説明

電波吸収体

【課題】 1〜10GHzの周波数帯域において、軽量で加工性に優れ、バラツキのない高性能な電波吸収性能を有する電波吸収体を提供する。
【解決手段】 1〜10GHzの周波数帯域における電波吸収体であって、
カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂発泡体からなり、
前記カーボンナノチューブは前記発泡体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して6〜20重量部の割合で含まれ、
前記熱可塑性樹脂発泡体の相対倍率は3倍以上15倍以下であり、
同軸管法で測定した複素比誘電率の実数部(εr’)が6.0〜20.0、虚数部(εr”)が1.0〜9.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電波吸収体に関する。より詳細には1〜10GHzの周波数領域において、特に好適に用いられる熱可塑性樹脂発泡体の電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめ、様々な通信機器の普及に伴って、電磁波ノイズによる電気・電子機器の誤作動や情報の漏洩等の各種の電波障害の問題が深刻になってきており、不要な電波を吸収する電波吸収体への期待が高まっている。
【0003】
マイクロ波においては無線LANの2.4GHz、5.2GHzの電波吸収体、料金自動収受システム(ETCシステム)の5.8GHzの電波吸収体などがあり、既に、種々の電波吸収体が開発、実用化されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、樹脂にナノサイズ炭素材料を1〜10重量部配合させた1〜20GHz付近の広い周波数領域において比較的高い電磁波吸収性能が得られる電磁波吸収体が開示されている。
【特許文献1】特開2003−158395号公報
【0005】
特許文献2では、所定の樹脂成分と特定の窒素吸着比表面積を持つ粉末のカーボンブラックとからなり、密度が0.3g/cm3以下に設定されている発泡体の電波吸収体であり、8〜12.5GHzにおいて電波を8dB以上減衰させる電波吸収性能が得られる電波吸収体が開示されている。
【特許文献2】特開2004−311586号公報
【0006】
ところで、前記特許文献2にも記載の通り、電波吸収特性は、反射を低減する電波帯域および該帯域における減衰率は、基本的に電波吸収体内に含まれる電波を吸収する物質の種類および量と、吸収体の厚さによって決定される。電波を吸収する物質の種類としては磁性材料と導電性材料(誘電性材料)があるが前者は重いことから、導電性材料が電波吸収体に適合する上で好ましい。導電性(誘電性)物質の種類は複素比誘電率により表され、電波吸収体の反射が理論上無くなる無反射曲線が算出される。また、ある波長λの反射を効率的に低減させ得る電波吸収体の厚さdは、複素比誘電率によって決定される。換言すれば、複素比誘電率は電波吸収体の厚さdによって決定されるともいえる。
【0007】
また特許文献3にも記載の通り、複素比誘電率の実数部は大きいほど吸収効果が最大になる周波数における吸収体の厚さを薄くできる。また複素比誘電率の虚数部は大きいほど電磁波をよく吸収する。そして、電磁波が吸収されるためには、電磁波が吸収体内部に入らなければならない。そのためには、複素比誘電率、電磁波の波長、吸収体の厚さが、無反射条件とよばれる一定の条件に近づく必要がある。三者が一定の関係を満たすことが重要である。
【特許文献3】特開2005−311088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者が検討したところ、前記特許文献1の電波吸収体では、複素比誘電率の実数部(εr’)が大きく、虚数部(εr’’)が小さいため、電波吸収性能を表すパラメータである誘電正接(Tanδ=虚数部(εr’’)/実数部(εr’))が小さくなっており、十分な電波吸収性能を得ることができず、また、重いうえ硬く加工性が悪いという問題があった。
【0009】
特許文献2の発泡体の電波吸収体では、特定の窒素吸着比表面積を持つ粉末のカーボンブラックを使用しており、複素比誘電率の実数部(εr’)が小さいことから、多量の前記カーボンブラックを使用しないと電波吸収性能が不十分である。従って、特許文献2の発泡体の電波吸収体は、多量のカーボンブラックを含むことやカーボンブラックの分散不良のために、発泡体の電波吸収体としては外観が悪いうえ、発泡体内部にボイドが発生しやすく、電波吸収性能にバラツキが生じるという問題があった。
【0010】
本発明の課題は、前記従来の問題を解決するもので、1〜10GHzの周波数帯域において、軽量で加工性に優れ、バラツキのない高性能な電波吸収性能を有する電波吸収体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
電波吸収体の入力インピーダンス(Z)は以下の式で表される。
【数1】


この式でμr=μr’−jμr”、εr=εr’−jεr”、j:虚数単位、λ:波長、d:電波吸収体の厚みである。誘電性の電波吸収体の場合、複素比誘磁率(μr)は1となり、誘電性電波吸収体の性能は周波数、電波吸収体の厚み、複素比誘電率(εr)のパラメータによって決定される。
【0012】
この材料定数である複素比誘電率は誘電性材料によって決定されるところ、本発明者らが鋭意検討した結果、カーボンナノチューブ(本発明において「CNT」と省略する場合がある。)を含む熱可塑性樹脂においては、それを発泡させることにより、従来制御困難とされてきた電波吸収性能に影響する複素比誘電率の実数部(εr’)と虚数部(εr”)を変化させることができる知見を得た。そして電波吸収体の厚み、カーボンナノチューブ濃度、発泡倍率等を最適な範囲にすることで複素比誘電率の実数部(εr’)と虚数部(εr”)と誘電正接(Tanδ=虚数部(εr”)/実数部(εr’))を特定範囲に制御し、1〜10GHzの周波数帯域向けの電波吸収体に適した従来にはない発泡体が得られることを見出した。
【0013】
本発明は、他の誘電材料ではできない複素比誘電率の範囲を持つ電波吸収体を、カーボンナノチューブ材料と発泡体で実現したものである。
【0014】
本発明は、1〜10GHzの周波数帯域における電波吸収体であって、カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂発泡体からなり、同軸管法で測定した複素比誘電率の実数部(εr’)が6.0〜20.0、好ましくは6.5〜18.0、虚数部(εr”)が1.0〜9.0、好ましくは1.1〜8.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60、好ましくは0.14〜0.59の範囲であることを特徴とする電波吸収体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電波吸収体は、カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂発泡体であるため、カーボンブラックを含む熱可塑性樹脂発泡体と比較して、1〜10GHzの周波数帯域における複素比誘電率の実数部(εr’)が6.0〜20.0、好ましくは6.5〜18.0というような、大きな値を与えることができる。
【0016】
そして、本発明の電波吸収体は熱可塑性樹脂発泡体からなるため、表面での電波の反射が抑えられ、その複素比誘電率を無反射条件により近づけることができる。また発泡が低発泡倍率では、実数部(εr’)、虚数部(εr”)とも大きくなるが、虚数部(εr”)の上昇割合が大きくなる。そして、ある程度倍率が高くなると実数部(εr’)、虚数部(εr”)ともに小さくなっていく。この時、実数部(εr’)の低下よりも虚数部(εr”)の低下が穏やかである。いずれの場合も、非発泡の熱可塑性樹脂よりも誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)は大きくなり、無反射曲線の最適な誘電正接(Tanδ)の領域にまで制御しやすくなる。また電波吸収体の厚みも実数部(εr’)を大きくすることで薄くすることができる。このように、本発明は、実数部(εr’)が大きく、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)も大きい好適な電波吸収体を得ることができる。
【0017】
また誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)は既述のように無反射曲線の関係もあり、0.4〜0.6の範囲が最適であるが、カーボンナノチューブは複素比誘電率の異方性が発生するためと考えられ、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60、好ましくは0.14〜0.59と範囲が拡がる。
【0018】
従って、本発明では熱可塑性樹脂発泡体にカーボンナノチューブを含ませて複素比誘電率の実数部(εr’)を6.0〜20.0、好ましくは6.5〜18.0というような大きな値にしつつ、発泡倍率等を調整することにより、複素比誘電率の虚数部(εr”)が1.0〜9.0、好ましくは1.1〜8.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60、好ましくは0.14〜0.59の範囲の電波吸収体を得ることができる。このように本発明は、このカーボンナノチューブと熱可塑性樹脂発泡体との相乗作用によって電波吸収性能を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の電波吸収体は、カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂発泡体であり、前記文献2のように多量のカーボンブラックを含む熱可塑性樹脂発泡体ではないため、カーボンブラックに起因した分散不良による電波吸収体としての外観の悪化もなく、また発泡体内部にボイドが発生するおそれもないことから、電波吸収性能のバラツキが阻止される。
【0020】
本発明は、これにより、1〜10GHzの周波数帯域における複素比誘電率(実数部、虚数部、誘電正接)が最適の範囲にあり、軽量で加工性に優れ、バラツキのない高性能な電波吸収性能を有する電波吸収体を提供することができる。
従って、2.4GHz、5.2GHzの無線LAN用電波吸収体、5.8GHzの料金自動収受システム(ETCシステム)用電波吸収体用として、高い性能のものとして実用的に使用できる。
特に、本発明の電波吸収体を電波吸収層とし、これに電波を反射させる電波反射層を積層することにより、1〜10GHzの周波数帯域において反射減衰量が15dB以上のピーク周波数を有する最適な電波吸収複合体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(カーボンナノチューブ)
カーボンナノチューブは高い導電性材料(誘電性材料)であるため、複素比誘電率の実数部が高すぎるため反射する傾向が大きいことから電波吸収体としては制御し難い面があるが、発泡の組合せで電波吸収体に適合できるように制御可能となる。
【0022】
本発明で使用できるカーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていてもよく、単層構造と多層構造が混在していてもよい。またカーボンナノチューブの製造方法の違いによって得られるサイズや形態が変わってくるが、いずれの形態のものでも使用できる。
【0023】
本発明で使用できるカーボンナノチューブは、一般のものよりアスペクト比が高いカーボンナノチューブが好ましく、発泡と組み合わせると高性能な電波吸収体が実現できる。好ましいカーボンナノチューブのアスペクト比(長さL/直径D)は10〜10000である。特に好ましいものはアスペクト比(長さL/直径D)が100〜10000である。アスペクト比(長さL/直径D)が10未満では、少量添加で十分な導電パスを形成することができず、複素比誘電率も小さな値となる。アスペクト比(長さL/直径D)が10000を超えると、繊維同士の絡み合いにより分散不良が発生する場合がある。
【0024】
本発明で使用できるカーボンナノチューブの平均繊維径は15〜100nmが好ましく,平均繊維長は3μm〜100μmが好ましい。
【0025】
本発明で使用される最適のカーボンナノチューブとしては、例えば特許第3720044号に記載されたものを使用することができる。具体的には、平均繊維径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有しており、かつ、当該粒状部は前記炭素繊維の成長過程において形成されてなるものである炭素繊維構造体を使用することができる。
【0026】
カーボンナノチューブの熱可塑性樹脂に対する好ましい添加割合は、発泡体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して6〜20重量部である。カーボンナノチューブが熱可塑性樹脂100重量部に対して6重量部未満では電波吸収性が不十分となる恐れがあり、20重量部を超えると、熱可塑性樹脂中に均一に分散させることが困難になり良好な発泡体とすることができない場合があり、電波吸収性能においてバラツキが出る恐れがある。より好ましいカーボンナノチューブの添加割合は熱可塑性樹脂100重量部に対して8〜18重量部である。
【0027】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテルおよびこれらを主たる成分とする共重合体などが挙げられ、単独で用いられても二種類以上が併用されてもよい。
得られた電波吸収発泡体の加工性が特に良好となることからポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0028】
(発泡体の製造方法)
本発明に係る発泡体の電波吸収体を得る発泡方法は、(架橋)常圧発泡法、(架橋)加圧発泡法、押出発泡法、含浸発泡法(ビーズ発泡法)などの公知の発泡方法が使用できる。
【0029】
(架橋)加圧発泡法は、製造工程においてカーボンナノチューブの熱可塑性樹脂への分散を十分に行うことができ、微細なセルの発泡体が得られることから好ましい方法である。
以下、本発明の発泡体を(架橋)加圧発泡法で製造する方法について説明する。
【0030】
(発泡剤)
本発明にて使用できる発泡剤としては、例えば基材となる熱可塑性樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤を使用できる。例えば、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等のニトロソ系化合物、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等のヒドラジッド系化合物、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等のスルホニルセミカルバジッド系化合物を挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。これらのうち、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッドが好ましく、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッドとジニトロソペンタメチレンテトラミンとを併用することが特に好ましい。前記発泡剤の使用量は、基材となる熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜15重量部が好ましい。
【0031】
(発泡助剤)
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。本発明では公知の発泡助剤を用いることができる。例えば、尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。その使用量は、基材となる熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常0.4〜3.0重量部が好ましい。
【0032】
(架橋剤)
本発明で用いる架橋剤としては、基材となる熱可塑性樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであれば使用できる。特に、加熱により分解し、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物が好ましく、例えばジクミルバーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α,α−ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。前記架橋剤の使用量は、基材となる熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜2.0重量部が好ましく、0.7〜1.5重量部がより好ましい。前記架橋剤が0.5重量部未満の場合、架橋が不十分となり、発泡直後の気泡膜強度が不充分でガス抜けしてしまい、発泡体となり難い。前記架橋剤が2.0重量部を超えると、過剰に架橋し、発泡倍率が上がり難くなる。
【0033】
(発泡体の発泡倍率)
本発明に係る発泡体の発泡倍率は相対倍率で、3倍以上15倍以下であることが好ましい。より好ましくは、4倍以上13倍以下である。
前記発泡倍率(相対倍率)が3倍未満では、軽量性にかけるうえ、電波吸収性能の向上効果が小さいからである。一方、前記発泡倍率(相対倍率)が15倍を超えると、カーボンナノチューブを多量に含むためセル膜が破れやすく良好な発泡体とすることができなかったり、強度が不足するからである。なお、ここで「相対倍率」とは、発泡させない組成物の密度を、発泡後の発泡体の見掛け密度で除した値を言う。
【0034】
(発泡体の厚み)
発泡体の厚みは、薄いと電波吸収性能が不十分となる恐れがあり、厚いとかさ高くなって実用性に欠けるので、1.0〜40mmが好ましく、2.0〜25mmがより好ましい。
【0035】
このように、本発明では、カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂を架橋発泡させて、実数部(εr’)が6.0〜20.0、好ましくは6.5〜18.0、虚数部(εr”)が1.0〜9.0、好ましくは1.1〜8.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60、好ましくは0.14〜0.59の範囲の熱可塑性樹脂発泡体の電波吸収体を得るものである。そして、かかる電波吸収体を得るにあたっては、前記カーボンナノチューブが前記熱可塑性樹脂100重量部に対して6〜20重量部の割合で含まれるように前記カーボンナノチューブを添加した当該熱可塑性樹脂を、相対倍率が3倍以上15倍以下となるように架橋発泡させる製造方法を採用することが好ましい。
【0036】
(反射材料)
本発明の電波吸収体は、電波反射材料と組み合わせて二層構造にして使用することが好ましい。例えば、第一層である電波吸収層が前記カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂発泡体の電波吸収体、第二層目が電波反射材料を用いた電波反射層で構成する二層構造の電波吸収複合体である。電波反射材料としては、金属箔、金属蒸着フィルム、金属不織布、炭素繊維布、又は、金属鍍金されたガラス繊維布等の極薄くで電波をよく反射させる導電シートや導電フィルムを例示することができる。電波反射層としては特に電波反射層の表面抵抗が0.5Ω/cm以下のものが好ましい。また電波反射層の厚みは0.01〜1mmが好ましい。
【0037】
電波吸収体と電波反射材料の積層方法としては、積層可能な方法であれば特に制限はないが、例えば、熱による熱融着あるいは接着剤を用いて行うことができる。その場合、接着剤としては、酢酸ビニル樹脂系の木工用ボンドやニトリルゴム系のボンド、またはウレタン系、SBR系、塩化ビニル系やクロロプレンゴム系などの一液系の接着剤や、エポキシ樹脂とポリアミドアミン(硬化剤)からなる二液系の接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0038】
<カーボンナノチューブの合成例>
特許第3720044号の合成例1に記載の方法に準じてCVD法によって、トルエンを原料としてカーボンナノチューブ(炭素繊維構造体)を合成した。
触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気で行った。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、生成炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体(第一中間体)を得た。合成された中間体を窒素中で900℃で焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、第二中間体を得た。
さらにこの第二中間体をアルゴン中で2600℃で高温熱処理し、得られた炭素繊維構造体の集合体を気流粉砕機にて粉砕し、カーボンナノチューブ(炭素繊維構造体)を得た。
【0039】
<実施例1>
低密度ポリエチレンをベースとした前記カーボンナノチューブ10重量%マスターバッチ[低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LF−521H」)90重量%、カーボンナノチューブ10重量%]75重量部に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LF−521H」)25重量部を加えて、温度100℃において加圧式ニーダー混練機(トーシン社製、商品名「TD1−5M」)で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。
【0040】
なお、上記カーボンナノチューブは、平均繊維径が約73nm、アスペクト比(長さL/直径D)が1000〜10000である多層構造のものを用いた。
【0041】
次に、上記混練物100重量部に対して、架橋剤として1,3ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製、「パーカドックス14R−G」)0.7重量部、発泡剤として4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(三協化成社製、「セルマイクZ−687」)3.6重量部及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(三協化成社製、「セルマイクA」)0.1重量部、発泡助剤として尿素系発泡助剤(三協化成社製、「セルトンNP」)0.3重量部、亜鉛華0.3重量部、ステアリン酸0.9重量部を加え、温度が130℃以上にならないように5分間混練し、ミキシングロールにてシート状にし、158℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×10mm)に上記シート状の混練物を充填し、25分間加圧下で加熱し、除圧後、厚み24mmの架橋した発泡体を得た。
【0042】
表1はこれらの配合割合を示している。
【0043】
得られた発泡体のみかけ密度は0.127g/cmであり、同軸管法で測定した1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が8.02〜9.00、虚数部が1.16〜3.19、Tanδ(虚数部/実数部)が0.145〜0.396であった。
【0044】
また上記発泡体を200×200×11.4mmにスライス加工して電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。接着剤は、一液系のウレタン接着剤(旭電化工業社製、「アデカレジンUP−476B」)を用いた。
【0045】
この電波吸収複合体の反射減衰量を測定したところ、図1に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は7.7GHzで、その時の反射減衰量は22.2dBであり、電波吸収体材料として好適なものであった。
【0046】
表2はこれらの結果を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
[見かけ密度の測定]
本発明における前記見かけ密度は、JISK6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定方法」記載の方法で測定した。
【0050】
[複素比誘電率と誘電正接Tanδの測定]
本発明における複素比誘電率と誘電正接Tanδは、以下の通り測定した。
複素比誘電率と誘電正接Tanδの測定は同軸管法によって行った。具体的には、同軸管は株式会社関東電子応用開発製の同軸管サンプルホルダー(型式:CSH2−APC7)を使用し、同軸管に接続する計測機器はベクトルネットワークアナライザ(アジレント社製 型式:E8361A)を使用して測定を行った。同軸管に挿入する試料は電波吸収材料を外径7.00mm、内径3.04mm、長さ1.00〜5.00mmの中空円板状に切り出し、同軸管に挿入して周波数1〜10GHzの範囲において、リニア目盛で222点の複素比誘電率の測定を行った。また誘電正接Tanδは複素比誘電率より算出した。
【0051】
[反射減衰量の測定]
本発明において、反射減衰量は以下の通り測定した。
電波吸収特性である反射減衰量の測定はアーチ法によって行った。測定装置は測定試料を中心に送信アンテナ(発信器)と受信アンテナ(接続測定器:ネットワークアナライザ アジレント社製 型式:E8361Aがアーチに設置されており、アンテナが可動し、電波の入射角度が10度から60度まで変化させられる装置である。またアンテナは向きを変えることでTE波、TM波を変化することができる装置であり、今回の測定はTE波において垂直波に最も近い入射角度の10度、周波数領域が1〜10GHzにおいて、リニアの目盛で222点の測定を行った。測定試料は電波吸収材料及び反射板を200×200mmに加工して測定を行った。
【0052】
[相対倍率の測定]
本発明において、相対倍率は以下の通り測定した。
カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂組成物の密度を、それを発泡させた発泡体の見掛け密度で除して求めた。具体的には、カーボンナノチューブの真比重と、熱可塑性樹脂の密度とから各混合割合におけるカーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂組成物の密度M1を算出し、それを発泡させた発泡体の見掛け密度M2を測定し、M1/M2で求めた。実施例及び比較例の発泡体では、熱可塑性樹脂のポリエチレン樹脂の密度を0.92g/cm、カーボンナノチューブの真比重を1.95g/cmとした。
【0053】
[発泡体中のカーボンナノチューブの含有量の測定方法]
本発明における発泡体中のカーボンナノチューブの含有量の測定は、「JIS K7075 炭素繊維強化プラスチックの繊維含有率及び空洞率試験方法」で実施できる。
試料10〜15mgを示差熱・熱量同時測定装置 TG/DTA 300型(セイコー電子工業(株)製)を使って測定した。即ち、測定開始温度:30℃、終了温度:800℃、加熱速度:10℃/min、窒素ガス流量:30mL/min(30℃〜520℃)、エアー流量:50mL/min(520℃〜800℃)とし、520℃〜800℃昇温時の試料重量の減量分をカーボン量とする。
【0054】
<実施例2>
低密度ポリエチレンをベースとした前記カーボンナノチューブ15重量%マスターバッチ[低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LF−521H」)85重量%、カーボンナノチューブ15重量%]100重量部を、温度100℃において前記加圧式ニーダー混練機で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。
【0055】
上記混練物100重量部に対して、表1に記載した架橋剤、発泡剤、発泡助剤を加え、温度が130℃以上にならないように5分間混練し、ミキシングロールにてシート状にし、158℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×10mm)に上記シート状混練物を充填し、25分間加圧下で加熱し、除圧後、厚み20mmの架橋した発泡体を得た。
【0056】
表1はこれらの配合割合を示している。
【0057】
得られた発泡体のみかけ密度は0.159g/cmであり、1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が10.94〜14.27、虚数部が3.19〜4.89、Tanδ(虚数部/実数部)が0.268〜0.404であった。
【0058】
また上記発泡体を200×200×3.5mmにスライス加工して電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。
【0059】
この電波吸収複合体の反射減衰量を測定したところ、図2に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は5.1GHzで、その時の反射減衰量は23.0dBであり、電波吸収体材料として好適なものが得られた。
【0060】
表2にこれらの結果を示す。
【0061】
<実施例3>
実施例1で用いた低密度ポリエチレンをベースとしたカーボンナノチューブ10重量%マスターバッチ100重量部を、温度100℃において前記加圧式ニーダー混練機で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。この混練物100重量部に対して、表1に記載した架橋剤、発泡剤、発泡助剤を加え、温度が130℃以上にならないように5分間混練し、ミキシングロールにてシート状にし、158℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×10mm)に上記シート状混練物を充填し、25分間加圧下で加熱し、除圧後、厚み13mmの架橋した発泡体を得た。
【0062】
表1はこれらの配合割合を示している。
【0063】
得られた発泡体のみかけ密度は0.238g/cmであり、1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が11.04〜17.76、虚数部が3.69〜7.89、Tanδ(虚数部/実数部)が0.234〜0.576であった。
【0064】
また上記発泡体(発泡シート)を200×200×3.7mmにスライス加工して、電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。
【0065】
この電波吸収複合体の反射減衰量を測定したところ図3に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は5.0GHzで、その時の反射減衰量は29.7dBであり、電波吸収体材料として好適なものが得られた。
【0066】
表2にこれらの結果を示す。
【0067】
<実施例4>
実施例1で用いた低密度ポリエチレンをベースとしたカーボンナノチューブ10重量%マスターバッチ100重量部を、温度100℃において前記加圧式ニーダー混練機で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。
【0068】
この混練物100重量部に対して、表1に記載した架橋剤、発泡剤、発泡助剤を加え、温度が130℃以上にならないように5分間混練し、ミキシングロールにてシート状にし、158℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×10mm)に上記シート状混練物を充填し、25分間加圧下で加熱し、除圧後、厚み32mmの架橋した発泡体を得た。
【0069】
表1はこれらの配合割合を示している。
【0070】
得られた発泡体のみかけ密度は0.082g/cmであり、1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が6.99〜8.73、虚数部が1.39〜1.99、Tanδ(虚数部/実数部)が0.191〜0.257であった。
【0071】
また上記発泡体(発泡シート)を200×200×3.5mmにスライス加工して、電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。
【0072】
この電波吸収複合体の反射減衰量を測定したところ図4に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は6.4GHzで、その時の反射減衰量は23.7dBであり、電波吸収体材料として好適なものが得られた。
【0073】
表2にこれらの結果を示す。
【0074】
<比較例1>
実施例1で使用した、低密度ポリエチレンをベースとしたカーボンナノチューブ10重量%マスターバッチ[低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LF−521H」)90重量%、カーボンナノチューブ10重量%]50重量部に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックLD LF−521H」)50重量部を加えて、温度100℃において加圧式ニーダー混練機(トーシン社製、商品名「TD1−5M」)で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。
【0075】
上記混練物100重量部に対して、表1に記載した架橋剤、発泡剤、発泡助剤を加え、温度が130℃以上にならないように5分間混練し、ミキシングロールにてシート状にし、158℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×10mm)に上記シート状混練物を充填し、25分間加圧下で加熱し、除圧後、厚み28mmの架橋した発泡体を得た。
【0076】
表1はこれらの配合割合を示している。
【0077】
得られた発泡体のみかけ密度は0.101g/cmであり、1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が4.54〜5.12、虚数部が0.36〜0.52、Tanδ(虚数部/実数部)が0.078〜0.101であった。
【0078】
また上記発泡体を200×200×15.0mmにスライス加工して、電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。
【0079】
この電波吸収複合体の反射減衰量を測定したところ図5に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は6.0GHzで、その時の反射減衰量は14.6dBであった。
【0080】
表2にこれらの結果を示す。
【0081】
このように、本発明の上記実施例の電波吸収体は、周波数1〜10GHzにおいて、反射減衰量が15dB以上、好ましくは20dB以上と良好な電波吸収性能が得られ、複素比誘電率の実数部(εr’)が6.0〜20.0、好ましくは6.5〜18.0、虚数部(εr”)が1.0〜9.0、好ましくは1.1〜8.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60、好ましくは0.14〜0.59であることが認められた。
【0082】
<比較例2>
カーボンブラックを使用した電波吸収体について、前記特許文献2との比較として、電波吸収性能のパラメータである誘電率と電波吸収性能である反射減衰量を測定した。なお、カーボン濃度は実施例のカーボンナノチューブの最高濃度である15wt%で行った。
【0083】
低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテックLD LF−521H」)85重量部と、導電性カーボンブラック(ライオン株式会社製、商品名「ケッチェンブラックEC300J」)15重量部の混合物を、温度100℃において前記加圧式ニーダー混練機で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。
【0084】
上記混練物100重量部に対して、表1に記載した架橋剤、発泡剤、発泡助剤を加え、温度が130℃以上にならないように5分間混練し、ミキシングロールにてシート状にし、158℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×10mm)に上記シート状混練物を充填し、25分間加圧下で加熱し、除圧後、厚み17mmの架橋した発泡体を得た。
【0085】
表1はこれらの配合割合を示している。
【0086】
得られた発泡体のみかけ密度は0.190g/cmであり、1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が2.72〜2.99、虚数部が0.43〜0.80、Tanδ(虚数部/実数部)が0.151〜0.267であった。
【0087】
また上記発泡体を200×200×6.5mmにスライス加工して、電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。
【0088】
この反射減衰量を測定したところ図6に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は8.7GHzで、その時の反射減衰量は5.2dBであり、電波吸収体材料としてはあまり好ましくない性能の結果となった。
【0089】
表2にこれらの結果を示す。
【0090】
なお、比較例2について、反射減衰量が15dBに達しないのは、複素比誘電率の実数部がカーボンナノチューブの値より低いということと、それに合わせてTanδの値も低いのが原因であると考えられる。従って、カーボンブラックの含有量が15wt%では良好な電波吸収体は製作できないことがわかる。また前記実施例とこの比較例を対比してわかるように、本発明にかかるカーボンナノチューブ含有発泡体では、複素比誘電率の実数部が6.0〜20.0の範囲を持つが、カーボンブラックを含有する発泡体ではこの数値は実現できない。
【0091】
<比較例3>
実施例1で用いた低密度ポリエチレンをベースとしたカーボンナノチューブ10wt%マスターバッチ100重量部を、温度100℃において加圧式ニーダー混練機(トーシン社製、商品名「TD1−5M」)で、温度が120℃に上昇するまで約10分間混練した。この混練物を160℃に加熱されたプレス内の金型(200×200×1mm)に充填し、5分間加圧下で加熱し、除圧後、厚さ1mmの非発泡シートを得た。得られた非発泡性シートの1〜10GHzの複素比誘電率は実数部が13.44〜15.05、虚数部が1.53〜2.25、Tanδ(虚数部/実数部)が0.111〜0.134であった。
【0092】
また上記非発泡シートを電波吸収体とし、これを電波吸収層として、厚さ25μmのアルミ箔の電波反射層に接着剤を用いて一体化して積層形成し電波吸収複合体を製作した。
【0093】
この電波吸収複合体の反射減衰量を測定したところ図7に示すグラフとなり、1〜10GHzのピーク周波数は5.8GHzで、その時の反射減衰量は3.0dBであり、電波吸収体材料としてはあまり好ましくない性能の結果となった。
【0094】
表2にこれらの結果を示す。
【0095】
このように、比較例3で反射減衰量が15dBに達しないのは、複素比誘電率の実数部が前記カーボンナノチューブ含む発泡体の電波吸収体の値より高すぎるため、Tanδの値が低くなるのが原因であると考えられる。従って、カーボンナノチューブを含む非発泡体では良好な電波吸収体が製作できないことがわかる。またカーボンナノチューブを含む前記発泡体のTanδの範囲(0.14〜0.60)は、カーボンナノチューブを含む非発泡体の電波吸収体では実現できないことが言える。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の電波吸収体は、各種の電波障害が問題となっている携帯電話、無線LAN、料金自動収受システム(ETCシステム)等の様々な通信機器などの電波障害に使用することができる。携帯電話等の機器ではその機器に装填することができるほか、2.4GHzの無線LAN用電波吸収体として適用する場合は、例えば無線LANを利用する室内の壁や天井、床等の内装材や外装材として用いることができる。これにより、利用が増加している無線LANの電波を効率よく吸収し、様々な機器の誤動作を防ぐことができる。また、5.8GHzの料金自動収受システム(ETCシステム)用電波吸収体の場合、料金自動収受システム通信等の信頼性向上が可能なため、高速道路交通システム(ITS)の今後の展開にも寄与できる。また、本発明の電波吸収体は、これらの用途に限定されず、各種の物品に取り付けて使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施例1にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例2にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例3にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例4にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の比較例1にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の比較例2にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の比較例3にかかる電波吸収複合体の反射減衰量(dB)と周波数(GHz)との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜10GHzの周波数帯域における電波吸収体であって、カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂発泡体からなり、同軸管法で測定した複素比誘電率の実数部(εr’)が6.0〜20.0、虚数部(εr”)が1.0〜9.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60の範囲にあることを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが、前記発泡体を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して6〜20重量部の割合で含まれている請求項1に記載の電波吸収体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂発泡体の相対倍率が3倍以上15倍以下である請求項1又は2に記載の電波吸収体。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブは、アスペクト比(長さL/直径D)が10〜10000の範囲にある単層または多層構造である請求項1乃至3のいずれかの項に記載の電波吸収体。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の電波吸収体の電波吸収層と電波反射層が積層された電波複合吸収体であって、
1〜10GHzの周波数帯域において反射減衰量が15dB以上のピーク周波数を有する電波吸収複合体。
【請求項6】
カーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂を架橋発泡させて、同軸管法で測定した複素比誘電率の実数部(εr’)が6.0〜20.0、虚数部(εr”)が1.0〜9.0、誘電正接(Tanδ=εr”/εr’)が0.14〜0.60の範囲の熱可塑性樹脂発泡体の電波吸収体を得ることを特徴とする電波吸収体の製造方法。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブが前記熱可塑性樹脂100重量部に対して6〜20重量部の割合で含まれるように前記カーボンナノチューブを添加した当該熱可塑性樹脂を、相対倍率が3倍以上15倍以下となるように架橋発泡させる請求項6記載の電波吸収体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−335680(P2007−335680A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166700(P2006−166700)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(502205145)株式会社物産ナノテク研究所 (101)
【Fターム(参考)】