説明

電波吸収体

【課題】 30MHzから50GHz帯域にて、良好な電波吸収特性を有する電波吸収体を得る。
【解決手段】 磁性体粉末4と、導電性繊維状粉末5とを主成分とする混成物と、樹脂6とを混合して形成した電波吸収体であって、前記磁性体粉末4をフェライト系粉末とし、また、導電性繊維状粉末5をカーボンとする電波吸収体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波暗室、建築材料などに用いるのに好適な、電波吸収体に関し、特に電波の波長に比較し、電波吸収特性が優れる電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波暗室や、ビルの外壁等、電磁波が照射された時、その反響を防ぐ目的で、電波吸収体が利用されている。ここで、従来の電波暗室や、ビルの外壁等に用いられる電波吸収体は、フェライトタイルが一般的であった。
【0003】
一般に、フェライトタイルによる電波吸収体は、低周波数の電波を吸収する。従って、従来の電波吸収体は、低周波数帯域(数MHzから数百MHz帯域)での電波吸収に適用されていた。図4は、従来の電波吸収体の反射係数対周波数特性の説明図である。GHz帯では、電波吸収特性が劣化している。
【0004】
特許文献1には、フェライトタイルと多孔質フェライトとを複合化して形成した電波吸収体について記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−224077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電波吸収体は、フェライトタイル単体であったり、またフェライトタイルと多孔質フェライトとの組み合わせであったが、高周波数帯域、特にGHz帯域での電波に関して、電波吸収特性は不十分であった。そこで、本発明の課題は、30MHzから50GHz帯域にて、良好な電波吸収特性を有する電波吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電波吸収体は、磁性体粉末と、導電性繊維状粉末とを主成分とする混成物と、非磁性材料とを混合して電波吸収体を構成し、マイクロ波帯における、電波吸収特性を改善するものである。
【0008】
また、本発明の電波吸収体は、磁性体粉末と非磁性材料とを混合した第1の混成物の一方の側に、導電性繊維状粉末と非磁性材料とを混合した第2の混成物を配置して電波吸収体を構成し、マイクロ波帯における電波吸収特性を改善するものである。
【0009】
即ち、本発明は、磁性体粉末と、導電性繊維状粉末とを主成分とする混成物と非磁性材料とを混合して形成した電波吸収体である。
【0010】
また、本発明は、磁性体粉末と非磁性材料とを混合した第1の混成物の一方の側に、導電性繊維状粉末と非磁性材料とを混合した第2の混成物を配置した電波吸収体である。
【0011】
また、本発明は、前記導電性繊維状粉末を、カーボン、あるいはシリコンカーバイド、あるいはカーボンとシリコンカーバイドとの複合とし、マイクロ波帯において導電損失を有するように、均一に分散された電波吸収体である。
【0012】
また、本発明は、前記導電性繊維状粉末のアスペクト比が100以上である電波吸収体である。
【0013】
また、本発明は、前記磁性体粉末を、フェライト系粉末、あるいは金属系粉末、あるいはフェライト系粉末と金属系粉末との混合とする電波吸収体である。
【0014】
また、本発明は、前記電波吸収体において、前記導電性繊維状粉末を、前記磁性体粉末に対して、2.0体積%から5.0体積%の範囲とする電波吸収体である。
【0015】
また、本発明は、前記電波吸収体の形状が凹型または凸型の部分を有する電波吸収体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マイクロ波帯において、フェライト磁性材の電波吸収特性を補うような電波吸収特性を有し、30MHzから50GHz帯の範囲にて使用される電波吸収体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の電波吸収体は、磁性体粉末と、導電性繊維状粉末とを主成分とする混成物と、非磁性材料とを混合して電波吸収体を構成し、マイクロ波帯における電波吸収特性を改善するものである。ここで、前記非磁性材料としては、樹脂が一般的に使用される。
【0018】
また、本発明の電波吸収体は、磁性体粉末と非磁性材料とを混合した第1の混成物の一方の側に、導電性繊維状粉末と非磁性材料とを混合した第2の混成物を配置して電波吸収体を構成し、マイクロ波帯における、電波吸収特性を改善するものである。ここで、前記非磁性材料としては、樹脂が一般的に使用される。
【0019】
前記導電性繊維からなる粉末は、樹脂内で分散されており、これによってマイクロ波帯域において導電損失を有する電波吸収体となる。また、前記導電性繊維のアスペクト比は100以上とする。アスペクト比が100未満では、マイクロ波帯の電波の吸収が低下するためである。
【0020】
また、本発明は、前記電波吸収体において、前記導電性繊維を磁性体粉末に対して、2.0体積%〜5.0体積%の範囲とする電波吸収体である。
【0021】
また、本発明は、前記電波吸収体の形状が凹型または凸型の部分を有する形状であって、例えば、ピラミッド型の形状、あるいはクサビ型の形状とする電波吸収体である。
【0022】
磁性体粉末、および導電性粉末、および導電性繊維を主成分とする混成物と、樹脂とを混合して形成した電波吸収体において、前記の電波吸収体は、30MHzから50GHzの範囲で反射係数が15dB以下となる電波吸収体である。
【0023】
磁性体粉末と樹脂とを混合した第1の混成物の一方の側に、導電性繊維状粉末と樹脂とを混合した第2の混成物を配置した電波吸収体の電波吸収のメカニズムは、以下のごとくである。
(1)磁性体粉末(フェライト系)と樹脂とを主成分とする第1の混成物は、30MHzから1GHzにおける反射係数は第2の混成物が配置されていても劣化しない。
(2)一方、1GHz以上50GHzにおけるフェライト系の第1の混成物の反射係数は低いが、導電性繊維状粉末を混入した第2の混成物の方は、反射係数は良好である。
これによって、本発明の電波吸収体は、マイクロ波帯において、フェライト系の電波吸収体の電波吸収特性を補うような電波吸収特性を有し、30MHzから50GHz帯の範囲にて使用される電波吸収体が得られる。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例1の電波吸収体の説明図である。図1(a)は全体図、図1(b)は電波吸収体10の説明図である。図1(a)に示すように、電波吸収体10は、クサビ型の形状が間隔を持って多数配列された構造で電波吸収体10が壁30に配置される。ここで、電波吸収体10の高さ寸法は10cmとした。
【0025】
また、図1(b)に示すように、電波吸収体10は、樹脂6の中に磁性体粉末4と導電性繊維状粉末5とが均一に分散されている。ここで、磁性体粉末4は、Ni−Znフェライト系粉末とした。Ni−Zn系フェライト粉末は球状であって、粒径は数10μmである。
【0026】
また、導電性繊維状粉末5は、その材質をカーボンとした。ここで、前記カーボンのアスペクト比は100以上とし、その長さは最大10mmとした。また、前記導電性繊維状粉末5を、前記磁性体粉末4に対して3.0体積%とし、樹脂6の材質はポリプロピレンとした。なお、磁性体粉末4は、樹脂6に対して50体積%とした。
【0027】
図3に、本発明の実施例1の電波吸収体の反射係数対周波数特性を示す。30MHzから50GHz帯域において、反射係数が15dB以上の数値を実現している。
【実施例2】
【0028】
図2は、本発明の実施例2の電波吸収体の説明図である。図2(a)は全体図、図2(b)は、電波吸収体A100の説明図、図2(c)は、電波吸収体B200の説明図である。図2(a)に示すように、本実施例2の電波吸収体は、クサビ型の形状が間隔を持って多数配列された電波吸収体B200と、平板の電波吸収体A100が合体して、壁30に配置された状態である。ここで、電波吸収体Bの高さ寸法を5cmとし、電波吸収体Aの厚さを5mmとした。
【0029】
図2(b)に示すように、平板の電波吸収体A100は、樹脂60の中に導電性繊維状粉末50が均一に分散されている。ここで、導電性繊維状粉末5は、その材質をカーボンとした。前記カーボンのアスペクト比は100以上とし、その長さは最大10mmとした。
【0030】
図2(c)に示すように、電波吸収体B200は、樹脂61の中に磁性体粉末40が均一に分散されている。磁性体粉末40は、Ni−Zn系フェライト粉末とした。Ni−Zn系フェライト粉末は略球状であって、粒径は数10μmである。前記導電性繊維状粉末50は、前記磁性体粉末40に対して3.0体積%とした。また、樹脂6の材質はポリプロピレンとした。 なお、磁性体粉末40は、樹脂61に対して50体積%とした。
【0031】
図3に、本発明の実施例2の電波吸収体の吸収率対周波数特性を示す。30MHzから50GHz帯域において、反射係数が25dB以上の数値を実現している。
【0032】
なお、実施例1、実施例2では、磁性体粉末としてNi−Zn系フェライト粉末としたが、これ以外の、例えば、Mn−Zn系フェライト粉末、あるいはNi−Fe系金属粉末としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1の電波吸収体の説明図。図1(a)は全体図、図1(b)は電波吸収体の説明図。
【図2】本発明の実施例2の電波吸収体の説明図。図2(a)は全体図、図2(b)は電波吸収体Aの説明図。図2(c)は電波吸収体Bの説明図。
【図3】本発明の実施例1と実施例2の電波吸収体の反射係数対周波数特性の説明図。
【図4】従来の電波吸収体の反射係数対周波数特性の説明図。
【符号の説明】
【0034】
10 電波吸収体
100 電波吸収体A
200 電波吸収体B
30 壁
4,40 磁性体粉末
5,50 導電性繊維状粉末
6,60,61 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体粉末と、導電性繊維状粉末とを主成分とする混成物と、非磁性材料とを混合して形成したことを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
磁性体粉末と、非磁性材料とを混合した第1の混成物の一方の側に、導電性繊維状粉末と非磁性材料とを混合した第2の混成物を配置したことを特徴とする電波吸収体。
【請求項3】
前記導電性繊維状粉末を、カーボン、あるいはシリコンカーバイド、あるいはカーボンとシリコンカーバイドとの複合とし、マイクロ波帯において導電損失を有するように、均一に分散されたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項4】
前記導電性繊維状粉末は、アスペクト比が100以上であることを特徴とする請求項3に記載の電波吸収体。
【請求項5】
前記磁性体粉末を、フェライト系粉末、あるいは金属系粉末、あるいはフェライト系粉末と金属系粉末との混合とすることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項6】
前記導電性繊維状粉末を、前記磁性体粉末に対して、2.0体積%から5.0体積%の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電波吸収体。
【請求項7】
前記電波吸収体の形状が、凹型または凸型の部分を有する形状であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の電波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−80414(P2006−80414A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264886(P2004−264886)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(501353052)株式会社トーキン・イ・エム・シ・エンジニアリング (13)
【Fターム(参考)】