説明

電池モジュール、これを収納する電池箱、及びこれを備える鉄道車両

【課題】
鉄道車両において必要なセル部分とケース部分との高い絶縁性能を保持しつつ、高い冷却性能を有する電池モジュールを提供する。
【解決手段】
電池セル2が複数個並設して収納された電池モジュールにおいて、前記複数のセル2を搭載する台座3と複数の放熱フィン8を有するヒートシンク4を備え、台座3とヒートシンク4との間に絶縁部材5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、その電池モジュールを収納する電池箱、及びその電池箱を備える鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の高出力密度の電池セルを複数個備える二次電池システムは、産業用途に広く用いられている。特に近年ではハイブリッド自動車用の蓄電システムとして、高電圧化、大容量化された二次電池システムが普及し始めている。
【0003】
鉄道車両の分野においても、省エネルギー化を図るために、ディーゼルエンジンで駆動される発電機と二次電池システムを組み合わせて、モータに電力を供給するハイブリッド鉄道車両の開発が行われている。ハイブリッド鉄道車両では、車両減速時に発生するエネルギーを回生させて二次電池システムに充電させることで、従来のディーゼルエンジンのみで駆動する気動車では不可能だった回生エネルギーの再利用が可能となり、省エネルギー化を実現することができる。
【0004】
ハイブリッド自動車に搭載される二次電池システムの電圧は200V程度、容量は数kWh程度であるのに対し、ハイブリッド鉄道車両用の二次電池システムでは通常750〜1500Vの電圧、及び数十〜数百kWhの大容量が必要となる。一方、電池セルの保守点検の容易性、安全性、輸送性などを考慮すると、電池セルは数個〜数十個単位でモジュール化されていることが望ましい。
【0005】
大容量の電池モジュールにおいては、充放電時に電池セル内部で発生する発熱の密度も大きいため、電池セル及びモジュールの安定動作並びに長期信頼性の確保の観点から電池セルの積極的な冷却が必要となる。そのための手段としては、送風機などを利用して、電池モジュールの周囲空気を積極的にモジュール内部に取り込む通風構造を設けることなどが考えられるが、更なる高出力化に対応するためには、冷却性能を向上することが必要になってくる。
【0006】
特許文献1では、冷却性能を向上するために、放熱フィンを有するヒートシンクに箱型のセルを密着して取り付け、セルとヒートシンクの間に熱伝導性の絶縁シートを設けて密着させることにより冷却性能を向上した例が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−99445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来構造においては、セルの端面とヒートシンク面との距離が短いため、セルを直列に多数接続したときの高電圧部分とヒートシンクとの間の電気的な絶縁を十分に確保することが困難であった。また、この構造の場合のセルの形状は箱型形状に限定され、多く使われている円筒形状のセルに対応し難いという課題があった。
【0009】
本発明の目的は、高電圧においてもセルとヒートシンク部分の間の十分な絶縁性能を確保しつつ高い冷却性能を得ることにより、高出力の電池セルに対応した電池モジュール及びこれを収容する電池箱並びにこれを備える鉄道車両を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、円筒形状のセルにも対応可能な高出力に対応した電池モジュール及びこれを収容する電池箱並びにこれを備える鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の電池モジュールでは、複数の前記電池セルを搭載する熱伝導性を有する非電気絶縁材料の台座と、
放熱フィンを有する非電気絶縁材料の伝熱体により構成されるヒートシンクで、前記伝熱体の上面が前記台座の投影面積より大きな面積を有して前記台座よりも全方向にはみ出し、この伝熱体上面が前記台座を支えるように前記台座の底部側に配置されるヒートシンクと、を備え、
前記台座の底面と前記ヒートシンクの前記伝熱体上面との間に、前記台座の投影面積よりも大きな面積を有して前記台座よりも全方向にはみ出して、前記台座と前記ヒートシンク間の電気絶縁沿面を確保する電気絶縁シートを介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような構造とすることにより、高電圧においてもセルとヒートシンク部分の間の十分な絶縁性能を確保しつつ、高い冷却性能により高出力のセルに対応することが可能である。
【0013】
また、このような構造とすることにより、円筒形状等の様々な形状のセルにおいても、高い冷却性能により高出力のセルに対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例に係る電池モジュールのセルの軸方向に沿った縦断面図(図2をB-B線の位置で断面した図)。
【図2】第1実施例に係る電池モジュールを図1の状態と垂直な方向に断面した縦断面図(図1のA-A線の位置で断面した図)。
【図3】第1実施例に係る複数の電池モジュールを収納した電池箱の構成を示す縦断面図。
【図4】第1実施例に係る電池モジュールを電池箱に収容するときの密閉構造を示す図。
【図5】第1実施例に係る電池モジュールの配列状態を示す模式図。
【図6】本発明の第2実施例に係る電池モジュールのセルの軸方向に沿った縦断面図(図7をD-D線の位置で断面した図)。
【図7】第2実施例に係る電池モジュールを図6の状態と垂直な方向に断面した縦断面図(図6のC-C線の位置で断面した図)。
【図8】第2の実施例に係る電池モジュールのボルトによる接続部の詳細を示す縦断面図。
【図9】本発明の第3実施例に係る電池モジュールにおけるヒートシンクと通風路の構造を示す平面図。
【図10】本発明の第4実施例に係る電池モジュールにおけるヒートシンクと通風路の構造を示す平面図。
【図11】本発明の第5実施例に係る電池モジュールのセルの軸方向と垂直な方向に断面した縦断面図。
【図12】本発明の第6実施例に係る電池モジュールにおけるヒートシンクの平面図。
【図13】本発明の第7実施例に係る電池モジュールにおけるヒートシンクの構造を示す平面図。
【図14】本発明の第8実施例に係る電池モジュールにおけるヒートシンクの構造を示す平面図。
【図15】本発明の適用対象となる鉄道車両における電池箱の搭載例を示す模式図。
【図16】本発明の適用対象となる鉄道車両における電池箱の他の搭載例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を以下、図面に示した実施例を用いて説明する。
【0016】
図15及び図16は、複数の二次電池モジュールを収納した電池箱のハイブリッド型の鉄道車両における搭載例を示す図である。ハイブリッド車両駆動システムとして、電池箱20、ディーゼルエンジン(内燃機関)102、発電機103、コンバータ104、インバータ105、モータ106等を備える。図15に、電池箱20を電源車両100の床下に搭載した例を、図16に、電池箱20を電源車両100内に搭載した例を示す。
【0017】
図15、図16において、電源車両100において、ディーゼルエンジン102で駆動する発電機103によって得られた交流電流は、コンバータ104によって直流電流に変換される。このコンバータ104からの直流電流と電池箱20からの直流電流は、車両100に搭載されるインバータ105により、車速に応じた周波数の交流電流に変換されてモータ106の駆動電力となり、鉄道車両を駆動させる。なお、電池箱20及び発電機103の出力は車両の運転状況等によって適宜制御される。
【0018】
以下、上記ハイブリッド型車両に搭載される電池モジュールに係る実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の第1実施例に係る電池モジュールのセルの軸方向に沿った縦断面図(図2をB-B線の位置で断面した図)、図2は第1実施例に係る電池モジュールを図1の状態と垂直な方向に断面した縦断面図(図1のA-A線の位置で断面した図)、図3は第1実施例に係る複数の電池モジュールを収納した電池箱の構成を示す縦断面図である。
【0020】
各電池モジュール1は、複数の電池セル(以下、「セル」と称する)2、それらのセルを支持するセル台座3、電池モジュール冷却用のヒートシンク4、第1の絶縁部材5、第2の絶縁部材6、電磁モジュールの上カバー7、ヒートシンク用の複数のフィン8、セル2を上側で固定する固定部材9、電源供給用のバスバー10および11、セル2を側面から固定する側面固定部材12、セル2の緩衝部材14、電池モジュールの下カバー15、モジュール構成部品を結合するための固定ねじ部材16、17を備える。
【0021】
電池モジュール1に積載される複数のセル2は、リチウムイオン電池等の二次電池であり、図2に示すように、後述の台座3を介してセルの軸方向と垂直方向に並置される。並置されたセル2は、図5に示すように、隣り合うセル2同士の極性の向きを反対にして、モジュール1内において、バスバー10及び11によって各セル2の電極が直列に接続されている。図1では、セル6個でモジュールを構成した例を示しているが、勿論、他の個数でも構わない。
【0022】
セル2は、筒状を呈して、その外周がシリコーンシート等の緩衝部材14で覆われて、アルミニウム等の熱伝導率が大きい非電気絶縁性材料でつくられた台座3上に並置されている。
【0023】
台座3のセル載置側(実施例では上面側)は、セル2の外周形状に合わせた円弧状曲面形状のセル設置溝が並列に形成されている。緩衝部材14は、充放電時のセル2の膨張、収縮による変形を吸収し、且つセル2と台座3との間の密着性を保持するとともに、セル2間の絶縁を保つ役割がある。緩衝部材14の素材としては、熱伝導が良い絶縁部材でかつ柔軟性がある素材が望ましい。そのような性質を備えた緩衝部材14の材料としては、シリコーンシート等を用いる。
【0024】
台座3のセル2と反対側の平らな面(実施例では下面側)には、ヒートシンク4が設置されている。台座3とヒートシンク4との間には、シリコーンシート等の熱伝導性が良い第1の電気絶縁部材(電気絶縁シート)5が挟み込まれている。
【0025】
ヒートシンク4を構成する伝熱体の上面が台座3の投影面積より大きな面積を有して台座3よりも全方向にはみ出す。これによりヒートシンクの放熱面積を大きく確保できる。ヒートシンク4は、その上面が台座3を支えるように台座の底部側に配置される。
【0026】
電気絶縁部材5は、台座3の投影面積よりも大きな面積を有して台座3よりも全方向にはみ出して、台座3とヒートシンク4間の電気絶縁沿面を確保する。
【0027】
ヒートシンク4は、アルミニウムや銅等の熱伝導率が大きい材料でつくられる。ヒートシンク4は、上部基板となるベースプレート8aと、その左右両側に形成されるフレーム8bと、左右のフレーム8b間でベースプレート8aの一面に一定間隔を置いて並設された複数のフィン8cとよりなり、これらをモールドによる一体成形或いは溶接結合することにより成形される。フィン8c間に冷却用の空気流路8dが形成されている。フィン8cの長手方向及び空気流路8dは、セル2の軸方向と垂直な方向に向けられている。ヒートシンク4は、ベースプレート8aがセル2の方向(実施例では上側)に向けられ、フィン8cの先端側がセル2と反対方向(実施例では下側)に向けられている。フィン8cの先端側には、空気流路8dを覆うカバープレート15がベースプレート8aと対向するよう固定されている。
【0028】
第1の絶縁部材5は、詳細には、台座3とヒートシンク4のベースプレート8aとの間に介在している。
【0029】
セル2の発熱により発生した熱は、緩衝部材14、台座3、絶縁部材5を通ってヒートシンク4に伝わり、ヒートシンク4からフィン8cの間を流れる空気(空気流路8d)に放熱される。ヒートシンク4にフィン8cを設けて伝熱面を拡大することにより、高い冷却性能を得ることができる。
【0030】
セル2の周囲に絶縁材料の緩衝シート14を設けているが、これだけではセル端面等における高電圧(+電極側など)の緩衝シート4に覆われていない部分とヒートシンク4間の絶縁を十分に確保できないおそれがある。そこで、本実施例では、セル2の高電圧部分(+電極側端面など)とヒートシンク4との間の絶縁を保つために、第1の絶縁部材5を設けている。第1の絶縁部材5は、セル2の軸方向及びそれと垂直なセル配列方向のいずれにおいても、セル2及び台座3のいずれよりも外側に張り出すように形成されている。
【0031】
電池モジュールの組立時等において、モジュールに触れたときに感電するのを防ぐため、ヒートシンク4にはセル2の電圧が直接加わらないようにして、セル2の電池箱収納時には、ヒートシンク4とモジュールを収納する電池箱とが同じ電位(アース)になるようにする。また、図1及び図2に示すように、絶縁部材5をセル2の軸方向長さ及び台座3よりも広い幅にして、台座3より充分に張り出す(はみ出す)ようにすることにより、台座3とヒートシンク4との間の沿面距離を十分に取ることができ、セル2の高電圧部分とヒートシンク部分との絶縁が良好に保たれるようにしてある。絶縁部材5に万一欠陥があった場合にも絶縁破壊が起こらないようにするため、絶縁部材5は複数枚、例えば2枚重ねて使うとよい。絶縁部材5は熱伝導が良く絶縁性に優れた材料が良い。絶縁部材5の材料としては、シリコーンシート、マイカシート、絶縁紙、ポリイミドフィルム等を用いる。
【0032】
モジュール1の上側には、セル2の上側を固定するセル上側固定部材9が設けられている。セル上側固定部材9も、その一面に各セル2の外周が適合する曲面を有する円弧状曲面溝が形成されている。
【0033】
モジュール1の上カバー7とセル上側固定部材9との間には、第2の絶縁部材6が挟み込まれている。この第2の絶縁部材6も、セル2の軸方向長さ及びセル上側固定部材9よりも広い幅にしてセル上側固定部材9よりはみ出すようにしている。このような構造により、上カバー7にセルの電圧が直接加わらないようにして、組立時等においてモジュールに触れたときに感電するのを防止している。絶縁を確実にするために、絶縁部材6を2枚重ねて用いると良い。第2の絶縁部材6は、必ずしも高い熱伝導率は必要としない。第2の絶縁部材6の材料としては、シリコーンシート、マイカシート、絶縁紙、ポリイミドフィルム等を用いる。
【0034】
モジュール1のセル両端の側部には、絶縁性材料で例えばモールド成形などで形成されたセル両端側部を固定する固定部材12、13が設けられ、セル2や台座3がセル軸方向に移動するのを防止している。
【0035】
セル両端側部固定部材12、13は、固定ねじ部材17によりヒートシンク4に固定され、また、固定ねじ部材16によって上カバー7に接続されている。ねじ締め付けによる上カバー7によって、セル2や台座3をヒートシンク4の側に押しつけるようにしている。
【0036】
固定部材12,13は、セル2に向いた側(内側)に、バスバー10、11を受け入れるバスバー収納溝12a,13aと、絶縁部材5及び6を受け入れる凹部12b,13b及び12c,13cが形成されている。
【0037】
図3に上記した複数の前記電池モジュール1を収納する電池箱の構造を示す。図3では、図示簡略化のために電気絶縁部材5、6について1枚構造としているが、既述のように2枚或いはそれ以上としてもよい。
【0038】
図3では、電池モジュール4個を電池箱20に収納した例を示しているが、その数は任意であり制限されるものではない。電池箱20は、ファン21、入口グリル22、フィルタ23、出口グリル24等を備えている。ファン21を運転することによって、入口グリル22、フィルタ23を通って各モジュール1のヒートシンク4に形成した空気流路8dに、モジュール冷却のための空気が供給される。各モジュールを冷却した空気は、出口グリル24を通って電池箱外に排出される。各モジュールのセル軸方向に垂直な方向の両端には、空気流路8dの両端のみを開口させる側板25、26を設けることにより、冷却空気がモジュール1のヒートシンク4(フィン8c間)以外に流れないようにして、モジュール1の冷却性能が低下することを防止している。
【0039】
図3の側板25、26の好ましい具体的構造例を、図4に示す。図4では、一つのモジュール1を取り出してその側板25、26について断面図により示している。
【0040】
図4の例では、一方の側板(入口側側板)25にモジュール1を側板25、26間に出し入れするための出入口25aを設け、出入口25aは、モジュール1をセットした後には、カバープレート27によって覆われる。
【0041】
29はカバープレート27をヒートシンク4に接続させる接続部材である。カバープレート27の内面には、Oリング用の溝を切っており、そこにOリング28をはめ込んでいる。カバープレート27と側板25とは、固定ねじ部材30によって結合されている。
【0042】
カバープレート27には、ヒートシンク4の空気流路8d(フィン8c間)の空気取り入れ口27aが形成されている。空気取り入れ口27aは、図4の紙面に垂直方向に空気流路8dの並列配置の幅に合わせた横幅を持ったスリット状開口である。
【0043】
ヒートシンク4の空気流路8dの出口部分には、雄型コネクタ部31を取り付ける。34は雄型コネクタ31をヒートシンク4に取り付けるときの補強部材である。コネクタ31も、空気流路8dの並列配置の幅(紙面に垂直方向の幅)に合わせた横幅を有する。したがってコネクタ31に設けた空気出口31aは、空気流路8dの出口に対応して紙面に垂直方向に幅広となるスリット形状を呈している。コネクタ31の周囲にはOリング用の溝を設けて、Oリング32をはめ込む。出口側の側板26には雌型コネクタ33を取り付ける。コネクタ31はコネクタ33に嵌合して固定され、Oリング33によって空気がセル部分等に漏れないようにシールされる。
【0044】
以上のような実施形態の構造によって、高電圧に対する十分な絶縁性能を確保しつつ高い冷却性能が得られるので、高出力のセルに対応することが可能である。また、セル台座3の形状をセルに合わせることにより、円筒形状や様々な形状のセルにおいて高い冷却性能が得られる。また、セル部分を密閉することにより、セル部分に空気が直接触れることがないので、セルに空気中の不純物が付着して劣化の原因となることを防止することができる。
【実施例2】
【0045】
図6に本発明の第2実施例に係る電池モジュールのセルの軸方向に沿った縦断面図(図7をD-D線の位置で断面した図)、図7は第2実施例に係る電池モジュールを図6の状態と垂直な方向に断面した縦断面図(図6のC-C線の位置で断面した図)である。図6及び図7において、図1及び図2の第1の実施例と共通の部分は、同一番号としており、以下、第1の実施例と異なる部分について説明する。
【0046】
図6及び図7において、セル2の周囲には緩衝部材14を巻き付けてあり、緩衝部材14の上半分外周に沿わせて固定具19、20を、セルの軸方向の両端側に設け、固定具19、29を固定ねじ18によって台座3と固定する。固定具19、20は、例えば板ばねのように弾力性のある帯状材料とすることにより、弾性部材14と合わせて、セル2の充放電時の変形を逃げることができ、セル2に過大な荷重が加わって破壊するのを防止することができる。
【0047】
台座3は、電池モジュールの下カバー15、ヒートシンク4、絶縁部材5及び台座3を貫通する連結用ねじ27によって、ヒートシンク4と一体的に連結される。台座3とヒートシンク4との間の電気的な絶縁を保つために、連結用ねじ27の周囲は図8の拡大図に示すような構造にする。
【0048】
図8において、金属製の連結用ねじ27は、ボルト271及びナット272から成る。ボルト271は、ヒートシンク4及び台座3の貫通穴に、テフロン(デュポン社の登録商標)等の絶縁材料でつくられたスリーブ273aおよび273bにより覆われるようにして貫通する。スリーブ273aのうち下カバー15より突出した部分、及びスリーブ273bのうち台座3より突出した部分には、テフロン(デュポン社の登録商標)等の絶縁材料でつくられたテフロンワッシャ274、275を嵌め込む。更にテフロン(デュポン社の登録商標)等の絶縁材料でつくられたリング状のスペーサ276及び277、ワッシャ278及び279を挟んで、ボルト271、ナット272により、台座3がヒートシンク4に絶縁部材5、絶縁スリーブ273a、273b及び絶縁スペーサ276,277を介して締め付け固定される。以上のような固定構造とすることにより、台座3とヒートシンク4とを金属製のねじによってしっかりと固定しつつ、高電圧における絶縁を保持することが可能である。
【0049】
以上の構造によって、ヒートシンク4とセル台座3とを絶縁部材5を介して密着させることが可能となり、高電圧に対する十分な絶縁性能を確保しながら高い冷却性能が得られるので、高出力のセルに対応することが可能である。
【実施例3】
【0050】
図9に本発明の第3実施例における電池モジュールの冷却部であるヒートシンク40(第1の実施例のヒートシンク4に相当)の構造を示す。図9は、ヒートシンク40を、セル2と反対側から見たところを示す平面図である。ヒートシンク40以外の構造は、既述した第1の実施例或いは第2の実施例の構造と共通するので説明は省略する。
【0051】
ヒートシンク40に設けた複数のフィン41は、第1の実施例の配列と垂直の方向に向けて配列されており、それらのフィン41の空気流路方向の両側にフィン41と垂直方向に配列された入口側ダクト44(空気案内通路)及び出口側ダクト(空気案内通路)45とが設けられている。入口側ダクト44及び出口側ダクト45のフィンと反対側の壁面42及び43を傾斜させている。この傾斜は、各フィン間の通路に略均一に空気が流れるように配慮したものである。すなわち、入口側ダクト44については、空気流の慣性により下流側(紙面に向かって右側)ほど流入空気が集まり易いので、上流側(冷却風導入側)から下流側に向けて先細りとなるようにして下流側の通気抵抗を大きくしている。出口側ダクト45については、上流側から下流側に向けてフィン間から流出する合流冷却風量が増していくので、上流側を先細りとして下流側に向けて次第に広がる風路構造にしている。
【0052】
本実施例によれば、フィン間の空気流通を略均等化するほかに、ヒートシンクを通過する空気の経路の長さを最も短くできるので、セル2による上流における空気温度の上昇が全くないため、冷却性能が向上する。
【実施例4】
【0053】
図10に本発明の第4実施例における電池モジュールの冷却部であるヒートシンク50(第1の実施例のヒートシンク4に相当)の構造を示す。図10は、ヒートシンク50を、セル2と反対側から見たところを示す平面図である。ヒートシンク50以外の構造は、既述した第1の実施例或いは第2の実施例の構造と共通するので説明は省略する。
【0054】
ヒートシンク50に設けた複数のフィン51は、セル2の配列に対して斜め方向に立体クロスするように配列されている。それらのフィン51の空気流路方向の両側にフィン51と垂直方向に配列された入口側ダクト54及び出口側ダクト55とが設けられている。入口側ダクト54及び出口側ダクト55のフィンと反対側の壁面52及び53を、第3実施例と同様に理由で傾斜させている。ヒートシンクの風路入口部は、フィン51を斜め配列にすることにより、ヒートシンクの二辺に形成されるが、そのうちヒートシンク長手方向の一端側となる一辺には、風路抵抗体56を設けることによって、もう一辺の入口側ダクト54にも空気を誘導するようにする。
【0055】
このような構造とすることにより、ヒートシンクを通過する空気の経路の長さが短くなるので、セル2による上流における空気温度の上昇を小さく押さえることができ、冷却性能を向上することが可能である。
【実施例5】
【0056】
図11に本発明の第5実施例における電池モジュールの縦断面(セルの軸方向と垂直な方向の縦断面図)を示す。基本的な構造は第1の実施例と同じであるが、ヒートシンク60(第1の実施例のヒートシンク4に相当)の下側カバー61に空気流路入口側ほどフィン8と下側カバー61との間の間隙が大きくなるような傾斜を設けることにより、上記間隙による通風路62も確保する。このような構造では、ヒートシンクに入ってきた冷却空気の一部は、フィン8の下側から流入する。そのため、セル2による上流における空気温度の上昇の影響を小さく押さえることができ、冷却性能が向上する。
【実施例6】
【0057】
図12に本発明の第6実施例における電池モジュールの冷却部であるヒートシンク70(第1の実施例のヒートシンク4に相当)の構造を示す。図12は、ヒートシンク70を、セル2と反対側から見たところを示す平面図である。ヒートシンク70以外の構造は、既述した第1の実施例或いは第2の実施例の構造と共通するので説明は省略する。
【0058】
本実施例のヒートシンク70では、上流側と下流側とでフィン71のピッチを変え、上流側よりも下流側のフィンピッチが細かくなるようにしている。このような構造により、下流側の高い冷却能力が必要な部分において冷却能力が高められるので、冷却性能が向上する。
【実施例7】
【0059】
図13に本発明の第7実施例における電池モジュールの冷却部であるヒートシンク80(第1の実施例のヒートシンク4に相当)の構造を示す。図13は、ヒートシンク80を、セル2と反対側から見たところを示す平面図である。ヒートシンク80以外の構造は、既述した第1の実施例或いは第2の実施例の構造と共通するので説明は省略する。
【0060】
本実施例の電池モジュールのヒートシンク80では、下流側ほどフィンの枚数が多くなるように、フィンをヒートシンクの中心軸に対して斜め方向で中心軸を基準に対称に配置している。このような構造により、下流側の高い冷却能力が必要な部分において冷却能力が高められるので、冷却性能が向上する。
【実施例8】
【0061】
図13に本発明の第8実施例に係る電池モジュールのセルの軸方向に沿った縦断面図を示す。本実施例では、第2の実施例におけるセル台座3の材質を絶縁性の材料とすることにより、絶縁シート5を不要とした。台座3の材料としては、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等のプラスチック材料を使用すれば良い。本実施例では、第2の実施例より熱抵抗は増加するものの、図6の絶縁部材5や固定ねじ27の部分の図8に示したような絶縁構造が不要で、構造を簡単にすることができ、組立性やコストに優れる。
【符号の説明】
【0062】
1…電池モジュール
2…セル
3…セル台座
4…ヒートシンク
5…第1の絶縁材料
6…第2の絶縁材料
7…モジュールカバー
8…フィン
9…セル上部固定部材
10、11…バスバー
12、13…セル側面固定絶縁部材
14…緩衝部材
20…電池箱
21…ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個並置された直列接続の電池セルを収納する電池モジュールにおいて、
複数の前記電池セルを搭載する熱伝導性を有する非電気絶縁材料の台座と、
放熱フィンを有する非電気絶縁材料の伝熱体により構成されるヒートシンクで、前記伝熱体の上面が前記台座の投影面積より大きな面積を有して前記台座よりも全方向にはみ出し、この伝熱体上面が前記台座を支えるように前記台座の底部側に配置されるヒートシンクと、を備え、
前記台座の底面と前記ヒートシンクの前記伝熱体上面との間に、前記台座の投影面積よりも大きな面積を有して前記台座よりも全方向にはみ出して、前記台座と前記ヒートシンク間の電気絶縁沿面を確保する電気絶縁部材を介在させたことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、前記電気絶縁部材は、複数枚重ねたものである電池モジュール。
【請求項3】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、複数並置された前記電池セルは、前記台座と前記電池セルの上側に位置する上側固定部材とによって上下方向から挟み付けられて固定されており、前記上側固定部材の上面には、電気絶縁シートを介してモジュールの上カバーが配置されている電池モジュール。
【請求項4】
請求項3記載の電池モジュールにおいて、
前記電池セルは、円筒形状を有し、
前記上側固定部材は、少なくとも2つでそれぞれが帯状部材よりなり、複数並置の前記電池セルの外周に適合する複数の円弧曲面部を有し、それぞれの電池セルのその両端に近い胴体上側の外周を、前記絶縁シートを介して押さえるようにしている電池モジュール。
【請求項5】
請求項4記載の電池モジュールにおいて、帯状の前記上側固定部材を、弾性を有する材質により形成されている電池モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の電池モジュールにおいて、前記電池セルの外周が弾力性のある材質の絶縁シートにより覆われている電池モジュール。
【請求項7】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、複数の前記放熱フィンを有し、これらの複数の放熱フィンが複数の前記電池セルの並び方向に対して垂直方向に向けられて並設され、フィン間に冷却用の空気流路が設けられ、ヒートシンクの空気入口部及び空気出口部の方向が前記空気流路と異なり、前記空気入口部と前記空気流路との間に空気の流れ方向を前記空気流路側に向ける入口側の空気案内路を設け、前記空気流路と前記空気出口部間に空気の流れ方向を前記空気出口部側に向ける出口側の空気案内路を設けたことを特徴とする電池モジュール。
【請求項8】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、複数の前記放熱フィンを有し、これらの複数の放熱フィンが複数の前記電池セルの並び方向に対して斜め方向に並設され、フィン間に冷却用の空気流路が設けられている電池モジュール。
【請求項9】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、複数の前記放熱フィンを有し、これらのフィン間に空気流路が設けられ、前記空気流路のうち、ヒートシンク入口の空気流路の高さはフィン高さよりも大きく、出口に近づくに従って空気流路の高さが減少するようにした電池モジュール。
【請求項10】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、複数の前記放熱フィンを有し、これらのフィン間に空気流路が設けられ、前記放熱フィンのうち、ヒートシンクの上流側のフィンの枚数を下流側のフィンの枚数よりも少なくした電池モジュール。
【請求項11】
請求項1記載の電池モジュールにおいて、
前記ヒートシンクは、複数の前記放熱フィンを有し、これらのフィン間に空気流路が設けられ、前記放熱フィンは、フィンの並びの中心に対して対称かつ下流側ほどフィンの間隔が小さくなるように斜めに配置されている電池モジュール。
【請求項12】
複数個並置された直列接続の電池セルを収納する電池モジュールにおいて、
前記複数の電池セルを搭載する絶縁材料の台座と、前記台座の電池セル搭載側と反対側に複数の放熱フィンを有するヒートシンクとを備えたことを特徴とする電池モジュール。
【請求項13】
複数個並置された直列接続の電池セルを収納する電池モジュールを複数備え、これらの電池モジュールが多段に配置して収容する電池箱において、
前記電池モジュールが請求項1ないし請求項12のいずれか1項記載の電池モジュールであることを特徴とする電池箱。
【請求項14】
請求項13記載の電池箱において、前記電池モジュールを多段配置となるよう支持しつつモジュール多段収容スペースを形成する側板が電池モジュール空気入口側と空気出口側に設けられ、前記側板には、前記各電池モジュールのヒートシンク部分のみに空気が通過するように空気入口および空気出口とがそれぞれ配設され、前記各モジュールと前記側板との間にシール機構が設けられている電池箱。
【請求項15】
請求項14記載の電池箱において、前記各電池モジュールの出口部が雄型コネクタ部により構成され、前記側板のうち空気出口側の側板には、各電池モジュールの前記雄型コネクタ部と接続される雌型コネクタ部が設けられ、前記雄型コネクタ部の外周にシールリングが設けられている電池箱。
【請求項16】
請求項14又は15記載の電池箱において、
前記側板のうち空気入口側の側板には、前記電子モジュールの各々を出し入れするための出入口が設けられ、この出入口が前記側板に取り付けたカバープレートにより覆われており、このカバープレートと前記側板との間にシールリングが設けられている電池箱。
【請求項17】
車両駆動用の内燃機関とモータとを備え、且つ前記内燃機関により発電された電気エネルギーを蓄積し、必要に応じて前記モータに電気エネルギーを供給する二次電池モジュールを収容する電池箱を備えたハイブリッド型鉄道車両において、
前記電池箱は請求項13から16のいずれか1項記載の電池箱よりなることを特徴とするハイブリッド型鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−187275(P2011−187275A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50379(P2010−50379)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】