説明

電池用電極

【課題】活物質の膨張・収縮が起きたとしても、電極における変形やクラック発生などを抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させうる手段を提供する。
【解決手段】体積膨張率が5%以上である活物質2、天然グラファイト、人造グラファイト、リチウムと合金化する金属、リチウムと合金化する金属を含む化合物、およびリチウムを含む合金等と、導電助剤、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、および炭素繊維等と、第1バインダ3と、を含む二次粒子4および前記第1バインダの弾性率と異なる弾性率を有する第2バインダ5を含み、空隙率が18〜70%である、電池用電極1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極に関する。さらに詳細には、本発明は、活物質の膨張・収縮が起きたとしても、電極における変形やクラック発生などを抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させうる電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0005】
従来、リチウムイオン二次電池の負極には充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素・黒鉛系材料が用いられてきた。しかし、炭素・黒鉛系の負極材料ではリチウムイオンの黒鉛結晶中への吸蔵・放出により充放電がなされるため、最大リチウム導入化合物であるLiCから得られる理論容量372mAh/g以上の充放電容量が得られないという欠点がある。このため、炭素・黒鉛系負極材料で車両用途の実用化レベルを満足する容量、エネルギー密度を得るのは困難であると予想される。
【0006】
これに対し、負極にリチウムと合金化する材料を用いた電池は、従来の炭素・黒鉛系負極材料と比較しエネルギー密度が向上するため、車両用途における負極材料として期待されている。例えば、Si材料は、充放電において下記反応式(1)のように1molあたり4.4molのリチウムイオンを吸蔵放出し、Li22Siにおいては2000mAh/g程度もの理論容量を有する。
【0007】
【化1】

【0008】
しかし、負極にリチウムと合金化する材料を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電時の正極および負極の膨張収縮が大きい。例えば、リチウムイオンを吸蔵した場合の体積膨張は、黒鉛では約1.2倍であるのに対し、Si材料では約4倍にも達する。このような膨張収縮により、電極に応力集中が起こりクラックなどが発生し電極の劣化が劣化する問題がある。
【0009】
このような問題に対し、例えば、金属箔からなる負極集電体の上に、リチウムと反応しない導電性中間層を形成する。この導電性中間層の上にケイ素および/またはケイ素合金を含む負極活物質とバインダである弾性率の高いポリイミドとを含む負極層を形成している。したがって、負極層の変形を抑制し、負極層の密着性を向上させて、サイクル特性の向上を図っている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−269242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、弾性率の高いバインダで活物質粒子を結着し負極層の変形を抑制しているため、放電時に活物質が収縮すると粒子が乖離して負極層でクラックが発生する可能性がある。
【0011】
そこで本発明は、活物質の膨張・収縮が起きたとしても、電極における変形やクラック発生などを抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、活物質、導電助剤、およびバインダを造粒などの手段によりあらかじめ二次粒子とし、かつ電極の空隙率を所定の値とすることにより、活物質の膨張・収縮が起きたとしても、電極における変形、クラック発生、または破壊などを抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させることができることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、体積膨張率が5%以上である活物質と、導電助剤と、第1バインダと、を含む二次粒子および前記第1バインダの弾性率と異なる弾性率を有する第2バインダを含み、空隙率が18〜70%である、電池用電極である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性率の大きいバインダにより、粒子間の結着力を高めると共に、弾性率の小さいバインダによって、粒子間に発生する力を緩和することができる。したがって、活物質の膨張・収縮が起きたとしても、電極における変形、クラック発生などを抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させうる電池用電極が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0016】
(構成)
本発明は、体積膨張率が5%以上である活物質、導電助剤、および第1バインダを含む二次粒子と、前記第1バインダの弾性率と異なる弾性率を有する第2バインダと、を含み、空隙率が18〜70%である、電池用電極である。
【0017】
図1は、活物質、導電助剤、および第1バインダを含む二次粒子と、第2バインダとを含む本発明の電池用電極1を表した概略図である。なお、本発明においては、説明の都合上、図面が誇張されており、本発明の技術的範囲は、図面に掲示する形態に限定されない。また、図面以外の形態も採用されうる。
【0018】
活物質2および導電助剤(図示せず)を、第1バインダ3の存在下、スプレードライヤーなどの装置を用いて造粒を行い、本発明の電極に用いられる二次粒子4を得る。この二次粒子4と第2バインダ5とを含むスラリーを金属箔6の表面上に塗布し、乾燥・プレスを行えば、第2バインダ5によって二次粒子4同士が互いに結着している活物質層7が形成され、二次電池の電極となる。このような二次粒子4を含み、かつ所定の空隙率を有する電極1を用いることにより、活物質の膨張・収縮に起因する電極の変形、クラックの発生、または破壊などを抑制することができ、電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0019】
本発明において、前記第1バインダの弾性率と前記第2バインダの弾性率とは、異なる値を有する。また、本発明の電池用電極の空隙率は、18〜70%である。このような電極の構成とすることにより、前記活物質が膨張・収縮しても電極の変形、クラック発生、または破壊などを抑制することができる。この電極の変形等を抑制するメカニズムは、下記の通りであると推測される。
【0020】
(1)第1バインダの弾性率が第2バインダの弾性率より大きい場合
弾性率が大きい第1バインダを用いて二次粒子を作製すると、二次粒子が強固に押し固められるため、二次粒子の体積膨張を最小限に抑えることができる。二次粒子の応力ひずみは発生するが、二次粒子が小さいので電極の破壊モードには至らない。その二次粒子を、柔軟性を有する弾性率の低い第2バインダで結着させることによって、体積膨張によるひずみを緩和することができる。また、適度な空孔を有することで、この緩和効果をさらに向上させることができる。電極全体の厚み変化も、最小限に抑えることが可能となる。
【0021】
(2)第2バインダの弾性率が第1バインダの弾性率より大きい場合
柔軟性を有する第1バインダを用いて二次粒子を作製することで、一次粒子の体積膨張を許容する。これにより、二次粒子の応力集中によるひずみを抑制することができる。弾性率の大きい第2バインダで電極全体をがっちり固めることで、電極全体の厚み変化を抑制することができる。このときのポイントは、適度な空孔を持たせることで、二次粒子の膨張収縮ストロークを空孔の体積で吸収できるようにすることである。このようにして、ひずみも小さく厚み変化も小さい、サイクル安定性が高い電極ができる。
【0022】
上記のように、前記第1バインダの弾性率と前記第2バインダの弾性率とは、異なる値を有する。前記第1バインダの弾性率値および前記第2バインダの弾性率値は、特に制限されない。しかしながら、前記第1バインダの弾性率が前記第2バインダの弾性率より大きい場合、前記第1バインダの弾性率は2.0GPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.2GPa以上、さらに好ましくは2.8GPa以上である。なお、本発明の作用効果を得るという観点からは、前記第1バインダの弾性率の上限値は特に制限されない。この際、第2バインダの弾性率は、1.7GPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.7GPa以下であり、さらに好ましくは0.4GPa以下である。なお、本発明の作用効果を得るという観点からは、前記第2バインダの弾性率の下限値は特に制限されない。
【0023】
また、前記第2バインダの弾性率が前記第1バインダの弾性率より大きい場合、前記第2バインダの弾性率は2.0GPa以上であることが好ましく、より好ましくは2.2GPa以上であり、さらに好ましくは2.8GPa以上である。なお、本発明の作用効果を得るという観点からは、前記第2バインダの弾性率の上限値は特に制限されない。この際、第1バインダの弾性率は、1.7GPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.7GPa以下であり、さらに好ましくは0.4GPa以下である。なお、本発明の作用効果を得るという観点からは、前記第1バインダの弾性率の下限値は特に制限されない。なお、本発明において、前記弾性率は、JIS K 7161(プラスチック−引張特性の試験方法 第1部:通則)に記載の方法により測定した値を採用するものとする。
【0024】
本発明の電極に含まれる活物質の体積膨張率は、5%以上である。体積膨張率の大きな活物質を電極に用いた場合、充放電によりリチウムを吸蔵・放出する際に起こる活物質の膨張・収縮が大きくなる。この活物質の大きな膨張・収縮により、活物質の微粉化に伴うサイクル劣化、応力集中や変形などにより電極に発生するクラックによる劣化、活物質層の集電体からの剥離などを引き起こすという問題が従来あった。しかしながら、本発明の電池用電極は、体積膨張率の大きな活物質を用いても、上記のように推測されるメカニズムにより、電極の変形や破壊などを抑制することができ、電池のサイクル特性を向上させうる。本発明の効果がより現れやすいという観点においては、活物質の体積膨張率は、好ましくは5〜20%であり、より好ましくは10〜20%である。
【0025】
また、本発明の電池用電極の空隙率は18〜70%である。電極の空隙率が18%未満の場合、二次粒子の膨張・収縮のストロークが確保できず、電極の変形、クラックの発生、または破壊などを招く虞がある。一方、電極の空隙率が70%を超える場合、電極の体積が大きくなりすぎ、電池の体積あたりの容量密度が低下する虞がある。前記空隙率は30〜65%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましい。該空隙率は、活物質層のプレス処理の条件により適宜調節されうる。なお、本発明において、前記空隙率は、下記数式1により算出した値を採用するものとする。
【0026】
【数1】

【0027】
以下、本発明の電池用電極を用いた電池の構成の一例について説明する。ここで説明する電極は、負極の活物質層において、活物質、導電助剤、および第1バインダを含む二次粒子を含む。しかし、本発明の技術的範囲は、かような形態のみには制限されず、正極のみが上述の二次粒子を含む形態、または正極および負極の双方が上述の二次粒子を含む形態もまた、包含しうる。支持塩(リチウム塩)、電解質、その他必要に応じて添加される化合物の選択については、特に制限はなく、使用用途に応じて従来公知の知見を参照して、適宜選択すればよい。以下、本発明の電池用電極を構成する部材について、詳細に説明する。
【0028】
[活物質層]
<活物質>
本発明の電池用電極は、活物質層を含む。活物質層は、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。本発明においては、正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方において、体積膨張率が5%以上の活物質、導電助剤および第1バインダを含む二次粒子を含む。本発明の電極が正極として用いられる場合には、二次粒子は正極活物質を含む。一方、本発明の電極が負極として用いられる場合には、二次粒子は負極活物質を含む。
【0029】
前記のような体積膨張率を有する負極活物質の具体的な例としては、例えば、スズ、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ゲルマニウム、カルシウム、鉛、インジウムなどのリチウムと合金化する金属、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化鉛、酸化インジウムなどの前記リチウムと合金化する金属を含む化合物、リチウム−スズ合金、リチウム−ケイ素合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−鉛合金、リチウム−ビスマス合金、リチウム−インジウム合金、リチウム−インジウム−ガリウム合金などのリチウムを含む合金などが好ましく挙げられる。また、天然グラファイト、人造グラファイト等のグラファイト系炭素材料なども好適に用いることができる。これら負極活物質は、単独で用いてもよく、場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
【0030】
また、前記のような体積膨張率を有する正極活物質の具体的な例としては、例えば、リチウム−ニッケル複合酸化物、リチウム−コバルト複合酸化物、リチウム−鉄複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物、リチウム−金属リン酸化合物、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0031】
前記二次粒子に含まれる活物質の平均粒径は、2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。なお、本発明の作用効果を得るという観点からは、活物質の平均粒径の下限値は特に制限されない。しかし、電池の高出力化、ならびに活物質の高分散性および凝集抑制という観点から、活物質の平均粒径は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上である。なお、本発明において、活物質の平均粒径は、JIS R1629に記載の方法により測定したものを採用するものとする。
【0032】
<導電助剤>
また、前記二次粒子には導電助剤が含まれる。導電助剤は活物質と共に二次粒子を形成し、活物質層の導電性を向上させる役割を果たす。導電助剤の例としては、カーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、または気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。
【0033】
<第1バインダ>
さらに、前記二次粒子には、第1バインダが含まれる。第1バインダは、二次粒子を形成させるために、二次粒子に含まれる活物質と導電助剤とを結着させる役割を果たす添加剤である。前記第1バインダは、活物質と導電助剤とを結着できるものであれば特に制限されない。具体的な例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルプロピナール、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のヒドロキシル基含有化合物、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム等が挙げられる。これらのバインダは単独でも、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
第1バインダとしてポリイミドを用いる場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドも用いてもよい。例えば、前記活物質および前記導電助剤とともに、前記ポリアミック酸を含む二次粒子を形成しておき、その後アニール処理を行い、ポリアミック酸をイミド化することにより得られるポリイミドを用いることができる。この際、アニール処理の条件については、ポリイミドが所望の弾性率を有するように、処理温度と処理時間とを適宜選択すればよい。前記ポリアミック酸は、例えば、市販されているポリアミック酸を含む溶液を用いることができる。
【0035】
前記二次粒子中の活物質の含有量を(A)とし、前記二次粒子中の導電助剤の含有量を(B)とし、前記二次粒子中の第1バインダの含有量を(C)とする。このとき、(Aは40〜97質量%、(B)は0〜48質量%、(C)は3〜20質量%(ただし、(A)、(B)、(C)の合計は100質量%である)であることが好ましい。
【0036】
<第2バインダ>
本発明の電池用電極には、さらに第2バインダが含まれる。前記第2バインダは、二次粒子同士を結着させる役割を果たす。
【0037】
第2バインダとして用いられる材料の具体的な例は、前記第1バインダの場合と同様であるのでここでは説明を省略する。この際、該第2バインダは、上述のように、前記二次粒子中の第1バインダの弾性率とは異なる弾性率を有する材料を選択する。
【0038】
前記第2バインダとしてポリイミドを用いる場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を用いて前記二次粒子とともに塗膜を形成し、乾燥・プレスの後にアニール処理を行うことにより得られるポリイミドを用いてもよい。この際、アニール処理の条件は、第1バインダの欄で述べたように、ポリイミドが所望の弾性率を有するように、処理温度と処理時間とを適宜選択すればよい。
【0039】
活物質層において、第2バインダによる二次粒子同士の結着性をより向上させるという観点から、前記第1バインダの弾性率が前記第2バインダの弾性率よりも大きい場合、前記第1バインダの融点は前記第2バインダの融点より高いことが好ましい。前記のような融点の関係を有する第1バインダおよび第2バインダを選び、かつ前記第2バインダの融点以上であり第1バインダの融点以下である温度で活物質層をプレスする。こうすることにより、前記二次粒子の構造に変化を与えることなく、第2バインダによる二次粒子同士の結着性をより向上させることができる。なお、本発明において、前記融点は、JIS K6935−2 8.3.3に記載の方法により測定した値を採用するものとする。
【0040】
前記活物質層中の二次粒子の含有量を(D)とし、二次粒子を形成する導電助剤以外の前記活物質層中の導電助剤の含有量を(E)とし、前記活物質層中の第2バインダの含有量を(F)とする。このとき、(D)は40〜97質量%、(E)は0〜48質量%、(F)は3〜20質量%(ただし、(D)、(E)、(F)の合計は100質量%である)であることが好ましい。
【0041】
本発明の電池用電極は、さらに集電体を含んでいても良い。集電体は、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔など、電子伝導性の材料から構成されるか、または含有する。集電体の一般的な厚さは、1〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0042】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0043】
活物質層には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、前記二次粒子を形成する導電助剤以外の導電助剤等が含まれうる。また、全固体ポリマー電池用の電極として使用する場合には、イオン伝導性ポリマーの電極中への導入方法として、電極作製後に、イオン伝導性ポリマー溶液を電極中に染み込ませた後に重合する方法と、スラリーの段階でイオン伝導性ポリマーを導入する方法がある。
【0044】
導電助剤の具体例は、上述と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
支持塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0046】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記ポリマーは、本発明の電極が採用される電池の電解質層において用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0047】
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
【0048】
活物質層に含まれる、二次粒子および第2バインダ以外の成分の配合比は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0049】
活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層の厚さは、好ましくは10〜100μm程度であり、より好ましくは20〜50μmである。活物質層が10μm程度以上であれば、電池容量が充分に確保されうる。一方、活物質層が100μm程度以下であれば、電極深部(集電体側)にリチウムイオンが拡散しにくくなることに伴う内部抵抗の増大という問題の発生が抑制されうる。
【0050】
(製造方法)
続いて、本発明の電池用電極の製造方法を説明する。
【0051】
本発明の電極は、例えば、活物質、導電助剤、および第1バインダから二次粒子を形成し(二次粒子形成工程)、得られた二次粒子および第2バインダを溶媒に添加することにより、二次粒子スラリーを調製する(二次粒子スラリー調製工程)。さらに、この二次粒子スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより塗膜を形成し(塗膜形成工程)、前記塗膜形成工程を経て作製された積層体を積層方向にプレスする(プレス工程)ことにより、製造されうる。前記第1バインダおよび前記第2バインダの少なくとも一方にポリイミドを用いる場合は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をイミド化する工程をさらに含んでもよい。
【0052】
二次粒子スラリーにイオン伝導性ポリマーが添加され、当該イオン伝導性ポリマーを架橋させる目的で重合開始剤がさらに添加される場合には、塗膜形成工程における乾燥と同時に、または当該乾燥の前もしくは後に、重合処理を施してもよい(重合工程)。
【0053】
以下、かような製造方法について、工程順に詳細に説明するが、下記の形態のみには制限されない。
【0054】
[二次粒子形成工程]
本工程においては、活物質、導電助剤、および第1バインダから二次粒子を形成する。
【0055】
まず、第1バインダが溶解可能な溶媒を用い、この溶媒中に第1バインダを溶解させた後、活物質および導電助剤を分散させ、二次粒子形成用スラリーを調製する。
【0056】
前記溶媒は、第1バインダが溶解可能であり、活物質および導電助剤が分散可能であれば特に制限されず、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)など用いることができる。
【0057】
次に、例えば、スプレードライヤー内に、前記で調製した二次粒子形成用スラリーを噴霧すると同時に乾燥させ、第1バインダにより活物質と導電助剤とを結着させ、二次粒子を得る。造粒方法は上記の方法に制限されるものではなく、例えば、湿式粉砕造粒法、乾式粉砕造粒法、または電極作製後電極を崩して粉状にする方法などから適宜選択すればよい。例えば、活物質の平均粒径が3μmを超える場合、あらかじめ第1バインダおよび導電助剤を含むスラリーが投入された湿式粉砕装置に活物質を投入する。それにより、活物質が平均粒径3μm以下の微粒子に粉砕されつつ、第1バインダによって導電助剤と結着し、上述のような二次粒子が調製されうる。得られた二次粒子の粒径が大きい場合は、例えば、ミルなどを用いて粉砕してもよい。
【0058】
前記二次粒子の平均粒径は、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは1〜5μmである。前記範囲内にあれば、リチウムイオンの拡散距離が長すぎないため好ましい。なお、本発明において、前記二次粒子の平均粒径は、JIS R1629の方法により測定した値を採用するものとする。
【0059】
なお、前記第1バインダとしてポリイミドを用いる場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を用いて二次粒子を形成し、本二次粒子形成工程の後にアニール処理を行い、ポリアミック酸をイミド化する工程をさらに含んでもよい。この際、アニール処理の条件は、上述のように、ポリイミドが所望の弾性率を有するように、処理温度と処理時間とを適宜選択すればよい。
【0060】
[二次粒子スラリー調製工程]
本工程においては、上記工程で得られた所望の二次粒子、第2バインダ、および必要に応じて他の成分(例えば、導電助剤、イオン伝導性ポリマー、支持塩(リチウム塩)、重合開始剤など)を、溶媒中で混合する。このようにして、二次粒子スラリーを調製する。この二次粒子スラリー中に配合される各成分の具体的な形態については、上記の本発明の電極の構成の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
溶媒の種類は特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが用いられうる。第2バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
【0062】
混合手段も特に制限されないが、あらかじめ前記第2バインダを溶解させた溶液中に、前記二次粒子を分散させる方法を採用すれば、後述の塗膜形成工程で得られる塗膜において、二次粒子の分布が均一になりやすいため、好ましい。
【0063】
[塗膜形成工程]
続いて、集電体を準備し、上記で調製した二次粒子スラリーを当該集電体の表面に塗布し、乾燥させる。これにより、集電体の表面に二次粒子スラリーからなる塗膜が形成される。この塗膜は、後述するプレス工程を経て、活物質層となる。
【0064】
準備する集電体の具体的な形態については、上記の本発明の電極の構成の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
二次粒子スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されないが、例えば、自走型コータ、ドクターブレード法、スプレー法などの一般的に用いられている手段が採用されうる。
【0066】
塗膜は、製造される電極における集電体と活物質層との所望の配置形態に応じて形成される。例えば、正極活物質および負極活物質のいずれか一方を含む塗膜が1枚の集電体の両面に形成される。
【0067】
その後、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。
【0068】
塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、二次粒子スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。
【0069】
塗膜が重合開始剤を含む場合には、さらに重合工程を行うことで、塗膜中のイオン伝導性ポリマーが架橋性基によって架橋される。
【0070】
重合工程における重合処理も特に制限されることはなく、従来公知の知見を適宜参照すればよい。例えば、塗膜が熱重合開始剤(AIBNなど)を含む場合には、塗膜に熱処理を施す。また、塗膜が光重合開始剤(BDKなど)を含む場合には、紫外光などの光を照射する。なお、熱重合のための熱処理は、上記の乾燥工程と同時に行われてもよいし、当該乾燥工程の前または後に行われてもよい。
【0071】
[プレス工程]
続いて、前記塗膜形成工程を経て作製された積層体を積層方向にプレスする。これにより、本発明の電池用電極が完成する。この際、プレス条件を調節することにより、活物質層の空隙率が制御されうる。
【0072】
プレス処理の具体的な手段やプレス条件は特に制限されず、プレス処理後の活物質層の空隙率が所望の値となるように、適宜調節されうる。プレス処理の具体的な形態としては、例えば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。
【0073】
なお、前記第2バインダとしてポリイミドを用いる場合、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を用いて塗膜を形成し、本プレス工程の後にアニール処理を行い、ポリアミック酸をイミド化する工程をさらに含んでもよい。この際、アニール処理の条件は、上記と同様に、ポリイミドが所望の弾性率を有するように、処理温度と処理時間とを適宜選択すればよい。
【0074】
本発明の電池用電極は、正極、負極、双極電極のいずれにも適用されうる。本発明の電極を、少なくとも1つの電極として含むリチウムイオン二次電池は、本発明の技術的範囲に属する。好ましくは、リチウムイオン二次電池を構成する負極が本発明の電極である。かような構成を採用することにより、リチウムイオン二次電池の出力特性を効果的に向上させうる。
【0075】
図2は、本発明の電池の代表的な一実施形態である、積層型の非双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「リチウムイオン電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。図2に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池10では、電池外装材22に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合する。かようにして発電要素17を収納し密封した構成を有する。発電要素17の具体的な構成要素は以下の通りである。
【0076】
発電要素17は、正極集電体11の両面に正極活物質層12が形成されてなる正極と、電解質層13と、負極集電体14の両面に負極活物質層15が形成されてなる負極とからなる単電池層16が複数積層された構成を有する。この際、一の正極の片面の正極活物質層12と前記一の正極に隣接する一の負極の片面の負極活物質層15とが、電解質層13を介して向き合うように、正極、電解質層13、負極がこの順に積層されている。なお、単電池層16の積層数に特に制限はなく、例えば、好ましくは5〜40層、より好ましくは10〜30層である。
【0077】
上述した構成とすることにより、隣接する正極集電体11、正極活物質層12、電解質層13、負極活物質層15および負極集電体14は、一つの単電池層16を構成する。したがって、本実施形態のリチウムイオン電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素17の両最外層に位置する最外層負極集電体14aには、いずれも片面のみに負極活物質層15が形成されている。
【0078】
また、上記の各電極(正極および負極)と導通される正極タブ18および負極タブ19が、正極端子リード20および負極端子リード21を介して各電極の正極集電体11および負極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられている。これにより正極タブ18および負極タブ19は、上記ラミネートフィルムの周辺部の熱融着にて接合された部位より上記の電池外装材22の外部に露出される構造を有している。
【0079】
[電解質層]
電解質層13を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0080】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。 一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0081】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0082】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0083】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0084】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0085】
[タブ(正極タブおよび負極タブ)]
電池外部に電流を取り出す目的で、各集電体に電気的に接続されたタブ(正極タブ18および負極タブ19)が電池外装材の外部に取り出されている。具体的には、図2に示すように各正極集電体11に電気的に接続された正極タブ18と各負極集電体14に電気的に接続された負極タブ19とが、電池外装材22であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0086】
タブ(正極タブ18および負極タブ19)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブ18と負極タブ19とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、各集電体11、14を延長することにより正極タブ18および負極タブ19としてもよいし、別途準備した正極タブ18および負極タブ19を各集電体11、14に接続してもよい。
【0087】
[正極および負極端子リード]
正極端子リード20および負極端子リード21に関しても、必要に応じて使用する。例えば、各集電体11、14から出力電極端子となる正極タブ18および負極タブ19を直接取り出す場合には、正極端子リード20および負極端子リード21は用いなくてもよい。
【0088】
正極端子リード20および負極端子リード21の材料は、公知のリチウムイオン電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材22から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0089】
[電池外装材]
電池外装材22としては、公知の金属缶ケースを用いることができほか、発電要素(電池要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。本発明では、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
【0090】
[リチウムイオン電池の外観構成]
図3は、本発明の電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な(非双極型の)リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0091】
図3に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれる。その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図2に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素17に相当するものである。正極活物質層12、電解質層13および負極活物質層15で構成される単電池層(単セル)16が複数積層されたものである。
【0092】
なお、本発明の電池は、図2や図3に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状、角型形状のものであってもよい。こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型や角型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0093】
また、図3に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよい。正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図3に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0094】
[組電池]
本実施形態の電池は、複数電気的に接続されて組電池とされてもよい。
【0095】
図4は、本実施形態の電池から構成される組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図4Aは組電池の平面図であり、図4Bは組電池の正面図であり、図4Cは組電池の側面図である。
【0096】
図4に示すように、組電池300は、第1実施形態のリチウムイオン電池が複数、直列および並列に接続されて装脱着可能な組電池250が形成されている。そして、この組電池250をさらに複数、直列および並列に接続している。これにより、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した組電池300を形成することもできる。
【0097】
作成した装脱着可能な組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の電池を接続して組電池250を作成するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車など)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0098】
[車両]
本実施形態の電池は、例えば上述した組電池の形態で、車両に搭載されうる。車両に搭載された電池は、例えば、車両のモータを駆動する電源として用いられうる。
【0099】
図5は、図4に示す組電池を搭載した車両の概念図である。
【0100】
図5に示すように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【実施例】
【0101】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、本実施例で用いた材料および装置の詳細は、下記表1の通りである。
【0102】
【表1】

【0103】
また、作製した評価用セルを用いた評価は、下記の方法により行った。
【0104】
<サイクル特性の評価>
・充電(試験電極にリチウムを挿入する方向に電流がながれることを、本発明では充電とする:電圧は低下する)
1mAの定電流で電圧を5mVまで充電後、5mVを保持しながら、電流が0.01mAになったら充電を停止し、10分間休止した。
【0105】
・放電(試験電極からリチウムを脱離させる方向に電流が流れることを、ここでは放電とする:電圧は上昇する)
1mAの定電流で電圧を2Vまで放電後、放電を停止し、10分間休止した。
【0106】
上記の操作を1サイクルとし、これを20サイクル繰り返した。
【0107】
20サイクル後の容量維持率を、下記数式2により算出した。
【0108】
【数2】

【0109】
<電極の厚みの測定>
上記のような20サイクルの充放電試験後、充電状態でセルを解体し、電極をジメチルカーボネート溶液で洗浄して、マイクロメーターで電極の厚みを測定し、充放電試験前の電極の厚みと比較した。
【0110】
(実施例1)
<試験用電極の作製>
活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラックおよび第1バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用意した。
【0111】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびポリアミック酸を含む溶液を加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=80:15:5であった。
【0112】
このスラリーを、温度200℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0113】
アニール処理した二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダであるPVdFを87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0114】
上記で調製したスラリーを、集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。固形分の塗布量は、30mg/cmとした。得られた積層体を80℃で乾燥させて、次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行った。集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0115】
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を50:50の体積比で混合し、電解液の可塑剤(有機溶媒)とした。次いで、この可塑剤に、リチウム塩であるLiPFを1Mの濃度になるように添加して、電解液を調製した。
【0116】
<評価用セルの作製>
上記で作製した試験用電極を16mmの直径で打ち抜き、100℃で5時間真空乾燥を行い、作用電極を作製した。対極には、厚さ500μmのリチウム金属箔を17mmの直径で打ち抜いたものを用いた。前記作用電極および前記正極で、リチウムイオン電池用セパレータであるガラス繊維性不織布(厚さ:500μm、直径:18μm)を挟持した。次いで得られた挟持体を、小型のセルにセットした。その後、前記セル中に上記で調製した電解液を注入し、セルから出力端子が露出するように真空シールして、評価用セルを完成させた。
【0117】
(比較例1)
活物質としてシリコン系活物質、導電助剤であるアセチレンブラック、およびバインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を、シリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=70:23:7の質量比となるように水に分散させた。このスラリーを、温度200℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0118】
上記で調製したスラリーを、集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。その後250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行った。集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0119】
上記のようにして試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
【0120】
(比較例2)
ポリアミック酸を含む溶液の代わりにPVdFを用いたこと、およびアニール処理を行わなかったこと以外は、比較例1と同様の方法で、試験用電極および評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0121】
別途、ポリアミック酸を含む溶液およびPVdFを、それぞれ室温(25℃)でNMPに溶解させ、テフロン(登録商標)シート上に塗布し、下記表2のような熱履歴を与えてフィルムを作製し、弾性率および融点を測定した。
【0122】
【表2】

【0123】
その結果、ポリアミック酸がイミド化したポリイミド(すなわち、実施例1の第1バインダ)の弾性率は2.8GPaであった。また、PVdF(すなわち、実施例1の第2バインダ)の弾性率は0.4GPa、融点は140℃であった。
【0124】
実施例1および比較例1〜2の評価用セルを用いて、サイクル特性を評価した結果を図6に示す。
【0125】
図6から明らかなように、本発明の電極を用いた実施例1のセルは、サイクル特性が優れていることがわかった。一方、本発明の範囲外である電極を用いた比較例1〜2のセルは、サイクル特性が劣ることがわかった。
【0126】
(実施例2)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラック、および第1バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用意した。
【0127】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびポリアミック酸を含む溶液を加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=80:15:5であった。
【0128】
このスラリーを、温度200℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0129】
アニール処理した二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダであるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量のカルボキシメチルセルロース(CMC:ダイセル工業株式会社製)を加え、スラリーを得た。
【0130】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。得られた積層体を80℃で乾燥させて、次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行った。集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0131】
上記のように試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。
【0132】
(比較例3)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤であるアセチレンブラック、およびバインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を、シリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=70:23:7の質量比となるように水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0133】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。その後250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0134】
上記のようにして試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行った。集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0135】
(比較例4)
ポリアミック酸を含む溶液の代わりにSBRを含む水溶液とCMCを用いたこと、およびアニール処理を行わなかったこと以外は、比較例1と同様の方法で、試験用電極を作製した。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0136】
別途、ポリアミック酸を含む溶液およびSBRを、それぞれ室温(25℃)でNMPに溶解させ、テフロン(登録商標)シート上に塗布し、前記表3のような熱履歴を与えてフィルムを作製し、弾性率および融点を測定した。
【0137】
ポリアミック酸がイミド化したポリイミド(すなわち、実施例2の第1バインダ)の弾性率は2.8GPaであった。SBR(すなわち、実施例2の第2バインダ)の弾性率は0.7GPa、融点は100℃であった。
【0138】
実施例2および比較例3〜4の評価用セルを用いて、サイクル特性を評価した結果を図7に示す。
【0139】
図7から明らかなように、本発明の電極を用いた実施例2のセルは、サイクル特性が優れていることがわかった。一方、本発明の範囲外である電極を用いた比較例3〜4のセルは、サイクル特性が劣ることがわかった。
【0140】
(実施例3)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラック、および第1バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用意した。
【0141】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびポリアミック酸を含む溶液を加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=80:15:5であった。
【0142】
このスラリーを、温度200℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を300℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0143】
アニール処理した二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0144】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。固形分の塗布量は、30mg/cmとした。次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行った。その後、120℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0145】
その後、集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0146】
上記のように試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。
【0147】
(比較例5)
アニール処理の条件を、300℃、30分間としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0148】
(比較例6)
アニール処理の条件を、120℃、30分間としたこと以外は、比較例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0149】
別途、ポリアミック酸を含む溶液を室温(25℃)でNMPに溶解させたものを2つ用意し、それぞれテフロン(登録商標)シート上に塗布し、下記表3および表4のような熱履歴をそれぞれ与えてフィルムを作製し、弾性率および融点を測定した。
【0150】
【表3】

【0151】
【表4】

【0152】
上記表3の条件で得られたポリイミド(すなわち、実施例3の第1バインダ)の弾性率は3.3GPaであった。上記表4の条件で得られたポリイミド(すなわち、実施例3の第2バインダ)の弾性率は1.7GPaであった。
【0153】
実施例3〜4および比較例5〜6の評価用セルを用いて、サイクル特性を評価した結果を図8に示す。
【0154】
図8から明らかなように、本発明の電極を用いた実施例3〜4のセルは、サイクル特性が優れていることがわかった。一方、本発明の範囲外である電極を用いた比較例5〜6のセルは、サイクル特性が劣ることがわかった。
【0155】
(実施例4、比較例7)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラック、および第1バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用意した。
【0156】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびポリアミック酸を含む溶液を加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=80:15:5であった。
【0157】
このスラリーを、温度200℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0158】
アニール処理した二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダであるPVdFを87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0159】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。次いで、プレス条件を下記表5のように変えてプレスを行い、集電体に出力端子を接続して、それぞれ試験用電極とした。
【0160】
【表5】

【0161】
上記のように試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。
【0162】
(実施例5、比較例8)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラック、および第1バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用意した。
【0163】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびポリアミック酸を含む溶液を加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=80:15:5であった。
【0164】
このスラリーを、温度200℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を300℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0165】
アニール処理した二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0166】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。次いで、プレス条件を下記表6のように変えてプレスを行い、集電体に出力端子を接続して、それぞれ試験用電極とした。その後120℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0167】
【表6】

【0168】
上記のように試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。
【0169】
実施例4−1〜5−3および比較例7−1〜8−1の評価用セルを用いて、サイクル特性を評価した結果を図9に示す。
【0170】
図9から明らかなように、空隙率が本発明の範囲内である電極を用いた実施例4−1〜5−3のセルは、サイクル特性が優れていることがわかった。一方、空隙率が本発明の範囲外である電極を用いた比較例7−1〜8−1のセルは、サイクル特性が劣ることがわかった。
【0171】
(実施例6)
負極活物質としてグラファイトを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、20%であった。
【0172】
(比較例9)
負極活物質としてグラファイトを用いたこと以外は、比較例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、20%であった。
【0173】
(比較例10)
負極活物質としてハードカーボンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、20%であった。
【0174】
(比較例11)
負極活物質としてハードカーボンを用いたこと以外は、比較例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、20%であった。
【0175】
実施例6および比較例9〜11の評価用セルを用いて、充放電試験前後の電極の厚みを評価した結果を図10および図11に示す。
【0176】
図10および図11から明らかなように、本発明の電極を用いた実施例6のセルは、充放電の前後での電極の厚み変化はわずかであり、ほとんど変形しないことがわかった。一方、本発明の範囲外である電極を用いた比較例9〜11のセルは、充放電の前後で厚みが大きく変化し、大きな変形を生じることがわかった。
【0177】
(実施例7)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラック、および第1バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用意した。
【0178】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびポリアミック酸を含む溶液を加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=80:15:5であった。
【0179】
このスラリーを、テフロン(登録商標)シート上に塗布し、80℃で乾燥させ、活物質層を作製した。前記活物質層をテフロン(登録商標)シートから剥がし、ミルで粉砕して平均粒径が10μmである二次粒子を得た。次に、得られた二次粒子を250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸のイミド化を行った。
【0180】
アニール処理した二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダであるPVdFを87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリー(以下、スラリーと称する)を得た。
【0181】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上にドクターブレードで塗布した。次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行った。集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0182】
上記のように試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。
【0183】
(比較例12)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤であるアセチレンブラック、およびバインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を、シリコン系活物質:アセチレンブラック:ポリアミック酸=70:23:7の質量比となるように水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0184】
上記で調製したスラリーを、テフロン(登録商標)シート上にドクターブレードで塗布した。その後、250℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0185】
上記のようにして試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
【0186】
(比較例13)
ポリアミック酸を含む溶液の代わりにPVdFを用いたこと、およびアニール処理を行わなかったこと以外は、比較例12と同様の方法で、試験用電極を作製した。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0187】
上記のようにして試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
【0188】
実施例7および比較例12〜13の評価用セルを用いて、サイクル特性を評価した結果を図12に示す。
【0189】
図12から明らかなように、本発明の電極を用いた実施例7のセルは、サイクル特性が優れていることがわかった。一方、本発明の範囲外である電極を用いた比較例12〜13のセルは、サイクル特性が劣ることがわかった。
【0190】
(実施例8)
負極活物質としてシリコン系活物質、導電助剤としてアセチレンブラック、および第1バインダとして、PVdFを用意した。
【0191】
次いでNMPを溶媒として用い、シリコン系活物質、アセチレンブラック、およびPVdFを加え、二次粒子形成用スラリーを調製した。なお、混合比は、質量比でシリコン系活物質:アセチレンブラック:PVdF=80:10:10あった。
【0192】
このスラリーを、温度150℃の条件でスプレードライヤー内に噴霧し、乾燥を行い、平均粒径が10μmである二次粒子を得た。
【0193】
得られた二次粒子、導電助剤であるアセチレンブラック、および第2バインダとなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を87:10:3の質量比で水に分散させた。さらに微量の界面活性剤を加え、スラリーを得た。
【0194】
上記で調製したスラリーを、負極集電体である銅箔(厚さ:20μm)上に粉体スプレーで塗布し、その後140℃で30分間アニール処理し、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化を行った。
【0195】
次いで、室温(25℃)、5MPaの条件でプレスを行い、集電体に出力端子を接続して、試験用電極とした。得られた試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0196】
上記のように試験用電極を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、評価用セルを作製した。
【0197】
(実施例9)
第1バインダとしてPVdFの代わりにSBRを用いた以外は、実施例8と同様の方法で、評価用セルを作製した。試験用電極の空隙率は、25%であった。
【0198】
別途、ポリアミック酸を含む溶液、PVdF、およびSBRを、それぞれ室温(25℃)でNMPに溶解させ、テフロン(登録商標)シート上に塗布し、下記表7のような熱履歴を与えてフィルムを作製し、弾性率および融点を測定した。
【0199】
【表7】

【0200】
上記表7の条件で得られたポリイミド(すなわち、実施例8の第2バインダ)の弾性率は3.3GPaであった。PVdF(すなわち、実施例8の第1バインダ)の弾性率は0.4GPa、融点は140℃であった。SBR(すなわち、実施例9の第1バインダ)の弾性率は0.7GPa、融点は100℃であった。
【0201】
実施例8〜9、および比較例1、2、および4の評価用セルを用いて、サイクル特性を評価した結果を図13に示す。
【0202】
図13から明らかなように、本発明の電極を用いた実施例8〜9のセルは、サイクル特性が優れていることがわかった。一方、本発明の範囲外である電極を用いた比較例1、2、および4のセルは、サイクル特性が劣ることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】本発明の電池用電極を示す概略図である。
【図2】本発明の電池用電極を用いた双極型電池の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電池用電極を用いた電池から構成される組電池の代表的な実施形態を模式的に表した外観図である。図3Aは組電池の平面図であり、図3Bは組電池の正面図であり、図3Cは組電池の側面図である。
【図4】本発明の電池用電極を用いた組電池を搭載する自動車の一実施形態を示す概略図である。
【図5】双極型でないリチウムイオン二次電池の概要を示す断面図である。
【図6】実施例1および比較例1〜2の評価用セルのサイクル特性を評価した結果を示すグラフである。
【図7】実施例2および比較例3〜4の評価用セルのサイクル特性を評価した結果を示すグラフである。
【図8】実施例3および比較例5〜6の評価用セルのサイクル特性を評価した結果を示すグラフである。
【図9】実施例4−1〜5−3および比較例7−1〜8−1の評価用セルのサイクル特性を評価した結果を示すグラフである。
【図10】実施例6および比較例9の評価用セルの厚み変化を評価した結果を示すグラフである。
【図11】比較例10〜11の評価用セルの厚み変化を評価した結果を示すグラフである。
【図12】実施例7および比較例12〜13の評価用セルのサイクル特性を評価した結果を示すグラフである。
【図13】実施例8〜9および比較例1、2、および4の評価用セルのサイクル特性を評価した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0204】
1 電池用電極、
2 活物質、
3 第1バインダ、
4 二次粒子、
5 第2バインダ、
6 金属箔、
7 活物質層、
10、50 リチウムイオン電池、
11 正極集電体、
12 正極活物質層、
13 電解質層、
14 負極集電体、
14a 最外層負極集電体、
14b 金属層、
14c 補強層、
15 負極活物質層、
16 単電池層、
17、57 発電要素、
18、58 正極タブ、
19、59 負極タブ、
20 正極端子リード、
21 負極端子リード、
22、52 電池外装材(ラミネートフィルム)、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積膨張率が5%以上である活物質と、
導電助剤と、
第1バインダと、
を含む二次粒子および前記第1バインダの弾性率と異なる弾性率を有する第2バインダを含み、空隙率が18〜70%である、電池用電極。
【請求項2】
前記第1バインダの弾性率が前記第2バインダの弾性率よりも大きい、請求項1に記載の電池用電極。
【請求項3】
前記第2バインダの弾性率が前記第1バインダの弾性率よりも大きい、請求項1に記載の電池用電極。
【請求項4】
前記活物質が天然グラファイト、人造グラファイト、リチウムと合金化する金属、リチウムと合金化する金属を含む化合物、およびリチウムを含む合金からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池用電極。
【請求項5】
前記導電助剤がカーボンブラック、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、および炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池用電極。
【請求項6】
前記第1バインダの融点が前記第2バインダの融点よりも高い、請求項1〜2および請求項4〜5のいずれか1項に記載の電池用電極。
【請求項7】
正極、電解質層、および負極がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を含むリチウムイオン二次電池であって、
前記正極または前記負極の少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電池用電極である、リチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記電解質層が、液体電解質、ゲル電解質、または真性ポリマー電解質を含む、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池を用いた組電池。
【請求項10】
請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池、または請求項9に記載の組電池をモータ駆動用電源として搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−224239(P2009−224239A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68733(P2008−68733)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】