説明

電池モジュール

【課題】複数の電池を複数箇所に収容した構成において部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池モジュール10は、複数設けられた電池収容ダクト11と、電池収容ダクト11に収容された二次電池13と、電池収容ダクト11に隣接して、かつ二つの電池収容ダクト11に挟まれた状態で設けられた熱電変換素子温調用ダクト12とを備えている。電池収容ダクト11と熱電変換素子温調用ダクト12との隔壁14に熱電変換素子15が設けられている。熱電変換素子15は、通電の極性に応じて放熱と吸熱の相反する作用をする第1の面15a及び第2の面15bを有し、第1の面15aが電池収容ダクト11に対応し、第2の面15bが熱電変換素子温調用ダクト12に対応するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに係り、詳しくは複数の電池の温度調整が可能な電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の大電流での充電及び放電や二次電池の大容量化が要求されるようになっている。しかし、大電流での充電及び放電は二次電池内部の大きな発熱を伴い、また限られたスペースに多数の二次電池を収容することから二次電池の温度が上昇し、二次電池の性能の劣化を促進してしまうという問題がある。また、二次電池によっては環境温度が低いと放電性能が低下する。そのため、冬季等の低温環境下においては、特に起動時に二次電池を暖める必要がある。
【0003】
従来、バッテリにペルチェ素子を密着して取り付け、ペルチェ素子の外側に放熱フィンを取り付け、バッテリの冷却必要時にペルチェ素子のバッテリに密着する側が吸熱し、バッテリの加熱必要時にペルチェ素子のバッテリに密着する側が発熱する方向に電流を流す電流方向切替手段を設けた温度調節装置が提案されている(特許文献1参照)。具体的には、図8に示すように、バッテリ収納部41にバッテリ42が収納、支持されており、各バッテリ42の底面にペルチェ素子伝熱板43が取り付けられている。バッテリ収納部41の下部には冷却風の流通のためのダクト部44が形成されており、その入口には冷却ファン45が設置されている。ペルチェ素子伝熱板43は内側がバッテリ42の底部に密着するように取り付けられ、外側に放熱フィン46が取り付けられている。そして、バッテリ42の温度を温度測定手段で測定して、バッテリ温度が適正温度帯を超える高温状態には、ペルチェ素子伝熱板43の内側が吸熱する方向に電流を流し、バッテリ温度が適正温度帯に達しない低温状態には、ペルチェ素子伝熱板43の内側が発熱する方向に電流を流すように電流方向切替手段が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−148189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レイアウトの関係で複数のバッテリを一箇所ではなく、複数箇所に分けて収容したい場合もあるが、収容箇所毎にそれぞれ冷却風の流通のためのダクト部を設けると、部品点数が増加するとともにペルチェ素子温調用ダクトが占めるスペースも大きくなる。特許文献1の温度調節装置はそのような場合に対する配慮がなされていない。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は複数の電池を複数箇所に収容した構成において部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数設けられた電池温調用ダクトと、前記電池温調用ダクトを流れる熱媒体で温度調整される電池と、前記電池温調用ダクトに隣接して、かつ二つの前記電池温調用ダクトに挟まれた状態で設けられた熱電変換素子温調用ダクトと、前記電池温調用ダクトと前記熱電変換素子温調用ダクトとの境界部に設けられ、通電の極性に応じて放熱と吸熱の相反する作用を行う第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面が前記電池温調用ダクトに対応し、前記第2の面が前記熱電変換素子温調用ダクトに対応するように設けられた熱電変換素子とを備えている。ここで、「熱媒体」とは、熱の伝達を行う流体を意味する。また、「面にダクトが対応する」とは、面がダクトの境界部の壁に接触している状態や面がダクト内に位置している状態を意味する。
【0008】
この発明の電池モジュールは、熱電変換素子が直流電源に接続されて使用される。使用環境が電池モジュールの加熱を必要としない場合は、熱電変換素子は第1の面が吸熱側となるように直流電源に接続されて使用され、電池温調用ダクトを流れる熱媒体が冷却されて電池が冷却される。使用環境が電池モジュールの冷却を必要な状態と加熱を必要な状態とに変化する場合は、環境に対応して熱電変換素子に供給される直流の通電方向が切り換えられることにより、熱電変換素子の第1の面が吸熱状態あるいは放熱(発熱)状態に切り換えられる。第1の面が吸熱状態になると電池温調用ダクトを流れる熱媒体が冷却されて電池が冷却される。第1の面が放熱状態になると電池温調用ダクトを流れる熱媒体が加熱されて電池が加熱される。
【0009】
熱電変換素子の第1の面が放熱状態のときは第2の面を冷却することにより第1の面での放熱が効率良く行われ、熱電変換素子の第1の面が吸熱状態のときは第2の面の放熱を促進させることにより第1の面での吸熱が効率良く行われる。熱電変換素子の第2の面の冷却及び放熱は、熱電変換素子温調用ダクトに熱媒体を流すことで行われる。電池温調用ダクトが複数設けられている場合、電池温調用ダクト毎に熱電変換素子温調用ダクトを設けると、熱電変換素子温調用ダクトの数が増え、熱電変換素子温調用ダクトの占めるスペースが大きくなって電池モジュールの設置に必要なスペースが大きくなり、電池モジュールを構成する部品点数が多くなる。しかし、この発明では、熱電変換素子温調用ダクトは電池温調用に隣接して、かつ二つの電池温調用ダクトに挟まれた状態で設けられているため、一つの熱電変換素子温調用ダクトが二つの電池温調用ダクトに共用される。したがって、複数の電池を複数箇所に収容した構成において部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記電池は前記電池温調用ダクトに収容されている。電池を冷却あるいは加熱する場合、特許文献1のように熱電変換素子が取り付けられた面からのみで電池を冷却あるいは加熱するより、電池全体が熱媒体を介して冷却あるいは加熱される方が好ましい。この発明では、電池は、ほぼ全体が熱媒体と接する状態となり、温度調整を効率良く行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記複数の電池温調用ダクトは連通ダクトを介して熱媒体が循環可能に設けられ、前記連通ダクトには熱媒体駆動部が設けられている。
【0012】
電池温調用ダクトで電池の冷却あるいは加熱に使用された熱媒体は、循環使用される場合と、廃棄される場合とがある。廃棄される場合は新たな熱媒体として使用環境の外気を電池温調用ダクトに導入する必要があり、電池の温度が外気温度の影響を受け易い。また、熱媒体を廃棄しても支障のない箇所まで導く廃棄用のダクトが必要になる。この発明では、熱媒体は循環使用されるため、電池の温度が外気温度の影響を受け難く、外気導入用のダクトや熱媒体廃棄用のダクトが不要になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記熱電変換素子はペルチェ素子である。ペルチェ素子は熱電変換素子として一般に使用されており、所望の性能の熱電変換素子を入手し易い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の電池を複数箇所に収容した構成において、部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は蓋体を省略した電池モジュールの模式平面図、(b)は蓋部、連通ダクト及び熱電変換素子温調用ダクトの端部等を省略した電池モジュールの模式斜視図。
【図2】(a)は図1(a)のA−A線で切断した断面図(蓋部有り)、(b)は(a)のB−B線で切断した断面図、(c)は図1(a)のC−C線で切断した断面図(蓋部有り)、(d)は図1(a)のD矢視図(蓋部有り)。
【図3】別の実施形態の図1(a)に対応する模式平面図。
【図4】別の実施形態の図1(a)に対応する模式平面図。
【図5】別の実施形態の図1(a)に対応する模式平面図。
【図6】別の実施形態の図1(a)に対応する模式平面図。
【図7】(a),(b)はそれぞれ別の実施形態の図2(a)に対応する模式断面図。
【図8】従来技術の模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a),(b)に示すように、電池モジュール10は、複数(この実施形態では二つ)並列に設けられた電池温調用ダクトとしての電池収容ダクト11と、電池収容ダクト11に隣接して、かつ二つの電池収容ダクト11に挟まれた状態で設けられた熱電変換素子温調用ダクト12とを備えている。各電池収容ダクト11内には電池としての二次電池13が複数収容されている。二次電池13として角型電池が使用されている。二次電池13はその厚さ方向が熱電変換素子温調用ダクト12の長手方向(図1(a)の上下方向)と平行になるように配置されている。
【0017】
図1(b)及び図2(a)に示すように、電池収容ダクト11は、略U字状に形成された本体11aと、本体11aの開放側を覆う蓋部11b(図2に図示)とを有する。本体11aの中央部に熱電変換素子温調用ダクト12が設けられており、熱電変換素子温調用ダクト12は断面矩形の筒状に形成されている。各電池収容ダクト11と熱電変換素子温調用ダクト12の境界部としての隔壁14は、各電池収容ダクト(電池温調用ダクト)11及び熱電変換素子温調用ダクト12の一方の側壁を形成している。蓋部11bは、複数の二次電池13を所定間隔で平行に支持した状態で本体11aに固定されている。この実施形態では蓋部11bは二つの電池収容ダクト11に共通に形成され、蓋部11bは熱電変換素子温調用ダクト12の上面に当接する状態で、図示しないねじにより、本体11aに固定されている。
【0018】
図2(a),(b)に示すように、蓋部11bの裏面(内面)には二次電池13の一端部(図2(a),(b)では上端部)を挟持する凸部11cが複数、二次電池13の厚さの間隔で平行に形成され、二次電池13は、所定の間隔(略凸部11cの厚さ)を設けた状態で配置されている。電池収容ダクト11の本体11a、蓋部11b及び熱電変換素子温調用ダクト12は断熱性を有する材質、例えば、樹脂で一体に形成されている。
【0019】
電池収容ダクト11と熱電変換素子温調用ダクト12との境界部である隔壁14には熱電変換素子15が複数設けられている。熱電変換素子15は、通電の極性に応じて放熱(発熱)と吸熱の相反する作用を行う第1の面15a及び第2の面15bを有し、第1の面15aが電池収容ダクト11に対応し、第2の面15bが熱電変換素子温調用ダクト12に対応するように設けられている。この実施形態では、第1の面15aが電池収容ダクト11内に位置し、第2の面15bが熱電変換素子温調用ダクト12内に位置するように、熱電変換素子15は電池収容ダクト11及び熱電変換素子温調用ダクト12の隔壁14を貫通し、かつ熱電変換素子15が隔壁14を貫通する部分の気密性が保持された状態に設けられている。第1の面15a及び第2の面15bにはフィン16が取り付けられている。フィン16は二次電池13に接触しない大きさに形成されている。
【0020】
熱電変換素子15としてはペルチェ素子が使用されている。ペルチェ素子は、例えば、複数のP型半導体と複数のN型半導体とが電気的に直列に接続され、かつ熱的に並列に配置された状態でセラミックスよりなる電気的絶縁性の伝熱板の間に配設され、樹脂封止材などで封止して一体化されている。
【0021】
図1(a)に示すように、複数の電池収容ダクト11は連通ダクト17を介して熱媒体が循環可能に設けられている。熱媒体としては気体(例えば、空気)が使用されている。連通ダクト17は2本設けられ、一方の連通ダクト17には熱媒体駆動部18として図示しないモータで駆動されるファンが設けられている。連通ダクト17も樹脂で電池収容ダクト11の本体11aと一体に形成されている。
【0022】
図2(c),(d)に示すように、熱電変換素子温調用ダクト12は連通ダクト17との干渉を避けるため、その両端部が屈曲された状態に形成されている。熱電変換素子温調用ダクト12は、その両端部の断面積が電池収容ダクト11と隣接する部分の断面積より小さく形成されている。
【0023】
前記のように構成された電池モジュール10を組立、製造する場合は、蓋部11bが取り付けられる前の状態で、先ず熱電変換素子15を電池収容ダクト11と熱電変換素子温調用ダクト12の隔壁14に形成されている孔を貫通する状態で、第1の面15aが電池収容ダクト11側に、第2の面15bが熱電変換素子温調用ダクト12側になるように接着剤を用いて固着する。次に、二次電池13が所定間隔で固定された蓋部11bを、本体11aの開口部を覆うように本体11aに固定する。
【0024】
次に前記のように構成された電池モジュール10の作用を説明する。
電池モジュール10は、熱電変換素子15が図示しない配線及び切換えスイッチを介して直流電源に接続される。また、図1(a)に2点鎖線で示すように、熱電変換素子温調用ダクト12の一端側に熱媒体としての外気を導入する外気導入ダクト19aが連結され、他端側に熱電変換素子温調用ダクト12を通過した熱媒体を廃棄する廃棄ダクト19bが連結された状態で使用される。切換えスイッチ及び熱媒体駆動部18は制御装置により制御される。なお、制御装置は電池収容ダクト11内の温度を検出する図示しないセンサの検出信号に基づいて、電池収容ダクト11内を加熱すべきか冷却すべきかを判断して切換えスイッチを制御する。また、電池モジュール10は、図示しないが電力を供給すべき電機機器に配線を介して電力を供給する。
【0025】
電池モジュール10が使用される場合、急速充電時や急速放電時に二次電池13の発熱が大きくなる。そのため、寒冷地や冬季の低温時等のように環境温度が二次電池13の駆動に支障を来すほど低い場合を除き、切換えスイッチは熱電変換素子15の第1の面15aが吸熱側となるように直流電源に接続される状態に切り換えられる。また、電池収容ダクト11内の熱媒体の温度が二次電池13の駆動に支障を来すほど低く、二次電池13の加熱を必要とする場合は、切換えスイッチは熱電変換素子15の第1の面15aが放熱側(発熱側)となるように直流電源に接続される状態に切り換えられる。
【0026】
第1の面15aが吸熱状態になると電池収容ダクト11を流れる熱媒体が冷却されて電池収容ダクト11内の二次電池13が冷却される。第1の面15aが放熱状態になると電池収容ダクト11を流れる熱媒体が加熱されて電池収容ダクト11内の二次電池13が加熱される。
【0027】
熱電変換素子の第1の面15aが吸熱状態のときは第2の面15bの放熱を促進させることにより第1の面15aでの吸熱が効率良く行われ、熱電変換素子15の第1の面15aが放熱状態のときは第2の面15bを冷却することにより第1の面15aでの放熱が効率良く行われる。熱電変換素子15の第2の面15bの放熱及び冷却は、熱電変換素子温調用ダクト12に熱媒体を流すことで行われる。熱電変換素子温調用ダクト12には新たな外気が導入されるため、第2の面15bの放熱及び冷却が効率良く行われ、電池収容ダクト11内の熱媒体の温度が、二次電池13の放電や充電に適した温度に調整される。
【0028】
電池収容ダクト11が複数設けられている場合、電池収容ダクト11毎に熱電変換素子温調用ダクト12を設けると、熱電変換素子温調用ダクト12の数が増え、熱電変換素子温調用ダクト12の占めるスペースが大きくなって電池モジュール10の設置に必要なスペースが大きくなり、電池モジュール10を構成する部品点数が多くなる。しかし、熱電変換素子温調用ダクト12は電池収容ダクト11に隣接して、かつ二つの電池収容ダクト11に挟まれた状態で設けられて、一つの熱電変換素子温調用ダクト12が二つの電池収容ダクト11に共用されているため、省スペース化を図ることができる。
【0029】
二次電池13の冷却あるいは加熱に使用された熱媒体を廃棄する構成では、新たな熱媒体として使用環境の外気を電池収容ダクト11に導入する必要がある。外気が電池収容ダクト11に導入されると、二次電池13の温度が外気温度の影響を受け易くなる。また、外気導入用のダクトや熱媒体を廃棄しても支障のない箇所まで導く廃棄用のダクトが必要になる。この実施形態の電池モジュール10は、二次電池13の冷却あるいは加熱に使用された熱媒体は循環使用されるため、二次電池13の温度が外気温度の影響を受け難く、外気導入用のダクトや廃棄用のダクトが不要になる。
【0030】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)電池モジュール10は、複数設けられた電池温調用ダクトとしての電池収容ダクト11と、電池収容ダクト11に収容された二次電池13と、電池収容ダクト11に隣接して、かつ二つの電池収容ダクト11に挟まれた状態で設けられた熱電変換素子温調用ダクト12とを備えている。電池収容ダクト11と熱電変換素子温調用ダクト12との隔壁14に、通電の極性に応じて放熱と吸熱の相反する作用をする第1の面15a及び第2の面15bを有する熱電変換素子15が、第1の面15aが電池収容ダクト11に対応し、第2の面15bが熱電変換素子温調用ダクト12に対応するように設けられている。したがって、複数の二次電池13を複数箇所に収容した構成において部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる。
【0031】
(2)二次電池13は、電池温調用ダクトとしての電池収容ダクト11に収容されている。各二次電池13は、一部が電池温調用ダクトに面していれば、電池温調用ダクトを流れる熱媒体により温度調整されるが、この実施形態では二次電池13は、ほぼ全体が熱媒体と接する状態となり、一部が電池温調用ダクトに面している構成に比べて、温度調整を効率良く行うことができる。
【0032】
(3)複数の電池収容ダクト11は連通ダクト17を介して熱媒体が循環可能に設けられ、連通ダクト17には熱媒体駆動部18が設けられている。したがって、二次電池13の温度が外気温度の影響を受け難く、外気導入用のダクトや廃棄用のダクトが不要になる。
【0033】
(4)熱電変換素子としてペルチェ素子が使用されている。ペルチェ素子は熱電変換素子として一般に使用されており、所望の性能の熱電変換素子を入手し易い。
(5)電池収容ダクト11、熱電変換素子温調用ダクト12及び連通ダクト17は断熱性を有する材質、例えば、樹脂で形成されている。したがって、それらが断熱性の低い金属製の場合に比べて、熱電変換素子15により冷却された熱媒体が外部の熱により加熱されたり、熱電変換素子15により加熱された熱媒体の熱がダクトの壁を介して外部に逃げたりすることが抑制され、二次電池13の冷却あるいは加熱が効率良く行われる。
【0034】
(6)電池収容ダクト11は、本体11aと蓋部11bとを備え、二次電池13は蓋部11bに形成された凸部11cにより支持され状態で電池収容ダクト11内に収容されている。したがって、二次電池13を所定間隔で電池収容ダクト11内に収容する組立作業が容易になる。
【0035】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 電池収容ダクト11は二つに限らず三つ以上であってもよい。例えば、電池収容ダクト11が三つの場合、熱電変換素子温調用ダクト12は図3に示すように二つになる。また、電池収容ダクト11が四つの場合も、熱電変換素子温調用ダクト12は二つになる。
【0036】
○ 電池収容ダクト11を流れる熱媒体を循環使用せずに、廃棄する構成にしてもよい。この場合、連通ダクト17は不要になる。また、熱電変換素子温調用ダクト12と連通ダクト17との干渉を避けるために熱電変換素子温調用ダクト12の両端部を屈曲形成する必要がなくなる。そして、電池モジュール10を使用する際には、例えば、図4に示すように、熱媒体としての外気を導入する外気導入ダクト20aが各電池収容ダクト11の一端側に連結され、各電池収容ダクト11を通過した熱媒体を廃棄する廃棄ダクト20bが各電池収容ダクト11の一端側に連結される。
【0037】
○ 熱電変換素子温調用ダクト12を流れる熱媒体を循環使用する構成にしてもよい。例えば、図5に示すように、熱電変換素子温調用ダクト12を閉ループを成すように形成し、熱電変換素子温調用ダクト12の電池収容ダクト11と隣接しない箇所に熱媒体駆動部21及びラジエータ22を設ける。
【0038】
○ 熱電変換素子15は、電池収容ダクト11と熱電変換素子温調用ダクト12との境界部(隔壁14)に設けられていればよく、各電池収容ダクト11の二次電池13と対向する箇所のみに設けられる構成に限らない。例えば、図6に示すように、複数の二次電池13の一部は熱電変換素子15と対向せず、かつ二次電池13と対向しない箇所に一部の熱電変換素子15を設けた構成にしてもよい。また、電池収容ダクト11の二次電池13と対向する箇所に加えて二次電池13と対向しない箇所に熱電変換素子15を設けた構成にしてもよい。
【0039】
○ 熱電変換素子15は、電池収容ダクト11の二次電池13と対向しない箇所のみに設けられた構成にしてもよい。
○ 熱電変換素子15は各電池収容ダクト11に複数ではなく、一つ設けられた構成であってもよい。
【0040】
○ 熱媒体は空気に限らず、他の気体や液体であってもよい。電池収容ダクト11を流れる熱媒体とてして液体を使用する場合は、二次電池13の端子同士や配線同士が短絡するのを防止するため非導電性の液体を使用する必要がある。
【0041】
○ 熱電変換素子15が電池収容ダクト11の熱媒体を冷却する場合、第2の面15bを冷却する方法として、熱電変換素子温調用ダクト12を流れる熱媒体として沸点の低い液体を使用し、熱媒体の相変化、即ち第2の面15bに接触した液体が気化する際の潜熱により第2の面15bを冷却するようにしてもよい。
【0042】
○ 熱媒体として液体を用いた場合、液体は気体に比べて熱伝達率が高いのでフィン16を省略しても熱電変換素子15による熱媒体の冷却及び加熱を効率良く行うことができる。したがって、フィン16を省略して部品点数を減らすことができる。
【0043】
○ フィン16を省略する場合、第1の面15a及び第2の面15bのいずれか一方を隔壁14に密着した状態で熱電変換素子15を隔壁14に固定し、隔壁14は熱電変換素子15が取り付けられる部分に金属板がインサート成型された構成としてもよい。
【0044】
○ 電池収容ダクト11内の二次電池13の配置は、その厚さ方向が熱電変換素子温調用ダクト12の長手方向と平行に延びる状態に限らない。例えば、二次電池13の厚さ方向の一方の面が電池収容ダクト11の蓋部11bと対向するように配置したり、二次電池13の厚さ方向の一方の面が熱電変換素子温調用ダクト12と対向するように配置したりしてもよい。
【0045】
○ 電池モジュール10は、二次電池13が、電池温調用ダクトに収容された構成に限らず、二次電池13の一部が電池温調用ダクト(電池収容ダクト11)に面している状態、例えば、図7(a)に示すように、電池温調用ダクトを隔壁14と、隔壁14から二次電池13側に向かって二次電池13の近くまで延びる底壁と、蓋部11bの一部とで構成してもよい。もちろん、連通ダクト17の位置も変更される。
【0046】
○ 電池モジュール10は、二次電池13全体が電池温調用ダクトの外に設けられた構成、例えば、熱電変換素子温調用ダクト12を挟んで設けられた電池温調用ダクトの熱電変換素子温調用ダクト12と反対側の壁の外面に二次電池13の一部が接触する状態で設けてもよい。この場合、電池温調用ダクトは二次電池13が接触する部分を熱伝導率の高い材料、例えば金属製とする。
【0047】
○ 電池モジュール10の電池収容ダクト11を、図7(b)に示すように、隔壁14と、蓋部11bの一部と、隔壁14から二次電池13側に向かって蓋部11bと平行に延びる底壁とで断面コ字状に形成してもよい。この場合も、連通ダクト17の位置は変更される。
【0048】
○ 電池モジュール10は、二次電池13の一部が電池温調用ダクトに収容された構成や、電池温調用ダクトの側壁や底壁に開口部が形成された構成としてもよい。
○ 電池モジュール10は、電池収容ダクト11内に収容された全ての二次電池13が並列に接続されて共通のプラス端子及びマイナス端子に接続された構成、全ての二次電池13が直列に接続された構成、あるいは直列に接続された複数の二次電池13の組が並列に接続された構成のいずれであってもよい。
【0049】
○ 電池収容ダクト11、熱電変換素子温調用ダクト12及び連通ダクト17の形状は断面矩形状に限らない。
○ 二次電池13は角型電池に限らず、円筒型電池やラミネート型電池であってもよい。
【0050】
○ 電池は二次電池13に限らず、燃料電池に適用してもよい。
○ 電池収容ダクト11又は電池温調用ダクトと、熱電変換素子温調用ダクト12とは一体形成された構成に限らず、各電池収容ダクト11又は電池温調用ダクトと、熱電変換素子温調用ダクト12とを別々に形成した後、電池収容ダクト11又は電池温調用ダクトで熱電変換素子温調用ダクト12を挟むように接着あるいは固定してもよい。
【0051】
○ 蓋部11bを本体11aにねじで固定する代わりに、接着剤で固着してもよい。しかし、蓋部11bがねじで固定された構成では、蓋部11bを取り外して二次電池13の保守点検を行うことが容易になる。
【0052】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記電池温調用ダクトは、本体と蓋部とを備え、前記電池は前記蓋部に形成された凸部により支持された状態で設けられている。
【0053】
(2)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)のいずれか1項に記載の発明において、前記電池温調用ダクト及び前記熱電変換素子温調用ダクトは、断熱性を有する材質で形成されている。
【符号の説明】
【0054】
11…電池温調用ダクトとしての電池収容ダクト、12…熱電変換素子温調用ダクト、13…電池としての二次電池、14…境界部としての隔壁、15…熱電変換素子、15a…第1の面、15b…第2の面、17…連通ダクト、18,21…熱媒体駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数設けられた電池温調用ダクトと、
前記電池温調用ダクトを流れる熱媒体で温度調整される電池と、
前記電池温調用ダクトに隣接して、かつ二つの前記電池温調用ダクトに挟まれた状態で設けられた熱電変換素子温調用ダクトと、
前記電池温調用ダクトと前記熱電変換素子温調用ダクトとの境界部に設けられ、通電の極性に応じて放熱と吸熱の相反する作用を行う第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面が前記電池温調用ダクトに対応し、前記第2の面が前記熱電変換素子温調用ダクトに対応するように設けられた熱電変換素子と
を備えていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記電池は前記電池温調用ダクトに収容されている請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記複数の電池温調用ダクトは連通ダクトを介して熱媒体が循環可能に設けられ、前記連通ダクトには熱媒体駆動部が設けられている請求項1又は請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記熱電変換素子はペルチェ素子である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25948(P2013−25948A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158202(P2011−158202)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】