説明

電流信号を受け取る受信装置、受信装置を備えた回路装置、及びバスシステムを介して電流信号を伝送する方法

【課題】複数のセンサの同期パルスによる電圧ディップを防ぐとともに、バスでの急速な電圧上昇によるEMVを防ぐ。
【解決手段】複数の送信器の電流信号を受け取るための受信装置であって、該受信装置が、少なくとも2つのバス接続装置を有し、該バス接続装置の各々は、それぞれ少なくとも1つのバス接続と接続し、該バス接続を介して少なくとも1つの送信器からの電流信号を受け取るように構成されており、前記受信装置がさらに前記送信器を同期化するための同期パルスを前記バス接続装置に出力する制御装置を有している形式の受信装置において、前記バス接続が前記同期パルスを相互に少なくとも1つの時間オフセットを以て前記複数の送信器に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
周辺センサのデータを中央制御装置(ECU)に伝送するために、いくつかのセンサ系では、とりわけ車両の乗員保護システムでは、電流インタフェースが使用される。電流インタフェースは基本的に単方向としてもよいし、双方向としてもよい。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、制御装置と、単方向電流インタフェースを介して接続されたセンサとを備えたこの種のセンサ系が示されている。この単方向電流インタフェースを介して接続されたこのセンサはPAS2又はPAS4という名称でも知られている。最近のシステムでは、部分的には双方向性と同期化とにより、受信器に対して複数のセンサを用いたバス動作が可能である。
【0003】
双方向性の機能は、受信器が電圧パルスを同期パルスとしてセンサに送信し、これらセンサが所定の時間的依存関係を以て同期してデータを受信器に送信することにより達成される。その際、一般には、同期化を可能にするために、異なるセンサ反応時間又は応答時間がプログラムされる。
【0004】
これにより、バスシステム内のセンサはトリガとして使用される同期パルスを同時に受け取る。それゆえ、多数のセンサによるバスへの多大な負荷にもかかわらず、同期パルスのエッジ急峻性は相応しい大きさでなければならない。
【0005】
その一方で、同期パルスがオンのときには、電圧ディップが起きないように、したがってまた他の機能の妨害が起きないように、供給電圧は制限した上で印加すべきである。さらに、バスでの急速な電圧上昇はある程度のEMV(電磁両立性負荷(システムによっては遮蔽するのに高いコストがかかる))の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 10 2004 013 597 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、複数のセンサの同期パルスによる電圧ディップを防ぐとともに、バスでの急速な電圧上昇によるEMVを防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、複数の送信器の電流信号を受け取るための受信装置であって、該受信装置が、少なくとも2つのバス接続装置を有し、該バス接続装置の各々は、それぞれ少なくとも1つのバス接続と接続し、該バス接続を介して少なくとも1つの送信器からの電流信号を受け取るように構成されており、前記受信装置がさらに前記送信器を同期化するための同期パルスを前記バス接続装置に出力する制御装置を有している形式の受信装置において、前記バス接続が前記同期パルスを相互に少なくとも1つの時間オフセットを以て前記複数の送信器に出力するように構成することにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるバスシステムのブロック図を示す。
【図2】出力された同期パルスの信号経過のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、複数のバス接続ないしバスチャネル上で同期パルスが時間オフセットを以て出力される。この時間オフセットないし遅延はとりわけ同期パルスのパルス持続時間よりも短くてよい。例えば、エッジ幅の範囲内又はエッジ幅よりも短くしてよい。その際、中央で出力された同期パルスを時間遅延によりオフセットし、複数のバス接続ないしバスチャネルを介して出力してもよい。
【0011】
これにより、いくつかの利点が達成される。同期パルスが正確に同時に出力された場合、それに相応して電圧供給の負荷の何倍もの負荷と、相応するEMV負荷の上昇とが発生するのに対し、本発明では同期パルス間の小さな時間オフセットないし遅延、例えばエッジ幅未満の遅延によって、電圧供給の妨害を明らかに減少させ、さらにはEMV放射も明らかに減少させることができることが分かる。
【0012】
遅延させた同期パルスを出力するための回路技術上のコストは低いないしは無視できる程度のものである。にもかかわらず、低いコストで電圧供給もEMV放射放射も明らかに改善される。これは本発明によらなければ明らかに高いコストをかけずには達成できないようなことである。
【0013】
個々の同期パルスの間の時間オフセットないし遅延は同一としてもよいし、異ならせてもよい。同期の機能はこれらの時間オフセットによっては損なわれない。とりわけ、時間オフセットは異なる送信器の反応時間ないし応答時間の間の差よりも明らかに短くてよい。その際、オフセットされた同期パルスを生成するために共通の出力信号を出力してもよい。
【0014】
本発明によれば、同期パルスに対するディジタルシーケンス制御とこれに続くデータ受信ないし信号受信のシーケンス制御において、それぞれの適応チャネルに所定の遅延を発生させることができる。
【0015】
本発明は特に複数のセンサがバスシステムを介して共通の受信装置に接続されているセンサ系で使用することができる。受信装置はとりわけ中央制御装置(ECU)の一部であってよい。また、接続されたセンサを自給式ないし自立的なエネルギー供給のない形に構成することができるように、これらセンサへの電流供給ないしエネルギー供給に同時に使用される大電流との電流インタフェースを形成してもよい。
【実施例】
【0016】
図1には、受信装置2と送信器3a、3b、3c及び3dを有する回路装置1が示されている。送信器3a、3b、3c、3dは特にセンサであってよい。そして、回路装置1は、例えば乗員保護システムの一部、とりわけ車両のエアバッグ制御部であってよい。
【0017】
送信器3a、3b、3c、3dはバスシステム4を介して受信装置2と接続されている。送信器3a、3b、3c、3dはそれぞれ1つのバス接続装置5a、5b、5c、5dを有しており、これらのバス接続装置にはそれぞれ1つのバス接続6a、6b、6c、6dが接続されている。相応して、受信装置2はバス接続装置7a、7b、7c、7dを有しており、これらのバス接続装置にはそれぞれバス接続6a、6b、6c、6dが接続されている。したがって、バス接続6a、6b、6c、6dは共通のバスシステム4の4つのバスチャネルを形成している。バス接続6a、6b、6c、6dは特にそれぞれ2つのライン10,11を有する2線バス接続であってよい。
【0018】
バスシステム4は電流インタフェースを形成しており、送信器3a、3b、3c、3dはこの電流インタフェースを介して各インタフェース電流Ia、Ib、Ic、Idの変調により電流信号S1a、S1b、S1c、S1dを伝送する。送信器3a、3b、3c、3dはとりわけエネルギー自給式でなく、インタフェース電流を介してのみエネルギー供給されるように形成してもよい。インタフェース電流の変調は送信器3a、b、c、dにおいてそれぞれ例えば電流シンクなどの高い抵抗のスイッチによって各ライン10,11の間で行ってよい。この種の電流変調された信号を伝送する電流インタフェースそのものは公知である。
【0019】
バス接続装置7a、b、c、dは各インタフェース電流Ia、Ib、Ic、Idを発生させるそれぞれ1つの電流源と、さらに例えば電流信号S1a、S1b、S1c、S1dを検出する検出装置とを有している。なお、検出装置は例えば電流変調された電流信号S1a、S1b、S1c、S1dを測定抵抗における電圧降下として測定する。このような構成もそれ自体は十分に公知であり、ここではさらに説明はしない。バス接続装置7a、7b、7c、7dは電流信号S1a、S1b、S1c、S1dを電圧信号S2a、S2b、S2c、S2dに変換し、受信装置2の制御装置14へ出力する。
【0020】
本発明によるバスシステム4は基本的に図示された実施形態には限定されない。とりわけ、複数の送信器を共通する1つのバス接続に接続してもよい。
【0021】
送信器3a、3b、3c、3dは所定の時間的依存関係を以て同期してそれぞれの電流信号S1a、S1b、S1c、S1dを受信装置2に送信する。
【0022】
同期化のために、受信装置2は同期パルス16a、16b、16c、16dを送信器3a、3b、3c、3dに送る。同期パルスは電圧パルスとしてバス接続装置7a、b、c、dとバス接続6a、b、c、dとを介して出力される。したがって、送信器3a、3b、3c、3dはその後(プログラムないし設定に従って)異なる応答時間ないし反応時間で反応することができる。例えば、第1の送信器3aは100msの反応時間で反応し、第2の送信器は200msの反応時間で反応する等々。図示された実施形態では、同期パルス16a、16b、16c、16dは制御装置14からバス接続装置7a、b、c、dへと出力されるので、制御装置14は電圧信号S2a、b、c、dを受け取ることも、同期パルス16a、16b、16c、16dを出力することも行う。しかし、これに関して、代替的に、例えば電圧信号S2a、b、c、dを他の装置から受け取るようにしてもよい。
【0023】
本発明によれば、同期パルス16a、16b、16c、16dは互いに対して時間的なズレないし時間オフセットを以て出力される。図2には、各チャネルないしバス接続6a、b、c、d上の同期パルス16a、b、c、dと時間tが示されている。同期パルス16a、b、c、dは、例えばそれぞれ40μsのパルス幅tp、例えば5〜6μsのエッジ幅tf、ならびに、立ち上がり及び立ち下がりエッジを有する。例えばパルス16aと16bのような相次ぐ同期パルスの間の時間オフセットtd、同様にして16bと16c及び16cと16dの間の時間オフセットは、例えばそれぞれ2μsである。時間オフセットtdはエッジ幅tf未満であってよい。これに関して、本発明によれば、エッジが正確に同時には開始ないし終了せず、オーバーラップしないことが特に重要であることが分かる。同期パルス16a、b、c、dの間の時間オフセットは原則的に異なっていてよい。
【0024】
時間オフセットtdが送信器の反応時間ないし反応時間の差よりも明らかに小さいことにより、本発明による同期パルス16a、b、c、dの時間的にずらした送信は原則的に送信器3a、3b、3c、3dをプログラムし直すことなしに既存のシステム内で実行することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 回路装置
2 受信装置
3a−d 送信器
4 バスシステム
5a−d バス接続装置
6a−d バス接続
7a−d バス接続装置
10,11 ライン
14 制御装置
16a−d 同期パルス
S1a−d 電流信号
S2a−d 電圧信号
td 時間オフセット
tf エッジ幅
tp パルス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信器(3a、3b、3c、3d)の電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を受け取るための受信装置であって、該受信装置(2)が、
少なくとも2つのバス接続装置(7a、7b、7c、7d)を有し、該バス接続装置(7a、7b、7c、7d)の各々は、それぞれ少なくとも1つのバス接続(6a、6b、6c、6d)と接続し、該バス接続(6a、6b、6c、6d)を介して少なくとも1つの送信器(3a、3b、3c、3d)からの電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を受け取るように構成されており、前記受信装置(2)がさらに前記送信器(3a、3b、3c、3d)を同期化するための同期パルス(16a、16b、16c、16d)を前記バス接続装置(7a、7b、7c、7d)に出力する制御装置(14)を有している形式の受信装置において、
前記バス接続(7a、b、c、d)が前記同期パルス(16a、16b、16c、16d)を相互に少なくとも1つの時間オフセット(td)を以て前記複数の送信器(6a、6b、6c、6d)に出力する、ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記相互に時間的にずらされた異なる同期パルス(16a、16b、16c、16d)の数は前記送信器(3a、3b、3c、3d)の数に相当する、請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記時間的にずらされた同期パルス(16a、16b、16c、16d)は異なるバス接続(6a、b、c、d)を介して出力される、請求項1又は2記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御装置は既に前記少なくとも1つの時間オフセット(td)を以て前記バス接続(7a、b、c、d)に前記同期パルス(16a、16b、16c、16d)を出力する、請求項1から3のいずれか1項記載の受信装置。
【請求項5】
前記時間オフセット(td)は前記同期パルス(16a、16b、16c、16d)のパルス幅(tp)よりも小さい、請求項1から4のいずれか1項記載の受信装置。
【請求項6】
前記時間オフセット(td)は前記同期パルス(16a、16b、16c、16d)のエッジ幅(tf)以下である、請求項1から5のいずれか1項記載の受信装置。
【請求項7】
前記バス接続装置(7a、7b、7c、7d)は前記同期パルス(16a、16b、16c、16d)を電圧パルスとして前記接続されたバス接続(6a、6b、6c、6d)に出力する、請求項1から6のいずれか1項記載の受信装置。
【請求項8】
前記バス接続装置(7a、7b、7c、7d)は前記バス接続(6a、6b、6c、6d)を介して受け取った電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を電圧信号(S2a、S2b、S2c、S2d)に変換し、前記制御装置(14)へ出力する、請求項1から7のいずれか1項記載の受信装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の受信器(2)と少なくとも2つの送信器(3a、3b、3c、3d)を有する回路装置(1)であって、前記送信器はそれぞれバス接続(6a、6b、6c、6d)を介して前記受信装置(2)のバス接続装置(7a、7b、7c、7d)と接続されており、
前記送信器(3a、3b、3c、3d)は前記各バス接続(6a、6b、6c、6d)を介して電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を送信するものであり、それぞれ異なる反応時間で前記電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を送信するために、前記バス接続(6a、6b、6c、6d)を介して同期パルス(16a、16b、16c、16d)を受信することにより同期化される、ことを特徴とする回路装置(1)。
【請求項10】
前記送信器(3a、3b、3c、3d)はエネルギー自給式でなく構成されており、前記バス接続(6a、6b、6c、6d)を介してエネルギーを供給され、インタフェース電流(Ia、Ib、Ic、Id)の電流変調により電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を形成する、請求項9記載の回路装置。
【請求項11】
前記送信器は測定信号又は測定信号が導出される信号を電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)として送出するセンサ(3a、3b、3c、3d)であり、前記受信装置(2)は中央制御装置の一部である、請求項9又は10記載の回路装置。
【請求項12】
車両の乗員保護システムの一部である、請求項11記載の回路装置。
【請求項13】
バスシステム(4)を介して電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を伝送する方法であって、共通の受信装置(2)から少なくとも2つのバス接続(6a、6b、6c、6d)を介して少なくとも2つの送信器(3a、3b、3c、3d)に同期パルス(16a、16b、16c、16d)を出力し、前記少なくとも2つの送信器(3a、3b、3c、3d)が異なる反応時間を以て前記電流信号(S1a、S1b、S1c、S1d)を前記バス接続バス接続(6a、6b、6c、6d)を介して受信装置(2)へ伝送するようにした方法において、前記受信装置(2)が前記複数のバス接続(6a、6b、6c、6d)を介して前記同期パルス(16a、16b、16c、16d)を相互に少なくとも1つの時間オフセット(td)を以て出力するようにした、ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−213272(P2010−213272A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48869(P2010−48869)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】