電流検出装置
【課題】簡易な構成であるにも拘らず外部磁場の影響を効果的に除去できるとともに、組付けが容易で、しかも小型化に好適な電流検出装置を提供する。
【解決手段】磁気シールド40で磁気遮蔽された領域内に、バスバー20に流れる電流値により形成される磁束密度を検出する磁気検出素子52を設け、バスバー20に流れる電流値を検出する電流検出装置10Aであって、外部磁場の影響により磁気検出素子52に作用する磁気的変化を相殺させるために、磁気検出素子52は、バスバー20の近傍の、バスバー20の幅方向の中央部に臨んで設置されているとともに、磁気シールド40は、同一寸法を有する一対のものが、バスバー20を幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で、バスバー20に対して対称的に配置されている。
【解決手段】磁気シールド40で磁気遮蔽された領域内に、バスバー20に流れる電流値により形成される磁束密度を検出する磁気検出素子52を設け、バスバー20に流れる電流値を検出する電流検出装置10Aであって、外部磁場の影響により磁気検出素子52に作用する磁気的変化を相殺させるために、磁気検出素子52は、バスバー20の近傍の、バスバー20の幅方向の中央部に臨んで設置されているとともに、磁気シールド40は、同一寸法を有する一対のものが、バスバー20を幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で、バスバー20に対して対称的に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束密度や磁界の強さを検出することで導電体に流れる電流の検出を行う電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーのターミナルに接続されたハーネスに流れる電流から発生する磁束を検出することにより、バッテリーと車輌電装品との間を流れる電流値を検出することができる電流検出装置が知られている。この電流検出装置は、ブラケット等の治具を用いて車輌の一部に取り付けられている。この電流検出装置の検出孔に前記ハーネスを挿通させることにより、その部分で磁束が検出される。
【0003】
しかしながら、従来の電流検出装置においては、電流検出器を車輌に取り付けるために、ブラケット等の別体の部品を用いる必要がある。このため、部品点数が増加し構成が複雑であった。さらに、可撓性を有するハーネスを検出孔に通す必要があるので、作業性の問題から検出孔を大きくする必要がある。このため、電流検出装置の小型化を図ることが難しかった。
【0004】
そこで、小型化を図るとともに、組立作業性を向上させ、しかも構成が簡単な車輌用電流検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電流検出装置は、図10に示すように、バッテリー100のターミナル101に、バスバー200の一端201をネジ102で締付けて接続させているとともに、電流検出器300をバスバー200に支持させている。また、バスバー200の他端202は、車輌電装品(図示しない)と接続されているハーネス400の端部をかみ締めているターミナル401とネジ402により連結されている。
【0005】
また、この電流検出器300には、図11に示すように、合成樹脂製の検出器本体301内において、バスバー200が貫通する検出孔304を包囲するように磁性体のコア302が固定されており、そのコア302の両端間に位置するようにホール素子303が実装されている。これにより、車輌用電流検出装置を簡単に構成できるとともに、小型化を実現でき、さらに組立作業性の向上を図ることもできる。
【0006】
さらに、例えば特許文献2に記載のような、電流検出装置も提案されている。図12に示すように、この電流検出装置500は、センサ自身の検出精度が高く、かつ隣接するバスバー等、外部からの磁気干渉を避けることができるようにしたコアレス電流センサで構成されている。
【0007】
即ち、この電流検出装置500は、磁気干渉を避けてコアレス電流センサを用いるために、バスバーBUに装着される磁気シールド501と、バスバーBVに装着される磁気シールド502と、バスバーBWに装着される磁気シールド503とを備えている。
【0008】
磁気シールドについては、隣接するバスバーに装着されているコアレス電流センサへの磁気干渉を低減させるために固有の配置を採用している。すなわち、平行に配置されたバスバーBU,BVおよびBWの上において、電流センサSU,SV,SWは各バスバーに沿って交互にずれた位置に配設されている。一方、磁気シールドも、同様に各バスバーに沿って交互にずれた位置に配置されている。換言すれば、この磁気シールドと電流センサの配置はいわゆる千鳥格子配置となっているわけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−272422号公報
【特許文献2】特開2006−112968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の電流検出装置は、下記のような不都合を生じていた。即ち、前述したように、磁束を集めるためのコア302を設置するため、バスバー200が挿通する検出孔304を設け、その検出孔304にバスバー200を挿通させる必要があった。また、バスバー200の形状が複雑であると、上記検出孔304にバスバー200を挿通させるのが難しいので、検出孔304を大きめに形成する必要から、コア302が大型化している。
【0011】
また、特許文献2に記載の電流検出装置にあっては、互いに隣接してバスバーBU,BV,BWが並設されている。従って、これに起因して発生する不要な隣から磁場の影響を受け難い構造とするため、各電流センサSU,SV,SWの配置を交互にするなどの措置が必要である。このため、大型化をもたらすこととなる。その結果、搭載環境やスペースも限定されてしまう。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成であるにも拘らず外部磁場の影響を効果的に除去できるとともに、組付けが容易で、しかも小型化に好適な電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電流検出装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 磁気遮蔽体で磁気遮蔽された領域内に、導電体に流れる電流値により形成される磁束密度若しくは磁界の強さを検出する磁気検出素子を設け、前記導電体に流れる電流値を、前記磁気検出素子で検出する電流検出装置であって、
前記磁気検出素子は、前記導電体の近傍の、導電体の幅方向の中央部に臨んで設置されているとともに、
前記磁気遮蔽体は、同一寸法を有する一対のものが、前記導電体の幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で、導電体に対して対称に対向配置されている、
こと。
(2) 上記(1)の構成の電流検出装置において、
前記導電体は、幅広板状のバスバーであって、
周囲が壁面で囲設されてセンサを収容するセンサ室を有し、前記バスバーの一方の面に底面が臨む、非磁性体で形成されたハウジングをさらに備え、
前記磁気遮蔽体は、前記ハウジングのセンサ室の互いに対向する両壁面に、前記バスバーの幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で対称的に設けた同一形状を有する一対の磁性板で構成され、
前記センサ室内の前記バスバー幅方向の横断面における磁界は、前記磁気検出素子を中心として対称的な分布パターンで生成される
こと。
(3) 上記(1)又は(2)の構成の電流検出装置において、
前記磁気検出素子は、前記センサ室内の前記バスバーの一方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第1センサと、前記バスバーの他方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第2センサとを有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記バスバーの厚さ方向の中心位置を基準として上下対称的に配置されている
こと。
【0014】
上記(1)の構成の電流検出装置によれば、簡易な構成であるにも拘らず外部磁場の影響を効果的に除去できるとともに、組付けが容易で、しかも小型化に好適な電流検出装置が実現できる。
上記(2)の構成の電流検出装置によれば、センサ室内のバスバーの幅方向の横断面における磁束密度若しくは磁界の強さは、磁気検出素子を中心として上下及び左右に対称的に生成されている。このため、外部磁場の影響を受けた場合に、磁束密度若しくは磁界の強さの乱れからこれを見出し易い。その結果、この外部磁場が作用していることを見逃すことがなく確実な除去が可能となる。
上記(3)の構成の電流検出装置によれば、双方のセンサからの出力を加算することで、外部磁場による磁場の乱れの影響を容易にかつ確実に相殺でき、延いては精度の高い電流検出が可能となる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る電流検出装置の構成を示す一部破断させた分解斜視図である。
【図2】図2(A)は図1における電流検出装置の平面図、図2(B)は図2(A)の要部を示すIIB−IIB線断面図である。
【図3】図3(A)は図1における電流検出装置での磁界などの作用を示す磁力分布図、図3(B)は図3(A)のIIIB−IIIB線矢視断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る電流検出装置における磁界の作用などを示す磁力分布図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る電流検出装置の構成を示す一部破断させた分解斜視図である。
【図6】図6(A)は図5における電流検出装置の平面図、図6(B)は図6(A)の要部を示すVIB−VIB線断面図である。
【図7】図7(A)は図5における電流検出装置での磁界などの作用を示す磁力分布図、図7(B)は図7(A)のVIIB−VIIB線矢視断面図である。
【図8】図8は、図5の電流検出装置に外部磁場が作用したときの状態を示す説明図である。
【図9】図9は、図5の電流検出装置の各センサからの出力電圧の変化を示すグラフであって、図9(A)及び図9(B)はそれぞれ第1センサ及び第2センサにおける出力状態の変化を示す。
【図10】図10は、従来の電流検出装置の全体を示す側面図である。
【図11】図11は、図10における電流検出装置の要部を示す正面図である。
【図12】図12は、従来の他の電流検出装置の全体的な配置構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1及び図2に示す本実施形態の電流検出装置10Aは、幅広の導電体であるバスバー20と、コネクタ連結部αと検出部βを構成するハウジング30と、磁気遮蔽体を構成する磁気シールド40と、センサ本体50と、を備えている。
【0018】
検出部βにおいて、センサ本体50の一部を構成する基板51上には、バスバー20から発生する磁界を検出する磁気検出素子52を有している。この磁気検出素子52を用いることで、検出した磁束密度(なお、磁気誘導でも同義であるが、ここでは、磁束密度Bに呼称を統一する。)、若しくは磁界の強さHに基づき、バスバー20に流れる電流Iの値を算出する。なお、ハウジング30のセンサ室32内に、この磁気検出素子52を実装する基板51が設置されている。本発明での電流の算出にあっては、本実施形態での磁束密度Bの替わりに、周知のマクスウェル方程式での補助式である、B=μH(但し、μ;透磁率)にて磁束密度Bと一意に対応している、上述の磁界の強さHを用いてもよい。
【0019】
この磁気検出素子52は、図1に示すバスバー20での電流Iの流れに対して、この電流Iの周囲を回るように発生する磁束Φを検出するものであり、本実施形態の場合、従来のものと同様の構成となっている。即ち、本実施形態の磁気検出素子52は、バスバー20に流れる電流Iの磁束密度Bを検出する平面方向(つまり、X−Y面)に配置してあり、バスバー20の平面に垂直なZ方向の磁束は検出しない。
【0020】
即ち、これは、幅広形状を有するバスバー20のX−Y平面に垂直なZ方向については、磁気検出素子52の配置及び構成上、磁束にほとんど変化がない。つまり、これを検出できない方向となっている。このような事情から、磁気検出素子52を備えた基板51の上方は構造的に開放された状態であるが、これが本実施形態の磁気検出に悪影響をもたらすことはない。
【0021】
本実施形態の磁気検出素子52には、ホール効果を利用したホール素子を用いており、例えば(バスバー20を流れる電流Iの強さに応じて発生する)磁束密度Bに比例した出力電圧Vを出力する。
【0022】
バスバー20は、一方の端部(図2では左端部)が車両電装品を連結するためのハーネス(図示せず)の一端部に取り付けられるとともに、他方の端部(図2では右端部)が図示外のバッテリーのターミナルに取り付けられる。このバスバー20は、図1および図2に示すように、両端部側にネジ止め用の孔21、22が開口されており、例えば孔21を利用してバッテリーのターミナル(ショートを避けるために、図示外のマイナス側のターミナルに連結させてある)との間をボルトやネジで止め付けるとともに、孔22を利用してハーネスの一端部との間をボルトやネジで止め付ける。
【0023】
また、この実施形態のバスバー20には、ネジ止め用の孔21、22間であって一方の孔22寄りの位置に、ネジ挿入孔23が、バスバー20の上面から下面にかけて貫通するよう形成されている。このネジ挿入孔23は、図2(A)に示すような合成樹脂のネジSを挿入するためのものであって、上述の孔21、22よりも小径であり、後述のネジSの軸部が挿入可能なサイズ、形態(通常、丸形)とされる。また、バスバー20の四隅近傍の側縁部には、図1に示すような起立片24が上(Z)方向に向けて直立状態で突設されており、ハウジング30の対応部分に形成されたスリット33に嵌挿されることで、仮止めされる。
【0024】
この実施形態のハウジング30は、非磁性材で熱溶融後に固化する合成樹脂材料により一体成形したものであって、バッテリー寄り(図2では右側)の端部側から、順に、前記コネクタ連結部αおよび検出部βとされている。なお、これらの各両側面を、第1側面30Aおよび第2側面30Bと呼ぶことにする。
【0025】
コネクタ連結部αは、信号線Lに取り付けてある図示外のコネクタを連結させるためのものであり、本実施形態では周囲四方向が立壁で囲まれた部屋(以下、コネクタ室31)がコネクタを構成している。なお、この信号線Lは、後述する検出部βの磁気検出素子52で検出する磁束密度Bの大きさに応じた電気信号を図示外の制御IC部などへ伝達させるためのものである。
【0026】
検出部βは、周囲四方向を壁で囲まれたセンサ室32内に基板51を設置しており、この基板51上に、正しくは基板51の裏面に磁気検出素子52を実装している。この磁気検出素子52を実装している基板51は、全体が図示外の合成樹脂等の絶縁被覆によって気密的、水密的に被われる。これにより磁気検出素子52を含む電子回路への湿気の侵入や外部部品等との干渉を回避可能にしている。
【0027】
また、検出部βは、ハウジング30の第2側面30Bの部分に磁気シールド40が下方から収容される。具体的には、各第2側面30Bの細溝孔35内部に装着される。即ち、ハウジング30の検出部βの両側の第2側面30Bには、上下に貫通する上述の細溝孔35が設けられている。これらの細溝孔35の長さおよび幅は後述の磁気シールド40がそれぞれ挿入可能なサイズとなっている。
【0028】
一方、ハウジング30の他端部には、図1および図2に示すような略円柱状のボス部34が突設されており、このボス部34の略中心部内には、ハウジング30の下面に向かって開口する穴34Aが形成されている。この穴34A内には図2に示すような合成樹脂製の前記ネジSが下方からねじ込み可能になっている。
【0029】
これにより、磁気シールド40およびバスバー20は、金属材料からなる加締部などの突出部を持たず合成樹脂製のネジSを用いてハウジング30に装着できる。このため、磁気ヒステリシスの安定化およびこれによる磁気検出および電流検出の精度を向上させることができる。
【0030】
磁気シールド40は、適宜の磁性材料によって形成された適宜の厚さ及び大きさを有する磁性板で構成されており、特に、同一寸法(特に高さH1)及び同一厚さを有する2枚のもので構成されている。この磁気シールド40は、前述したように、ハウジング30の検出部βおよびバスバー20の周囲を外から覆うような状態でハウジング30に外装され、磁気遮蔽する。
【0031】
具体的には、この磁気シールド40が、ハウジング30の検出部βの両側面部において、特に第2側面30Bの細溝孔35に挿入させることで、図3に示すように、バスバー20の幅(Y)方向に関して、磁気検出素子52及びバスバー20を取り囲む。これにより、バスバー20が形成する磁場について磁気遮蔽を行う。また、これと同時に、電流検出装置10Aの近傍周辺に設置されている各種電装品などから発生する磁場が磁気検出素子52に悪影響を及ぼさないように、外部磁場の磁気遮蔽も行う。
【0032】
なお、各磁気シールド40には、図3に示すように、磁路Mが内部に形成されるとともに、それぞれの磁気シールド40の下端40D及び上端40Uの周辺には、特に対応する端部どうしの間に磁束Φが所定の分布パターンで形成される。
【0033】
従って、本実施形態に係る車両内の電流検出装置10Aによれば、磁気シールド40が設けられており、この磁気シールド40による電磁遮蔽効果が確保されていることで、外部からの電磁気的な悪影響を抑えるものであり、バスバー20を流れる電流を磁気検出素子52によって正確に検出することができる。
【0034】
この結果、磁気検出素子52として用いているホール素子の周囲に外部磁場が発生する場合や、近くにリレーやモータが設置されているような場合でも、磁気シールド40の電磁遮蔽作用によって、その影響を回避できる。つまり、そのリレーやモータから発生する磁界が原因となって正確な磁気検出動作が妨げられるのを回避できる。また、車両走行時の環境の影響として、地磁気や高圧電線の影響なども有効に回避できる。
【0035】
また、本実施形態によれば、ハウジング30に磁気シールド40を一端側から嵌挿させて固定することによって、磁気シールド40とハウジング30に装着されたバスバー20との組付け上の位置決めを簡単に行うことができる。その結果、磁気シールド40のバスバー20およびハウジング30に対する取付作業を効率化できる。
【0036】
次に、本発明の電流検出のための磁気検出素子52の作用について、図3を参照しながら説明する。
本実施形態の電流検出装置10Aでは、図3に示すように、バスバー20に電流Iが流れると、周知のようにアンペールの法則、特に右ネジの法則に従ってそのバスバー20の周囲に、電流Iの流れに沿った右回りの磁力線を有する磁場が形成される。
【0037】
一方、本実施形態の電流検出装置10Aには、平板状の磁性板一対から構成された磁気シールド40が、バスバー20の幅方向であるこの両側を囲設する状態で設置されている。このため、図3(A)に模式的に示すように、磁気シールド40内部には磁路Mが形成される。
【0038】
このように、各磁気シールド40には、磁路Mが形成されるのと同時に、前述したように、それぞれの磁気シールド40の下端40D及び上端40Uには、対応する相手側の端部との間に磁力線の流れの束であるフラックス、つまり磁束Φが所定の分布パターンで形成される。
【0039】
特に、バスバー20の幅方向の中央部で、かつ、各磁気シールド40の上端40Uよりも下方寄りに設置されている磁気検出素子52には、その厚さ(Z)方向に対して直交する水平(−Y)方向に磁束Φが貫通する。これにより、磁気検出素子52を構成しているホール素子では、磁束密度Bに対応するホール電場(電界の強さE)が生成され、これに対応してバスバー20における電流Iを検出することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の電流検出装置10Aでは、磁気シールド40が平板状のもの一対から構成されており、通常の断面略コ字形を有する磁気シールドのものに比して、実質的にその中央部を欠損させた構造である。従って、大型で大電流が流れる構造の幅広のバスバーに対してその電流検出を行うような構成とした場合には、幅広のバスバーに対応して幅広にさせる必要がない。つまり、狭い幅のバスバーにおける小電流検出の場合と同じ寸法の磁気シールド40が使用可能となるわけである。しかも、ハウジング30に対して磁気シールド40の組み付けが容易である。
【0041】
従って、本実施形態の電流検出装置10Aによれば、従来の断面略コ字形を有する磁気シールドを使用した電流検出装置に比べて、例えば凡そ2倍の±600Aまでの電流検出が可能となる。しかも、断面略コ字形の磁気シールを使用する場合に比べて、加工が容易になるとともに軽量化が可能となり、さらにコスト削減が図れる。また、設置スペースの削減や搭載環境の制約が緩和される。
【0042】
また、大電流化の傾向に伴って、従来は断面略コ字形を有する磁気シールドの大型化も避けられなかったが、本実施形態によれば、大電流の検出を行う場合であっても、小型化が可能となるばかりか、低コスト化が実現可能となる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態について、図4を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の電流検出装置は、互い隣接して平行配置された複数のバスバー、ここでは2つのバスバー201,202の電流値を、第1の実施形態の電流検出装置10Aと同じ材質、形状などのもの、即ち、ともに同じ大きさなどを有する電流検出装置10A1及び電流検出装置10A2を互いに隣接して並設させてある。
【0044】
特に、センサ室である磁気検出素子521,522を両側から囲設するように配置する各磁気シールド40R1,40L1と40R2,40L2とについては、バスバー201,202に対して対称的に配置されている。即ち、これは、外部磁場の影響により互いに対手側の磁気検出素子に作用する磁気的変化を相殺させるためである。
【0045】
また、各磁気検出素子である磁気検出素子521,522については、バスバー201,202の近傍で、特にバスバー201,202の幅方向の中央部に対応する位置に設置されている。
【0046】
即ち、本実施形態では、従来のような各電流検出装置を互い違いに配置する構成とは異なり、各電流検出装置10A1,10A2を各バスバー201,202の幅方向に沿って横並びに2連配置した構成となっている。
【0047】
このように並設された電流検出装置10A1,10A2によって、互いに隣接するバスバー20が形成する外部磁界の影響を抑止しながら、精度よく電流値を検出するように構成されている。なお、ここでの外部磁界の影響とは、互いに隣接するバスバー201,202が相手側へ及ぼす、磁界の相互干渉による悪影響のことである。
【0048】
また、本実施形態では、各電流検出装置10A1,10A2の磁気遮蔽体である磁気シールドのうち、互いに相手側の磁気シールドに隣接する、即ち、磁気シールド40R1と40L2との間の隙間の中央位置に、磁性板である磁性体40Mを別に設けて介在させてある。これによって、互いに隣接する相手側からの磁気遮蔽効果を増大させる、換言すれば、外部磁界耐性が補強的に付与されるように構成してある。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
i)2つのバスバー201,202に、同一方向で、かつ、同一若しくはほぼ同じ大きさの電流が流れている場合:
この場合には、磁気シールド40R1と40L2の付近には、互いに反対方向で、かつ、同一若しくはほぼ同じ大きさの磁界が形成されているので、互いに相手側へ影響を及ぼす磁束Φが相殺される。その結果、各電流検出装置10A1,10A2でのそれぞれのバスバー201,202の電流値を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
ii)2つのバスバー201,202に、同一方向で、かつ、大きさが大幅に異なる電流が流れている場合:
この場合にも、磁気シールド40R1と40L2との間の隙間の中央位置に、磁性板である磁性体40Mを介在させて外部磁界耐性を付与しており、特に大電流の流れる方のバスバーからの磁界をその磁性体40Mで磁気遮蔽することができる。
従って、バスバーに小電流が流れる電流検出装置のセンサ室である、一対の磁気シールドの間の空間への、大電流が流れるバスバーからの外部磁界の影響を抑制できる。その結果、各電流検出装置10A1,10A2により、それぞれのバスバー201,202の電流値を精度よく検出可能となる。
【0051】
また、複数のバスバーが隣接状態で設置されている場合、従来の各電流検出装置では、電流路上での配置スペースとして、センサ寸法の2倍以上の領域が必要であった。一方、本実施形態では、従来の半分のスペース、つまりセンサと同等の寸法の領域が必要となるにとどまる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、各電流検出装置10A1,10A2を各バスバー201,202の幅方向に沿って横並びに2連配置した構成となっている。また、特に、各磁気シールド40R1,40L1と40R2,40L2とについては、バスバー201,202に対して対称的に配置されている。即ち、これは、相互干渉による外部磁場の悪影響により互いに対手側の磁気検出素子に作用する磁気的変化を、相殺させるためである。従って、従来のような各電流検出装置を態々互い違いに配置する構成とすることが必要ないわけである。
【0053】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る第3の実施形態に係る電流検出装置10Bについて、図5乃至図9を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0054】
本実施形態の電流検出装置10Bは、第1の実施形態の電流検出装置10Aと異なり、バスバー20の上下位置に、センサ本体50の第1センサを構成する磁気検出素子52A及び第2センサを構成する磁気検出素子52Bが配置されている。また、本実施形態では、これらの磁気検出素子52A及び52Bをハウジング30´の上下に配置させるため、これらをそれぞれ実装した基板51A,51Bをハウジング30´の上下にそれぞれ取り付けてある。また、磁気シールド40´の大きさについても、第1の実施形態のものとは、高さ方向の寸法が若干異なる。
【0055】
ハウジング30´には、図6(B)に示すように、バスバー20の下面側に磁気検出素子52Bを実装する基板51Bが設置されるようにするため、上側のセンサ室32Aと同様のセンサ室32Bを形成してある。なお、磁気検出素子52Bは、基板51Bに対して上面に実装されている。
【0056】
磁気シールド40´については、図7に示すように、第1の実施形態の磁気シールド40と同様の一対の磁性板で構成されているが、上下の磁気検出素子52A,52Bが外部磁場から磁気遮蔽できるような高さ寸法H2を有する。
【0057】
即ち、磁気シールド40´は、外側の不要な磁界に対する、各磁気検出素子52A,52Bでの磁気遮蔽特性を同一にさせるため、各磁気検出素子52A,52Bに対し、バスバー20の高さ(Z)方向の中心位置Oからの遮蔽高さを同一になるように配置してある。つまり、バスバー20の中心位置Oから同一距離h1だけ離間した各磁気検出素子52A,52Bに対して、磁気シールド40´がそれぞれ同じ高さh2まで磁気遮蔽している。
【0058】
次に、本実施形態の電流検出のための磁気検出素子52A,52Bの作用について、特に図7乃至図9を参照しながら説明する。
本実施形態の電流検出装置10Bでは、図7に示すように、バスバー20に電流Iが流れると、第1の実施形態の場合と同様に、右ネジの法則に従ってそのバスバー20の周囲に、電流Iの流れに沿った右回りの磁力線を有する磁界が形成される。
【0059】
即ち、本実施形態の電流検出装置10Bには、平板状の磁性板一対から構成された磁気シールド40´が、バスバー20の幅(Y)方向であるこの両側を囲設する状態で設置されている。このため、図7(A)に模式的に示すように、磁気シールド40´にも第1の実施形態のときと同様の磁路Mが形成される。
【0060】
このように、各磁気シールド40´には、磁路Mが形成されるのと同時に、それぞれの磁気シールド40´の下端40´D及び上端40´Uには、第1の実施形態の場合と同様に、対応する端部どうしの間に例えば図7で示すような磁束Φが所定の分布パターンで形成される。なお、この図7では、典型的な磁束のパターンを記載してあるが、このパターンには限定されるものではない。
【0061】
特に、バスバー20の幅方向の中央部の直上で、かつ、各磁気シールド40´の上端40´Uよりも下方寄りに設置されている磁気検出素子52Aには、バスバー20の電流に伴い、その厚さ(Z)方向に対して直交する水平(−Y)方向に磁束Φが貫通する。従って、この磁気検出素子52Aには、バスバー20からの電流に伴う固有の分布パターンに生成された磁束密度Bが作用する。
【0062】
即ち、磁気検出素子52Aを構成しているホール素子では、磁束密度Bの大きさに対応する強さのホール電場(即ち、電界の強さ)が生成され、この大きさに対応した出力電圧Vが得られる。そして、予め決定されているこの出力電圧Vとバスバー20の電流値iとの関係を示す適宜の関係式や対応表(テーブル)などから、バスバー20の電流値を検出できる。
【0063】
一方、磁気検出素子52Bにもこれと同様の作用が生じる。つまり、バスバー20の幅方向の中央部の直下で、かつ、各磁気シールド40´の下端40´Dよりも上方寄りに設置されている磁気検出素子52Bには、その厚さ(Z)方向に対して直交する水平(−Y)方向に磁束Φが貫通する。従って、この磁気検出素子52Bには、バスバー20からの電流Iに伴う磁束密度Bが作用するので、磁束密度Bの大きさに対応する強さのホール電場(電界の強さE)が生成され、最終的に、この大きさに対応したバスバー20の電流値を検出できる。
【0064】
ところで、本実施形態では、磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bが、バスバー20に対して上下対称的に配置されている。従って、電流検出装置10Bに外部磁場が作用しない状況のときには、磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bで検出する電流値が、理論上同一値であることが予想される。しかしながら、これら双方の磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bにより検出する電流値が異なる場合には、何らかの外部磁場が作用していることが予想される。
【0065】
このような場合であっても、本実施形態の電流検出装置10Bによれば、図8に示す外部磁場Cの影響を除去した精度の高い電流値が検出できる。
即ち、同図に示すように、外部磁場が作用していない場合には、磁気検出素子52A及び52Bが、上下対称配置にある関係上、磁束密度Bの大きさは同じであって、貫通する磁束Φの方向のみが逆である。
【0066】
従って、磁気検出素子52A及び52Bに外部磁場Cが作用する場合には、その外部磁場Cに対応する分だけホール電場(即ち、電界の強さ)に変化、変動が出現する。つまり、図9(A)、(B)のように磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bに外部磁場が作用していないときに出力電圧のグラフA1、B1(実線部分)であるとする。一方、均一の外部磁場が作用すると、磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bからの出力電圧のグラフA2,B2(一点鎖線部分)に示すように、互いに反対方向にシフトする。その結果、外部磁場Cによる磁束密度Bの変化に比例した出力電圧Vの変化ΔVを受け、この変化ΔVを反映した出力電圧を出力する。
【0067】
但し、外部磁場Cが磁気検出素子52A及び52Bに均一に作用する場合には、磁気検出素子52A及び52Bからの出力電圧Vの変化は±ΔVとなって、符号のみが異なり絶対値が同一となる。従って、双方の出力電圧を加算するとキャンセルされる。即ち、
【数1】
となる。
従って、この平均値を求めることで、バスバー20の電流値が算出可能となる。
【0068】
なお、各センサ、つまり磁気検出素子52A及び52Bの出力関係については、以下の[表1]を参照されたい。
【0069】
【表1】
【0070】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、磁気検出素子が2つ必要となるが、この2つの磁気検出素子52A及び52Bをバスバー20の位置を基準として上下対称配置すれば、外部磁界を都合よくキャンセルできる。その結果、検出対象の電線やマグネット以外の外部磁場の存在する場所であっても、その影響を除去して精度の高い電流検出が可能となる。
【0071】
なお、本実施形態のような2つの磁気検出素子が対称配置された構成の場合であっても、磁気シールドが従来のような断面略コ字形のものを用いた場合には、外部磁界をキャンセルできないことに留意されたい。
【0072】
また、本実施形態によれば、各磁気シールド40´である磁性板については、同一材料で形成した同一寸法を有するものを一対用意してバスバー20に対して対称配置させてあればよい。従って、従来のような形状、厚さ、材質などの検討が不要である。
【0073】
なお、本発明では、本実施形態を敷衍することにより、磁気シールドを設けていなくても、バスバーに対して上述のような対称配置の各磁気シールドを設置しておき、出力電圧に対して上述のような演算を行うことで、精度の高い電流検出が可能となる。その結果、基本的には、バスバーと2つの磁気検出素子があればよいので、磁気シールドが設置不要となる分、大幅な小型化、軽量化、コストの削減などが可能となる。
【0074】
このように、本発明の電流検出装置では、磁気シールドが平板状のもの一対から構成されており、通常の断面略コ字形を有する磁気シールドのものに比して、実質的にその中央部を欠損させた構造である。従って、大型で大電流が流れる構造の幅広のバスバーに対してその電流検出を行うような構成とした場合には、幅広のバスバーに対応して幅広にさせる必要がない。つまり、狭い幅のバスバーにおける小電流検出の場合と同じ寸法の磁気シールドが使用可能となる。
【0075】
従って、本発明の電流検出装置によれば、薄板状の同一寸法の磁気遮蔽体を一対用いてこれを対称配置させた簡易な構成のもので、従来の断面略コ字形を有する磁気シールドを使用した電流検出装置に比べて、例えば凡そ2倍の±600Aまでの電流検出が可能となる。しかも、従来の断面略コ字形を有する磁気シールドでは、大電流検出の際に厚さを増大させる必要があるが、本発明ではその必要がなく、軽量なもので大電流検出が可能となる。
【0076】
なお、本発明の電流検出装置は、これらの実施形態のような車両内のシステムの一部としての適用に限定されるものではなく、例えばバスバーなどを備えたものであれば、各種分野での電流検出装置としての適用が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10A,10A1,10A2,10B 電流検出装置
20 バスバー(導電体)
23 ネジ挿入孔
24 起立片
30 ハウジング
30B 第2側面
31 コネクタ室
32、32A、32B センサ室
35 細溝孔
40、40´ 磁気シールド(磁気遮蔽体)
40D (磁気シールドの)下端
40M 磁性体
40U、40´U (磁気シールドの)上端
50 センサ本体
51 基板
52 磁気検出素子
52A 第1センサ(磁気検出素子)
52B 第2センサ(磁気検出素子)
A1 第1センサに外部磁場が作用していないときのグラフ
A2 第1センサに外部磁場が作用したときのグラフ
B 磁束密度(磁気誘導)
B1 第2センサに外部磁場が作用していないときのグラフ
B2 第2センサに外部磁場が作用したときのグラフ
H 磁界の強さ
H1,H2 磁気シールド(磁気遮蔽体)の高さ
h1 バスバー(導電体)からセンサまでの高さ
M 磁路
S 合成樹脂のネジ
α コネクタ連結部
β 検出部
Φ 磁束
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束密度や磁界の強さを検出することで導電体に流れる電流の検出を行う電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーのターミナルに接続されたハーネスに流れる電流から発生する磁束を検出することにより、バッテリーと車輌電装品との間を流れる電流値を検出することができる電流検出装置が知られている。この電流検出装置は、ブラケット等の治具を用いて車輌の一部に取り付けられている。この電流検出装置の検出孔に前記ハーネスを挿通させることにより、その部分で磁束が検出される。
【0003】
しかしながら、従来の電流検出装置においては、電流検出器を車輌に取り付けるために、ブラケット等の別体の部品を用いる必要がある。このため、部品点数が増加し構成が複雑であった。さらに、可撓性を有するハーネスを検出孔に通す必要があるので、作業性の問題から検出孔を大きくする必要がある。このため、電流検出装置の小型化を図ることが難しかった。
【0004】
そこで、小型化を図るとともに、組立作業性を向上させ、しかも構成が簡単な車輌用電流検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電流検出装置は、図10に示すように、バッテリー100のターミナル101に、バスバー200の一端201をネジ102で締付けて接続させているとともに、電流検出器300をバスバー200に支持させている。また、バスバー200の他端202は、車輌電装品(図示しない)と接続されているハーネス400の端部をかみ締めているターミナル401とネジ402により連結されている。
【0005】
また、この電流検出器300には、図11に示すように、合成樹脂製の検出器本体301内において、バスバー200が貫通する検出孔304を包囲するように磁性体のコア302が固定されており、そのコア302の両端間に位置するようにホール素子303が実装されている。これにより、車輌用電流検出装置を簡単に構成できるとともに、小型化を実現でき、さらに組立作業性の向上を図ることもできる。
【0006】
さらに、例えば特許文献2に記載のような、電流検出装置も提案されている。図12に示すように、この電流検出装置500は、センサ自身の検出精度が高く、かつ隣接するバスバー等、外部からの磁気干渉を避けることができるようにしたコアレス電流センサで構成されている。
【0007】
即ち、この電流検出装置500は、磁気干渉を避けてコアレス電流センサを用いるために、バスバーBUに装着される磁気シールド501と、バスバーBVに装着される磁気シールド502と、バスバーBWに装着される磁気シールド503とを備えている。
【0008】
磁気シールドについては、隣接するバスバーに装着されているコアレス電流センサへの磁気干渉を低減させるために固有の配置を採用している。すなわち、平行に配置されたバスバーBU,BVおよびBWの上において、電流センサSU,SV,SWは各バスバーに沿って交互にずれた位置に配設されている。一方、磁気シールドも、同様に各バスバーに沿って交互にずれた位置に配置されている。換言すれば、この磁気シールドと電流センサの配置はいわゆる千鳥格子配置となっているわけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−272422号公報
【特許文献2】特開2006−112968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の電流検出装置は、下記のような不都合を生じていた。即ち、前述したように、磁束を集めるためのコア302を設置するため、バスバー200が挿通する検出孔304を設け、その検出孔304にバスバー200を挿通させる必要があった。また、バスバー200の形状が複雑であると、上記検出孔304にバスバー200を挿通させるのが難しいので、検出孔304を大きめに形成する必要から、コア302が大型化している。
【0011】
また、特許文献2に記載の電流検出装置にあっては、互いに隣接してバスバーBU,BV,BWが並設されている。従って、これに起因して発生する不要な隣から磁場の影響を受け難い構造とするため、各電流センサSU,SV,SWの配置を交互にするなどの措置が必要である。このため、大型化をもたらすこととなる。その結果、搭載環境やスペースも限定されてしまう。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成であるにも拘らず外部磁場の影響を効果的に除去できるとともに、組付けが容易で、しかも小型化に好適な電流検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電流検出装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 磁気遮蔽体で磁気遮蔽された領域内に、導電体に流れる電流値により形成される磁束密度若しくは磁界の強さを検出する磁気検出素子を設け、前記導電体に流れる電流値を、前記磁気検出素子で検出する電流検出装置であって、
前記磁気検出素子は、前記導電体の近傍の、導電体の幅方向の中央部に臨んで設置されているとともに、
前記磁気遮蔽体は、同一寸法を有する一対のものが、前記導電体の幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で、導電体に対して対称に対向配置されている、
こと。
(2) 上記(1)の構成の電流検出装置において、
前記導電体は、幅広板状のバスバーであって、
周囲が壁面で囲設されてセンサを収容するセンサ室を有し、前記バスバーの一方の面に底面が臨む、非磁性体で形成されたハウジングをさらに備え、
前記磁気遮蔽体は、前記ハウジングのセンサ室の互いに対向する両壁面に、前記バスバーの幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で対称的に設けた同一形状を有する一対の磁性板で構成され、
前記センサ室内の前記バスバー幅方向の横断面における磁界は、前記磁気検出素子を中心として対称的な分布パターンで生成される
こと。
(3) 上記(1)又は(2)の構成の電流検出装置において、
前記磁気検出素子は、前記センサ室内の前記バスバーの一方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第1センサと、前記バスバーの他方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第2センサとを有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記バスバーの厚さ方向の中心位置を基準として上下対称的に配置されている
こと。
【0014】
上記(1)の構成の電流検出装置によれば、簡易な構成であるにも拘らず外部磁場の影響を効果的に除去できるとともに、組付けが容易で、しかも小型化に好適な電流検出装置が実現できる。
上記(2)の構成の電流検出装置によれば、センサ室内のバスバーの幅方向の横断面における磁束密度若しくは磁界の強さは、磁気検出素子を中心として上下及び左右に対称的に生成されている。このため、外部磁場の影響を受けた場合に、磁束密度若しくは磁界の強さの乱れからこれを見出し易い。その結果、この外部磁場が作用していることを見逃すことがなく確実な除去が可能となる。
上記(3)の構成の電流検出装置によれば、双方のセンサからの出力を加算することで、外部磁場による磁場の乱れの影響を容易にかつ確実に相殺でき、延いては精度の高い電流検出が可能となる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る電流検出装置の構成を示す一部破断させた分解斜視図である。
【図2】図2(A)は図1における電流検出装置の平面図、図2(B)は図2(A)の要部を示すIIB−IIB線断面図である。
【図3】図3(A)は図1における電流検出装置での磁界などの作用を示す磁力分布図、図3(B)は図3(A)のIIIB−IIIB線矢視断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る電流検出装置における磁界の作用などを示す磁力分布図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る電流検出装置の構成を示す一部破断させた分解斜視図である。
【図6】図6(A)は図5における電流検出装置の平面図、図6(B)は図6(A)の要部を示すVIB−VIB線断面図である。
【図7】図7(A)は図5における電流検出装置での磁界などの作用を示す磁力分布図、図7(B)は図7(A)のVIIB−VIIB線矢視断面図である。
【図8】図8は、図5の電流検出装置に外部磁場が作用したときの状態を示す説明図である。
【図9】図9は、図5の電流検出装置の各センサからの出力電圧の変化を示すグラフであって、図9(A)及び図9(B)はそれぞれ第1センサ及び第2センサにおける出力状態の変化を示す。
【図10】図10は、従来の電流検出装置の全体を示す側面図である。
【図11】図11は、図10における電流検出装置の要部を示す正面図である。
【図12】図12は、従来の他の電流検出装置の全体的な配置構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1及び図2に示す本実施形態の電流検出装置10Aは、幅広の導電体であるバスバー20と、コネクタ連結部αと検出部βを構成するハウジング30と、磁気遮蔽体を構成する磁気シールド40と、センサ本体50と、を備えている。
【0018】
検出部βにおいて、センサ本体50の一部を構成する基板51上には、バスバー20から発生する磁界を検出する磁気検出素子52を有している。この磁気検出素子52を用いることで、検出した磁束密度(なお、磁気誘導でも同義であるが、ここでは、磁束密度Bに呼称を統一する。)、若しくは磁界の強さHに基づき、バスバー20に流れる電流Iの値を算出する。なお、ハウジング30のセンサ室32内に、この磁気検出素子52を実装する基板51が設置されている。本発明での電流の算出にあっては、本実施形態での磁束密度Bの替わりに、周知のマクスウェル方程式での補助式である、B=μH(但し、μ;透磁率)にて磁束密度Bと一意に対応している、上述の磁界の強さHを用いてもよい。
【0019】
この磁気検出素子52は、図1に示すバスバー20での電流Iの流れに対して、この電流Iの周囲を回るように発生する磁束Φを検出するものであり、本実施形態の場合、従来のものと同様の構成となっている。即ち、本実施形態の磁気検出素子52は、バスバー20に流れる電流Iの磁束密度Bを検出する平面方向(つまり、X−Y面)に配置してあり、バスバー20の平面に垂直なZ方向の磁束は検出しない。
【0020】
即ち、これは、幅広形状を有するバスバー20のX−Y平面に垂直なZ方向については、磁気検出素子52の配置及び構成上、磁束にほとんど変化がない。つまり、これを検出できない方向となっている。このような事情から、磁気検出素子52を備えた基板51の上方は構造的に開放された状態であるが、これが本実施形態の磁気検出に悪影響をもたらすことはない。
【0021】
本実施形態の磁気検出素子52には、ホール効果を利用したホール素子を用いており、例えば(バスバー20を流れる電流Iの強さに応じて発生する)磁束密度Bに比例した出力電圧Vを出力する。
【0022】
バスバー20は、一方の端部(図2では左端部)が車両電装品を連結するためのハーネス(図示せず)の一端部に取り付けられるとともに、他方の端部(図2では右端部)が図示外のバッテリーのターミナルに取り付けられる。このバスバー20は、図1および図2に示すように、両端部側にネジ止め用の孔21、22が開口されており、例えば孔21を利用してバッテリーのターミナル(ショートを避けるために、図示外のマイナス側のターミナルに連結させてある)との間をボルトやネジで止め付けるとともに、孔22を利用してハーネスの一端部との間をボルトやネジで止め付ける。
【0023】
また、この実施形態のバスバー20には、ネジ止め用の孔21、22間であって一方の孔22寄りの位置に、ネジ挿入孔23が、バスバー20の上面から下面にかけて貫通するよう形成されている。このネジ挿入孔23は、図2(A)に示すような合成樹脂のネジSを挿入するためのものであって、上述の孔21、22よりも小径であり、後述のネジSの軸部が挿入可能なサイズ、形態(通常、丸形)とされる。また、バスバー20の四隅近傍の側縁部には、図1に示すような起立片24が上(Z)方向に向けて直立状態で突設されており、ハウジング30の対応部分に形成されたスリット33に嵌挿されることで、仮止めされる。
【0024】
この実施形態のハウジング30は、非磁性材で熱溶融後に固化する合成樹脂材料により一体成形したものであって、バッテリー寄り(図2では右側)の端部側から、順に、前記コネクタ連結部αおよび検出部βとされている。なお、これらの各両側面を、第1側面30Aおよび第2側面30Bと呼ぶことにする。
【0025】
コネクタ連結部αは、信号線Lに取り付けてある図示外のコネクタを連結させるためのものであり、本実施形態では周囲四方向が立壁で囲まれた部屋(以下、コネクタ室31)がコネクタを構成している。なお、この信号線Lは、後述する検出部βの磁気検出素子52で検出する磁束密度Bの大きさに応じた電気信号を図示外の制御IC部などへ伝達させるためのものである。
【0026】
検出部βは、周囲四方向を壁で囲まれたセンサ室32内に基板51を設置しており、この基板51上に、正しくは基板51の裏面に磁気検出素子52を実装している。この磁気検出素子52を実装している基板51は、全体が図示外の合成樹脂等の絶縁被覆によって気密的、水密的に被われる。これにより磁気検出素子52を含む電子回路への湿気の侵入や外部部品等との干渉を回避可能にしている。
【0027】
また、検出部βは、ハウジング30の第2側面30Bの部分に磁気シールド40が下方から収容される。具体的には、各第2側面30Bの細溝孔35内部に装着される。即ち、ハウジング30の検出部βの両側の第2側面30Bには、上下に貫通する上述の細溝孔35が設けられている。これらの細溝孔35の長さおよび幅は後述の磁気シールド40がそれぞれ挿入可能なサイズとなっている。
【0028】
一方、ハウジング30の他端部には、図1および図2に示すような略円柱状のボス部34が突設されており、このボス部34の略中心部内には、ハウジング30の下面に向かって開口する穴34Aが形成されている。この穴34A内には図2に示すような合成樹脂製の前記ネジSが下方からねじ込み可能になっている。
【0029】
これにより、磁気シールド40およびバスバー20は、金属材料からなる加締部などの突出部を持たず合成樹脂製のネジSを用いてハウジング30に装着できる。このため、磁気ヒステリシスの安定化およびこれによる磁気検出および電流検出の精度を向上させることができる。
【0030】
磁気シールド40は、適宜の磁性材料によって形成された適宜の厚さ及び大きさを有する磁性板で構成されており、特に、同一寸法(特に高さH1)及び同一厚さを有する2枚のもので構成されている。この磁気シールド40は、前述したように、ハウジング30の検出部βおよびバスバー20の周囲を外から覆うような状態でハウジング30に外装され、磁気遮蔽する。
【0031】
具体的には、この磁気シールド40が、ハウジング30の検出部βの両側面部において、特に第2側面30Bの細溝孔35に挿入させることで、図3に示すように、バスバー20の幅(Y)方向に関して、磁気検出素子52及びバスバー20を取り囲む。これにより、バスバー20が形成する磁場について磁気遮蔽を行う。また、これと同時に、電流検出装置10Aの近傍周辺に設置されている各種電装品などから発生する磁場が磁気検出素子52に悪影響を及ぼさないように、外部磁場の磁気遮蔽も行う。
【0032】
なお、各磁気シールド40には、図3に示すように、磁路Mが内部に形成されるとともに、それぞれの磁気シールド40の下端40D及び上端40Uの周辺には、特に対応する端部どうしの間に磁束Φが所定の分布パターンで形成される。
【0033】
従って、本実施形態に係る車両内の電流検出装置10Aによれば、磁気シールド40が設けられており、この磁気シールド40による電磁遮蔽効果が確保されていることで、外部からの電磁気的な悪影響を抑えるものであり、バスバー20を流れる電流を磁気検出素子52によって正確に検出することができる。
【0034】
この結果、磁気検出素子52として用いているホール素子の周囲に外部磁場が発生する場合や、近くにリレーやモータが設置されているような場合でも、磁気シールド40の電磁遮蔽作用によって、その影響を回避できる。つまり、そのリレーやモータから発生する磁界が原因となって正確な磁気検出動作が妨げられるのを回避できる。また、車両走行時の環境の影響として、地磁気や高圧電線の影響なども有効に回避できる。
【0035】
また、本実施形態によれば、ハウジング30に磁気シールド40を一端側から嵌挿させて固定することによって、磁気シールド40とハウジング30に装着されたバスバー20との組付け上の位置決めを簡単に行うことができる。その結果、磁気シールド40のバスバー20およびハウジング30に対する取付作業を効率化できる。
【0036】
次に、本発明の電流検出のための磁気検出素子52の作用について、図3を参照しながら説明する。
本実施形態の電流検出装置10Aでは、図3に示すように、バスバー20に電流Iが流れると、周知のようにアンペールの法則、特に右ネジの法則に従ってそのバスバー20の周囲に、電流Iの流れに沿った右回りの磁力線を有する磁場が形成される。
【0037】
一方、本実施形態の電流検出装置10Aには、平板状の磁性板一対から構成された磁気シールド40が、バスバー20の幅方向であるこの両側を囲設する状態で設置されている。このため、図3(A)に模式的に示すように、磁気シールド40内部には磁路Mが形成される。
【0038】
このように、各磁気シールド40には、磁路Mが形成されるのと同時に、前述したように、それぞれの磁気シールド40の下端40D及び上端40Uには、対応する相手側の端部との間に磁力線の流れの束であるフラックス、つまり磁束Φが所定の分布パターンで形成される。
【0039】
特に、バスバー20の幅方向の中央部で、かつ、各磁気シールド40の上端40Uよりも下方寄りに設置されている磁気検出素子52には、その厚さ(Z)方向に対して直交する水平(−Y)方向に磁束Φが貫通する。これにより、磁気検出素子52を構成しているホール素子では、磁束密度Bに対応するホール電場(電界の強さE)が生成され、これに対応してバスバー20における電流Iを検出することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の電流検出装置10Aでは、磁気シールド40が平板状のもの一対から構成されており、通常の断面略コ字形を有する磁気シールドのものに比して、実質的にその中央部を欠損させた構造である。従って、大型で大電流が流れる構造の幅広のバスバーに対してその電流検出を行うような構成とした場合には、幅広のバスバーに対応して幅広にさせる必要がない。つまり、狭い幅のバスバーにおける小電流検出の場合と同じ寸法の磁気シールド40が使用可能となるわけである。しかも、ハウジング30に対して磁気シールド40の組み付けが容易である。
【0041】
従って、本実施形態の電流検出装置10Aによれば、従来の断面略コ字形を有する磁気シールドを使用した電流検出装置に比べて、例えば凡そ2倍の±600Aまでの電流検出が可能となる。しかも、断面略コ字形の磁気シールを使用する場合に比べて、加工が容易になるとともに軽量化が可能となり、さらにコスト削減が図れる。また、設置スペースの削減や搭載環境の制約が緩和される。
【0042】
また、大電流化の傾向に伴って、従来は断面略コ字形を有する磁気シールドの大型化も避けられなかったが、本実施形態によれば、大電流の検出を行う場合であっても、小型化が可能となるばかりか、低コスト化が実現可能となる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る第2の実施形態について、図4を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の電流検出装置は、互い隣接して平行配置された複数のバスバー、ここでは2つのバスバー201,202の電流値を、第1の実施形態の電流検出装置10Aと同じ材質、形状などのもの、即ち、ともに同じ大きさなどを有する電流検出装置10A1及び電流検出装置10A2を互いに隣接して並設させてある。
【0044】
特に、センサ室である磁気検出素子521,522を両側から囲設するように配置する各磁気シールド40R1,40L1と40R2,40L2とについては、バスバー201,202に対して対称的に配置されている。即ち、これは、外部磁場の影響により互いに対手側の磁気検出素子に作用する磁気的変化を相殺させるためである。
【0045】
また、各磁気検出素子である磁気検出素子521,522については、バスバー201,202の近傍で、特にバスバー201,202の幅方向の中央部に対応する位置に設置されている。
【0046】
即ち、本実施形態では、従来のような各電流検出装置を互い違いに配置する構成とは異なり、各電流検出装置10A1,10A2を各バスバー201,202の幅方向に沿って横並びに2連配置した構成となっている。
【0047】
このように並設された電流検出装置10A1,10A2によって、互いに隣接するバスバー20が形成する外部磁界の影響を抑止しながら、精度よく電流値を検出するように構成されている。なお、ここでの外部磁界の影響とは、互いに隣接するバスバー201,202が相手側へ及ぼす、磁界の相互干渉による悪影響のことである。
【0048】
また、本実施形態では、各電流検出装置10A1,10A2の磁気遮蔽体である磁気シールドのうち、互いに相手側の磁気シールドに隣接する、即ち、磁気シールド40R1と40L2との間の隙間の中央位置に、磁性板である磁性体40Mを別に設けて介在させてある。これによって、互いに隣接する相手側からの磁気遮蔽効果を増大させる、換言すれば、外部磁界耐性が補強的に付与されるように構成してある。
【0049】
次に、本実施形態の作用について説明する。
i)2つのバスバー201,202に、同一方向で、かつ、同一若しくはほぼ同じ大きさの電流が流れている場合:
この場合には、磁気シールド40R1と40L2の付近には、互いに反対方向で、かつ、同一若しくはほぼ同じ大きさの磁界が形成されているので、互いに相手側へ影響を及ぼす磁束Φが相殺される。その結果、各電流検出装置10A1,10A2でのそれぞれのバスバー201,202の電流値を精度よく検出することが可能となる。
【0050】
ii)2つのバスバー201,202に、同一方向で、かつ、大きさが大幅に異なる電流が流れている場合:
この場合にも、磁気シールド40R1と40L2との間の隙間の中央位置に、磁性板である磁性体40Mを介在させて外部磁界耐性を付与しており、特に大電流の流れる方のバスバーからの磁界をその磁性体40Mで磁気遮蔽することができる。
従って、バスバーに小電流が流れる電流検出装置のセンサ室である、一対の磁気シールドの間の空間への、大電流が流れるバスバーからの外部磁界の影響を抑制できる。その結果、各電流検出装置10A1,10A2により、それぞれのバスバー201,202の電流値を精度よく検出可能となる。
【0051】
また、複数のバスバーが隣接状態で設置されている場合、従来の各電流検出装置では、電流路上での配置スペースとして、センサ寸法の2倍以上の領域が必要であった。一方、本実施形態では、従来の半分のスペース、つまりセンサと同等の寸法の領域が必要となるにとどまる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、各電流検出装置10A1,10A2を各バスバー201,202の幅方向に沿って横並びに2連配置した構成となっている。また、特に、各磁気シールド40R1,40L1と40R2,40L2とについては、バスバー201,202に対して対称的に配置されている。即ち、これは、相互干渉による外部磁場の悪影響により互いに対手側の磁気検出素子に作用する磁気的変化を、相殺させるためである。従って、従来のような各電流検出装置を態々互い違いに配置する構成とすることが必要ないわけである。
【0053】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る第3の実施形態に係る電流検出装置10Bについて、図5乃至図9を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
【0054】
本実施形態の電流検出装置10Bは、第1の実施形態の電流検出装置10Aと異なり、バスバー20の上下位置に、センサ本体50の第1センサを構成する磁気検出素子52A及び第2センサを構成する磁気検出素子52Bが配置されている。また、本実施形態では、これらの磁気検出素子52A及び52Bをハウジング30´の上下に配置させるため、これらをそれぞれ実装した基板51A,51Bをハウジング30´の上下にそれぞれ取り付けてある。また、磁気シールド40´の大きさについても、第1の実施形態のものとは、高さ方向の寸法が若干異なる。
【0055】
ハウジング30´には、図6(B)に示すように、バスバー20の下面側に磁気検出素子52Bを実装する基板51Bが設置されるようにするため、上側のセンサ室32Aと同様のセンサ室32Bを形成してある。なお、磁気検出素子52Bは、基板51Bに対して上面に実装されている。
【0056】
磁気シールド40´については、図7に示すように、第1の実施形態の磁気シールド40と同様の一対の磁性板で構成されているが、上下の磁気検出素子52A,52Bが外部磁場から磁気遮蔽できるような高さ寸法H2を有する。
【0057】
即ち、磁気シールド40´は、外側の不要な磁界に対する、各磁気検出素子52A,52Bでの磁気遮蔽特性を同一にさせるため、各磁気検出素子52A,52Bに対し、バスバー20の高さ(Z)方向の中心位置Oからの遮蔽高さを同一になるように配置してある。つまり、バスバー20の中心位置Oから同一距離h1だけ離間した各磁気検出素子52A,52Bに対して、磁気シールド40´がそれぞれ同じ高さh2まで磁気遮蔽している。
【0058】
次に、本実施形態の電流検出のための磁気検出素子52A,52Bの作用について、特に図7乃至図9を参照しながら説明する。
本実施形態の電流検出装置10Bでは、図7に示すように、バスバー20に電流Iが流れると、第1の実施形態の場合と同様に、右ネジの法則に従ってそのバスバー20の周囲に、電流Iの流れに沿った右回りの磁力線を有する磁界が形成される。
【0059】
即ち、本実施形態の電流検出装置10Bには、平板状の磁性板一対から構成された磁気シールド40´が、バスバー20の幅(Y)方向であるこの両側を囲設する状態で設置されている。このため、図7(A)に模式的に示すように、磁気シールド40´にも第1の実施形態のときと同様の磁路Mが形成される。
【0060】
このように、各磁気シールド40´には、磁路Mが形成されるのと同時に、それぞれの磁気シールド40´の下端40´D及び上端40´Uには、第1の実施形態の場合と同様に、対応する端部どうしの間に例えば図7で示すような磁束Φが所定の分布パターンで形成される。なお、この図7では、典型的な磁束のパターンを記載してあるが、このパターンには限定されるものではない。
【0061】
特に、バスバー20の幅方向の中央部の直上で、かつ、各磁気シールド40´の上端40´Uよりも下方寄りに設置されている磁気検出素子52Aには、バスバー20の電流に伴い、その厚さ(Z)方向に対して直交する水平(−Y)方向に磁束Φが貫通する。従って、この磁気検出素子52Aには、バスバー20からの電流に伴う固有の分布パターンに生成された磁束密度Bが作用する。
【0062】
即ち、磁気検出素子52Aを構成しているホール素子では、磁束密度Bの大きさに対応する強さのホール電場(即ち、電界の強さ)が生成され、この大きさに対応した出力電圧Vが得られる。そして、予め決定されているこの出力電圧Vとバスバー20の電流値iとの関係を示す適宜の関係式や対応表(テーブル)などから、バスバー20の電流値を検出できる。
【0063】
一方、磁気検出素子52Bにもこれと同様の作用が生じる。つまり、バスバー20の幅方向の中央部の直下で、かつ、各磁気シールド40´の下端40´Dよりも上方寄りに設置されている磁気検出素子52Bには、その厚さ(Z)方向に対して直交する水平(−Y)方向に磁束Φが貫通する。従って、この磁気検出素子52Bには、バスバー20からの電流Iに伴う磁束密度Bが作用するので、磁束密度Bの大きさに対応する強さのホール電場(電界の強さE)が生成され、最終的に、この大きさに対応したバスバー20の電流値を検出できる。
【0064】
ところで、本実施形態では、磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bが、バスバー20に対して上下対称的に配置されている。従って、電流検出装置10Bに外部磁場が作用しない状況のときには、磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bで検出する電流値が、理論上同一値であることが予想される。しかしながら、これら双方の磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bにより検出する電流値が異なる場合には、何らかの外部磁場が作用していることが予想される。
【0065】
このような場合であっても、本実施形態の電流検出装置10Bによれば、図8に示す外部磁場Cの影響を除去した精度の高い電流値が検出できる。
即ち、同図に示すように、外部磁場が作用していない場合には、磁気検出素子52A及び52Bが、上下対称配置にある関係上、磁束密度Bの大きさは同じであって、貫通する磁束Φの方向のみが逆である。
【0066】
従って、磁気検出素子52A及び52Bに外部磁場Cが作用する場合には、その外部磁場Cに対応する分だけホール電場(即ち、電界の強さ)に変化、変動が出現する。つまり、図9(A)、(B)のように磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bに外部磁場が作用していないときに出力電圧のグラフA1、B1(実線部分)であるとする。一方、均一の外部磁場が作用すると、磁気検出素子52A及び磁気検出素子52Bからの出力電圧のグラフA2,B2(一点鎖線部分)に示すように、互いに反対方向にシフトする。その結果、外部磁場Cによる磁束密度Bの変化に比例した出力電圧Vの変化ΔVを受け、この変化ΔVを反映した出力電圧を出力する。
【0067】
但し、外部磁場Cが磁気検出素子52A及び52Bに均一に作用する場合には、磁気検出素子52A及び52Bからの出力電圧Vの変化は±ΔVとなって、符号のみが異なり絶対値が同一となる。従って、双方の出力電圧を加算するとキャンセルされる。即ち、
【数1】
となる。
従って、この平均値を求めることで、バスバー20の電流値が算出可能となる。
【0068】
なお、各センサ、つまり磁気検出素子52A及び52Bの出力関係については、以下の[表1]を参照されたい。
【0069】
【表1】
【0070】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、磁気検出素子が2つ必要となるが、この2つの磁気検出素子52A及び52Bをバスバー20の位置を基準として上下対称配置すれば、外部磁界を都合よくキャンセルできる。その結果、検出対象の電線やマグネット以外の外部磁場の存在する場所であっても、その影響を除去して精度の高い電流検出が可能となる。
【0071】
なお、本実施形態のような2つの磁気検出素子が対称配置された構成の場合であっても、磁気シールドが従来のような断面略コ字形のものを用いた場合には、外部磁界をキャンセルできないことに留意されたい。
【0072】
また、本実施形態によれば、各磁気シールド40´である磁性板については、同一材料で形成した同一寸法を有するものを一対用意してバスバー20に対して対称配置させてあればよい。従って、従来のような形状、厚さ、材質などの検討が不要である。
【0073】
なお、本発明では、本実施形態を敷衍することにより、磁気シールドを設けていなくても、バスバーに対して上述のような対称配置の各磁気シールドを設置しておき、出力電圧に対して上述のような演算を行うことで、精度の高い電流検出が可能となる。その結果、基本的には、バスバーと2つの磁気検出素子があればよいので、磁気シールドが設置不要となる分、大幅な小型化、軽量化、コストの削減などが可能となる。
【0074】
このように、本発明の電流検出装置では、磁気シールドが平板状のもの一対から構成されており、通常の断面略コ字形を有する磁気シールドのものに比して、実質的にその中央部を欠損させた構造である。従って、大型で大電流が流れる構造の幅広のバスバーに対してその電流検出を行うような構成とした場合には、幅広のバスバーに対応して幅広にさせる必要がない。つまり、狭い幅のバスバーにおける小電流検出の場合と同じ寸法の磁気シールドが使用可能となる。
【0075】
従って、本発明の電流検出装置によれば、薄板状の同一寸法の磁気遮蔽体を一対用いてこれを対称配置させた簡易な構成のもので、従来の断面略コ字形を有する磁気シールドを使用した電流検出装置に比べて、例えば凡そ2倍の±600Aまでの電流検出が可能となる。しかも、従来の断面略コ字形を有する磁気シールドでは、大電流検出の際に厚さを増大させる必要があるが、本発明ではその必要がなく、軽量なもので大電流検出が可能となる。
【0076】
なお、本発明の電流検出装置は、これらの実施形態のような車両内のシステムの一部としての適用に限定されるものではなく、例えばバスバーなどを備えたものであれば、各種分野での電流検出装置としての適用が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10A,10A1,10A2,10B 電流検出装置
20 バスバー(導電体)
23 ネジ挿入孔
24 起立片
30 ハウジング
30B 第2側面
31 コネクタ室
32、32A、32B センサ室
35 細溝孔
40、40´ 磁気シールド(磁気遮蔽体)
40D (磁気シールドの)下端
40M 磁性体
40U、40´U (磁気シールドの)上端
50 センサ本体
51 基板
52 磁気検出素子
52A 第1センサ(磁気検出素子)
52B 第2センサ(磁気検出素子)
A1 第1センサに外部磁場が作用していないときのグラフ
A2 第1センサに外部磁場が作用したときのグラフ
B 磁束密度(磁気誘導)
B1 第2センサに外部磁場が作用していないときのグラフ
B2 第2センサに外部磁場が作用したときのグラフ
H 磁界の強さ
H1,H2 磁気シールド(磁気遮蔽体)の高さ
h1 バスバー(導電体)からセンサまでの高さ
M 磁路
S 合成樹脂のネジ
α コネクタ連結部
β 検出部
Φ 磁束
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気遮蔽体で磁気遮蔽された領域内に、導電体に流れる電流値により形成される磁束密度若しくは磁界の強さを検出する磁気検出素子を設け、前記導電体に流れる電流値を、前記磁気検出素子で検出する電流検出装置であって、
前記磁気検出素子は、前記導電体の近傍の、導電体の幅方向の中央部に臨んで設置されているとともに、
前記磁気遮蔽体は、同一寸法を有する一対のものが、前記導電体の幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で、導電体に対して対称に対向配置されている、
ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記導電体は、幅広板状のバスバーであって、
周囲が壁面で囲設されてセンサを収容するセンサ室を有し、前記バスバーの一方の面に底面が臨む、非磁性体で形成されたハウジングをさらに備え、
前記磁気遮蔽体は、前記ハウジングのセンサ室の互いに対向する両壁面に、前記バスバーの幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で対称的に設けた同一形状を有する一対の磁性板で構成され、
前記センサ室内の前記バスバー幅方向の横断面における磁界は、前記磁気検出素子を中心として対称的な分布パターンで生成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出素子は、前記センサ室内の前記バスバーの一方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第1センサと、前記バスバーの他方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第2センサとを有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記バスバーの厚さ方向の中心位置を基準として上下対称的に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流検出装置。
【請求項1】
磁気遮蔽体で磁気遮蔽された領域内に、導電体に流れる電流値により形成される磁束密度若しくは磁界の強さを検出する磁気検出素子を設け、前記導電体に流れる電流値を、前記磁気検出素子で検出する電流検出装置であって、
前記磁気検出素子は、前記導電体の近傍の、導電体の幅方向の中央部に臨んで設置されているとともに、
前記磁気遮蔽体は、同一寸法を有する一対のものが、前記導電体の幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で、導電体に対して対称に対向配置されている、
ことを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記導電体は、幅広板状のバスバーであって、
周囲が壁面で囲設されてセンサを収容するセンサ室を有し、前記バスバーの一方の面に底面が臨む、非磁性体で形成されたハウジングをさらに備え、
前記磁気遮蔽体は、前記ハウジングのセンサ室の互いに対向する両壁面に、前記バスバーの幅方向の両側縁を外側から挟むような状態で対称的に設けた同一形状を有する一対の磁性板で構成され、
前記センサ室内の前記バスバー幅方向の横断面における磁界は、前記磁気検出素子を中心として対称的な分布パターンで生成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出素子は、前記センサ室内の前記バスバーの一方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第1センサと、前記バスバーの他方の面の近傍でその幅方向の中央部に配置されている第2センサとを有し、
前記第1センサ及び前記第2センサは、前記バスバーの厚さ方向の中心位置を基準として上下対称的に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−113631(P2013−113631A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258040(P2011−258040)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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