature Coefficient)
10 金属TAB
11 絶縁材料
12 粘着層(両面テープ)
13、14 関連技術のインシュレータ
15 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池のセル面と該セル面上に配置する保護回路基板との間に設置する絶縁性シートでなる電池パック用インシュレータ構造であって、前記保護回路基板上の部品実装部を収容する空間を形成可能に前記セル面側の一部に切り欠き部を設けたことを特徴とする電池パック用インシュレータ構造。
【請求項2】
前記絶縁性シートは、前記セル面側の可撓性の絶縁性素材と前記保護回路基板が搭載される側の可撓性の絶縁性素材の積層構造を有することを特徴とする請求項1記載の電池パック用インシュレータ構造。
【請求項3】
前記セル面側の可撓性の絶縁性素材は、紙素材でなることを特徴とする請求項2記載の電池パック用インシュレータ構造。
【請求項4】
前記保護回路基板が搭載される側の可撓性の絶縁性素材は、ポリエチレン テレフタレートであることを特徴とする請求項2又は3記載の電池パック用インシュレータ構造。
【請求項5】
前記切り欠き部の底面に前記セル面側と接着可能な粘着層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかの請求項記載の電池パック用インシュレータ構造。
【請求項6】
前記セル面側の可撓性の絶縁性素材と前記保護回路基板が搭載される側の可撓性の絶縁性素材とは粘着層で接着されていることを特徴とする請求項2ないし4の何れかの請求項記載の電池パック用インシュレータ構造。
【請求項7】
電池のセルと、前記セルのセル面上に配置したセル面側の一部に切り欠き部を設けた絶縁シートでなる電池パック用インシュレータと、前記切り欠き部の上面に空間を形成して保護回路基板上の部品実装部を収容したことを特徴とする電池パック構造。
【請求項8】
前記絶縁性シートは、前記セル面側の可撓性の絶縁性素材と前記保護回路基板が搭載される側の可撓性の絶縁性素材との積層構造を有することを特徴とする請求項7記載の電池パック構造。
【請求項9】
前記セル面側の可撓性の絶縁性素材は、紙素材でなることを特徴とする請求項8記載の電池パック構造。
【請求項10】
前記保護回路基板が搭載される側の可撓性の絶縁性素材は、ポリエチレン テレフタレートであることを特徴とする請求項8又は9記載の電池パック構造。
【請求項11】
前記切り欠き部の底面に前記セル面側と接着可能な粘着層が形成されていることを特徴とする請求項7ないし10の何れかの請求項記載の電池パック構造。
【請求項12】
前記セル面側の可撓性の絶縁性素材と前記保護回路基板が搭載される側の可撓性の絶縁性素材とは粘着層で接着されていることを特徴とする請求項8ないし10の何れかの請求項記載の電池パック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−104843(P2009−104843A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274097(P2007−274097)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】