説明

電流検出装置

【課題】電流検出装置において、小さな磁性体コアを採用して装置を小型化できるとともに、バスバーの過剰な発熱を防止でき、さらに、電流検出装置が、誤った向きで取り付けられることを防止できること。
【解決手段】電流検出装置1において、電流検出用バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通する貫通部31とその貫通部31の両側各々に連なる端子部32とを有する。貫通部31の厚みD4は2つの端子部32各々の厚みD6よりも大きく、2つの端子部32各々の幅D5は中空部11の幅D1よりも大きい。2つの端子部32の一方には突起33が形成されている。絶縁筐体40を構成する蓋部材42には、突起33を有する第1の端子部32Aが通過可能な第1のバスバー孔45Aが形成されている。絶縁筐体40を構成する本体ケース41には、突起33を有さない第2の端子部32Bのみが通過可能である第2のバスバー孔45Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーに流れる電流を検出する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車又は電気自動車などの車両には、バッテリに接続されたバスバーに流れる電流を検出する電流検出装置が搭載されることが多い。また、そのような電流検出装置としては、磁気比例方式の電流検出装置又は磁気平衡方式の電流検出装置が採用される場合がある。
【0003】
磁気比例方式又は磁気平衡方式の電流検出装置は、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に示されるように、磁性体コアと磁電変換素子とを備える。磁性体コアは、両端がギャップ部を介して対向し、バスバーが貫通する中空部の周囲を囲んで一連に形成された概ねリング状の磁性体である。磁性体の中空部は、被検出電流が通過する空間(電流検出空間)である。
【0004】
また、従来の電流検出装置において、磁性体コアは、概ねリング状かつ磁性材料からなる複数の薄い板状部材が、接着剤を介して積層された構造を有している。以下、そのような構造を有する磁性体コアのことを積層タイプの磁性体コアと称する。
【0005】
また、磁電変換素子は、磁性体コアのギャップ部に配置され、中空部を貫通して配置されたバスバーを流れる電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。磁電変換素子としては、通常、ホール素子が採用される。
【0006】
また、電流検出装置において、磁電変換素子の検出信号の極性は、磁性体コアの中空部を通過する電流の向きに応じて定まる。そのため、電流検出装置は、バスバーに流れる電流の方向に対して予め定められた正規の向きとなるように配置される必要がある。
【0007】
また、特許文献4に示されるように、電流検出装置においては、磁性体コア及び磁電変換素子は、絶縁性の筐体によって一定の位置関係に支持されることが多い。この筐体は、電流検出装置を構成する複数の部品を一定の位置関係に位置決めする。なお、筐体は、一般に、絶縁性の樹脂部材により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−104279号公報
【特許文献2】特開2006−166528号公報
【特許文献3】特開2009−58451号公報
【特許文献4】特開2009−128116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の電流検出装置においては、平板状のバスバーが、磁性体コアの中空部に挿通されるため、磁性体コアは、その中空部の最大幅(直径)が、バスバーの幅より大きくなる大きさに形成される必要がある。一方、電気自動車及びハイブリッド自動車などにおいては、バスバーに流れる電流の増大に伴い、バスバーの過剰な発熱を防止するため、幅の広いバスバーが採用されつつある。
【0010】
従って、従来の電流検出装置は、バスバーの幅が広くなるほど、バスバーの幅に比例した大きな磁性体コアが必要であり、装置の設置スペースが大きくなるという問題点を有している。特に、磁性体コアが、円環状、楕円環状又は縦寸法と横寸法の比が1又は1に近い矩形環状である場合、バスバーの幅が大きくなるほど、磁性体コアの中空部における無駄なスペースが増大する。また、磁性体コアの中空部に配置される部分のみが細くくびれたバスバーが採用された場合、細くくびれた部分が過剰に発熱するという問題が生じる。
【0011】
また、電流検出装置は、バスバーに流れる電流の方向に対して予め定められた正規の向きで配置される必要がある。そのため、電流検出装置が、バッテリ又はモータなどの機器を接続するバスバーを有する電源ボックスなどの車両内の収容部に、誤った向きで取り付けられることを防止する構造を有することも重要である。
【0012】
本発明は、バスバーに流れる電流を検出する電流検出装置において、バスバーの幅との関係において比較的小さな磁性体コアを採用して装置を小型化できるとともに、バスバーの過剰な発熱を防止でき、さらに、電流検出装置が、誤った向きで取り付けられることを防止できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電流検出装置は、バスバーに流れる電流を検出する装置であり、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、磁性材料からなり、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された磁性体コアである。
(2)第2の構成要素は、磁性体コアのギャップ部に配置され、磁性体コアの中空部を通過する電流に応じて変化する磁束を検出する磁電変換素子である。
(3)第3の構成要素は、磁性体コアの中空部を貫通する貫通部とその貫通部に対し中空部を貫通する方向の両側各々に連なり電流伝送経路の前段又は後段の接続端と連結される2つの端子部とが形成された導体からなり、貫通部の厚みが2つの端子部各々の厚みよりも大きく形成され、2つの端子部各々の幅が中空部の幅よりも大きく形成され、2つの端子部の一方に突起が形成された電流検出用バスバーである。
(4)第4の構成要素は、2つの端子部が外部に露出する状態で、磁性体コアと磁電変換素子と電流検出用バスバーの貫通部とを覆いつつ一定の位置関係で支持する絶縁筐体である。ここで、絶縁筐体は、磁性体コアの両側から組み合わされる第1の要素筐体及び第2の要素筐体からなる。第1の要素筐体には、2つの端子部のうちの突起を有する第1の端子部が通過可能な第1の貫通孔が形成されている。第2の要素筐体には、2つの端子部のうちの突起を有さない第2の端子部が通過可能であるが第1の端子部が通過できない第2の貫通孔が形成されている。
【0014】
また、本発明に係る電流検出装置の電流検出用バスバーにおいて、第1の端子部は平板状の基部とその基部の一部から起立した突起とにより構成され、第2の端子部は平板状であることが考えられる。
【0015】
また、本発明に係る電流検出装置において、電流検出用バスバーが、断面の幅及び厚みが磁性体コアの両端の間隔よりも大きく形成され磁性体コアの中空部を貫通する長尺の金属部材の両端部分がプレス加工により他の部分よりも広い幅の形状へ押しつぶされた構造を有する部材であり、押しつぶされた両端部分が2つの端子部を構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0016】
以下、本発明に係る電流検出装置において、電流検出用バスバーが磁性体コアの中空部を貫通する方向(電流通過方向)を第1方向と称する。また、電流検出用バスバーにおける、磁性体コアの中空部を貫通する貫通部の前後に連なる端子部の幅方向及び厚み方向をそれぞれ第2方向及び第3方向と称する。
【0017】
本発明に係る電流検出装置が備える電流検出用バスバーにおいて、磁性体コアの中空部を貫通する貫通部は、その前後に連なる端子部と比較して、幅が端子部の幅(最大幅)よりも小さく形成されている。即ち、貫通部の断面の輪郭形状は、端子部に対し、第2方向においてくびれた形状を有している。その結果、バスバーの幅との関係において比較的小さな磁性体コアを採用することができ、磁性体コアを含む装置全体の大型化を回避できる。また、電流検出用バスバーの両端部が端子部であるため、予め敷設された前段及び後段のバスバーに対して、磁性体コアの中空部を貫通した状態の電流検出用バスバーを後から連結することが可能である。
【0018】
また、電流検出用バスバーにおいて、磁性体コアの中空部を貫通する貫通部は、丸棒もしくは角棒などの棒状又は筒状など、両側の端子部の厚みよりも大きな厚みで形成されている。そのため、その貫通部は、従来の平板状のバスバーに比べ、その幅及び厚みが磁性体コアの中空部の幅よりも小さいという制約の中で、より大きな断面積で形成されることができる。従って、比較的小さな磁性体コアが採用された場合でも、電流検出用バスバーの過剰な発熱を防止できる。
【0019】
また、本発明に係る電流検出装置において、磁性体コアと電流検出用バスバーと磁電変換素子とが、露出されるべき部分以外を覆う絶縁筐体によって所定の位置関係で支持されている。そのため、本発明に係る電流検出装置を予め敷設されたバスバーに対して取り付ける作業が容易となる。
【0020】
ところで、磁電変換素子の検出信号の極性が所望の極性となるように、電流検出用バスバーは、前段及び後段のバスバーに対して予め定められた正規の向きで連結される必要がある。しかしながら、電流検出用バスバーの2つの端子部が全く同じ形状であると、電流検出用バスバーを前段及び後段のバスバーに対して誤った向きで連結するというミスが生じやすい。
【0021】
本発明に係る電流検出装置においては、電流検出用バスバーの2つの端子部のうちの一方のみが突起を有する。そのため、電流検出装置が、バッテリ又はモータなどの機器を接続するバスバーを有する電源ボックスなどの車両内の収容部に取り付けられるときに、その突起が取り付け方向の目印となり、電流検出用バスバーを誤った向きで前後のバスバーに連結するというミスは生じにくい。しかも、端子部の突起は、前段又は後段のバスバー又はそれを支持する台座などに引っ掛かることによって電流検出用バスバーの回転を規制する役割も果たす。そのため、電流検出用バスバーの端子部が前段又は後段のバスバーの端子部に対してネジ止めされる際に、ネジの回転につられて電流検出用バスバーが回転することが防止され、ネジ止めの作業性が高まる。
【0022】
また、電流検出装置の組み立て段階において、電流検出用バスバーが誤った向きで絶縁筐体に組み付けられてしまうと、結局は検出信号の極性の誤りが生じる。しかしながら、本発明において、絶縁筐体を構成する2つの要素筐体のうちの一方のみが、電流検出用バスバーにおける突起が設けられた端子部を通すことが可能な貫通孔を有する。そのため、電流検出装置の組み立て段階において、電流検出用バスバーが誤った向きで絶縁筐体に組み付けられてしまうというミスは生じない。
【0023】
また、電流検出用バスバーが、磁性体コアの中空部を貫通可能な金属部材の端部が他の部分よりも広い幅の扁平形状に押しつぶされた構造を有する部材であれば、中空部の幅よりも広い幅の扁平な端子部を容易に作ることができる。従って、貫通部の幅及び厚みが、磁性体コアの両端の間隔(ギャップ部の高さ)よりも大きく形成された電流検出用バスバーを容易に作製することができる。なお、断面形状が扁平ではない金属部材としては、棒状の金属部材又は筒状の金属部材が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る電流検出装置1の分解斜視図である。
【図2】電流検出装置1が備える電流検出用バスバーの三面図である。
【図3】電流検出用バスバーの製造工程を模式的に示す斜視図である。
【図4】電流検出装置1の平面図である。
【図5】電流検出装置1が予め敷設されたバスバーに連結される様子を模式的に示す斜視図である。
【図6】磁性体コアが電流検出用バスバーの貫通部に装着される様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0026】
まず、図1〜図4を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電流検出装置1の構成について説明する。なお、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図、図2(c)は正面図である。電流検出装置1は、電気自動車又はハイブリッド自動車などにおいて、バッテリとモータなどの機器とを電気的に接続するバスバーに流れる電流を検出する装置である。図1に示されるように、電流検出装置1は、磁性体コア10、ホール素子20、電流検出用バスバー30、絶縁筐体40及び電子基板50を備える。
【0027】
<磁性体コア>
磁性体コア10は、パーマロイ、フェライト又はケイ素鋼などの磁性材料からなる部材(磁性体)である。磁性体コア10は、例えば、磁性材料からなる粉体の焼結により成形された部材である。そのような磁性体コア10は、磁性材料からなる固体粉末の集合体が、型枠内で圧縮され、さらに、その磁性体材料の融点よりも低い温度で加熱されることによって固化及び成形された部材である。
【0028】
また、磁性体コア10は、両端が数ミリメートル程度のギャップ部12を介して対向し、中空部11の周囲を囲んで一連に形成された形状を有している。即ち、磁性体コア10は、狭いギャップ部12を有するものの概ね環状に形成されている。本実施形態における磁性体コア10は、円形状の中空部11を囲む円環状に形成されている。
【0029】
<ホール素子(磁電変換素子)>
ホール素子20は、磁性体コア10のギャップ部12に配置され、磁性体コア10の中空部11を通過する電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する磁電変換素子の一例である。
【0030】
<電子基板>
電子基板50は、ホール素子20の端子21に接続される回路と、その回路と外部の他の回路とを接続するコネクタ51とが実装された基板である。従って、コネクタ51は、ホール素子20に対して電気的に接続されている。電子基板50に実装された回路は、例えば、ホール素子20から出力される磁束の検出信号を増幅する回路などである。ホール素子20は、コネクタ51を含む電子基板50を介して、外部の回路と接続される。
【0031】
<電流検出用バスバー>
電流検出用バスバー30は、銅又はアルミニウムなどの金属からなる導電体であり、バッテリと電装機器とを電気的に接続するバスバーの一部である。即ち、電流検出用バスバー30には、検出対象の電流が流れる。また、電流検出用バスバー30は、バッテリに対して予め接続されたバッテリ側のバスバーと、電装機器に対して予め接続された機器側のバスバーとは独立した部材である。
【0032】
そして、電流検出用バスバー30は、その両端が予め敷設された前段及び後段の他のバスバー(バッテリ側のバスバー及び機器側のバスバー)に対して連結される。電流検出用バスバー30と、これに連結された前段及び後段の他のバスバーとは、バッテリから電装機器へ至る電流伝送経路を形成する。なお、他のバスバーの端部は、電流伝送経路における電流検出用バスバー30の前段及び後段の導体の接続端の一例である。
【0033】
図1に示されるように、電流検出用バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通する棒状の導体の両端部分に加工が施された部材からなる。電流検出用バスバー30において、加工された両端部分は、電流伝送経路の前段及び後段各々の接続端と連結される2つの端子部32である。即ち、電流検出用バスバー30は、概ね、中央部分において一定の範囲を占める棒状の貫通部31と、その貫通部31に対し中空部11を貫通する方向の両側各々に連なって形成された2つの端子部32とを有する導体からなる部材である。
【0034】
貫通部31は、磁性体コア10の中空部11を電流通過方向に沿って貫通する部分であり、その断面形状は扁平な形状ではない。電流通過方向は、磁性体コア10の厚み方向であり、環状の磁性体コア10を筒とみなした場合におけるその筒の軸心方向であり、さらに、環状の磁性体コア10が形成する面に直交する方向でもある。各図において、電流通過方向は、X軸方向として記されている。以下の説明において、電流通過方向(X軸方向)を第1方向と称する。
【0035】
電流検出用バスバー30における貫通部31は、例えば、円柱状又は楕円柱状などの棒状に形成され、その断面形状は非扁平である。一方、2つの端子部32は、いずれも扁平は形状で形成されている。より具体的には、2つの端子部32のうちの一方である第1の端子部32Aは、平板状の基部とその基部の一部から起立した突起33とにより構成されている。また、2つの端子部32のうちの他方である第2の端子部32Bは突起のない平板状である。
【0036】
各図において、端子部32の幅方向及び厚み方向は、それぞれY軸方向及びZ軸方向として記されている。以下の説明において、端子部32の幅方向(Y軸方向)及び厚み方向(Z軸方向)をそれぞれ第2方向及び第3方向と称する。
【0037】
図3は、電流検出用バスバー30の製造工程を模式的に示す斜視図である。電流検出用バスバー30は、棒状の金属部材30Xの両端部分に加工が施された構造を有する。棒状の金属部材30Xの幅及び厚みは、磁性体コア10の両端の間隔であるギャップ高さD2よりも大きく形成されている。図3に示される金属部材30Xは円柱状であるため、金属部材30Xの幅及び厚みは、金属部材30Xの直径である。
【0038】
より具体的には、電流検出用バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通する棒状の金属部材30Xの両端における一定範囲の部分が、プレス機60などを用いたプレス加工によって他の部分よりも広い幅の扁平形状に押しつぶされた構造を有する部材である。
【0039】
即ち、電流検出装置1を製造する工程において、電流検出用バスバー30を製造する工程は、棒状の金属部材30Xの一方の端部を、プレス機60などによって他の部分よりも広い幅の扁平形状に押しつぶす第1のプレス工程と、棒状の金属部材30Xの他方の端部を、プレス機60などによって他の部分よりも広い幅の扁平形状に押しつぶす第2のプレス工程とを含む。
【0040】
そして、扁平形状に押しつぶされた両端の部分が、電流検出用バスバー30における2つの扁平な端子部32を構成し、それらの間の棒状の部分が、電流検出用バスバー30の貫通部31を構成する。
【0041】
しかしながら、第1のプレス工程と第2のプレス工程とでは、それぞれの工程で用いられるプレス機60の圧接部の形状が若干異なる。突起33を有する第1の端子部32Aを形成するプレス工程では、図3に示されるように、プレス機60における一対の圧接部のうちの一方に突起部61が形成され、他方には突起部61に対向する凹み部62が形成されている。
【0042】
図3に示されるようなプレス機60を用いたプレス工程により、平板状の基部とその基部の一部から起立した突起33とにより構成された第1の端子部32Aが形成される。一方、突起33を有さない第2の端子部32Bを成形するプレス工程では、突起部61及び凹み部62の無い平坦な一対の圧接部を備えたプレス機が用いられる。
【0043】
また、第1のプレス工程と第2のプレス工程との両方において、突起部61及び凹み部62の無い平坦な一対の圧接部を備えたプレス機を用いることにより、突起33を有さない2つの端子部32が成形されることも考えられる。この場合、その後に、図3に示されるようなプレス機60を用いた成形工程により、一方の端子部32にのみ突起33が形成される。
【0044】
図3に示される金属部材30Xは円柱状の部材であり、このような金属部材30Xの両端の加工により製造される電流検出用バスバー30の貫通部31は円柱状である。なお、棒状の金属部材30Xは、断面が楕円の楕円棒状又は断面が矩形の角棒状であることも考えられる。また、棒状の金属部材30Xは、断面が四角形以外の多角形である棒状であることも考えられる。
【0045】
金属部材30Xの断面形状、即ち、貫通部31の断面形状は、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状と相似な形状であることが望ましい。例えば、Nが3以上の整数であるとすると、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状が正N角形である場合、金属部材30Xの形状が正N角柱であれば好適である。また、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状が円形である場合、金属部材30Xの形状が円柱であれば好適である。また、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状が、長軸と短軸との比がRである楕円形である場合、金属部材30Xの形状が、断面における長軸と短軸との比がRである楕円柱であれば好適である。
【0046】
電流検出用バスバー30において、2つの端子部32各々の幅D5は、中空部11の直径D1(幅)よりも大きく形成されている。また、貫通部31の厚みD4(直径)は、扁平な端子部32の厚みD6よりも大きく形成されている。即ち、貫通部31の断面の輪郭の縦寸法と横寸法の比は、扁平な端子部32の断面の縦寸法と横寸法の比よりも1に近い。なお、貫通部31が円柱状である場合、貫通部31の厚みD4と幅D3とは同じである。また、比が1に近いということは、比が1であることを含む。
【0047】
また、磁性体コア10及び電流検出用バスバー30は、例えば、図6に示されるような手順で組み合わされる。図6は、磁性体コア10が電流検出用バスバー30の貫通部31に装着される様子を示す平面図である。
【0048】
磁性体コア10及び電流検出用バスバー30が組み合わされる際、まず、電流検出用バスバー30の端子部32が、図6の矢印線A1で示されるように、磁性体コア10の中空部11からギャップ部12に亘る空間に挿入される。
【0049】
次に、磁性体コア10が、図6の矢印線A2で示されるように、電流検出用バスバー30の貫通部31の一部が磁性体コア10の中空部11の一部に入るように移動される。これにより、電流検出用バスバー30における貫通部31の一部から端子部32の一部へ亘る部分が、磁性体コア10の中空部11からギャップ部12に亘る空間に挿入された状態となる。
【0050】
最後に、磁性体コア10が、図6の矢印線A3で示されるように、電流検出用バスバー30の端子部32が磁性体コア10のギャップ部12から外れ、電流検出用バスバー30の貫通部31が磁性体コア10の中空部11を貫通するように移動される。以上により、電流検出用バスバー30は、その貫通部31が磁性体コア10の中空部11を貫通する状態で、磁性体コア10と組み合わされる。
【0051】
なお、棒状の金属部材30Xの両端のうちの少なくとも一方が、磁性体コア10の中空部11に棒状の金属部材30Xが挿通された後に、扁平形状にプレス加工されてもよい。
【0052】
そして、磁性体コア10と、その磁性体コア10の中空部11に貫通した状態の電流検出用バスバー30とのセットが作られた後に、電流検出用バスバー30が前段及び後段の他のバスバーに接続される。
【0053】
そこで、2つの端子部32各々には、ネジ止め用の貫通孔32Zが形成されており、これにより、端子部32は、ネジにより前段及び後段の他のバスバーと連結される。図5は、電流検出装置1における2つの端子部32が、電源ボックスなどの収容箱6内に予め敷設された前段及び後段の他のバスバー9に対し、ネジ8によって連結される様子を模式的に示す斜視図である。
【0054】
なお、図5において、便宜上、絶縁筐体40の記載は省略されている。図5に示されるように、他のバスバー9における、端子部32と連結される接続端は、例えば、電源ボックスなどの収容箱6内において端子台としての構造を備え、ネジ止め用の孔9Aが形成されている。
【0055】
第1の端子部32Aに設けられた突起33は、2つの端子部32が収容箱6内に設けられた前段及び後段のバスバー9と接触する状態において、前段又は後段のバスバー9又はそれを支持する台座7に引っ掛かり、電流検出用バスバー30の回転を規制する。
【0056】
なお、電流検出用バスバー30における突起33の位置は、前段又は後段のバスバー9又はそれを支持する台座7との関係又はその他の要因に応じて定められる。従って、電流検出用バスバー30における突起33の位置は、第1の端子部32Aにおける貫通部31寄りの位置及び末端に近い位置のいずれであってもよい。同様に、突起33の位置は、第1の端子部32Aの幅方向における中央寄りの位置及び端寄りの位置のいずれであってもよい。
【0057】
<絶縁筐体>
絶縁筐体40は、絶縁体からなり、磁性体コア10とホール素子20と電流検出用バスバー30と電子基板50とを保持する部材であり、本体ケース41及び本体ケース41に取り付けられる蓋部材42とを含む。本体ケース41及び蓋部材42の各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの絶縁性の樹脂からなる一体成形部材である。
【0058】
本体ケース41は、開口部を有する箱状に形成され、蓋部材42は、本体ケース41に取り付けられることによって本体ケース41の開口部を塞ぐ。本体ケース41には、その内側の面において突出する第1保持部43及び第2保持部44が形成されている。そして、本体ケース41は、第1保持部43及び第2保持部44により、磁性体コア10と、中空部11を貫通する電流検出用バスバー30と、ギャップ部12に配置されたホール素子20とを、それらが相互に接触しない状態で保持する。
【0059】
より具体的には、第1保持部43は、磁性体コア10とその中空部11を貫通する電流検出用バスバー30の貫通部31との隙間に嵌り込むことにより、磁性体コア10と電流検出用バスバー30とを、それらが相互に接触しない状態で保持する。また、第2保持部44は、磁性体コア10とそのギャップ部12に配置されたホール素子20との隙間に嵌り込むことにより、磁性体コア10とホール素子20とを、それらが相互に接触しない状態で保持する。
【0060】
また、本体ケース41及び蓋部材42には、電流検出用バスバー30の両端の端子部32が内側から外側へ貫通するスリット状の貫通孔であるバスバー孔45が形成されている。磁性体コア10の中空部11を貫通する電流検出用バスバー30の第2の端子部32Bが、本体ケース41の第2のバスバー孔45Bに通された状態において、本体ケース41の第1保持部43及び第2保持部44は、磁性体コア10、ホール素子20及び電流検出用バスバー30を保持する。
【0061】
また、蓋部材42は、磁性体コア10、ホール素子20及び電流検出用バスバー30を保持する本体ケース41に対し、電子基板50を挟み込みつつ、本体ケース41の開口部を塞ぐように取り付けられる。その際、電流検出用バスバー30における第1の端子部32Aが、蓋部材42の第1のバスバー孔45Aに対して内側から外側へ通される。
【0062】
また、電子基板50が本体ケース41と蓋部材42との間に挟み込まれることにより、電子基板50に実装されたコネクタ51は、本体ケース41に形成された欠け部46に嵌り込んだ状態で保持される。
【0063】
さらに、本体ケース41及び蓋部材42には、それらを組み合わせ状態で保持するロック機構47,48が設けられている。図1に示されるロック機構47,48は、本体ケース41の側面に突出して形成された爪部47と、蓋部材42の側方に形成された環状の枠部48とを備える。本体ケース41の爪部47が、蓋部材42の枠部48が形成する孔に嵌り込むことにより、本体ケース41及び蓋部材42は、それらが組み合わされた状態で保持される。
【0064】
図4は、本体ケース41及び蓋部材42が組み合わされた状態における電流検出装置1の平面図である。図4に示されるように、本体ケース41及び蓋部材42(絶縁筐体40)は、磁性体コア10の両側から組み合わされる。そして、本体ケース41及び蓋部材42は、相互に組み合わされることにより、電流検出用バスバー30の2つの端子部32各々における貫通孔32Zが形成された部分と、電子基板50のコネクタ51とが外部に露出する状態で、磁性体コア10と電流検出用バスバー30の貫通部31とホール素子20とを覆いつつ一定の位置関係で支持する。
【0065】
また、絶縁筐体40を構成する蓋部材42に形成された第1のバスバー孔45Aは、突起33を有する第1の端子部32Aが通過可能な形状で形成されている。より具体的には、第1のバスバー孔45Aは、第1の端子部32Aにおける板状の基部が通過するスリット孔と、そのスリット孔からその長手方向に交差する方向へ切れ込んで形成された突起通過孔451とが連なって構成された貫通孔である。
【0066】
一方、絶縁筐体40を構成する本体ケース41に形成された第2のバスバー孔45Bは、突起33を有さない第2の端子部32Bが通過可能であるが、突起33を有する第1の端子部32Aが通過できない形状で形成されている。より具体的には、第2のバスバー孔45Bは、板状の第2の端子部32Bが通過するスリット孔であり、突起通過孔451が形成されていない貫通孔である。
【0067】
<効果>
以上に示した電流検出装置1の電流検出用バスバー30において、貫通部31は、断面の輪郭の最大幅D3が端子部の幅D5(最大幅)よりも小さく形成されている。即ち、貫通部31の断面の輪郭形状は、端子部32に対し、第2方向においてくびれた形状を有している。その結果、電流検出装置1においては、前段及び後段の他のバスバーの幅との関係において比較的小さな磁性体コア10を採用することができ、磁性体コア10を含む装置全体を小型化できる。また、電流検出用バスバー30の両端部が端子部32であるため、予め敷設された前段及び後段のバスバー9に対して、磁性体コア10の中空部11を貫通した状態の電流検出用バスバー30を後から連結することが可能である。
【0068】
また、電流検出用バスバー30において、磁性体コア10の中空部11を貫通する貫通部31は、丸棒もしくは角棒など、両側の端子部の厚みよりも大きな厚みで形成されている。そのため、その貫通部31は、従来の平板状のバスバーに比べ、その幅D3及び厚みD4が磁性体コア10の中空部11の直径D1(幅)よりも小さいという制約の中で、より大きな断面積で形成されることができる。従って、比較的小さな磁性体コア10が採用された場合でも、電流検出用バスバー30の過剰な発熱を防止できる。
【0069】
また、電流検出用バスバー30の貫通部31の断面形状が、磁性体コア10の中空部11の輪郭形状と相似な形状であれば、貫通部31と磁性体コア10との隙間をより小さくすることができる。その結果、より小さな磁性体コア10を採用することによる装置の小型化が可能となる。
【0070】
また、電流検出装置1において、磁性体コア10と電流検出用バスバー30とホール素子20とが、露出されるべき部分以外を覆う絶縁筐体40によって一定の位置関係で支持されている。そのため、電流検出装置1を予め敷設されたバスバー9に対して取り付ける作業が容易となる。
【0071】
また、電流検出装置1においては、電流検出用バスバー30の2つの端子部32のうちの一方のみが突起33を有するため、その突起33が取り付け方向の目印となり、電流検出用バスバー30を誤った向きで前後のバスバー9に連結するというミスは生じにくい。しかも、第1の端子部32Aの突起33は、前段又は後段のバスバー9又はそれを支持する台座7などに引っ掛かることによって電流検出用バスバー30の回転を規制する役割も果たす。そのため、電流検出用バスバー30の端子部32が前段又は後段のバスバー9の端子部に対してネジ止めされる際に、ネジの回転につられて電流検出用バスバー30が回転することが防止され、ネジ止めの作業性が高まる。
【0072】
また、電流検出装置1の組み立て段階において、電流検出用バスバー30が誤った向きで絶縁筐体40に組み付けられてしまうと、結局は検出信号の極性の誤りが生じる。しかしながら、電流検出装置1において、絶縁筐体40を構成する2つの要素筐体のうちの一方の蓋部材42のみが、電流検出用バスバー30における突起33が設けられた第1の端子部32Aを通すことが可能な第1のバスバー孔45Aを有する。そのため、電流検出装置1の組み立て段階において、電流検出用バスバー30が誤った向きで絶縁筐体40に組み付けられてしまうというミスは生じない。
【0073】
また、電流検出用バスバー30は、磁性体コア10の中空部11を貫通する金属部材30Xの端部が他の部分よりも広い幅の扁平形状に押しつぶされた構造を有する部材である。そのため、断面形状が扁平ではない金属部材30Xを磁性体コア10の中空部11に挿入した後に、中空部11の直径D1(幅)よりも広い幅の扁平な端子部32を作ることができる。従って、貫通部31の幅D3及び厚みD4が、磁性体コア10の両端の間隔(ギャップ部の高さD2)よりも大きく形成された電流検出用バスバー30を容易に作製することができる。なお、断面形状が扁平ではない金属部材30Xとしては、棒状の金属部材又は筒状の金属部材が考えられる。
【0074】
なお、電流の検出感度を高めるためには、ギャップ高さD2を小さくし、ギャップ部12に配置されたホール素子20と磁性体コア10の両端との隙間を小さくすることが望ましい。
【0075】
<その他>
電流検出装置1において、電流検出用バスバー30における2つの端子部32は、それぞれ非平行な面に沿った扁平な形状で形成されてもよい。例えば、2つの端子部32のうちの一方が、X−Y平面に沿って形成され、他方が、X−Z平面に沿って形成されることが考えられる。
【0076】
また、磁性体コア10は、円環状以外の形状、例えば、矩形の環状などの多角形の環状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 電流検出装置
6 収容箱
7 台座
8 ネジ
9 他のバスバー
9A 孔
10 磁性体コア
11 磁性体コアの中空部
12 磁性体コアのギャップ部
20 ホール素子
21 端子
30 電流検出用バスバー
30X 金属部材
31 貫通部
32 端子部
32A 第1の端子部
32B 第2の端子部
32Z 貫通孔
33 突起
40 絶縁筐体
41 本体ケース
42 蓋部材
43 第1保持部
44 第2保持部
45 バスバー孔
45A 第1のバスバー孔
45B 第2のバスバー孔
46 欠け部
47 爪部(ロック機構)
48 枠部(ロック機構)
50 電子基板
51 コネクタ
60 プレス機
61 突起部
62 凹み部
451 突起通過孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーに流れる電流を検出する電流検出装置であって、
磁性材料からなり、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された磁性体コアと、
前記磁性体コアの前記ギャップ部に配置され、前記磁性体コアの前記中空部を通過する電流に応じて変化する磁束を検出する磁電変換素子と、
前記磁性体コアの前記中空部を貫通する貫通部と該貫通部に対し前記中空部を貫通する方向の両側各々に連なり電流伝送経路の前段又は後段の接続端と連結される2つの端子部とが形成された導体からなり、前記貫通部の厚みが2つの前記端子部各々の厚みよりも大きく形成され、2つの前記端子部各々の幅が前記中空部の幅よりも大きく形成され、2つの前記端子部の一方に突起が形成された電流検出用バスバーと、
2つの前記端子部が外部に露出する状態で、前記磁性体コアと前記磁電変換素子と前記電流検出用バスバーの前記貫通部とを覆いつつ一定の位置関係で支持する絶縁筐体と、を備え、
前記絶縁筐体は、前記磁性体コアの両側から組み合わされる第1の要素筐体及び第2の要素筐体からなり、前記第1の要素筐体には、2つの前記端子部のうちの前記突起を有する第1の端子部が通過可能な第1の貫通孔が形成され、前記第2の要素筐体には、2つの前記端子部のうちの前記突起を有さない第2の端子部が通過可能であるが前記第1の端子部が通過できない第2の貫通孔が形成されていることを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
前記電流検出用バスバーにおいて、前記第1の端子部は平板状の基部と該基部の一部から起立した前記突起とにより構成され、前記第2の端子部は平板状である、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記電流検出用バスバーは、断面の幅及び厚みが前記磁性体コアの両端の間隔よりも大きく形成され前記磁性体コアの前記中空部を貫通可能な金属部材の両端部分がプレス加工により他の部分よりも広い幅の扁平形状へ押しつぶされた構造を有する部材であり、押しつぶされた両端部分が2つの前記端子部を構成する請求項1又は請求項2に記載の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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