説明

電池モジュール

【課題】電池モジュールの組み付けを容易にできるようにする。
【解決手段】電池ケース12の上面に一対の電極端子14を設けてなる単電池11を複数並べて構成される電池モジュールBMであって、単電池11の各電極端子14を隣の単電池11の電極端子14とともに締結して複数の単電池11を直列接続する複数の締結部材18,19と、単電池11の各電極端子14に接触する電圧検知端子23及びそれらの電圧検知端子23から導出された複数の電線22を備えた電圧検知用ハーネス21と、電圧検知用ハーネス21を保持する樹脂プロテクタ30と、樹脂プロテクタ30に設けられ電圧検知端子23間のピッチを調整可能にするピッチ調整手段34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド車等には、動力用の電池モジュールが搭載されており、基本的には、複数個の単電池が直列接続されてなる単電池群と、この単電池群における各単電池の出力電圧を測定するために、各単電池の電極端子に接続された電圧検知線とを備えて構成されている。その一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
このものは、隣り合う単電池の電極端子同士の接続をバスバーを渡すことによって行うようになっており、それらのバスバーを取り付ける際の便宜のために、各バスバーを所定の配置で樹脂プロテクタに保持し、併せて電圧検知線を同樹脂プロテクタに収容することで、単電池群に一括して装着される電池配線モジュールを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−49047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構造のものにおいて、単電池の数が増えればバスバーや電圧検知線の数も増えざるを得ないが、特にバスバーの数が増えることで同バスバーを収容する樹脂プロテクタの大型化が顕著となり、電池配線モジュールの大型化と重量増を招く。結果その取り扱いが難しくなり、ひいては電池モジュールの組み付けに手間が掛かることが懸念され、さらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、電池モジュールの組み付けを容易にできるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電池ケースの上面に一対の電極端子を設けてなる単電池を複数並べて構成される電池モジュールであって、前記単電池の各電極端子を隣の単電池の電極端子とともに締結して前記複数の単電池を直列接続する複数の締結部材と、前記単電池の前記各電極端子に接触する電圧検知端子及びそれらの電圧検知端子から導出された複数の電線を備えた電圧検知用ハーネスと、前記電圧検知用ハーネスを保持する樹脂プロテクタと、前記樹脂プロテクタに設けられ前記電圧検知端子間のピッチを調整可能にするピッチ調整手段と、を備えるところに特徴を有する。
【0006】
隣り合う単電池の電極端子同士を接続するのに両電極端子を締結部材で直接に締結するようにしたことで、電池接続部材としてのバスバーが不要にできる。そのため、単電池を並べたものに後付けされるいわゆる電池配線モジュールとしては、樹脂プロテクタに電圧検知用ハーネスを保持したものに限られ、小型で軽量に抑えられる。そのため取り扱いやすく、ひいては電池モジュールの組み付け作業を容易に行うことができる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記単電池の前記電極端子は、当該単電池の上面から立ち上がったのち隣の単電池側に向けて屈曲されたL型板状に形成され、隣り合う電極端子の屈曲部同士が重ねられて同重なり合った部分が前記締結部材で締結されている。2つの単電池を並べると、一の単電池の電極端子の屈曲部と隣の単電池の電極端子の屈曲部とが向き合いながら上下に重ねられ、その重なり合った部分が締結部材で締結される。
【0008】
(2)重ねられる両電極端子の下側の屈曲部にはスタッドボルトが立てられる一方、上側の屈曲部には前記スタッドボルトの挿通孔が開口され、同挿通孔を貫通したスタッドボルトの突出端にナットが螺合される構成となっている。
2つの単電池を並べる場合、スタッドボルトが立てられた電極端子に対し挿通孔が形成された電極端子をスタッドボルトに通して重ねるようにして、一方の単電池を他方の単電池の側面に沿って下動させることにより、両単電池が密接して並べられる。スタッドボルトにナットを螺合して締め付けることで両電極端子が接続される。隣り合う単電池を接続する作業が容易に行える。
【0009】
(3)前記電圧検知端子は、隣り合う電極端子同士を締結する際に共締めされることで電極端子に接触される。電圧検知端子を所定の電極端子に接触させる作業を容易に行うことができる。
【0010】
(4)前記樹脂プロテクタが、前記電圧検知用ハーネスを構成する複数の電線を収容する細長い電線収容部の一側縁に、前記電圧検知端子を個別に収容する端子収容部を所定間隔を開けて突出形成した形状になり、かつ前記電線収容部は前記端子収容部の間の位置ごとに分断されて各分断部分が伸縮可能なヒンジ部を介して接続されている。
ヒンジ部が伸縮しつつ端子収容部すなわち電圧検知端子間のピッチが調整され、樹脂プロテクタと、単電池が複数並んだ単電池群との取付誤差が吸収される。樹脂プロテクタが一体物として形成されているから、樹脂プロテクタ自体の組付作業が不要にでき、電池モジュールの組付作業の迅速化にさらに寄与し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池モジュールの組み付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの分解斜視図
【図2】単電池の斜視図
【図3】単電池群の正面図
【図4】電池配線モジュールの平面図
【図5】電池モジュールの斜視図
【図6】同平面図
【図7】同正面図
【図8】同右側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図8に基づいて説明する。
本実施形態に係る電池モジュールBMは、電気自動車またはハイブリッド自動車等の駆動源として使用される。電池モジュールBMは、図1に示すように、複数(本実施形態では10個)の単電池11が横並びに配置された単電池群10と、単電池群10に取り付けられて複数の単電池11を接続する2本の電池配線モジュール20とから構成されている。
【0014】
単電池11は、扁平な略直方体状をなすケース12の内部に発電要素が収容された構造であり、ケース12の上面における両端部寄りの位置には、一対の電極端子14が設けられている。
単電池11は、図2に示すように2種類が備えられており、一方の単電池11A(以下、第1単電池11A)では、同図の手前側が正極の電極端子14P、奥側が負極の電極端子14Nであり、他方の単電池11B(以下、第2単電池11B)では逆に、手前側が負極の電極端子14N、奥側が正極の電極端子14Pとなっている。
【0015】
電極端子14は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属板を所定形状に加工して形成されている。なお、ここでいう電極端子14とは、主として単電池11のケース12の上面から外側に突出している部分のことであり、各電極端子14の根元側は、ケース12内にある発電要素が備える電極(不図示)とそれぞれ接続されている。
【0016】
正極の電極端子14Pは、ケース12の上面における中央幅位置から所定寸法立ち上がったのち(立ち上がり部15P)、先端部が図2の右手前から視て左側に直角曲げされ(屈曲部16P)、同屈曲部16Pの先端が、単電池11のケース12の左側面から所定寸法(単電池11の厚さの半分弱)突出したL型に形成されている。
負極の電極端子14Nは、同じくケース12の上面における中央幅位置から所定寸法立ち上がったのち(立ち上がり部15N)、先端部が右側に直角曲げされ(屈曲部16N)、同屈曲部16Nの先端が、単電池11のケース12の右側面から同寸法突出したL型に形成されている。
【0017】
ここで、負極の電極端子14Nの立ち上がり部15Nの立ち上がり寸法の方が、正極の電極端子14Pの立ち上がり部15Pの立ち上がり寸法よりも、電極端子14の板厚分大きく、言い換えると、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの方が、正極の電極端子14Pの屈曲部16Pと比べて、電極端子14の板厚分だけ一段高い位置に形成されている。
正極の電極端子14Pの屈曲部16Pと負極の電極端子14Nの屈曲部16Nには、幅方向の中央部において、それぞれボルト挿通孔17(以下、単に挿通孔17)が開口されている。より詳細には、正極の電極端子14Pの屈曲部16Pにおける挿通孔17は、その中心が単電池11の左側面の位置と対応し、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nにおける挿通孔17は、その中心が単電池11の右側面の位置と対応する。
【0018】
したがって、図2に示された両単電池11A,11Bが側面同士を接触させて並べられると、第2単電池11Bの負極の電極端子14Nの屈曲部16Nと、第1単電池11Aの正極の電極端子14Pの屈曲部16Pとが上下に重ねられ、かつ挿通孔17同士が整合されるようになっている。
本実施形態では、各単電池11の正極の電極端子14Pについてスタッドボルト18が溶接により固定され、軸部18Bが屈曲部16Pの上面に突出している。なお、図1おける右奥に配される第1単電池11Aについては、負極の電極端子14Nについてもスタッドボルト18が固定されている。
スタッドボルト18の軸部18Bにはナット19(図6参照)が螺着されるようになっており、このスタッドボルト18とナット19により、本発明の締結部材が構成されている。
【0019】
次に、電池配線モジュール20を説明する。電池配線モジュール20は上記したように2本備えられており、電圧検知用ハーネス21と、これを収容して保持する樹脂プロテクタ30とから構成されている。
電圧検知用ハーネス21は、図4に示すように、端末に電圧検知端子23が接続された被覆電線22が複数本まとめられたものである。電圧検知端子23は、導電性に優れた金属板をプレス加工することで形成され、方形状をなす本体部24に中心孔25が開口され、同本体部24の後縁に設けられたバレル部26が被覆電線22の端末にかしめられて固定されている。
図1の手前側(図4の下側)の電池配線モジュール20Aに配される電圧検知用ハーネス21Aでは5本の被覆電線22が備えられ、図1の奥側(図4の上側)の電池配線モジュール20Bに配される電圧検知用ハーネス21Bでは6本の被覆電線22が備えられている。
【0020】
樹脂プロテクタ30は、電圧検知用ハーネス21を構成する複数本の被覆電線22を収容する細長い電線収容部31の一側壁に、電圧検知端子23を個別に収容する端子収容部35を複数個所定間隔を開けて突出形成した形状となっている。
図1の手前側(図4の下側)の樹脂プロテクタ30Aを例に採ると、電線収容部31はチャンネル状に形成されており、ただし同電線収容部31は、5個の同一長さの収容部ユニット32に分断され、所定間隔を開けて一列に並んで配されている。隣り合う収容部ユニット32における一方の側壁33の端縁同士の間には、余長吸収機能を果たすヒンジ部34が外方に向けて膨出形成されている。
【0021】
各収容部ユニット32における側壁33の長さ方向の中央部には、それぞれ端子収容部35が突出形成されている。端子収容部35は、電圧検知端子23の本体部24が緊密に嵌合される平面方形をなす本体部収容部36の基部側に、同電圧検知端子23のバレル部26が嵌められるバレル部収容部37が繋がって形成された形状である。
本体部収容部36の底板には、図1に示すように、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nを嵌めて逃がす逃がし溝38が形成されている。5個の端子収容部35は、後記するように、単電池11が横並びに組み付けられて単電池群10が形成された場合に、スタッドボルト18の配設ピッチと同じピッチを開けて形成されている。
【0022】
図1の奥側(図4の上側)の樹脂プロテクタ30Bは、電線収容部31の一側壁33に端子収容部35を複数個所定間隔を開けて突出形成した基本的な形状は同様であるが、電線収容部31を構成する収容部ユニット32、並びに端子収容部35がともに6個形成されている。
【0023】
次に、本実施形態の電池モジュールBMの組付手順の一例を説明する。
まず、図1及び図3に示すように、2種類の単電池11A,11Bが5個ずつ交互に横方向に重ねて並べられる。例えば、図1の一番奥の第1単電池11Aが組付台上に設置されたら、次の第2単電池11Bは、その手前側の負極の電極端子14Nにおける屈曲部16Nの挿通孔17を、第1単電池11Aの手前側の正極の電極端子14Pに立てられたスタッドボルト18に挿通しつつ、同第1単電池11Aの左側面に沿って下動させて左側に密接して並べる。
【0024】
続いて、第1単電池11Aが、奥側の負極の電極端子14Nにおける屈曲部16Nの挿通孔17を、第2単電池11Bの奥側の正極の電極端子14Pに立てられたスタッドボルト18に挿通しつつ、同第2単電池11Bの左側面に沿って下動させて左側に密接して並べる。
それ以降、上記と同様にして、負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの挿通孔17を、対応する正極の電極端子14Pの屈曲部16Pに立てられたスタッドボルト18に挿通しつつ、第2単電池11Bと第1単電池11Aとが交互に左側に並べられることで、単電池群10が形成される。
【0025】
このように形成された単電池群10では、上面における手前側の端縁に沿った位置の5箇所において、第1単電池11Aにおける正極の電極端子14Pの屈曲部16Pの上面に、第2単電池11Bにおける負極の電極端子14Nの屈曲部16Nが重ねられ、かつ負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの上面からスタッドボルト18の軸部18Bが突出した形態となる。
一方、奥側の端縁に沿った位置の中央の4箇所において、第2単電池11Bにおける正極の電極端子14Pの屈曲部16Pの上面に、第1単電池11Aにおける負極の電極端子14Nの屈曲部16Nが重ねられ、かつ負極の電極端子14Nの屈曲部16Nの上面からスタッドボルト18の軸部18Bが突出した形態となる。
なお、右端の第1単電池11Aの奥側の端部に設けられた負極の電極端子14Nは、正極の電極端子14Pと重なることなくその屈曲部16Nにスタッドボルト18が立てられ、また、左端の第2単電池11Bの奥側の端部に設けられた正極の電極端子14Pは、負極の電極端子14Nが重ねられることなく、単体でスタッドボルト18が立ち上げられた形態を採る。
【0026】
改めると、単電池群10の上面において、手前側の端縁に沿った位置では、正負の電極端子14P,14Nの重なり部分から立ち上げられた形態の5本のスタッドボルト18が一定ピッチで配設され、一方、奥側の端縁に沿った位置では、正負の電極端子14P,14Nの重なり部分から立ち上げられた形態の4本のスタッドボルト18と、正極の単体の電極端子14P並びに負極の単体の電極端子14Nからそれぞれ立ち上げられた2本のスタッドボルト18との合計6本のスタッドボルト18が上記と同じピッチで配設されている。ただし、手前側のスタッドボルト18と奥側のスタッドボルト18とは、単電池11の1枚分だけピッチがずれた千鳥状に配されている。
以上のように形成された単電池群10は、詳しくは図示しないが、保持板等の公知の固定手段により固定される。
【0027】
一方、樹脂プロテクタ30に対して電圧検知用ハーネス21が収容され、電池配線モジュール20が組み付けられる。両樹脂プロテクタ30A,30Bは、図4に示すように、端子収容部35が互いに対向した向きで平行に配される。
手前側の電池配線モジュール20Aでは、樹脂プロテクタ30Aにおける一番右の端子収容部35に対して対応する電圧検知端子23が収容されたのち、同電圧検知端子23を端末に接続した被覆電線22が、一番右の収容部ユニット32に引き出されたのち、同収容部ユニット32を通って同図の右側に引き出される。
【0028】
次に、右から二番目の端子収容部35に対して対応する電圧検知端子23が収容されたのち、接続された被覆電線22が二番目の収容部ユニット32に引き出されたのち、同収容部ユニット32、さらには一番右の収容部ユニット32を通って並んで同図の右側に引き出される。以降同様に、残りの端子収容部35に対して電圧検知端子23が収容されたのち、接続された被覆電線22が収容部ユニット32に引き出されたのち、それよりも右側にある収容部ユニット32を通って順次に右側に引き出される。
【0029】
これらの5本の被覆電線22の引き出された端部には、図示はしないがそれぞれ端子金具が設けられて、これらの端子金具が共通のコネクタに収容され、同コネクタが検知信号を演算処理する機能を備えたECUに接続されるようになっている。
以上により、樹脂プロテクタ30Aの5個の端子収容部35に対して電圧検知端子23が個別に収容され、それらから導出された5本の被覆電線22が、電線収容部31に並んで通されつつ引き出され、その引き出し端にコネクタが設けられてなる手前側の電池配線モジュール20Aの組み付けが完了する。
なお、図示はしないが、電線収容部31を構成する収容部ユニット32に、被覆電線22を軽く押さえて外れ止めする押さえ部を備えてもよい。
【0030】
奥側の電池配線モジュール20Bについても、上記と同じ要領で、樹脂プロテクタ30Bの右端の端子収容部35から順次に電圧検知端子23が収容されたのち、被覆電線22が収容部ユニット32に引き出されたのちそれよりも右側にある収容部ユニット32を通って順次に右側に引き出されることが繰り返され、同様に共通のコネクタに接続される。
すなわち、樹脂プロテクタ30Bの6個の端子収容部35に対して電圧検知端子23が個別に収容され、それらから導出された6本の被覆電線22が、電線収容部31に並んで通されつつ引き出され、その引き出し端にコネクタが設けられてなる奥側の電池配線モジュール20Bの組み付けが完了する。
【0031】
以上のように形成された各電池配線モジュール20A,20Bが、図1に示すように、単電池群10の上面の手前側と奥側の電極端子14の列に被せられる。
詳細には、手前側の電池配線モジュール20Aでは、樹脂プロテクタ30Aにおける5個の端子収容部35が、対応するスタッドボルト18に嵌められ、スタッドボルト18が電圧検知端子23の中心孔25に挿通され、また、重なった電極端子14P,14Nのうち負極の屈曲部16Nが、底板の逃がし溝38に嵌りつつ同屈曲部16N上に電圧検知端子23が載せられる。
【0032】
一方、奥側の電池配線モジュール20Bでは、樹脂プロテクタ30Bにおける6個の端子収容部35が、対応するスタッドボルト18に嵌められ、スタッドボルト18が電圧検知端子23の中心孔25に挿通される。ここで、中央の4個の端子収容部35では、重なった電極端子14P,14Nのうち負極の屈曲部16Nが、底板の逃がし溝38に嵌りつつ同屈曲部16N上に電圧検知端子23が載せられる。右端の端子収容部35では、電圧検知端子23が、単体である負極の電極端子14Nの屈曲部16Nに載せられる。左端の端子収容部35では、電圧検知端子23が、単体である正極の電極端子14Pの屈曲部16Pの上方に対向する。
【0033】
このように、両電池配線モジュール20A,20Bが手前側と奥側の電極端子14の列に被せられたら、図6に示すように、各端子収容部35内において負極の電極端子14Nの屈曲部16N(一部のみ正極の電極端子14Pの屈曲部16P)の上方に突出したスタッドボルト18の軸部18Bの先端にそれぞれナット19が螺合され、図示しない工具を利用して締め付けられる。
【0034】
これにより、手前側の5箇所の電極端子14の配設箇所と、奥側における中央の4箇所の電極端子14の配設箇所では、電圧検知端子23並びに負極と正極の電極端子14N,14Pの屈曲部16N,16Pの3枚が上下に重なった形態で、スタッドボルト18の頭部18Aとナット19とによって挟み付けられる。また、奥側の右端では、電圧検知端子23と負極の電極端子14Nの屈曲部16Nとが重なってナット19とスタッドボルト18の頭部18Aとで挟み付けられ、左端では、電圧検知端子23と正極の電極端子14Pの屈曲部16Pとが重なってナット19とスタッドボルト18の頭部18Aとで挟み付けられる。
なお、電池配線モジュール20A,20Bが被着された単電池群10の上面には、図示しないカバーが被せられて覆われる。
【0035】
以上のように電池モジュールBMが組み付けられると、単電池群10を構成する各単電池11の出力電圧を検知する電圧検知回路が構成される。
上記の電池配線モジュール20A,20Bを組み付ける際、被覆電線22が適宜に屈曲しながらヒンジ部34が伸縮して隣り合う収容部ユニット32の間隔が変化しつつ樹脂プロテクタ30A,30Bの長さが調整され、単電池群10との取付誤差が吸収される。
【0036】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
隣り合う単電池11の電極端子14同士を接続するのに、両電極端子14をスタッドボルト18とナット19で直接に締結するようにしたことで、電池接続部材としてのバスバーが不要にできる。そのため、単電池11を並べた単電池群10に後付けされる電池配線モジュール20としては、樹脂プロテクタ30に電圧検知用ハーネス21を保持したものに限ることができ、小型で軽量に抑えられる。そのため取り扱いやすく、ひいては電池モジュールBMの組み付け作業を容易に行うことができる。
【0037】
隣り合う単電池11の電極端子14を接続する部分の構造が、両電極端子14P,14NがL型に形成されて屈曲部16P,16N同士が重ねられ、同重なり合った部分が上記したスタッドボルト18とナット19で締結されるようになっているから、隣り合う単電池11を接続する作業が容易に行える。
また、電圧検知用ハーネス21を構成する電圧検知端子23が、隣り合う電極端子14同士を締結する際に共締めされることで電極端子14に接触されるようになっているから、電圧検知端子23を所定の電極端子14に接触させる作業も容易に行える。
【0038】
本実施形態の樹脂プロテクタ30は、分断された収容部ユニット32がヒンジ部34を介して繋がった形態で電線収容部31が形成された構造となっていて、ヒンジ部34が伸縮しつつ端子収容部35すなわち電圧検知端子23間のピッチが調整され、樹脂プロテクタ30と、単電池11が複数並んだ単電池群10との取付誤差が吸収される。樹脂プロテクタ30が一体物として形成されているから、樹脂プロテクタ30自体の組付作業が不要にでき、電池モジュールBMの組付作業の迅速化にさらに寄与することができる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)正負の電極端子の締結の態様としては、重ねられる下側の屈曲部の下面にナットを溶接等で固定し、上側の屈曲部に挿通したボルトをナットに螺合して締め付けるようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、正負の電極端子を上下に重ねるようにしたが、縦向きの重ね合わせ部を備えて、同重ね合わせ部分を横向きにしたボルト・ナットで締結するようにしてもよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、電圧検知用ハーネスを構成する電圧検知端子を、締結される電極端子と共締めすることにより所定の電極端子と接触させるようにしたが、電圧検知端子を、電極端子と共締めすることとは別の手段により所定の電極端子に接触させる構造を採用してもよい。
(4)上記実施形態では電池配線モジュールを2本備えたが、樹脂プロテクタの端部同士を連結する等により、電池配線モジュールを単一部材として備えるようにしてもよい。
【0041】
(5)上記実施形態では、樹脂プロテクタにおける電線収容部を複数の収容部ユニットに分断して、分断された各収容部ユニットを一体的に設けられたヒンジ部で繋いだ構造とすることによりピッチ調整手段を構成したのであるが、他の手段として、各収容部ユニットは別体として形成し、隣り合う収容部ユニット同士を連結部を介して接離可能に連結する構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
BM…電池モジュール
10…単電池群
11,11A,11B…単電池
12…ケース(電池ケース)
14,14P,14N…電極端子
16P,16N…屈曲部
17…挿通孔
18…スタッドボルト(締結部材)
19…ナット(締結部材)
20,20A,20B…電池配線モジュール
21,21A,21B…電圧検知用ハーネス
22…被覆電線(電線)
23…電圧検知端子
30,30A,30B…樹脂プロテクタ
31…電線収容部
32…収容部ユニット(分断部分)
34…ヒンジ部(ピッチ調整手段)
35…端子収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースの上面に一対の電極端子を設けてなる単電池を複数並べて構成される電池モジュールであって、
前記単電池の各電極端子を隣の単電池の電極端子とともに締結して前記複数の単電池を直列接続する複数の締結部材と、
前記単電池の前記各電極端子に接触する電圧検知端子及びそれらの電圧検知端子から導出された複数の電線を備えた電圧検知用ハーネスと、
前記電圧検知用ハーネスを保持する樹脂プロテクタと、
前記樹脂プロテクタに設けられ前記電圧検知端子間のピッチを調整可能にするピッチ調整手段と、
を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記単電池の前記電極端子は、当該単電池の上面から立ち上がったのち隣の単電池側に向けて屈曲されたL型板状に形成され、隣り合う電極端子の屈曲部同士が重ねられて同重なり合った部分が前記締結部材で締結されていることを特徴とする請求項1記載の電池モジュール。
【請求項3】
重ねられる両電極端子の下側の屈曲部にはスタッドボルトが立てられる一方、上側の屈曲部には前記スタッドボルトの挿通孔が開口され、同挿通孔を貫通したスタッドボルトの突出端にナットが螺合される構成となっていることを特徴とする請求項2記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記電圧検知端子は、隣り合う電極端子同士を締結する際に共締めされることで電極端子に接触されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記樹脂プロテクタが、前記電圧検知用ハーネスを構成する複数の電線を収容する細長い電線収容部の一側縁に、前記電圧検知端子を個別に収容する端子収容部を所定間隔を開けて突出形成した形状になり、かつ前記電線収容部は前記端子収容部の間の位置ごとに分断されて各分断部分が伸縮可能なヒンジ部を介して接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−33635(P2013−33635A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169144(P2011−169144)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】