説明

電波受信装置、電波腕時計、電波受信機器及び電波受信制御方法

【課題】電波受信中も電波状況の表示が行える電波受信装置、電波腕時計、電波受信機器及び電波受信制御方法を提供すること。
【解決手段】受信信号の受信直前に、電波受信中を意味する情報を表示させる駆動信号をメモリ性表示部5に印加し、該情報をメモリ性表示部に表示し(S4)、該情報をメモリ性表示機能により表示保持している間(S5)、駆動信号の印加を停止し(S6)、この状態の下で電波を受信開始させる(S7)。これによって、電波受信中には電波受信中を意味する情報を一時的にメモリ性表示させ、電波受信中か否かを確実に視認させる一方で、電波受信中を意味する情報をメモリ性表示機能により表示保持している間、メモリ性表示部5への駆動信号の印加を停止させ、該駆動信号に基づくノイズの発生を確実に抑制し、ノイズが電波受信の阻害となる事態を未然に防止し、良好な電波受信を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波受信装置、電波腕時計、電波受信機器及び電波受信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、標準電波を受信し、計時回路の日時データを修正する電波腕時計が実用化されている。
ところで、電波腕時計が実際に受信する標準電波には種々のノイズが混入されることが知られている。例えば、送信所から電波腕時計までの伝送過程において生じる外部のノイズだけでなく、電波腕時計内部の回路が発生する信号によるノイズが混入される場合がある。具体的には、表示ドライバのような表示制御信号生成部が出力するコモン信号やセグメント信号、表示部のバックライトのON/OFFによる電気信号等により表示装置及び表示装置周辺からノイズが発生する場合がある。このため、電波腕時計内部で発生するノイズの混入を低減させる様々な方法が考えられている。
このうちの1つに、標準電波を受信している間は、ノイズ発生源となるクロノ機能の動作を禁止し、クロノ機能が動作をしている間は、標準電波の受信を禁止する制御を行う電波修正機能付き時計がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−201546号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の電波修正機能付き時計では、ノイズ発生源となるクロノ機能の動作を行っている限り電波受信ができないので、ノイズが混入する危険性は減少する。この場合には、クロノ機能の動作が終了した後に電波受信機能を実行したとしても問題は少ない。
しかし一方で、電波受信中に同時になされてきた電波状況表示機能の実行をも、電波受信中であることを理由に禁止するとすれば次のような問題が生じる。
すなわち、電波状況表示機能の実行を禁止するとすれば、受信中は、表示部に何も表示されないために、電波受信中なのか電池切れなのかをユーザが視認できないという問題がある。
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、電波受信中も電波状況の表示が行える電波受信装置、電波腕時計、電波受信機器及び電波受信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、
アンテナで電波を受信する受信部、情報を表示する表示部、および、この表示部に対して駆動信号を印加して該表示部に情報を表示させる表示制御部を備える電波受信装置において、
前記表示部は全部又は一部がメモリ性表示部によって構成され、
前記表示制御部は、
前記受信部が受信信号を受信する直前に、電波受信中を意味する情報を表示させる駆動信号を前記メモリ性表示部に印加し、当該メモリ性表示部に前記情報を表示させ、そのメモリ機能により前記情報を表示保持している状態のもとで、前記駆動信号の印加が停止されたことを条件に、電波の受信を開始させる印加制御部を備えていることを特徴とする電波受信装置である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電波受信装置において、前記表示制御部は、前記印加制御部の制御により電波の受信が終了されたことを条件に、前記メモリ性表示部に表示されている前記情報を消去させる情報消去制御部を更に備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の電波受信装置と、この電波受信装置が設けられた腕時計ケースと、を備えていることを特徴とする電波腕時計である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載の電波受信装置と、この電波受信装置が設けられた機器ケースと、を備えていることを特徴とする電波受信機器である。
【0009】
請求項5の発明は、
アンテナで電波を受信する受信部、情報を表示するメモリ性表示部、および、このメモリ性表示部に対して駆動信号を印加して該メモリ性表示部に情報を表示させる表示制御部を備える電波受信装置に用いられる電波受信制御方法において、前記受信部が受信信号を受信する直前に、電波受信中を意味する情報を表示させる駆動信号を前記メモリ性表示部に印加させ、該メモリ性表示部に前記情報を表示させる情報表示ステップと、
この情報表示ステップにより、前記メモリ性表示部のメモリ機能により前記情報を表示保持している状態のもとで、前記駆動信号の印加が停止されたことを条件に、電波の受信を開始させる受信開始ステップと、
を備えていることを特徴とする電波受信制御方法である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載の電波受信制御方法において、前記受信開始ステップにより電波の受信が開始されたあと、当該電波の受信が終了されたことを条件に、前記メモリ性表示部に表示されている前記情報を消去させる情報消去ステップを更に備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電波受信中には電波受信中を意味する情報が一時的にメモリ性表示されるので、電波受信中か否かを確実に視認することができる。そればかりでなく、電波受信中を意味する情報をメモリ性表示機能により表示保持している間、メモリ性表示部への駆動信号の印加が停止されるので、該駆動信号に基づくノイズの発生を確実に抑制することができ、ノイズが電波受信の阻害となる事態を未然に防止し、良好な電波受信を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電波受信装置の実施形態である電波腕時計の正面図である。
【図2】図1の電波腕時計を側方から見た場合の概念図である。
【図3】図1の電波腕時計のメモリ性液晶パネルの断面を示す概念図である。
【図4】図1の電波腕時計の概略ブロック構成図である。
【図5】図1の電波腕時計の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】(A),(B),(C)は図1の電波腕時計の表示態様を示す図である。
【図7】メモリ性表示部の他例である電気泳動パネルの断面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、実施形態の電波受信装置の一例である電波腕時計の正面図である。
この電波腕時計1は腕時計ケース2を備えている。この腕時計ケース2の上部には、図2の概念図に示すように、時計ガラス3が装着され、一方、腕時計ケース2の下部には、裏蓋4が防水リング(図示せず)を介して取り付けられている。
この腕時計ケース2の内部には、メモリ性液晶表示パネル5が設けられている。このメモリ性表示パネル5としてはセグメント型の液晶表示パネルやドットマトリクス型の液晶表示パネルを用いることができる。なお、バックライトについては受信時のノイズの原因となるので、液晶表示パネルは反射型のものとすることが好ましい。
また、腕時計ケース2の3時側及び9時側の両側面には、図1に示すように、複数の押釦スイッチ6が設けられている。
【0015】
まず、図3に基づいて、メモリ性液晶表示パネル5の詳細について説明する。
メモリ性液晶表示パネル5は、図3に示すように、第1の透明ガラス基板51と第2の透明ガラス基板52とを備えている。
第1の透明ガラス基板51上には走査電極53が設けられ、第2の透明ガラス基板52上には信号電極54が設けられている。
また、走査電極53上にはラビング処理された高分子配向膜55aが塗布され、信号電極13b上にはラビング処理された高分子配向膜55bが塗布されている。
そして、シール部材56、第1及び第2の透明ガラス基板51及び52の間に挟持されるように強誘電性液晶57が封入されている。また、第1の透明ガラス基板51の外側には第1の偏光板58aが設けられ、第2の透明ガラス基板52の外側には第2の偏光板58bが設けられている。
このメモリ性液晶表示パネル5はメモリ性表示部を構成している。このメモリ性液晶表示パネル6における強誘電性液晶57は、強誘電性液晶57に印加される電圧を増加させ、光透過率の増加が飽和する電圧値以上とすれば強誘電性状態に転移し、その後電圧を印加せずとも(すなわち0V印加)、強誘電性状態を保持する。或いは、このメモリ性液晶表示パネル6における強誘電性液晶57は、強誘電性液晶57に印加される電圧を減少させ、光透過率がの減少が飽和する電圧値以下とすれば強誘電性状態に転移し、その後電圧を印加せずとも(すなわち0V印加)、強誘電性状態を保持する。
このメモリ性液晶表示パネル5は2つの表示領域5a,5bを有していて、表示領域5aは通常表示では時刻を表示し、また、表示領域5bは通常表示では日付、曜日、温度及び湿度を表示する。また、このメモリ性液晶表示パネル5は、電波受信中は「受信中」のメモリ表示を行う。
【0016】
図4に、電波腕時計1の概略ブロック構成図が示されている。電波腕時計1は、メモリ性表示モジュール部21、電波受信部22、時刻計時部23、制御部24を備えている。メモリ性表示モジュール部21はメモリ性液晶表示パネル5と駆動回路部212とを備える。また、電波受信部22は受信用アンテナ221と受信回路222とを備える。制御部24は、内蔵のRAM又はROM(図示せず)に予め記憶されたプログラムに従い電波受信部から標準電波を受信する。また、制御部24は、上記RAM又はROMに予め記憶されたプログラムに従い表示データを生成し、駆動回路部212に制御信号を出力する。したがって、制御部24及び駆動回路部212は表示制御部を構成している。
【0017】
この電波腕時計1においては、通常の状態では、制御部24は、駆動回路部212からメモリ性液晶表示パネル5に通常表示を行わせるための駆動信号を与え、メモリ性液晶表示パネル6の表示領域5aに時刻を、表示領域5bに日付、曜日、温度及び湿度を表示する表示させる。
また、この電波腕時計1においては、電波受信モード時には、制御部24は、駆動回路部212からメモリ性液晶表示パネル5にメモリ性表示のための駆動信号を与え、その後に駆動信号の印加を停止させて表示領域5bに「受信中」の文字をメモリ表示させる。
【0018】
この制御部24によってなされる動作フローの詳細を図5に基づいて説明する。
制御部4は、電波の受信モードか否かを判別し(ステップS1)、電波受信モードでない場合(ステップS1でNO)、駆動回路部212から通常の時刻表示を行わせるための駆動信号(駆動波形)をメモリ性液晶表示部5に印加させて、メモリ性液晶表示部5に通常の時刻表示を行わせる(ステップS2)。
図6(A)にはその一例が示され、表示領域5aには時刻が表示され、表示領域5bには日付、曜日、温度及び湿度が表示される。
また、制御部4は、手動及び自動で電波の受信モードとなった場合(ステップS1でYES)、駆動回路部212を制御して通常表示を消去させ(ステップS3)、駆動回路部212から受信中であることを示す駆動信号をメモリ性液晶表示部5に印加させて、メモリ性液晶表示部11に電波受信中であることを示す「受信中」の情報の表示を行わせ、当該情報を、メモリ性液晶表示部11の有するメモリ表示機能により表示保持させる(ステップS5)。この保持状態の間、駆動回路部212からメモリ性液晶表示部5への駆動信号の印加を停止させ(ステップS6)、この停止を条件に、電波の受信を開始させる(ステップS7)。このときのメモリ性液晶表示パネル5の表示状態が図6(B)に示されている。
そして、電波の受信が終了したならば(ステップS8)、メモリ性表示部11のメモリ表示である「受信中」の情報を消去させる(ステップS9)。その一方で、駆動回路部212から通常の時刻表示を行わせるための駆動信号(駆動波形)をメモリ性液晶表示部5に印加させて、メモリ性液晶表示部5に通常の時刻表示を行わせる。このときのメモリ性液晶表示パネル5の表示状態が図6(C)に示されている。
したがって、メモリ性液晶表示部5への駆動信号の印加停止期間は、この実施の形態の場合、図6(A)に示す午後10時58分50秒の直後の図6(B)で示される「受信中」の情報の表示状態から、図6(C)に示されている午後11時02分00秒までの数分間であり、この印加停止期間、すなわち、電波受信中を意味する情報をメモリ性表示機能により表示保持している間、メモリ性表示部5への駆動信号の印加が停止されるので、該駆動信号に基づくノイズの発生を確実に抑制し、ノイズが電波受信の阻害となる事態を未然に防止し、よって、良好な電波受信を図ることができる。
【0019】
図7にはメモリ性表示部の他例が示されている。このメモリ性表示部は電気泳動パネル30によって構成されている。
この電気泳動パネル30は、マイクロカプセル31をプラスチック基板32にコーティングした前面板をTFTガラス基板(背面板)33と貼り合わせた構造を有している。この電気泳動パネル30においては、前面板の透明電極34とTFT35の間の電圧(電位差)によって、マイクロカプセル31内に封入した粒子の位置を制御するものである。この電気泳動パネル30によれば、電圧の加減によって粒子を動かし色合いを変えて表示し、電圧の印加を止めるとそのままの状態を保持することができる。
【0020】
このように構成された電波腕時計1によれば、次のような効果を得ることができる。
すなわち、電波受信中には電波受信中を意味する情報が一時的にメモリ性表示されるので、電波受信中か否かを確実に視認することができる。
そればかりでなく、電波受信中を意味する情報をメモリ性表示機能により表示保持している間、メモリ性表示部への駆動信号の印加が停止されるので、該駆動信号に基づくノイズの発生を確実に抑制し、ノイズが電波受信の阻害となる事態を未然に防止し、良好な電波受信を図ることができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0022】
例えば、上記実施形態では、全体をメモリ性表示部としたが、一部だけをメモリ性表示部とすることもできる。
また、上記実施形態では、この発明を電波腕時計に適用した場合について説明しているが、電波置時計、GPS受信機、携帯電話など、機器ケースを備えている電波受信機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 電波腕時計
5 メモリ性液晶表示パネル
21 メモリ性表示モジュール部
212 駆動回路部
22 電波受信部
221 アンテナ
222 受信回路
24 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナで電波を受信する受信部、情報を表示する表示部、および、この表示部に対して駆動信号を印加して該表示部に情報を表示させる表示制御部を備える電波受信装置において、
前記表示部は全部又は一部がメモリ性表示部によって構成され、
前記表示制御部は、
前記受信部が受信信号を受信する直前に、電波受信中を意味する情報を表示させる駆動信号を前記メモリ性表示部に印加し、当該メモリ性表示部に前記情報を表示させ、そのメモリ機能により前記情報を表示保持している状態のもとで、前記駆動信号の印加が停止されたことを条件に、電波の受信を開始させる印加制御部を備えていることを特徴とする電波受信装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記印加制御部の制御により電波の受信が終了されたことを条件に、前記メモリ性表示部に表示されている前記情報を消去させる情報消去制御部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の電波受信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電波受信装置と、
この電波受信装置が設けられた腕時計ケースと、
を備えていることを特徴とする電波腕時計。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電波受信装置と、
この電波受信装置が設けられた機器ケースと、
を備えていることを特徴とする電波受信機器。
【請求項5】
アンテナで電波を受信する受信部、情報を表示するメモリ性表示部、および、このメモリ性表示部に対して駆動信号を印加して該メモリ性表示部に情報を表示させる表示制御部を備える電波受信装置に用いられる電波受信制御方法において、
前記受信部が受信信号を受信する直前に、電波受信中を意味する情報を表示させる駆動信号を前記メモリ性表示部に印加させ、該メモリ性表示部に前記情報を表示させる情報表示ステップと、
この情報表示ステップにより、前記メモリ性表示部のメモリ機能により前記情報を表示保持している状態のもとで、前記駆動信号の印加が停止されたことを条件に、電波の受信を開始させる受信開始ステップと、
を備えていることを特徴とする電波受信制御方法。
【請求項6】
前記受信開始ステップにより電波の受信が開始されたあと、当該電波の受信が終了されたことを条件に、前記メモリ性表示部に表示されている前記情報を消去させる情報消去ステップを更に備えていることを特徴とする請求項5に記載の電波受信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−166349(P2011−166349A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25376(P2010−25376)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】