説明

電波式液面計

【課題】極低温環境下でも、シーリング能力の低下を阻止できる電波式液面計を提供する。
【解決手段】電波発生器にて発生し同軸接栓から照射する電波をアンテナに案内し、アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、導波管に固定する第二のフランジ部を有するアンテナと、両フランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、導波管のフランジ部のアンテナのフランジ部との対向面側に導波管と同心円状の溝が形成されて、シーリング材をアンテナのフランジ部に向かって押圧する弾性部材が嵌合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンク内に貯蔵される液体の上部端面(以下「液面」という)に電波を照射し、液体の残量を計測する電波式液面計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波式液面計に用いる電波の照射方式には複数の種類がある。代表的なものは、FMCW方式とパルスレーダー式である。
【0003】
FMCW方式は、貯蔵タンクの頂部に設置した液面計から下方の液面に向けて垂直方向に電波を照射し、液面計から液面までの距離を計測する方式である。この方式は、上記照射する電波の発振周波数を時間とともに直線的に変化させつつ液面に向かって照射し、照射開始時の発振周波数と、液面によって反射し再び上記液面計で受信される発振周波数との差を計測することで電波の伝搬時間を等価的に割り出して、液面計から液面までの距離を求めるものである。
【0004】
パルスレーダー方式も貯蔵タンク頂部に設置する液面計から下方の液面に向かって照射した電波によって、液面計から液面までの距離を計測する方式である。この方式は、前記FMCW方式とは異なり、発振周波数を一定値として、決められた一定周期で電波を断続的に照射し、この断続波が、液面で反射され再び液面計で受信されるまでの時間差を直接計時し、等価的に電波の伝搬時間を割り出す。この割り出した伝搬時間を用いて液面計から液面までの距離を求めるものである。
【0005】
ここで計時に利用する電波は、直進性に優れ液面での反射による減衰が少ない特性を重視して、マイクロ波帯と呼ばれる、周波数がGHzオーダー帯域の電波である。
【0006】
また、上記帯域の電波を用いる場合に適したアンテナの代表例は、構造の簡単さと機械的強度に優れた「ホーン型アンテナ」である。ホーン型アンテナを用いる電波式液面計は、電波の照射口となるアンテナ開口部から、電波の伝搬路である導波管の内部空洞部、導波管の給電部の同軸接栓までが外部に直接露出することになる。このため、貯蔵タンク内部にホーン型アンテナを設置すると、同軸接栓部が貯蔵タンク内に貯蔵している液体に対して暴露されることになる。
【0007】
貯蔵タンクにホーン型アンテナを用いた電波式液面計を設置した概略図を図10に示す。図10において、貯蔵タンク90は、液体91を貯蔵するための構造であって、貯蔵する液体91を貯蔵タンク90内に流入させる図示しない貯蔵液体流入部、電波式液面計100を設置する為の設置穴92を有している。設置穴92には電波式液面計100を設置している。電波式液面計100は、ホーンアンテナ93、導波管94、同軸接栓部95、液面計装置96、液面計装置本体外筺97を一体としてなり、設置穴92の上部に設けられた貯蔵タンク90のフランジ部と液面計装置外筺97のフランジ部とを図示しない固定ボルトで固定している。
【0008】
電波式液面計100を構成する液面計装置96は電波を発する電波発生器を具備しており、発生した電波は同軸ケーブルを通じて導波管94内の空洞に案内される。案内された電波は同軸ケーブルの先端に設置した同軸接栓部95によって導波管94の内部空洞に照射される。照射された電波はホーン型アンテナ93を通じて液面91に当たって反射され、反射された電波はホーン型アンテナ93、導波管94を通じ、同軸接栓部95を介して同軸ケーブルを伝って液面計装置96で受信され、液面計装置96が具備する計測手段によって、貯蔵している液体91の貯蔵タンク90の底からの高さを計測する。
【0009】
貯蔵タンク90に貯蔵する液体91は、あらゆる種類の油脂や薬品等である。従って、ホーンアンテナ93の開口部(図10において下方向)から上記薬品等が同軸接栓部95を伝って液面計装置96の内部にまで侵入する怖れがある。このように薬品類が液面計装置96を浸食すると、装置は重大な支障を受け故障する怖れがある。このような故障を防ぐために、ホーンアンテナ93と導波管94の間にシーリング材98を設けなければならない。
【0010】
シーリング材98は導波管94とホーンアンテナ93の間に挟み込んで、図示しない固定手段によって固定する。固定方法として接着剤を用いることも可能ではあるが、液体91との化学反応によって劣化が生じ、シーリング効果が発揮できなくなる危険性が高い為に、固定ボルトなどの機械的な手段で固定することが一般的である。上記シーリング材98は、シーリング効果が有効に持続し、また、使用可能な温度範囲が極めて広い材料を用いる。
【0011】
一般にシーリング材98に用いる材質は、ホーンアンテナ93、導波管94に用いる材質と異なる。材質が異なると当然ながら熱収縮率は異なる。従って、シーリング材98に使用可能温度範囲が広いものを用いたとしても、液体91の種類によっては極低温状態にて貯蔵する場合があり、そのような極低温状態ではシーリング材98とホーンアンテナ93、導波管94の間に間隙が生じる。このような間隙が生じるとシーリング効果を有効に発揮することはできず、液体91が液面計装置96を浸食し同装置が動作不良を起こすことになる。このような課題を解決するために、導波管94とホーンアンテナ93に挟み込むシーリング材98を十分に薄くし、熱収縮率の差異による間隙発生を極めて少なくする発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−324374号公報
【0012】
特許文献1記載の発明におけるシーリング材98の例を図11に示す。図11は、ホーンアンテナ93、導波管94、同軸接栓部95、シーリング材98の構成のみを示し、他の構成要素は省略している。シーリング材98に用いる材質は、貯蔵タンク内に貯蔵される薬品類から液面計装置を防護し、かつ、液面距離測定に用いる電波の伝搬を妨害せず電波伝搬に対する影響が極力小さいことが必須条件となる。従って、この条件に合致する樹脂(誘電体)を用いる。
【0013】
上記条件を満たす材質として、貯蔵される薬品類の種類の如何に関わらず化学的に不活性であり、使用可能な温度範囲が極めて広い「PTFE(Poly−Tetra−Fluoro−Ethylene)」樹脂が有名である。ここではシーリング材98としてPTFEを図12の構成に用いた例を説明する。図12において、ホーン型アンテナ93と導波管94は相互に接合するフランジを有する。シーリング材98は導波管94の内部に嵌まる本体部分と、下側の円錐形の部分と、これら本体部分と円錐形の部分の境界部に形成された挟み込み部を有して成る。このシーリング材98の挟み込み部を前記アンテナ93のフランジと導波管94のフランジの間に挟み込んで図示しないフランジ締結ボルトの締め付け圧力により固定する。このように固定したシーリング材98によって、貯蔵タンクに貯蔵した薬品類が、導波管94にさらには液面計装置に浸入することを阻止している。
【0014】
シーリング材98は、その挟み込み部がシールとしての機能を果たすものであるが、電波の伝搬特性を安定にするために、上記挟み込み部とともに全体が同じ材質であるPTFEで一体成形されている。すなわち、導波管94の内部に充填されるシーリング材98の本体部分も、挟み込み部と同じPTFE誘電体で一体成形されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の構造を有するシーリング材98とその固定方法においてシーリング材98に使用可能な温度範囲が極めて広い材質であるPTFE樹脂を用いても、極低温環境においてはシーリング材98が僅かながら収縮することで、シーリング材98とホーンアンテナ93、導波管94との間に微小な間隙が生じる。これはホーンアンテナ93と導波管94に用いる材質と、シーリング材98に用いる材質の熱収縮率が異なるためである。
【0016】
一般に、シーリング材98に用いるPTFEの温度による線膨張率は、12.3×10−5/℃である。一方、ホーンアンテナ93と導波管94のフランジ部に用いる材質の代表例は、ステンレス鋼であり、ステンレス鋼の線膨張率は、1.73×10−5/℃であって、両者の線膨張率は10倍近くの差を有する。従って、極低温環境下における、PTFE樹脂とステンレス鋼の収縮量の差異により生じる微小な間隙を伝って貯蔵タンク内に貯蔵されている薬品類が、導波管94に侵入する可能性がある。
【0017】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、いかなる環境であっても、例えば、極低温環境下でも、シーリング能力の低下を防止することができる電波式液面計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、電波を発する電波発生器と、電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、アンテナと固定するフランジ部を有する導波管と、導波管に固定するフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、上記導波管のフランジ部とアンテナのフランジ部間に挟み込んで固定するシーリング材を有する電波式液面計であって、上記導波管のフランジ部にはシーリング材を上記アンテナのフランジ部に向かって押圧する弾性部材が嵌合されていることを最も主要な特徴とする。
上記フランジ部に弾性部材を格納する弾性部材格納部を上記導波管と同心円状に形成し、この格納部に、シーリング材を上記導波管のフランジ部に向かって押圧する弾性部材を嵌合してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、固定ボルトなどの外部圧力手段と合わせて、弾性部材の反発力を利用する内部圧力手段を併用し、シーリング材を導波管のフランジ部とアンテナのフランジ部に弾性部材を配置したので、シーリング材が極低温環境下において大きく収縮した場合でも弾性部材の反発力によってシーリング面の面圧を規定値以上に維持することが可能となる。これによってシーリング材と導波管およびアンテナのフランジ部の間に微小な間隙が生じることを防止することができるため、間隙から貯蔵薬品類が導波管に浸入する問題が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる電波式液面計の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係るホーン型アンテナを用いた電波式液面計の例を示す概略図である。なお、図1では、液面計装置本体、貯蔵タンクなどの説明に不要な構成要素は図示を省略している。
【0022】
図1において、ホーンアンテナ93は上端部に水平方向に広がるフランジ部93aを有し、このフランジ部93aに、導波管94の下端部に形成されたフランジ部94aが重ねられ、これらのフランジ部93a,94aがボルトとナットなどの適宜の締結手段によって結合されている。上記二つのフランジ部93a,94a間にはシーリング材98の挟み込み部98aが挟み込まれ、上記締結手段の締結力で上記シーリング材98の挟み込み部98aが上記二つのフランジ部93a,94aで上下方向に圧力が加えられた状態で固定されている。上記導波管94は有底円筒状の部材を伏せた形をしており下端部に上記フランジ94aを有している。上記シーリング材98は、挟み込み部98aを境にして上側が円柱状の本体部98b、下側がホーンアンテナ93の軸線方向下方に円錐形状に突出した円錐部98cとなっている。シーリング材98は樹脂による一体成形などで作成することができ、挟み込み部98aがシーリング材98としての本来の機能を果たす。シーリング材98の本体部98bは導波管94内に挿入され、導波管94内に充填されたのと実質的に同一の構成になっている。導波管94のフランジ部94aには、弾性部材を格納するための溝を有している。詳しくは図1の点線で囲った格納部99を拡大した図2を用いて説明する。
【0023】
図2において、導波管94のフランジ部94aには、内面側から半径方向外側に向かう切り込み部が形成されて、導波管94の下端内周部が段状になっており、アンテナ93のフランジ部93aにも、内面側から半径方向外側に向かう切り込み部が形成されて、アンテナ93の上端内周部が段状になっている。上記の各切り込み部は、導波管94およびアンテナ93の内周の全周にわたり、導波管94と同心の円に沿って形成されている。導波管94の切り込み部が形成されることによって生じる庇状の水平面94cには、断面が矩形状の溝が形成されている。この溝は弾性部材格納部99bとなっていて、内部に弾性部材99aが嵌合されている。弾性部材格納部99bは、導波管94と同心の円に沿って形成されているので、上記の各切り込み部と同心の円に沿っている。弾性部材格納部99bに嵌められている弾性部材99aも、弾性部材格納部99bに対応するリング状(円環状)になっている。本実施例では、弾性部材格納部99bの断面は矩形形状をしているが、形状はこれに限らず弾性部材99aを格納できる形状であればよい。
【0024】
図2に示す実施例では、アンテナのフランジ部93aと導波管のフランジ部94aを締結したとき、これらフランジ部の接合面80が、シーリング材98の挟み込み部98aの厚さ方向の中間点に位置するように、アンテナ93の切り込み部と導波管94の切り込み部の縦方向寸法が設定されている。上記接合面80は、図8及び図9に示すように、導波管のフランジ部94aまたはアンテナのフランジ部93aに偏った位置であっても良い。図8に示す実施例は、アンテナのフランジ部93aの内周側にのみ切り込み部を形成して導波管のフランジ部94a側には切り込み部を設けることなくフランジ部94aの下面を平坦な面としたものである。弾性部材格納部99bは導波管94のフランジ部94aの平坦な下面側に形成して、ここに弾性部材99aが格納されている。図9に示す実施例は、逆に、導波管94のフランジ部94aの内周側にのみ切り込み部を形成してアンテナのフランジ部93a側には切り込み部を設けることなくフランジ部93aの上面を平坦な面としたものである。弾性部材格納部99bは導波管94のフランジ部94aの切り込み部水平面94cに形成して、ここに弾性部材99aが格納されている。
【0025】
上記構造におけるシーリング原理について説明する。なお、上記弾性部材99aとして用いる材質の代表例は、NBR(Acryloitrile−utadiene−ubber)を用いたゴム製パッキングである。断面形状が矩形であり、ドーナツ状の全体形状を有する弾性部材99aの内径をd’(cm)、外径をd(cm)、厚みをh(cm)とする。またNBR材質の静的せん断弾性率をGs(kgf/cm)とする。ここで、弾性部材格納部99bの深さ(図2における上方向長さ)をh1(cm)とすると、導波管のフランジ部94aとアンテナのフランジ部93aとをボルトにて完全に締結した状態で、弾性部材99aの厚さはh1(cm)まで圧縮されることになり、この時の撓み量δはδ=(h−h1)(cm)となる。
【0026】
一般にゴムのヤング率EapはEap=Gs×(3+4.94S)で表わされる。ここでSは形状率であって、S=(d−d’)/4hにて求められる。また、上記の撓み量によって生じる弾性部材99aの反発力を受ける受圧面積Alは、弾性部材99aの接触面積と等しい。従って受圧面積Al=π×(d−d’)/4(cm)となり、弾性部材99aの反発力による下向きの荷重W(kg)は、W=Eap×Al×(h−h1)/hとなるからこれを分解すると、以下の式で表される荷重W(kg)にてシーリング材98は下向きに圧迫される。
【数1】

【0027】
上記荷重Wはシーリング材98を介してアンテナのフランジ部93aの切り込み部水平面であるシーリング面81に伝わる。シーリング面81の面積Asは、導波管94の内径をd1(cm)とすると、As=π×(d―d1)/4(cm)となる。ここで、荷重W(kg)をAs(cm)で除算した値を単位面積当りの面圧と言うが、この単位面積当りの面圧が一定値以上であるならばシーリング面の間隙を伝って貯蔵薬品類が導波管内に漏れることは無い。上記単位面積当りの面圧は、シーリングの対象となる薬品類の性状によって異なる。
【0028】
ここで、シーリング材98にPTFE樹脂を用いて使用環境温度が25℃の時の挟み込み部98aの厚さをD(cm)とする。また、同じ使用環境温度において、シーリング材98が介在することなく、導波管フランジ部94aとアンテナフランジ部93aが締結されているときの、導波管フランジ部94aとアンテナフランジ部93aの切り込み部によって形成される水平面94cとシーリング面81の乖離寸法もD(cm)とする。かかる条件のもとにおいて、上記使用環境温度がマイナス25℃まで下がったとすると、シーリング材98とシーリング面81には(12.3×10−5−1.73×10−5)×(25−(−25))=5.29×10−3の率で間隙が生じことになる。ここで、D=1(cm)とするならば、0.053(mm)の間隙が生じることとなる。
【0029】
上記のような間隙が生じることを防ぐために、弾性部材99aの反発力を用いる。弾性部材99aの厚さhは通常数ミリメートルであり、弾性部材99aの収縮時の厚さh1は(h×0.5〜0.7)程度であることが多い。上記極低温環境下におけるシーリング材の収縮量は弾性部材99aの復元力によって実際には吸収されるが、弾性部材99aの撓み量δが復元によって吸収される収縮量の分だけ小さくなる。この結果、撓み量が小さくなった分だけシーリング面における面圧も低下する。従って、上に示したような極低温環境下におけるシーリングについては、シーリング材98の熱収縮を考慮した圧力計算を行なう必要がある。
【0030】
また、図2にて示すように、導波管のフランジ部94aに設けた弾性部材格納部99bの幅は、シーリング材98の挟み込み部98aの挟み込み深さ、すなわち導波管94の切り込み部およびアンテナ93の切り込み部の半径方向外側に向かう切り込み深さd2よりも短くなっていて、導波管94の内壁面側に弾性部材ガイド突堤99cが形成された構造になっている。仮に、導波管のフランジ94の切り込み部水平面94cに弾性部材99aを直接配した場合、導波管のフランジ94とアンテナのフランジ93の締結による圧力によって、弾性部材99aは圧縮変形し、導波管94の内周側にはみ出してしまう。また、弾性部材格納部99bを導波管94の内面端に形成した場合、すなわち弾性部材ガイド突堤99cを設けない構造とした場合も、同様に弾性部材99aは圧縮変形して導波管94の内周側にはみ出てしまう。そうすると弾性部材99aによる下方向への反発力が弱まりシーリング面81の面圧が低下することになる。このような事象を防ぐ目的で弾性部材ガイド突堤99cを設けた。この弾性部材ガイド突堤99cを設けることにより、弾性部材99aの反発力はシーリング材98の挟み込み部98aをアンテナ93のフランジ部93aにのみ向かって押圧することになり、導波管94とアンテナ93の締結力が熱収縮によって低下しても、シーリング材98によるシーリング性能の低下を防止することができる。よって、弾性部材格納部99bの容積と、弾性部材99aの体積は、上述した弾性部材99aが圧縮によって変形する「逃げ」の容積(マージン)を考慮して決定する必要がある。
なお、図2に示す例は、弾性部材ガイド突堤99cを形成することによって、上記のように弾性部材99aの機能がより効果的に発揮されるようにしたより好ましい例であるが、上記のような弾性部材ガイド突堤99cがない場合であっても、本発明の目的を達成することができるので、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
以上説明したように、ホーンアンテナ93と導波管94の間に設置するシーリング材98をより確実に固定する為に、導波管のフランジ部94aに設けた弾性部材格納部99bに弾性部材99aを配して、アンテナのフランジ部93a、導波管のフランジ部94aを対向させてボルトなどの外部固定手段によって固定している。上記構造を形成するために用いる各構成要素の配置順序を、導波管のフランジ部94a、弾性部材99a、シーリング材98、アンテナのフランジ部93aとしているので、シーリング材98の素材であるPTFE樹脂が極低温環境下において大きく収縮した場合であっても、弾性部材99aに用いるゴム製パッキングの反発力によって、シーリング面の面圧を規定以上に維持することができるようになり、温度変動などによってシーリング面に間隙が生じることが防止され、例えば貯蔵薬品類がシーリング面から導波管94に侵入するという問題を解決できるようになった。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明に係る電波式液面計の実施例2について図3を用いて説明する。図3において、弾性部材格納部99bの形状は実施例1と同じであるが、弾性部材99aの断面形状が矩形ではなく円形状であって、圧縮されることによって楕円形状になっている。弾性部材を設置する目的と効果は上述したとおりであるが、図3に示す円形状の弾性部材99aを用いることにより、弾性部材99aに圧力がかかって変形した際に、弾性部材格納部99b内に「逃げる」空間が存在する。また、円形状の弾性部材の具体例は、ゴム製パッキングではなく、断面が円形のゴム製「Oリング」である。
【実施例3】
【0033】
次に、本発明に係る電波式液面計の実施例3について図4を用いて説明する。図4において、弾性部材格納部99bの形状は実施例1と同じであり、弾性部材99aの断面形状は実施例2と同様の円形状を有している。すでに説明した実施例との差異は、弾性部材格納部99bを導波管のフランジ部94aにではなく、アンテナのフランジ部93aに設けたことである。また、弾性部材99aの外周をシーリング材98と同じ材質であるPTFE樹脂で被覆したものを用いている。このように、シーリング材98と同材質によって弾性部材99aの外周を被覆することで、弾性部材99a自身もシーリング材としての機能を発揮することができる。上記構成によって、シーリング材98とアンテナフランジ部93aと弾性部材99aの接触圧によって、貯蔵される薬品類をシーリングしている。
【実施例4】
【0034】
次に、本発明に係る電波式液面計の実施例4について図5を用いて説明する。図5において、シーリング材98の挟み込み部98aがシーリング面81に接触する面を凹凸に加工している。より詳細には、シーリング材98のシーリング面81との接触面が、半径方向の断面において複数の凹凸が交互に同心円上に一定間隔で並んだ形に加工されている。これによって、シーリング材98がアンテナフランジ93aに接触する面積を約半分にすることができる。実施例1にて説明したとおり、シーリング面における面圧は、弾性部材99aによる下向きの荷重W(kg)をシーリング面の面積As(cm)で除算することで求められる。従って、荷重Wが一定であるならば、面積Asが小さいほど単位面積当たりの面圧を大きくすることができる。
【0035】
すなわち、図5に示すとおり、シーリング材98の挟み込み部98aの表面に導波管94の軸と同心円関係となるように凹凸の溝を形成し、シーリング面との接触面積を約半分にすることで、同じ荷重Wであっても、単位面積当たりの面圧を約2倍にすることができ、シーリング効果をより高めることが可能となる。
【実施例5】
【0036】
次に、本発明に係る電波式液面計の実施例5について、図6を用いて説明する。図6において、シーリング材98の挟み込み部98aのシーリング面81と接触する面が鋸歯形状に加工されている。実施例4と同様に、シーリング面81との接触面積を減らすことを目的としたものであるが、本実施例に示すような鋸歯形状を用いると弾性部材99aの反発力によって、シーリング面81に強力に押し付けられるので、鋸歯形状の尖鋭部分は、図7に示すように幾分押しつぶされることになる。押しつぶされる程度はWによって異なるが、鋸歯形状の先端が有する角度を60°とし、弾性部材99aの反発力によって、鋸歯形状の高さが約3分の1にまでつぶれたと仮定すると、シーリング面81における接触面積は実施例1に示した形状に比べて約3分の1になる。
【0037】
接触面積が約3分の1になると、弾性部材99aの反発力によって生じる荷重Wが一定であっても単位面積当たりの面圧は約3倍になり、シーリング効果をより高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に用いるシーリング構造は、劇薬などを貯蔵するタンクに計測装置を設置する際に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る電波式液面計の実施例1におけるシーリング構造の例を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る電波式液面計の実施例1におけるシーリング構造部分を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明に係る電波式液面計の実施例2におけるシーリング構造の例を示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係る電波式液面計の実施例3におけるシーリング構造の別の例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る電波式液面計の実施例4におけるシーリング材の接触面形状の例を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明に係る電波式液面計の実施例5におけるシーリング材の接触面形状の例を示す断面図である。
【図7】上記実施例5におけるシーリング材が圧縮されたときの形状の例を示す拡大断面図である。
【図8】本発明に係る電波式液面計におけるシーリング構造の別の例を示す拡大断面図である。
【図9】本発明に係る電波式液面計におけるシーリング構造のさらに別の例を示す拡大断面図である。
【図10】従来の電波式液面計の構造を示す概略断面図である。
【図11】従来の電波式液面計におけるシーリング構造の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
80 フランジ接合面
81 シーリング面
90 貯蔵タンク
91 貯蔵液体
92 アンテナ設置穴
93 ホーンアンテナ
93a アンテナのフランジ部
94 導波管
94a 導波管のフランジ部
94c 導波管の切り込み部水平面
95 同軸接栓部
96 液面計装置
97 液面計装置本体外筺
98 シーリング材
98a シーリング材の挟み込み部
98b シーリング材本体部
98c シーリング材円錐部
99a 弾性部材
99b 弾性部材格納部
99c 弾性部材ガイド突堤
100 電波式液面計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発する電波発生器と、
上記電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、
上記同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、上記アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、
上記導波管に固定する第二のフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、
上記第一のフランジ部と第二のフランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、
上記導波管のフランジ部にはシーリング材を上記アンテナのフランジ部に向かって押圧する弾性部材を有することを特徴とする電波式液面計。
【請求項2】
電波を発する電波発生器と、
上記電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、
上記同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、上記アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、
上記導波管に固定する第二のフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、
上記第一のフランジ部と第二のフランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、
上記導波管のフランジ部には上記アンテナのフランジ部との対向面側に弾性部材を格納する格納部が形成され、
上記格納部にはシーリング材を上記アンテナのフランジ部に向かって押圧する弾性部材が格納されていることを特徴とする電波式液面計。
【請求項3】
電波を発する電波発生器と、
上記電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、
上記同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、上記アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、
上記導波管に固定する第二のフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、
上記第一のフランジ部と第二のフランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、
上記導波管のフランジ部には上記アンテナのフランジ部との対向面側に導波管と同心円状の溝が形成され、
上記溝にはシーリング材を上記アンテナのフランジ部に向かって押圧する弾性部材が嵌合されていることを特徴とする電波式液面計。
【請求項4】
電波を発する電波発生器と、
上記電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、
上記同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、上記アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、
上記導波管に固定する第二のフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、
上記第一のフランジ部と第二のフランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、
上記アンテナのフランジ部にはシーリング材を上記導波管のフランジ部に向かって押圧する弾性部材を有し、上記弾性部材は断面形状が円形であって、PTFEの被覆を有していることを特徴とする電波式液面計。
【請求項5】
電波を発する電波発生器と、
上記電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、
上記同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、上記アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、
上記導波管に固定する第二のフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、
上記第一のフランジ部と第二のフランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、
上記アンテナのフランジ部には上記導波管アンテナのフランジ部との対向面側に弾性部材を格納する格納部が形成され、
上記格納部にはシーリング材を上記導波管のフランジ部に向かって押圧する弾性部材が格納され、上記弾性部材は断面形状が円形であって、PTFEの被覆を有していることを特徴とする電波式液面計。
【請求項6】
電波を発する電波発生器と、
上記電波発生器にて発生した電波を案内して照射する同軸接栓と、
上記同軸接栓から照射された電波をアンテナに案内し、上記アンテナと固定する第一のフランジ部を有する導波管と、
上記導波管に固定する第二のフランジ部を有し送信アンテナ及び受信アンテナとして作用するアンテナと、
上記第一のフランジ部と第二のフランジ部間に挟み込まれて固定されるシーリング材を有する電波式液面計であって、
上記アンテナのフランジ部には上記導波管のフランジ部との対向面側に導波管と同心円状の溝が形成され、
上記溝にはシーリング材を上記導波管のフランジ部に向かって押圧する弾性部材が嵌合され、上記弾性部材は断面形状が円形であって、PTFEの被覆を有していることを特徴とする電波式液面計。
【請求項7】
上記弾性部材は断面形状が矩形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電波式液面計。
【請求項8】
上記弾性部材は断面形状が円形であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電波式液面計。
【請求項9】
上記弾性部材は断面形状が円形であって、PTFEの被覆を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電波式液面計。
【請求項10】
上記シーリング材はPTFEを材料とすることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電波式液面計。
【請求項11】
上記シーリング材の上記第二のフランジ部接触面は、断面が凹凸状の溝を有していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の電波式液面計。
【請求項12】
上記シーリング材の上記第二のフランジ部接触面は、断面が鋸歯状の溝を有していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の電波式液面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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