説明

電流センサ

【課題】電気機器を対象とする安全規格を考慮しつつ沿面距離の確保と、小型化や小占有面積化を図るように容易な組立を可能にし、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止すること。
【解決手段】本体ケース部材10及び蓋ケース部材40との磁性体コア50の挿入方向に対して直角方向に設けられたサイドストッパーで、本体ケース部材10の壁面に一体形成されたサイドストッパー10eを設けるとともに、蓋ケース部材40の壁面に一体形成されたサイドストッパー40fを設ける。サイドストッパー10e,40fの形状は、挿入された磁性体コア50との接触により折れるような断面三角形の柱状部材又は断面台形の柱状部材などの凸状部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサに関し、より詳細には、電気機器を対象とする安全規格を考慮しつつ、沿面距離の確保と、小型化や小占有面積化を図るように容易な組立を可能にし、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電流センサは、産業用の汎用インバータやモータ制御機器、またはそのような機器内に配線された被測定電流導体に流れる電流を検出するために、略コ字状のコアと、このコアのギャップ部に配置された磁気センサとを備え、これらのコアや磁気センサなどの全体を絶縁樹脂で被覆して一体化を図り、磁気センサによりコアに生じる磁束変化を電流として検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、これらのコアや磁気センサなどをケース部材や蓋部材によって挟持固定するためにコアや磁気センサなどを樹脂モールドして一体化したものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
近年、電流センサの小型化や薄型化を図るために、電気機器を対象とする安全規格を考慮しつつ、空間距離や沿面距離に着目した製品開発が求められている。電気部品要素を絶縁物で隔離することなく電気的絶縁を達成するためには、空間距離及び沿面距離(Clearance and Creepage Distance)の双方を確保する必要がある。空間距離(clearance)とは、2つの導電性部分間の空間を通る最短距離であり、沿面距離(creepage distance)とは、2つの導電性部分間の絶縁物の表面に沿った最短距離を意味している。絶縁を達成するために必要となるこれらの距離は、必要な絶縁の強度、動作電圧や想定される過電圧の程度、汚染度、絶縁物の耐トラッキング性などを含むいくつもの要因の影響を受けるため、電流センサの開発にも十分な配慮が必要になる。
【0005】
例えば、特許文献3に記載のものは、三層電線を用いずとも1次回路−2次回路間の沿面距離を確保して組立性を良好にした電流センサに関するもので、ボビン内に形成された筒状のコア脚挿通部内にコアの一方の脚を挿通し、コア脚挿通部の外側のコイル装着部の外周上にコイルのコイル本体を設け、また、コアの連結部側はボビンの側面の外側に位置させ、ボビンによってコイルとコアとの沿面距離を確保できるようにしたものである。
【0006】
また、例えば、特許文献4に記載のものは、電流検出機構及びその組立方法に関するもので、沿面距離の確保に着目したものではないが、脱着可能な2つの被測定電流導体の接合部に配置され、該接合部の周囲を取り囲むように少なくとも1つの空隙部を有する磁性体コアと、空隙部に配置された磁気センサを備えて、電流検出機構の小型化や小占有面積化を図るように組立可能にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−257836号公報
【特許文献2】特開2009−222729号公報
【特許文献3】特開2005−90982号公報
【特許文献4】特開2007−178241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1及び2に記載のものは、電流センサの構成要素全体を被覆したり、これらの構成要素を収納してパッケージ化を図り、そのパッケージ内を樹脂モールドしたりするため、一体化するための作業が煩雑であったりして、簡便化や小型化が図れないという問題があった。
【0009】
また、上述した特許文献3のものは、沿面距離に着目して小型化を図っているものの、電流センサの部品点数の簡素化や組立の簡便化などについては更なる改善の余地が残されていた。
【0010】
さらに、上述した特許文献4のものは、最小の部品点数で小型かつ容易な組立を実現した点でその意味は大きいものの、少ない構成要素により電流検出機構の組立をユーザが現場で容易にできることを可能にしたもので、電流センサとしての製品を、電気機器を対象とする安全規格を考慮しつつ沿面距離に着目した製品開発に資するものではなかった。したがって、電流センサ単体としての組立の簡便化や小型化を図るにはさらなる改善が求められていた。また、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止することが求められていた。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電気機器を対象とする安全規格を考慮しつつ沿面距離の確保を行い、高電圧環境でも動作可能な、かつ小型化や小占有面積化を図るように容易な組立を可能にし、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止する電流センサ提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上面に嵌め込み可能な沿面距離を有する第1嵌合部を備え、該第1嵌合部の長手方向で前記上面と下面との間に第1空隙部が形成されている本体ケース部材と、該本体ケース部材の前記上面側に搭載される磁気センサと、被測定電流導体に接続され、前記磁気センサの対面位置で直交方向に配置される1次導体と、前記磁気センサと前記1次導体とを覆うように、下面に前記本体ケース部材の前記第1嵌合部に嵌め込み可能な沿面距離を有する第2嵌合部を備え、該第2嵌合部の長手方向で前記下面と上面との間に第2空隙部が形成されている蓋ケース部材と、前記1次導体を挟み込むように前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記第1及び第2空隙部に挿入固定される断面コ字状の磁性体コアと、前記本体ケース部材及び前記蓋ケース部材の壁面に、前記蓋ケース部材及び前記本体ケース部材との前記磁性体コアの挿入方向に対して直角方向に設けられたサイドストッパーとを備え、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記第1及び第2嵌合部で前記沿面距離を確保するとともに、前記磁性体コアの前記断面コ字状にともなうギャップ部に配置された前記磁気センサにより前記磁性体コアに生じる磁束変化を電流として検出することを特徴とする。(実施例3,4)
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記サイドストッパーが、前記磁性体コアとの接触により折れるような凸状部材であることを特徴とする。(実施例3)
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記凸状部材が、断面三角形の柱状部材又は断面台形の柱状部材であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記サイドストッパーが、テーパー構造を有することを特徴とする。(実施例4)
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記テーパー構造のテーパー面の挿入角度が、5〜10度であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記1次導体が、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材とにより密接に挟持されるように、前記本体ケース部材が、複数の前記第1嵌合部を有し、前記1次導体が、前記本体ケース部材の前記第1嵌合部間に組み込まれていることを特徴とする。(実施例1)
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記磁気センサが、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材とにより密接に挟持され、前記1次導体が、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部に接合配置されていることを特徴とする。(実施例2)
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記第1の嵌合部及び前記第2の嵌合部のいずれかが凸又は凹を有する矩形又は波状の形状であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記磁気センサの取付位置に取付溝を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明において、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記コアの後端位置に係止部を設けたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記係止部が、突起又は突起と切欠部との組み合わせであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の発明において、前記本体ケース部材の前記磁気センサの搭載部分に、該磁気センサのリード線の区分け部を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の発明において、前記蓋ケース部材に嵌合爪を設け、前記本体ケース部材に前記嵌合爪を受け入れる嵌合止めを設けたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13のいずれかに記載の発明において、前記磁性体コアの前記断面コ字状の形状が、断面U字状又は先端が狭められた断面C字状の形状を含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項15に記載の発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載の発明において、前記磁気センサが、ホールICであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、1次導体を樹脂ケースで完全に覆ったもので磁性体コアや磁気センサとの沿面距離の確保を行い、高電圧環境でも動作可能な、かつ小型化や小占有面積化を図るように容易な組立を可能にした電流センサを実現することができる。
【0023】
また、磁気センサを樹脂ケースで完全に覆い、1次導体や磁性体コアから磁気センサの端子までの沿面距離を確保したので、実効電流の大きい大電流測定の場合でも動作可能な、かつ小型化や小占有面積化を図るように容易な組立を可能にした電流センサ実現することができる。
【0024】
また、本体ケース部材及び蓋ケース部材との磁性体コアの挿入方向に対して直角方向に設けられたサイドストッパーとして、本体ケース部材の壁面に一体形成されたサイドストッパーを設けるとともに、蓋ケース部材の壁面に一体形成されたサイドストッパーを設けることで、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電流センサの実施形態1を説明するための斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る電流センサの実施形態2を説明するための斜視図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との磁性体コアの挿入方向の係合手段である実施例1を説明するための断面図である。
【図6】本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との磁性体コアの挿入方向の係合手段である実施例2を説明するための断面図である。
【図7】本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との磁性体コアの挿入方向に対して直角方向のサイドストッパーである実施例3を説明するための上面図である。
【図8】(a)乃至(c)は、図7に示したサイドストッパーによる係合機能を説明するための図である。
【図9】図7のC−C線断面図である。
【図10】本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との磁性体コアの挿入方向に対して直角方向のサイドストッパーである実施例4を説明するための上面図である。
【図11】(a)乃至(c)は、図10に示したサイドストッパーによる係合機能を説明するための図である。
【図12】図10のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の要旨の一つは、電気機器を対象とする安全規格を考慮しつつ沿面距離の確保することであるが、沿面距離が空間距離よりも大きいため、この発明では沿面距離のみ考慮すれば良いことになる。そこで、高電圧になる部分は被測定電流が流れる1次導体であり、これに対して、安全規格により保護すべき部位は、制御系の信号及び電源端子で、磁気センサの端子部がこれに相当する。
【0027】
そのための工夫として、従来の磁気センサ全体をモールドする方式に比べ、樹脂ケースを活用した簡便な嵌合方式を見出したことにより、電流センサや磁性体コアに加わる応力を最小限に抑え、組立後のオフセット変動や温度ドリフトの少ない高精度電流センサを実現することができた。
【0028】
また、樹脂ケースで各部品を固定する場合、嵌合部に沿って最短沿面距離を考慮する必要があるが、本発明では小型化を実現するため、実施形態1及び2で説明するように、嵌合部を矩形又は波状に形成し、沿面距離を長くすることで高電圧環境でも動作可能な小型電流センサを実現した。
【0029】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明に係る電流センサの実施形態1を説明するための斜視図で、図2は、図1のA−A線断面図である。本発明の実施形態1は、1次導体を樹脂ケースで完全に覆ったもので磁性体コアや磁気センサとの沿面距離の確保を行った例であり、磁性体コアのギャップが狭く磁気センサと磁性体コアとの距離確保が困難な場合に有効である。
【0030】
図中符号10は本体ケース部材(樹脂ケース)、10aは第1嵌合部、10bは磁気センサの取付溝、10cはコアの後端位置に設けられた係止部、10dは第1空隙部、20は磁気センサ、20aは磁気センサのリード線、30は被測定電流導体と接続される一次導体、40は蓋ケース部材(樹脂ケース)、40aは第2嵌合部、40bは磁気センサの位置決め溝、40cはコアの後端位置に設けられた係止部、40dは第2空隙部、50は磁性体コアを示している。
【0031】
本発明の実施形態1の電流センサは、本体ケース部材10と磁気センサ20と一次導体30と蓋ケース部材40と磁性体コア50の5つの構成要素により簡便な組立可能に構成されている。この組立は、これらの構成要素を従来のような樹脂モールドや接着剤の使用を伴うことなく、嵌合又は接合のみによって実現されている。
【0032】
本体ケース部材10は、上面に嵌め込み可能な沿面距離を有する第1嵌合部10aを備え、この第1嵌合部10aの長手方向で上面と下面との間に第1空隙部10dが形成され、第1嵌合部10aは凹凸部を有している。
【0033】
また、蓋ケース部材40は、下面に嵌め込み可能な沿面距離を有する第2嵌合部40aを備え、この第2嵌合部40aの長手方向で下面と上面との間に第2空隙部40dが形成され、第2嵌合部40aは凹凸部を有している。
【0034】
これにより、本体ケース部材10の凹凸部と蓋ケース部材40の凹凸部とが互いに嵌め込まれるようになっている。なお、この凹凸部は、矩形又は波状の形状であることが望ましい。
【0035】
また、本体ケース部材10の磁気センサ20の搭載位置には取付溝10bが設けられ、同様に蓋ケース部材40の磁気センサ20の取付位置には取付溝40bが設けられ、これらの取付溝10b,40bにより磁気センサ20が、本体ケース部材10と蓋ケース部材40によって固定されるように構成されている。この磁気センサ20はホールICであることが望ましい。
【0036】
また、磁気センサ20は、磁気検出素子と、この磁気検出素子からの検出信号を処理する信号処理回路とを備え、この信号処理回路には、磁気検出素子の検出特性のバラツキを低減するための不揮発性メモリ又は抵抗トリミングの調整可能な機能を有している。
【0037】
1次導体30は、被測定電流導体に接続され、磁気センサ20の対面位置で直交方向に配置されるように、本体ケース部材10の2つの第1嵌合部10a間の凹部に嵌め込まれている。つまり、本体ケース部材10は、複数の第1嵌合部10a,10aを有し、1次導体30は、本体ケース部材10の第1嵌合部10a,10a間に組み込まれ、蓋ケース部材40によって押圧されるように構成されている。
【0038】
断面コ字状の磁性体コア50は、1次導体30及び磁気センサ20を挟み込むように本体ケース部材10の第1空隙部10dと蓋ケース部材40の第2空隙部40dとに挿入固定されるように構成されている。また、この磁性体コア50の断面コ字状の形状は、断面U字状又は先端が狭められた断面C字状の形状を含んでいる。
【0039】
また、磁性体コア50の後端部、つまり、断面コ字状にともなうギャップ部の反対側の上下端部を止めるように、本体ケース部材10と蓋ケース部材40の磁性体コア50の後端位置には突起からなる係止部10c,40cが設けられている。
【0040】
このようにして、本体ケース部材10と蓋ケース部材40の第1及び第2嵌合部10a,40aで沿面距離を確保するとともに、磁性体コア50のギャップ部に配置された磁気センサ20により磁性体コア50に生じる磁束変化を電流として検出することが可能である。
【0041】
[実施形態2]
図3は、本発明に係る電流センサの実施形態2を説明するための斜視図で、図4は、図3のB−B線断面図である。本発明の実施形態2は、磁気センサを樹脂ケースで完全に覆ったもので、1次導体や磁性体コアから磁気センサの端子までの沿面距離を確保した例であり、実効電流の大きい大電流測定の場合、1次導体を厚くしなければならず、そのため磁性体コアと1次導体間の距離確保が難しい場合に有効である。
【0042】
上述した実施形態1との構成上の相違点は、実施形態2においては、磁気センサの全体が、本体ケース部材と蓋ケース部材とによって密接に挟持されている点の他に、本体ケース部材と蓋ケース部材との嵌合が1箇所のみであり、一次導体と磁性体コアとが空隙部を介して絶縁されている点である。
【0043】
図中符号110は本体ケース部材(樹脂ケース)、110aは第1嵌合部、110bは磁気センサの取付溝、110cは磁性体コアの後端位置に設けられた係止部、110dは第1空隙部、120は磁気センサ、120aは磁気センサのリード線、130は被測定電流導体と接続される一次導体、140は蓋ケース部材(樹脂ケース)、140aは第2嵌合部、140bは磁気センサの位置決め溝、140cは磁性体コアの後端位置に設けられた係止部、140dは第2空隙部、150は磁性体コアを示している。
【0044】
本発明の実施形態2の電流センサは、本体ケース部材110と磁気センサ120と一次導体130と蓋ケース部材140と磁性体コア150の5つの構成要素により簡便な組立可能に構成されている。この組立は、これらの構成要素を従来のような樹脂モールドや接着剤の使用を伴うことなく、嵌合又は接合のみによって実現されている。
【0045】
本体ケース部材110は、上面に嵌め込み可能な沿面距離を有する第1嵌合部110aを備え、この第1嵌合部110aの長手方向で上面と下面との間に第1空隙部110dが形成され、第1嵌合部110aは凹凸部を有している。
【0046】
また、蓋ケース部材140は、下面に嵌め込み可能な沿面距離を有する第2嵌合部140aを備え、この第2嵌合部140aの長手方向で下面と上面との間に第2空隙部140dが形成され、第2嵌合部140aは凹凸部を有している。
【0047】
これにより、本体ケース部材110の凹凸部と蓋ケース部材140の凹凸部とが互いに嵌め込まれるようになっている。なお、この凹凸部は、矩形又は波状の形状でもよいことは、上述した実施形態1と同様である。
【0048】
上述した実施形態1では、第1嵌合部10aと第2嵌合部40aとが複数組あったが、つまり、磁気センサ20と1次導体30との間に1組の嵌合部が設けられ、1次導体30と磁性体コアとの間にもう一組の嵌合部が設けられていたが、この実施形態2では磁気センサ120と1次導体130との間に1組の嵌合部が設けられているだけで、一次導体130と磁性体コア150との絶縁は空隙でなされている。
【0049】
また、本体ケース部材110の磁気センサ120の搭載位置には取付溝110bが設けられ、同様に蓋ケース部材140の磁気センサ120の取付位置には取付溝140bが設けられ、これらの取付溝110b,140bにより磁気センサ120が、本体ケース部材110と蓋ケース部材140によって密接に固定されるように構成されている。この磁気センサ120はホールICであることが望ましい。なお、磁気センサ120の構成については、上述した実施形態1の場合と同様である。
【0050】
1次導体130は、被測定電流導体に接続され、磁気センサ120の対面位置で直交方向に配置されるように、第1嵌合部110aと第2嵌合部140aに接合配置されている。
【0051】
断面コ字状の磁性体コア150は、1次導体130及び磁気センサ120を挟み込むように本体ケース部材110の第1空隙部110dと蓋ケース部材140の第2空隙部140dとに挿入固定されるように構成されている。この磁性体コアの形状については、上述した実施形態1の場合と同様である。また、磁性体コア150の後端部、つまり、断面コ字状にともなうギャップ部の反対側の上下端部を止めるように、本体ケース部材110と蓋ケース部材140の磁性体コア150の後端位置には突起の係止部110c,140cが設けられている。
【0052】
このようにして、本体ケース部材110と蓋ケース部材140の第1及び第2嵌合部110a,140aで沿面距離を確保するとともに、磁性体コア150のギャップ部に配置された磁気センサ120により磁性体コア150に生じる磁束変化を電流として検出することが可能である。
【実施例1】
【0053】
図5は、本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との係合手段である実施例1を説明するための断面図である。上述して本発明の実施形態1及び2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との係合手段は、この実施例1の係合手段を用いている。
【0054】
磁性体コア50の後端部、つまり、断面コ字状のギャップ部201の反対側の上下端部を止めるように、本体ケース部材10と蓋ケース部材40の磁性体コア50の後端位置には突起からなる係止部10c,40cが設けられている。
【0055】
このような構成により、本体ケース部材10と蓋ケース部材40の磁性体コア50の後端部に少なくとも1箇所に突起を設けることで、磁性体コア50のケース部材内への挿入後に接着することなく磁性体コアを固定することができる。また、この突起を前述の上下端部以外の左右方向に設けても良い。この係止部は、微細加工が容易でかつ高い強度を有するケイ素鋼などの金属コアの場合に適している。なお、図3に示した本発明の実施形態2においても同様である。
【実施例2】
【0056】
図6は、本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との係合手段である実施例2を説明するための断面図である。
【0057】
磁性体コア50の後端部に、断面コ字状のギャップ部201の反対側の上下端部を止めるように突起50aを設け、本体ケース部材10と蓋ケース部材40の磁性体コア50の後端位置には、磁性体コア50の突起50aを受け入れる切欠部40eが設けられている。
【0058】
このような構成により、磁性体コアに加わるストレスが最後の一押しのみであるため、磁性体コアへのダメージが少なく、挿入作業が容易になる。この係止部は、フェライト製の磁性体コアなどの強度的に脆く、外力によりコアにひびや欠けが発生し易い材料の場合に都合が良い。なお、図3に示した本発明の実施形態2においても同様である。
【0059】
このように、上述した係止部の実施例1及び2において、接着工程を省くことで熱効果処置が不要になり、その結果、磁気センサへの熱ストレスを低減することができ、信頼性の向上が図れるとともに製造工程の短縮が図れる。
【実施例3】
【0060】
図7は、本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との磁性体コアの挿入方向に対して直角方向のサイドストッパーである実施例3を説明するための上面図で、図8(a)乃至(c)は、図7に示したサイドストッパーによる係合機能を説明するための図で、図9は、図7のC−C線断面図である。具体的には、図1の改良型を示してあるが、同じ機能を示す構成要素には同一の符号を付してある。図中符号10e,40fはサイドストッパーを示している。
【0061】
本実施例3のサイドストッパーは、本体ケース部材(樹脂ケース)10及び蓋ケース部材(樹脂ケース)40との磁性体コア50の挿入方向に対して直角方向に設けられたサイドストッパーで、本体ケース部材10の壁面に一体形成されたサイドストッパー10eを設けるとともに、蓋ケース部材40の壁面に一体形成されたサイドストッパー40fを設けることで、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止するためのものである。
【0062】
サイドストッパー40fの形状は、図7の拡大部分に示されているように、断面三角形の柱状部材又は断面台形の柱状部材などで、挿入された磁性体コア50との接触により折れるような先端部aが凸状部材であればよい。なお、サイドストッパー10eの形状も同様である。
【0063】
図7及び図9においては、磁性体コア50の本体ケース部材10及び蓋ケース部材40への挿入方向に沿って、本体ケース部材10の壁面の左右に合計4個のサイドストッパー10eを設け、蓋ケース部材40の壁面の左右に合計4個のサイドストッパー40fを設けている。つまり、本体ケース部材10及び蓋ケース部材40の壁面に合計8個のサイドストッパー10e,40fが設けられていることになる。
【0064】
図8(a)乃至(c)に示すように、磁性体コア50を本体ケース部材10と蓋ケース部材40との間に挿入すると、本体ケース部材10及び蓋ケース部材40の壁面に設けられたサイドストッパー10e,40fに接触し、さらに力を加えて挿入すると、サイドストッパー10e,40fの先端部aが折れる。この先端部aが折れて露出した面により、磁性体コア50は、本体ケース部材10及び蓋ケース部材40のサイドストッパー10e,40fで支持されることになって磁性体コア50のガタツキがなくなる。
【0065】
つまり、サイドストッパー10e,40fを薄い壁構造にしているため、挿入する磁性体コア50の寸法に合わせて比較的弱い力でサイドストッパー10e,40fが折れ、ガタツキを吸収することができるという特徴を有する。磁性体コア50が厚みの薄いフェライトで構成されている場合に特に有効である。
【0066】
また、磁性体コア50の後端部には、図6と同様に、係合手段である突起50aが設けられている。つまり、断面コ字状のギャップ部の反対側の上下端部を止めるように突起50aを設け、本体ケース部材10と蓋ケース部材40の磁性体コア50の後端位置には、磁性体コア50の突起50aを受け入れる切欠部40eが設けられている。
【0067】
なお、その他の構成は、図1及び図2と同様である。また、図7乃至図9に示したサイドストッパー10e,40fは、図3及び図4に示した実施形態2にも適用できることは言うまでもない。
【実施例4】
【0068】
図10は、本発明の実施形態1又は2における磁性体コアと、蓋ケース部材及び本体ケース部材との磁性体コアの挿入方向に対して直角方向のサイドストッパーである実施例4を説明するための上面図で、図11(a)乃至(c)は、図10に示したサイドストッパーによる係合機能を説明するための図で、図12は、図10のD−D線断面図である。具体的には、図1の改良型を示してあるが、同じ機能を示す構成要素には同一の符号を付してある。図中符号10f,40gはサイドストッパーを示している。なお、その他の構成は、図7及び図9と同様である。
【0069】
本実施例4のサイドストッパーは、本体ケース部材(樹脂ケース)10及び蓋ケース部材(樹脂ケース)40との磁性体コア50の挿入方向に対して直角方向に設けられたサイドストッパーで、本体ケース部材10の壁面に一体形成されたサイドストッパー10fを設けるとともに、蓋ケース部材40の壁面に一体形成されたサイドストッパー40gを設けることで、寸法バラツキを有する磁性体コアのガタツキを防止するためのものである。
【0070】
図10及び図12においては、磁性体コア50の本体ケース部材10及び蓋ケース部材40への挿入方向に沿って、本体ケース部材10の壁面の左右に合計2個のサイドストッパー10fを設け、蓋ケース部材40の壁面の左右に合計2個のサイドストッパー40gを設けている。つまり、本体ケース部材10及び蓋ケース部材40の壁面に合計4個のサイドストッパー10f,40gが設けられていることになる。
【0071】
サイドストッパー40gの形状は、図10の拡大部分に示されているように、テーパー構造を有し、その挿入角度が5〜10度のものが最適で、挿入された磁性体コア50との接触によりテーパー面bが徐々に削りとられるような構成であればよい。なお、サイドストッパー10fの形状も同様である。
【0072】
磁性体コア50を本体ケース部材10と蓋ケース部材40との間に挿入すると、本体ケース部材10及び蓋ケース部材40の壁面に設けられたサイドストッパー10f,40gに接触し、さらに力を加えて挿入すると、サイドストッパー10e,40fのテーパー面bが徐々に削られながら挿入方向に進んでいく。この徐々に削られた露出面により、磁性体コア50は、本体ケース部材10及び蓋ケース部材40のサイドストッパー10f,40gで支持され、磁性体コア50の挿入時に偏りがあったとしても、その偏りがテーパー面で修正されて中央位置に収まって磁性体コア50のガタツキがなくなる。
【0073】
つまり、サイドストッパー10f,40gが、磁性体コア50の挿入方向に対して徐々にケース部材間の幅が狭まるテーパー構造になっているため、浅い挿入時は力をかけずに容易に挿入でき、深く挿入するに従い磁性体コア50の先端エッジでサイドストッパー10f,40gを削りながら広い面積で確実に把持が可能となる。また、磁性体コア50を挿入するに従い、この磁性体コア50は、サイドストッパー10f,40gのテーパー面bにより必然的に電流センサの左右中心に把持され、磁気センサの受感部が磁性体コア50の中心に位置することになるため、外来磁場ノイズに最も強い電流センサとなる。また、サイドストッパー10f,40gは折れずに徐々に削られるため、削られた樹脂カスは周囲に落ちずに、磁性体コア50先端に付着し、樹脂ケースの先端ポケットに収納されてゴミが発生しない。磁性体コア50が厚く割れ難い場合に特に有効である。また、磁性体コア50の挿入時の抵抗、サイドストッパー10f,40gの削れ具合から、テーパー面bの挿入角度は5〜10度が最適である。
【0074】
また、図10乃至及び図12に示したサイドストッパー10f,40gは、図3及び図4に示した実施形態2にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
10,110 本体ケース部材
10a,110a 第1嵌合部
10b,110b 磁気センサの取付溝
10c,110c コアの後端位置に設けられた係止部
10d,110d 第1空隙部
10e,10f,40f,40g サイドストッパー
11 上部右嵌合止め
12 上部左嵌合止め
13 下部左嵌合止め
14 下部右嵌合止め
15 位置決め用ピン
16 本体ケース側のカバー用溝
17 位置合わせピン
18 本体ケース側の位置決め溝
19 区分け溝
20,120 磁気センサ
20a,120a 磁気センサのリード線
30,130 被測定電流導体と接続される一次導体
31 嵌着溝
40,140 蓋ケース部材
40a,140a 第2嵌合部
40b,140b 磁気センサの位置決め溝
40c,140c コアの後端位置に設けられた係止部
40d,140d 第2空隙部
40e,140e 切欠部
41 上部右嵌合爪
42 上部左嵌合爪
43 下部左嵌合爪
44 下部右嵌合爪
46 蓋ケース側のカバー用溝
47 本体ケース側の位置合わせ溝
48 蓋ケース側の位置決め溝
50,150 コア
50a,150a 突起
201 ギャップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に嵌め込み可能な沿面距離を有する第1嵌合部を備え、該第1嵌合部の長手方向で前記上面と下面との間に第1空隙部が形成されている本体ケース部材と、
該本体ケース部材の前記上面側に搭載される磁気センサと、
被測定電流導体に接続され、前記磁気センサの対面位置で直交方向に配置される1次導体と、
前記磁気センサと前記1次導体とを覆うように、下面に前記本体ケース部材の前記第1嵌合部に嵌め込み可能な沿面距離を有する第2嵌合部を備え、該第2嵌合部の長手方向で前記下面と上面との間に第2空隙部が形成されている蓋ケース部材と、
前記1次導体を挟み込むように前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記第1及び第2空隙部に挿入固定される断面コ字状の磁性体コアと、
前記本体ケース部材及び前記蓋ケース部材の壁面に、前記蓋ケース部材及び前記本体ケース部材との前記磁性体コアの挿入方向に対して直角方向に設けられたサイドストッパーとを備え、
前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記第1及び第2嵌合部で前記沿面距離を確保するとともに、前記磁性体コアの前記断面コ字状にともなうギャップ部に配置された前記磁気センサにより前記磁性体コアに生じる磁束変化を電流として検出することを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記サイドストッパーが、前記磁性体コアとの接触により折れるような凸状部材であることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記凸状部材が、断面三角形の柱状部材又は断面台形の柱状部材であることを特徴とする請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記サイドストッパーが、テーパー構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記テーパー構造のテーパー面の挿入角度が、5〜10度であることを特徴とする請求項4に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記1次導体が、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材とにより密接に挟持されるように、前記本体ケース部材が、複数の前記第1嵌合部を有し、前記1次導体が、前記本体ケース部材の前記第1嵌合部間に組み込まれていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項7】
前記磁気センサが、前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材とにより密接に挟持され、前記1次導体が、前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部に接合配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項8】
前記第1の嵌合部及び前記第2の嵌合部のいずれかが凸又は凹を有する矩形又は波状の形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項9】
前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記磁気センサの取付位置に取付溝を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項10】
前記本体ケース部材と前記蓋ケース部材の前記磁性体コアの後端位置に係止部を設けたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項11】
前記係止部が、突起又は突起と切欠部との組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の電流センサ。
【請求項12】
前記本体ケース部材の前記磁気センサの搭載部分に、該磁気センサのリード線の区分け部を設けたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項13】
前記蓋ケース部材に嵌合爪を設け、前記本体ケース部材に前記嵌合爪を受け入れる嵌合止めを設けたことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項14】
前記磁性体コアの前記断面コ字状の形状が、断面U字状又は先端が狭められた断面C字状の形状を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項15】
前記磁気センサが、ホールICであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の電流センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate