説明

電流供給回路

【課題】電流供給回路において、インタフェース条件の規定値に対し、給電電圧に余裕を持たせて回路の歩留り向上を計ることを課題とする。
【解決手段】第1電源8に接続され、負荷10に電流を供給する給電回路9と、第1電源8より高電位の第2電源1に接続されると共に給電回路9の出力側端子Vout1に接続され、無負荷に近似した状態の時に、外部信号VSに基いて給電回路9の出力電位を引き上げて負荷10に与える給電電圧V4を上昇させる給電電圧調整回路2とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器等に使用される電流供給回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3はこの種の電流供給回路である通話電流供給回路の従来例を示す図で、電話交換機における加入者回路に適用したものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平5−72788号公報
【0003】
図3において、直流給電回路104及び114はシリーズレギュレータであり、加入者線路接続端子109及び115間の給電電圧VLは、式(1)にて求めることができる。
VL=VBB−VB−VA…(1)
ただし、VBBは直流電流100の電圧、VBは直流給電回路104の電圧、VAは直流給電回路114の電圧である。
【0004】
次に給電電圧及び電流の制御について説明すると、カレントミラー回路103と抵抗107にて電圧VBから変換された電流Iと、カレントミラー回路112と抵抗113にて電圧VAから変換された電流Iを加算回路106にて加算(絶対値和)し、その加算された出力電流Iをカレントミラー回路102及び111にて電流Iとして、駆動回路108の入力信号とし、駆動回路108は直流給電回路104及び114を制御して帰還ループをかけ、設定された給電電圧及び電流を負荷110に供給する。
【0005】
また、制御回路105がONすることにより、定電流源101からの電流を2Iとすると、駆動回路108の入力信号である電流Iは{I−(2I−2I)}/2となり、抵抗107,113の抵抗値をRとすると、電圧VLは、式(2)にて示される。
VL=VBB−2RI…(2)
従って、通話電流の小さい領域(I≦2I)では、電圧VLは一定となり、定電圧となる。
【0006】
しかしながら、シリーズレギュレータ方式による電流供給回路では、式(1)に示されるように、VL=VBB−VB−VAとなり、例えば、日本電信電話株式会社の技術資料「電話サービスのインタフェース」に記載されている給電電圧VL=−42V〜−53Vの規定値を、送受話器のオンフック時(負荷がオープン状態である無負荷に近似した状態の時)に順守するには、直流電源の電圧が、VBB=−43V〜−53Vなので、余裕がなく、非常にマージンの少い状態となるため、部品のバラツキ等により回路の歩留りが低下する問題があった。
なお、スイッチングレギュレータを用いることも考えられるが、スイッチングレギュレータは高価なため、コストアップとなる欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インタフェース条件の規定値に対し、供給電圧に余裕を持たせて回路の歩留り向上を計ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、本発明は、第1電源に接続され、負荷に電流を供給する給電回路と、前記第1電源より高電位の第2電源に接続されると共に前記給電回路の出力側に接続され、無負荷に近似した状態の時に、外部信号に基いて前記給電回路の出力電位を引き上げて前記負荷に与える給電電圧を上昇させる給電電圧調整回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給電回路の出力側に給電電圧調整回路を接続して、無負荷に近似した状態の時の給電電圧を調整するので、給電電圧を上昇させることができ、インタフェース条件の規定値に対し給電電圧に余裕を持たせ、回路の歩留りを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1電源に接続され、負荷に電流を供給する給電回路の出力側に、第1電源より高電位の第2電源に接続され、無負荷に近似した状態の時に、外部信号に基いて給電回路の出力電位を引き上げて負荷に与える給電電圧を上昇させる給電電圧調整回路を接続することにより電流供給回路を実現した。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の実施例1を示す図である。
図1において、電流供給回路は、第1電源8に接続された例えばシリーズレギュレータの給電回路9と、第2電源1に接続された給電電圧調整回路2とで構成される。
第1電源8は負荷10に電流を供給するための電源でその電圧はVBBとして表示されている。第2電源1は負荷10に与える給電電圧を調整するためのもので、第1電源8より電位を高く設定している。
【0012】
給電電圧調整回路2は、カレントミラー回路3と、電圧検出回路4と、電圧変換回路5と、電圧供給回路6と、電流制限回路7とで構成され、給電回路8の出力プラス側の端子Vout1に電圧供給回路6を通して接続される。
カレントミラー回路3は電圧から電流に変換する回路であり、電圧検出回路4は外部よりアナログ電圧信号VSを検出する回路であり、電圧変換回路5は電流から電圧に変換する回路であり、電圧供給回路6は給電回路9の出力側端子Vout1の電位を引き上げるように作用する回路であり、電流制御回路7は電圧供給回路6から供給される電流を制御する回路である。
【0013】
図1において、第2電源1のプラス側はカレントミラー回路3の第1端子S1と電圧供給回路6の第1端子S1と電流制限回路7の第1端子S1に接続され、カレントミラー回路3の第2端子S2は電圧変換回路5の第1端子S1に接続され、カレントミラー回路3の第3端子S3は電圧検出回路4の第1端子S1に接続される。
電圧検出回路4の第2端子S2は外部アナログ電圧信号VSに接続され、電圧検出回路4の第3端子S3は第2電源1のマイナス側と電圧変換回路5の第3端子S3と電流制限回路7の第3端子S3に接続される。
【0014】
電圧変換回路5の第2端子S2は電圧供給回路6の第2端子S2に接続され、電圧供給回路6の第3端子S3は電流制御回路7の第2端子S2に接続され、電圧供給回路6の第4端子S4は給電回路9の出力プラス側端子Vout1と負荷10の端子S1側に接続される。
第1電源8のプラス側は給電回路9の入力プラス側端子Vin1に接続され、第1電源8のマイナス側は給電回路9の入力マイナス側端子Vin2に接続され、給電回路9の出力マイナス側端子Vout2は負荷10の端子S2に接続される。
【0015】
次に動作について説明する。
第1電源8より電圧V3が給電回路9の入力側端子Vin1とVin2間に供給されると、給電回路9は出力側端子Vout1とVout2間に電圧V4を発生させ、負荷10の端子S1とS2に給電を行う。
なお、この場合、無負荷に近似した状態、即ち負荷10はオープン状態に近似した状態になっているものとする。加入者回路ではオンフック時が該当し、例えば直流抵抗分が1MΩの場合に相当する。
【0016】
一方、給電電圧調整回路2には、第1電源8より高い電位である第2電源1から電圧V1が供給される。
負荷10への給電電圧を調整する場合には、外部よりアナログ電圧信号VSを電圧検出回路4に入力する。電圧検出回路4は外部アナログ電圧信号VSを入力として受け取って電圧を検出し、その電圧に対応する電流I1を出力として、カレントミラー回路3から引き込む。
【0017】
ここで、カレントミラー回路3のミラー比を1:1とすれば、この時、電圧変換回路5は電流I1と等しい電流I2をカレントミラー回路3から入力として引き込む。また電圧変換回路5は電流I2を第3端子S3の電位、即ち第2電源1のマイナス側の電位を基準にした電圧情報V2に変換して出力し、この情報を電圧供給回路6に供給する。
電圧供給回路6は端子S2−S4間で電圧ドロップがないとすると、電圧変換回路5から入力された電圧情報V2の電位分だけ給電回路9の出力側端子Vout1の電位を引き上げ、負荷10の端子S1−S2間電圧V4の電圧を上昇させる。なお、電圧情報V2の最大値は第2電源1の電圧V1と同じである。
【0018】
この場合、給電電圧調整回路2が接続される前の負荷10の端子S1−S2間の電圧をV4’とし、また給電電圧調整回路2が接続される前の端子Vout1の電位と第2電源1のマイナス側の電位との電位差をV5’とすると、電圧引き上げ可能範囲は0〜V5’+V1となり、電圧V4の電圧変動範囲は次式にて示される。
電圧V4の電圧変動範囲=V4’〜(V4’+V5’+V1)…(3)
【0019】
電圧情報V2は、電圧検出回路4の第2端子S2に入力される外部アナログ電圧信号VSによって決定されるので、調整可能であり、0〜V1の範囲で可変である。
なお、電圧V5’は固定であるから、電圧V4はV4’から(V4’+V5’)の範囲ではV4’又は(V4’+V5’)と変動する。
具体的数字を適用すると、例えば、第1電源8のマイナス側電位を−48V、プラス側をGNDとし、給電回路9の出力側端子Vout1の電位を−0.7V、Vout2の電位を−47.3Vとし、第2電源1のマイナス側電位をGND、プラス側を+5Vとすると、V4’=46.3V、V5’=0.7V、V1=5Vとなり、式(3)は以下に示される。
V4の電圧変動範囲=46.6V〜(46.6+0.7+5)V
=46.6V〜52.3V
【0020】
なお、図1で示される電圧V5は、給電電圧調整回路2が接続されただけで、電圧供給回路6から電流が供給される前の第2電源1のマイナス側と供給回路9の端子Vout1との電位差である。
また、電流I3は無負荷に近似した状態の時に電圧供給回路6から供給される電流である。
【0021】
上記したように給電電圧V4が上昇し、負荷10が接続されると、電圧供給回路6から負荷10に電流I5が供給される。
しかし、電流制御回路7は、予め電圧供給回路6からの電流I3を最大値として制限し、I3<I5となった時点で、電圧供給回路6からの電流供給を停止するように設定されているので、電流I5が最大値のI3を越えると、電圧供給回路6は切断され、負荷10には給電回路9から給電電圧V4(=4’)及び給電電流I4を供給し始める。
【0022】
以上のように、実施例1によれば、給電回路に給電電圧調整回路を接続することにより、無負荷に近似した状態の時に、外部信号に基いて給電電圧を調整可能に上昇させることができるので、インタフェース条件の規定値を余裕をもって満足することができ、回路の歩留りを向上させることができる。
なお、外部信号として、外部アナログ電圧信号を例に説明したが、ディジタル信号でも、また電流信号であっても構わない。
【0023】
図2は本発明の実施例2を示す図である。
実施例2は、図1の電圧変換回路5の第3端子S3の接続先が異なるだけで、他は実施例1と同じである。従って、図2では図1と同一又は対応する構成部分には同一符号を付すことにより説明を省略する。
なお、給電回路9については、シリーズレギュレータ方式の直流給電回路11及び13と、それを制御する制御回路12とで構成された例を示している。
【0024】
直流給電回路11の第1端子S1は第1電源8のプラス側に接続され、直流給電回路11の第2端子S2は制御回路12の第1端子S1に接続され、直流給電回路11の第3端子S3は負荷10の端子S1及び電圧供給回路6の第4端子S4に接続される。
また直流給電回路13の第1端子S1は第1電源8のマイナス側に接続され、直流給電回路13の第2端子S2は制御回路12の第2端子S2に接続され、直流給電回路13の第3端子S3は負荷10の端子S2に接続され、制御回路12の第3端子S3は電圧変換回路5の第3端子S3に接続される。
そして、制御回路12の第3端子S3は、給電電圧調整回路2が接続される前の給電回路9の端子Vout1の電位と同電位になるように設定される。
【0025】
給電回路9の動作は実施例1と同様であるが、給電回路9の内部動作を説明する。直流給電回路11及び13はシリーズレギュレータ方式の給電回路であり、制御回路12の第1端子S1及び第2端子S2から制御され、所望の給電電圧V4及び給電電流14を負荷10に供給する。
【0026】
次に給電電圧調整回路2の動作について説明すると、実施例1とは、電圧変換回路5から出力される電圧情報V2の基準である電圧変換回路5の第3端子S3の電位が異なっている。
実施例1の場合、電圧情報V2の基準である電圧変換回路5の第3端子S3は、給電回路9の端子Vout1より電位が高い第2電源1のマイナス側に接続されている。
しかし、実施例2では、電圧制御回路5の第3端子S3は、給電回路9の端子Vout1と同電位の制御回路12の第3端子S3に接続されている。
【0027】
給電電圧調整回路2が給電回路9に接続される前の負荷10の端子S1−S2間の電圧をV4’とし、給電電圧調整回路2が接続される前の給電回路9の端子Vout1の電位と第2電源1のマイナス側の電位との差をV5’とする。
給電電圧調整回路2が接続される前の端子Vout1と同電位となるように設定された制御回路12の第3端子S3と、電圧制御回路5の第3端子S3とを接続することで、電圧V4の電圧変動範囲は以下の式で示される。ただし、実施例1と同様に電圧供給回路6の端子S2−S4間の電圧降下はないものとする。
電圧V4の電圧変動範囲=V4’〜(V4’+V1)…(4)
【0028】
実施例1の場合は、電圧情報V2の基準となる電圧変換回路5の第3端子S3は第2電源1のマイナス側に接続されているので、電圧V4の電圧変動範囲に第2電源1のマイナス側と給電回路9の端子Vout1との電位差V5’が含まれるが、実施例2では、電圧変換回路5の第3端子S3は端子Vout1と同電位の制御回路12の第3端子S3に接続されているので、上記した電位差V5’は相殺され、電圧V4の電圧変動範囲には含まれない。
【0029】
以上のように、実施例2によれば、実施例1の効果に加えて、電圧情報V2の基準となる電圧変換回路の第3端子を制御回路の第3端子に接続することにより、第2電源のマイナス側と給電回路の端子Vout1との電位差V5’を排除したので、給電電圧の変動範囲全域をリニアに変動させることができ、より詳細な電圧の調整が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記した実施例1、2では給電回路をシリーズレギュレータ方式で説明したが、コストアップにはなるが、本発明はスイッチングレギュレータ方式による給電回路にも適用可能である。
また、給電電圧調整回路は給電回路の中に配置しても良く、またLSIとして一体に形成することもできる。
なお、本発明の電流供給回路は電話技術分野における加入者回路に利用するのが最適であるが、無負荷に近似した状態の時に、給電電圧を変化させる必要があるシステムに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1を示す図である。
【図2】本発明の実施例2を示す図である。
【図3】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 第2電源
2 給電電圧調整回路
3 カレントミラー回路
4 電圧検出回路
5 電圧変換回路
6 電圧供給回路
7 電流制御回路
8 第1電源
9 給電回路
10 負荷
11,13 直流給電回路
12 制御回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源に接続され、負荷に電流を供給する給電回路と、
前記第1電源より高電位の第2電源に接続されると共に前記給電回路の出力側に接続され、無負荷に近似した状態の時に、外部信号に基いて前記給電回路の出力電位を引き上げて前記負荷に与える給電電圧を上昇させる給電電圧調整回路と
を備えたことを特徴とする電流供給回路。
【請求項2】
前記給電電圧調整回路は、前記外部信号を検出する検出回路と、前記外部信号に基いて第3端子の電位を基準とする電圧情報に変換する電圧変換回路と、前記給電回路の出力のプラス側に接続され、前記電圧情報の電位だけ前記給電回路の出力電位を引き上げる電圧供給回路とを有することを特徴とする請求項1記載の電流供給回路。
【請求項3】
前記供給電圧調整回路は、前記負荷が接続されて前記電圧供給回路から供給される電流が無負荷に近似した状態の時の電流より大きくなると、前記電圧供給回路からの電流供給を停止するように制御する電流制限回路を備えることを特徴とする請求項2記載の電流供給回路。
【請求項4】
前記電圧変換回路の第3端子を前記第2電源のマイナス側に接続することにより、前記第3端子の電位を前記第2電源のマイナス側電位にしたことを特徴とする請求項2又は3記載の電流供給回路。
【請求項5】
前記給電回路を1対の直流給電回路とその制御回路で構成し、前記給電電圧調整回路の電圧変換回路の第3端子と前記制御回路の第3端子とを接続することを特徴とする請求項2又は3記載の電流供給回路。
【請求項6】
前記給電回路に前記給電電圧調整回路を接続する前に、前記給電回路の出力プラス側の電位と前記制御回路の第3端子の電位とが同じになるように前記制御回路の第3端子を設定したことを特徴とする請求項5記載の電流供給回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−13833(P2007−13833A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194682(P2005−194682)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(593065844)株式会社沖コムテック (127)
【出願人】(503334150)株式会社沖テクノクリエーション (52)
【Fターム(参考)】