説明

電流制限と電圧クランプとを有する自由発振フライバックコンバータ

本発明は、一次巻線(110)、二次巻線(112)および少なくとも一つの補助巻線(114)を有する変圧器(108)を有する、自由発振フライバックコンバータ式の、一次制御スイッチモード電源(100)に関する。スイッチモード電源ユニットは、一次巻線(110)を流れる電流を遮断するよう一次巻線(110)に接続される一次スイッチ(104)と、一次スイッチ(104)をトリガするスイッチングパルスを生成する自由発振回路(106)と、二次側で調整される電圧を一次側で表すイメージ電圧を生成するよう補助巻線(114)の端子間でイメージ電圧を生成する回路(116)と、を有する。本発明は、制御特性の改善および動作パラメータに関する柔軟性の向上を実現しつつ複雑性を低減するスイッチモード電源ユニットを作成することを目的とする。この目的は、スイッチモード電源ユニット(100)が、一次スイッチのオフ期間の持続時間がスイッチングサイクル内で調節できるように一次側スイッチ(104)に接続される時間制御ユニット(107)を更に有することで実現される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチモード電源に関し、特に、一次側巻線、二次側巻線、および少なくとも一つの補助巻線付きの変圧器を有する、一次側および二次側を有するスイッチモード電源に関する。一次側巻線と補助巻線とは一次側に接続され、二次側巻線は二次側に接続されている。スイッチモード電源は、一次側巻線に接続され一次側巻線を流れる電流を遮断する一次側スイッチと、一次側スイッチを駆動するスイッチングパルスを生成する自由発振回路と、二次側で調整される電圧を一次側で形成するイメージ電圧を生成する、補助巻線の端子間でイメージ電圧を生成する回路と、を有する。
【背景技術】
【0002】
スイッチモード電源は、本線電圧から電子部品への供給に必要な低直流電圧を生成するために多くの電子装置で使用される。この点で、スイッチモード電源は、多数の用途において本線変圧器(mains transformer)を有する従来の電源よりも普及している。なぜなら、スイッチモード電源は、あるレベル以上の電力のクラスでは、より高効率であり、特に、所要スペースがより小さい。
【0003】
後者は特に、本線電圧の代わりに高周波交流電圧が変換されることに起因する。50Hzまたは60Hzの通常の本線周波数に対し、高周波交流電圧は例えば20kHzから200kHzの範囲でもよい。変圧器において必要な巻線の数は周波数に反比例するため、これによって銅損が著しく低減され、実際の変圧器は大幅に小さくなる。
【0004】
効率性を更に最適化するために、例えばバイポーラトランジスタのようなスイッチにより高周波変圧器の一次側で生成される周波数が、伝達電力(transferred power)を調整するために、電源ユニットの二次側に与えられる負荷に依存して調整されるような、一次スイッチモード電源が特に知られている。このタイプの調整に必要なフィードバックは、例えば、補助巻線でタップオフされた電圧を制御変数(controlled variable)として用いることで実現される。出力電流および/または出力電圧を制御する適当な方法は、特許文献1に開示され、同じエネルギーが各パルスで変圧器に負荷されることを考慮している。しかしながら、この文献に記載の回路構成は、比較的複雑な集積回路を制御回路として用いるため、比較的複雑な構造になるといった欠点を有する。
【0005】
一次側および二次側の間に電気的絶縁性を与えてスイッチモード電源を構成する最も安価な方法は、自走フライバックコンバータ(free-running flyback converter)を用いることである。しかしながら、このタイプの電源は、低負荷ではスイッチング周波数が著しく増加するといった欠点を有する。その結果、無負荷および低負荷における電力損失が高い。
【0006】
一次補助巻線または主たる一次巻線の電圧を測定することによる出力電圧の間接的な測定は、このタイプの電源ではより困難である。浮遊インダクタンスからの誘導電圧により、短い電圧オーバーシュートが生じ、これは、大きいパルス幅では簡単な方法で除去される(filtered out)ため、二次電圧を比較的正確に決定することができる。しかしながら、低負荷では、浮遊インダクタンスにより誘導された電圧を除去(filter out)することが殆ど可能でなくなるほどパルス幅が縮小される。つまり、低負荷における出力電圧は、非常に不正確に決定される。このタイプの簡単なディスクリート回路技術の例は、(未審査)特許文献2に開示されている。この回路では、十分でない制御の正確性といった欠点に対処するために、光カプラの使用が提案されている。しかしながら、このような光カプラは、スイッチモード電源全体の複雑性およびコストを増大させる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1146630A2号公報
【特許文献2】英国特許出願公開第02379036号公報
【発明の開示】
【0007】
従って、本発明の目的は、低度の複雑性で、制御特性の改善および動作パラメータに関する柔軟性の向上を容易にする一般的なスイッチモード電源を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有するスイッチモード電源により達成される。本発明によるスイッチモード電源の更なる有利な発展は、従属項に記載の事項である。
【0009】
本発明は、一回のスイッチングサイクルにおける一次側スイッチのターンオフ期間の持続時間が調整され特に延長されるように一次側スイッチに結合された時間制御ユニットを用いると、低負荷に対して低スイッチング周波数が保持され、その結果、正確な電圧制御および様々な出力電流特性の設定が可能となる。更に、本発明によるスイッチモード電源は、数点の安価な部品から構成される。従って、本発明によるスイッチモード電源は、低コストで、正確な出力電圧制御、低開路入力電力、および用途の多様性等の利点を提供する。最後に、本発明によるスイッチモード電源は、短絡保護の利点も有する。
【0010】
有利な実施の形態によると、時間制御ユニットは、充電電流を用いて一次側スイッチのターンオフ時間を制御する制御コンデンサを有する。これにより、ターンオン処理およびターンオフ処理の高速化を実現することができる。一次側スイッチのターンオフ期間は、特に簡単な方法で制御コンデンサを介して延長される。従って、伝達電力は、ほぼ負荷非依存の出力電圧が生成されるよう設定される。一次側での出力電圧の検出は、伝達エネルギーが各パルスで同じとなるよう簡略化され、電流が二次巻線を流れる比較的長い時間が常に与えられる。浮遊インダクタンスにより生じる短い電圧スパイクは、本発明によるスイッチモード電源によりRC素子を用いて除去(filtered out)できる。
【0011】
一次側スイッチのターンオフ時間中に制御コンデンサの充電電流を制限するダイオードが時間制御ユニットに設けられる場合、制御コンデンサの充電が防止され、ターンオフ持続時間を介した電力制御が特に効率的に且つ簡単な方法で容易化される。
【0012】
制御コンデンサに対する制御された充電電流は、スイッチモード電源の入力端子と一次側スイッチの制御端子との間に配置される充電電流制御回路により特に有効的な方法で得られる。
【0013】
一次側スイッチの制御回路における不要な発振を抑制し、その結果として制御の正確性を向上させるために、本発明の更なる有利な発展による発振抑制回路が設けられる。
【0014】
一次側スイッチのターンオフ処理を加速し、その結果としてスイッチモード電源全体の効率を向上させるために、一次側スイッチの位相シフトターンオフ(phase-shifted turn-off)のための位相シフト回路を設けてもよい。
【0015】
更なる実施の形態によると、時間制御ユニットは、一次側スイッチのターンオン時間中に制御信号を不活性化することができるよう形成される。これにより、可変なポーズ(pause)および一定のパルスが非常に効率的な方法で自走発振器(free-running oscillator)により得ることができる。
【0016】
有利な実施の形態によると、本発明によるスイッチモード電源は、一次側スイッチのターンオフ期間を制御してもよい2つの一次側の補助巻線を有する。これにより、低負荷での低スイッチング周波数、および、開路時電力損失低減を実現することができる。二次電圧は、一次補助巻線で比較的正確に決定することができる。
【0017】
一方の補助巻線が、ダイオードおよびトランジスタを介して一次側スイッチに接続される場合、電流をダイオードのアノードに供給することができ、ターンオフ閾値に影響を与えることなくトランジスタのターンオン期間を延長させる。一次側スイッチのターンオン期間中、負電圧がダイオードのアノードで生成される。あるいは、2つのダイオードまたは2つの抵抗器の直列回路を用いてもよい。ダイオードに対するピーク電流を制限するために追加の抵抗器を設けてもよい。
【0018】
コンデンサが二次側で調整される電圧まで充電されるように、且つ、電流が、コンデンサに供給される電圧に依存して、ダイオード、抵抗器、第3のダイオード、およびトランジスタのベース−エミッタ接合を流れトランジスタのターンオン期間により一次側スイッチのターンオンを遅延させるように、一方の補助巻線が、第2のダイオードを介してコンデンサに接続される場合、一次側スイッチのターンオフ期間の電圧制御された設定を得ることができる。一次側スイッチの制御端子と第1の補助巻線とに接続されるRC素子は、比較的低い保持電流に対して制御回路における比較的低い抵抗のスイッチングを容易化する。比較的大きいコンデンサと大きな抵抗値との組み合わせにより、更に、一次側スイッチは、遅れてターンオンされる。なぜなら、コンデンサのエネルギーが段々と減衰されるためである。これは負荷への継続的な適応を促進させる。
【0019】
非常に低い負荷における制御特性の改善は、過電圧保護回路を使用することにより可能となる。この回路により、制御コンデンサは、出力電圧の増加に伴い、より迅速に放電され、よりゆっくりと充電される。その結果、非常に長いポーズ期間が可能であり、これは、出力電圧の増加に伴い自動的に延長される。この回路は、過電圧保護として機能し、単純な障害による出力電圧の危険な上昇を防止する。
【0020】
有利な実施の形態によると、充電電流制御回路は、制御トランジスタのターンオン期間が一次側スイッチのターンオンを遅延させるように抵抗器を介して制御トランジスタのベースに接続される第1のツェナーダイオードを有する。これにより、上述したものに対応する機能原理が得られるが、制御コンデンサに対する充電電流の制御はより簡単な方法で実現することができる。顕著な利点は、減少された部品要件である。
【0021】
更に、メインスイッチをオフにすることを、ツェナーダイオードによって作用することができ、抵抗器により、メインスイッチのベース−エミッタ接合の直列回路における電圧を制限する。ツェナー電圧に到達すると、一次側スイッチを流れる電流は、それ以上増加することができない。そのため、変圧器の電圧が低減され、直接的なフィードバックが迅速なターンオフを生ずる。
【0022】
出力電流の温度依存性は、温度補償回路を用いて簡単な方法で低減することができる。
【0023】
本発明の更なる有利な発展によると、電圧制御は、光カプラおよび二次側制御回路を用いて実現することができる。ここで、光カプラは、制御電圧がその限界値を下回った場合に通電するように制御される。これにより、スイッチモード電源は最大周波数で動作し、よって、周波数は光カプラと直列に接続される抵抗器により制限される。制御電圧に到達すると、光カプラは、出力で制御電圧を維持するのに必要な周波数までスイッチング周波数が低減される程度に遮断される。光カプラが完全に遮断された場合、スイッチング周波数は、非常に低電力だけが伝達される最小周波数に戻る。この状態では、回路で消費される電力は非常に少なく、従って、開路入力電力が非常に低くても、開路時電圧リップルを比較的低く維持することができる。
【0024】
この場合において、同じ光カプラを用いて、電流制限を二次側で実現してもよい。あるいは、電流制限を、一次側で実現してもよい。ここで、出力電圧に比例する補助巻線からの電圧は、(光カプラおよび直列抵抗器を介して)一次側スイッチを制御するために使用される。その結果、制御コンデンサの充電電流は、出力電圧を低下させ周波数を低下させることで低減する。低電力が伝達され、出力電流が例えばほぼ一定のままである。異なる寸法により様々な出力特性が可能である。一つの共通の特徴は、短絡電流が非常に低い点である。なぜなら、光カプラが短絡において遮断されるためである。低コストおよび正確な出力電圧制御の他に、本実施の形態は、低開路入力電力および短絡保護といった利点を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、添付の図面に例示される実施の形態に基づいて以下により詳細に説明される。図面では、同様のまたは対応する細部に同じ参照記号が付与される。
【0026】
図1は、本発明によるスイッチモード電源のブロック図を概略的に示す。
【0027】
例えば本線電圧である交流電圧UINは、スイッチモード電源100の入力に印加される。欧州では、本線電圧は、180Vと264Vとの間で変わる交流電圧であり、米国では、90Vと130Vとの間で変わる交流電圧である。入力電圧は、ブロック102において整流および安定化される。更に、スイッチモード電源で生成される干渉信号が交流電圧ネットワークにアクセスしないことが確実にされる。絶縁変圧器108の一次側巻線110と、ここではトランジスタである一次側スイッチ104とは、整流された入力電圧に接続される直列回路を形成する。一次側スイッチ104は、一次側巻線110を流れる電流を、制御回路106からの制御信号に従って遮断する。制御回路106から一次側スイッチ104の制御入力に供給されるスイッチングパルスは、変圧器108の補助巻線114を用いることで制御変数が生成されるブロック116により制御される。ここで、二つの信号路120および122は、ブロック116の二つの重要な機能を指す。第1に、信号路120は、自走発振を維持するために制御回路106を「ポンプ」する。第2に、信号路122は、スイッチングサイクルにおける変化が変圧器108に供給される電力に所望の方法で作用するように制御回路106を制御する。
【0028】
本発明によると、制御回路106は、このために時間制御ユニット107を含み、一次側スイッチ104が開くポーズ期間(またはターンオフ時間)が所要電力と同じ長さとなることを確実にする。一次側スイッチの各ターンオンフェーズ中に変圧器に供給されるエネルギーは常に同じである。
【0029】
図1から分かるように、変圧器108の二次側巻線112は、二次側電圧UOUTを生成し随意的にはこれを安定化させるブロック118に接続される。
【0030】
以下、図1に概略的に示される本発明による電気的に絶縁されたスイッチモード電源の実施の形態の機能原理について、より詳細に説明する。
【0031】
制御回路106は、一次側スイッチ104が交互に導電状態および非導電状態になるように一次側スイッチ104を制御する。ブロック102により印加される電圧により、電流は、一次側スイッチ104が導電状態にあるとき、常に一次側巻線110を流れる。電流の変化により変圧器108の磁場にエネルギーが蓄えられる。一次側スイッチ104が遮断されると、磁場に蓄えられたエネルギーは主に二次側巻線112を介して、二次電圧を生成し安定化させるブロック118に放出される。そのエネルギーのうち少しの部分は、補助巻線114を介して、ブロック116に放出される。これは、制御変数としての補助電圧を生成する。エネルギーは周期的に放出されるが、整流およびフィルタ(filtering)により、本質的に整流された電圧が補助電圧として生成される。変圧器108の各種巻線間の磁気結合が一定であり、電流または電圧の値に依存しないため、補助電圧の値は、二次電圧の値に比例し、従って出力電圧の値に比例する。
【0032】
時間制御ユニット107を用いて、一次側スイッチ104のターンオフ期間は、変圧器に供給されるエネルギーが出力電圧に依存するように設定することができる。従って、伝達電力は、ほぼ負荷非依存の出力電圧UOUTが生成されるよう設定される。一次側での出力電圧の検出は、伝達エネルギーが各パルスで同じであるよう簡略化され、電流が二次巻線114を流れる比較的長い時間が常に与えられる。
【0033】
本発明によるスイッチモード電源の別の実施の形態の回路ブロックが図2に示される。この回路の主な特徴は、ここではトランジスタT12である一次側スイッチのターンオフ期間を、トランジスタT11を適切に制御することにより延長できる点である。
【0034】
端子K11およびK12に入力電圧UINが印加された後、抵抗器R11およびR12を介してコンデンサC15が充電される。電圧が十分な場合、電流は抵抗器R18、トランジスタT11のベース−コレクタ接合、抵抗器R20、トランジスタT12のベース−エミッタ接合、抵抗器R23、およびダイオードD17を流れる。その結果、一次側スイッチT12が駆動されて開かれ、電流が変圧器W10の一次主巻線(端子4/端子1)を流れる。変圧器W10の補助巻線(端子3/端子2)では、電圧が誘導され、それにより、コンデンサC15、抵抗器R23、およびコンデンサC14を介して直接的なフィードバックを生じさせ、一次側スイッチT12のターンオン処理を速める。
【0035】
ここで、一次側主巻線、一次側スイッチT12、抵抗器R23、およびダイオードD17を流れる電流が増加したとする。その結果、抵抗器R23で降下される電圧も増加し、従って、トランジスタT13のベース−エミッタ電圧も同様である。トランジスタT13のベース−エミッタ電圧が閾値電圧を超えた場合、トランジスタT13のコレクタ−エミッタ接合が通電し、その結果、トランジスタT12がターンオフされる。これにより、変圧器W10の一次側巻線を流れる電流を遮断し、変圧器W10の巻線の電圧は自己インダクタンスにより逆となる。二次側巻線および補助巻線の両方において誘導電流が流れる。
【0036】
二次側巻線中の電流は、コンデンサC100を充電し、出力で使用することができる電圧を生成する。補助巻線中の電流は、ダイオードD15および抵抗器R13を介して、コンデンサC100の電圧に対応し二次巻線に対する補助巻線の巻線比を介して変換された電圧までコンデンサC15を充電する。つまり、コンデンサC100の出力電圧のイメージ電圧がコンデンサC15で生成される。また、補助巻線中の電流は、コンデンサC14を介してトランジスタT12のターンオフの加速を引き起こす。
【0037】
コンデンサC15の電圧が、ダイオードD16およびトランジスタT10の閾値電圧の合計よりも低い場合、トランジスタT10は遮断され、トランジスタT11は通電し、よって、コンデンサC14は、抵抗器R18、トランジスタT12および抵抗器R20の直列回路を介して迅速に充電される。これにより、一次側スイッチT12は、短いポーズの後で再びターンオンされ、新しいサイクルを開始する。
【0038】
コンデンサC15の電圧が、ダイオードC16およびトランジスタT10の閾値電圧の合計を超えた場合、トランジスタT10は通電してトランジスタT11のベース電流を低減させ、コンデンサC14の充電電流を制限する。従って、一次側スイッチT12のターンオフ期間が延長される。
【0039】
従って、例示した回路を用いることにより、ターンオフ期間を設定することで接続負荷に依存することなく伝達電力を出力電圧に適応させることが特に簡単な方法により可能となる。前述したとおり、出力電圧の検出は、伝達エネルギーが各パルスで同じであるよう簡略化され、電流が二次巻線を流れる比較的長い時間が常に与えられる。浮遊インダクタンスにより生ずる短い電圧スパイクは、図3に例示するように、適切に寸法が決められたRC素子R13、C13、R14およびD14で除去される(filtered out)。その結果、コンデンサC15のイメージ電圧は、コンデンサC100の電圧の非常に正確な複製を表す。
【0040】
出力電流の制限は、抵抗器R18およびR20を用いて設定できる最大周波数から生ずる。これにより、最大電力点が定められる。最大電力点を超えると、出力電圧が低下し、従って、コンデンサC15の電圧も低下する。その結果、抵抗器R18およびR20を通る電流も低下し、その結果、周波数および伝達電力は低減される。抵抗器R20に対する抵抗器R18の抵抗値比を変えることにより、出力電流の出力電圧への依存性を、異なる特性が可能となるように設定することができる。
【0041】
しかしながら、図2に示す実施の形態は、出力電流の入力電圧への依存性を示す。なぜなら、一次側スイッチT12の遅延時間が、入力電圧に依存する最大一次電流を生じさせるためである。
【0042】
これは、本発明によるスイッチモード電源の第2の実施の形態を示す図3に示されるように、コンデンサC17を一次側スイッチT12のエミッタに接続することで対処できる。この場合、コンデンサC18を抵抗器で置き換えてもよい。残りについては、図2と同じものを指す図3内の部品には同じ参照記号が付与されている。
【0043】
一次側スイッチT12をターンオフした状態で二次電流がゼロまで低下した場合、ダイオードD100の順方向電圧に加えられる出力電圧UOUTのレベルにある電圧が二次側巻線に存在する。この電圧で寄生キャパシタンスは充電される。変圧器W10により、これらのキャパシタンスは発振回路を形成し、寄生キャパシタンスに蓄えられたエネルギーにより生ずる発振は、ある状況下で、トランジスタT12を早期に再びターンオンさせる。これにより、短い制御偏差が生じ、従って、出力電圧UOUTのリップル増加が生ずる。これを防止するためには、図3に示す拡張された実施の形態によると、補助巻線からの電圧は、コンデンサC13、抵抗器R14、ダイオードD14および抵抗器R13から形成されるフィルタを介してコンデンサC14に送られる。
【0044】
更に、図3では、抵抗器R23の電圧の上昇によりトランジスタT13のベース−エミッタ電圧の上昇を遅延させる、コンデンサC16、抵抗器R21、抵抗器R22およびコンデンサC18により形成される遅延素子が設けられる。この遅延素子は、この回路の機能として不可欠のものでないが、トランジスタT12のターンオフ処理が位相シフトにより加速されるため、効率が向上する。
【0045】
図4において回路図の形態で示される更なる実施の形態によると、二次補助巻線を電力制御のために設けることができる。
【0046】
一次部分と二次部分との間の電気分離(galvanic separation)を有する図4に示したスイッチモード電源は、自走フライバックコンバータ(free-running flyback converter)も表している。一次側補助巻線(W10:3−6)を追加することにより、一次側スイッチT12のターンオン期間中に、ダイオードD119のアノードで抵抗器R124を介して負電圧が生成される。(抵抗器R124の代わりにダイオードを用いることもできる。)その結果、ダイオードD119のアノードでは、ターンオフ閾値が作用されることなくトランジスタT111のターンオン期間を延長させる電流が供給される。
【0047】
これにより、トランジスタT12のターンオフ期間を制御することができる。これにより、低負荷で低スイッチング周波数が生じ、低負荷で開路電力損失が低減される。二次電圧は、一次補助巻線を用いることで比較的正確に決定することができる。
【0048】
簡単な電圧制限は、ダイオードD120、抵抗器R129、コンデンサC119およびダイオードD121を用いて実現することができる。ここで、RC素子R125、C118は、浮遊インダクタンスからの誘導電圧スパイクを除去(filter out)し、制御特性を改善する。抵抗器R125は、ダイオードD121を保護するためのピーク電流制限を提供する。
【0049】
RC素子C113、R115およびC114、R116の並列回路は、比較的低い保持電流でトランジスタT111の低抵抗スイッチングを行う。更に、比較的大容量のコンデンサC114および大きい抵抗値の抵抗器R116の組み合わせにより、トランジスタT12が遅れてターンオンされる。なぜなら、コンデンサC114におけるエネルギーがゆっくりと低減されるためである。これにより、負荷に対するポーズ持続時間の継続的な適応が生ずる。
【0050】
非常に低い負荷に対する制御特性の改善は、ダイオードD114、コンデンサC117、ダイオードD115および抵抗器R120またはダイオードD116を用いる例示された実施の形態で実現することができる。この回路により、コンデンサC113およびC114は、より迅速に放電され、よりゆっくりと充電される。その結果、出力電圧の増加に伴って自動的に延長される非常に長いポーズ期間が可能である。この回路は、過電圧保護として機能し、単純な障害による出力電圧UOUTの危険な上昇を防止する。
【0051】
RC素子R114、C116を用いることにより、浮遊インダクタンスからの誘導電圧スパイクを除去(filtered out)でき、それにより、制御特性を更に改善できる。
【0052】
出力電圧への出力電流の依存性を低下させるために、トランジスタT111のターンオン閾値を抵抗器R118を介して整合できる。
【0053】
更に、抵抗器R123およびダイオードD118を用いることにより、トランジスタT111のターンオン閾値を整合でき、入力電圧への出力電流の依存性を低下させる。
【0054】
最後に、図4に例示される実施の形態では、出力電流の温度依存性を低下させるために、トランジスタT112、抵抗器R128および抵抗器R127を有する温度補償回路が設けられる。
【0055】
本発明によるスイッチモード電源の更なる実施の形態は、図5を参照して以下に説明される。ここで、例示された回路の機能原理は、図2および図3の回路と同じであるが、制御コンデンサC213に対する充電電流の制御がより簡単な方法で実現されるため、図5の回路が必要とする部品が大幅に少なくなる点で異なる。一次側スイッチT12のターンオフは、一次側スイッチT12のベース−エミッタ接合および抵抗器R220の直列回路の電圧を制限するツェナーダイオードD214を介して行われる。ツェナー電圧に到達すると、トランジスタT210を流れる電流はそれ以上増加することができないため、変圧器W10の電圧が低下し、直接的なフィードバックが一次側スイッチT12を迅速にターンオフさせる。
【0056】
図6を参照して、本発明によるスイッチモード電源の更なる実施の形態を説明する。ここでは、出力電圧の一次側へのフィードバックのために追加の光カプラが使用される。定められた出力電力を下回ることに伴って光カプラを介して電源の一次部分をオフに切り換える、低開路入力電力を有するスイッチモード電源の様々な回路が知られており、それにより、非常に低い入力電力を容易にする。しかしながら、この知られた原理の欠点は、出力電圧が非常に大きい開路時リップル電圧を有する点である。
【0057】
図6に示すスイッチモード電源では、電圧制御は、光カプラIC10および二次側制御回路を用いて実現することができる。ここで、光カプラIC10は、制御電圧がその限界値を下回るときに通電するよう制御される。これにより、スイッチモード電源は、最大周波数では制御電圧未満で動作し、これにより、周波数は、光カプラIC10に直列に接続されている抵抗器R415により制限される。制御電圧に到達すると、光カプラIC10は、出力で制御電圧を維持するのに必要な周波数までスイッチング周波数が低減される程度に遮断される。光カプラIC10が完全に遮断された場合、スイッチング周波数は、非常に低い電力だけが伝達される最小周波数まで戻る。この状態では、回路により消費される電力は非常に少ない。これにより、開路入力電力が非常に低くても、電圧リップルを比較的低く保つことができる。
【0058】
この場合において、同じ光カプラIC10を用いて、電流制限を二次側で実現することができる。
【0059】
あるいは、電流制限を、一次側で実現してもよい。ここで、出力電圧に比例する補助巻線(W10:2−3)からの電圧は、光カプラIC10および直列の抵抗器R415を介して一次側スイッチT12を制御するために使用される。その結果、コンデンサC414の充電電流は、出力電圧の低下および周波数の低下に伴って低減する。低電力が伝達され、出力電流はほぼ一定のままである。異なる寸法により様々な出力特性が可能である。一つの共通の特徴は、光カプラが短絡においては遮断されているため、短絡電流が非常に低い点である。
【0060】
光カプラが使用される知られた方法に対して、ここでは、最小周波数、すなわち最小電力が光カプラの遮断により実現され、最大周波数が光カプラの通電により実現される。電流制御は、補助巻線により伝達される出力電圧に依存するスイッチング周波数を制御することで作用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による一次スイッチモード電源のブロック図
【図2】第1の実施の形態による一次スイッチモード電源の回路図
【図3】第2の実施の形態によるスイッチモード電源の回路図
【図4】第3の実施の形態によるスイッチモード電源の回路図
【図5】第4の実施の形態によるスイッチモード電源の回路図
【図6】第5の実施の形態によるスイッチモード電源の回路図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側と、
二次側と、
一次側巻線(110)、二次側巻線(112)および少なくとも一つの補助巻線(114)を有し、前記一次側巻線(110)および前記補助巻線(114)が前記一次側に接続され、前記二次巻線(112)が前記二次側に接続される変圧器(108、W10)と、
前記一次側巻線(110)を流れる電流を遮断するために前記一次側巻線(110)に接続される一次側スイッチ(104、T12)と、
前記一次側スイッチ(104、T12)を制御するスイッチングパルスを生成する自由発振制御回路(106)と、
前記二次側で制御される電圧の前記一次側での複製であるイメージ電圧を生成するために、前記補助巻線(114)の端子間でイメージ電圧を生成する回路(116)と、
を有するスイッチモード電源であって、
前記一次側スイッチ(104、T12)のターンオフ期間の持続時間がスイッチングサイクル内で調整できるよう前記一次側スイッチ(104、T12)に結合される時間制御ユニット(107)を更に有することを特徴とする、スイッチモード電源。
【請求項2】
前記時間制御ユニット(107)は、制御コンデンサ(C14、C213)を有し、
前記一次側スイッチ(T12)のターンオフ時間は、前記制御コンデンサ(C14、C213)の充電電流により調整することができることを特徴とする、請求項1記載のスイッチモード電源。
【請求項3】
前記時間制御ユニット(107)は、前記制御コンデンサ(C14、C213)の充電電流が前記一次側スイッチ(T12)のターンオフ時間中制限されるように、前記一次側スイッチ(T12)と前記スイッチモード電源の入力端子(K12)との間に配置されるダイオード(D17)を有することを特徴とする、請求項1または請求項2記載のスイッチモード電源。
【請求項4】
前記制御コンデンサ(C14)の充電電流は、前記スイッチモード電源の入力端子(K12)と前記一次側スイッチ(T12)の制御端子との間に配置される充電電流制御回路(R15、D16、R17、T10、R19、T11、R18、R20、R16)により制御されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項5】
前記充電電流制御回路は、直列に接続される2つの増幅器(T10、T11)を有することを特徴とする、請求項4記載のスイッチモード電源。
【請求項6】
発振抑制回路(C13、R14、D14、R13)は、前記一次側スイッチの制御回路における不要な発振が抑制されるように、前記補助巻線に接続されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項7】
前記一次側スイッチの位相シフトターンオフのために位相シフト回路(T13、C16、R21、C18、R22)が設けられることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項8】
前記時間制御ユニットは、前記一次側スイッチ(T12)のターンオン期間中に制御信号を不活性化するように構成されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項9】
2つの一次側補助巻線(W10:3−6、W10:2−5)を有することを特徴とする、請求項1記載のスイッチモード電源。
【請求項10】
一方の前記補助巻線(W10:3−6)は、抵抗器(R124)、ダイオード(D119)およびトランジスタ(T111)を介して前記一次側スイッチ(T12)に接続されることを特徴とする、請求項9記載のスイッチモード電源。
【請求項11】
一方の前記補助巻線(W10:3−6)は、第2のダイオード(D121)を介してコンデンサ(C119)に接続され、前記補助巻線(W10:3−6)の一方は、前記二次側で制御される電圧まで充電され、
電流が、前記コンデンサ(C119)の電圧に依存して、前記ダイオード(D119)、抵抗器(R129)、第3のダイオード(D120)および前記トランジスタ(T111)のベース−エミッタ接合を流れ前記トランジスタ(T111)のターンオン持続時間により前記一次側スイッチ(T12)のターンオンを遅延させることを特徴とする、請求項10記載のスイッチモード電源。
【請求項12】
前記制御回路は、過電圧保護回路(D114、C117、D115、R120、D116)を有することを特徴とする、請求項8から請求項11のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項13】
前記充電電流制御回路は、抵抗器(R215)を介して制御トランジスタ(T210)のベースに接続される第1のツェナーダイオード(D213)を更に有し、
前記制御トランジスタ(T210)のターンオン持続時間が、前記一次側スイッチ(T12)のターンオンを遅延させることを特徴とする、請求項4記載のスイッチモード電源。
【請求項14】
前記充電電流制御回路は、前記一次側スイッチ(T12)のベース−エミッタ接合と前記一次側スイッチ(T12)のエミッタに接続される抵抗器(R420)との直列回路に並列に接続される第2のツェナーダイオード(D214)を更に有することを特徴とする、請求項13記載のスイッチモード電源。
【請求項15】
前記一次側スイッチ(T12)のスイッチング閾値の温度を補償する温度補償回路(T111、R126、R127、R128、T112)を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項14のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項16】
一次側回路に二次側電圧をフィードバックする光カプラ(IC10)を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項15のいずれかに記載のスイッチモード電源。
【請求項17】
前記光カプラ(IC10)は、遮断状態では最小電力を伝達することができ、導電状態では最大電力を伝達することができるように接続されることを特徴とする、請求項16記載のスイッチモード電源。
【請求項18】
制御される二次側電圧の一次側回路へのフィードバックに光カプラを用いることによりスイッチモード電源の出力電圧を制御する方法であって、
前記光カプラは、制御される前記二次側電圧が所定の限界値を下回る場合に通電するように制御されることを特徴とする方法。
【請求項19】
出力電流は、補助巻線により伝達される出力電圧に依存するスイッチング周波数を調整することにより制御されることを特徴とする、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−507197(P2007−507197A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519774(P2006−519774)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001924
【国際公開番号】WO2005/008872
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504326505)フリボ モバイル パワー ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】