電流センサの校正装置
【課題】 電流センサのオフセット誤算を校正可能な電流センサの校正装置を提供する。
【解決手段】電流センサの校正装置は、バッテリ1の充放電電流値iを測定する電流センサ7と、バッテリ1と負荷6との間との間に直列配置された電気要素10の両端電圧値Vを測定する電圧センサ13と、電流センサ7で測定した充放電電流値iと電圧センサ13で測定した両端電圧Vが入力されて、電気要素10の内部抵抗の等価回路モデル17Aに基づき電気要素10の内部抵抗値Rを推定する状態推定手段17と、ここで推定した内部抵抗値Rと電圧センサで検出した電圧値Vとから電流推定値Iを算出して電流センサ7の校正電流値とする電流算出手段17と、を備えた。
【解決手段】電流センサの校正装置は、バッテリ1の充放電電流値iを測定する電流センサ7と、バッテリ1と負荷6との間との間に直列配置された電気要素10の両端電圧値Vを測定する電圧センサ13と、電流センサ7で測定した充放電電流値iと電圧センサ13で測定した両端電圧Vが入力されて、電気要素10の内部抵抗の等価回路モデル17Aに基づき電気要素10の内部抵抗値Rを推定する状態推定手段17と、ここで推定した内部抵抗値Rと電圧センサで検出した電圧値Vとから電流推定値Iを算出して電流センサ7の校正電流値とする電流算出手段17と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリなどの充放電電流を検出する電流センサの校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電気自動車やハイブリッド電気自動車などでは、これらの車両を駆動するのに用いられる電気モータへ電力を供給(放電)したり、制動時のエネルギを発電機として機能させる電気モータから、あるいは地上に設置した電源から充電して電気エネルギを蓄積したりするため、リチャージャブル・バッテリ(二次電池)が用いられる。
【0003】
この場合、長期にわたってバッテリを最適な状態に保ち、また電気モータを最適に制御するためには、バッテリの充放電電流を電流センサで常に精度よくモニタする必要がある。
この電流センサとしては、電気自動車等のように充放電される電流の変化が大きい場合には、ホール効果を利用した電流センサがよく用いられる。
このような電流センサでは、一般的に、バッテリの電流が流れていない(すなわち、電流=0アンペア)にもかかわらず、電流の検出値が一定電流分オフセットしてしまい、その分誤差が生じることが多々ある。
【0004】
そこで、従来から上記電流センサのオフセット誤差を低減して、電流検出値の精度を上げる試みがなされている。
そのうちの一つは、バッテリの充電が行われていない状態でイグニッション・キーがOFFにされた直後に、車載の電子制御ユニット相互間でLAN(Local Area Network)上における多重通信が行われていない状態のとき検出した電流検出値と、バッテリと電子制御ユニットを含む負荷間の電源供給ライン上を流れる電流がゼロであるときの電流センサの出力に関する、予め定めた標準特性における電流センサの出力と、の差分を、オフセット誤差の調整分として決定し記憶して次回のイグニッション・キーON時に利用するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の装置として、バッテリと直列接続した電流検出抵抗(いわゆるシャント抵抗)と、この抵抗の両端電圧を増幅するアンプと、このアンプの出力電圧でバッテリに流れる電流を検出する主電流センサの測定値を補正する演算回路と、を備えた補正回路を有し、アンプの出力電圧が設定電圧となるような状態において、補正回路がアンプの出力電圧から電流検出抵抗に流れる電流を演算し、この演算値と主電流センサの検出電流値とを比較して主電流センサの測定値を補正するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−325235号公報
【特許文献2】特許第3691364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電流センサの校正装置には以下に説明するような問題がある。
まず、前者の電流センサの校正装置にあっては、イグニッション・キーOFF時における特定条件のときのみしか電流センサの誤差を補正できないので、車両走行中や充電中にもその時々で変化する電流センサのオフセット誤差の補正には十分対応できず、検出精度の低下を避けることができないといった問題がある。
【0008】
また、後者の電流センサの校正装置にあっては、電流検出抵抗を新たに別途追加する必要がある上、抵抗は使用時間の経過にともなって温度上昇が生じるので、これに起因した電流検出抵抗の内部抵抗の変化を考慮した補正を行わなければならず、その校正が複雑になるといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、シャント抵抗等を別途追加することなく、走行中や充電中にあってもその都度変化する電流センサのオフセット誤差がより少なくなるように、電流センサで測定した充放電電流を校正することができる電流センサの校正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明による電流センサの校正装置は、
バッテリの充放電電流値を測定する電流センサと、
バッテリと負荷との間との間に直列配置された電気要素の両端電圧値を測定する電圧センサと、
電流センサで測定した充放電電流値と電圧センサで測定した両端電圧が入力されて、電気要素の内部抵抗の等価回路モデルに基づき電気要素の内部抵抗値を推定する状態推定手段と、
状態推定手段で推定した内部抵抗値と電圧センサで検出した両端電圧値とから電流センサの電流校正値を算出する電流算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電流センサの校正装置にあっては、電気要素の内部抵抗の等価回路モデルを用いて電流センサで測定した充放電電流値と電圧センサで測定した両端電圧から内部抵抗値を推定し、この値で、電気要素の両端電圧の測定値を割って電流校正値を得るようにしたので、もともと必要であった電気要素を用いることでシャント抵抗等を別途追加することなく、また、走行中や充電中にあっても、その都度変化する電流センサのオフセット誤差がより少なくなるように電流センサで測定した充放電電流を校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の電流センサの校正装置を有するバッテリ・コントローラと、バッテリや電気モータ等の周辺装置と、からなる電気自動車等の車両用電気回路を示す図である。
【図2】実施例1の電流センサの校正装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2電流センサの校正装置で用いるヒューズの内部抵抗等価回路モデルを示す図である。
【図4】図2の電流センサの校正装置を校正する等価回路パラメータ推定部の構成を示すブロック図である。
【図5】バッテリの充放電電流、ヒューズの両端電圧、実施例1の電流センサの校正装置で電流校正を行って得たバッテリの充電率の関係について、シミュレーションを行った結果を、時系列的に示す図であり、(a)はバッテリの充放電電流の変動を示す図、(b)はヒューズの両端電圧の変動を示す図、(c)は充電率の変動を示す図である。
【図6】実施例1の電流センサの校正装置で実行される電流補正処理および電流センサ故障診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施例の電流センサの校正装置で用いる等価回路パラメータ推定部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施例の電流センサの校正装置で実行される電流補正および電流センサ故障診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】オフセット補正なしの従来技術の電流センサを用いた場合の電流値および充電率の特性を示す図であり、(a)はオフセット誤差を含んだ電流値の変化を示す図、(b)はその電流を用いて得た充電率の変化を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を、添付図面に基づき詳細に説明する。
図1に、実施例1の電流センサの校正装置およびこの装置が接続される機器との構成関係を示す。
本実施例では、電流センサの校正装置は、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両に用いられる。
【0015】
同図に示すように、バッテリ1は、バッテリ・コントローラ2により常時モニタ、制御される。
バッテリ1には、これを充電するための充電器3、ブレーカ4、インバータ5および電気モータ6が接続されており、車両走行時には、インバータ5で電気モータ6へ供給する駆動電力を制御し、車両制動時には電気モータ6を発電機として機能させ制動エネルギの一部を電気エネルギとして回収しバッテリ2へ充電している。この制動時の回生は必ずしも必要ではない。
【0016】
バッテリ1の正極端子と充電器3の正極端子との間には、バッテリ1の充放電電流iを測定する電流センサ7の他に、リレー9およびヒューズ10が直列接続されるとともに、バッテリ1の両端子間には、バッテリ1の端子電圧vを測定する電圧センサ8が接続される。また、バッテリ1の陰極端子と充電器3の負極端子との間には、リレー11が接続される。
さらに、充電器3と電気モータ6との間にはブレーカ4とインバータ5が接続される。
【0017】
リレー9にはこの両端の電圧を測定する電圧センサ12が、またヒューズ10にはこの両端の電圧を測定する電圧センサ13が、またリレー11にはこの両端の電圧を測定する電圧センサ16が必要に応じて設けられ、これらで測定した電圧値はバッテリ・コントローラ2へ入力される。
同様に、ブレーカ4には、この正極側の両端端子間における電圧を測定する電圧センサ14が、また負極側の両端端子間における電圧を測定する電圧センサ15が必要に応じて設けられ、これらでそれぞれ測定した電圧値はバッテリ・コントローラ2へ入力される。
【0018】
上記電圧センサ12〜16の設定は以下のように行う。すなわち、電圧センサ12〜16のうち、必須のセンサとしてはバッテリ・コントローラ2の状態推定部17(図2参照)で利用する等価回路モデル17A(図2参照)の内部抵抗の両端間の電圧を測定する電圧センサのみでよい。
したがって、本実施例では、ヒューズ10のみを等価回路モデルの対象とするので、上記電圧センサ12〜16のうち電圧センサ13のみあれば良く、他の電圧センサは必ずしも必要ではない。ここでは、他の要素を対象とする場合も可能なので、便宜上すべてについて電圧センサを設定した場合を描いてある。
なお、リレー9,11、ヒューズ10およびブレーカ4は、本発明の内部抵抗を有する電気要素に相当する。
【0019】
本実施例に関係する電気回路は上記のように構成されるが、以下にこの主な構成要素につき、より詳細に説明する。
まず、バッテリ1は、リチャージャブル・バッテリ(二次電池)で構成し、本実施例にあっては、セルを多数組み合わせたリチウム・イオン・バッテリ・パックを用いるが、これに限られることはなく、ニッケル・水素バッテリ等、他の種類のバッテリを用いてもよいことは言うまでもない。
【0020】
電流センサ7は、バッテリ1の充放電電流を測定するものであって、本実施例では一種の電流磁気効果であるホール効果を利用した電流センサを用いることにより、電気モータ6へ供給される電流が大きく変動してもこれを測定できるようにする。
一方、電圧センサ8は、バッテリ1バッテリ1の端子間の電圧を検出する。
【0021】
リレー9,11とヒューズ10は、ジャンクション・ボックスを構成する。リレー9,11は、小さな電気でバッテリ1からの大きな電力の供給、遮断の切り替えを行うために用いられる。
【0022】
リレーをONにする際にインバータ5の図示しない平滑コンデンサへの突入電流を抑えるため、一時的に抵抗を介して電流を供給し平滑コンデンサの電圧が十分上昇してから、短絡するといったシーケンス制御を行う。この抵抗としては、本実施例では、異常時に回路を遮断するヒューズ10が用いられ、このヒューズ10は、本実施例では、その内部抵抗値がR(オーム)である図3の等価回路モデルとして表わされる。
【0023】
充電器3は、車両外の充電設備(図示せず)に接続されて、たとえば定電流・定電圧充電方式などにより、電力を供給してバッテリ1を充電するものである。
ブレーカ4は、バッテリ1から許容量以上の電流が流れたりした場合に、回路を電気的に遮断し安全を確保するものである。
【0024】
インバータ5は、電力変換器であり、バッテリ1からの直流電力を、パルス幅変調(PWM)制御などにより交流の電気モータ6を駆動する三相交流電力に変換して電気モータ6に供給するものである。インバータ5は、図示しないインバータ・コントローラにより、このコントローラに入力されるアクセル・ペダル踏み込み量や車両速度などの情報に応じて、その出力電力を決定する。
【0025】
電気モータ6は、本実施例では、希土類永久磁石を用いた永久磁石同期モータが使用され、インバータ5からの交流電力で駆動される。なお、電気モータは、本発明の負荷に相当する。
【0026】
バッテリ・コントローラ2は、車載のマイクロ・コンピュータで構成され、電流センサ7、電圧センサ8,12〜16などからの各種の情報信号が入力されて、バッテリ1のセルごと、あるいは複数のセルの温度、電圧、電流を常時モニタしてバッテリ・マネージメントを行っている。
【0027】
バッテリ・コントローラ2は、本実施例の電流センサの校正装置を有しており、その構成とその信号の流れを図2のブロック線図に示す。
同図に示すように、電流センサの校正装置は、状態推定部17と、電流算出部19と、電流センサ・オフセット誤差算出部20と、電流センサ異常判定部21と、を有する。
【0028】
状態推定部17は、図3に示すような、ヒューズ10の内部抵抗等価回路モデル17Aと、等価回路パラメータ推定部17Bと、を備えている。なお、状態推定部17は、本発明の状態推定手段に相当する。
【0029】
等価回路パラメータ推定部17Bは、内部抵抗平均化処理部18や図4の適応機構23を有する。等価回路パラメータ推定部17B、内部抵抗平均化処理部18は、それぞれ本発明の等価回路パラメータ推定手段、内部抵抗平均化処理手段に相当する。
【0030】
等価回路パラメータ推定部17Bでは、図4に示すように、実際のヒューズ10とこのヒューズ10の内部抵抗等価回路モデル17Aとに、電流センサ7から電流値i(k)が入力され、ヒューズ10の電圧センサ13で測定した電圧測定値V(k)と、等価回路モデル17Aで推定された、出力としての電圧推定値V(k)^とが減算器24で比較され、これらの誤差ε(k)が算出される。なお、上記記号中、上方の添え字^は、推定を表わすが、図面上と異なり明細書中では便宜上、右にずらして記載する。また、kは、サンプリングの順番番号(時刻ステップ)を、したがって、i(k)はk番目の電流値を、V(k)はk番目の電圧測定値を、V(k)^はk番目の電圧推定値を、それぞれ表わす。
【0031】
そして、適応機構23では、上記誤差ε(k)があれば、これにフィードバック・ゲインL(k)をかけて等価回路モデル17Aへフィードバックし、誤差ε(k)が最小になるように等価回路モデル17Aを修正する。このようにして等価回路モデル17Aを用いることで、状態量としてのパラメータRを求めることができる。
ここでは、カルマン・フィルタや逐次最小二乗法などを用いて逐次計算を行うが、ヒューズ10の内部抵抗Rは小さいので、推定精度を上げるべく比較的大きな電流で内部抵抗Rの推定を行うようにする。
【0032】
そこで、図5(a)に示すように、プラス側の第1閾値i1より大きいプラス側電流とマイナス側の第2閾値i2より小さいマイナス側電流が測定されたときだけに、これら閾値を超えたプラス側、マイナス側電流を検出したときに測定されたヒューズ10の両端電圧におけるプラス側電圧とマイナス側電圧(これらを図5(b)に示す)を用いて、電圧値を電流値で割ることにより、パラメータとしてプラス側抵抗値R(+)とマイナス側抵抗値R(-)の両方をそれぞれ推定する。
ここで、プラス側の第1閾値i1と第2閾値i2とは、絶対値が同じで符号が異なる値に設定してある。なお、図5(a)では電流真値を点線で、オフセット誤差がある電流を実線で示してある。同図では、オフセット誤差が真値より高めの状態が例示されているが、オフセット誤差が真値より低めになることはもちろんあり得る。
【0033】
内部抵抗平均化処理部18は、等価回路パラメータ推定部17Bで推定したパラメータ、すなわちプラス側抵抗値R(+)とマイナス側抵抗値R(-)が入力され、これらの平均化処理を行うことで内部抵抗Rを得る。
ここで、平均化処理を行うのは、電流iがプラス側にオフセットしていた場合にはプラス側の電流値はその真値より大きめになるので、その場合の内部抵抗R(+)は電圧/電流であるから真値より小さくなる。また、この場合、逆に、マイナス側の電流は小さくなり、推定した内部抵抗R(-)は大きくなることになる。したがって、これらを平均化してオフセット量を打ち消す必要があるため、平均化処理を行うようにしている。電流iがマイナス側にオフセットしていた場合も同様である。
【0034】
内部抵抗平均化処理部18で得られた推定抵抗値Rは、電流算出部19に入力され、ここで、同じく電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEを推定抵抗値Rで除算することにより電流推定値Iを得る。この電流推定値Iは、電流センサ7のオフセット誤差を取り除いた電流センサ7の電流校正値(真値に近い推測値)として扱われ、電流センサ・オフセット誤差算出部20へ入力される。なお、電流算出部19は、本発明の電流算出手段に相当する。
【0035】
電流センサ・オフセット誤差算出部20には、電流センサ7からの電流測定値iと電流算出部19で得た電流推定値Iとが入力され、ここでそれらの差が算出されて電流センサ7のオフセット量IOFFSETとされる。このオフセット量IOFFSETは電流センサ異常判定部21に入力される。
【0036】
電流センサ異常判定部21では、入力されたオフセット量IOFFSETが通常、正常な電流センサ7で生じるオフセット量の範囲内に入っているか否かを判定する。算出された上記オフセット量IOFFSETがこの範囲に入っていれば、電流センサ7は正常に機能していると判定するが、入っていなければ電流センサ7に異常があると判定し、電流センサ異常フラグFAの信号を出力して、バッテリ・コントローラ2で対応可能とする。なお、電流センサ異常判定部21は、本発明の電流センサ異常判定手段に相当する。
【0037】
上記のように構成した電流センサ7の校正装置で実行される、電流の校正および電流センサ7の異常判定処理の流れを示すフローチャートを図6に示す。
同図において、図示しないイグニッション・キーがONにされると、ステップS1で電流センサ7と電圧センサ8、13等から電流値iや電圧値V、VFUSEなどがバッテリ・コントローラ2に読み込まれる。次いで、ステップS2で示すように、車両の走行が開始されると、ステップS3へと進む。
【0038】
ステップS3では、状態推定部17で、電流センサ7から読み込んだ電流iが閾値を超えたか否か、すなわち、プラス側の電流が第1閾値i1より大きいか否かおよびマイナス側の電流が第2閾値i2より小さいか否かが判定される。この判定結果がYESであればステップS4へ進み、NOであればステップS3へ戻る。
【0039】
ステップS4では上記閾値を超えた電流の符号がプラスであるか否かを判定する。判定結果がYESであればステップS5へ進み、判定結果がNOであればステップS6へ進む。
【0040】
ステップS5では、等価パラメータ推定部17Bにて、第1閾値i1を超えたプラス側の電流測定値i(+)と、電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEと、を用いて等価回路モデル17Aのパラメータ推定を逐次行い、プラス側の抵抗値R(+)を推定する。次いで、ステップS7へ進む。
【0041】
同様に、ステップS6においても、等価パラメータ推定部17Bにて、第2閾値i2を超えたマイナス側の電流測定値i(-)と、電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEと、を用いて等価回路モデル17Aのパラメータ推定を逐次行い、マイナス側の抵抗値R(-)を推定する。次いで、ステップS7へ進む。
【0042】
ステップS7では、内部抵抗平均化処理部18で、上記のようにして推定したプラス側の抵抗値R(+)とマイナス側の抵抗値R(-)とからこれらの平均化処理を行い、今回のヒューズ10の内部抵抗Rを算出する。次いで、ステップS8に進む。
【0043】
ステップS8では、前回の走行時に算出した内部抵抗値と今回の走行時に算出した内部抵抗値との平均化処理を行って、この値をヒューズ10の内部抵抗値Rとする。そいて、ステップS9に進む。
【0044】
ステップS9では、電流算出部19で、ステップS8で算出した内部抵抗値Rと電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEとを用いて、電流=電圧/抵抗の関係から、電流推定値Iを算出する。この値は電流校正値とされ、電流センサ7のオフセット誤差が小さくなるようにした、バッテリ1の充放電電流の真値に近いものとなる。次いで、ステップS10へ進む。
【0045】
ステップS10では、電流センサ・オフセット誤差算出部20で、電流センサ7で測定された電流測定値iから電流算出部19で得た電流推定値Iを減算することで、電流センサ7のオフセット量IOFFSETを算出する。そして、電流センサ異常判定部21にて、電流センサ・オフセット誤差算出部20で算出したオフセット量IOFFSETが所定範囲(あらかじめ実験で正常な電流センサが取りうるオフセット量の範囲)内にあるか否かを判定する。この範囲以内にあれば、電流センサ7は正常であると判定し、この範囲外であれば電流センサ7は異常であるとして、電流センサ異常フラッグFAを立て、このフラグ信号を出力する。次いで、ステップS11へ進む。
【0046】
ステップS11では、バッテリ1の校正装置が、車速センサから得た車速信号から車両が停止しているか否かを検出する。判定結果がYESであればステップS12へ進み、判定結果がNOであれば、ステップS3へ戻る。
【0047】
ステップS12では、バッテリ・コントローラ2のメモリに、推定した内部抵抗Rを記録して処理を終える。この記憶された内部抵抗Rは、次回の車両発進の際に用いられる。
【0048】
上記のようにして、実施例1の電流センサ7の校正装置にあっては、電流センサ7のオフセット誤差を抑制した電流推定値Iを得ることができ、またこのオフセット量から電流センサ7の正常・異常を判定できる。
【0049】
図5(c)に、電流センサ7の電流測定値が同図(a)で示すように時間的に変動した場合の充電率真値SOCTRUEと、電流センサ7のオフセット誤差補正なしの場合の充電率SOCNOOFと、本実施例の校正装置でオフセット量を低減した場合の充電率SOCCOMPとを比較したシミュレーション結果を示す。なお、同図中、時刻t1以降オフセット補正を行っている。同図から分かるように、オフセット補正無しの従来技術で得た充電率SOCNOOFに比べ、本実施例でオフセット量を校正して得た充電率SOCCOMPの方が、充電率真値SOCTRUEにより近く、推定精度が高くなっていることが分かる。
【0050】
以上のように、実施例1の電流センサの校正装置にあっては、以下の効果を得ることができる。
(1)実施例1では、バッテリ1と電気モータ6との間との間に直列配置されたヒューズ10を用いて、このヒューズの内部抵抗等価回路モデル17Aを設け、状態量としての内部抵抗値Rを推定し、この値でヒューズ10の両端電圧VFUSEを割ることにより電流推定値Iを求めるようにしたので、電流センサ7が有するオフセット誤差を低減することができ、電流センサ7で測定した充放電電流iを校正することができる。
【0051】
(2)また、内部抵抗等価回路モデル17Aの対象は、電気モータ7を駆動するのにもともと必要で存在していたヒューズ10を用いるので、別途追加する部材は不要となる。また、ヒューズ10は内部抵抗のみでモデル化されるので、モデリングおよび計算が簡単で済む。
【0052】
(3)等価回路パラメータ推定部17Bでは、電流センサ7で測定した充放電電流iのうち、この絶対値が閾値(プラス側の第1閾値i1とマイナス側の第2閾値i2)を超える電流が検出された場合でのみ、内部抵抗等価回路モデル17Aで内部抵抗値Rを推定するようにしたので、ヒューズ10のように内部抵抗が小さく比較的大きな電流が流れる場合でも、内部抵抗値Rをより正確に推定できる。
【0053】
(4)また、上記内部抵抗値Rの推定にあっては、プラス側の第1閾値i1より大きい充放電電流を用いて推定したプラス側の内部抵抗値R(+)と、マイナス側の第2閾値i2を用いて推定したマイナス側の内部抵抗値R(-)と、を得、これらを内部抵抗平均化処理部18で平均化処理して内部抵抗値Rを推定するようにしたので、電流センサ7にオフセット誤差がある場合でも、より正確に内部抵抗値Rを推定できる。
【0054】
(5)また、電流センサ異常判定部21で、電流算出部19で算出された電流推定値Iと電流センサ7で測定された充放電電流値iとの差を算出し、この差が所定範囲外にあるとき電流センサ7が異常であると判定するようにしたので、電流センサ7の異常を安価かつ簡単に判定することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の実施例2について説明する。この実施例2の説明等にあたっては、上記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けて、その説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0056】
この実施例2は、実施例1の図2に示した状態推定部17の等価回路パラメータ推定部17Bを図4のものから図7のものに変更した点が実施例1と異なる。すなわち、実施例1の等価回路パラメータ推定部17Bでは、k番目の入力である電流値i(k)、k番目の出力である電圧値v(k)を用いてパラメータを推定するようにしているのに対し、実施例2の等価回路パラメータ推定部17Bでは、入力、出力をk−1番目の前回値をも併せて用いた逐次推定により、パラメータRを推定するようにしたものである。
【0057】
図7において、ヒューズ10には入力として電流センサ7で測定した電流値i(k)が入力され、このヒューズ10の出力として電圧センサ8で測定した両端電圧値V(k)から、電圧センサ8で測定した前回(k−1番目)の電圧値v(k-1)を、減算器27で引き算して参照信号(v(k)−v(k-1))として減算器28に入力する。
【0058】
一方、減算器25には、電流センサ7で、今回測定された電流値i(k)と前回測定された電流値i(k-1)とが入力され、前者から後者が減算されてヒューズの内部抵抗等価回路モデル17Aに入力される。
【0059】
この内部抵抗等価回路モデル17Aの出力である、今回と前回の電圧差推定値差V(k)^−V(k-1)^が、減算器28に入力され、この電圧差推定値を先ほどの参照信号から減算して得た誤差分を適応機構26に入力し、ここで上記誤差分にフィードバック・ゲインを掛けて得た値に応じて等価回路モデル17Aを修正していくことで、このパラメータRを求める。
他は、図6のフローチャートを含め、実施例1と同じである。
【0060】
実施例2の電流の校正装置にあっては、実施例1の効果(1)、(2)、(3)、(5)に加え、以下の効果を有する。
(6)実施例2では、今回測定された電流値i(k)と前回測定された電流値i(k-1)をヒューズ10の内部抵抗等価回路モデル17Aに対する入力として、また今回と前回の電圧差推定値差V(k)^−V(k-1)^を等価回路モデル17Aからの出力として用いるようにしたので、内部抵抗値Rの推定精度を高くすることが可能となる。
【実施例3】
【0061】
次に本発明の実施例3について説明する。この実施例3の説明等にあたっては、上記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けて、その説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0062】
実施例3の電流センサの校正装置にあっては、実施例1の図2においてヒューズ10の等価回路パラメータ推定部17Bでのパラメータ推定方法が異なる点、また内部抵抗平均化処理部18がない点を除けば、実施例1および実施例2と同様に構成してある。
【0063】
実施例3の等価回路パラメータ推定部17Bでは、実施例1および実施例2のように電流iの符号によって内部抵抗値R(+)、R(-)の推定演算を分岐処理してこれらの平均化処理を行うといった演算方法を取らない。
すなわち、実施例3では、図8のフローチャートに示す処理を行う。同図において、ステップS31〜S33は図6のステップS1〜S3と同じであるが、続く図6のステップS4〜S7がなくなって、これらの代わりにステップS34が実行される。
【0064】
ステップS34では、等価回路パラメータ推定部17Bで、ステップS3において電流値iが閾値を超えたものを用いて、そのときの電圧センサ13で測定したヒューズ電圧値とで逐次推定を行い、ヒューズ10の内部抵抗値Rを推定する。次いで、ステップS35へ進む。ステップS35〜S39は、実施例1、2の図6のステップS8〜S12と同じである。
【0065】
上記のように実施例3の電流の校正装置にあっては、実施例1の効果(1)、(2)、(3)、(5)に加え、以下の効果を有する。
(7)実施例3では、等価回路パラメータ推定部17Bでは、電流センサ7で測定した充放電電流iを閾値で分けてプラス側、マイナス側の内部抵抗値R(+)とR(-)を計算し、続いてこれらの平均化処理を行わないので、内部抵抗値Rの推定精度は実施例1、2に比べ若干低下するもの、簡単な計算で電流センサ7のオフセット誤差を小さくすることができる。
【0066】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0067】
たとえば、上記各実施例では、ヒューズ10を対象としてこの内部抵抗等価回路モデル17Aを設けその両端電圧VFUSEを測定する電圧センサ13を設けたが、たとえばヒューズ10をリレー9のバッテリ1側に配置し、図1のヒューズ10の位置にヒューズ10に代えて、前述したリレー9のON時におけるインバータ5への突入電流を抑えるインバータ突入電流抑制用抵抗を設けたものもあり、この場合、このもともとあるインバータ突入電流抑制用抵抗の両端電圧を電圧センサで測定するようにしてもよい。また、等価回路モデルの対象は、ヒューズ10に代えて、図1のリレー9、16、ブレーカ4のいずれにしてもよく、この場合、その対象の両端電圧を測定する電圧センサ(12、14〜16のうちのいずれか)を用い、かつその対象となる等価回路モデルを作成し利用する。なお、リレー9、16、ブレーカ4を用いる場合、ヒューズ10の場合と同様、内部抵抗Rの等価モデルを用いることができ、モデルおよび計算とも簡単になる。
【0068】
また、本発明の電流センサの校正装置は、電気モータ6以外の負荷に用いる電気回路に用いるようにしてもよく、また電気自動車などの車両以外の電気回路に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 バッテリ
2 バッテリ・コントローラ
3 充電器
4 ブレーカ
5 インバータ
6 電気モータ(負荷)
7 電流センサ
8 バッテリの電圧センサ
9,11 リレー
10 ヒューズ
12〜16 電圧センサ
17 状態推定部
17A ヒューズの内部抵抗等価回路モデル
17B 等価回路パラメータ推定部
18 内部抵抗平均化処理部
19 電流算出部
20 電流センサ・オフセット誤差算出部
21 電流センサ異常判定部
23、25 適応機構
24、26、27、28 減算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリなどの充放電電流を検出する電流センサの校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、電気自動車やハイブリッド電気自動車などでは、これらの車両を駆動するのに用いられる電気モータへ電力を供給(放電)したり、制動時のエネルギを発電機として機能させる電気モータから、あるいは地上に設置した電源から充電して電気エネルギを蓄積したりするため、リチャージャブル・バッテリ(二次電池)が用いられる。
【0003】
この場合、長期にわたってバッテリを最適な状態に保ち、また電気モータを最適に制御するためには、バッテリの充放電電流を電流センサで常に精度よくモニタする必要がある。
この電流センサとしては、電気自動車等のように充放電される電流の変化が大きい場合には、ホール効果を利用した電流センサがよく用いられる。
このような電流センサでは、一般的に、バッテリの電流が流れていない(すなわち、電流=0アンペア)にもかかわらず、電流の検出値が一定電流分オフセットしてしまい、その分誤差が生じることが多々ある。
【0004】
そこで、従来から上記電流センサのオフセット誤差を低減して、電流検出値の精度を上げる試みがなされている。
そのうちの一つは、バッテリの充電が行われていない状態でイグニッション・キーがOFFにされた直後に、車載の電子制御ユニット相互間でLAN(Local Area Network)上における多重通信が行われていない状態のとき検出した電流検出値と、バッテリと電子制御ユニットを含む負荷間の電源供給ライン上を流れる電流がゼロであるときの電流センサの出力に関する、予め定めた標準特性における電流センサの出力と、の差分を、オフセット誤差の調整分として決定し記憶して次回のイグニッション・キーON時に利用するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の装置として、バッテリと直列接続した電流検出抵抗(いわゆるシャント抵抗)と、この抵抗の両端電圧を増幅するアンプと、このアンプの出力電圧でバッテリに流れる電流を検出する主電流センサの測定値を補正する演算回路と、を備えた補正回路を有し、アンプの出力電圧が設定電圧となるような状態において、補正回路がアンプの出力電圧から電流検出抵抗に流れる電流を演算し、この演算値と主電流センサの検出電流値とを比較して主電流センサの測定値を補正するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−325235号公報
【特許文献2】特許第3691364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電流センサの校正装置には以下に説明するような問題がある。
まず、前者の電流センサの校正装置にあっては、イグニッション・キーOFF時における特定条件のときのみしか電流センサの誤差を補正できないので、車両走行中や充電中にもその時々で変化する電流センサのオフセット誤差の補正には十分対応できず、検出精度の低下を避けることができないといった問題がある。
【0008】
また、後者の電流センサの校正装置にあっては、電流検出抵抗を新たに別途追加する必要がある上、抵抗は使用時間の経過にともなって温度上昇が生じるので、これに起因した電流検出抵抗の内部抵抗の変化を考慮した補正を行わなければならず、その校正が複雑になるといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、シャント抵抗等を別途追加することなく、走行中や充電中にあってもその都度変化する電流センサのオフセット誤差がより少なくなるように、電流センサで測定した充放電電流を校正することができる電流センサの校正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明による電流センサの校正装置は、
バッテリの充放電電流値を測定する電流センサと、
バッテリと負荷との間との間に直列配置された電気要素の両端電圧値を測定する電圧センサと、
電流センサで測定した充放電電流値と電圧センサで測定した両端電圧が入力されて、電気要素の内部抵抗の等価回路モデルに基づき電気要素の内部抵抗値を推定する状態推定手段と、
状態推定手段で推定した内部抵抗値と電圧センサで検出した両端電圧値とから電流センサの電流校正値を算出する電流算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電流センサの校正装置にあっては、電気要素の内部抵抗の等価回路モデルを用いて電流センサで測定した充放電電流値と電圧センサで測定した両端電圧から内部抵抗値を推定し、この値で、電気要素の両端電圧の測定値を割って電流校正値を得るようにしたので、もともと必要であった電気要素を用いることでシャント抵抗等を別途追加することなく、また、走行中や充電中にあっても、その都度変化する電流センサのオフセット誤差がより少なくなるように電流センサで測定した充放電電流を校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の電流センサの校正装置を有するバッテリ・コントローラと、バッテリや電気モータ等の周辺装置と、からなる電気自動車等の車両用電気回路を示す図である。
【図2】実施例1の電流センサの校正装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2電流センサの校正装置で用いるヒューズの内部抵抗等価回路モデルを示す図である。
【図4】図2の電流センサの校正装置を校正する等価回路パラメータ推定部の構成を示すブロック図である。
【図5】バッテリの充放電電流、ヒューズの両端電圧、実施例1の電流センサの校正装置で電流校正を行って得たバッテリの充電率の関係について、シミュレーションを行った結果を、時系列的に示す図であり、(a)はバッテリの充放電電流の変動を示す図、(b)はヒューズの両端電圧の変動を示す図、(c)は充電率の変動を示す図である。
【図6】実施例1の電流センサの校正装置で実行される電流補正処理および電流センサ故障診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施例の電流センサの校正装置で用いる等価回路パラメータ推定部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施例の電流センサの校正装置で実行される電流補正および電流センサ故障診断処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】オフセット補正なしの従来技術の電流センサを用いた場合の電流値および充電率の特性を示す図であり、(a)はオフセット誤差を含んだ電流値の変化を示す図、(b)はその電流を用いて得た充電率の変化を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を、添付図面に基づき詳細に説明する。
図1に、実施例1の電流センサの校正装置およびこの装置が接続される機器との構成関係を示す。
本実施例では、電流センサの校正装置は、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車両に用いられる。
【0015】
同図に示すように、バッテリ1は、バッテリ・コントローラ2により常時モニタ、制御される。
バッテリ1には、これを充電するための充電器3、ブレーカ4、インバータ5および電気モータ6が接続されており、車両走行時には、インバータ5で電気モータ6へ供給する駆動電力を制御し、車両制動時には電気モータ6を発電機として機能させ制動エネルギの一部を電気エネルギとして回収しバッテリ2へ充電している。この制動時の回生は必ずしも必要ではない。
【0016】
バッテリ1の正極端子と充電器3の正極端子との間には、バッテリ1の充放電電流iを測定する電流センサ7の他に、リレー9およびヒューズ10が直列接続されるとともに、バッテリ1の両端子間には、バッテリ1の端子電圧vを測定する電圧センサ8が接続される。また、バッテリ1の陰極端子と充電器3の負極端子との間には、リレー11が接続される。
さらに、充電器3と電気モータ6との間にはブレーカ4とインバータ5が接続される。
【0017】
リレー9にはこの両端の電圧を測定する電圧センサ12が、またヒューズ10にはこの両端の電圧を測定する電圧センサ13が、またリレー11にはこの両端の電圧を測定する電圧センサ16が必要に応じて設けられ、これらで測定した電圧値はバッテリ・コントローラ2へ入力される。
同様に、ブレーカ4には、この正極側の両端端子間における電圧を測定する電圧センサ14が、また負極側の両端端子間における電圧を測定する電圧センサ15が必要に応じて設けられ、これらでそれぞれ測定した電圧値はバッテリ・コントローラ2へ入力される。
【0018】
上記電圧センサ12〜16の設定は以下のように行う。すなわち、電圧センサ12〜16のうち、必須のセンサとしてはバッテリ・コントローラ2の状態推定部17(図2参照)で利用する等価回路モデル17A(図2参照)の内部抵抗の両端間の電圧を測定する電圧センサのみでよい。
したがって、本実施例では、ヒューズ10のみを等価回路モデルの対象とするので、上記電圧センサ12〜16のうち電圧センサ13のみあれば良く、他の電圧センサは必ずしも必要ではない。ここでは、他の要素を対象とする場合も可能なので、便宜上すべてについて電圧センサを設定した場合を描いてある。
なお、リレー9,11、ヒューズ10およびブレーカ4は、本発明の内部抵抗を有する電気要素に相当する。
【0019】
本実施例に関係する電気回路は上記のように構成されるが、以下にこの主な構成要素につき、より詳細に説明する。
まず、バッテリ1は、リチャージャブル・バッテリ(二次電池)で構成し、本実施例にあっては、セルを多数組み合わせたリチウム・イオン・バッテリ・パックを用いるが、これに限られることはなく、ニッケル・水素バッテリ等、他の種類のバッテリを用いてもよいことは言うまでもない。
【0020】
電流センサ7は、バッテリ1の充放電電流を測定するものであって、本実施例では一種の電流磁気効果であるホール効果を利用した電流センサを用いることにより、電気モータ6へ供給される電流が大きく変動してもこれを測定できるようにする。
一方、電圧センサ8は、バッテリ1バッテリ1の端子間の電圧を検出する。
【0021】
リレー9,11とヒューズ10は、ジャンクション・ボックスを構成する。リレー9,11は、小さな電気でバッテリ1からの大きな電力の供給、遮断の切り替えを行うために用いられる。
【0022】
リレーをONにする際にインバータ5の図示しない平滑コンデンサへの突入電流を抑えるため、一時的に抵抗を介して電流を供給し平滑コンデンサの電圧が十分上昇してから、短絡するといったシーケンス制御を行う。この抵抗としては、本実施例では、異常時に回路を遮断するヒューズ10が用いられ、このヒューズ10は、本実施例では、その内部抵抗値がR(オーム)である図3の等価回路モデルとして表わされる。
【0023】
充電器3は、車両外の充電設備(図示せず)に接続されて、たとえば定電流・定電圧充電方式などにより、電力を供給してバッテリ1を充電するものである。
ブレーカ4は、バッテリ1から許容量以上の電流が流れたりした場合に、回路を電気的に遮断し安全を確保するものである。
【0024】
インバータ5は、電力変換器であり、バッテリ1からの直流電力を、パルス幅変調(PWM)制御などにより交流の電気モータ6を駆動する三相交流電力に変換して電気モータ6に供給するものである。インバータ5は、図示しないインバータ・コントローラにより、このコントローラに入力されるアクセル・ペダル踏み込み量や車両速度などの情報に応じて、その出力電力を決定する。
【0025】
電気モータ6は、本実施例では、希土類永久磁石を用いた永久磁石同期モータが使用され、インバータ5からの交流電力で駆動される。なお、電気モータは、本発明の負荷に相当する。
【0026】
バッテリ・コントローラ2は、車載のマイクロ・コンピュータで構成され、電流センサ7、電圧センサ8,12〜16などからの各種の情報信号が入力されて、バッテリ1のセルごと、あるいは複数のセルの温度、電圧、電流を常時モニタしてバッテリ・マネージメントを行っている。
【0027】
バッテリ・コントローラ2は、本実施例の電流センサの校正装置を有しており、その構成とその信号の流れを図2のブロック線図に示す。
同図に示すように、電流センサの校正装置は、状態推定部17と、電流算出部19と、電流センサ・オフセット誤差算出部20と、電流センサ異常判定部21と、を有する。
【0028】
状態推定部17は、図3に示すような、ヒューズ10の内部抵抗等価回路モデル17Aと、等価回路パラメータ推定部17Bと、を備えている。なお、状態推定部17は、本発明の状態推定手段に相当する。
【0029】
等価回路パラメータ推定部17Bは、内部抵抗平均化処理部18や図4の適応機構23を有する。等価回路パラメータ推定部17B、内部抵抗平均化処理部18は、それぞれ本発明の等価回路パラメータ推定手段、内部抵抗平均化処理手段に相当する。
【0030】
等価回路パラメータ推定部17Bでは、図4に示すように、実際のヒューズ10とこのヒューズ10の内部抵抗等価回路モデル17Aとに、電流センサ7から電流値i(k)が入力され、ヒューズ10の電圧センサ13で測定した電圧測定値V(k)と、等価回路モデル17Aで推定された、出力としての電圧推定値V(k)^とが減算器24で比較され、これらの誤差ε(k)が算出される。なお、上記記号中、上方の添え字^は、推定を表わすが、図面上と異なり明細書中では便宜上、右にずらして記載する。また、kは、サンプリングの順番番号(時刻ステップ)を、したがって、i(k)はk番目の電流値を、V(k)はk番目の電圧測定値を、V(k)^はk番目の電圧推定値を、それぞれ表わす。
【0031】
そして、適応機構23では、上記誤差ε(k)があれば、これにフィードバック・ゲインL(k)をかけて等価回路モデル17Aへフィードバックし、誤差ε(k)が最小になるように等価回路モデル17Aを修正する。このようにして等価回路モデル17Aを用いることで、状態量としてのパラメータRを求めることができる。
ここでは、カルマン・フィルタや逐次最小二乗法などを用いて逐次計算を行うが、ヒューズ10の内部抵抗Rは小さいので、推定精度を上げるべく比較的大きな電流で内部抵抗Rの推定を行うようにする。
【0032】
そこで、図5(a)に示すように、プラス側の第1閾値i1より大きいプラス側電流とマイナス側の第2閾値i2より小さいマイナス側電流が測定されたときだけに、これら閾値を超えたプラス側、マイナス側電流を検出したときに測定されたヒューズ10の両端電圧におけるプラス側電圧とマイナス側電圧(これらを図5(b)に示す)を用いて、電圧値を電流値で割ることにより、パラメータとしてプラス側抵抗値R(+)とマイナス側抵抗値R(-)の両方をそれぞれ推定する。
ここで、プラス側の第1閾値i1と第2閾値i2とは、絶対値が同じで符号が異なる値に設定してある。なお、図5(a)では電流真値を点線で、オフセット誤差がある電流を実線で示してある。同図では、オフセット誤差が真値より高めの状態が例示されているが、オフセット誤差が真値より低めになることはもちろんあり得る。
【0033】
内部抵抗平均化処理部18は、等価回路パラメータ推定部17Bで推定したパラメータ、すなわちプラス側抵抗値R(+)とマイナス側抵抗値R(-)が入力され、これらの平均化処理を行うことで内部抵抗Rを得る。
ここで、平均化処理を行うのは、電流iがプラス側にオフセットしていた場合にはプラス側の電流値はその真値より大きめになるので、その場合の内部抵抗R(+)は電圧/電流であるから真値より小さくなる。また、この場合、逆に、マイナス側の電流は小さくなり、推定した内部抵抗R(-)は大きくなることになる。したがって、これらを平均化してオフセット量を打ち消す必要があるため、平均化処理を行うようにしている。電流iがマイナス側にオフセットしていた場合も同様である。
【0034】
内部抵抗平均化処理部18で得られた推定抵抗値Rは、電流算出部19に入力され、ここで、同じく電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEを推定抵抗値Rで除算することにより電流推定値Iを得る。この電流推定値Iは、電流センサ7のオフセット誤差を取り除いた電流センサ7の電流校正値(真値に近い推測値)として扱われ、電流センサ・オフセット誤差算出部20へ入力される。なお、電流算出部19は、本発明の電流算出手段に相当する。
【0035】
電流センサ・オフセット誤差算出部20には、電流センサ7からの電流測定値iと電流算出部19で得た電流推定値Iとが入力され、ここでそれらの差が算出されて電流センサ7のオフセット量IOFFSETとされる。このオフセット量IOFFSETは電流センサ異常判定部21に入力される。
【0036】
電流センサ異常判定部21では、入力されたオフセット量IOFFSETが通常、正常な電流センサ7で生じるオフセット量の範囲内に入っているか否かを判定する。算出された上記オフセット量IOFFSETがこの範囲に入っていれば、電流センサ7は正常に機能していると判定するが、入っていなければ電流センサ7に異常があると判定し、電流センサ異常フラグFAの信号を出力して、バッテリ・コントローラ2で対応可能とする。なお、電流センサ異常判定部21は、本発明の電流センサ異常判定手段に相当する。
【0037】
上記のように構成した電流センサ7の校正装置で実行される、電流の校正および電流センサ7の異常判定処理の流れを示すフローチャートを図6に示す。
同図において、図示しないイグニッション・キーがONにされると、ステップS1で電流センサ7と電圧センサ8、13等から電流値iや電圧値V、VFUSEなどがバッテリ・コントローラ2に読み込まれる。次いで、ステップS2で示すように、車両の走行が開始されると、ステップS3へと進む。
【0038】
ステップS3では、状態推定部17で、電流センサ7から読み込んだ電流iが閾値を超えたか否か、すなわち、プラス側の電流が第1閾値i1より大きいか否かおよびマイナス側の電流が第2閾値i2より小さいか否かが判定される。この判定結果がYESであればステップS4へ進み、NOであればステップS3へ戻る。
【0039】
ステップS4では上記閾値を超えた電流の符号がプラスであるか否かを判定する。判定結果がYESであればステップS5へ進み、判定結果がNOであればステップS6へ進む。
【0040】
ステップS5では、等価パラメータ推定部17Bにて、第1閾値i1を超えたプラス側の電流測定値i(+)と、電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEと、を用いて等価回路モデル17Aのパラメータ推定を逐次行い、プラス側の抵抗値R(+)を推定する。次いで、ステップS7へ進む。
【0041】
同様に、ステップS6においても、等価パラメータ推定部17Bにて、第2閾値i2を超えたマイナス側の電流測定値i(-)と、電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEと、を用いて等価回路モデル17Aのパラメータ推定を逐次行い、マイナス側の抵抗値R(-)を推定する。次いで、ステップS7へ進む。
【0042】
ステップS7では、内部抵抗平均化処理部18で、上記のようにして推定したプラス側の抵抗値R(+)とマイナス側の抵抗値R(-)とからこれらの平均化処理を行い、今回のヒューズ10の内部抵抗Rを算出する。次いで、ステップS8に進む。
【0043】
ステップS8では、前回の走行時に算出した内部抵抗値と今回の走行時に算出した内部抵抗値との平均化処理を行って、この値をヒューズ10の内部抵抗値Rとする。そいて、ステップS9に進む。
【0044】
ステップS9では、電流算出部19で、ステップS8で算出した内部抵抗値Rと電圧センサ13で測定したヒューズ電圧測定値VFUSEとを用いて、電流=電圧/抵抗の関係から、電流推定値Iを算出する。この値は電流校正値とされ、電流センサ7のオフセット誤差が小さくなるようにした、バッテリ1の充放電電流の真値に近いものとなる。次いで、ステップS10へ進む。
【0045】
ステップS10では、電流センサ・オフセット誤差算出部20で、電流センサ7で測定された電流測定値iから電流算出部19で得た電流推定値Iを減算することで、電流センサ7のオフセット量IOFFSETを算出する。そして、電流センサ異常判定部21にて、電流センサ・オフセット誤差算出部20で算出したオフセット量IOFFSETが所定範囲(あらかじめ実験で正常な電流センサが取りうるオフセット量の範囲)内にあるか否かを判定する。この範囲以内にあれば、電流センサ7は正常であると判定し、この範囲外であれば電流センサ7は異常であるとして、電流センサ異常フラッグFAを立て、このフラグ信号を出力する。次いで、ステップS11へ進む。
【0046】
ステップS11では、バッテリ1の校正装置が、車速センサから得た車速信号から車両が停止しているか否かを検出する。判定結果がYESであればステップS12へ進み、判定結果がNOであれば、ステップS3へ戻る。
【0047】
ステップS12では、バッテリ・コントローラ2のメモリに、推定した内部抵抗Rを記録して処理を終える。この記憶された内部抵抗Rは、次回の車両発進の際に用いられる。
【0048】
上記のようにして、実施例1の電流センサ7の校正装置にあっては、電流センサ7のオフセット誤差を抑制した電流推定値Iを得ることができ、またこのオフセット量から電流センサ7の正常・異常を判定できる。
【0049】
図5(c)に、電流センサ7の電流測定値が同図(a)で示すように時間的に変動した場合の充電率真値SOCTRUEと、電流センサ7のオフセット誤差補正なしの場合の充電率SOCNOOFと、本実施例の校正装置でオフセット量を低減した場合の充電率SOCCOMPとを比較したシミュレーション結果を示す。なお、同図中、時刻t1以降オフセット補正を行っている。同図から分かるように、オフセット補正無しの従来技術で得た充電率SOCNOOFに比べ、本実施例でオフセット量を校正して得た充電率SOCCOMPの方が、充電率真値SOCTRUEにより近く、推定精度が高くなっていることが分かる。
【0050】
以上のように、実施例1の電流センサの校正装置にあっては、以下の効果を得ることができる。
(1)実施例1では、バッテリ1と電気モータ6との間との間に直列配置されたヒューズ10を用いて、このヒューズの内部抵抗等価回路モデル17Aを設け、状態量としての内部抵抗値Rを推定し、この値でヒューズ10の両端電圧VFUSEを割ることにより電流推定値Iを求めるようにしたので、電流センサ7が有するオフセット誤差を低減することができ、電流センサ7で測定した充放電電流iを校正することができる。
【0051】
(2)また、内部抵抗等価回路モデル17Aの対象は、電気モータ7を駆動するのにもともと必要で存在していたヒューズ10を用いるので、別途追加する部材は不要となる。また、ヒューズ10は内部抵抗のみでモデル化されるので、モデリングおよび計算が簡単で済む。
【0052】
(3)等価回路パラメータ推定部17Bでは、電流センサ7で測定した充放電電流iのうち、この絶対値が閾値(プラス側の第1閾値i1とマイナス側の第2閾値i2)を超える電流が検出された場合でのみ、内部抵抗等価回路モデル17Aで内部抵抗値Rを推定するようにしたので、ヒューズ10のように内部抵抗が小さく比較的大きな電流が流れる場合でも、内部抵抗値Rをより正確に推定できる。
【0053】
(4)また、上記内部抵抗値Rの推定にあっては、プラス側の第1閾値i1より大きい充放電電流を用いて推定したプラス側の内部抵抗値R(+)と、マイナス側の第2閾値i2を用いて推定したマイナス側の内部抵抗値R(-)と、を得、これらを内部抵抗平均化処理部18で平均化処理して内部抵抗値Rを推定するようにしたので、電流センサ7にオフセット誤差がある場合でも、より正確に内部抵抗値Rを推定できる。
【0054】
(5)また、電流センサ異常判定部21で、電流算出部19で算出された電流推定値Iと電流センサ7で測定された充放電電流値iとの差を算出し、この差が所定範囲外にあるとき電流センサ7が異常であると判定するようにしたので、電流センサ7の異常を安価かつ簡単に判定することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の実施例2について説明する。この実施例2の説明等にあたっては、上記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けて、その説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0056】
この実施例2は、実施例1の図2に示した状態推定部17の等価回路パラメータ推定部17Bを図4のものから図7のものに変更した点が実施例1と異なる。すなわち、実施例1の等価回路パラメータ推定部17Bでは、k番目の入力である電流値i(k)、k番目の出力である電圧値v(k)を用いてパラメータを推定するようにしているのに対し、実施例2の等価回路パラメータ推定部17Bでは、入力、出力をk−1番目の前回値をも併せて用いた逐次推定により、パラメータRを推定するようにしたものである。
【0057】
図7において、ヒューズ10には入力として電流センサ7で測定した電流値i(k)が入力され、このヒューズ10の出力として電圧センサ8で測定した両端電圧値V(k)から、電圧センサ8で測定した前回(k−1番目)の電圧値v(k-1)を、減算器27で引き算して参照信号(v(k)−v(k-1))として減算器28に入力する。
【0058】
一方、減算器25には、電流センサ7で、今回測定された電流値i(k)と前回測定された電流値i(k-1)とが入力され、前者から後者が減算されてヒューズの内部抵抗等価回路モデル17Aに入力される。
【0059】
この内部抵抗等価回路モデル17Aの出力である、今回と前回の電圧差推定値差V(k)^−V(k-1)^が、減算器28に入力され、この電圧差推定値を先ほどの参照信号から減算して得た誤差分を適応機構26に入力し、ここで上記誤差分にフィードバック・ゲインを掛けて得た値に応じて等価回路モデル17Aを修正していくことで、このパラメータRを求める。
他は、図6のフローチャートを含め、実施例1と同じである。
【0060】
実施例2の電流の校正装置にあっては、実施例1の効果(1)、(2)、(3)、(5)に加え、以下の効果を有する。
(6)実施例2では、今回測定された電流値i(k)と前回測定された電流値i(k-1)をヒューズ10の内部抵抗等価回路モデル17Aに対する入力として、また今回と前回の電圧差推定値差V(k)^−V(k-1)^を等価回路モデル17Aからの出力として用いるようにしたので、内部抵抗値Rの推定精度を高くすることが可能となる。
【実施例3】
【0061】
次に本発明の実施例3について説明する。この実施例3の説明等にあたっては、上記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けて、その説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0062】
実施例3の電流センサの校正装置にあっては、実施例1の図2においてヒューズ10の等価回路パラメータ推定部17Bでのパラメータ推定方法が異なる点、また内部抵抗平均化処理部18がない点を除けば、実施例1および実施例2と同様に構成してある。
【0063】
実施例3の等価回路パラメータ推定部17Bでは、実施例1および実施例2のように電流iの符号によって内部抵抗値R(+)、R(-)の推定演算を分岐処理してこれらの平均化処理を行うといった演算方法を取らない。
すなわち、実施例3では、図8のフローチャートに示す処理を行う。同図において、ステップS31〜S33は図6のステップS1〜S3と同じであるが、続く図6のステップS4〜S7がなくなって、これらの代わりにステップS34が実行される。
【0064】
ステップS34では、等価回路パラメータ推定部17Bで、ステップS3において電流値iが閾値を超えたものを用いて、そのときの電圧センサ13で測定したヒューズ電圧値とで逐次推定を行い、ヒューズ10の内部抵抗値Rを推定する。次いで、ステップS35へ進む。ステップS35〜S39は、実施例1、2の図6のステップS8〜S12と同じである。
【0065】
上記のように実施例3の電流の校正装置にあっては、実施例1の効果(1)、(2)、(3)、(5)に加え、以下の効果を有する。
(7)実施例3では、等価回路パラメータ推定部17Bでは、電流センサ7で測定した充放電電流iを閾値で分けてプラス側、マイナス側の内部抵抗値R(+)とR(-)を計算し、続いてこれらの平均化処理を行わないので、内部抵抗値Rの推定精度は実施例1、2に比べ若干低下するもの、簡単な計算で電流センサ7のオフセット誤差を小さくすることができる。
【0066】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0067】
たとえば、上記各実施例では、ヒューズ10を対象としてこの内部抵抗等価回路モデル17Aを設けその両端電圧VFUSEを測定する電圧センサ13を設けたが、たとえばヒューズ10をリレー9のバッテリ1側に配置し、図1のヒューズ10の位置にヒューズ10に代えて、前述したリレー9のON時におけるインバータ5への突入電流を抑えるインバータ突入電流抑制用抵抗を設けたものもあり、この場合、このもともとあるインバータ突入電流抑制用抵抗の両端電圧を電圧センサで測定するようにしてもよい。また、等価回路モデルの対象は、ヒューズ10に代えて、図1のリレー9、16、ブレーカ4のいずれにしてもよく、この場合、その対象の両端電圧を測定する電圧センサ(12、14〜16のうちのいずれか)を用い、かつその対象となる等価回路モデルを作成し利用する。なお、リレー9、16、ブレーカ4を用いる場合、ヒューズ10の場合と同様、内部抵抗Rの等価モデルを用いることができ、モデルおよび計算とも簡単になる。
【0068】
また、本発明の電流センサの校正装置は、電気モータ6以外の負荷に用いる電気回路に用いるようにしてもよく、また電気自動車などの車両以外の電気回路に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 バッテリ
2 バッテリ・コントローラ
3 充電器
4 ブレーカ
5 インバータ
6 電気モータ(負荷)
7 電流センサ
8 バッテリの電圧センサ
9,11 リレー
10 ヒューズ
12〜16 電圧センサ
17 状態推定部
17A ヒューズの内部抵抗等価回路モデル
17B 等価回路パラメータ推定部
18 内部抵抗平均化処理部
19 電流算出部
20 電流センサ・オフセット誤差算出部
21 電流センサ異常判定部
23、25 適応機構
24、26、27、28 減算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充放電電流値を測定する電流センサと、
バッテリと負荷との間との間に直列配置された電気要素の両端電圧値を測定する電圧センサと、
前記電流センサで測定した充放電電流値と前記電圧センサで測定した両端電圧が入力されて、前記電気要素の内部抵抗の等価回路モデルに基づき前記電気要素の内部抵抗値を推定する状態推定手段と、
該状態推定手段で推定した内部抵抗値と前記電圧センサで検出した両端電圧値とから電流推定値を算出して前記電流センサの電流校正値とする電流算出手段と、
を備えたことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサの校正装置において、
前記電気要素は、ヒューズ、リレー、ブレーカ、インバータ突入電流抑制用抵抗のうちの1つである、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電流センサの校正装置において、
前記状態推定手段は、前記電流センサで検出した充放電電流値のうちこの絶対値が所定の閾値より大きい充放電電流値のみを用いて前記内部抵抗値を推定する等価回路パラメータ推定手段を有する、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電流センサの校正装置において、
前記状態推定手段は、前記等価回路パラメータ推定手段にて、前記閾値としてプラス側の第1閾値とマイナス側の第2閾値を有し、前記第1閾値より大きいプラス側の充電電流値と前記第2閾値より小さいマイナス側の放電電流値とから、プラス側の内部抵抗値とマイナス側の内部抵抗値をそれぞれ推定するとともに、
該プラス側の内部抵抗値とマイナス側の内部抵抗値を平均化処理して前記内部抵抗値を推定する内部抵抗平均化処理手段をさらに備えている、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電流センサの校正装置において、
前記内部抵抗の等価回路モデルへの入力には前後時間にわたってそれぞれサンプリングされた前記充放電電流値が用いられ、前記電気要素の出力には前後時間にわたってそれぞれサンプリングされた前記両端電圧値が用いられる、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電流センサの校正装置において、
前記電流算出手段で算出された電流推定値と前記電流センサで測定された充放電電流値との差を算出し、この差が所定範囲外にあるとき前記電流センサが異常であると判定する電流センサ異常判定手段を設けた、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項1】
バッテリの充放電電流値を測定する電流センサと、
バッテリと負荷との間との間に直列配置された電気要素の両端電圧値を測定する電圧センサと、
前記電流センサで測定した充放電電流値と前記電圧センサで測定した両端電圧が入力されて、前記電気要素の内部抵抗の等価回路モデルに基づき前記電気要素の内部抵抗値を推定する状態推定手段と、
該状態推定手段で推定した内部抵抗値と前記電圧センサで検出した両端電圧値とから電流推定値を算出して前記電流センサの電流校正値とする電流算出手段と、
を備えたことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサの校正装置において、
前記電気要素は、ヒューズ、リレー、ブレーカ、インバータ突入電流抑制用抵抗のうちの1つである、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電流センサの校正装置において、
前記状態推定手段は、前記電流センサで検出した充放電電流値のうちこの絶対値が所定の閾値より大きい充放電電流値のみを用いて前記内部抵抗値を推定する等価回路パラメータ推定手段を有する、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電流センサの校正装置において、
前記状態推定手段は、前記等価回路パラメータ推定手段にて、前記閾値としてプラス側の第1閾値とマイナス側の第2閾値を有し、前記第1閾値より大きいプラス側の充電電流値と前記第2閾値より小さいマイナス側の放電電流値とから、プラス側の内部抵抗値とマイナス側の内部抵抗値をそれぞれ推定するとともに、
該プラス側の内部抵抗値とマイナス側の内部抵抗値を平均化処理して前記内部抵抗値を推定する内部抵抗平均化処理手段をさらに備えている、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電流センサの校正装置において、
前記内部抵抗の等価回路モデルへの入力には前後時間にわたってそれぞれサンプリングされた前記充放電電流値が用いられ、前記電気要素の出力には前後時間にわたってそれぞれサンプリングされた前記両端電圧値が用いられる、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電流センサの校正装置において、
前記電流算出手段で算出された電流推定値と前記電流センサで測定された充放電電流値との差を算出し、この差が所定範囲外にあるとき前記電流センサが異常であると判定する電流センサ異常判定手段を設けた、
ことを特徴とする電流センサの校正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−63246(P2012−63246A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207650(P2010−207650)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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