説明

電池モジュールおよび電源装置

【課題】冷却プレートの流れ方向の温度分布の均一化を促進し、冷却プレートに熱的に接触している複数の電池セルの温度を均一にして、各電池セルの充放電量や寿命のバラツキを低減する。
【解決手段】内部に冷媒を流通する冷媒流路14を有する冷却プレート150と、冷却プレート150の表面に熱伝導可能に結合される複数の電池セルとを備え、冷媒流路14は、冷媒を減速する大径管201Aおよび冷媒を増速する小径管202Aが複数形成され、大径管201Aの流路断面積は大径管201Aの流入側に配置される小径管202Aの流路断面積に比べて大きく、小径管202Aの流路断面積は小径管202Aの流入側に配置される大径管201Aの冷媒流路断面積に比べて小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の充放電可能な電池セルを接続して構成される電池モジュールに関するものであり、特に電池モジュールの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等に搭載される電池モジュールは、たとえば、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の多数の二次電池を組み合わせて構成される。電池モジュールの充放電電流は一般的に大きく、電池セルの発熱量も大きくなり、その結果電池セル自体の温度上昇も大きくなる。電池セルの温度上昇は電池寿命の観点からできるだけ小さくし、速やかに冷却する必要がある。
【0003】
電池セルを速やかに冷却する方法として、冷媒を用いる方法がある。冷媒の流路を有する冷却プレートの一面に絶縁シートを介して複数の電池セルを冷却可能に結合して配列し、冷却プレートに冷媒を供給して電池セルを冷却する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-62130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている冷媒流路では冷媒の流れが一様であるため、冷媒の流れに沿って温度境界層が発達する。温度境界層は、熱伝達に対して抵抗要素となるため、下流側ほど冷媒と伝熱管との間の熱伝達が阻害される。したがって、特許文献1に記載されている冷却プレートの表面温度は、冷媒の流れ方向に沿って下流側ほど高くなり、冷却プレートの表面に配置される複数の電池セルのそれぞれを均一に冷却することができるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、内部に冷媒を流通する冷媒流路を有する冷却プレートと、冷却プレートの表面に熱伝導可能に結合される複数の電池セルとを備え、冷媒流路は、冷媒を減速する減速部および冷媒を増速する増速部が複数形成され、減速部の流路断面積は減速部の流入側の冷媒流路断面積に比べて大きく、増速部の流路断面積は増速部の流入側の冷媒流路断面積に比べて小さいことを特徴とする電池モジュールである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電池モジュールにおいて、減速部の流路断面積は増速部の流路断面積に比べて大きく、減速部と増速部は冷媒の流れ方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の電池モジュールにおいて、冷媒流路は、冷却プレートに内蔵される伝熱管により形成されていることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、減速部と増速部との間において、減速部から冷媒の流れ方向に向かって、流路断面積が徐々に小さくなる断面積縮小部が設けられ、増速部と減速部との間において、増速部から冷媒の流れ方向に向かって、流路断面積が徐々に大きくなる断面積拡大部が設けられていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、冷媒流路が複数設けられ、複数の冷媒流路は相互に平行に配置されていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、冷媒流路の断面形状は円形とされていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、冷媒流路の断面形状は多角形とされていることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、増速部は、伝熱管を外方から機械的に押し潰すことにより形成されていることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、複数の電池セルは、冷媒の流れ方向に沿って配列されていることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の電池モジュールを複数個有し、冷媒を冷却する冷却システムを備え、冷却システムによって冷却した冷媒を分岐して各電池モジュールの冷却プレートの冷媒流路に供給し、各電池モジュールの冷却プレートの冷媒流路から排出される冷媒を合流して冷却システムに回収することを特徴とする電源装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伝熱管内の冷媒を繰り返し増速・減速させることで、温度境界層が発達することを抑制できる。これにより、冷却プレートの流れ方向の温度分布の均一化を促進し、冷却プレートに熱的に接触している複数の電池セルの温度を均一にすることができるため、各電池セルの充放電量や寿命のバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電池モジュールを示す分解斜視図。
【図2】図1に図示された電池モジュールの正面図。
【図3】図1に図示された電池モジュールの冷却構造を説明するための斜視図。
【図4】図1に図示された電池モジュールを構成する冷却プレートの正面図。
【図5】図4のV−V線切断断面図。
【図6】本発明の電池モジュールに用いられる電池セルの一例を示す外観斜視図。
【図7】図6に図示された電池セルの分解斜視図。
【図8】図7に図示された電池セルに用いられる捲回型充放電要素群の斜視図。
【図9】図1に図示された電池モジュールにおいて、冷却プレートと電池セルとの熱伝導可能な結合構造を示す斜視図。
【図10】図9に図示された電池モジュールの平面図。
【図11】図1に図示された電池モジュールにおけるバスバーの取付構造を示す拡大斜視図。
【図12】図1に図示された電池モジュールのカバーを外した状態の側面図。
【図13】図1に図示された電池モジュールにおいて、電池セルを冷却プレートに押付けるためのクリップの外観斜視図。
【図14】本発明の電源装置の一実施形態を示す斜視図。
【図15】図14に図示された電源装置の電気的な接続状態を示す図。
【図16】図14に図示された電源装置の内部のレイアウトを示す平面図。
【図17】従来例に係る冷却プレートの断面図。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る冷却プレートの断面図。
【図19】本発明の第1および第2の実施の形態および従来例に係る冷却プレートの温度バラツキに関する解析結果を示す図。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る冷却プレートの断面図。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係る冷却プレートの断面図。
【図22】本発明の第5の実施の形態に係る伝熱管の増速部の断面図。
【図23】本発明の第6の実施の形態に係る伝熱管の増速部の断面図。
【図24】本発明の第1の変形例に係る冷却プレートの断面図。
【図25】本発明の第2の変形例に係る冷却プレートの断面図。
【図26】本発明の第3の変形例に係る電池モジュールの冷却構造を示す図。
【図27】本発明の第4の変形例に係る冷却プレートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
−第1の実施の形態−
以下、図面を参照して本発明による電池モジュールおよび電源装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電池モジュール1の分解斜視図であり、図2は、図1の電池モジュールを前方からみた正面図である。ただし、図2においては、後述するカバー28が省略されている。
【0010】
電池モジュール1は、多数の電池セル10を有する。図示するように奥行き方向をx方向、長さ方向をy方向、高さ方向をz方向とする。電池モジュール1のx(奥行き)方向のほぼ中央部には、冷却プレート15Aが配置されている。冷却プレート15Aは、その正面が、z(高さ)方向がx(奥行き)方向より大きく、その側面が、y(長さ)方向に長く延出された平板形状を有する。電池セル10は、冷却プレート15Aの一面(表面)および一面に対向する厚さ方向の他面(裏面)に沿って、図示するように、y(長さ)方向に3個、z(高さ)方向に4段で配列されている。
【0011】
各段の電池セル10の間には、セル分割プレート20が介装されている。最上段の電池セル10の上部には、x−y面に配列された最上段の電池セル10全体を覆うエンドプレート21が配置されている。最下段の電池セル10の下部には、x−y面に配列された最下段の電池セル10全体を覆うエンドプレート21が配置されている。各エンドプレート21のy(長さ)方向に沿う両側部には、z(高さ)方向に屈曲された屈曲部21aが形成されている。
【0012】
3個×4段に配列された電池セル10のx(奥行き)方向における外側には、全ての電池セル10の側面(y−z面)を覆う端子カバー25が配置されている。各端子カバー25のx(奥行き)方向の外側にはカバー28が配置されている。
【0013】
図3は電池モジュールの冷却構造を説明するための斜視図であり、図4は冷却プレート15Aを前方からみた正面図であり、図5は図4のV−V線切断断面図である。
図3〜図5に示すように、冷却プレート15Aは、冷却ブロック150と伝熱管200Aとから構成されている。冷却ブロック150は、アルミダイキャスト、アルミニウム、マグネシウム等の金属、または熱伝導率が1W/m・K以上の絶縁樹脂により形成されている。伝熱管200Aは、内部にエチレングリコール水溶液などの冷媒を流通する円形断面の冷媒流路を形成している。伝熱管200Aは、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属、または熱伝導率が1W/m・K以上の絶縁樹脂により形成されている。
【0014】
伝熱管200Aを冷却ブロック150に固定して冷却プレート15Aを形成するには、たとえば、伝熱管200Aに冷却ブロック150を鋳造またはモールドして形成する。本実施の形態に係る伝熱管200Aは、管内を通過する冷媒に減速と増速とを繰り返し行わせる構成とされる。伝熱管200Aの具体的な構成については後述する。
【0015】
電池セル10は、たとえば、角形リチウムイオン二次電池である。図6は電池セル10の外観斜視図であり、図7は図6に示された電池セル10の分解斜視図であり、図8は電池セル10を構成する捲回型充放電要素群120の斜視図である。
電池セル10は、一面が開口した有底直方体状の電池缶114内に絶縁ケース113を介して扁平状の捲回型充放電要素群120を収納し、電池缶114の開口部114Aを電池蓋103によって封止した構造を有する。電池缶114と電池蓋103によって容器外装が構成される。電池蓋103には、内側から正極出力部108および負極出力部107が突設されている。正極出力部108および負極出力部107は、容器外装の表面に設けられた正・負極外部端子である。正極出力部108および負極出力部107は、捲回型充放電要素群120で発電した電力を外部に出力し、外部で発電した電力を捲回型充放電要素群120に充電するための端子であり、後述する正極集電体106および負極集電体105のそれぞれに一体的に形成されている。
【0016】
電池缶114は金属製であり、深絞り法により開口部の短辺の寸法より深さ寸法が大きく形成されている。電池缶114は、面積の大きな幅広側面114Wと、面積の小さい幅狭側面114Nと、容器底面である底面(缶底面)114Bとで形成された扁平容器であり、上面に開口部114Aを有する。電池蓋103は、レーザービーム溶接法により電池缶114の開口部114Aに固着されている。電池蓋103には、両端部の正極出力部108および負極出力部107のそれぞれが挿通される開口部103a,103bが形成されている。電池蓋103には注液口(図示省略)が設けられ、注液口から電池缶114内に電解液が注入された後に、注液口はレーザービーム溶接により封止される。
【0017】
図8に示すように、捲回型充放電要素群120は、正極箔AFに正極活物質合剤123を塗布した正極板122および負極箔CFに負極活物質合剤125を塗布した負極板124を、セパレータ121を介して捲回して断面長円状に形成したものである。正極板122には、正極活物質合剤123が塗布されずに正極箔AFが露出した未塗工部122Aが正極接続部として形成されている。負極板124には、負極活物質合剤125が塗布されずに負極箔CFが露出した未塗工部124Aが負極接続部として形成されている。未塗工部122A,124Aは、捲回型充放電要素群120の幅方向の両端部に配置され、それぞれ、電池缶114の両幅狭側面114Nに沿って延在している。
【0018】
電池セル10がリチウムイオン電池の場合、正極箔AFおよび負極箔CFとしては、それぞれ、アルミニウム、銅が用いられ、活物質合剤としては、たとえば、正極としてコバルト酸リチウム、負極としてグラファイトが用いられる。正極集電体106および負極集電体105は、正極箔AFおよび負極箔CFと同一材料によって形成される。
【0019】
正極板122の未塗工部122Aには、正極集電体106が接続されている。負極板124の未塗工部124Aには、負極集電体105が接続されている。正極出力部108は正極集電体106に一体的に設けられている。負極出力部107は負極集電体105に一体的に設けられている。
正極集電体106および負極集電体105は、それぞれ略L字形状に形成され、電池蓋103に固定されている。
【0020】
正極集電体106および負極集電体105は、それぞれアルミニウム板および銅板のプレス加工によって一体的に形成されている。正極集電体106および負極集電体105は、電池蓋103の内面に沿って、電池缶114の幅狭側面114N内面近傍にまで延びる平板状の装着部161,151を備えている。正極出力部108および負極出力部107は、円柱形状の部材であって、それぞれ装着部161,151にかしめ固定されている。正極出力部108および負極出力部107には、それぞれおねじが形成されており、後述するバスバー26がナットにより接続される。
【0021】
正極集電体106および負極集電体105は、装着部161,151の端部から略直角方向に電池缶114の幅狭側面114Nに沿って底面に延びる接続部162,152を備えている。接続部162,152は、正極板122および負極板124の未塗工部122A,124Aにそれぞれ沿って延設されている。接続部162,152には、正極板122および負極板124の未塗工部122A,124Aと対向配置される正・負極充放電要素接続部163,153が設けられている。正・負極充放電要素接続部163,153は、幅狭側面114Nに平行に延設されている接続部162,152から、幅広側面114Wに沿って直角に折り曲げられて形成されている。正・負極充放電要素接続部163,153は未塗工部122A,124Aに超音波溶接にて接合されている。
【0022】
図9は冷却プレート15Aと電池セル10との熱伝導可能な結合構造を示す斜視図であり、図10は図9に示された構造を上方からみた平面図である。冷却プレート15Aの表裏面のそれぞれにおける各電池セル10が取り付けられる箇所には、側面がL字形状の電池セル取付板17が取り付けられている。電池セル取付板17は各電池セル10の底面(缶底面)114Bと幅狭側面114Nとが隣接するコーナー部に取り付けられ、1個の電池セル10のy方向の長さの間隔をおいて線対称に設けられている。電池セル取付板17のz方向の高さは、4段の電池セル10を、各段の電池セル10間にセル分割プレート20を介装して保持できる寸法とされている。電池セル取付板17は、冷却プレート15Aの表面側および裏面側に三対ずつ配置され、3個×4段に配列された電池セル10を保持する。電池セル取付板17は、絶縁性の樹脂材料で形成され、冷却プレート15Aの表面または裏面から電池セル10の底面114Bとの間に隙間t1を形成する(図10参照)。
【0023】
各電池セル取付板17の板厚分の隙間、すなわち、電池セル10の底面114Bと冷却プレート15Aの表面(または裏面)との間には、熱伝導性部材16が介装されている。熱伝導性部材16は、電池セル10を取り付ける前には、図10に二点鎖線で示すように、厚さt2を有している。したがって、電池セル10を取り付けた状態では、熱伝導性部材16は、圧縮率=(t2−t1)×100/t2(%)圧縮されている。これにより、各電池セル10の底面114Bと冷却プレート15Aの表面(または裏面)とは、確実に、熱伝導可能に結合され、各電池セル10は、熱伝導により冷却プレート15Aによって冷却される。熱伝導性部材16が永久歪を生じないように圧縮率を管理する必要があるが、本実施形態によれば、熱伝導性部材16の圧縮後の厚さt1は、電池セル取付板17の板厚によって決定されるので、この管理が大変容易となる。
【0024】
熱伝導性部材16としては、熱伝導率が1W/m・K以上の絶縁性熱伝導性シートを用いることができる。電池セル10の底面114Bが絶縁性樹脂で覆われている場合には、熱伝導性部材16として、金属製の材料を用いることもできる。
【0025】
電池セル10の電池缶114には、正極集電体106または負極集電体105は接続されてはいない。しかし、電池缶114に注入されている電解液を介して正極側および負極側の電位が印加されており、各電池セル10の電池缶114は、正極および負極とは異なる電位を有している。したがって、電池缶114同士が電気的に接続されると短絡が生じる。
本実施の形態においては、冷却プレート15Aと電池セル10との間に、熱伝導性部材16および電池セル取付板17が介装されており、冷却プレート15Aと電池セル10とが直接接触していないので、冷却プレート15Aに結露が発生した場合においても、電池セル10が相互に短絡することはなく信頼性を確保することができる。
【0026】
電池セル10の幅広側面114Wが、絶縁材料で被覆されている場合、セル分割プレート20およびエンドプレート21の材料として、アルミニウム、アルミダイカスト、銅、鉄等の熱伝導性の高い材料を用いることができる。電池セル10の幅広側面114Wが絶縁材料で被覆されていない場合、セル分割プレート20およびエンドプレート21の材料として、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、PPS、PPA、PBT等あるいは高熱伝導性樹脂を用いることができる。
【0027】
図1において、各端子カバー25の外面側にはバスバー26が取り付けられている。図11は、バスバー26の取付構造を示す拡大斜視図である。バスバー26は、各電池セル10の正極出力部108および負極出力部107に接触した状態で端子カバー25にナット27により固定される。ナット27として、たとえば、スカートナット、皿ばね付きナットを用いることができる。あるいは、ナットと皿ワッシャ等を組み合わせて用いてもよい。
図12は、電池モジュール1のカバー28を外した状態の側面図であって、バスバー26により、3個×4段の電池セル10を全て直列に接続した状態を示す図である。
【0028】
図12において、最上段の左端の電池セル10の負極出力部107と、上から二段目の左端の電池セル10の正極出力部108がバスバー26により接続されている。上から二段目の右端の電池セル10の負極出力部107と上から三段目の右端の電池セル10の正極出力部108がバスバー26により接続されている。上から三段目の左端の電池セル10の負極出力部107と最下段の左端の電池セル10の正極出力部108がバスバー26により接続されている。それ以外の中間に位置する電池セル10の負極出力部107と正極出力部108はバスバー26により接続されている。これにより、3個×4段の電池セル10は全てが直列に接続されている。したがって、最上段の右端の電池セル10の正極出力部108と最下段の右端の負極出力部107間には、12個の電池セル10を直列に接続した電位差が生じている。
【0029】
カバー28は、図1に示すように、冷却プレート15Aの表面側および裏面側に配置された全ての電池セル10をバスバー26により直列に接続した状態で、各端子カバー25の外側に配置される。カバー28は、導電性の異物、たとえば、水、埃、油分等、あるいは複合材料等の侵入を防止するためのものであり、端子カバー25の外側の側面全体を覆うように取り付けられる。ただし、カバー28は、必ずしも必要とされるものではない。
【0030】
図2に図示されるように、バスバー26により電池セル10が直列に接続された状態で、端子カバー25は、弾性部材からなるクリップ30により、エンドプレート21に連結される。
図13は、クリップ30の外観斜視図である。クリップ30は、金属板をプレス加工することにより形成される。クリップ30の基部31の両側部には、外方に開放可能な可撓部32が形成されている。各可撓部32は基部31側の側面がV字形状の支持部32aと、支持部32aから傾斜して外方に開放される嵌合部32bとからなる。
【0031】
電池モジュール1を組立てるには、冷却プレート15Aの表面側および裏面側に、それぞれ、三対の電池セル取付板17を取り付ける。対となる各電池セル取付板17の間に熱伝導性部材16を取り付け、さらに電池セル10を取り付ける。電池セル10間にはセル分割プレート20を介装する。最上段の電池セル10の上面および最下段の電池セル10の下面に、それぞれ、エンドプレート21を配置し、各エンドプレート21の開口および各セル分割プレート20の前部および後部に設けられた開口にボルト6を挿通し、ナット24により固定する(図1参照)。図示はしないが、冷却プレート15Aの上面および下面には、z(高さ)方向に平行なボルト取付穴が形成されており、エンドプレート21にはボルト挿通開口が設けられている。ボルト6およびナット24によりエンドプレート21を取り付けた後、エンドプレート21のボルト挿通開口にボルト22を挿通して、冷却プレートのボルト取付穴にボルト22を固定する(図2参照)。ただし、ボルト22およびナット24による固定は仮固定である。
【0032】
電池セル10およびセル分割プレート20の側面を覆って端子カバー25を取り付け、バスバー26により各電池セル10を接続する。クリップ30により、端子カバー25をエンドプレート21に連結する。エンドプレート21の屈曲部21aおよび端子カバー25の外方側の側面を、クリップ30の両側部の嵌合部32b間に位置決めする。クリップ30を押し込む方向に外力を加えると、クリップ30は嵌合部32bの傾斜によって外方に開きながら押し込まれる。
【0033】
クリップ30が押し込まれると、クリップ30の弾性力により、端子カバー25がエンドプレート21側に移動する。これにより、各電池セル10の底面114Bが熱伝導性部材16を圧縮する。このようにして、各電池セル10の底面114Bと冷却プレート15Aとが確実に熱伝導可能な状態の結合構造が形成される。
この状態で、ボルト22およびナット24を本締めすることにより、図2に図示される電池モジュール1が完成する。
【0034】
図14は電源装置100の斜視図であり、図15は電源装置100内における各電池モジュール1の電気的な接続状態を示す図である。図16は電源装置100の内部のレイアウトを示す平面図である。
【0035】
図14に示すように、電源装置100は複数(図14においては3個)の電池モジュール1が、バッテリコントロールユニット2、バッテリ補機デバイス3および分解時電流遮断ユニット4に接続された状態でバッテリケース5に収容されている。バッテリケース5の上方から、バッテリカバー7がねじ8により固定される。バッテリカバー7は、外部から導電性異物、たとえば、水、埃、化学薬品等が侵入するのを防止する。各電池モジュール1は、図15に図示されるように、高電圧線9により直列に接続されている。
【0036】
図16に示すように、バッテリケース5の一方の側板には冷媒入口パイプ54が配設され、バッテリケース5の他方の側板には冷媒出口パイプ55が配設されている。冷媒入口パイプ54は、バッテリケース5内に設けられる分岐パイプブロック52に接続され、冷媒出口パイプ55は、バッテリケース5内に設けられる合流パイプブロック53に接続されている。
【0037】
各電池モジュール1の冷却プレート15Aに内蔵されている伝熱管200Aは、冷却プレート15Aから外方に向かって突出する冷媒入口部40Aおよび冷媒出口部50Aを有し、冷媒入口部40Aおよび冷媒出口部50Aのそれぞれにはゴム製の連結パイプ51a,51bが接続されている。
【0038】
3つの電池モジュール1の冷媒入口部40Aに接続された連結パイプ51aは、それぞれ分岐パイプブロック52に接続され、3つの電池モジュール1の冷媒出口部50Aに接続された連結パイプ51bは、それぞれ合流パイプブロック53に接続されている。
【0039】
図示はしないが、冷却ファン、ラジエータ、コンプレッサ等を備えた冷却システムから供給される冷媒は、入口側の分岐パイプブロック52により分岐され、各連結パイプ51aに均等に配分されて、各電池モジュール1の冷却プレート15Aの冷媒入口部40Aから冷媒流路14に供給される。各電池モジュール1を構成する複数の電池セル10を冷却し、冷媒出口部50Aから排出された冷媒は、出口側の合流パイプブロック53で合流され、冷却システムに回収され、冷却システムによって冷却される。
【0040】
本実施の形態に係る冷却プレート15Aに内蔵される伝熱管200Aの構成について詳しく説明する。図5に示すように、冷却プレート15Aに内蔵される伝熱管200Aは、円管であって、管内径d2の大径管201Aおよび管内径d1の小径管202Aを複数有している(管内径:d2>d1)。大径管201Aと小径管202Aは冷媒の流れ方向に沿って交互に設けられている。
【0041】
小径管202Aと大径管201Aとの間には、小径管202Aから冷媒の流れ方向に向かって、内径が徐々に大きくなる、すなわち流路断面積が徐々に大きくなる広がり管203が設けられている。大径管201Aと小径管202Aとの間には、大径管201Aから冷媒の流れ方向に向かって、内径が徐々に小さくなる、すなわち流路断面積が徐々に小さくなる狭まり管204が設けられている。
【0042】
伝熱管200Aは、大径管201A、小径管202A、広がり管203および狭まり管204を別々に製作し、各管を溶接により接合することで形成されている。なお、小径管202Aはスウェージング加工で形成し、大径管201Aはバルジ加工により膨らませることで形成してもよい。
【0043】
図5を参照して、伝熱管200A内の冷媒の流れを説明する。
冷媒入口部40Aに供給された冷媒は、小径管202A内を流れ、広がり管203を介して大径管201Aに流入する。大径管201Aの流路断面積は、大径管201Aの流入側に配置される小径管202Aの流路断面積に比べて大きい。したがって、大径管201A内を流れる冷媒は、小径管202A内を流れる冷媒に比べて流速が遅い。つまり、小径管202Aから大径管201Aに向かって流れる冷媒は、大径管201Aで流速が減速する。
【0044】
大径管201A内を流れた冷媒は、狭まり管204を介して小径管202Aに流入する。小径管202Aの流路断面積は、小径管202Aの流入側に配置される大径管201Aの流路断面積に比べて小さいため、小径管202A内を流れる冷媒は、大径管201A内を流れる冷媒に比べて流速が速い。つまり、大径管201Aから小径管202Aに向かって流れる冷媒は、小径管202Aで流速が増速する。
【0045】
したがって、複数の小径管202Aと大径管201Aとが交互に配置されてなる伝熱管200Aを流れる冷媒は、減速および増速を交互に繰り返しながら流れ、冷却プレート15A全体を冷却し、冷媒出口部50Aから排出される。
【0046】
このように、伝熱管200A内を流れる冷媒は、減速と増速とが交互に繰り返し行われるため、温度境界層の発達が抑制される。これに対して、図17に示すように、従来の伝熱管200Pは、冷媒入口部から冷媒出口部にかけて同一の内径d1とされていたため、温度境界層が流れに沿って発達する。温度境界層は、熱伝達に対して抵抗要素となるため、下流側ほど冷媒と伝熱管200Pとの間の熱伝達が阻害される。したがって、従来の冷却プレート15Pの表面温度は、冷媒の流れ方向に沿って下流側ほど高く、冷却プレート15Pに並置される複数の電池セル(不図示)のそれぞれを均一に冷却できない。
【0047】
本実施の形態では、図5に示すように、大径管201A内を通過した冷媒は、小径管202Aに流入することで増速するため、小径管202A内での熱伝達が向上する。逆に、大径管201Aでは流速が減速するので、大径管201A内での熱伝達が悪くなるおそれがあるが、大径管201Aの外径を適当な大きさにする、すなわち伝熱面積を大きくすることで、その課題を補うことができる。大径管201Aの伝熱面積を大きくすることで、小径管202Aを介して冷媒に伝わる熱量と、大径管201Aを介して冷媒に伝わる熱量とをほぼ等しくすることができるため、冷却プレート15Aを流れ方向に沿って均一に冷却できる。
【0048】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)伝熱管200Aにより形成される冷媒流路14を流れる冷媒を減速させる大径管201Aと、大径管201Aにより減速された冷媒を増速させる小径管202Aとを交互に設けた。これにより、冷媒の流れに沿って温度境界層が発達することを抑制し、冷媒と冷却プレート15Aとの間の熱伝達を向上することができる。
【0049】
(2)(1)により、冷却プレート15Aの流れ方向の温度分布の均一化が促進されるため、冷却プレート15Aに熱的に接触している複数の電池セル10のそれぞれを均等に冷却して、各電池セル10の温度を均一にすることができる。その結果、各電池セル10の充放電量や寿命のバラツキが低減された信頼性の高い電池モジュール1を提供できる。
【0050】
(3)(1)により、冷却性能が向上するため、電池セル10を密に配設することができ、電池モジュール1のコンパクト化を図ることができる。
【0051】
(4)大径管201Aと小径管202Aとの間に、広がり管203および狭まり管204を設けているため、伝熱管内壁で流れがはく離することを防止して、効率的に冷却プレート15Aを冷却することができる。さらに、圧力損失の低減を図ることもできる。
【0052】
(5)本実施の形態では、冷却プレート15Aの表面側および裏面側に電池セル10を冷媒の流れ方向であるy(長さ)方向に沿って3個配列し、電池セル10をz(高さ)方向にセル分割プレート20を介装して4段に積層した。複数の電池セル10を冷媒の流れ方向に沿って配列することで、冷媒の流れ方向に沿って配列される各電池セル10の温度の均一化を図るとともに、電池モジュール全体の小型化を図ることができる。
【0053】
(6)電池セル10を、絶縁性を有する熱伝導性部材16を介装して冷却プレート15Aに熱的に結合するので、電池セル10相互の短絡を防止することができる。
【0054】
(7)冷却システムにより冷却した冷媒を分岐パイプブロック52により3つの電池モジュール1に均等に分配し、各電池モジュール1からの冷媒を合流パイプブロック53により合流して冷却システムに回収する構成としたため、複数の電池モジュール1を効率よく冷却できる電源装置100を提供することができる。
【0055】
−第2の実施の形態−
本発明の第2の実施の形態を図18を参照して説明する。図18は、本発明の第2の実施の形態に係る冷却プレート15Bの断面図である。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号にBを付し、相違点を主に説明する。第2の実施の形態に係る伝熱管200Bは、第1の実施の形態と同様に大径管201Bおよび小径管202Bが交互に配列されている。しかしながら、第2の実施の形態に係る伝熱管200Bは、大径管201Bと小径管202Bとの間に広がり管や狭まり管が介装されていない。
【0056】
小径管202Bの長さL1と大径管201Bの長さL2とは、圧力損失や熱伝達の観点から、あるいは製作上の観点から適宜設定される。たとえば、バルジ加工などの拡管を実施するときに、製作上、大径管201Bの長さL2を十分に確保できない場合には、大径管201Bの長さL2は、小径管202Bの長さL1よりも短く設定される(L2<L1)。伝熱管200B内の圧力損失の低減を図る場合には、大径管201Bの長さL2を小径管202Bの長さL1と同じか、それ以上に設定される(L2≧L1)。
【0057】
第2の実施の形態によれば、小径管202Bから大径管201Bに冷媒が流入するときに、流れが管内壁から剥離して噴流となって、速度の小さい大径管201B内の流れに衝突し、うずを形成する。さらに、大径管201Bから小径管202Bに流入した冷媒は、小径管202Bの入口端部(角部)より流れがはく離する。したがって、小径管202Bと大径管201Bとの接続部では熱伝達が若干悪くなる。しかしながら、第2の実施の形態によれば、図17に示したような従来の単純形状の円管の伝熱管200Pに比べて、温度境界層の発達を十分に防ぐ効果がある。
【0058】
−解析例−
汎用の熱流体解析ソフトを用いて行った解析例を図19に基づいて説明する。
解析は、第1および第2の実施の形態に係る電池モジュール、および、比較例として冷媒入口部から冷媒出口部まで流路断面積が変化しない従来例に係る冷却プレート15P(図17参照)を備えた電池モジュールに対して適当な充放電パターンで実施した3次元熱解析の結果である。
【0059】
主な解析条件として、小径管202A,202Bの内径d1=6mm、大径管201A,201Bの内径d2=8mm、冷媒はエチレングリコール50%水溶液、冷媒の流量は2L/min、冷媒の入口温度は25℃に設定した。電池モジュールの構成は、図3に示したように冷却プレートの片面に角形の電池セルが3個×4段のレイアウトで配列され、両面で合計48個設置されているものとした。冷却プレートはアルミダイキャスト製とし、電池セル1個の発熱量は5W、冷却プレートのx方向の厚みは12mm、z方向の高さは50mm、y方向の長さは360mmに設定した。
【0060】
図19は、解析結果であり、縦軸は冷却プレートの温度バラツキとした。ここで、冷却プレートの温度バラツキとは、電池セルと熱的に接触する冷却プレートの表面部分の冷媒入口近傍と冷媒出口近傍の温度差を示している。
【0061】
解析の結果、第1および第2の実施の形態のいずれも従来例と比較して冷却プレートの温度バラツキの低減効果が確認できた。これは、第1および第2の実施の形態によれば、温度境界層の発達を十分に防ぐ効果があり、管内の熱伝達が向上するとともに、冷却プレートの流れ方向の温度分布の均一化が促進されたためである。特に、第1の実施の形態における冷却プレートの温度バラツキが抑えられているのは、広がり管や狭まり管により流れのはく離が防止され、円滑に冷媒が減速と増速とを繰り返しているためである。
【0062】
以上のとおり、解析の結果、第1および第2の実施の形態のいずれもが、冷却プレートに熱的に接触している複数の電池セルの温度の均一化を促進することができ、各電池セル10の充放電量・電池寿命のバラツキを低減できる冷却構造を備えた電池モジュールであるということが示された。
【0063】
−第3の実施の形態−
本発明の第3の実施の形態を図20を参照して説明する。図20は、本発明の第3の実施の形態に係る冷却プレート15Cの断面図である。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号にCを付し、相違点を主に説明する。
【0064】
第3の実施の形態では、大径管201Cと小径管202Cとを交互に配設してなる伝熱管200Cが冷却プレート15Cのz(高さ)方向に3本並べて設置されている。各伝熱管200Cは相互に平行に配置されている。これにより、冷却プレート15Cのz(高さ)方向の温度バラツキも低減することができる。なお、伝熱管200Cの本数は、電池セル10のレイアウト等に応じて適宜設定される。
【0065】
したがって、第3の実施の形態によれば、冷却プレート15Cの冷媒の流れ方向であるy(長さ)方向の温度バラツキを低減する効果に加えて、冷却プレート15Cのz(高さ)方向の温度バラツキを低減し、冷却プレート15C表面の温度分布を全体的に均一にできる効果がある。
【0066】
これにより、電池セル10の配列レイアウトにおいて段数が多い場合であっても、段数に応じて伝熱管200Cの本数を増加させることで、各電池セル10の温度の均一化を促進することができるため、各電池セル10の充放電量・電池寿命のバラツキを低減することができる。
【0067】
−第4の実施の形態−
本発明の第4の実施の形態を図21を参照して説明する。図21は、本発明の第4の実施の形態に係る冷却プレート15Dの断面図である。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号にDを付し、相違点を主に説明する。
【0068】
第4の実施の形態では、第3の実施の形態と同様に3本の伝熱管200D1,200D2を冷却プレート15Dのz(高さ)方向に並べて設置しているが、伝熱管200D1と伝熱管200D2とで半ピッチだけy(長さ)方向にずれた状態で配置されている。換言すれば、符号90で示す領域のように小径管202Dと大径管201Dの位相がz(高さ)方向にずれて配置されている。
【0069】
第4の実施の形態では、伝熱管を複数本設置するとともに、冷媒の流速が増速して管内の熱伝達が良好になる場所をずらした構造を採用した。これにより、冷却プレート15Dの冷媒の流れ方向であるy(長さ)方向の温度バラツキを低減する効果に加えて、冷却プレート15Dのz(高さ)方向の温度バラツキをより低減し、冷却プレート15Dの温度分布を全体的により均一にできる。
【0070】
なお、図21に示すように、中央の伝熱管200D2は、大径管201Dが冷却プレート15Dの外方に突出するように延在しており、一方の端部から外方に突出する部分が冷媒入口部40Dとされ、他方の端部から外方に突出する部分が冷媒出口部50Dとされている。
【0071】
−第5の実施の形態−
本発明の第5の実施の形態を図22を参照して説明する。図22は、本発明の第5の実施の形態に係る伝熱管200Eの増速部202Eの断面図である。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号にEを付し、相違点を主に説明する。第5の実施の形態では、小径管に代えて、楕円断面を有する増速部202Eが設けられている。増速部202Eは、単一径を有する一本の伝熱管200Eを適当な間隔で外方から径方向内側に向かって、上下から挟むようにして、一定外力で機械的に押し潰すことにより扁平状に形成される。なお、押し潰されていない部分は、増速部202Eの流路断面積よりも大きい流路断面積を有する減速部(不図示)とされる。
【0072】
このようにして、増速部202Eと減速部とを冷媒流れ方向に沿って交互に形成することで、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。さらに、第5の実施の形態によれば、スウェージング加工などにより小径管を形成する場合に比べて、製作に手間がかからずコストを低減できる。
【0073】
−第6の実施の形態−
本発明の第6の実施の形態を図23を参照して説明する。図23は、本発明の第6の実施の形態に係る伝熱管200Fの増速部202Fの断面図である。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号にFを付し、相違点を主に説明する。
【0074】
第6の実施の形態では、伝熱管200Fの断面は四隅が丸みを帯びた四角形とされている。第6の実施の形態では、単一断面積を有する一本の伝熱管を適当な間隔で外方から挟むようにして押し潰すことで増速部202Fが形成され、押し潰されていない部分は減速部(不図示)とされる。
【0075】
このように、流路断面が略四角形であっても、上記した第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0076】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を前述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)上述の実施の形態では、伝熱管を直線上に配置する構成としたが、本発明はこれに限定されない。図24に示すように、冷媒を1回あるいは複数回Uターンさせるように折り返し部59を設けた伝熱管200Gを冷却プレート15Gに内蔵してもよい。このような構成であっても、冷媒の流れに沿って大径管201Gと小径管202Gとが交互に設けられているため、温度境界層の発達を抑制できる。
【0077】
(2)上述の実施の形態では、伝熱管を冷却プレートに内蔵する構成としたが本発明はこれに限定されない。図25に示すように、伝熱管を設けずに、鋳造などにより冷却プレート15Hの内部に流路断面積の大きい減速部201Hと流路断面積の小さい増速部202Hとを設けることとしてもよい。なお、冷媒入口部40Hおよび冷媒出口部50Hは、冷却プレート15Hの外方に突出することなく冷却プレート15Hの内部に形成されている。この場合、連結パイプの接続部が冷媒入口部40Hや冷媒出口部50Hに嵌入固定される。
【0078】
(3)冷却プレートに対する電池セル10の配置レイアウトは、上述の実施の形態(図3参照)に限定されない。たとえば、図26に示すように、複数の電池セル10は、冷却プレート15Jのy(長さ)方向に沿って1列に配置してもよい。なお、図26では、各電池セル10は、上述の実施の形態(図3参照)の場合とは、90°異なる向きに配置されている。つまり、上述の実施の形態では、冷却プレートに角形の電池セルを3個×4段で配設したが、本発明はこのような構造に限定されることなく、冷却プレートを介して角形の電池セルあるいは円筒形の電池セル等を種々のレイアウトで配列することができる。
【0079】
(4)上述の実施の形態では、大径管と小径管とを交互に設けることとしたが、本発明はこれに限定されない。図27に示すように、冷却プレート15Kに小径管202Kの内径d1よりも大きく、かつ、大径管201Kの内径d2よりも小さい内径d3を有する中径管203Kをさらに設けることとしてもよい。これにより、小径管202K、中径管203K、大径管201Kを適宜組み合わせて、増速と減速を繰り返し行わせてもよい。ここで、小径管202Kから中径管203Kに冷媒が流入する場合、中径管203Kにおいて冷媒は減速するため、中径管203Kは減速部として機能し、大径管201Kから中径管203Kに冷媒が流入する場合、中径管203Kにおいて冷媒は増速するため、中径管203Kは増速部として機能する。さらに、3種類の管だけでなく、4種類以上の管を組み合わせて、冷媒を増速あるいは減速させることもできる。
【0080】
(5)上述の実施の形態では、冷却プレートの冷媒入口部および冷媒出口部は減速部あるいは増速部の断面形状と同一にしたが、本発明はこれに限定されない。冷媒入口部および冷媒出口部は減速部や増速部とは異なる断面形状とすることができる。
【0081】
(6)本発明は、伝熱管の断面形状を円形や四角形とする場合に限定されない。伝熱管の断面は、三角形や五角形以上の多角形、ならびに、円形や楕円を除く曲線断面など種々の形状とすることができる。
【0082】
(7)上述の実施の形態では、電池セルとしてリチウムイオン二次電池を用いたが、本発明はこれに限定されることなく、電池セルとしてニッケル水素電池セル、ニッケルカドミウム電池セルなど、他の二次電池を用いることができる。
【0083】
(8)冷媒はエチレングリコール水溶液に限定されない。水やエタノールなど、種々の冷媒を採用できる。冷却プレートおよび伝熱管の材質、形状は冷媒の性質に応じて設計される。
【0084】
(9)上述の実施の形態では、端子カバー25をエンドプレート21側に引き寄せる弾性部材としてクリップ30を用いた構造を採用したが本発明はこれに限定されない。クリップ30以外の弾性部材を用いることができる。たとえば、端子カバー25とエンドプレート21間に引っ張りばねを張架してもよいし、カバー28をエンドプレート21に固定し、カバー28に端子カバー25を付勢する圧縮ばね、板ばね、皿ばね等を取り付けるようにしてもよい。
弾性部材を用いる構造ではなく、締結部材により端子カバー25をエンドプレート21側に押し付ける構造としてもよい。
【0085】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 電池モジュール、10 電池セル、14 冷媒流路、15A 冷却プレート,15B 冷却プレート,15C 冷却プレート,15D 冷却プレート,15G 冷却プレート,15H 冷却プレート,15J 冷却プレート,15K 冷却プレート、16 熱伝導性部材、26 バスバー、40A 冷媒入口部,40D 冷媒入口部,40H 冷媒入口部、50A 冷媒出口部,50D 冷媒出口部,50H 冷媒出口部、51a 連結パイプ,51b 連結パイプ、52 分岐パイプブロック、53 合流パイプブロック、54 冷媒入口パイプ、55 冷媒出口パイプ、59 折り返し部、100 電源装置、200A 伝熱管,200B 伝熱管,200C 伝熱管,200D1 伝熱管,200D2 伝熱管,200E 伝熱管,200F 伝熱管,200G 伝熱管,200P 伝熱管、201A 大径管,201B 大径管,201C 大径管,201D 大径管,201G 大径管,201K 大径管、201H 減速部、202A 小径管,202B 小径管,202C 小径管,202D 小径管,202G 小径管,202K 小径管、202E 増速部,202F 増速部,202H 増速部、203K 中径管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒を流通する冷媒流路を有する冷却プレートと、
前記冷却プレートの表面に熱伝導可能に結合される複数の電池セルとを備え、
前記冷媒流路は、前記冷媒を減速する減速部および前記冷媒を増速する増速部が複数形成され、
前記減速部の流路断面積は前記減速部の流入側の冷媒流路断面積に比べて大きく、前記増速部の流路断面積は前記増速部の流入側の冷媒流路断面積に比べて小さいことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールにおいて、
前記減速部の流路断面積は前記増速部の流路断面積に比べて大きく、前記減速部と前記増速部は冷媒の流れ方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池モジュールにおいて、
前記冷媒流路は、前記冷却プレートに内蔵される伝熱管により形成されていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、
前記減速部と前記増速部との間において、前記減速部から冷媒の流れ方向に向かって、流路断面積が徐々に小さくなる断面積縮小部が設けられ、
前記増速部と前記減速部との間において、前記増速部から冷媒の流れ方向に向かって、流路断面積が徐々に大きくなる断面積拡大部が設けられていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、
前記冷媒流路が複数設けられ、前記複数の冷媒流路は相互に平行に配置されていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、
前記冷媒流路の断面形状は円形とされていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、
前記冷媒流路の断面形状は多角形とされていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、
前記増速部は、前記伝熱管を外方から機械的に押し潰すことにより形成されていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電池モジュールにおいて、
前記複数の電池セルは、前記冷媒の流れ方向に沿って配列されていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の電池モジュールを複数個有し、
前記冷媒を冷却する冷却システムを備え、
前記冷却システムによって冷却した冷媒を分岐して前記各電池モジュールの冷却プレートの冷媒流路に供給し、
前記各電池モジュールの冷却プレートの冷媒流路から排出される冷媒を合流して前記冷却システムに回収することを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−16351(P2013−16351A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148280(P2011−148280)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】