説明

電池

【課題】ラミネートフィルムの溶着部の信頼性が低下するのを抑制することが可能な電池を提供する。
【解決手段】この電池100は、ラミネートフィルムの内側表面1aの一部と外側表面1bの一部とが対向して溶着された溶着部5を有する外装体1と、外装体1に収容されるとともに、極板が巻回されて、内周面および外周面を有する発電要素4と、発電要素4と接続され、外装体1の外部へ露出する正極端子2および負極端子3とを備え、外装体1の溶着部5が、溶着部5が配置された面の投影面において、発電要素4の内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aと、正極端子2(負極端子3)の側端部2a(3a)(点B)との間の領域(A−B間の領域)に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池に関し、特に、ラミネートフィルムからなる外装体を備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラミネートフィルムからなる外装体を備えた電池が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ラミネートフィルムの内側表面の一部と外側表面の一部とが重ね合わされて溶着された溶着部を有する外装体を備えた電池が開示されている。この外装体は、溶着部が形成されたチューブ状(筒状)のラミネートフィルムの長手方向の両端部でラミネートフィルムの内面同士を接触させて溶着した封口部を有している。また、電池には、一対のリード端子が外装体の片側の封口部から外部に露出するように設けられている。一対のリード端子は、互いに間隔を隔てるように電池の幅方向(短手方向)の両側に配置されており、外装体の溶着部が一対のリード端子の間の位置に設けられている。したがって、外装体の溶着部は、電池の幅方向の中央部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−213964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可撓性を有するラミネートフィルムを外装体に用いた電池では、電池の充放電に伴って外装体が膨張および収縮するため、膨張および収縮に伴う外装体の変位量が電池の幅方向の中央部で大きくなる。ここで、上記特許文献1の構成では、膨張および収縮に伴う変位量が大きくなる電池の中央部に溶着部が配置されるため、膨張および収縮に伴って溶着部に比較的大きな力が加わり、その結果、溶着部が開いてしまうなど、溶着部の信頼性が低下するという問題点がある。このような溶着部の信頼性の低下は、電池の寿命の短縮および信頼性の低下につながる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、ラミネートフィルムの溶着部の信頼性が低下するのを抑制することが可能な電池を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明に従う電池は、ラミネートフィルムの内側表面の一部と外側表面の一部とが対向して溶着された溶着部を有する外装体と、外装体に収容されるとともに、極板が巻回されて、内周面および外周面を有する発電要素と、発電要素と接続され、外装体の外部へ露出するリード端子とを備え、外装体の溶着部が、溶着部が配置された面の投影面において、発電要素の内周面の端部と外周面の端部との中間点(A)と、リード端子の側端部(B)との間の領域(A−B間の領域)に配置されている。
【0008】
この電池では、上記のように、外装体の溶着部を、溶着部が配置された面の投影面において、発電要素の内周面の端部と外周面の端部との中間点(A)と、リード端子の側端部(B)との間の領域(A−B間の領域)に配置することによって、膨張および収縮に伴う外装体の変位量が大きくなる電池の幅方向中央部に溶着部の全体が配置されることがないので、膨張および収縮に伴って溶着部に比較的大きな力が加わるのを抑制することができる。その結果、溶着部の信頼性が低下するのを抑制することができる。また、外装体の側端部近傍では、封口部に向かって外装体の形状が窪むように大きく変化する。このため、この領域に溶着部が配置されると、溶着部も屈曲して溶着部に力が加わりやすい。本発明では、この外装体の側端部近傍の領域にも溶着部の全体が配置されることがないので、溶着部の信頼性を向上させることができる。
【0009】
上記本発明に従う電池において、好ましくは、ラミネートフィルムの内側表面の一部と外側表面の一部とが対向して溶着されることでラミネートフィルムが筒状に形成されて、筒状の一端部から正極のリード端子が露出するように配置されており、筒状の他端部から負極のリード端子が露出するように配置されており、筒状の両端部が封口されている。このように構成すれば、筒状のラミネートフィルムの一端側と他端側とに正極のリード端子と負極のリード端子とをそれぞれ1つずつ配置することができるので、電池の一端側または他端側の片方に正極および負極の両方のリード端子が幅方向に沿って並ぶように配置される場合と比較して、溶着部の配置領域(中間点(A)と側端部(B)との間(A−B間)の領域)を確保しやすい。また、正極および負極のリード端子の両方が電池の片側に並ばないので、容易に、各リード端子の幅を大きくしてリード端子の電気抵抗を小さくすることができる。ここで、リード端子を流れる電流によって発生する熱量はリード端子の電気抵抗に比例するため、充放電時のリード端子の発熱を抑制することができる。充放電時に大電流が流れやすい中型から大型の電池ではリード端子の発熱が大きくなりやすいため、本態様はこのような中型から大型の電池に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による電池の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1の500−500線に沿った断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による電池の溶着部の位置を説明するための図である。
【図4】電池の長手方向から見た封口部の部分拡大図である。
【図5】電池の外装体の層構造を示した拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による電池の溶着部を示した拡大断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による電池の第1変形例による溶着部の位置を説明するための図である。
【図8】本発明の一実施形態による電池の第2変形例による溶着部の位置を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態による電池の第3変形例による溶着部の位置を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態による電池の第4変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による電池100の構成(構造)について説明する。
【0013】
本発明の一実施形態による電池100は、図1に示すように、ラミネートフィルム(図5参照)からなる外装体1と、電池100の長手方向(Y方向)の両端部からそれぞれ外側に露出する平板状の正極端子2および負極端子3とを備えている。また、外装体1の内部には、図2に示すように、巻回式の発電要素4と、図示しない電解液とが収容されている。なお、正極端子2および負極端子3は、本発明の「リード端子」の一例である。
【0014】
本実施形態では、電池100は、10Ah以上の放電容量を有する比較的大容量の中型または大型のリチウムイオン電池である。具体的には、電池100は、電池100の幅方向(X方向)の外周長が約10cm以上約100cm以下であり、電池100の厚みt1(Z方向寸法)が約0.5cm以上約5cm以下である。
【0015】
図1に示すように、正極端子2および負極端子3は、それぞれ、アルミニウムおよび銅からなり、外装体1の長手方向(Y方向)の両端部の封口部6を介して外側に露出するように設けられている。これらの正極端子2および負極端子3は、電池100の幅方向(X方向)の同じ位置に設けられている。正極端子2および負極端子3の外部に露出した部分の幅(X方向寸法)W1は、それぞれ、封口部6の幅W2の約10%以上である。また、正極端子2および負極端子3は、約0.1mm以上の厚みを有する。
【0016】
図2に示すように、発電要素4は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されたセパレータとが互いに重ね合わされた状態で巻回されることによって形成されている。このため、発電要素4は、内周面および外周面を有する略筒状形状に形成されている。また、発電要素4は、平坦部4aと円弧状の湾曲部4bとを含む略長円形状の横断面形状を有する。
【0017】
図2および図6に示すように、外装体1には、ラミネートフィルムの幅方向(X方向)の一端P側(矢印X1方向側)の内側表面1aの一部と、他端Q側(矢印X2方向側)の外側表面1bの一部とが重ね合わされて(対向して)溶着された溶着部5が形成されている。図1に示すように、溶着部5は、外装体1の長手方向の全体にわたって直線状に延びる帯状形状を有する。また、溶着部5は、外装体1の短手方向(X方向)の幅W3を有する。
【0018】
本実施形態では、図3に示すように、溶着部5は、溶着部5が配置された面の投影面において(平面視において)、発電要素4の内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aと、正極端子2(および負極端子3)の側端部2a(3a)(点B)との間の領域(A−B間の領域)に配置されている。ここで、中間点Aとは、内周面端部4cと外周面端部4dとの間の二等分線S上の点である。具体的には、溶着部5のX方向の位置が、二等分線S上の中間点Aと、X1方向側の側端部2a(3a)(点B)との間の間隔D1の領域(A−B間の領域)に配置されている。本実施形態では、発電要素4の内周面端部4cと外周面端部4dとの間の間隔は、D2である。点B(側端部2a(3a))と、内周面端部4cとの間のX方向の間隔は、D3である。このため、2点A−B間の間隔D1は、間隔D3と、間隔D2の2分の1の間隔(D2/2)との和(D3+D2/2)に等しい。なお、図3では、理解の容易化のため、平面図の溶着部5にハッチングを付して図示している。
【0019】
また、溶着部5は、正極端子2および負極端子3(図1参照)とは重ならない位置に配置されている。さらに、溶着部5は、外装体1の発電要素4の収納部分における側端部1cとも重ならない位置に配置されている。また、本実施形態では、溶着部5は、X方向において、全体が正極端子2(負極端子3)と発電要素4の内周面端部4cとの間の間隔D3(D3<D1)の領域内に収まっている。詳細には、溶着部5の矢印X1方向側の辺5aは、発電要素4の矢印X1方向側の内周面端部4cからの距離D4の位置に配置されている。また、溶着部5の矢印X2方向側の辺5bは、点Bからの距離D5の位置に配置されている。
【0020】
なお、内周面端部4cよりも外側(X1方向側)の間隔D6の領域(内周面端部4cと外装体1の側端部1cとの間の領域)では、外装体1は、巻回式の発電要素4の外形に沿って円弧状に湾曲している。
【0021】
また、外装体1は、図1に示すように、電池100の長手方向(Y方向)の両端部において、内側表面1a同士が対向した状態で溶着されることにより形成された封口部6を有している。図4に示すように、電池100の両端部の封口部6は、それぞれ、平板状の正極端子2および負極端子3(図1参照)を挟み込んだ状態で溶着されている。また、封口部6は、平板状に形成されている。なお、図4では、封口部6以外の図示を省略している。
【0022】
封口部6では外装体1(ラミネートフィルム)の内側表面1a同士が溶着されるため、溶着部5の部分ではラミネートフィルムが合計3枚重なった状態で溶着され、溶着部5以外の部分では、ラミネートフィルムが合計2枚重なった状態で溶着されている。また、封口部6の正極端子2(負極端子3)が配置される部分(端子部分6a)では、外装体1(ラミネートフィルム)の内側表面1a同士によって正極端子2(負極端子3)が挟み込まれており、この正極端子2(負極端子3)も含めて合計3層(ラミネートフィルム2層+端子1層)が重なった状態でラミネートフィルムにより封口されている。
【0023】
また、封口部6の幅方向(X方向)の端部6bでは、外装体1(ラミネートフィルム)が折り畳まれ密着した状態で溶着されている。また、図1に示すように、封口部6は、外装体1の内側表面1a同士を溶着しているため、封口部6の幅W2は、発電要素4を収容した電池100の長手方向(Y方向)の中央部(厚みの大きい部分)における幅W4よりも大きい。
【0024】
図5に示すように、外装体1は、発電要素4が配置される内側から外側方向に向かって、PE溶着層11、PET層12、アルミニウム層13、PET層14およびPE溶着層15がこの順に積層されたラミネートフィルムからなる。
【0025】
外装体1(ラミネートフィルム)は、全体の厚み(総厚み)t2が約150μm以上約500μm以下となるように形成されている。なお、リチウムイオン電池100の高容量化(大型化)に伴い、外装体1の内部に収容される発電要素4も大型化して質量が大きくなるため、外装体1の総厚みt2が小さすぎると強度が不十分となるおそれがある一方、総厚みt2が大きすぎると封口部6などの均一な溶着が困難となりシールの信頼性が不十分となるおそれがある。このため、外装体1の総厚みt2は、電池100の大きさ(厚み)に応じて、約150μm以上約500μm以下の範囲内で、電池100の厚みt1(図2参照(約0.5cm以上約5cm以下))の約0.3%以上約5%以下とすることが好ましい。
【0026】
PE溶着層11および15は、溶着部5および封口部6を形成するための溶着樹脂層であり、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレンからなる。PE溶着層11および15を構成するポリエチレンは、約130℃の融点を有している。また、外装体1の内側表面1aに形成されたPE溶着層11および外側表面1bに形成されたPE溶着層15は、それぞれ厚みt3およびt7を有する。本実施形態では、PE溶着層11および15の厚みt3およびt7は、約50μm以上約200μm以下であり、好ましくは、約100μm以上約150μm以下である。
【0027】
アルミニウム層13とPET層12および14との間には、これらを互いに接合する接着層(接着剤、接着フィルムなど)を設けることが好ましい。接着層としては、エチレン−メタクリル酸共重合を用いることができる。また、エチレン−メタクリル酸共重合の他、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系、ゴム(シリコーン系、EPDM、クロロプレン系、ブチル系、SBR系、ニトリル系)などからなる接着層であってもよい。
【0028】
PET層12および14は、耐熱性および絶縁性を有する耐熱樹脂層である。PET層12および14は、ポリエステル系樹脂であり、ポリエチレンテレフタレートからなる。PET層12および14を構成するポリエチレンテレフタレートは、PE溶着層11および15の融点(約130℃)よりも高い約260℃の融点を有する。また、PET層12および14は、それぞれ、PE溶着層11および15の厚みt3およびt7(約50μm以上約200μm以下)よりも小さい厚みt4およびt5を有している。本実施形態では、PET層12および14の厚みt4およびt5は、それぞれ、約5μm以上約50μm以下である。PET層12(14)の厚みが約5μmよりも小さいと端子部分6aでPE溶着層11が溶け拡がった場合の短絡防止効果が得にくくなる一方、PET層12(14)の厚みが約50μmよりも大きいと外装体1が硬くなり、封口部6が幅方向(X方向)の端部6b付近において溶着しにくくなる。
【0029】
また、図5に示すように、PET層12は、外装体1の内側表面1aのPE溶着層11とアルミニウム層13との間(アルミニウム層13の内側)に配置されている。PET層14は、外装体1の外側表面1bのPE溶着層15とアルミニウム層13との間(アルミニウム層13の外側)に配置されている。これらの耐熱性のPET層12および14は、ラミネートフィルム(外装体1)の溶着時に、加熱されたPE溶着層11(15)が溶け拡がった場合でも、アルミニウム層13がPE溶着層11(15)から露出するのを防止する機能を有する。また、外側のPET層14は、外部の衝撃などによりアルミニウム層13が傷つけられるのを防ぐ防護層としての機能を有する。
【0030】
アルミニウム層13の内側のPET層12は、封口部6の溶着時に、端子部分6a(図4参照)でアルミニウム層13と正極端子2(負極端子3)とが接触して短絡するのを防止する機能を有する。また、電解液にLiPFなどが用いられる場合には、電池100の内部で水と反応してフッ酸(HF)が生成されアルミニウムを腐食させる場合がある。このため、PET層12は、内側表面1aのPE溶着層11が溶融して外装体1の内部にアルミニウム層13が露出するのを防止することによって、電池100内で発生するフッ酸によりアルミニウム層13が腐食するのを防止する機能を有する。
【0031】
図5に示すように、アルミニウム層13は、外装体1の内部および外部からのガスおよび液体を遮断する機能を有している。また、アルミニウム層13と樹脂層(PET層12および14)との間には、これらを互いに接合する接着層(接着剤、接着フィルムなど)を設けることができる。なお、接着層としては、エチレン−メタクリル酸共重合を用いることが好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合の他、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、シアノアクリレート系、ゴム(シリコーン系、EPDM、クロロプレン系、ブチル系、SBR系、ニトリル系)などからなる接着層であってもよい。さらに、接着層は樹脂層間、例えばPET層とPE層との間にあってもよい。
【0032】
アルミニウム層13は、約4μm以上約100μm以下の厚みt6を有するアルミニウム箔からなる。なお、アルミニウム層13の厚みt6は、約4μm以上約100μm以下の範囲内で、外装体1(ラミネートフィルム)の全体の厚みt2(約150μm以上約500μm以下)の約2%以上約30%以下が好ましく、より好ましくは、約4%以上約20%以下である。上記の通り、電池100は比較的大容量の中型または大型リチウムイオン電池であるため、大電流で放電した場合には、正極端子2(負極端子3)や発電要素4での発熱が大きくなる。このため、アルミニウム層13の厚みt6を上記の範囲とすることにより、熱伝導性に優れるアルミニウム層13によって電池100の熱を外装体1の全体に効果的に拡散させ、外装体1の全体から効果的に放熱することが可能となる。一方、アルミニウム層13の厚みt6が大きくなりすぎると、外装体1の変形に伴いアルミニウム層13に割れが発生しやすくなる。
【0033】
次に、上記した構造を有する本実施形態による電池100の製造プロセスについて説明する。
【0034】
まず、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されたセパレータとを互いに重ね合わせた状態で巻回し、渦巻き状の発電要素4(図2参照)を形成する。そして、平板状の正極端子2(図1参照)を正極板と接合し、平板状の負極端子3(図1参照)を負極板と接合する。
【0035】
図2および図6に示すように、ラミネートフィルム(外装体1)の一端P側の内側表面1aの一部と、他端Q側の外側表面1bの一部とを重ね合わせて溶着することにより、長手方向(Y方向)に延びる帯状の溶着部5(図1参照)を形成する。これにより、外装体1は、筒状(チューブ状)に形成される。溶着部5は、熱源による加熱溶着、電磁波を用いた高周波溶着、または、超音波振動を用いた超音波溶着などにより溶着する。
【0036】
次に、チューブ状(筒状)に形成した外装体1の内部に発電要素4を収納し、電解液を注入して筒状の両端部を封口(封止)する。具体的には、筒状の外装体1(ラミネートフィルム)の長手方向(Y方向)の一端部(Y2方向側端部)の開口部から正極端子2が露出するとともに、筒状の外装体1の他端部(Y1方向側端部)の開口部から負極端子3が露出するように配置して、発電要素4を外装体1の内部に収納する。この際、外装体1の溶着部5を、全体が2点A−B間の領域(間隔D1)の領域に収まるように配置する。なお、本実施形態では、図3に示すように、外装体1の溶着部5が、正極端子2(負極端子3)と発電要素4の内周面端部4cとの間の間隔D3の領域に収まるように配置される。この状態で、筒状の外装体1のいずれか一方の開口端部を溶着することにより、電池100の片側に封口部6を形成する。封口部6を形成することにより、溶着部5と、正極端子2および負極端子3(点B)と、発電要素4(点A)との位置関係が定まる。
【0037】
なお、図4に示すように、封口部6を形成する際には、正極端子2(負極端子3)は、端子部分6aで電池100の厚み方向(Z方向)の両側から溶融したPE溶着層11(内側表面1a)に挟み込まれることにより、周囲が隙間なくシールされる。封口部6は、溶着部5と同様、加熱溶着、高周波溶着、または、超音波溶着などにより溶着する。
【0038】
ここで、封口部6の端子部分6aでは、正極端子2(負極端子3)が挟み込まれる分、肉厚が大きくなる。このため、端子部分6aに溶着部5が配置されると、溶着部位の肉厚がさらに大きくなる。この場合には、封口部6において正極端子2(負極端子3)および溶着部5が重なる部分(端子部分6a)とそれ以外の部分との肉厚の変化が大きくなるため、封口部6を加熱した場合に温度がばらついて封口部6全体の溶着状態を均一にすることが困難となる。この結果、封口部6の溶着強度に局所的なばらつきが発生して封口部6の端子部分6aにおけるシールの信頼性を確保するのが難しくなる。本実施形態では、図3に示すように、溶着部5が正極端子2および負極端子3と重ならない位置に配置されているため、封口部6において端子部分6aに溶着部5が配置されることがない。
【0039】
また、図4に示すように、封口部6の幅方向(X方向)の端部6bでは、外装体1(ラミネートフィルム)が折り畳まれ密着した状態で溶着される。このため、封口部6の端部6bの上面および下面に跨がって溶着部5が配置されると、溶着部5の厚みが大きいために溶着部5を折り畳んで封口部6の端部6bの上面および下面に密着させるのが困難となる。さらに、端部6bの上面および下面を覆うように溶着部5を折り畳んだ場合には、合計4枚のラミネートフィルムが重なり合うことになるため、溶着時に合計4枚のラミネートフィルムが重なる端部6bと他の部分(たとえば端部6bと端子部分6aとの間の合計2枚のラミネートフィルムが重なる部分)とを均一に加熱するのが難しくなる。この結果、溶着時に端部6bにおけるPE溶着層11(内側表面1a)の溶融が不十分となるか、または、端部6b以外の部分におけるPE溶着層11(内側表面1a)が過剰に溶融される可能性があるため、封口部6におけるシールの信頼性を確保するのが難しくなるという不都合がある。本実施形態では、図3に示すように、溶着部5が2点A−B間の領域内に配置されているので、溶着部5が外装体1の側端部1cと重なることがない。このため、封口部6の端部6bに溶着部5が配置されることがなく、上記のような不都合が生じない。
【0040】
また、図1に示すように、封口部6の幅W2は、電池100の長手方向(Y方向)の中央部の幅W4よりも大きくなる。このため、発電要素4の湾曲部4bのY方向端部から封口部6の端部6bに至る外装体部分1dでは、外装体1の側面に窪みが生じる。この結果、図3に示すように、中間点AよりもX方向の外側の領域では、外装体部分1dの窪みにより外装体1の変形が大きくなっている。これに対して、発電要素4のX方向中央の平坦部4aから封口部6に至る外装体部分1eでは、外装体1が窪むことなく平坦なまま滑らかに傾斜する。このため、外装体1に窪みが生じて変形が大きい外装体部分1dに溶着部5が配置される場合には、溶着部5自体に窪みが生じて溶着部5に応力が集中しやすくなるため、溶着部5の信頼性の点から好ましくない。本実施形態では、溶着部5が発電要素4の内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aよりも外側の領域に配置されることがないので、外装体部分1dに溶着部5が配置されることがない。
【0041】
上述した電池100の片側に封口部6を形成する工程の後、外装体1の他方の開口端部から外装体1の内部に電解液を注液する。最後に、外装体1の他方の開口端部を溶着して封口部6を形成することにより、外装体1を封口(封止)する。以上により、本実施形態による電池100が形成される。
【0042】
本実施形態では、上記のように、溶着部5が、溶着部5が配置された面の投影面において、内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aと、正極端子2(負極端子3)の側端部2a(3a)(点B)との間の領域(A−B間の領域)に配置されることによって、外装体1の側端部1cや窪みが生じて変形が大きい外装体部分1dに溶着部5が配置されることなく、かつ、外装体1の膨張および収縮に伴う外装体1の変位量が大きくなる電池100の幅方向(X方向)中央部にも溶着部5が配置されることがないので、溶着部5の信頼性が低下するのを抑制することができる。また、溶着部5が外装体1の側端部1cとは重ならないため、封口部6を形成する際に溶着部5を折り畳んで溶着せずに済む。この結果、外装体1の開口部をより確実に封止することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、溶着部5が、溶着部5が配置された面の投影面において、正極端子2(負極端子3)とは重ならないように配置されているため、封口部6を形成する(溶着する)際に、2枚のラミネートフィルムが重なった溶着部5と正極端子2(負極端子3)とが重なることがない。これにより、上記のように溶着部5が端子部分6aに配置されることに起因して封口部6の信頼性が低下するのを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、溶着部5の全体が、上記の領域(A−B間の領域)の中でも、正極端子2(負極端子3)と発電要素4の内周面端部4cとの間の間隔D3の領域内に配置されることによって、外装体1の変位量が大きくなる電池100の幅方向中央部を避けるとともに、外装体1が湾曲する内周面端部4cの外側の領域(湾曲部4b)をも避けて平坦な外装体部分1eの領域に溶着部5を配置することができる。これにより、溶着部5に力が加わりにくい領域に溶着部5の全体を配置することができるので、溶着部5の信頼性をより向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、ラミネートフィルムの内側表面1aの一部と外側表面1bの一部とが対向して溶着することでラミネートフィルム(外装体1)を筒状に形成し、筒状の一端部(Y2方向側端部)から正極端子2が露出するように配置し、筒状の他端部(Y1方向側端部)から負極端子3が露出するように配置し、筒状の両端部を封口する(封口部6を形成する)ことによって、電池100の両側に正極端子2と負極端子3とをそれぞれ1つずつ配置することができるので、電池100のY1方向側またはY2方向側の片方に正極端子2および負極端子3の両方が幅方向(X方向)に沿って並ぶように配置される場合と比較して、溶着部5の配置領域(中間点Aと側端部2a(3a)(点B)との間の間隔D1の領域)を確保しやすい。また、本実施形態による電池100では、正極端子2および負極端子3の両方が電池100の片側に並ばないので、容易に、正極端子2および負極端子3の幅W1を大きくして正極端子2(負極端子3)の電気抵抗を小さくすることができる。ここで、正極端子2(負極端子3)を流れる電流によって発生する熱量は正極端子2(負極端子3)の電気抵抗に比例するため、充放電時の正極端子2(負極端子3)の発熱を抑制することができる。充放電時に大電流が流れやすい中型から大型の電池では正極端子2および負極端子3の発熱が大きくなりやすいため、本実施形態は中型から大型の電池100に適用した場合に特に有効である。
【0046】
(一実施形態の第1〜第3変形例)
上記実施形態では、溶着部5の全体が、発電要素4の内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aと、正極端子2(および負極端子3)の側端部2a(3a)(点B)との間の領域(A−B間の領域)に配置された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、本発明では、溶着部5の全体が2点A−B間の領域内に厳密に配置されていなくてもよい。
【0047】
すなわち、外装体1の側端部1cや窪みが生じる外装体部分1dに溶着部が配置されなければ、図7に示す第1変形例のように、溶着部105の一方の縁部が、2点A−B間の領域から矢印X1方向側に僅かにはみ出てもよい。この第1変形例による外装体101では、溶着部105が配置された面の投影面において、溶着部105の幅方向の一端部(矢印X2方向側端部)が2点A−B間の領域(間隔D1)内に配置されている。また、溶着部105の他端部(矢印X1方向側端部)が内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aよりも外側の領域(中間点Aと外周面端部4dとの間の間隔D2/2の領域)に配置されている。この第1変形例でも、溶着部105は、外装体101の側端部101cや窪みが生じる外装体部分101dとは重なっていない。
【0048】
また、図8に示す第2変形例のように、溶着部205の一方の縁部が、2点A−B間の領域から矢印X2方向側に僅かにはみ出てもよい。この第2変形例による外装体201では、溶着部205が配置された面の投影面において、溶着部205の幅方向の一端部(矢印X2方向側端部)が正極端子2(負極端子3)の側端部2a(3a)(点B)よりも矢印X2方向側に配置されている。このため、溶着部205の一端部は、正極端子2(負極端子3)と重なるように配置されている。また、溶着部205の他端部(矢印X1方向側端部)は、2点A−B間の領域(間隔D1)内であって、点Bと内周面端部4cとの間の間隔D3の領域内に配置されている。
【0049】
また、図9に示す第3変形例のように、溶着部305が、2点A−B間の領域からX方向の両側に僅かにはみ出てもよい。この第3変形例による外装体301では、溶着部305が配置された面の投影面において、溶着部305の大部分が2点A−B間の領域(間隔D1)に配置されている。溶着部305は、間隔D1の領域からX方向の両側に僅かにはみ出るように配置されている。したがって、溶着部305の一端部(矢印X2方向側端部)は、溶着部305が配置された面の投影面において、正極端子2(負極端子3)と重なるように配置されている。また、溶着部305の他端部(矢印X1方向側端部)は、発電要素4の内周面端部4cと重なるように配置されている。なお、溶着部305は、外装体301の側端部301cや窪みが生じる外装体部分301dとは重なっていない。
【0050】
これらの第1〜第3変形例のように、正極端子2(負極端子3)と発電要素4の内周面端部4cとの間の領域に溶着部(105、205および305)の全体を配置しない場合であっても、溶着部(105、205および305)が発電要素4の内周面端部4cと外周面端部4dとの中間点Aと、正極端子2(および負極端子3)の側端部2a(3a)(点B)との間の領域(A−B間の領域)に配置されることによって、膨張および収縮に伴う外装体(101、201および301)の変位量が大きくなる電池の幅方向(X方向)中央部に溶着部(105、205および305)の全体が配置されることがないので、溶着部(105、205および305)の信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0051】
なお、今回開示された実施形態および各変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および各変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
たとえば、上記実施形態および第1〜第3変形例では、溶着部を電池のX1方向側に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溶着部を電池のX2方向側に配置してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、外装体(ラミネートフィルム)の内側および外側表面にポリエチレンからなる溶着樹脂層(PE溶着層11および15)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、これらの溶着樹脂層は、ポリエチレン以外のポリオレフィン系樹脂(たとえば、ポリプロピレン(PP))であってもよい。また、溶着樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂以外の比較的低温で溶着可能な熱可塑性樹脂であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、外装体(ラミネートフィルム)にポリエチレンテレフタレートからなる耐熱樹脂層(PET層12および14)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、耐熱樹脂層を設けなくともよい。また、ポリエチレンテレフタレート以外のポリエステル系樹脂(たとえば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネートなど)や、ナイロン、セロハン、フッ素樹脂(PTFE、PFAなど)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリルエーテルニトリル、ポリベンゾイミダゾールなど、ポリエチレンテレフタレート以外の材料からなる耐熱樹脂層を設けてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、外装体(ラミネートフィルム)を構成する層中に金属層としてアルミニウム箔からなるアルミニウム層13を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アルミニウム層に代えて、亜鉛や、金、銀、黄銅、スズ、青銅、鉄、銅、チタン、鉛、ニッケル、白金、マグネシウム、リン青銅、ステンレス鋼など、アルミニウム以外の材料からなる金属層を用いてもよい。
【0056】
また、上記実施形態および第1〜第3変形例では、正極端子および負極端子を、それぞれ、外装体の長手方向(Y方向)の一端部および他端部に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図10に示した第4変形例のように、電池200の正極端子202および負極端子203の両方を、外装体1の長手方向の片側(図10ではY2方向側)にまとめて配置してもよい。この際、電池200のようにX1方向側に溶着部5を設ける場合には、中間点Aと、X1方向側の負極端子203の側端部203a(点B)との間の領域(A−B間の領域)に溶着部5を配置すればよい。ただし、本発明を比較的大きな電流が流れる中型または大型の電池に適用する場合には、正極端子および負極端子の幅を大きくすることが可能なように、正極端子および負極端子をそれぞれ外装体の長手方向の一端部および他端部に配置するのが好ましい。
【0057】
また、上記実施形態および第1〜第3変形例では、正極端子および負極端子を、電池の幅方向(X方向)の同じ位置に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。正極端子と負極端子とは、電池の幅方向に互いにずれた位置に設けられていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、本発明の電池を、非水系電解質電池の一種であるリチウムイオン電池に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の電池を、たとえば、リチウムイオン電池以外の非水系電解質電池に適用してもよいし、ニッケル水素電池などの水系電解質電池に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、101、201、301 外装体
2、202 正極端子(リード端子)
3、203 負極端子(リード端子)
4 発電要素
4a 内周面端部
5、105、205、305 溶着部
100、200 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートフィルムの内側表面の一部と外側表面の一部とが対向して溶着された溶着部を有する外装体と、
前記外装体に収容されるとともに、極板が巻回されて、内周面および外周面を有する発電要素と、
前記発電要素と接続され、前記外装体の外部へ露出するリード端子とを備え、
前記外装体の溶着部が、前記溶着部が配置された面の投影面において、前記発電要素の前記内周面の端部と前記外周面の端部との中間点と、前記リード端子の側端部との間の領域に配置されている、電池。
【請求項2】
前記ラミネートフィルムの内側表面の一部と外側表面の一部とが対向して溶着されることで前記ラミネートフィルムが筒状に形成されて、前記筒状の一端部から正極のリード端子が露出するように配置されており、前記筒状の他端部から負極のリード端子が露出するように配置されており、前記筒状の両端部が封口されている、請求項1に記載の電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−69445(P2013−69445A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205502(P2011−205502)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】