説明

電池輸送用コンテナ

【課題】 リチウムイオン電池などの平型の電池輸送に好適なコンテナを提供する。
【解決手段】 電池輸送用コンテナ1は、本体10Aと蓋10Bとを有する。本体10Aは、板状の電池Cの一部(下部)を収容する凹所11を有し、凹所11内に、電池Cの下端部が差し込まれる溝が形成された本体緩衝材90Aが配置されている。蓋10Bは、電池の残りの部分(上部)を収容する凹所11を有し、凹所11内に、電池の上端部が差し込まれる溝が形成された蓋緩衝材90Bが配置されている。本体10Aと蓋10Bとを同じ形状とすれば、本体と蓋とを同じ成形金型で作製でき、製造コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池などの電池を輸送する際に用いるコンテナに関する。特には、電池の収容・取り出しが容易である、十分な強度を有する、あるいは、スタッキング・ネスティングしやすい等の利点を有する電池輸送用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載されている。形状は、一般的に板状であり、重量は数kg程度である。このリチウムイオン電池は船輸送時に危険物に指定されているため、衝撃を受けた際にも内部の液体が漏れないように輸送する必要がある。また、内部には空間が存在するため、重心が一定でない。このような特徴をもつリチウムイオン電池を保管・輸送するのに適したプラスチック製コンテナは、現在存在していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、リチウムイオン電池などの平型の電池輸送に好適なコンテナを提供することを目的とする。特には、電池の収容・取り出しが容易である、十分な強度を有する、あるいは、スタッキング・ネスティングしやすい等の利点を有する電池輸送用コンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様の電池輸送用コンテナは、 板状の電池の一部(下部)を収容する凹所を有するプラスチック製の本体と、 該本体の凹所に配置された、前記電池の下端部が差し込まれる溝が形成された本体緩衝材と、 前記電池の残りの部分(上部)を収容する凹所を有するとともに、前記本体の前記凹所を閉じるプラスチック製の蓋と、 前記蓋の凹所に配置された、前記電池の上端部が差し込まれる溝が形成された蓋緩衝材と、 を具備することを特徴とする。
【0005】
ここで、電池の下端部とは、電池のコンテナ収容姿勢における、下端及びその側端を含む領域という意味であり、上端部とは、電池のコンテナ収容姿勢における、上端及びその側端を含む領域という意味である。
【0006】
電池を本体に収容するときは、まず、電池の下部を本体の凹所に入れ、その際、電池の下端部を緩衝材の溝に差し込む。この状態では、電池の上部が本体の凹所から外部に突出している。次に、蓋を閉めると、電池の上端部が蓋内の緩衝材溝に差し込まれる。これにより、電池の上下・左右・前後が、緩衝材で、ショックを吸収しうる状態で位置決め・保持される。
【0007】
一方、電池を本体から出すときは、まず、蓋を開けると、同時に緩衝材の溝から電池上端部が抜ける。この状態においては、電池の下端部は本体の緩衝材溝に収容されて、上部は、本体凹所から突出しているので、電池を取り出す際に、電池の上部を掴み易い。
【0008】
本発明においては、 前記本体と前記蓋とが同じ形状であることとすれば、本体と蓋とを同じ成形金型で作製でき、製造コストを低減できる。
【0009】
本発明においては、 前記本体の底面及び前記蓋の上面に、他の本体及び蓋とのスタッキング用凹凸嵌合部が形成されており、同部の形状が180°回転対称であることが好ましい。
【0010】
この場合、本体と蓋とを相対的に180°回転させてもスタッキングできる。このため、スタッキングする際に、上下となるコンテナの向きを合わせるように注意を払う必要がない。具体的には、コンテナは一般的には直方体状であるので、上下となるコンテナの長辺と短辺の位置を合わせるだけでスタッキングできる。
【0011】
本発明においては、 前記本体及び蓋の凹所が外開き形状を有し、 前記緩衝材が、前記本体又は蓋の凹所の底又は天井の所定高さ以下の部分にのみ配置されており、 空の本体及び蓋を、それらの凹所内に重ねるように積み上げ可能であることが好ましい。
【0012】
この場合、緩衝材内蔵式のコンテナであるにもかかわらずネスティング可能である。これにより、コンテナ空時の体積を減らすことができ、倉庫容量を減らすことができ、輸送費も低減できる。
【0013】
本発明においては、 前記本体及び/又は前記蓋の前記凹所の側壁が、二重壁と、両壁間に掛け渡すように形成されたリブと、を有する二重壁内リブ構造を備えることとすれば、落下時のリブ欠けを防止でき、コンテナの破壊を防止できる。
【0014】
本発明においては、 前記本体及び/又は前記蓋の前記凹所の側壁の中央に、閉じた前記蓋を前記本体に係止するバックル部が設けられており、該バックル部の両側に前記二重壁内リブ構造が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、コンテナが落下した際に、隅部の二重壁内リブ構造に直接衝撃がかかりやすく、バックル部にはかかりにくい。このため、バックル部が衝撃を受けて破損したり、ロックが不用意に解除されるなどの事態を避けることができる。
【0016】
本発明においては、 前記二重壁内リブ構造が、前記本体及び蓋の前記凹所の開口部から上又は下方向の1/2程度以下の高さ範囲に設けられていることが好ましい。
【0017】
コンテナの凹所の開口部は最も補強が必要な部位であるので、開口部に二重壁内リブ構造を設けることが好ましい。そして、この二重壁内リブ構造を凹所の深さの1/2以下程度とすると、ネスティング時に障害にならない。
【0018】
本発明の第2の態様の電池輸送用コンテナは、 板状の電池を受け入れる凹所を有するプラスチック製の本体と、 前記本体の凹所を閉じるプラスチック製の蓋と、を具備し、 前記本体の底面及び前記蓋の上面に、他の本体及び蓋とのスタッキング用凹凸嵌合部が形成されており、 該嵌合部の端が斜面となっており、 前記蓋の上面に前記本体の底面を乗せた際に、前記嵌合部の斜面同士が当接し、前記本体を前記蓋に対して前記斜面に沿ってスライドさせることにより、前記嵌合部が凹凸嵌合することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、コンテナをスタックするとき、蓋と本体とが自動的に凹凸嵌合されるので、上下のコンテナを正確に位置合わせする必要がない。
【0020】
本発明の第3の態様の電池輸送用コンテナは、 板状の電池を受け入れる凹所を有するプラスチック製の本体と、 前記本体の凹所を閉じるプラスチック製の蓋と、 閉じた前記蓋を前記本体に係止するバックルであって、回動支点部及び引っ掛け部を有するバックルと、 を具備し、 前記バックル回動支点を受ける軸受部、及び、前記バックルの引っ掛け部と係合するバックルロック部の双方を、前記本体及び蓋が有することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、バックルの取り付けを本体・蓋のいずれとするか使用者が選択できる。
【0022】
本発明においては、 前記バックルをロックするときに前記バックルと前記本体又は前記蓋体の間に指が入ることとすれば、バックルをロックする際に力がかかりやすいので好ましい。
【0023】
本発明においては、前記バックルロック部が、前記バックルの前記引っ掛け部を上下から挟む構造であることとすれば、強固にロックでき、コンテナを落としたときに蓋と本体とが開きにくい。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、電池の収容・取り出しが容易な電池輸送用のコンテナを提供できる。本発明のコンテナによりリチウムイオン電池の安全・迅速な物流を活発にできる。また、コンテナの隅部を補強する構造や、位置ずれしないようにスタッキングできる凹凸嵌合部を設けるなどにより、十分な強度を有し、安定にスタッキングできるなどの利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る電池輸送コンテナを示す図であり、図1(A)は斜視図、図1(B)は断面図である。
【図2】図1のコンテナの分解斜視図である。
【図3】図1のコンテナの本体の平面図である。
【図4】図1のコンテナの本体の裏面図である。
【図5】図1のコンテナのスタッキング状態を説明する斜視図である。
【図6】図1のコンテナのロック機構を説明する斜視図であり、図6(A)は非ロック時、図6(B)はロック時を示す。
【図7】図1のコンテナのスタッキング状態を示す側面図であり、図7(A)はコンテナスタッキング時、図7(B)は空箱のネスティング時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
コンテナ1は、図1に示すように、本体10Aと蓋10B、及び、本体10A内に配置される本体緩衝材90Aと蓋10B内に配置される蓋緩衝材90Bを有する。本体10Aと蓋10Bとは同じ形状・構造を有し、本体緩衝材90Aと蓋緩衝材90Bとは同じ形状・構造を有する。本体10A及び蓋10Bはプラスチック(例えば、ポリプロピレン)で作製され、本体緩衝材90A及び蓋緩衝材90Bは発泡樹脂(例えば、発泡ウレタン)で作製される。
以下の説明において、本体及び蓋の構造を説明する際には符号10で示し、本体と蓋とを機能面において別に表す場合は本体を10A、蓋を10Bで示す。
この例では、図1(B)に示すように、板状の電池Cを、長手方向側面を下にして立てた状態で、3個横向きに並べて収容する例について説明する。この場合、コンテナ1の形状は直方体状となる。
【0027】
まず、図2を主に参照して本体10の全体構造を説明する。
本体10は、凹所11を形成する長方形状の底部12と、底部12の周囲から立ち上がる側壁部13とを有する。凹所11の深さ(本体10の高さ)は、長手方向側面を下にして立てた電池Cのほぼ下半分の高さ(電池Cの短手方向長さの半分)である。側壁部13は、底部12の各長辺からやや斜め外方向に立ち上がる長側壁13Lと、各短辺からやや斜め外方向に立ち上がる短側壁13Sとを有する。
【0028】
次に、図1、図2、図3を参照して緩衝材90を説明する。
緩衝材90は全体として直方体状の形状であり、本体10の凹所11内の底部上に敷かれて、摩擦によって本体10に保持される。図1(B)に示すように、緩衝材90の高さは、本体10の高さの半分、あるいは、それ以下である。緩衝材90の上面には、3列の溝91が形成されている。溝91の形状は、電池Cの長手方向断面と同じ形状であり、長さは電池Cの長手方向長さと同じで、幅は電池Cの厚さと同じである。また、溝91の深さは、電池Cをほぼ直立して保持できる寸法であり、この例では、電池Cの短手方向長さの1/4〜1/5程度である。溝91と溝91との間の間には、所定の寸法(人の指が入る程度)の間隔が開けられている。また、両側の溝91と緩衝材90の側縁との間、及び、各溝91の両端部と緩衝材90の側壁部との間にも、所定の寸法(人の指が入る程度)の間隔が開けられている。
【0029】
電池Cのコンテナ1への出し入れ作業について説明する。
電池Cを本体10Bに収容するときは、まず、電池Cの下部を本体10Aの凹所11に入れ、電池Cの下端部を緩衝材90Aの溝91に差し込む。この状態では、電池Cの上部が本体10Aの凹所11から外部に突出している。次に蓋10Bを閉めると、電池Cの上端部が蓋10B内の緩衝材90Bの溝91に差し込まれる。この状態では、図1(B)に示すように、長手方向側面を下にして立てた電池Cの下半分が本体10Aに収容されて、下部が緩衝材90Aに差し込まれ、上半分が蓋10Bに収容されて、上部が緩衝材90Bに差し込まれている。これにより、電池Cの上下・左右・前後が、緩衝材90A、90Bでショックを吸収しうる状態で位置決め・保持される。
【0030】
一方、電池Cを本体10Aから出すときは、まず、蓋10Bを開けると、同時に緩衝材90Bの溝91から電池Cの上端部が抜ける。この状態においては、電池Cの下端部は本体10Aの緩衝材90Aの溝91に収容されており、電池Cの上部は、本体10Aの凹所11から突出している。そして、凹所11から突出している電池Cの上部を掴んで取り出す。
【0031】
図2、図4を参照して本体10の底部12の裏面の構造を説明する。
底部12の裏側の面には、コンテナをスタッキングする際に、下側のコンテナの上面に対して位置決めされるスタッキング用凹凸嵌合部が形成されている。スタッキング用凹凸嵌合部は、底部12の中心に対して180°回転対称に配置された、一対の外側凸部20と、一対の内側凸部30とを有する。外側凸部20は、底部12の一方の対角上の隅部に配置されており、内側凸部30は、底部のもう一方の対角上の隅部に配置されている。各凸部20、40の断面形状は同じ方形であり、所定の高さの平坦な上面を有する。
【0032】
外側凸部20はL字状に形成されており、底部12の長辺に沿って延びる長辺部21Lと、短辺に沿って延びる短辺部21Sとを有する。長辺部21Lは、底部12の隅部から長辺の長さの半分程度の位置まで延びている。短辺部21Sは、底部12の隅部から短辺の長さの半分程度の位置まで延びている。各長辺部21L及び短辺部21Sの先端は下方に(底部12の裏面に向かって)傾斜した傾斜面22L、22Sとなっている。
内側凸部30もL字状に形成されており、外側凸部20の一回り内側に形成されている。内側凸部30も、底部12の長辺に沿って延びる長辺部31Lと、短辺に沿って延びる短辺部31Sとを有する。長辺部31Lは、底部12の隅部から長辺の長さの半分程度の位置まで延びている。短辺部31Sは、底部12の隅部から短辺の長さの半分程度の位置まで延びている。各長辺部31L及び短辺部31Sの先端は下方に(底部12の裏面に向かって)傾斜した傾斜面32L、32Sとなっている。
【0033】
これらの図に示すように、外凸部20の長辺部21Lの傾斜面22Lと内凸部30の長辺部31Lの傾斜面32Lは、底部12の短手方向において重なっており、外凸部20の短辺部21Sの傾斜面22Sと内凸部30の短辺部31Sの傾斜面32Sは、底部12の長手方向において重なっている。
【0034】
さらに、底部12の下面の対角上の隅部には、L字状のコーナーリブ35が形成されている。コーナーリブ35の高さは、凹凸嵌合部の外側凸部20及び内側凸部30の高さと同じである。コーナーリブ35は、内凸部30から外凸部20の幅の分だけ外側に形成されている。このコーナーリブ35は底部12の変形を防止するためのものである。
【0035】
図5を参照して、コンテナスタッキング時の凹凸嵌合部の嵌合状態を説明する。
スタッキング時には、図5に示すように、下側のコンテナ1の蓋10Bの内凸部30が、上側のコンテナ1の本体10Aの外凸部20の内側に嵌合し、下側のコンテナ1の蓋10Bの外凸部20が、上側のコンテナ1の本体10Aの内凸部30の外側に嵌合する。そして、本体10A及び蓋10Bの各外凸部20の先端の傾斜面22同士は当接し、各内凸部30の先端の傾斜面32同士が当接する。言い換えれば、本体10Aの外凸部20と蓋10Bの外凸部20で形成された外側の枠状部の内側に、本体10Bの内凸部30と蓋10Aの内凸部30で形成された内側の枠状部が嵌合している状態ともいえる。この嵌合により、上下のコンテナ1は正確に位置決めされて、横方向にぐらつかないようにスタッキングできる。
なお、本体10A及び蓋10Bの各外凸部30は、蓋10B及び本体10Aの内凸部30とコーナーリブ35との間の空間(溝部)に嵌合する。
【0036】
コンテナ1をスタッキングする際は、下側のコンテナ1の蓋10Bの上面と、上側のコンテナ1の本体10Aの下面とを滑らせて大まかに位置を合わせていく。そして、蓋10Bの各凸部20、30の傾斜面22、32が、本体10Aの各凸部20、30の傾斜面22、32に達すると、蓋10Bは本体10Aに対して傾斜面に沿ってスライドする。これにより、自動的に両者が嵌合する。
【0037】
さらに、外凸部20と内凸部30は、底部12の中心に対して180°回転対称に配置されているので、本体10Aと蓋10Bとを相対的に180°回転させてもスタッキングできる。具体的には、コンテナ1は前述のように直方体状であるので、上下となるコンテナの長辺及び短辺の位置を合わせるだけでスタッキングできる。つまり、定められた側の長辺同士、定められた側の短辺同士を合わせる必要がないので、スタッキングする際に、上下となるコンテナの向きを合わせるように注意を払う必要がない。
【0038】
本体10の側壁13の外面の四隅は、二重壁内リブ構造40を有する。同構造40は、図2に示すように、本体10の高さの約半分の高さの外壁41と、外壁41の上端と側壁13の上端との間の上壁42と、外壁41と側壁13との間に掛け渡すように形成されたリブ43と、を有する。このような二重壁内リブ構造40を有することにより、コンテナ1の隅部の強度が高められ、落下した際の欠けを防止できる。
【0039】
図1(A)に示すように、隅部の二重壁内リブ構造40の間には、蓋10Bと本体10Aとを係止するロック機構50が設けられている。ロック機構50は、図2に示すように、バックル60と、本体10に形成された、バックル60が取り付けられる軸受部70及びバックル60が係合するバックルロック部80と、で構成される。
なお、ロック機構50は、全ての側壁13L、13Sに形成されていてもよく、対向する長側壁13Lのみ、又は、対向する短側壁13Sのみに形成されてもよい。ただし、全ての側壁に形成することが、蓋10Bと本体10Aとの係止がより強固になり、落下時の衝撃によっても蓋10Bと本体10Aとが外れにくくなるので好ましい。
【0040】
バックル60は、本体10A又は蓋10Bと別物であり、図2に示すように、両端の回動支点部61と、その間の引っ掛け部62とを有する。回動支点部61は、蓋又は本体の一方の軸受部70に取り付けられ、引っ掛け部62は、蓋又は本体のもう一方のバックルロック部80に係止される。
【0041】
本体10には、バックル60の回動支点部61を支持する軸受部70と、引っ掛け部62が係止されるバックルロック部80が形成されている。軸受部70は、対向する二重壁内リブ構造40の双方の上壁42と最も端のリブ43との間の角に形成されており、上壁42に開けられた切り欠き71と、リブ43に形成された、切り欠き71から下方に延びる溝部72とを有する。バックル60の回動支点部61を内側へ変形させながら、上壁42の切り欠き71に挿入し、リブ43の溝部72へ滑り込ませた後、バックル60の変形を解除することによって、バックル60が軸受部70に回動可能にとりつけられる。
【0042】
バックルロック部80は、対向する軸受部70の間に形成された、側壁13の上端から外方向に張り出した張出部81と、張出部81の下方の側壁から外方向に突出する突片82とを有する。張出部81及び突片82の高さは、二重壁構造40のリブ43の高さよりも短い。張出部81の下面の2か所には、バックル60の引っ掛け部62が係合する凹部83が形成されている。凹部83と側壁13との間には所定のスキマが開いている。また、凹部83と突片82の上面との間の間隔は、バックル60の引っ掛け部62の幅とほぼ等しい。
【0043】
図6を参照してバックル60の回動作用を説明する。この例では、本体10Aにバックル60が取り付けられている。
非ロック状態では、図6(A)に示すように、バックル60は本体10Aの軸受部70に保持されて、引っ掛け部62が突片82の下方に位置している。ロック時は、バックル60を軸受部70を中心にして回動させ、図6(B)に示すように、引っ掛け部62を蓋10のバックルロック部80の張出部81の凹部83に係止させる。引っ掛け部62は、張出部81と突片82とに挟まれて保持される。
ロック解除時は、バックル60の引っ掛け部62を張出部81の凹部83から外して回動支点部61を中心にして回動させる。この際、凹部83と側壁13との間にはスキマが開いているので指を入れやすい。
【0044】
なお、一つの本体10に軸受部70とバックルロック部80が形成されているので、本体10は、バックル60が取り付けられる側、バックル60がロックされる側のいずれにも対応できる。図1に示す例では、バックル60が取り付けられる側を本体10Aとして使用し、バックル60がロックされる側を蓋10Bとして使用している。なお、蓋10Bと本体10Aとの色を変えたり、別の模様を描いておくと、一目で蓋と本体とを識別できる。
【0045】
次に、図7を参照してコンテナのスタッキング状態と空箱のネスティング状態を説明する。
図7(A)に示すように、コンテナスタッキング時には、底部12に形成した凹凸嵌合部20、30の凹凸嵌合により上下のコンテナ1が正確に位置決めされて積み重ねられる。
図7(B)に示すように、空箱の場合は、各側壁13が底部12に対してやや斜め外方向に傾斜しているので、本体10を入れ子式に積み重ねることができる。そして、二重壁内リブ構造40は、本体10の高さの半分の高さを有するので、上側の本体10の二重壁内リブ構造40の下面が、下側の本体10の二重壁内リブ構造40の上面に乗る。つまり、上側の本体10の高さの下半分が、下側の本体10に入り込む。これにより、積み重ね時の体積を減らすことができる。
さらに、この場合、緩衝材90の高さは本体10の高さの半分程度であるので、積み重ね時に上側の本体10の底部12が下側の本体10に敷かれた緩衝材90に当たることがない。つまり、本体10に緩衝材90を敷いたまま積み重ねることができる。
【0046】
以上説明したように、本発明のコンテナは以下の利点を有する。
(1)本体10Aと蓋10B、及び、本体緩衝材90Aと蓋緩衝材90Bとが同じ形状・構造であるので、同じ金型を使用して作製でき、製造コストを低減できる。
(2)蓋10Bを開いた際、図2に示すように、電池Cの上半分が本体10Aの凹所11から出ているので、取り出す際に手で掴みやすい。
(3)コンテナ積み重ね時に、上下のコンテナの本体と蓋とが凹凸嵌合する凹凸嵌合部20、30が形成されているので、積み重ねの安定性が得られる。さらに、凹凸嵌合部20、30は、底の中心に対して180°回転対称に配置されているので、コンテナを180°回しても凹凸嵌合可能であり、積み重ね時にコンテナの向きを意識的に合わせる必要がない。
(4)コンテナ1の四隅が二重壁内リブ構造40を有するので、落下時の耐衝撃性を得られる。
(5)蓋10Bと本体10Aとをバックル60でロックする機構を設ける場合、蓋10B及び本体10Aにバックル60が取り付けられる軸受部70と、バックル60が係合するバックルロック部80の双方が形成されているため、蓋10Bと本体10Aをバックル60が取り付けられる側及びバックル60が係合する側のいずれにも使用できる。
(6)蓋と本体とのロック機構50を全側面に設けた場合は、落下時に蓋と本体とが開きにくい。
(7)空箱輸送時には、蓋10Bと本体10Aを入れ子式に積み重ねることができ、体積を減らせる。
【符号の説明】
【0047】
1 コンテナ 10 本体、蓋
11 凹所 12 底部
13 側壁部
20 外側凸部 21L 長辺部
21S 短辺部 22L 傾斜面
22S 傾斜面
30 内側凸部 31L 長辺部
31S 短辺部 32L 傾斜面
32S 傾斜面 35 コーナーリブ
40 二重壁内リブ構造 41 外壁
42 上壁 43 リブ
50 ロック機構 60 バックル
61 回動支点部 62 引っ掛け部
70 軸受部 71 切り欠き
72 溝部 80 バックルロック部
81 張出部 82 突片
83 凹部
90 緩衝材 91 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の電池の一部(下部)を収容する凹所を有するプラスチック製の本体と、
該本体の凹所に配置された、前記電池の下端部が差し込まれる溝が形成された本体緩衝材と、
前記電池の残りの部分(上部)を収容する凹所を有するとともに、前記本体の前記凹所を閉じるプラスチック製の蓋と、
前記蓋の凹所に配置された、前記電池の上端部が差し込まれる溝が形成された蓋緩衝材と、
を具備することを特徴とする電池輸送用コンテナ。
【請求項2】
前記本体と前記蓋とが同じ形状であることを特徴とする請求項1記載の電池輸送用コンテナ。
【請求項3】
前記本体の底面及び前記蓋の上面に、他の本体及び蓋とのスタッキング用凹凸嵌合部が形成されており、同部の形状が180°回転対称であることを特徴とする請求項1又は2記載の電池輸送用コンテナ。
【請求項4】
前記本体及び蓋の凹所が外開き形状を有し、
前記緩衝材が、前記本体又は蓋の凹所の底又は天井の所定高さ以下の部分にのみ配置されており、
空の本体及び蓋を、それらの凹所内に重ねるように積み上げ可能であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電池輸送用コンテナ。
【請求項5】
前記本体及び/又は前記蓋の前記凹所の側壁が、二重壁と、両壁間に掛け渡すように形成されたリブと、を有する二重壁内リブ構造を備えることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の電池輸送用コンテナ。
【請求項6】
前記本体及び/又は前記蓋の前記凹所の側壁の中央に、閉じた前記蓋を前記本体に係止するバックル部が設けられており、該バックル部の両側に前記二重壁内リブ構造が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電池輸送用コンテナ。
【請求項7】
前記二重壁内リブ構造が、前記本体及び蓋の前記凹所の開口部から上又は下方向の1/2程度以下の高さ範囲に設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電池輸送用コンテナ。
【請求項8】
板状の電池を受け入れる凹所を有するプラスチック製の本体と、
前記本体の凹所を閉じるプラスチック製の蓋と、
を具備し、
前記本体の底面及び前記蓋の上面に、他の本体及び蓋とのスタッキング用凹凸嵌合部が形成されており、
該嵌合部の端が斜面となっており、
前記蓋の上面に前記本体の底面を乗せた際に、前記嵌合部の斜面同士が当接し、前記本体を前記蓋に対して前記斜面に沿ってスライドさせることにより、前記嵌合部が凹凸嵌合することを特徴とする電池輸送用コンテナ。
【請求項9】
板状の電池を受け入れる凹所を有するプラスチック製の本体と、
前記本体の凹所を閉じるプラスチック製の蓋と、
閉じた前記蓋を前記本体に係止するバックルであって、回動支点部及び引っ掛け部を有するバックルと、
を具備し、
前記バックル回動支点を受ける軸受部、及び、前記バックルの引っ掛け部と係合するバックルロック部の双方を、前記本体及び蓋が有することを特徴とする電池輸送用コンテナ。
【請求項10】
前記バックルをロックするときに前記バックルと前記本体又は前記蓋体の間に指が入る
ことを特徴とする請求項9記載の電池輸送用容器。
【請求項11】
前記バックルロック部が、前記バックルの前記引っ掛け部を上下から挟む構造であることを特徴とする請求項9又は10記載のバックル輸送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−40324(P2011−40324A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188472(P2009−188472)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】