説明

電流検出装置

【課題】並行してびている第1電流経路と第2電流経路の各々の通電電流を正確に検出する。
【解決手段】 2本の電流経路が並行してびている方向をz方向とするx−y−z直交系を想定したときに、第1電流経路には、+z,+x,+z,−x,+zの順序でびる方向を変える第1屈曲部を形成し、第2電流経路には、+z,+y,+z,−y,+zの順序でびる方向を変える第2屈曲部を形成する。第1屈曲部の中間部分のz座標範囲と第2屈曲部の中間部分のz座標範囲のうちの一方が他方を包含する関係に設定し、包含されるz座標範囲内にx方向の磁束密度とy方向の磁束密度を検出する磁束密度検出装置を配置する。第1電流経路の通電電流値と第2電流経路の通電電流値を独立に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、並行して伸びている2本の電流経路に通電している電流値を独立に検出する技術を開示する。すなわち、第1電流経路と第2電流経路が並列している場合に、第2電流経路の通電電流の影響を避けながら第1電流経路の通電電流値(以下では第1電流値という)を検出し、第1電流経路の通電電流の影響を避けながら第2電流経路の通電電流値(以下では第2電流値という)を検出する技術を開示する。3本の電流経路に3相交流が通電されている場合、第1電流値と第2電流値から第3電流経路の通電電流値(以下では第3電流値という)を算出することができる。本技術を3相交流に適用すると、3相(U相、V相、W相)の電流値を検出することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
並行して伸びている2本の電流経路の通電電流値を検出する場合、通常は、第2電流値が第1電流値の検出結果に影響し、第1電流値が第2電流値の検出結果に影響する。
【0003】
特許文献1に、第2電流値の影響を避けながら第1電流値を検出し、第1電流値の影響を避けながら第2電流値を検出する技術が開示されている。
特許文献1の技術では、並列している3本の電流経路の中間部に、斜めに伸びる部分を設ける。以下では、斜めに伸びる部分を斜行部といい、斜行部以外の部分を直行部ということにする。電流経路を流れる電流によって、電流経路の周囲には、右ねじの法則に従った磁場が形成される。斜行部を設けた電流経路の周囲には、直行部を流れる電流による磁場と斜行部を流れる電流による磁場の両者が形成される。電流経路に斜行部を設けると、直行部を流れる電流による磁場も形成されなければ斜行部を流れる電流による磁場も形成されない範囲を得ることができる。すなわち磁場が広がらないギャップ領域を得ることができる。
【0004】
特許文献1の技術では、第2電流経路のギャップ領域であり、第3電流経路のギャップ領域でもあるが、第1電流経路による磁場は広がる範囲に、第1磁束密度検出装置を配置する。第1磁束密度検出装置によって、第1電流値に対応する磁束密度が検出される。第2電流値と第3電流値の影響を受けることなく、第1電流値を検出することができる。
第2電流値についても同様であり、第3電流経路のギャップ領域であり、第1電流経路のギャップ領域でもあるが、第2電流経路による磁場は広がる範囲に、第2磁束密度検出装置を配置する。第2磁束密度検出装置によって、第2電流値に対応する磁束密度が検出される。第3電流値と第1電流値の影響を受けることなく、第2電流値を検出することができる。第3電流値についても同様であり、第1電流経路のギャップ領域であり、第2電流経路のギャップ領域でもあるが、第3電流経路による磁場は広がる範囲に、第3磁束密度検出装置を配置する。第3磁束密度検出装置によって、第3電流値に対応する磁束密度が検出される。第1電流値と第2電流値の影響を受けることなく、第3電流値を検出することができる。
【0005】
特許文献1の技術は、2本の電流経路の通電電流値を検出する場合にも有効である。この場合は、第2電流経路のギャップ領域ではあるが第1電流経路による磁場は広がる範囲に第1磁束密度検出装置を配置し、第1電流経路のギャップ領域ではあるが2電流経路による磁場は広がる範囲に第2磁束密度検出装置を配置する。第1磁束密度検出装置によって、第2電流値の影響を受けることなく、第1電流値を検出することができる。第2磁束密度検出装置によって、第1電流値の影響を受けることなく、第2電流値を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−175474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術は、斜行部を設けることで磁場が広がらないギャップ領域を得ることができるという知見を活用したすぐれた技術であるが、2本の電流経路の間隔が狭い場合には、第2電流経路のギャップ領域ではあるが第1電流経路による磁場は広がる範囲が狭くなり、その範囲内に第1磁束密度検出装置を配置することが困難となる。同様に、第1電流経路のギャップ領域ではあるが第2電流経路による磁場は広がる範囲が狭くなり、その範囲内に第2磁束密度検出装置を配置することが困難となる。また、ギャップ領域といっても磁束密度がゼロではなく、漏れ磁束が広がっている。2本の電流経路の間隔が狭い場合には、上記の範囲に磁束密度検出装置を配置することができても、漏れ磁束の影響が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、並行して伸びている2本の電流経路の通電電流値を独立に検出する技術を開示する。本明細書では、電流経路に屈曲部を設け、第1電流経路による磁束方向と第2電流経路による磁束方向が直交する関係を得る技術を開示する。
【0009】
本明細書で開示する電流検出装置は、屈曲部以外では並行している第1電流経路と第2電流経路の各々に通電している電流値を検出する。以下では、x−y−z直交座標系を想定し、第1電流経路と第2電流経路が並行して伸びている方向をz方向とする。
第1電流経路には、伸びている方向が+z,+x,+z,−x,+zの順序で変化しているx方向屈曲部が形成されている。x方向屈曲部は、x−z面内で屈曲している。第2電流経路には、伸びている方向が+z,+y,+z,−y,+zの順序で変化しているy方向屈曲部が形成されている。y方向屈曲部は、y−z面内で屈曲している。x方向屈曲部が属するx−z面上にあって、第1電流経路が+x方向に伸びている部分(以下では+x部分という)と−x方向に伸びている部分(以下では−x部分という)に挟まれている範囲内に、y方向の磁束密度を検出するy方向磁束密度検出装置が配置されている。またy方向屈曲部が属するy−z面上にあって、第2電流経路が+y方向に伸びている部分(以下では+y部分という)と−y方向に伸びている部分(以下では−y部分という)に挟まれている範囲内に、x方向の磁束密度を検出するx方向磁束密度検出装置が配置されている。x方向屈曲部とy方向屈曲部は、磁性材の枠で取り囲まれている。
【0010】
x方向屈曲部において伸びている方向が+z,+x,+z,−x,+zの順序で変化するという場合、変化点で方向が急激に変化してもよいし、徐々に変化してもよい。急激に変化すれば、コの字形状の屈曲部となり、徐々に変化すればU字形状の屈曲部となる。y方向屈曲部についても同様である。
【0011】
x方向屈曲部が属するx−z面上にあって、+x部分と−x部分に挟まれている範囲を第1中間範囲ということにする。またy方向屈曲部が属するy−z面上にあって+y部分と−y部分に挟まれている範囲を第2中間範囲ということにする。
x方向屈曲部を流れる電流は、右ねじの法則に従って、第1中間範囲では、y方向に伸びる磁束を生成する。しかも、+x部分の通電電流によって生成される磁束と、+z方向に伸びる部分の通電電流によって生成される磁束と、−x部分の通電電流によって生成される磁束が同一方向となって重畳する。同様に、y方向屈曲部を流れる電流は、右ねじの法則に従って、第2中間範囲では、x方向に伸びる磁束を生成する。しかも、+y部分の通電電流によって生成される磁束と、+z方向に伸びる部分の通電電流によって生成される磁束と、−y部分の通電電流によって生成される磁束が同一方向となって重畳する。
【0012】
第1中間範囲にy方向磁束密度検出装置を配置すれば、x方向屈曲部を流れる電流によって生成されるy方向の磁束密度が検出される。y方向屈曲部を流れる電流によって生成される磁束はx方向を向き、y成分を持たないことから、y方向屈曲部を流れる電流(すなわち第2電流値)の影響を避けながら、x方向屈曲部を流れる電流(すなわち第1電流値)を検出することができる。さらにy方向磁束密度検出装置で検出するy方向磁束は、+x部分の通電電流によって生成される磁束と、+z方向に伸びる部分の通電電流によって生成される磁束と、−x部分の通電電流によって生成される磁束が重畳したものであり、磁束密度が高い。高い検出感度を得ることができる。
同様に、第2中間範囲にx方向磁束密度検出装置を配置すれば、y方向屈曲部を流れる電流によって生成されるx方向の磁束密度が検出される。x方向屈曲部を流れる電流によって生成される磁束はy方向を向き、x成分を持たないことから、x方向屈曲部を流れる電流(すなわち第1電流値)の影響を避けながら、y方向屈曲部を流れる電流(すなわち第2電流値)を検出することができる。さらに、x方向磁束密度検出装置で検出するx方向磁束は、+y部分の通電電流によって生成される磁束と、+z方向に伸びる部分の通電電流によって生成される磁束と、−y部分の通電電流によって生成される磁束が重畳したものであり、磁束密度が高い。高い検出感度を得ることができる。
またx方向屈曲部とy方向屈曲部は、磁性材の枠で取り囲まれており、外部磁場の影響で誤検出することにも対策されている。
【0013】
第1電流経路の+x部分と−x部分の間にあって+z方向に伸びる部分を第1中間部分とし、第2電流経路の+y部分と−y部分の間にあって+z方向に伸びる部分を第2中間部分としたときに、第1中間部分のz座標範囲と第2中間部分のz座標範囲のうちの一方が他方を包含する関係に設定することが好ましい。この場合、一方のz座標範囲に包含される他方のz座標範囲内に、x方向の磁束密度とy方向の磁束密度を検出する2成分磁束密度検出装置を配置することができる。
第1中間部分と第2中間部分のうちの一方のz座標範囲が他方のz座標範囲を包含する関係に設定すると、第1中間範囲でもあるととともに第2中間範囲である地点を得ることができ、x方向磁束密度検出装置とy方向磁束密度検出装置を同一位置に配置することが可能となる。x方向磁束密度検出装置とy方向磁束密度検出装置を別々に設置するのに代えて、x方向磁束密度検出機能とy方向磁束密度検出機能を兼ね備えた2成分磁束密度検出装置を配置することができる。
【0014】
x−y面内で2成分磁束密度検出装置と第1中間部分を結ぶ線分と、x−y面内で2成分磁束密度検出装置と第2中間部分を結ぶ線分が直交する位置に、2成分磁束密度検出装置が配置されていることが好ましい。あるいは、x方向屈曲部が属するx−z面と、y方向屈曲部が属するy−z面が交差する線上に、2成分磁束密度検出装置が配置されていることが好ましい。
【0015】
第1中間部分のz座標範囲の中間値と、第2中間部分のz座標範囲の中間値が一致する関係に設定しておくことが好ましい。その場合、その一致点に2成分磁束密度検出装置を配置する。この場合、+x部分の通電電流によって生成される磁束密度と、−x部分の通電電流によって生成される磁束密度が等しくなり、2成分磁束密度検出装置の存在位置に生じるy方向磁束密度が大きくなる。同様に、+y部分の通電電流によって生成される磁束密度と、−y部分の通電電流によって生成される磁束密度が等しくなり、2成分磁束密度検出装置の存在位置に生じるx方向磁束密度が大きくなる。検出感度が向上する。
【0016】
3相交流の通電経路は、第1電流経路と第2電流経路に並行する第3電流経路を備えている。この場合、y−z面内において、第1電流経路と第2電流経路と第3電流経路の順で配置することが好ましい。また第3電流経路から第1電流経路に向かう方向が+y方向であると扱うことが好ましい。
【0017】
磁性材の枠が、y−z面においてx方向屈曲部とy方向屈曲部を取り囲んでおり、第3電流経路が枠の外側を通過していることが好ましい。あるいは、磁性材の枠が、x−y面においてx方向屈曲部とy方向屈曲部を取り囲んでおり、第3電流経路が枠の外側を通過している関係にしてもよい。
【0018】
2成分磁束密度検出装置が、x方向の磁束密度を検出する向きに配置された第1ホール素子と、y方向の磁束密度を検出する向きに配置された第2ホール素子を備えていてもよい。あるいは、複数個のGMR素子を含むブリッジ回路を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、第1電流経路と第2電流経路が並列している場合に、第1電流経路の通電電流の影響を避けながら第2電流経路の通電電流値を検出し、第2電流経路の通電電流の影響を避けながら第1電流経路の通電電流値を検出することができる。また、3本の電流経路に3相交流が通電されている場合、第1電流経路の通電電流値と第2電流経路の通電電流値から第3電流経路の通電電流値を算出することができることから、本発明によって、3相(U相、V相、W相)の電流値を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1電流経路のx方向屈曲部と、第2電流経路のy方向屈曲部と、第3電流経路と、2成分磁束密度検出装置を示す斜視図。
【図2】(a)は第1電流経路のx方向屈曲部の通電電流で生成する磁束の方向を示す。(b)は第2電流経路のy方向屈曲部の通電電流で生成する磁束の方向を示す。
【図3】(a)はx方向屈曲部とy方向屈曲部をz方向から観察したときの磁束の方向を示す。(b)はx方向屈曲部をy方向から観察したときの磁束の方向を示す。(c)はy方向屈曲部をx方向から観察したときの磁束の方向を示す。
【図4】磁性材の枠が外部磁場に及ぼす影響を模式的に示す。
【図5】x方向の磁束密度を検出する向きに配置された第1ホール素子と、y方向の磁束密度を検出する向きに配置された第2ホール素子を備えている2成分磁束密度検出装置を示す。
【図6】複数個のGMR素子を含むブリッジ回路を備えている2成分磁束密度検出装置を示す。
【図7】(a)から(d)は、第1電流経路のx方向屈曲部と、第2電流経路のy方向屈曲部と、第3電流経路の関係を例示している。
【図8】第2実施例の枠を持つ電流検出回路を示す。
【図9】第3実施例の枠を持つ電流検出回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
下記に示す実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1)電流経路は金属帯(バスバ)で形成されている。
(特徴2)第1電流経路と第2電流経路と第3電流経路の順に配置されている。
(特徴3)第1電流経路と第2電流経路と第3電流経路の各々が伸びている方向をz方向とし、第3電流経路から第2電流経路を経て第1電流経路に向かう方向をy方向とする。第1電流経路にx方向屈曲部が形成されており、第2電流経路にy方向屈曲部が形成されている。y−z面内において、y方向屈曲部は第1電流経路を越えて伸びている。
(特徴4)y方向屈曲部の内側にx方向屈曲部が入り込んでいる。
(特徴5)x方向屈曲部の内側に2成分磁束密度検出装置が配置されている。
(特徴6)y−z面内において、第1電流経路と重なる位置に2成分磁束密度検出装置が配置されている。
(特徴7)2成分磁束密度検出装置から+x部分(x方向屈曲部において+x方向に伸びている部分)までの距離と、2成分磁束密度検出装置から−x部分(x方向屈曲部において−x方向に伸びている部分)までの距離が等しい。
(特徴8)2成分磁束密度検出装置から+y部分(y方向屈曲部において+y方向に伸びている部分)までの距離と、2成分磁束密度検出装置から−y部分(y方向屈曲部において−y方向に伸びている部分)までの距離が等しい。
(特徴9)+x部分の長さと−x部分の長さが等しい。
(特徴10)+y部分の長さと−y部分の長さが等しい。
【実施例】
【0022】
図1は、3相交流が流れる3本の電流経路、すなわち、第1電流経路10と第2電流経路20と第3電流経路30を示している。第1電流経路10にはU相が流れ、第2電流経路20にはV相が流れ、第3電流経路30にはW相が流れる。図1に示す電流検出装置1では、第1電流経路10の通電電流値(第1電流値という)と、第2電流経路20の通電電流値(第2電流値という)を、2成分磁束密度検出装置50で検出する。3相交流の場合、U相の電流値(第1電流値)と、V相の電流値(第2電流値)が検出されれば、W相の電流値(第3通電経路を流れる第3電流値)が判明する。図1の電流検出装置1は、第1電流値(U層電流値)と、第2電流値(V層電流値)と、第3電流値(W層電流値)の各々を検出する装置であるということができる。
【0023】
第1電流経路10と第2電流経路20と第3電流経路30の各々は、低抵抗の金属製の帯(バスバ)で形成されている。各バスバの長手方向は揃っており、その方向をz方向という。以下では、上から下に向かう方向を+z方向という。また第3電流経路30から第2電流経路20を経て第1電流経路10に向かう方向を+y方向とする。またy方向とz方向に直交する方向をx方向とする。特に紙面右奥に向かう方向を+x方向とする。第1電流経路10と第2電流経路20と第3電流経路30は、y−z面内に配置されている。
【0024】
第1電流経路10を上から下に観察すると、+z方向に伸びている部分10aと、+x方向に伸びている部分(+x部分)10bと、+z方向に伸びている部分(第1中間部分)10cと、−x方向に伸びている部分(−x部分)10dと、+z方向に伸びている部分10eが、その順序で連続していることがわかる。それによってx方向屈曲部10fが形成されている。
第2電流経路20を上から下に観察すると、+z方向に伸びている部分20aと、+y方向に伸びている部分(+y部分)20bと、+z方向に伸びている部分(第2中間部分)20cと、−y方向に伸びている部分(−y部分)20dと、+z方向に伸びている部分20eが、その順序で連続していることがわかる。それによってy方向屈曲部20fが形成されている。y−z面内において、y方向屈曲部20fは第1電流経路10を越えて伸びている。
第3電流経路30は、一様に+z方向に伸びており、屈曲部を備えていない。
【0025】
図3(b)は、x方向屈曲部10fをy方向から観察した図であり、第1中間部分10cは、第1z座標範囲z10(z2〜z3)を伸びている。図3(c)は、y方向屈曲部20fをx方向から観察した図であり、第2中間部分20cは、第2z座標範囲z20(z1〜z4)を伸びている。z1<z2<z3<z4である。第1z座標範囲z10(z2〜z3)は、第2z座標範囲z20(z1〜z4)に包含されている。前記したようにy−z面内において、y方向屈曲部20fは第1電流経路10を越えて伸びている。その結果、y方向屈曲部20fの内側にx方向屈曲部10fが入り込んでいる。
【0026】
+x部分10bと−x部分10dに挟まれている範囲であって、x方向屈曲部10fを含んでいるx−z面上に、2成分磁束密度検出装置50が配置されている。2成分磁束密度検出装置50は、同時に、+y部分20bと−y部分20dに挟まれている範囲であって、y方向屈曲部20fを含んでいるy−z面上にもある。
【0027】
図3(b)に示すように、2成分磁束密度検出装置50が配置されている位置50aから+x部分10bまでの距離L10と、位置50aから−x部分10dまでの距離L10は等しい。位置50aのz座標は、第1z座標範囲z10(z2〜z3)の中間値(z2+z3)/2に等しく、第1z座標範囲z10内にある。
図3(c)に示すように、位置50aから+y部分20bまでの距離L20と、位置50aから−y部分20dまでの距離L20は等しい。位置50aのz座標は、第2z座標範囲z20(z1〜z4)の中間値(z1+z4)/2に等しく、第2z座標範囲z20内にある。(z2+z3)/2=(z1+z4)/2の関係に設定されている。
【0028】
図3(a)は、x方向屈曲部10fとy方向屈曲部20fをz方向から観察した図である。位置50aは、x方向屈曲部10fが属するx−z面と、y方向屈曲部20fが属するy−z面が交差する線上に配置されている。また、x−y面内で観察すると、位置50aと第1中間部分10cを結ぶ線分と、位置50aと第2中間部分20cを結ぶ線分が直交する関係が得られる位置に、2成分磁束密度検出装置50が配置されている。
【0029】
図2(a)は、+x部分10bの通電電流で生成される磁束12bと、第1中間部分10cの通電電流で生成される磁束12cと、−x部分10dの通電電流で生成される磁束12dを示している。位置50aでは、磁束12bも磁束12cも磁束12dも+y方向を向いている。そのことは、図3からも確認される。位置50aでは、同一方向を向いた磁束12bと磁束12cと磁束12dが重畳した強い磁束Byが発生する。
図2(b)は、+y部分20bの通電電流で生成される磁束22bと、第2中間部分20cの通電電流で生成される磁束22cと、−y部分20dの通電電流で生成される磁束22dを示している。位置50aでは、磁束22bも磁束22cも磁束22dも−x方向を向いている。そのことは、図3からも確認される。位置50aでは、同一方向を向いた磁束22bと磁束22cと磁束22dが重畳した強い磁束密度Bxが発生する。
【0030】
位置50aのz座標=(z2+z3)/2の関係に設定されていると、位置50aにおいて+x部分10bの通電電流で生成される磁束12bと、位置50aにおいて−x部分10dの通電電流で生成される磁束12dは等しくなる。2成分磁束密度検出装置50のz座標が(z2+z3)/2に等しくなければ、磁束12bと磁束12dは等しくない。前者の場合は後者の場合より、磁束12bと磁束12dを重畳した磁束密度が高くなる。
実施例の場合、同じ通電電流値であれば最大の磁束密度が得られる位置に2成分磁束密度検出装置50が配置されている。
【0031】
位置50aのz座標=(z1+z4)/2の関係に設定されていると、位置50aにおいて+y部分20bの通電電流で生成される磁束22bと、位置50aにおいて−y部分20dの通電電流で生成される磁束22dは等しくなる。2成分磁束密度検出装置50のz座標が(z1+z4)/2に等しくなければ、磁束22bと磁束22dは等しくない。前者の場合は後者の場合より、磁束22bと磁束22dを重畳した磁束密度が高くなる。
実施例の場合、同じ通電電流値であれば最大の磁束密度が得られる位置に2成分磁束密度検出装置50が配置されている。
【0032】
位置50aに生成されるy方向の磁束Byは、x方向屈曲部10fを流れる電流によってのみ生成され、y方向屈曲部20fを流れる電流の影響を受けない。y方向屈曲部20fを流れる電流は、位置50aではx方向の磁束Bxのみを生成し、y方向成分を生成しないからである。同様に、位置50aに生成されるx方向の磁束Bxは、y方向屈曲部20fを流れる電流によってのみ生成され、x方向屈曲部10fを流れる電流の影響を受けない。x方向屈曲部10fを流れる電流は、位置50aではy方向の磁束Byのみを生成し、x方向成分を生成しないからである。従って、磁束Byを検出すれば、x方向屈曲部10fを流れる電流を検出ことができる。y方向屈曲部20fを流れる電流は検出結果に影響を与えない。同様に、磁束Bxを検出すれば、y方向屈曲部20fを流れる電流を検出ことができる。x方向屈曲部10fを流れる電流は検出結果に影響を与えない。第1電流値が第2電流値の検出結果に影響を与えることもなければ、第2電流値が第2電流値の検出結果に影響を与えることもない。
【0033】
図1に示すように、磁性材の枠で40が、x方向屈曲部10fとy方向屈曲部20fを取り囲んでいる。第3電流経路30は、枠40の外側にある。図4は、外部磁場に対して磁性材の枠40が与える影響を模式的に図示している。外部磁場は、枠40に接近するにつれて枠40に吸引される。2成分磁束密度検出装置50が配置されている位置には、外部磁場が到達しない。第3電流経路30は枠40の外側にあり、その通電電流によって生成される磁場は、図4に示す外部磁場に相当する。第3電流経路30を流れる電流が、第1電流値と第2電流値の検出結果に影響を与えることがない。
【0034】
図5は、2成分磁束密度検出装置50の一例を示している。磁束Byを検出する向きに配置されている第1ホール素子56と、磁束Bxを検出する向きに配置されている第2ホール素子5を備えており、両者は基板52で相対的位置関係が固定されている。第1ホール素子56が磁束Byを検出して第1電流値を検出し、第2ホール素子54が磁束Bxを検出して第2電流値を検出する。
【0035】
図6は、2成分磁束密度検出装置50aの他の例を示している。その詳細は、特開2011−22075号公報に開示されている。図示の59は、バイアス磁石であり、58は基板を示している。基板58には、複数個のGMR素子(Giant Magneto Resistive effectを発揮する抵抗体)を利用するブリッジ回路が形成されている。2成分磁束密度検出装置50aは、磁束Byと磁束Bxを独立に検出することができる。
【0036】
図7は、x方向屈曲部とy方向屈曲部の種々の組み合わせを示している。図7(a)は図1の配置関係に対応する。図7(b)は、x方向屈曲部10fのz座標範囲がy方向屈曲部20fのz座標範囲を包含しており、y方向屈曲部20fがx方向屈曲部10fの内側に入り込んでいる配置を示している。図7(c)(d)は、x方向屈曲部10fが形成されている第1電流経路10が、y方向屈曲部20fが形成されている第2電流経路20と第3電流経路30の間に配置されている例を示している。(c)は、y方向屈曲部20fのz座標範囲がx方向屈曲部10fのz座標範囲を包含しており、x方向屈曲部10fがy方向屈曲部210fの内側に入り込んでいる配置を示している。(d)は、x方向屈曲部10fのz座標範囲がy方向屈曲部20fのz座標範囲を包含しており、y方向屈曲部20fがx方向屈曲部10fの内側に入り込んでいる配置を示している。
【0037】
図7のいずれにおいても、
(1)x方向屈曲部10fのz座標範囲の中間値=y方向屈曲部20fのz座標範囲の中間値の関係に設定し、その中間値の位置に2成分磁束蜜検出装置50を配置する。
(2)x方向屈曲部10fが属するx−z面と、y方向屈曲部20fが属するy−z面が交わる線分上に2成分磁束蜜検出装置50を配置する。
(3)(2)の結果、x−y面内で2成分磁束密度検出装置50と第1中間部分10cを結ぶ線分と、x−y面内で2成分磁束密度検出装置50と第2中間部分20cを結ぶ線分が直交することになる。
上記の関係にあると、2成分磁束密度検出装置50の存在位置において、+x部分10bの通電電流が生成する磁束方向は+y方向となり、第1中間部分10cが生成する磁束方向も+y方向となり、−x部分10dの通電電流が生成する磁束方向も+y方向となる。また図7(a)(b)の場合、2成分磁束密度検出装置50の存在位置において、+y部分20bの通電電流が生成する磁束方向は−x方向となり、第2中間部分20cが生成する磁束方向も−x方向となり、−y部分20dの通電電流が生成する磁束方向も−x方向となる。また図7(c)(d)の場合、2成分磁束密度検出装置50の存在位置において、−y部分20bの通電電流が生成する磁束方向は+x方向となり、第2中間部分20cが生成する磁束方向も+x方向となり、+y部分20dの通電電流が生成する磁束方向も+x方向となる。図7の全部の場合について、2成分磁束密度検出装置50の存在位置では、x方向屈曲部10fの通電電流によって生成される磁束はy成分のみを持ち(x成分を持たない)、y方向屈曲部20fの通電電流によって生成される磁束はx成分のみを持つ(y成分を持たない)。2成分磁束密度検出装置50でy方向の磁束密度を検出すれば、y方向屈曲部20fの通電電流の影響を受けずに、x方向屈曲部10fの通電電流を検出することができる。同様に、2成分磁束密度検出装置50でx方向の磁束密度を検出すれば、x方向屈曲部10fの通電電流の影響を受けずに、y方向屈曲部20fの通電電流を検出することができる。
図7のいずれにおいても、+x部分10bによる磁束と−x部分10dによる磁束は同一方向となり、それらが重畳した磁束の密度を検出することから第1電流値の検出感度が高い。また、+y部分による磁束と−y部分による磁束は同一方向となり、それらが重畳した磁束の密度を検出することから第2電流値の検出感度も高い。
なお、図7(a)(b)によると、第3電流経路30から2成分磁束密度検出装置50までの距離を長く取ることができる。第3電流経路30が生成する磁束の影響を小さく抑えることができる。
【0038】
図8は、外部磁気をシールドする枠40の第2実施例を示している。この枠40は、完全に一周しておらず、ギャップ40aを残している。ギャップ40aが残っていても大部分の外部磁気をシールドすることができる。ギャップ40aが残っていてもよい場合、枠40の製造過程が簡単化される。
【0039】
図1と図8では、y−z面において、枠40がx方向屈曲部10fとy方向屈曲部20fを取り囲んでいる。それに対して、図9に示すように、x−y面において、x方向屈曲部10fとy方向屈曲部20fを取り囲んでいる枠60を利用してもよい。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
10:第1電流経路
10a:+z部分
10b:+x部分
10c:+z部分:第1中間部分
10d:−x部分
10e:+z部分
10f:x方向屈曲部
20:第2電流経路
20a:+z部分
20b:+y部分
20c:+z部分:第2中間部分
20d:−y部分
20e:+z部分
20f:y方向屈曲部
30:第3電流経路
40:磁性材の枠
50:2成分磁束密度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部以外では並行している第1電流経路と第2電流経路の各々に通電している電流値を検出する装置であり、
第1電流経路と第2電流経路が並行して伸びている方向をz方向とするx−y−z直交座標系を想定したときに、
第1電流経路には、伸びている方向が+z,+x,+z,−x,+zの順序で変化しているx方向屈曲部が形成されており、
第2電流経路には、伸びている方向が+z,+y,+z,−y,+zの順序で変化しているy方向屈曲部が形成されており、
x方向屈曲部が属するx−z面上にあって第1電流経路が+x方向に伸びている+x部分と−x方向に伸びている−x部分に挟まれている範囲に、y方向の磁束密度を検出するy方向磁束密度検出装置が配置されており、
y方向屈曲部が属するy−z面上にあって第2電流経路が+y方向に伸びている+y部分と−y方向に伸びている−y部分に挟まれている範囲に、x方向の磁束密度を検出するx方向磁束密度検出装置が配置されており、
x方向屈曲部とy方向屈曲部が磁性材の枠で取り囲まれていることを特徴とする電流検出装置。
【請求項2】
第1電流経路の+x部分と−x部分の間にあって+z方向に伸びる部分を第1中間部分とし、第2電流経路の+y部分と−y部分の間にあって+z方向に伸びる部分を第2中間部分としたときに、第1中間部分のz座標範囲と第2中間部分のz座標範囲のうちの一方が他方を包含する関係にあり、
包含されるz座標範囲内に、x方向の磁束密度とy方向の磁束密度を検出する2成分磁束密度検出装置が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
x−y面内で2成分磁束密度検出装置と第1中間部分を結ぶ線分と、x−y面内で2成分磁束密度検出装置と第2中間部分を結ぶ線分が直交する位置に、2成分磁束密度検出装置が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
x方向屈曲部が属するx−z面と、y方向屈曲部が属するy−z面が交差する線上に、2成分磁束密度検出装置が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
第1中間部分のz座標範囲の中間値と、第2中間部分のz座標範囲の中間値が一致する関係にあり、その一致点に2成分磁束密度検出装置が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の電流検出装置。
【請求項6】
第1電流経路と第2電流経路に並行する第3電流経路が存在し、
y−z面内で第1電流経路と第2電流経路と第3電流経路がその順で配置されており、
第3電流経路から第1電流経路に向かう方向が+y方向であることを特徴とする請求項1から5のいずれかの1項に記載の電流検出装置。
【請求項7】
磁性材の枠が、y−z面においてx方向屈曲部とy方向屈曲部を取り囲んでおり、第3電流経路が枠の外側を通過していることを特徴とする請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項8】
磁性材の枠が、x−y面においてx方向屈曲部とy方向屈曲部を取り囲んでおり、第3電流経路が枠の外側を通過していることを特徴とする請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項9】
2成分磁束密度検出装置が、x方向の磁束密度を検出する向きに配置された第1ホール素子と、y方向の磁束密度を検出する向きに配置された第2ホール素子を備えていることを特徴とする請求項2から8のいずれかの1項に記載の電流検出装置。
【請求項10】
2成分磁束密度検出装置が、複数個のGMR素子を含むブリッジ回路を備えていることを特徴とする請求項2から8のいずれかの1項に記載の電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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