説明

電池劣化判定装置および電池劣化判定方法

【課題】内部抵抗の算出を電池パック毎に行うことなく、各電池パックの劣化を判定することができる電池劣化判定装置および電池劣化判定方法を提供すること。
【解決手段】内部抵抗算出部81は、電池パック1−1〜1−nのうち電池パック1−1の内部抵抗を算出する。内部抵抗推定部82は、内部抵抗算出部81にて算出された内部抵抗と、各電池ECU2から入力された電流積算値の比とを基に、電池パック1−2〜1−nの内部抵抗をそれぞれ推定する。劣化判定部83は、内部抵抗算出部81にて算出された内部抵抗と、内部抵抗推定部82にて推定された内部抵抗とを基に、電池パック1−1〜1−nのそれぞれが劣化しているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定装置および電池劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池が直列に接続されてなる電池パック(「組電池」ともいう)が並列に複数接続され、各電池パックには電池ECU(Electric Control Unit:電子制御装置)がそれぞれ設けられる構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ところで、電池パックの劣化(寿命)を判定する場合には、電池パック毎に所定の演算が行われる。すなわち、例えば図1に示すように、測定された電圧と電流を基に最小二乗法により近似直線が算出され、この近似直線の傾きから内部抵抗が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記演算、すなわち最小二乗法を用いた内部抵抗の算出を電池パック毎に行うと、以下の問題がある。
【0006】
上記演算では大量のデータを扱う必要がある。よって、電池パック毎に上記演算を行うとなると、演算を行うECUに対して高い処理能力が求められる。従って、ECUの構成を簡素化することが難しい、という問題がある。
【0007】
また、上記演算ではある程度充電又は放電しないと内部抵抗を算出できないため、SOC(State Of Charge:充電量)がずれていき、近似直線の傾きに誤差が入りやすくなる。よって、電池パック毎に上記演算を行っていくとさらに誤差要因が多くなってしまい、電池パック間における相対的な劣化の度合いを正確に掴めない、という問題がある。
【0008】
本発明の目的は、内部抵抗の算出を電池パック毎に行うことなく、各電池パックの劣化を判定することができる電池劣化判定装置および電池劣化判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様としての電池劣化度判定装置は、並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定装置であって、前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パックのうちいずれか1つの内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記内部抵抗算出部で内部抵抗が算出された電池パック以外の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定部と、前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗と、前記内部抵抗推定部で推定された内部抵抗とを基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定部と、を具備する構成を採る。
【0010】
本発明の第2の態様としての電池劣化度判定装置は、並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定装置であって、前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パック全体の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記複数の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定部と、前記内部抵抗推定部で推定された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定部と、を具備する構成を採る。
【0011】
本発明の第3の態様としての電池劣化度判定方法は、並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定方法であって、前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パックのうちいずれか1つの内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップと、前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記内部抵抗算出ステップで内部抵抗が算出された電池パック以外の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定ステップと、前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗と、前記内部抵抗推定ステップで推定された内部抵抗とを基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定ステップと、を含む構成を採る。
【0012】
本発明の第4の態様としての電池劣化度判定方法は、並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定方法であって、前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パック全体の内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップと、前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記複数の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定ステップと、前記内部抵抗推定ステップで推定された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定ステップと、を含む構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部抵抗の算出を電池パック毎に行うことなく、各電池パックの劣化を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】最小二乗法により算出された近似直線とその傾きの例を示す図
【図2】本発明の実施の形態における電池劣化判定システムの構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態に係る電池劣化判定システムの動作例1を示すフロー図
【図4】本発明の実施の形態に係る電池劣化判定システムの動作例2を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態)
<電池制御装置の構成>
まず、本発明の実施の形態における、電池劣化判定装置を含む電池劣化判定システムの構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態における電池劣化判定システム100の構成例を示すブロック図である。
【0017】
電池劣化判定システム100は、第1〜第nの電池パック1−1〜1−n、充電器5、インバータ6、モータ7、電源ECU8を有する。これらは、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)またはPEV(Pure Electric Vehicle)といった電気自動車(図示せず)の電源系統(以下、単に「電源系統」という)を構成している。
【0018】
第1〜第nの電池パック1−1〜1−nは、複数の単電池(例えばリチウムイオン2次電池)が直列に接続されてなる電池である。第1〜第nの電池パック1−1〜1−nは、電源系統に並列に接続されており、電気自動車を駆動するための電力を蓄積する。電池パック1−1〜1−nはそれぞれ、電池ECU2−1〜2−nを備えている。
【0019】
電池ECU2−1〜2−nは、対応する電池パック1の電圧、電流および温度を、充電中又は放電中に測定する。また、電池ECU2−1〜2−nは、電圧、電流および温度の測定結果から、対応する電池パックのSOCを演算(推定)する。そして、電池ECU2−1〜2−nは、測定した電圧、電流、温度、及び、演算したSOCを電源ECU8へ送出する。電流については、測定された結果を示す値(以下、「測定値そのもの」または「測定値自体」という)の他に、電池ECU2−1〜2−n毎に、充電電流又は放電電流の絶対値が積算され、その積算結果(以下、「電流積算値」という)が電源ECU8へ出力される。なお、電圧、電流、温度の測定については、それぞれ所定のセンサを用いるとする。
【0020】
各電池パック1と電気系統の他の部分との間には、電池パック1毎に、リレー4が挿入されている。
【0021】
充電器5は、第1〜第nの電池パック1−1〜1−nに対し充電を行う。
【0022】
インバータ6は、第1〜第nの電池パック1−1〜1−nの直流電流を、三相交流電流に変換してモータ7へ供給する。
【0023】
モータ7は、三相交流モータであり、インバータ6から供給される三相交流電流により、例えば電気自動車のホイールを駆動する。
【0024】
電源ECU8は、電池ECU2−1〜2−nと接続されており、各電池ECU2から入力された電圧、電流(測定値そのもの、および、電流積算値)、温度、SOCを基に、各電池パック1の劣化度を判定する。すなわち、電源ECU8は、本発明の電池劣化判定装置の一実施形態ということができる。
【0025】
電源ECU8は、内部抵抗算出部81、内部抵抗推定部82、劣化判定部83、を有する。なお、図示していないが、電源ECU8は、電池パック1毎に、リレー4のオンオフを制御することにより、電池パック1と電気系統の他の部分との間の接続状態を制御する接続状態制御部も有する。
【0026】
内部抵抗算出部81は、電池パック1−1〜1−nのうちのいずれか1つの内部抵抗を算出する(後述する動作例1の場合)、あるいは、電池パック1−1〜1−n全体の内部抵抗を算出する(後述する動作例2の場合)。すなわち、内部抵抗算出部81は、例えば図1に示すように、入力された電圧と電流(測定値そのもの)を基に最小二乗法により近似直線(例えば、一次関数)を算出し、この近似直線の傾きから内部抵抗を算出する。ただし、内部抵抗の算出は1つの電池パックのみであり、従来のように複数の電池パック毎に内部抵抗を算出することはない。
【0027】
内部抵抗推定部82は、各電池ECU2から入力された電池パック1−1〜1−nの各充電電流または/および各放電電流の電流積算値に基づいて、電流積算値の大きさの比を算出する、そして、内部抵抗推定部82は、算出した比と、内部抵抗算出部81にて算出された内部抵抗とに基づいて、電池パック1−1〜1−nの内部抵抗をそれぞれ推定する。この推定の詳細については、動作例1、2にてそれぞれ後述する。
【0028】
劣化判定部83は、電池パック1−1〜1−n毎に、劣化しているか否かを判定する。この判定にあたり、劣化判定部83は、内部抵抗推定部82で推定された内部抵抗(動作例1の場合、内部抵抗算出部81により算出された内部抵抗も含む)と、予め定められた判定値とを比較する。劣化判定部83は、例えば、推定された内部抵抗が判定値より大きい場合、電池パックが劣化していると判定する一方、推定された内部抵抗が判定値以下である場合、電池パックは劣化していないと判定する。そして、劣化判定部83は、判定結果を示す情報を、例えば、図示しない情報出力装置へ出力する。
【0029】
上記判定値は、抵抗値テーブル9に予め定義されている。抵抗値テーブル9では、温度及びSOCに応じて、予め測定された組電池の抵抗値が定義されている(例えば、特許文献1の表1及び表2)。劣化判定部83は、この抵抗値テーブル9から、入力された温度及びSOCに該当する抵抗値を特定し、特定した抵抗値を判定値として読み出す。例えば、電池パック1−1の劣化を判定する場合、劣化判定部83は、電池ECU2−1から入力された温度及びSOCに応じた抵抗値を抵抗値テーブル9から読み出し、読み出した抵抗値を判定値として使用する。
【0030】
なお、抵抗値テーブル9は、電源ECU8内の不揮発性メモリ(図示せず)又は電源ECU8外の不揮発性メモリ(図示せず)のいずれに記憶されていてもよい。
【0031】
次に、以上のように構成された電池劣化判定システムの動作例1、2についてそれぞれ説明する。
【0032】
<電池劣化判定システム100の動作例1>
図3は、電池劣化判定システム100の動作例1を示すフロー図である。
【0033】
まず、各電池パック1の充電中又は放電中において、各電池ECU2は、対応する電池パック1の電圧、電流および温度を測定するとともに、それらの測定結果を基にSOCを推定し、電圧、電流および温度の測定結果とSOCの推定結果とを電源ECU8へ出力する(ステップS1)。なお、電流については、上述したように、各電池ECU2が電流の絶対値を積算した値(電流積算値)と、電流の測定値そのものとなる。電流積算値は、後述するステップS3における内部抵抗の推定に用いられ、電流の測定値そのものは、後述するステップS2における内部抵抗の算出に用いられる。
【0034】
次に、電源ECU8において、内部抵抗算出部81は、電池パック1−1〜1−nのうちいずれか1つの電池パックの内部抵抗を算出する(ステップS2)。例えば、電池パック1−1の内部抵抗を算出するように予め定められている場合、内部抵抗算出部81は、電池ECU2−1から入力された電圧及び電流(電圧と電流の測定値自体)に基づいて、最小二乗法により近似直線を算出し、この近似直線の傾きから内部抵抗を算出する。
【0035】
次に、電源ECU8において、内部抵抗推定部82は、内部抵抗算出部81にて内部抵抗を算出した電池パック以外の各電池パックの内部抵抗を推定する(ステップS3)。例えば、ステップS2において電池パック1−1の内部抵抗が算出された場合、内部抵抗推定部82は、電池パック1−1以外の電池パック、すなわち電池パック1−2〜1−nの内部抵抗を推定する。
【0036】
ここで、内部抵抗の推定の具体例について説明する。例として、内部抵抗算出部81が電池パック1−1の内部抵抗を算出した後で、内部抵抗推定部82が電池パック1−2の内部抵抗を推定する場合とする。
【0037】
まず、内部抵抗推定部82は、電池ECU2−1から入力された電流積算値(電池パック1−1の電流積算値)と電池ECU2−2から入力された電流積算値(電池パック1−2の電流積算値)の大きさの比(以下、「電流比」という)を算出する。
【0038】
次に、内部抵抗推定部82は、算出した電流比と、予め算出された電池パック1−1の内部抵抗とに基づいて、電池パック1−2の内部抵抗を算出する。例えば、算出した電流比が(電池パック1−1の電流):(電池パック1−2の電流)=1:2である場合、内部抵抗推定部82は、電池パック1−2の内部抵抗を、電池パック1−1の内部抵抗が電流比に反比例するように算出することで推定する。すなわち上記の場合、内部抵抗推定部82は、電池パック1−1の内部抵抗の1/2を算出する。この算出結果が、電池パック1−2の内部抵抗として使用されることになる。
【0039】
なお、上記内部抵抗の推定の具体例では、電流比に反比例するようにして内部抵抗を推定する例としたが、反比例に限定されない。
【0040】
以上のようにして電池パック1−2〜1−nの内部抵抗が推定された後、電源ECU8において、劣化判定部83は、電池パック1−1〜1−nのそれぞれについて、劣化しているか否かを判定する(ステップS4〜S9)。この判定は、例えば、電池パック1−1から順番に行われる。
【0041】
ここで、電池パックの劣化判定の具体例について説明する。例として、電池パック1−1を判定する場合とする。
【0042】
まず、劣化判定部83は、電池ECU2−1から入力された温度及びSOCを基に抵抗値テーブル9から判定値を特定して読み出す(ステップS5)。
【0043】
次に、劣化判定部83は、電池パック1−1の内部抵抗と、読み出した判定値とを比較する(ステップS6)。ここでいう電池パック1−1の内部抵抗は、予め内部抵抗算出部81にて算出された値(抵抗値)である。
【0044】
ステップS6の比較の結果、電池パック1−1の内部抵抗(抵抗値)が判定値よりも大きい場合(ステップS6/Yes)、劣化判定部83は、電池パック1−1が劣化していると判定し、劣化フラグをオンにする(ステップS7)。この判定結果(劣化フラグオン)は、図示しない情報出力装置等に出力される。
【0045】
ステップS6の比較の結果、電池パック1−1の内部抵抗(抵抗値)が判定値以下である場合(ステップS6/No)、劣化判定部83は、電池パック1−1が劣化していないと判定し、劣化フラグをオフにする(ステップS8)。この判定結果(劣化フラグオフ)は、図示しない情報出力装置等に出力される。
【0046】
このようにして電池パック1−1に対する判定が終了すると、劣化判定部83は、次の電池パック2−1に対しての判定を開始する(ステップS5〜S9)。なお、電池パック1−2〜1−nに対する判定では、ステップS6での比較に用いられる内部抵抗は、予め内部抵抗推定部82にて推定された値である。
【0047】
以上説明したように、本動作例1によれば、複数ある電池パックのうち一の電池パックについてのみ最小二乗法を用いた内部抵抗の算出を行い、その他の電池パックの内部抵抗については、各電池パックにおける電流比と、算出した一の電池パックの内部抵抗とを基に推定するようにしている。よって、本動作例1によれば、従来のように電池パック毎に最小二乗法を用いた内部抵抗の算出を行うことなく、各電池パックの劣化の判定を行うことができる。
【0048】
なお、上記動作例1では、ステップS6において、「電池パックの抵抗値>判定値」として説明したが、「電池パックの抵抗値≧判定値」としてもよい。
【0049】
<電池劣化判定システム100の動作例2>
図4は、電池劣化判定システム100の動作例2を示すフロー図である。図4のフローは、基本的に図3のフローと同じであり、図3のステップS2、S3がステップS12、S13となっている点が異なる。よって、以下では、ステップS12、S13について詳細を説明し、その他のステップの詳細については説明を省略する。
【0050】
動作例1で説明したように、まず、各電池ECU2は、各電池パック1の充電中又は放電中において、対応する電池パック1の電圧、電流および温度を測定するとともに、それらの測定結果を基にSOCを推定し、電圧、電流および温度の測定結果とSOCの推定結果とを電源ECU8へ出力する(ステップS1)。ここでも、電流については、各電池ECU2が電流の絶対値を積算した値(電流積算値)と、電流の測定値そのものとなる。電流積算値は、後述するステップS13における内部抵抗の推定に用いられ、電流の測定値そのものは、後述するステップS12における内部抵抗の算出に用いられる。
【0051】
次に、電源ECU8において、内部抵抗算出部81は、電池パック1−1〜1−n全体の内部抵抗を算出する(ステップS12)。すなわち、内部抵抗算出部81は、まず、電池ECU2−1〜2−nから入力された電圧及び電流(電圧と電流の測定値自体)をそれぞれ合計する。そして、内部抵抗算出部81は、合計した電圧及び合計した電流に基づいて、最小二乗法により近似直線を算出し、この近似直線の傾きから内部抵抗(電池パック1全体の内部抵抗)を算出する。
【0052】
次に、電源ECU8において、内部抵抗推定部82は、各電池パック1の内部抵抗を推定する(ステップS13)。すなわち、内部抵抗推定部82は、電池パック1−1〜1−nの内部抵抗を推定する。
【0053】
ここで、内部抵抗の推定の具体例について説明する。
【0054】
まず、内部抵抗推定部82は、電池ECU2−1〜2−nから入力された電流積算値の大きさの比(以下、「電流比」という)を算出する。
【0055】
次に、内部抵抗推定部82は、算出した電流比と、予め算出された電池パック1全体の内部抵抗とに基づいて、電池パック1−1〜1−nの内部抵抗を算出する。例えば、内部抵抗推定部82は、電池パック1全体の内部抵抗を、算出した電流比に反比例するように分配することで推定する。この分配結果が、電池パック1−1〜1−nの内部抵抗として使用されることになる。なお、ここでは、電流比に反比例するようにして内部抵抗を推定する例としたが、反比例に限定されない。
【0056】
その後、動作例1で説明したように、劣化判定部83による劣化の判定が各電池パック1に対して行われる(ステップS4〜S9)。なお、図4のステップS6における電池パック1−1〜1−nに対する判定では、ステップS6での比較に用いられる内部抵抗は、予め内部抵抗推定部82にて推定された値である。
【0057】
以上説明したように、本動作例2によれば、複数ある電池パックを一まとめとした電池パック全体についてのみ最小二乗法を用いた内部抵抗の算出を行い、各電池パックの内部抵抗については、各電池パックにおける電流比と、算出した電池パック全体の内部抵抗とを基に推定するようにしている。よって、本動作例2によれば、従来のように電池パック毎に最小二乗法を用いた内部抵抗の算出を行うことなく、各電池パックの劣化の判定を行うことができる。
【0058】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、動作例1又は動作例2のいずれであっても、従来のように最小二乗法を用いた内部抵抗の算出を電池パック毎に行うことなく、各電池パックの劣化を判定することができる。
【0059】
従って、各電池ECUの構成を簡素化することができ、また、電池パック間における相対的な劣化の度合いを正確に掴むことができる。
【0060】
なお、本実施の形態において、放電時よりも充電時に各電池パックの内部抵抗の推定を行う方が、正確に電池パックの劣化を判定することができるのでより好ましい。充電時は、放電時に比べ、各電池パックに接続される負荷(充電器)の出力変化が少なく、並列に接続される各電池パックに流れる電流の変化が少なく、正確な比較ができるからである。一方、出力変化が大きい時に電流を比較すると、数m秒の差で電流が変わってしまうので、電流取得タイミング(数十から数百Hz)の違いにより正確な比較がしにくい。
【0061】
<本実施の形態の変形例>
なお、上記本実施の形態では、電池劣化判定装置を電気自動車のECUに適用した場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、本実施の形態の電池劣化度判定装置は、複数の電池パックを並列に接続した構成において、各電池パックの劣化を判定する、各種の装置またはシステムに適用することができる。
【0062】
また、上記本実施の形態の電池劣化判定装置における処理動作は、ハードウェアで実現するだけでなく、ソフトウェアとの組み合わせで、あるいは、ソフトウェアのみで実現するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、複数の電池パックを並列に接続した構成において各電池パックの劣化を判定する、装置、システム、方式および方法全般に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 電池パック
2 電池ECU
4 リレー
5 充電器
6 インバータ
7 モータ
8 電源ECU
9 抵抗値テーブル
81 内部抵抗算出部
82 内部抵抗推定部
83 劣化判定部
100 電池劣化判定システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定装置であって、
前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パックのうちいずれか1つの内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記内部抵抗算出部で内部抵抗が算出された電池パック以外の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定部と、
前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗と、前記内部抵抗推定部で推定された内部抵抗とを基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定部と、
を具備する電池劣化判定装置。
【請求項2】
前記内部抵抗推定部は、
前記複数の電池パックの各充電電流または/および各放電電流の絶対値が積算された値に基づき各電池パックの電流の大きさを得る、
請求項1記載の電池劣化判定装置。
【請求項3】
前記内部抵抗推定部は、
前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックの電流の大きさの比に反比例するように算出することで、前記内部抵抗算出部で内部抵抗が算出された電池パック以外の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する、
請求項1または2記載の電池劣化判定装置。
【請求項4】
並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定装置であって、
前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パック全体の内部抵抗を算出する内部抵抗算出部と、
前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記複数の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定部と、
前記内部抵抗推定部で推定された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定部と、
を具備する電池劣化判定装置。
【請求項5】
前記内部抵抗推定部は、
前記複数の電池パックの各充電電流または/および各放電電流の絶対値が積算された値に基づき各電池パックの電流の大きさを得る、
請求項4記載の電池劣化判定装置。
【請求項6】
前記内部抵抗推定部は、
前記内部抵抗算出部で算出された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックの電流の大きさの比に反比例するように算出することで、前記複数の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する、
請求項4または5記載の電池劣化判定装置。
【請求項7】
並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定方法であって、
前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パックのうちいずれか1つの内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップと、
前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記内部抵抗算出ステップで内部抵抗が算出された電池パック以外の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定ステップと、
前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗と、前記内部抵抗推定ステップで推定された内部抵抗とを基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定ステップと、
を含む電池劣化判定方法。
【請求項8】
前記内部抵抗推定ステップは、
前記複数の電池パックの各充電電流または/および各放電電流の絶対値が積算された値に基づき各電池パックの電流の大きさを得る、
請求項7記載の電池劣化判定方法。
【請求項9】
前記内部抵抗推定ステップは、
前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックの電流の大きさの比に反比例するように算出することで、前記内部抵抗算出ステップで内部抵抗が算出された電池パック以外の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する、
請求項7又は8記載の電池劣化判定方法。
【請求項10】
並列に接続された複数の電池パックの劣化を判定する電池劣化判定方法であって、
前記複数の電池パック毎に測定された電圧及び電流を基に、前記複数の電池パック全体の内部抵抗を算出する内部抵抗算出ステップと、
前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗と、前記複数の電池パックの電流の大きさの比とを基に、前記複数の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する内部抵抗推定ステップと、
前記内部抵抗推定ステップで推定された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックのそれぞれが劣化しているか否かを判定する劣化判定ステップと、
を含む電池劣化判定方法。
【請求項11】
前記内部抵抗推定ステップは、
前記複数の電池パックの各充電電流または/および各放電電流の絶対値が積算された値に基づき各電池パックの電流の大きさを得る、
請求項10記載の電池劣化判定方法。
【請求項12】
前記内部抵抗推定ステップは、前記内部抵抗算出ステップで算出された内部抵抗を基に、前記複数の電池パックの電流の大きさの比に反比例するように算出することで、前記複数の電池パックの内部抵抗をそれぞれ推定する、
請求項10または11記載の電池劣化判定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96785(P2013−96785A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238550(P2011−238550)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】