説明

電池

【課題】捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制して、捲回電極体の巻き緩みや座屈を抑制することができる電池を提供する。
【解決手段】電池1は、正極板10、負極板20、及びセパレータ(第1セパレータ31及び第2セパレータ35)を筒状に捲回してなる捲回電極体40を備える。捲回電極体40は、正極板10、負極板20、及びセパレータのうちセパレータ(第1セパレータ31及び第2セパレータ35)のみを、捲回電極体40の最内側に位置する捲回開始位置SPから複数周回捲回してなるセパレータ捲回部30、を有する。セパレータ捲回部30は、一体に固められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲回電極体を有する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー密度の高い電池として、正極板、負極板、及びセパレータを捲回してなる捲回電極体を有する電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−185201号公報
【0004】
特許文献1には、正極板、負極板、及びセパレータを筒状に捲回してなる電極群(以下、捲回電極体ともいう)を備えるリチウムイオン二次電池が開示されている。さらに、捲回電極体として、セパレータのみを、当該捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回(2〜4巻)捲回してなるセパレータ巻芯部(以下、セパレータ捲回部ともいう)を有する捲回電極体が開示されている(特許文献1の図3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池の使用時(充放電時)には、捲回電極体(詳細には、正極板及び負極板)が膨張・収縮する。しかしながら、特許文献1の電池では、捲回電極体(詳細には、正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って、捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形してしまう虞があった。具体的には、セパレータを単に捲回しただけのセパレータ捲回部では、軸芯として十分に機能することができない(軸芯として十分な強度がない)ため、捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができず、捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制することができない虞があった。
【0006】
このため、特許文献1の電池では、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って、捲回電極体において、正極板、負極板、及びセパレータの捲回の緩み(以下、捲回電極体の巻き緩みともいう)が生じる虞があった。これにより、セパレータを挟んで隣り合う正極板と負極板との間の距離が不均一になり、電池内部抵抗の上昇や電池容量の低下を引き起こす虞があった。さらには、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮が繰り返されることで、捲回電極体の内側(中心側)において座屈が生じる虞があった。これにより、捲回電極体を構成する正極板、負極板、及びセパレータが破断し、内部短絡(正極板と負極板との接触)が生じる虞もあった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制して、捲回電極体の巻き緩みや座屈を抑制することができる電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、正極板、負極板、及びセパレータを筒状に捲回してなる捲回電極体であって、上記正極板、上記負極板、及び上記セパレータのうち上記セパレータのみを、当該捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回捲回してなるセパレータ捲回部、を有する捲回電極体、を備える電池において、上記セパレータ捲回部は、一体に固められてなる電池である。
【0009】
上述の電池では、捲回電極体が、セパレータ捲回部を有している。ここで、セパレータ捲回部とは、正極板、負極板、及びセパレータのうちセパレータのみを、当該捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回(例えば、10〜20周)捲回してなる部位である。
【0010】
しかしながら、上述の電池では、特許文献1の電池とは異なり、セパレータ捲回部が一体に固められている。すなわち、セパレータ捲回部を構成するセパレータが、単に捲回されているだけではなく、一体に固められている(1つの塊とされている)。
【0011】
このようなセパレータ捲回部は、強固な軸芯として機能する。このため、上述の電池では、捲回電極体(詳細には、正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って、捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形するのを抑制することができる。具体的には、一体に固められた(1つの塊とされた)セパレータ捲回部によって、捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができ、これによって、捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制することができる。
【0012】
このため、上述の電池では、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮に起因した、捲回電極体の巻き緩み(正極板、負極板、及びセパレータの捲回の緩み)を抑制することができる。これにより、セパレータを挟んで隣り合う正極板と負極板との間の距離が不均一になるのを抑制でき、その結果、電池内部抵抗の上昇や電池容量の低下を抑制することができる。さらには、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮が繰り返されることに起因した「捲回電極体の座屈」を抑制することもできる。これにより、捲回電極体を構成する正極板、負極板、及びセパレータの破断を抑制でき、その結果、上記破断に伴う内部短絡(正極板と負極板との接触)を抑制することができる。
【0013】
さらに、上記の電池であって、前記セパレータ捲回部は、接着剤により一体に固められてなる電池とすると良い。
【0014】
上述の電池では、セパレータ捲回部が、接着剤により一体に固められている(1つの塊とされている)。具体的には、セパレータ捲回部において径方向に隣り合うセパレータが接着剤により接着することで、セパレータ捲回部が一体に固められている(1つの塊とされている)。
【0015】
接着剤によってセパレータ捲回部を一体に固めることで、セパレータ捲回部を強固な軸芯とすることができる。これにより、セパレータ捲回部によって、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができ、これによって、捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制することができる。
【0016】
なお、接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤(例えば、アラルダイト;チバガイギ社製)を用いることができる。
【0017】
また、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部」は、例えば、次のようにして形成することができる。例えば、まず、捲回工程において、セパレータのみを捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回捲回してなる「セパレータ捲回部」を有する捲回電極体を形成する。
【0018】
具体的には、例えば、2枚のセパレータ(第1セパレータと第2セパレータとする)を捲回装置の捲回軸の周りに複数周回捲回してセパレータ捲回部を形成する。その後、第1セパレータの外側に負極板を配置して、第1セパレータに沿って負極板を捲回し、さらに、捲回した負極板に沿って第2セパレータを捲回する。引き続き、第2セパレータの外側に正極板を配置して、第2セパレータに沿って正極板を捲回する。その後も、第1セパレータ、負極板20、第2セパレータ、及び正極板を捲回してゆき、円筒状の捲回電極体を形成する。その後、捲回装置の捲回軸を、捲回電極体から抜き取る。これにより、セパレータのみを捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回捲回してなる「セパレータ捲回部」を有する、筒状の捲回電極体が形成される。
【0019】
次いで、セパレータ捲回部の内周面に接着剤(アラルダイトなど)を塗布することで、セパレータ捲回部を構成するセパレータ全体に接着剤を浸透(含浸)させる。その後、浸透させた接着剤を硬化させることで、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部」を形成することができる。
【0020】
また、捲回工程においてセパレータを捲回する前に、予め、セパレータ捲回部を構成する部位(セパレータのうち、セパレータの一端からセパレータ捲回部の捲回長さを有する部位)に接着剤を塗布しておき、接着剤付きのセパレータを捲回するようにしても良い。セパレータ捲回部を形成した後、セパレータに塗布しておいた接着剤を硬化させることで、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部」を形成することができる。
【0021】
また、前記の電池であって、前記セパレータ捲回部は、当該セパレータ捲回部をなす前記セパレータの溶着により、一体に固められてなる電池とすると良い。
【0022】
上述の電池では、セパレータ捲回部が、当該セパレータ捲回部をなすセパレータの溶着により、一体に固められている。具体的には、セパレータ捲回部において径方向に隣り合うセパレータを溶着して、セパレータ捲回部を一体に固めている(1つの塊としている)。換言すれば、溶着により、セパレータ捲回部において径方向に隣り合うセパレータを接合して、セパレータ捲回部を一体に固めている(1つの塊としている)。
【0023】
セパレータの溶着によりセパレータ捲回部を一体に固めることで、セパレータ捲回部を強固な軸芯とすることができる。これにより、セパレータ捲回部によって、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができ、これによって、捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制することができる。
【0024】
なお、「セパレータの溶着により一体に固められたセパレータ捲回部」は、例えば、次のようにして形成することができる。例えば、まず、前述のように、捲回工程において、セパレータのみを捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回捲回してなる「セパレータ捲回部」を有する、筒状の捲回電極体を形成する。次いで、棒状のヒータ(例えば、シーズヒータ)を捲回電極体の筒内(詳細には、セパレータ捲回部の内側)に挿入し、セパレータ捲回部(これを構成するセパレータ)を溶融する(軟化させる)。その後、ヒータを捲回電極体の筒内から抜き取り、冷却によりセパレータ捲回部を硬化させることで、セパレータ捲回部を構成するセパレータが一体化する(径方向に隣り合うセパレータが接着する)。このようにして、「セパレータの溶着により一体に固められたセパレータ捲回部」を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1,2にかかる電池の側面図である。
【図2】同電池の上面図である。
【図3】同電池の縦断面図であり、図2のD−D断面図に相当する。
【図4】同電池の横断面図であり、図1のC−C断面図に相当する。
【図5】同電池の横断面の部分拡大図であり、図4のB部拡大図に相当する。
【図6】実施例1,2にかかる正極板を示す図である。
【図7】実施例1,2にかかる負極板を示す図である。
【図8】実施例1,2にかかる捲回電極体の縦断面図である。
【図9】実施例2にかかる溶着工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例1)
本実施例1の電池1は、図1及び図2に示すように、円筒状の密閉型二次電池である。この電池1は、図3に示すように、円筒状の捲回電極体40と、この捲回電極体40を収容する円筒状の電池ケース60とを有する。このうち、捲回電極体40は、正極板10、負極板20、第1セパレータ31、及び第2セパレータ35を、軸線AXの周りに円筒状に捲回した捲回電極体である。
【0027】
正極板10は、図6に示すように、正極集電箔11が延びる長手方向(図6において左右方向)の一方辺10bに沿って延び、正極集電箔11及び正極合材層12を有する正極活物質塗工部14と、この正極活物質塗工部14と隣り合って長手方向の一方辺10bに沿って延び、正極合材層12を有することなく、正極集電箔11のみからなる正極活物質未塗工部13とを有している。
【0028】
なお、正極集電箔11としては、例えば、アルミニウム箔を用いることができる。また、正極合材層12は、正極活物質やバインダなどにより構成されている。正極活物質としては、例えば、ニッケル酸リチウムを用いることができる。
【0029】
負極板20は、図7に示すように、負極集電箔21が延びる長手方向(図7において左右方向)の一方辺20bに沿って延び、負極集電箔21及び負極合材層22を有する負極活物質塗工部24と、この負極活物質塗工部24と隣り合って長手方向の一方辺20bに沿って延び、負極合材層22を有することなく、負極集電箔21のみからなる負極活物質未塗工部23とを有している。
【0030】
なお、負極集電箔21としては、例えば、銅箔を用いることができる。また、負極合材層22は、負極活物質やバインダなどにより構成されている。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛を用いることができる。
また、本実施例1では、第1セパレータ31及び第2セパレータ35として、ポリエチレンからなる多孔質シートを用いている。
【0031】
電池ケース60は、円筒状の電池ケースであり、有底円筒状をなす金属製の電池ケース本体61と、円板状をなす金属製の封口蓋62とを有する(図1〜図3参照)。封口蓋62は、図3に示すように、電気絶縁性樹脂からなる円環状のガスケット69を電池ケース本体61との間に介在させて、電池ケース本体61の開口部61Hでかしめられている。これにより、電池ケース本体61と封口蓋62との間を電気的に絶縁しつつ、捲回電極体40を収容した電池ケース本体61と封口蓋62とが一体とされて、電池ケース60をなしている。
【0032】
ここで、本実施例1の捲回電極体40について、詳細に説明する。
捲回電極体40は、図3に示すように、軸線方向(軸線AXが延びる方向、図3において上下方向)について捲回電極体40の一端部(図3において上端部)をなす正極捲回部44と、軸線方向Xについて捲回電極体40の他端部(図3において下端部)をなす負極捲回部46と、正極捲回部44と負極捲回部46との間に位置する発電部42とを有する。
【0033】
正極捲回部44は、正極板10の正極活物質未塗工部13のみが捲回されている部位である。負極捲回部46は、負極板20の負極活物質未塗工部23のみが捲回されている部位である。発電部42は、正極板10(正極活物質塗工部14)と負極板20(負極活物質塗工部24)と第1セパレータ31と第2セパレータ35とが捲回されてなる部位である。なお、第1セパレータ31と第2セパレータ35は、正極板10と負極板20との間に位置し、両電極板間を電気的に絶縁している。
【0034】
正極捲回部44は、その端面44bにおいて、金属板からなる正極集電部材71に溶接されている(図3参照)。さらに、正極集電部材71は、帯状の金属薄板からなる接続部材53を通じて、封口蓋62の天井部62bに電気的に接続されている。これにより、本実施例1の電池1では、封口蓋62の天井部62bが正極外部端子となる。
【0035】
負極捲回部46は、その端面46bにおいて、金属板からなる負極集電部材72に溶接されている(図3参照)。さらに、負極集電部材72は、電池ケース本体61の底部61bに溶接されている。これにより、本実施例の電池1では、電池ケース本体61の底部61bが負極外部端子となる。
【0036】
捲回電極体40は、例えば、正極板10及び負極板20を、軸線AXの周りに50周回捲回した捲回電極体であるが、図3〜図5及び図8では、捲回数を省略(図3及び図8では、正極板10及び負極板20の捲回数を4周回に省略)している。
なお、図3は、電池1の縦断面図であり、図2のD−D断面図に相当する。また、図4は、電池1の横断面図であり、図1のC−C断面図に相当する。また、図5は、電池1の横断面の部分拡大図であり、図4のB部拡大図に相当する。
【0037】
さらに、本実施例1の捲回電極体40は、セパレータ捲回部30を有している。セパレータ捲回部30は、セパレータのみ(第1セパレータ31と第2セパレータ35だけ)を、捲回電極体40の最内側(中心側)に位置する捲回開始位置SPから複数周回(例えば、10〜20周回)捲回してなる部位である(図4及び図5参照)。なお、図3〜図5及び図8では、セパレータ捲回部30の捲回数を省略している。
【0038】
ところで、電池の使用時(充放電時)には、捲回電極体(詳細には、正極板及び負極板)が膨張・収縮する。しかしながら、前述のように、特許文献1の電池では、捲回電極体(詳細には、正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って、捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形してしまう虞があった。具体的には、特許文献1の電池のセパレータ捲回部(セパレータ巻芯部)は、セパレータを単に捲回しただけのセパレータ捲回部であるため、軸芯として十分に機能することができない(軸芯として十分な強度がない)。このため、特許文献1のセパレータ捲回部では、捲回電極体が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができず、捲回電極体の内側(中心側)への変形を抑制することができない虞があった。
【0039】
このため、特許文献1の電池では、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮に伴って、捲回電極体において、正極板、負極板、及びセパレータの捲回の緩み(捲回電極体の巻き緩み)が生じる虞があった。これにより、セパレータを挟んで隣り合う正極板と負極板との間の距離が不均一になり、電池内部抵抗の上昇や電池容量の低下を引き起こす虞があった。さらには、捲回電極体(正極板及び負極板)の膨張・収縮が繰り返されることで、捲回電極体の内側(中心側)において座屈が生じる虞があった。これにより、捲回電極体を構成する正極板、負極板、及びセパレータが破断し、内部短絡(正極板と負極板との接触)が生じる虞もあった。
【0040】
一方、本実施例1の電池1では、特許文献1の電池とは異なり、セパレータ捲回部30が、接着剤により一体に固められている。すなわち、セパレータ捲回部30を構成する第1セパレータ31及び第2セパレータ35が、単に捲回されているだけではなく、接着剤により一体に固められている(1つの塊とされている)。具体的には、セパレータ捲回部30において、径方向に隣り合う第1セパレータ31と第2セパレータ35が接着剤により接着することで、セパレータ捲回部30が一体に固められている(1つの塊とされている)。
【0041】
接着剤を用いてセパレータ捲回部30を一体に固めることで、セパレータ捲回部30を強固な軸芯とすることができる。これにより、セパレータ捲回部30によって、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮に伴って捲回電極体40が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができ、その結果、捲回電極体40の内側(中心側)への変形を抑制することができる。
【0042】
このため、本実施例1の電池1では、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮に起因した、捲回電極体40の巻き緩み(正極板10、負極板20、第1セパレータ31、及び第2セパレータ35の捲回の緩み)を抑制することができる。これにより、セパレータ(第1セパレータ31または第2セパレータ35)を挟んで隣り合う正極板10と負極板20との間の距離が不均一になるのを抑制でき、その結果、電池内部抵抗の上昇や電池容量の低下を抑制することができる。
【0043】
さらには、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮が繰り返されることに起因した「捲回電極体40の座屈」を抑制することもできる。これにより、捲回電極体40を構成する正極板10、負極板20、第1セパレータ31、及び第2セパレータ35の破断を抑制でき、その結果、上記破断に伴う内部短絡(正極板10と負極板20との接触)を抑制することができる。
【0044】
なお、本実施例1では、接着剤として、エポキシ樹脂系の接着剤(例えば、アラルダイト;チバガイギ社製)を用いている。
【0045】
また、本実施例1の電池1では、電池ケース本体61によって捲回電極体40の外側(外周)を包囲している(図3及び図4参照)ため、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮に伴う捲回電極体40の外側への変形も抑制することができる。詳細には、電池ケース本体61によって、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮に伴って捲回電極体40が外側に向かって変形しようとする力を受け止めることができ、その結果、捲回電極体40の外側への変形を抑制することができる。これにより、捲回電極体40の巻き緩みや座屈を、より一層抑制することができる。
【0046】
次に、電池1の製造方法について、以下に説明する。
まず、図6に示すように、帯状の正極集電箔11の表面に正極合材層12を形成した正極板10を用意する。この正極板10は、正極集電箔11が延びる長手方向(図6において左右方向)の一方辺10bに沿って延び、正極集電箔11及び正極合材層12を有する正極活物質塗工部14と、この正極活物質塗工部14と隣り合って長手方向の一方辺10bに沿って延び、正極合材層12を有することなく、正極集電箔11のみからなる正極活物質未塗工部13とを有している。
【0047】
さらに、図7に示すように、帯状の負極集電箔21の表面に負極合材層22を形成した負極板20を用意する。この負極板20は、負極集電箔21が延びる長手方向(図7において左右方向)の一方辺20bに沿って延び、負極集電箔21及び負極合材層22を有する負極活物質塗工部24と、この負極活物質塗工部24と隣り合って長手方向の一方辺20bに沿って延び、負極合材層22を有することなく、負極集電箔21のみからなる負極活物質未塗工部23とを有している。
【0048】
また、帯状の第1セパレータ31と、帯状の第2セパレータ35とを用意する。なお、本実施例1では、第1セパレータ31及び第2セパレータ35として、ポリエチレンからなる多孔質シートを用いている。
【0049】
次に、捲回工程において、セパレータ(第1セパレータ31及び第2セパレータ35)のみを捲回電極体40の最内側に位置する捲回開始位置SPから複数周回捲回してなる「セパレータ捲回部30」を有する捲回電極体40を形成する(図4、図5、図8参照)。
具体的には、まず、2枚のセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)を重ね合わせるようにして、捲回装置の捲回軸(図示なし)の周りに複数周回(例えば、10〜20周回)捲回し、セパレータ捲回部30を形成する(図5参照)。なお、図4及び図5では、捲回方向をFWとして表している。
【0050】
その後、第1セパレータ31の外側に負極板20を配置して、第1セパレータ31に沿って負極板20を捲回する。次いで、第2セパレータ35を、捲回した負極板20に沿って捲回する。引き続き、第2セパレータ35の外側に正極板10を配置して、第2セパレータ35に沿って正極板10を捲回する。但し、正極板10の正極活物質未塗工部13と負極板20の負極活物質未塗工部23が、幅方向(図8において上下方向)について反対側に位置するように(図8において、正極活物質未塗工部13が上方、負極活物質未塗工部23が下方に位置するように)、負極板20及び正極板10を配置して捲回する。
【0051】
その後も、第1セパレータ31、負極板20、第2セパレータ35、及び正極板10を捲回してゆき、円筒状の捲回電極体を形成する。その後、捲回装置の捲回軸(図示なし)を、捲回電極体から抜き取る。これにより、セパレータ(第1セパレータ31及び第2セパレータ35)のみを捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置SPから複数周回捲回してなる「セパレータ捲回部30」を有する、筒状の捲回電極体40が形成される(図8参照)。
【0052】
次いで、接着工程に進み、セパレータ捲回部30の内周面30bに、図示しない接着剤(例えば、アラルダイト)を塗布する。これにより、セパレータ捲回部30を構成するセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)の全体に、接着剤を浸透(含浸)させる。その後、浸透させた接着剤を硬化させることで、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部30」を形成することができる。具体的には、セパレータ捲回部30において、径方向(図8において左右方向)に隣り合う第1セパレータ31と第2セパレータ35を、接着剤により接着して、セパレータ捲回部30を一体に固めている(1つの塊にしている)。
【0053】
その後、正極捲回部44に正極集電部材71を溶接した。具体的には、正極集電部材71を、正極捲回部44の端面44b(図3において上端面)に突き当てた状態で、正極集電部材71の表面にレーザービームを照射して、正極捲回部44と正極集電部材71とをレーザ溶接した。さらに、負極捲回部46に負極集電部材72を溶接した。具体的には、負極集電部材72を、負極捲回部46の端面46b(図3において下端面)に突き当てた状態で、負極集電部材72の表面にレーザービームを照射して、負極捲回部46と負極集電部材72とをレーザ溶接した。
【0054】
その後、正極集電部材71及び負極集電部材72を溶接した捲回電極体40を、電池ケース本体61の内部に収容する(図3参照)。次いで、負極集電部材72を電池ケース本体61の底部61bに溶接する。これにより、電池ケース本体61の底部61bが負極外部端子となる。さらに、接続部材53の一端部を正極集電部材71に溶接し、接続部材53の他端部を封口蓋62の天井部62bに溶接する。これにより、正極集電部材71と封口蓋62の天井部62bとが接続部材53を通じて電気的に接続されるので、封口蓋62の天井部62bが正極外部端子となる。
【0055】
次いで、電池ケース本体61の内部に電解液を注入した後、ガスケット69を外周端部62cに配置した封口蓋62を、電池ケース本体61の開口部61Hの内側に配置した状態で、電池ケース本体61の開口部61Hを加締める。このようにして、電池ケース本体61と封口蓋62との間を電気的に絶縁しつつ、電池ケース本体61と封口蓋62とを一体とした電池ケース60を形成する。これにより、本実施例1の電池1が完成する。
【0056】
(実施例2)
次に、実施例2にかかる電池101について説明する。本実施例2の電池101は、実施例1の電池1と比較して、セパレータ捲回部30が溶着により一体に固められている点のみが異なり、その他については実施例1と同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
【0057】
本実施例2の電池101では、セパレータ捲回部30が、セパレータ捲回部30をなすセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)の溶着により、一体に固められている(1つの塊とされている)。具体的には、セパレータ捲回部30において径方向に隣り合うセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)を溶着して、セパレータ捲回部30を一体に固めている(1つの塊としている)。換言すれば、溶着により、セパレータ捲回部30において径方向に隣り合うセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)を接合して、セパレータ捲回部30を一体に固めている(一塊りとしている)。
【0058】
セパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)の溶着によりセパレータ捲回部30を一体に固めることで、セパレータ捲回部30を強固な軸芯とすることができる。 これにより、セパレータ捲回部30によって、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮に伴って捲回電極体40が内側(中心側)に向かって変形しようとする力を受け止めることができ、その結果、捲回電極体40の内側(中心側)への変形を抑制することができる。
【0059】
このため、本実施例2の電池101では、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮に起因した、捲回電極体40の巻き緩み(正極板10、負極板20、第1セパレータ31、及び第2セパレータ35の捲回の緩み)を抑制することができる。これにより、セパレータ(第1セパレータ31または第2セパレータ35)を挟んで隣り合う正極板10と負極板20との間の距離が不均一になるのを抑制でき、その結果、電池内部抵抗の上昇や電池容量の低下を抑制することができる。
【0060】
さらには、捲回電極体40(正極板10及び負極板20)の膨張・収縮が繰り返されることに起因した「捲回電極体40の座屈」を抑制することもできる。これにより、捲回電極体40を構成する正極板10、負極板20、第1セパレータ31、及び第2セパレータ35の破断を抑制でき、その結果、上記破断に伴う内部短絡(正極板10と負極板20との接触)を抑制することができる。
【0061】
次に、電池101の製造方法について、以下に説明する。
まず、実施例1と同様に、捲回工程において、セパレータ(第1セパレータ31及び第2セパレータ35)のみを捲回電極体40の最内側に位置する捲回開始位置SPから複数周回捲回してなる「セパレータ捲回部30」を有する捲回電極体40を形成する(図4、図5、図8参照)。
【0062】
次いで、溶着工程に進み、図9に示すように、棒状のヒータ90(例えば、シーズヒータ)を、捲回電極体40の筒内(詳細には、セパレータ捲回部30の内側)に挿入し、セパレータ捲回部30(これを構成する第1セパレータ31及び第2セパレータ35)を溶融する(軟化させる)。例えば、ヒータ90により、セパレータ捲回部30(これを構成する第1セパレータ31及び第2セパレータ35)を、120℃〜200℃に加熱して溶融させる。加熱時間は、例えば、3〜10秒間程度とする。
【0063】
その後、ヒータ90を捲回電極体40の筒内から取り出し、溶融させたセパレータ捲回部30(これを構成する第1セパレータ31及び第2セパレータ35)を冷却して、セパレータ捲回部30を硬化させる。これにより、セパレータ捲回部30を構成するセパレータ(第1セパレータ31及び第2セパレータ35)が溶着する。詳細には、溶着により、径方向(図8及び図9において左右方向)に隣り合うセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)が接合する。このようにして、「セパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)の溶着により一体に固められたセパレータ捲回部30」を形成することができる。
【0064】
次に、実施例1と同様にして、正極捲回部44に正極集電部材71を溶接し、負極捲回部46に負極集電部材72を溶接する。その後、正極集電部材71及び負極集電部材72を溶接した捲回電極体40を、電池ケース本体61の内部に収容する(図3参照)。次いで、負極集電部材72を電池ケース本体61の底部61bに溶接する。さらに、接続部材53の一端部を正極集電部材71に溶接し、接続部材53の他端部を封口蓋62の天井部62bに溶接する。次いで、電池ケース本体61の内部に電解液を注入した後、ガスケット69を外周端部62cに配置した封口蓋62を、電池ケース本体61の開口部61Hの内側に配置した状態で、電池ケース本体61の開口部61Hを加締める。これにより、本実施例2の電池101が完成する。
【0065】
以上において、本発明を実施例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0066】
例えば、実施例1では、捲回工程において捲回電極体40を形成した後、セパレータ捲回部30の内周面30bに接着剤を塗布し、セパレータ捲回部30を構成するセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)の全体に接着剤を浸透(含浸)させて、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部30」を形成した。
【0067】
しかしながら、捲回工程においてセパレータ(第1セパレータ31と第2セパレータ35)を捲回する前に、予め、セパレータ捲回部30を構成する予定の部位(セパレータのうち、セパレータの一端からセパレータ捲回部30の捲回長さを有する部位)の表面に接着剤を塗布しておき、接着剤付きのセパレータを捲回するようにしても良い。このようにしても、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部」を形成することができる。
【0068】
また、接着剤として、シート状の半硬化接着剤(例えば、プリプレグ)を用いるようにしても良い。具体的には、捲回工程において、第1セパレータ31と第2セパレータ35との間にシート状の半硬化接着剤を挟むようにしてこれらを捲回して、第1セパレータ31及び第2セパレータ35と共に半硬化接着剤が捲回された「半硬化接着剤入りのセパレータ捲回部30」を形成するようにしても良い。その後、半硬化接着剤を硬化させることで、「接着剤により一体に固められたセパレータ捲回部」を形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,101 電池
10 正極板
20 負極板
30 セパレータ捲回部
31 第1セパレータ
35 第2セパレータ
40 捲回電極体
SP 捲回開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板、負極板、及びセパレータを筒状に捲回してなる捲回電極体であって、
上記正極板、上記負極板、及び上記セパレータのうち上記セパレータのみを、当該捲回電極体の最内側に位置する捲回開始位置から複数周回捲回してなるセパレータ捲回部、を有する
捲回電極体、を備える
電池において、
上記セパレータ捲回部は、一体に固められてなる
電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池であって、
前記セパレータ捲回部は、接着剤により一体に固められてなる
電池。
【請求項3】
請求項1に記載の電池であって、
前記セパレータ捲回部は、当該セパレータ捲回部をなす前記セパレータの溶着により、一体に固められてなる
電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−9249(P2012−9249A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143623(P2010−143623)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】