説明

電池ホルダ用防水構造

【課題】小型の電子機器の電池ホルダ用防水構造の防水性能を簡易な構成で向上させることにある。
【解決手段】電子機器のケース1内で電池2を保持してその電池2の電極2a,2bに接点3,4を接触させるとともに、そのケース1の電池交換用開口部1aを覆う蓋5の開放により電池2の交換を可能にする電池ホルダに設けられ、電池交換用開口部1aからのケース1内への水の侵入を防止する電池ホルダ用防水構造において、ケース1の電池交換用開口部1aの内周面に、ケース1内の電池2の外周面2aと水密に嵌合して電池交換用開口部1aをシールする環状の弾性シール部材7を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器のケース内で電池を保持してその電池の電極に接点を接触させるとともに、そのケースの電池交換用開口部を覆う蓋の開放により電池の交換を可能にする電池ホルダに関し、特にはその電池ホルダに用いられ、電池交換用開口部からのケース内への水の侵入を防止する防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上述の如き電池ホルダとしては、例えば図2に示すように、電子機器のケース1内でボタン型の電池2を保持してその電池2の円筒状の外周面2aおよび一方の端面2bに位置する電極に基板上の接点3,4をそれぞれ接触させるとともに、そのケース1の電池交換用開口部1aを覆う蓋5の開放により電池2の交換を可能にし、その蓋5を小ねじ6によってケース1に開放可能に固定したものが知られており、この電池ホルダはケース1に、蓋5との間に介在して電池交換用開口部1aを囲繞する環状の弾性シール部材7を設けて、電池交換用開口部1aからのケース1内への水の侵入を防止する防水構造を構成している。
【0003】
また特許文献1により、蓋に電池を囲むように筒状部を形成し、上記小ねじ6に替えてその筒状部の外周面に形成した雄ねじを、ケースの電池交換用開口部の内周面に形成した雌ねじと螺合させて蓋を開閉可能とした電池ホルダも従来から知られており、この電池ホルダもケースに、蓋との間に介在して電池交換用開口部を囲繞する環状の弾性シール部材を設けて、電池交換用開口部からのケース内への水の侵入を防止する防水構造を構成している。
【0004】
さらに、図3に示すように、蓋5をヒンジ8で開閉可能にケース1に支持して、その蓋5の鉤爪状の掛止部5aをケース1の掛合部1bに掛止することで蓋5の閉止状態を維持する電池ホルダも従来から知られており、この電池ホルダもケース1に、蓋5との間に介在して電池交換用開口部1aを囲繞する環状の弾性シール部材7を設けて、電池交換用開口部1aからのケース1内への水の侵入を防止する防水構造を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−216512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、手のひらに載る電子辞書等のような小型の電子機器においては、ケースだけでなく蓋も小型、薄肉とすることが求められるため、蓋に充分な強度を持たせ得ないことから、上記各従来技術のようにケースと蓋との間に環状の弾性シール部材を介在させて電池交換用開口部からのケース内への水の侵入を防止するようにすると、弾性シール部材から加わる弾性反発力で蓋に変形が生じて充分な防水性能が得られないという問題があり、特に、図3に示すように蓋5の両端部にヒンジ8と掛止部5aとを配置したヒンジ式の蓋では、蓋の支持間隔が広くなるためこの問題が顕著であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記従来の防水構造の課題を有利に解決するものであり、この発明の電池ホルダ用防水構造は、電子機器のケース内で電池を保持してその電池の電極に接点を接触させるとともに、そのケースの電池交換用開口部を覆う蓋の開放により前記電池の交換を可能にする電池ホルダに設けられ、前記電池交換用開口部からの前記ケース内への水の侵入を防止する電池ホルダ用防水構造において、前記ケースの前記電池交換用開口部の内周面に、前記ケース内の電池の外周面と水密に嵌合して前記電池交換用開口部をシールする環状の弾性シール部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
かかる電池ホルダ用防水構造にあっては、ケースの電池交換用開口部の内周面に、ケース内の電池の外周面と水密に嵌合して電池交換用開口部をシールする環状の弾性シール部材を設けているため、弾性シール部材は、ケースの電池交換用開口部の内周面と電池の外周面との間で圧縮されてそれら内外周面に弾性反発力を及ぼし、電池交換用開口部を覆う蓋の強度にかかわらずシール性を発揮する。しかも蓋には、弾性シール部材の弾性反発力が加わらない。
【0009】
従って、この発明の電池ホルダ用防水構造によれば、蓋を小型、薄肉としても充分な防水性能を得ることができ、しかも、蓋を小型、薄肉としても蓋の変形を防止することができ、これらの効果は、特に小型の電子機器のケースやヒンジ式の蓋において有益である。
【0010】
なお、この発明の電池ホルダ用防水構造においては、前記環状の弾性シール部材は前記電池交換用開口部の内周面の、前記接点よりも外部に近い位置に配置しても良い。このようにすれば、ケース内だけでなく接点周りの防水性能も得ることができきるので、接点やそこへの通電経路の防水を別途行う必要性をなくすことができる。
【0011】
また、この発明の電池ホルダ用防水構造においては、前記電池はボタン型のものであっても良い。ボタン型の電池であれば、円筒状の外周面と一方の端面とが電極になっていることから、そのボタン型電池の電極端面を内向きにしてケース内に保持して外周面を弾性シール部材でシールすることで、容易に防水構造を構成することができ、その際、接点をその電極端面と外周面とに弾性シール部材よりもケース内側で接触させることで、接点周りも含めた防水性を容易に達成することができる。
【0012】
そして、この発明の電池ホルダ用防水構造においては、前記環状の弾性シール部材はオー(O)リングであっても良い。このようにすれば、オーリングは種々の機械に多用されているため一般に容易かつ安価に入手できるので、防水構造を容易かつ安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の電池ホルダ用防水構造の一実施例を示す断面図である。
【図2】従来の電池ホルダ用防水構造の一例を示す断面図である。
【図3】従来の電池ホルダ用防水構造の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の電池ホルダ用防水構造の一実施例を示す断面図であり、図中、図2,3の従来例と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0015】
ここにおける電池ホルダは、電子機器のケース1内でボタン型の電池2を保持してその電池2の外周面2aおよび一方の端面2bに位置する電極に基板上の接点3,4をそれぞれ接触させるとともに、そのケース1の円形の電池交換用開口部1aを覆う蓋5の開放により電池2の交換を可能にし、その蓋5をヒンジ8によってケース1に開閉可能に支持して、その蓋5の鉤爪状の掛止部5aをケース1の掛合部1bに掛止することで蓋5の閉止状態を維持するものである。
【0016】
そして上記電池ホルダに設けられて、電池交換用開口部1aからのケース1内への水の侵入を防止するこの実施例の防水構造は、ケース1の電池交換用開口部1aの内周面に、ケース1内の電池2の円筒状の外周面2aと水密に嵌合して電池交換用開口部1aをシールする環状の弾性シール部材7を設けてなるものである。
【0017】
ここで、接点3は二つの金属片からなり、それらの金属片は電池2の円筒状の外周面2aを両側から挟み込んでその外周面2aとの接触導通状態を維持するとともに、電池2を保持して電池2の一方の端面2bと接点4との接触導通状態を維持する。
【0018】
また、弾性シール部材7は通常の合成ゴム製のオー(O)リングからなり、接点3よりもケース1の外部に近い位置で電池交換用開口部1aの内周面に形成された環状溝1c内に嵌装され、電池交換用開口部1aの内周面と電池2の円筒状の外周面2aとの間で圧縮されてそれら内外周面1a,2aに弾性反発力を及ぼすことで、それら内外周面1a,2aと水密に嵌合して電池交換用開口部1aをシールする。
【0019】
なお、かかる電池ホルダにおいて電池2を取り出す際には、蓋5を爪先やドライバー等で引っ掛けて開いた後、電池交換用開口部1aの反対側からケース1を押して弾性的に撓ませることで電池2を押し出しても良く、あるいはケース1の電池交換用開口部1a付近を手に当てて止めた反動で電池2を出させても良く、あるいはケース1の内外に設けたレバーを、ケース1を貫通させてオーリング等により水密にシールした軸で連結し、ケース1外のレバーの揺動操作でケース1内のレバーを揺動させて電池2を押し出すようにしても良い。
【0020】
従って、この実施例の電池ホルダ用防水構造によれば、蓋5を小型、薄肉としても充分な防水性能を得ることができ、しかも、蓋5を小型、薄肉としても蓋5の変形を防止することができ、これらの効果は、特に小型の電子機器のケースやヒンジ式の蓋において有益である。
【0021】
また、この実施例の電池ホルダ用防水構造によれば、環状の弾性シール部材7はケース1の電池交換用開口部1aの内周面の、接点3,4よりも外部に近い位置に配置しているので、ケース1内だけでなく接点3,4周りの防水性能も得ることができきるので、接点3,4やそこへの通電経路の防水を別途行う必要性をなくすことができる。
【0022】
さらに、この実施例の電池ホルダ用防水構造によれば、電池2はボタン型のものであるので、円筒状の外周面2aと一方の端面2bとが電極になっていることから、そのボタン型電池2の電極端面2bを内向きにしてケース1内に保持して外周面2aを弾性シール部材7でシールすることで、容易に防水構造を構成することができ、その際、接点3,4をその電極端面2bと外周面2aとに弾性シール部材7よりもケース内側で接触させることで、接点3,4周りも含めた防水性を容易に達成することができる。
【0023】
そして、この実施例の電池ホルダ用防水構造によれば、環状の弾性シール部材7はオー(O)リングであり、オーリングは種々の機械に多用されているため一般に容易かつ安価に入手できるので、防水構造を容易かつ安価に構成することができる。
【0024】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、電池はボタン型のものでなく柱状(棒状)のものでも良く、また、一方の電極は蓋の裏側に配置して、弾性シール部材の外側から別途防水した通電経路を経てケース内の基板等に接続しても良い。そして電子機器は、手のひらに載る電子辞書等のような小型のものには限られない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
かくしてこの発明の電池ホルダ用防水構造によれば、蓋を小型、薄肉としても充分な防水性能を得ることができ、しかも、蓋を小型、薄肉としても蓋の変形を防止することができ、これらの効果は、特に小型の電子機器のケースやヒンジ式の蓋において有益である。
【符号の説明】
【0026】
1 ケース
1a 電池交換用開口部
1b 掛合部
1c 環状溝
2 電池
2a 外周面
2b 端面
3,4 電極
5 蓋
5a 掛止部
6 小ねじ
7 弾性シール部材
8 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のケース内で電池を保持してその電池の電極に接点を接触させるとともに、そのケースの電池交換用開口部を覆う蓋の開放により前記電池の交換を可能にする電池ホルダに設けられ、前記電池交換用開口部からの前記ケース内への水の侵入を防止する電池ホルダ用防水構造において、
前記ケースの前記電池交換用開口部の内周面に、前記ケース内の電池の外周面と水密に嵌合して前記電池交換用開口部をシールする環状の弾性シール部材を設けたことを特徴とする、電池ホルダ用防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−60578(P2011−60578A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209052(P2009−209052)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(592059448)原田電子工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】