電流測定装置及び電流測定方法
【課題】 半導体基板などの測定サンプルに対して照射する電子ビームのエネルギーレベルを容易に設定できる電流測定装置及び電流測定方法を提供する。
【解決手段】 電子ビーム3が照射された測定サンプル4に生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビーム3の放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバー1と、電子ビーム3を設定されたエネルギーで放出する電子ビーム源2と、電子ビーム源2から放出された電子ビーム3を測定サンプル4の特定場所に照射する手段と、測定サンプル4に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路(電流計5)と、前記電流測定回路と接地電位との間にバイアス電圧Vmを印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
【解決手段】 電子ビーム3が照射された測定サンプル4に生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビーム3の放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバー1と、電子ビーム3を設定されたエネルギーで放出する電子ビーム源2と、電子ビーム源2から放出された電子ビーム3を測定サンプル4の特定場所に照射する手段と、測定サンプル4に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路(電流計5)と、前記電流測定回路と接地電位との間にバイアス電圧Vmを印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置及び電流測定方法に関する。また、本発明は、電子ビームを利用して、半導体デバイス製造工程途中のプロセス評価などを行うのに好適な電流測定装置及び電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム照射時に流れる基板電流を用いて半導体デバイスのプロセス良否を評価する方法として基板電流法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。この方法は、例えばエッチングを終えた状態のウエハに対して、一定のエネルギーを持つ電子ビームを数秒の間、照射し、その時に生じる基板電流の大小あるいは極性からプロセスの状態を知る方法である。例えば電子ビームエネルギーとしては1KeVが利用され、電流量としてはピコアンペア(pA)の大きさを用いる。
【0003】
この方法では、プロセス結果が同じである場合、同じ基板電流が生じ、プロセス結果が異なる場合、異なった電流が生じることでプロセス状態を把握できる。
【0004】
以上のようにプロセスの相対的な変化を知る場合、照射電子ビームのエネルギーレベルは単一で良いが、絶対的なプロセス状態を調べるためには、種々の加速電圧を組み合わせて利用することが必要である。また、測定感度は電子ビームエネルギーによって変化するので最適な値を測定対象毎に見つける必要がある。このためには、図14に示すように、電子ビーム源2から放出される電子ビーム3に加えられる加速電圧(高圧電源の電圧)Vhを切り替えて使用していた。
【特許文献1】特許第3334750号公報
【特許文献2】特許第3292159号公報
【特許文献3】特許第3175765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板電流から精密な測定を行うためには、複数のエネルギーレベルを有した電子ビームを利用することが必要である。つまり、全く同じ測定点に対して電子ビームのエネルギーレベルだけが異なる状態で測定を行うことが必要である。しかし、従来は、照射電子ビームのエネルギーレベルを変えるために電子ビーム発生装置の高圧電源の電圧を変更していた。高圧電源の電圧を変更すると、電子ビームの軸が大きく変化するため、全く同じ場所に正確に電子ビームを照射することが困難であった。そのため、従来の基板電流測定方法では、測定精度が低下するという課題があった。
【0006】
また、測定感度を変化させるために非常に低いエネルギーレベルを有した電子ビームを使用する必要があるが、従来における高圧電源の電圧の変更だけでは、非常に低いエネルギーレベルの電子ビームを実現することは困難であった。また、従来方法としては、図15に示すように半導体基板である測定サンプル4にバイアス電圧Vbを印加する方法も知られていた。しかし、この方法では、電流計5と並列に電源20が入るため、測定に必要な基板電流が電源20を介してグランド(接地)に流れてしまう。このため実質的に電流計5に流れる電流が「0」となってしまい測定できない。そればかりか、電子ビーム3のエネルギーレベルを変えるために、電源20により数キロボルトという電圧Vbを測定サンプル4に加えると電流計5が破壊するなど、実用的には使えないという大きな課題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、半導体基板などの測定サンプルに対して照射する電子ビームのエネルギーレベルを容易に設定できる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させことができる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の電流測定装置は、電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、前記測定サンプルに流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、電圧印加手段によって電流測定回路にバイアス電圧を印加することができる。これにより、測定サンプルの電位を制御することができる。そして、測定サンプルが電子ビーム照射で受ける実効エネルギーは、その電子ビームのエネルギーから測定サンプルの電位を引いた値となる。したがって、本発明は、電子ビーム放出源から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプルが受ける実効エネルギーを小さくすることができる。そこで、本発明は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の電流測定装置は、電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、前記測定サンプルに容量結合している電極と、前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、測定サンプルに対して直接バイアス電圧を印加せずに、電流測定回路に印加した電圧により測定サンプルの電位を変化させることができる。そして、測定サンプルが受ける実効エネルギーは、照射された電子ビームのエネルギーから測定サンプルの電位を引いた値となる。したがって、本発明は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。また、本発明は、測定サンプルと電流測定回路(又は電極)とを配線接続する必要がなく、測定サンプルの測定位置などへの設置及び取り外しが容易となり、実用性を高くすることができる。
【0010】
また、本発明の電流測定装置は、電子ビームを測定サンプルに照射することにより生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、前記測定サンプルへの電子ビームの照射によって発生した散乱電子又は二次電子を回収する電極と、前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、電圧印加手段によって電流測定回路にバイアス電圧を印加することができる。これにより、測定サンプルの電位を制御することができる。そして、測定サンプルが電子ビーム照射で受ける実効エネルギーは、その電子ビームのエネルギーから測定サンプルの電位を引いた値となる。したがって、本発明は、電子ビーム放出源から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプルが受ける実効エネルギーを小さくすることができる。ここで、低いエネルギーを有する電子ビームは、二次電子放出確率を向上させることができる。そこで、本発明は、測定サンプルへの電子ビーム照射により生じる電流の測定において、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、感度と精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の電流測定装置は、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャを有することを特徴とする。
本発明によれば、電子ビームについてアパーチャを通過させることにより、エネルギーの揃った電子ビームを測定サンプルへ照射することができる。そこで、本発明は、測定サンプルの所望部位に高度に焦点の合った電子ビームを照射でき、高解像度に測定サンプルを検査することができる。
【0012】
また、本発明の電流測定装置は、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを第1のエネルギーレベルに加速する加速電極と、前記加速電極に電圧を印加する加速電源と、前記加速電極で加速された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャと、前記アパーチャを通過した電子ビームのエネルギーを第2のエネルギーレベルに変換する減速電極と、前記減速電極に電圧を印加する減速電源とを有することを特徴とする。
本発明によれば、電子ビームについてアパーチャを通過させることにより、エネルギーの揃った電子ビームを測定サンプルへ照射することができる。さらに、本発明は、減速電極により、電子ビームを第1のエネルギーレベルから第2のエネルギーレベルに変換することができる。そこで、加速電極などで電子ビームのエネルギーをいくら高くしても、測定サンプルに到達する電子ビームのエネルギーは減速電極によって制御可能である。そこで、本発明は、測定サンプルへダメージを与えることを回避しながら、測定サンプルの所望部位に高度に焦点の合った電子ビームを照射でき、高解像度に測定サンプルを検査することができる。
【0013】
また、本発明の電流測定装置は、前記電圧印加手段が、前記電流測定回路と接地電位との間に可変電圧を印加する可変電源を有してなることを特徴とする。
本発明によれば、電子ビーム放出源側の設定を変更せずに、可変電源の出力を変更することのみで、測定サンプルに照射する電子ビームの実効エネルギーレベルを変更することができる。したがって、非常に簡便且つ迅速に実効エネルギーレベルを変更することができる。また、本発明によれば、測定サンプルにおける同一箇所に異なる実効エネルギーレベルの電子ビームを迅速に照射でき、測定精度の向上を図れるとともに、測定のスループットを向上させることができる。
【0014】
また、本発明の電流測定装置は、前記電流測定回路の電流測定タイミングと同期して、前記電圧印加手段又は可変電源による電圧印加のタイミングを制御する制御手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、電流測定回路を介しての測定サンプルへのバイアス電圧印加のタイミングと、電流測定タイミングとを同期させることができる。これにより、電流測定において問題となるホワイトノイズなどを簡便に除去することができ、測定サンプルに流れる電流などの測定について感度及び精度をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明の電流測定装置は、前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、前記演算増幅器における正又は負入力端子に電圧を印加するバイアス電源とを有することを特徴とする。
本発明によれば、例えば、演算増幅器の負入力端子に測定サンプルを電気的に接続し、演算増幅器の正入力端子にバイアス電圧を印加し、演算増幅器の出力と負入力端子との間に抵抗器を配置した構成とすることができる。このようにすると、バイアス電圧が演算増幅器の負入力端子を介して測定サンプルに印加される。そこで、本発明は、電子ビーム放出源から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプルが受ける実効エネルギーを小さくでき、測定サンプルに対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の電流測定装置は、前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、前記演算増幅器における正又は負入力端子に可変電圧を印加する演算増幅器用可変電源と、前記可変電源の出力電圧を制御する信号を出力する制御信号発生部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、制御信号発生部が出力する信号により、測定サンプルの電位を制御することができる。ここで、演算増幅器用可変電源が出力する可変電圧としては、サイン波、矩形波、ノコギリ波などの周期的な波形でもよく、トリガー的な波形でもよい。これらにより、本発明は、測定サンプルの属性などに応じて、最適な可変電圧を選んで電流測定などをすることができ、より高精度にプロセス評価などをすることができる。
【0017】
また、本発明の電流測定方法は、電子ビームを測定サンプルに照射し、該測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定方法であって、前記測定サンプルに生じる電流について増幅する増幅回路を配置する手順と、前記増幅回路と接地電位との間に電圧を印加する手順とを有することを特徴とする。
本発明によれば、増幅回路と接地電位との間に電圧を印加することにより、測定サンプルの電位を制御することができる。したがって、測定サンプルが電子ビーム照射で受ける実効エネルギーを、前記電圧によって小さくすることができる。そこで、本発明は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、半導体基板などの測定サンプルに対して照射する電子ビームの実効エネルギーレベルを低くしながら、測定サンプルに流れる電流などの測定について感度及び精度を向上させることができる。したがって、測定サンプルに対してダメージを与えることなく、測定サンプルの属性等の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明は、電子ビームが照射された測定サンプルにおける実効エネルギーレベルを低くすることができるので、二次電子放出確率を向上でき、測定感度を高くすることができる。
【0020】
また、本発明は、電子ビーム源などの設定を変えないで、測定サンプルにおける実効エネルギーレベルを大きく可変できるので、非常に早くエネルギーレベルを変更できる。したがって、例えば、測定サンプルにおける同じ箇所に異なるエネルギーレベルの電子ビームを迅速に照射することができ、測定精度を大幅に高めながら、測定のスループットを向上させることができる。
【0021】
また、本発明は、測定サンプルに電子ビームを照射する態様として、電子ビーム源側及びバイアス電源側のそれぞれで各種設定をすることができる。したがって、測定サンプルにおける実効エネルギーレベルが同一であっても、電子ビーム照射及びバイアス電圧の態様として、いろいろな組み合わせをすることができる。その結果、平均的には同じエネルギーを持つ電子ビームのエネルギー分散状態及び空間分布についての調節が可能となり、用途に応じて最適な組み合わせを選んで、高精度な測定をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電流測定装置の全体構成例を示す図である。本実施形態の電流測定装置は、チャンバー1と、電子ビーム源2と、電流計(電流測定回路)5と、バイアス電源(電圧印加手段)6と、XYステージ9とを有して構成されている。また、図1において、測定サンプル4は本電流測定装置の測定対象となるものであり、測定サンプル4には電子ビーム3が照射される。例えば、半導体基板であるウエハなどが測定サンプル4となる。
【0023】
チャンバー1は、電子ビーム3が放出できるように雰囲気制御するためのものである。チャンバー1内には、電子ビーム源2、測定サンプル4、電流計5、バイアス電源6及びXYステージ9が配置されている。電子ビーム源2は、設定された一定のエネルギーで電子ビーム3を放出するものである。ここで、電子ビーム源2が放出する電子ビーム3のエネルギーは、高圧電源の電圧(加速電圧)Vhを可変することで変更可能となっている。それぞれの設定電圧は電圧値記憶手段によって、記憶されている。XYステージ9は、電子ビーム源2から放出された電子ビーム3を測定サンプル4における所望の場所に照射するための位置決め機構であり、本発明の特定場所に照射する手段の一例である。電子ビームが照射される場所等も記憶手段によって記憶されている。
【0024】
電流計5は、本発明の電流測定回路の一例である。すなわち、電流計5は、測定サンプル4に流れる電流について少なくとも増幅する回路を有し、測定サンプル4への電子ビーム照射時に生じる電流を測定するためのものである。また、電流計5は、実際には、機械的な指針による電流計ではなく、微小な電流を電圧信号などに変換して増幅する演算増幅器などを用いた電流測定回路で構成されている(以下、電流計5について同じ)。なお、電流測定回路の詳細については後述する。
バイアス電源6は、本発明の電圧印加手段の一例をなし、電流計5と基準電位(接地電位)との間に電圧Vmを印加するものである。
【0025】
本実施形態の電流測定装置は、測定サンプル4に直列に、電流計5及び電流計5バイアス用のバイアス電源6を接続した構成に特徴がある。ここで、電流計5のインピーダンスは非常に小さく、事実上ゼロとみなせる。したがって、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって、測定サンプル4の電位を変化させることが可能となる。そこで、本実施形態によれば、測定サンプル4に対して、電子ビーム照射エネルギーEirから電流計5に加えるバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを有する電子ビーム照射が実現できる。
【0026】
また、バイアス電圧Vmを変化させることで、瞬時に、測定サンプル4における電子ビーム3のエネルギーレベルを変更することができる。また、ウエハ等の測定サンプル4の表面近傍でエネルギーの変換が行われるため、電子ビームエネルギーのレベル変更による電子ビームの経路の変化が非常に小さい。従って、例えば、パターンマッチング法などを使用した位置決めによって、数nmオーダーの位置合わせを行った後に、測定サンプル4における電子ビームの実効エネルギーレベルをいろいろ変えながら、全く同じ場所(数nmオーダーの位置合わせ精度)に繰り返し電子ビームを照射することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4を流れる電流が直接電流計5に入力されるので、従来のように電流計5に並列に電源を入れていた場合と比較して(図15参照)、測定サンプル4で生じた微少な電流を非常に正確に測定できる。
【0028】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図2において図1の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第1実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0029】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。この電極10は、測定サンプル4の裏面にあってもよいし、測定サンプル4の表面又は側面にあってもかまわない。電極10を測定サンプル4の裏面に配置した場合、電極10は測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有することとして、非常に大きな容量を形成することができる。ここで、非常に大きな容量とは、例えば、測定サンプル4と電流測定装置の筐体との寄生容量等に比較して、非常に大きな容量という意味である。
【0030】
本実施形態の電流測定装置は、測定サンプル4の下に設けられた電極10に電流計5が直接接続されており、その電流計5に直列に電圧を加えるためのバイアス電源6が設けられている。測定系に存在する容量成分は、電極10と測定サンプル4との間にできた容量と、測定サンプル4と測定装置筺体間に生じる寄生容量が主な成分となる。この中で、測定サンプル4と電極10の間に生じる容量は圧倒的にほかの容量と比較して大きい。したがって、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、本電流測定装置は、測定対象の測定サンプル4に対して、電子ビーム3の照射エネルギーEirから電流計5に加えるバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを加えることができる。また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4に電流計5を直接接続する必要がなく、実用性を高めることができる。
【0031】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図3において図1の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第1実施形態との相違点は、本実施形態では加速電極11と加速電源11aとアパーチャ12とを有している点である。加速電極11は、電子ビーム源2から放出された電子ビームを加速するものである。加速電源11aは、加速電極11に加速電圧Vaを印加するものであり、加速電極11におけるその加速の度合いを可変制御するものである。アパーチャ12は、電子ビーム源2から放出されて加速電極11で加速された電子ビームの一部分を通過させるものである。
【0032】
光学の原理によれば、物体を見分ける指標となる分解能は利用する光の波長と同等程度であることが分かっている。電子ビームは波長が非常に短いことが特徴である。例えば、100eVの電子ビームでさえ波長は1オングストロームよりも小さい。しかしながら、実際に発生し得る電子ビームは大きなエネルギーの分散があり、波長から想定されるよりもはるかに低い分解能しか得ることができない。
【0033】
図3に示す本実施形態の電流測定装置では、加速電極11及び加速電源11aを用いて電子ビーム源2から飛び出た電子ビーム3を加速電圧Vaにより一旦非常に高いエネルギーレベルの状態にする。例えば、電子ビーム3を加速電極11により5kV程度までエネルギーを増加させる。この状態で非常に小さな円筒形のアパーチャ12を通過させ、エネルギーレベルの揃っている部分だけを取り出す。その後、図1に示す第1実施形態の場合と同様な構成により、測定サンプル4における実効的な電子ビーム照射エネルギーを下げる。
【0034】
アパーチャ12は、例えば数ミクロンの大きさを有しており、一種のエネルギーフィルターを構成する。電子ビーム源2から放出される電子ビームはチップと呼ばれる電子ビーム放出電極の広い範囲から放出される。放出される領域は数百オングストロームの範囲と小さな領域ではあるが、放出される場所によって電子ビームのエネルギーに差が生じる。この差が生じると、電子ビーム3をフォーカスした際に、収差が生じて異なった場所に焦点を結ぶため、像がぼけてしまう原因となる。これらは、測定精度を下げる原因になるので、できるだけ等しいエネルギーを持った電子ビーム3のみを測定に使用したいという要望がある。
【0035】
本実施形態によれば、アパーチャ12において、電子ビームにおけるエネルギーレベルが揃っている中心部のみが通過する。これにより、電子ビーム源2から電子ビームが放出された時のエネルギー分散に比べ非常に小さな分散を持つようになる。このような状態の電子ビーム3は電子ビームエネルギーが低くても良いフォーカスを実現できる。その後、電流計5に加えられた例えば4.5kVというようなバイアス電圧Vmにより、測定サンプル4が実際に受ける電子ビームエネルギーは500eVと小さなものになる。しかしながら、この電子ビーム3は非常にエネルギーレベルが揃っており、ビームがシャープにフォーカスするようになる。
【0036】
これらにより、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4の所望部位に高度に焦点の合った電子ビーム3を照射でき、高解像度に測定サンプル4を検査することができる。
【0037】
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図4において図1から図3の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第3実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0038】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。電流計5には、バイアス電源6によってバイアス電圧Vmが印加されている。
【0039】
このような構成により、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、本電流測定装置は、測定対象の測定サンプル4に対して、電子ビーム3の照射エネルギーEirから電流計5に加えるバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを加えることができる。また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4に電流計5を直接接続する必要がなく、実用性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態の電流測定装置によれば、電子ビーム3のエネルギー分散を小さくするためのエネルギーフィルターを加速電極11及びアパーチャ12で構成している。したがって、測定サンプル4の所望部位に高度に焦点の合った電子ビーム3を照射でき、高解像度に測定サンプル4を検査することができる。
【0041】
[第5実施形態]
図5は、本発明の第5実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図5において図1から図4の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第3実施形態との相違点は、本実施形態では減速電極13と減速電源13aとを有している点である。減速電極13は、アパーチャ12を通過した電子ビーム3のエネルギーレベルに変換するものである。減速電源13aは、減速電極13に電圧を印加するものである。
【0042】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、加速電極11によって電子ビームが加速されてエネルギー上昇する。その電子ビーム3はアパーチャ12を通過してフィルタリングされる。その電子ビーム3は、減速電極13によって減速され、測定サンプル4に照射する手前でエネルギーレベルが下げられる。
【0043】
例えば、加速電極11に印可する加速電圧Vaを100kVに設定し、減速電極13に印加する減速電圧Vdを99kVに設定する。すると、測定サンプル4の表面では実効的に1keVのエネルギーを持つ電子ビームが得られる。さらに、この状態で電流計5に例えば900Vのバイアス電圧Vmを印加することにより、実効的に100eVのエネルギーを有する電子ビームを実現できる。5kVを超える高加速状態からいきなり数百eVのエネルギーを実現するためには、従来は非常に大きなバイアス電圧Vmを電流計5に加えることが必要となり、実用上困難であった。
【0044】
本実施形態の電流測定装置によれば、加速電極11などにより電子ビーム3のエネルギーレベルがどのように高くなっても、減速電極13を用いてそのエネルギーレベルを制御することができる。そのため、電流計5に加えるバイアス電圧Vmを小さく設定することができる。
【0045】
[第6実施形態]
図6は、本発明の第6実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図6において図1から図5の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第5実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0046】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。電流計5には、バイアス電源6によってバイアス電圧Vmが印加されている。
【0047】
このような構成により、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、減速電極13と電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、測定サンプル4に対して、電子ビーム3の照射エネルギーEirから減速電圧Vd及びバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを加えることができる。また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4に電流計5を直接接続する必要がなく、実用性を高めることができる。
【0048】
[第7実施形態]
図7は、本発明の第7実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図7において図1から図6の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第5実施形態との相違点は、本実施形態ではバイアス電源6を備えず、可変電源7と制御信号発生部8とを有している点である。可変電源7は、電流計5と接地電位との間に可変電圧を印加するものである。制御信号発生部8は、可変電源7の動作を制御する電圧制御信号を出力するものである。
【0049】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、制御信号発生部8が出力する電圧制御信号によって、電流計5に印加するバイアス電圧Vmを可変制御できる構成に特徴がある。制御信号発生部8は、自立発振的な交流信号発生装置でもよいし、外部のコンピュータ(図示せず)からのデジタルあるいはアナログ信号を基に電圧制御信号を生成する装置でもよい。
【0050】
例えば、外部のコンピュータには本発明の電流測定装置を自動制御するためのプログラムが存在し、ある一定のシーケンスに基づいて、測定サンプル4に流れる電流の測定がなされる。例えば、測定サンプル4をなす測定対象ウエハが、先ず、ウエハカセットから1枚ずつ取り出されて、本電流測定装置にロボットによって搬入される。搬入されたウエハはアライメント機構により、正確な位置だしをされ、さらに精密な機械ステージを有するチャンバーに搬送される。
【0051】
チャンバーに搬送されたウエハは光学的及び電子ビーム的手段により正確な位置だしが行われる。シーケンスには予めウエハのどの部分を測定するのか記録してあるので、そのシーケンスに従って機械ステージが動作し、電子ビーム3を照射する位置が定められる。必要により電子ビームを利用したパターンマッチングなどを行い、正確に測定対象位置を決定する。
【0052】
決定された位置に対して、1回目の電子ビーム照射をバイアス電圧Vm1で行う。次いで、2回目の電子ビーム照射をバイアス電圧Vm2で行う。この2つのバイアス電圧時に得られる電流をそれぞれ測定して保存する。測定された電流値は適当に補正を掛けた後、所定の方程式に代入をして材料の厚みなどへ変換する。
【0053】
[第8実施形態]
図8は、本発明の第8実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図8において図1から図7の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第7実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0054】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。電流計5には、可変電源7によってバイアス電圧Vmが印加されている。また、第7実施形態の電流測定装置と同じように、電子ビーム源2、加速電極11、アパーチャ12、減速電極13などが設けられている。
【0055】
本実施形態の電流測定装置では、第7実施形態の電流測定装置と同じように、電子ビーム源2から放出された電子ビーム3が加速電極11に加えられた加速電圧Vaによって加速される。加速された電子ビーム3はアパーチャ12を通過し、電子ビーム軸中心を形成する電子ビーム3のみが取り出される。軸中心を形成する電子ビーム3のエネルギーは、電子ビーム源2から放出された時に電子ビーム3が有するエネルギー分散に比べて格段に揃っている。エネルギーが揃った電子ビーム3は減速電極13に加えられた減速電圧Vdに応じて減速し、測定サンプル4の手前で低いエネルギーを有する状態となる。測定サンプル4の表面の電位は電流計5に印加されたバイアス電圧Vmによって制御される。したがって、測定サンプル4の表面においては、減速電極13で得られるエネルギーよりもさらに低いエネルギーを持つ電子ビーム3に変換される。
【0056】
測定サンプル4は容量的に電流計5と接続されている。しかし、測定サンプル4と電極10の間に生じる容量は、測定サンプル4と電子ビーム源2との間に生じる容量と比較して非常に大きい。そこで、電流計5に加えられたバイアス電圧Vmはほとんど電子ビーム源2と測定サンプル4との間に実質的に加えられる。
【0057】
[第9実施形態]
図9は、本発明の第9実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図9において図1から図8の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第7実施形態との相違点は、制御信号発生部8が測定タイミング信号を出力する点である。すなわち、制御信号発生部8は、電流計5の電流測定タイミングと同期して、可変電源7によるバイアス電圧Vmの印加のタイミングを制御する制御手段をなしている。
【0058】
換言すれば、本実施形態の電流測定装置は、電流計5に可変電源7によりバイアス電圧Vmを印加するタイミングと、電流計5が電流を測定するタイミングとを同期させるように構成されたことに特徴がある。
【0059】
測定を行わない通常状態ではバイアス電圧Vmは非印加又はあるグローバルに設定された電圧に維持されている。そして、電流計5で測定が実際に行われるタイミングに同期して、電流計5にバイアス電圧Vmが印加される。バイアス電圧Vmが印加されるタイミングは、非常に短い周期の交流信号であっても良いし、比較的長いオンオフ信号であってもかまわない。
【0060】
本実施形態の電流測定装置によれば、電流計5を介しての測定サンプル4へのバイアス電圧Vmの印加のタイミングと、電流測定タイミングとを同期させることができる。これにより、電流測定において問題となるホワイトノイズなどを簡便に除去することができ、測定サンプル4に流れる電流などの測定について感度及び精度をさらに向上させることができる。
【0061】
[第10実施形態]
図10は、本発明の第10実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図10において図1から図9の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第8実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0062】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。その他の構成部分と動作は、図9に示した第9実施形態の電流測定装置と同様である。
【0063】
[第11実施形態]
図11は、本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図11において図1から図10の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態は上記の各実施形態の電流測定装置における電流計5の具体例としての電流測定回路5aを示している。
【0064】
電流測定回路5aは、演算増幅器14と、演算増幅器14の正入力端子にバイアス電圧Vmを印加するバイアス電源6と、演算増幅器14の出力端子と負入力端子との間に配置された高抵抗器R1とを有してなる。演算増幅器14の負入力端子には測定サンプル4が電気的に接続されている。
【0065】
これらにより、電流測定回路5aは演算増幅器14を用いた電流電圧変換回路を構成している。測定すべき電流は演算増幅器14の負入力端子に導入される。負入力端子は演算増幅器14を構成するFETトランジスタのゲートに内部的には接続されており、演算増幅のための元信号となる。演算増幅器14は2つの入力端子の電圧差がゼロボルトになるように動作する。そのため、負入力端子に入力された電流と同じ大きさになるように高抵抗器R1をバイアスする。このバイアスに必要な電圧が演算増幅器14の出力となる。
【0066】
一方、演算増幅器14が正常に動作しているときは、演算増幅器14の正入力端子と負入力端子間の電圧がゼロボルトになるように制御されている。従って、演算増幅器14の正入力端子にバイアス電圧Vmを加えると、そのバイアス電圧Vmと負入力端子の電圧は同じになる。したがって、測定サンプル4に直接電圧を加えなくても、演算増幅器14の正入力端子に電圧を加えることで、実質的に測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、電子ビーム照射エネルギーEirから演算増幅器14の正入力端子に印加されたバイアス電圧Vmを引いたエネルギーに相当する電子ビームが測定サンプル4に照射される。
【0067】
そこで、本実施形態の電流測定装置は、電子ビーム源2から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプル4が受ける実効エネルギーを小さくでき、測定サンプル4に対してダメージを与えることなく、測定サンプル4に流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0068】
[第12実施形態]
図12は、本発明の第12実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図12において図1から図11の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第11実施形態との相違点は、本実施形態ではバイアス電源6を備えず、可変電源7と制御信号発生部8とを有している点である。可変電源7は、演算増幅器14における正入力端子に可変電圧を印加する演算増幅器用可変電源をなすものである。制御信号発生部8は可変電源7の出力電圧を制御する電圧制御信号を出力するものである。
【0069】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、演算増幅器14に加えるバイアス電圧Vmを制御信号発生部8からの電圧制御信号により可変とした構成に特徴がある。制御信号発生部8は、電圧制御信号を出力することで、測定サンプル4における電子ビームの実質的なエネルギーレベルを可変することができる。ここで、電圧制御信号によって可変制御されるバイアス電圧Vmは、サイン波、矩形波又はノコギリ波などの周期的な信号でもよいし、トリガー的なワンショット信号でもよい。
【0070】
これらにより、本実施形態の電流測定装置は、測定サンプル4の属性などに応じて、最適なバイアス電圧Vmの印加形態を選んで電流測定などをすることができ、より高精度にプロセス評価などをすることができる。
【0071】
[第13実施形態]
図13は、本発明の第13実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図13において図1から図12の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第12実施形態との相違点は、制御信号発生部8がアパーチャ12に対して照射タイミング制御信号を出力する点である。より具体的に述べると、アパーチャ上部に存在するブランキング電極に電圧を印加して電子ビームがアパーチャーを通り抜けないようにすることで、電子ビームの照射タイミングを決定する。あるいは、アパーチャー自身の大きさが電気信号によって変化する機構をもちいてもよい。
【0072】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、演算増幅器14に加えるバイアス電圧Vmを電子ビーム照射タイミングと同期させることを特徴としている。制御信号発生部8は、測定サンプル4に流れる電流の測定を行うタイミングと同期して、アパーチャ12における電子ビームの断続と可変電源7でのバイアス電圧Vmとを制御する。
【0073】
本実施形態の電流測定装置によれば、電子ビームのオンオフタイミングと、電流測定回路5aでの測定タイミングとを同期させることによって、外部から測定系に入り込む非同期なノイズ(ホワイトノイズなど)を簡便に除去することが可能となる。
【0074】
以上説明したように、本発明の電流測定装置においては、非常に低いエネルギーを持つ電子ビームを利用して測定することができる。低いエネルギーを有する電子ビームは、二次電子放出確率を向上させ、測定感度を高くすることができる。また、低いエネルギーを有する電子ビームは、測定サンプルに対してダメージを与えない。
【0075】
また、本発明によれば、電子ビーム源の設定を変えることなく、電子ビームのエネルギーレベルを大きく変えられるので、高速で電子ビームのエネルギーレベルを変更できる。このため、電子ビームのエネルギーレベルを変更した後に同じ場所に電子ビーム照射できるので、複数のエネルギーレベルの電子ビームを用いて測定する場合、測定精度を著しく向上させることができ、またスループットを向上させることができる。
【0076】
また、本発明によれば、1つの電子ビームエネルギーを設定するときに、電子ビーム源側及び電流測定回路側のそれぞれで、いろいろな条件の組み合わせができる。例えば、電子ビーム源に印加する高圧電源Vh、加速電圧Va、減速電圧Vd、バイアス電圧Vm、バイアス電圧Vmの波形などを組み合わせることができる。その結果、平均的には同じエネルギーを持つ電子ビームのエネルギー分散状態や空間分布についての調節が可能なので用途に応じて最適な組み合わせの電子ビーム照射形態を選んで使用できる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の電流測定装置及び電流測定方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、測定サンプルへの電子ビームの照射によりその測定サンプルに流れる電流を測定することとしたが、本発明はこれに限定されず、測定サンプルへの電子ビームの照射によって発生した散乱電子又は二次電子を回収する電極を設け、その電極に流れる電流について、上記実施形態と同様にして測定することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電子ビームの照射により半導体基板などの測定サンプルに流れる電流などを測定する際に、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、その測定について感度と精度を向上させるので、本発明は、各種の電流測定装置及び電流測定方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図8】本発明の第8実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図9】本発明の第9実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図10】本発明の第10実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図11】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図12】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図13】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図14】電流測定についての説明図である。
【図15】従来の電流測定装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1…チャンバー、2…電子ビーム源、3…電子ビーム、4…測定サンプル、5…電流計、5a…電流測定回路、6…バイアス電源、7…可変電源、8…制御信号発生部、9…XYステージ、10…電極、11…加速電極、11a…加速電源、12…アパーチャ、13…減速電極、13a…減速電源、14…演算増幅器
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置及び電流測定方法に関する。また、本発明は、電子ビームを利用して、半導体デバイス製造工程途中のプロセス評価などを行うのに好適な電流測定装置及び電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム照射時に流れる基板電流を用いて半導体デバイスのプロセス良否を評価する方法として基板電流法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。この方法は、例えばエッチングを終えた状態のウエハに対して、一定のエネルギーを持つ電子ビームを数秒の間、照射し、その時に生じる基板電流の大小あるいは極性からプロセスの状態を知る方法である。例えば電子ビームエネルギーとしては1KeVが利用され、電流量としてはピコアンペア(pA)の大きさを用いる。
【0003】
この方法では、プロセス結果が同じである場合、同じ基板電流が生じ、プロセス結果が異なる場合、異なった電流が生じることでプロセス状態を把握できる。
【0004】
以上のようにプロセスの相対的な変化を知る場合、照射電子ビームのエネルギーレベルは単一で良いが、絶対的なプロセス状態を調べるためには、種々の加速電圧を組み合わせて利用することが必要である。また、測定感度は電子ビームエネルギーによって変化するので最適な値を測定対象毎に見つける必要がある。このためには、図14に示すように、電子ビーム源2から放出される電子ビーム3に加えられる加速電圧(高圧電源の電圧)Vhを切り替えて使用していた。
【特許文献1】特許第3334750号公報
【特許文献2】特許第3292159号公報
【特許文献3】特許第3175765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板電流から精密な測定を行うためには、複数のエネルギーレベルを有した電子ビームを利用することが必要である。つまり、全く同じ測定点に対して電子ビームのエネルギーレベルだけが異なる状態で測定を行うことが必要である。しかし、従来は、照射電子ビームのエネルギーレベルを変えるために電子ビーム発生装置の高圧電源の電圧を変更していた。高圧電源の電圧を変更すると、電子ビームの軸が大きく変化するため、全く同じ場所に正確に電子ビームを照射することが困難であった。そのため、従来の基板電流測定方法では、測定精度が低下するという課題があった。
【0006】
また、測定感度を変化させるために非常に低いエネルギーレベルを有した電子ビームを使用する必要があるが、従来における高圧電源の電圧の変更だけでは、非常に低いエネルギーレベルの電子ビームを実現することは困難であった。また、従来方法としては、図15に示すように半導体基板である測定サンプル4にバイアス電圧Vbを印加する方法も知られていた。しかし、この方法では、電流計5と並列に電源20が入るため、測定に必要な基板電流が電源20を介してグランド(接地)に流れてしまう。このため実質的に電流計5に流れる電流が「0」となってしまい測定できない。そればかりか、電子ビーム3のエネルギーレベルを変えるために、電源20により数キロボルトという電圧Vbを測定サンプル4に加えると電流計5が破壊するなど、実用的には使えないという大きな課題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、半導体基板などの測定サンプルに対して照射する電子ビームのエネルギーレベルを容易に設定できる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させことができる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の電流測定装置は、電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、前記測定サンプルに流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、電圧印加手段によって電流測定回路にバイアス電圧を印加することができる。これにより、測定サンプルの電位を制御することができる。そして、測定サンプルが電子ビーム照射で受ける実効エネルギーは、その電子ビームのエネルギーから測定サンプルの電位を引いた値となる。したがって、本発明は、電子ビーム放出源から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプルが受ける実効エネルギーを小さくすることができる。そこで、本発明は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の電流測定装置は、電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、前記測定サンプルに容量結合している電極と、前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、測定サンプルに対して直接バイアス電圧を印加せずに、電流測定回路に印加した電圧により測定サンプルの電位を変化させることができる。そして、測定サンプルが受ける実効エネルギーは、照射された電子ビームのエネルギーから測定サンプルの電位を引いた値となる。したがって、本発明は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。また、本発明は、測定サンプルと電流測定回路(又は電極)とを配線接続する必要がなく、測定サンプルの測定位置などへの設置及び取り外しが容易となり、実用性を高くすることができる。
【0010】
また、本発明の電流測定装置は、電子ビームを測定サンプルに照射することにより生じる電流を測定する電流測定装置であって、電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、前記測定サンプルへの電子ビームの照射によって発生した散乱電子又は二次電子を回収する電極と、前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、電圧印加手段によって電流測定回路にバイアス電圧を印加することができる。これにより、測定サンプルの電位を制御することができる。そして、測定サンプルが電子ビーム照射で受ける実効エネルギーは、その電子ビームのエネルギーから測定サンプルの電位を引いた値となる。したがって、本発明は、電子ビーム放出源から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプルが受ける実効エネルギーを小さくすることができる。ここで、低いエネルギーを有する電子ビームは、二次電子放出確率を向上させることができる。そこで、本発明は、測定サンプルへの電子ビーム照射により生じる電流の測定において、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、感度と精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の電流測定装置は、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャを有することを特徴とする。
本発明によれば、電子ビームについてアパーチャを通過させることにより、エネルギーの揃った電子ビームを測定サンプルへ照射することができる。そこで、本発明は、測定サンプルの所望部位に高度に焦点の合った電子ビームを照射でき、高解像度に測定サンプルを検査することができる。
【0012】
また、本発明の電流測定装置は、前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを第1のエネルギーレベルに加速する加速電極と、前記加速電極に電圧を印加する加速電源と、前記加速電極で加速された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャと、前記アパーチャを通過した電子ビームのエネルギーを第2のエネルギーレベルに変換する減速電極と、前記減速電極に電圧を印加する減速電源とを有することを特徴とする。
本発明によれば、電子ビームについてアパーチャを通過させることにより、エネルギーの揃った電子ビームを測定サンプルへ照射することができる。さらに、本発明は、減速電極により、電子ビームを第1のエネルギーレベルから第2のエネルギーレベルに変換することができる。そこで、加速電極などで電子ビームのエネルギーをいくら高くしても、測定サンプルに到達する電子ビームのエネルギーは減速電極によって制御可能である。そこで、本発明は、測定サンプルへダメージを与えることを回避しながら、測定サンプルの所望部位に高度に焦点の合った電子ビームを照射でき、高解像度に測定サンプルを検査することができる。
【0013】
また、本発明の電流測定装置は、前記電圧印加手段が、前記電流測定回路と接地電位との間に可変電圧を印加する可変電源を有してなることを特徴とする。
本発明によれば、電子ビーム放出源側の設定を変更せずに、可変電源の出力を変更することのみで、測定サンプルに照射する電子ビームの実効エネルギーレベルを変更することができる。したがって、非常に簡便且つ迅速に実効エネルギーレベルを変更することができる。また、本発明によれば、測定サンプルにおける同一箇所に異なる実効エネルギーレベルの電子ビームを迅速に照射でき、測定精度の向上を図れるとともに、測定のスループットを向上させることができる。
【0014】
また、本発明の電流測定装置は、前記電流測定回路の電流測定タイミングと同期して、前記電圧印加手段又は可変電源による電圧印加のタイミングを制御する制御手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、電流測定回路を介しての測定サンプルへのバイアス電圧印加のタイミングと、電流測定タイミングとを同期させることができる。これにより、電流測定において問題となるホワイトノイズなどを簡便に除去することができ、測定サンプルに流れる電流などの測定について感度及び精度をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明の電流測定装置は、前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、前記演算増幅器における正又は負入力端子に電圧を印加するバイアス電源とを有することを特徴とする。
本発明によれば、例えば、演算増幅器の負入力端子に測定サンプルを電気的に接続し、演算増幅器の正入力端子にバイアス電圧を印加し、演算増幅器の出力と負入力端子との間に抵抗器を配置した構成とすることができる。このようにすると、バイアス電圧が演算増幅器の負入力端子を介して測定サンプルに印加される。そこで、本発明は、電子ビーム放出源から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプルが受ける実効エネルギーを小さくでき、測定サンプルに対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の電流測定装置は、前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、前記演算増幅器における正又は負入力端子に可変電圧を印加する演算増幅器用可変電源と、前記可変電源の出力電圧を制御する信号を出力する制御信号発生部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、制御信号発生部が出力する信号により、測定サンプルの電位を制御することができる。ここで、演算増幅器用可変電源が出力する可変電圧としては、サイン波、矩形波、ノコギリ波などの周期的な波形でもよく、トリガー的な波形でもよい。これらにより、本発明は、測定サンプルの属性などに応じて、最適な可変電圧を選んで電流測定などをすることができ、より高精度にプロセス評価などをすることができる。
【0017】
また、本発明の電流測定方法は、電子ビームを測定サンプルに照射し、該測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定方法であって、前記測定サンプルに生じる電流について増幅する増幅回路を配置する手順と、前記増幅回路と接地電位との間に電圧を印加する手順とを有することを特徴とする。
本発明によれば、増幅回路と接地電位との間に電圧を印加することにより、測定サンプルの電位を制御することができる。したがって、測定サンプルが電子ビーム照射で受ける実効エネルギーを、前記電圧によって小さくすることができる。そこで、本発明は、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、測定サンプルに流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、半導体基板などの測定サンプルに対して照射する電子ビームの実効エネルギーレベルを低くしながら、測定サンプルに流れる電流などの測定について感度及び精度を向上させることができる。したがって、測定サンプルに対してダメージを与えることなく、測定サンプルの属性等の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明は、電子ビームが照射された測定サンプルにおける実効エネルギーレベルを低くすることができるので、二次電子放出確率を向上でき、測定感度を高くすることができる。
【0020】
また、本発明は、電子ビーム源などの設定を変えないで、測定サンプルにおける実効エネルギーレベルを大きく可変できるので、非常に早くエネルギーレベルを変更できる。したがって、例えば、測定サンプルにおける同じ箇所に異なるエネルギーレベルの電子ビームを迅速に照射することができ、測定精度を大幅に高めながら、測定のスループットを向上させることができる。
【0021】
また、本発明は、測定サンプルに電子ビームを照射する態様として、電子ビーム源側及びバイアス電源側のそれぞれで各種設定をすることができる。したがって、測定サンプルにおける実効エネルギーレベルが同一であっても、電子ビーム照射及びバイアス電圧の態様として、いろいろな組み合わせをすることができる。その結果、平均的には同じエネルギーを持つ電子ビームのエネルギー分散状態及び空間分布についての調節が可能となり、用途に応じて最適な組み合わせを選んで、高精度な測定をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電流測定装置の全体構成例を示す図である。本実施形態の電流測定装置は、チャンバー1と、電子ビーム源2と、電流計(電流測定回路)5と、バイアス電源(電圧印加手段)6と、XYステージ9とを有して構成されている。また、図1において、測定サンプル4は本電流測定装置の測定対象となるものであり、測定サンプル4には電子ビーム3が照射される。例えば、半導体基板であるウエハなどが測定サンプル4となる。
【0023】
チャンバー1は、電子ビーム3が放出できるように雰囲気制御するためのものである。チャンバー1内には、電子ビーム源2、測定サンプル4、電流計5、バイアス電源6及びXYステージ9が配置されている。電子ビーム源2は、設定された一定のエネルギーで電子ビーム3を放出するものである。ここで、電子ビーム源2が放出する電子ビーム3のエネルギーは、高圧電源の電圧(加速電圧)Vhを可変することで変更可能となっている。それぞれの設定電圧は電圧値記憶手段によって、記憶されている。XYステージ9は、電子ビーム源2から放出された電子ビーム3を測定サンプル4における所望の場所に照射するための位置決め機構であり、本発明の特定場所に照射する手段の一例である。電子ビームが照射される場所等も記憶手段によって記憶されている。
【0024】
電流計5は、本発明の電流測定回路の一例である。すなわち、電流計5は、測定サンプル4に流れる電流について少なくとも増幅する回路を有し、測定サンプル4への電子ビーム照射時に生じる電流を測定するためのものである。また、電流計5は、実際には、機械的な指針による電流計ではなく、微小な電流を電圧信号などに変換して増幅する演算増幅器などを用いた電流測定回路で構成されている(以下、電流計5について同じ)。なお、電流測定回路の詳細については後述する。
バイアス電源6は、本発明の電圧印加手段の一例をなし、電流計5と基準電位(接地電位)との間に電圧Vmを印加するものである。
【0025】
本実施形態の電流測定装置は、測定サンプル4に直列に、電流計5及び電流計5バイアス用のバイアス電源6を接続した構成に特徴がある。ここで、電流計5のインピーダンスは非常に小さく、事実上ゼロとみなせる。したがって、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって、測定サンプル4の電位を変化させることが可能となる。そこで、本実施形態によれば、測定サンプル4に対して、電子ビーム照射エネルギーEirから電流計5に加えるバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを有する電子ビーム照射が実現できる。
【0026】
また、バイアス電圧Vmを変化させることで、瞬時に、測定サンプル4における電子ビーム3のエネルギーレベルを変更することができる。また、ウエハ等の測定サンプル4の表面近傍でエネルギーの変換が行われるため、電子ビームエネルギーのレベル変更による電子ビームの経路の変化が非常に小さい。従って、例えば、パターンマッチング法などを使用した位置決めによって、数nmオーダーの位置合わせを行った後に、測定サンプル4における電子ビームの実効エネルギーレベルをいろいろ変えながら、全く同じ場所(数nmオーダーの位置合わせ精度)に繰り返し電子ビームを照射することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4を流れる電流が直接電流計5に入力されるので、従来のように電流計5に並列に電源を入れていた場合と比較して(図15参照)、測定サンプル4で生じた微少な電流を非常に正確に測定できる。
【0028】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図2において図1の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第1実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0029】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。この電極10は、測定サンプル4の裏面にあってもよいし、測定サンプル4の表面又は側面にあってもかまわない。電極10を測定サンプル4の裏面に配置した場合、電極10は測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有することとして、非常に大きな容量を形成することができる。ここで、非常に大きな容量とは、例えば、測定サンプル4と電流測定装置の筐体との寄生容量等に比較して、非常に大きな容量という意味である。
【0030】
本実施形態の電流測定装置は、測定サンプル4の下に設けられた電極10に電流計5が直接接続されており、その電流計5に直列に電圧を加えるためのバイアス電源6が設けられている。測定系に存在する容量成分は、電極10と測定サンプル4との間にできた容量と、測定サンプル4と測定装置筺体間に生じる寄生容量が主な成分となる。この中で、測定サンプル4と電極10の間に生じる容量は圧倒的にほかの容量と比較して大きい。したがって、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、本電流測定装置は、測定対象の測定サンプル4に対して、電子ビーム3の照射エネルギーEirから電流計5に加えるバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを加えることができる。また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4に電流計5を直接接続する必要がなく、実用性を高めることができる。
【0031】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図3において図1の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第1実施形態との相違点は、本実施形態では加速電極11と加速電源11aとアパーチャ12とを有している点である。加速電極11は、電子ビーム源2から放出された電子ビームを加速するものである。加速電源11aは、加速電極11に加速電圧Vaを印加するものであり、加速電極11におけるその加速の度合いを可変制御するものである。アパーチャ12は、電子ビーム源2から放出されて加速電極11で加速された電子ビームの一部分を通過させるものである。
【0032】
光学の原理によれば、物体を見分ける指標となる分解能は利用する光の波長と同等程度であることが分かっている。電子ビームは波長が非常に短いことが特徴である。例えば、100eVの電子ビームでさえ波長は1オングストロームよりも小さい。しかしながら、実際に発生し得る電子ビームは大きなエネルギーの分散があり、波長から想定されるよりもはるかに低い分解能しか得ることができない。
【0033】
図3に示す本実施形態の電流測定装置では、加速電極11及び加速電源11aを用いて電子ビーム源2から飛び出た電子ビーム3を加速電圧Vaにより一旦非常に高いエネルギーレベルの状態にする。例えば、電子ビーム3を加速電極11により5kV程度までエネルギーを増加させる。この状態で非常に小さな円筒形のアパーチャ12を通過させ、エネルギーレベルの揃っている部分だけを取り出す。その後、図1に示す第1実施形態の場合と同様な構成により、測定サンプル4における実効的な電子ビーム照射エネルギーを下げる。
【0034】
アパーチャ12は、例えば数ミクロンの大きさを有しており、一種のエネルギーフィルターを構成する。電子ビーム源2から放出される電子ビームはチップと呼ばれる電子ビーム放出電極の広い範囲から放出される。放出される領域は数百オングストロームの範囲と小さな領域ではあるが、放出される場所によって電子ビームのエネルギーに差が生じる。この差が生じると、電子ビーム3をフォーカスした際に、収差が生じて異なった場所に焦点を結ぶため、像がぼけてしまう原因となる。これらは、測定精度を下げる原因になるので、できるだけ等しいエネルギーを持った電子ビーム3のみを測定に使用したいという要望がある。
【0035】
本実施形態によれば、アパーチャ12において、電子ビームにおけるエネルギーレベルが揃っている中心部のみが通過する。これにより、電子ビーム源2から電子ビームが放出された時のエネルギー分散に比べ非常に小さな分散を持つようになる。このような状態の電子ビーム3は電子ビームエネルギーが低くても良いフォーカスを実現できる。その後、電流計5に加えられた例えば4.5kVというようなバイアス電圧Vmにより、測定サンプル4が実際に受ける電子ビームエネルギーは500eVと小さなものになる。しかしながら、この電子ビーム3は非常にエネルギーレベルが揃っており、ビームがシャープにフォーカスするようになる。
【0036】
これらにより、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4の所望部位に高度に焦点の合った電子ビーム3を照射でき、高解像度に測定サンプル4を検査することができる。
【0037】
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図4において図1から図3の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第3実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0038】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。電流計5には、バイアス電源6によってバイアス電圧Vmが印加されている。
【0039】
このような構成により、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、本電流測定装置は、測定対象の測定サンプル4に対して、電子ビーム3の照射エネルギーEirから電流計5に加えるバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを加えることができる。また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4に電流計5を直接接続する必要がなく、実用性を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態の電流測定装置によれば、電子ビーム3のエネルギー分散を小さくするためのエネルギーフィルターを加速電極11及びアパーチャ12で構成している。したがって、測定サンプル4の所望部位に高度に焦点の合った電子ビーム3を照射でき、高解像度に測定サンプル4を検査することができる。
【0041】
[第5実施形態]
図5は、本発明の第5実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図5において図1から図4の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第3実施形態との相違点は、本実施形態では減速電極13と減速電源13aとを有している点である。減速電極13は、アパーチャ12を通過した電子ビーム3のエネルギーレベルに変換するものである。減速電源13aは、減速電極13に電圧を印加するものである。
【0042】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、加速電極11によって電子ビームが加速されてエネルギー上昇する。その電子ビーム3はアパーチャ12を通過してフィルタリングされる。その電子ビーム3は、減速電極13によって減速され、測定サンプル4に照射する手前でエネルギーレベルが下げられる。
【0043】
例えば、加速電極11に印可する加速電圧Vaを100kVに設定し、減速電極13に印加する減速電圧Vdを99kVに設定する。すると、測定サンプル4の表面では実効的に1keVのエネルギーを持つ電子ビームが得られる。さらに、この状態で電流計5に例えば900Vのバイアス電圧Vmを印加することにより、実効的に100eVのエネルギーを有する電子ビームを実現できる。5kVを超える高加速状態からいきなり数百eVのエネルギーを実現するためには、従来は非常に大きなバイアス電圧Vmを電流計5に加えることが必要となり、実用上困難であった。
【0044】
本実施形態の電流測定装置によれば、加速電極11などにより電子ビーム3のエネルギーレベルがどのように高くなっても、減速電極13を用いてそのエネルギーレベルを制御することができる。そのため、電流計5に加えるバイアス電圧Vmを小さく設定することができる。
【0045】
[第6実施形態]
図6は、本発明の第6実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図6において図1から図5の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第5実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0046】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。電流計5には、バイアス電源6によってバイアス電圧Vmが印加されている。
【0047】
このような構成により、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、減速電極13と電流計5に加えたバイアス電圧Vmによって測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、測定サンプル4に対して、電子ビーム3の照射エネルギーEirから減速電圧Vd及びバイアス電圧Vmを引いた実効エネルギーを加えることができる。また、本実施形態の電流測定装置によれば、測定サンプル4に電流計5を直接接続する必要がなく、実用性を高めることができる。
【0048】
[第7実施形態]
図7は、本発明の第7実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図7において図1から図6の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第5実施形態との相違点は、本実施形態ではバイアス電源6を備えず、可変電源7と制御信号発生部8とを有している点である。可変電源7は、電流計5と接地電位との間に可変電圧を印加するものである。制御信号発生部8は、可変電源7の動作を制御する電圧制御信号を出力するものである。
【0049】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、制御信号発生部8が出力する電圧制御信号によって、電流計5に印加するバイアス電圧Vmを可変制御できる構成に特徴がある。制御信号発生部8は、自立発振的な交流信号発生装置でもよいし、外部のコンピュータ(図示せず)からのデジタルあるいはアナログ信号を基に電圧制御信号を生成する装置でもよい。
【0050】
例えば、外部のコンピュータには本発明の電流測定装置を自動制御するためのプログラムが存在し、ある一定のシーケンスに基づいて、測定サンプル4に流れる電流の測定がなされる。例えば、測定サンプル4をなす測定対象ウエハが、先ず、ウエハカセットから1枚ずつ取り出されて、本電流測定装置にロボットによって搬入される。搬入されたウエハはアライメント機構により、正確な位置だしをされ、さらに精密な機械ステージを有するチャンバーに搬送される。
【0051】
チャンバーに搬送されたウエハは光学的及び電子ビーム的手段により正確な位置だしが行われる。シーケンスには予めウエハのどの部分を測定するのか記録してあるので、そのシーケンスに従って機械ステージが動作し、電子ビーム3を照射する位置が定められる。必要により電子ビームを利用したパターンマッチングなどを行い、正確に測定対象位置を決定する。
【0052】
決定された位置に対して、1回目の電子ビーム照射をバイアス電圧Vm1で行う。次いで、2回目の電子ビーム照射をバイアス電圧Vm2で行う。この2つのバイアス電圧時に得られる電流をそれぞれ測定して保存する。測定された電流値は適当に補正を掛けた後、所定の方程式に代入をして材料の厚みなどへ変換する。
【0053】
[第8実施形態]
図8は、本発明の第8実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図8において図1から図7の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第7実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0054】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。電流計5には、可変電源7によってバイアス電圧Vmが印加されている。また、第7実施形態の電流測定装置と同じように、電子ビーム源2、加速電極11、アパーチャ12、減速電極13などが設けられている。
【0055】
本実施形態の電流測定装置では、第7実施形態の電流測定装置と同じように、電子ビーム源2から放出された電子ビーム3が加速電極11に加えられた加速電圧Vaによって加速される。加速された電子ビーム3はアパーチャ12を通過し、電子ビーム軸中心を形成する電子ビーム3のみが取り出される。軸中心を形成する電子ビーム3のエネルギーは、電子ビーム源2から放出された時に電子ビーム3が有するエネルギー分散に比べて格段に揃っている。エネルギーが揃った電子ビーム3は減速電極13に加えられた減速電圧Vdに応じて減速し、測定サンプル4の手前で低いエネルギーを有する状態となる。測定サンプル4の表面の電位は電流計5に印加されたバイアス電圧Vmによって制御される。したがって、測定サンプル4の表面においては、減速電極13で得られるエネルギーよりもさらに低いエネルギーを持つ電子ビーム3に変換される。
【0056】
測定サンプル4は容量的に電流計5と接続されている。しかし、測定サンプル4と電極10の間に生じる容量は、測定サンプル4と電子ビーム源2との間に生じる容量と比較して非常に大きい。そこで、電流計5に加えられたバイアス電圧Vmはほとんど電子ビーム源2と測定サンプル4との間に実質的に加えられる。
【0057】
[第9実施形態]
図9は、本発明の第9実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図9において図1から図8の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第7実施形態との相違点は、制御信号発生部8が測定タイミング信号を出力する点である。すなわち、制御信号発生部8は、電流計5の電流測定タイミングと同期して、可変電源7によるバイアス電圧Vmの印加のタイミングを制御する制御手段をなしている。
【0058】
換言すれば、本実施形態の電流測定装置は、電流計5に可変電源7によりバイアス電圧Vmを印加するタイミングと、電流計5が電流を測定するタイミングとを同期させるように構成されたことに特徴がある。
【0059】
測定を行わない通常状態ではバイアス電圧Vmは非印加又はあるグローバルに設定された電圧に維持されている。そして、電流計5で測定が実際に行われるタイミングに同期して、電流計5にバイアス電圧Vmが印加される。バイアス電圧Vmが印加されるタイミングは、非常に短い周期の交流信号であっても良いし、比較的長いオンオフ信号であってもかまわない。
【0060】
本実施形態の電流測定装置によれば、電流計5を介しての測定サンプル4へのバイアス電圧Vmの印加のタイミングと、電流測定タイミングとを同期させることができる。これにより、電流測定において問題となるホワイトノイズなどを簡便に除去することができ、測定サンプル4に流れる電流などの測定について感度及び精度をさらに向上させることができる。
【0061】
[第10実施形態]
図10は、本発明の第10実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図10において図1から図9の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第8実施形態との相違点は、本実施形態では電極10を有している点である。
【0062】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極10が付設されている構成に特徴がある。したがって、電極10と測定サンプル4との間は交流的に接続されている。電極10は、測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有しており、他の寄生容量と比較して非常に大きな容量を形成している。そして、測定サンプル4の下に設けられた電極10には電流計5が直接接続されている。その他の構成部分と動作は、図9に示した第9実施形態の電流測定装置と同様である。
【0063】
[第11実施形態]
図11は、本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図11において図1から図10の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態は上記の各実施形態の電流測定装置における電流計5の具体例としての電流測定回路5aを示している。
【0064】
電流測定回路5aは、演算増幅器14と、演算増幅器14の正入力端子にバイアス電圧Vmを印加するバイアス電源6と、演算増幅器14の出力端子と負入力端子との間に配置された高抵抗器R1とを有してなる。演算増幅器14の負入力端子には測定サンプル4が電気的に接続されている。
【0065】
これらにより、電流測定回路5aは演算増幅器14を用いた電流電圧変換回路を構成している。測定すべき電流は演算増幅器14の負入力端子に導入される。負入力端子は演算増幅器14を構成するFETトランジスタのゲートに内部的には接続されており、演算増幅のための元信号となる。演算増幅器14は2つの入力端子の電圧差がゼロボルトになるように動作する。そのため、負入力端子に入力された電流と同じ大きさになるように高抵抗器R1をバイアスする。このバイアスに必要な電圧が演算増幅器14の出力となる。
【0066】
一方、演算増幅器14が正常に動作しているときは、演算増幅器14の正入力端子と負入力端子間の電圧がゼロボルトになるように制御されている。従って、演算増幅器14の正入力端子にバイアス電圧Vmを加えると、そのバイアス電圧Vmと負入力端子の電圧は同じになる。したがって、測定サンプル4に直接電圧を加えなくても、演算増幅器14の正入力端子に電圧を加えることで、実質的に測定サンプル4の電位を変化させることができる。そこで、電子ビーム照射エネルギーEirから演算増幅器14の正入力端子に印加されたバイアス電圧Vmを引いたエネルギーに相当する電子ビームが測定サンプル4に照射される。
【0067】
そこで、本実施形態の電流測定装置は、電子ビーム源2から高エネルギーの電子ビームを放出しても、測定サンプル4が受ける実効エネルギーを小さくでき、測定サンプル4に対してダメージを与えることなく、測定サンプル4に流れる電流の測定について感度と精度を向上させることができる。
【0068】
[第12実施形態]
図12は、本発明の第12実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図12において図1から図11の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第11実施形態との相違点は、本実施形態ではバイアス電源6を備えず、可変電源7と制御信号発生部8とを有している点である。可変電源7は、演算増幅器14における正入力端子に可変電圧を印加する演算増幅器用可変電源をなすものである。制御信号発生部8は可変電源7の出力電圧を制御する電圧制御信号を出力するものである。
【0069】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、演算増幅器14に加えるバイアス電圧Vmを制御信号発生部8からの電圧制御信号により可変とした構成に特徴がある。制御信号発生部8は、電圧制御信号を出力することで、測定サンプル4における電子ビームの実質的なエネルギーレベルを可変することができる。ここで、電圧制御信号によって可変制御されるバイアス電圧Vmは、サイン波、矩形波又はノコギリ波などの周期的な信号でもよいし、トリガー的なワンショット信号でもよい。
【0070】
これらにより、本実施形態の電流測定装置は、測定サンプル4の属性などに応じて、最適なバイアス電圧Vmの印加形態を選んで電流測定などをすることができ、より高精度にプロセス評価などをすることができる。
【0071】
[第13実施形態]
図13は、本発明の第13実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。図13において図1から図12の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第12実施形態との相違点は、制御信号発生部8がアパーチャ12に対して照射タイミング制御信号を出力する点である。より具体的に述べると、アパーチャ上部に存在するブランキング電極に電圧を印加して電子ビームがアパーチャーを通り抜けないようにすることで、電子ビームの照射タイミングを決定する。あるいは、アパーチャー自身の大きさが電気信号によって変化する機構をもちいてもよい。
【0072】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、演算増幅器14に加えるバイアス電圧Vmを電子ビーム照射タイミングと同期させることを特徴としている。制御信号発生部8は、測定サンプル4に流れる電流の測定を行うタイミングと同期して、アパーチャ12における電子ビームの断続と可変電源7でのバイアス電圧Vmとを制御する。
【0073】
本実施形態の電流測定装置によれば、電子ビームのオンオフタイミングと、電流測定回路5aでの測定タイミングとを同期させることによって、外部から測定系に入り込む非同期なノイズ(ホワイトノイズなど)を簡便に除去することが可能となる。
【0074】
以上説明したように、本発明の電流測定装置においては、非常に低いエネルギーを持つ電子ビームを利用して測定することができる。低いエネルギーを有する電子ビームは、二次電子放出確率を向上させ、測定感度を高くすることができる。また、低いエネルギーを有する電子ビームは、測定サンプルに対してダメージを与えない。
【0075】
また、本発明によれば、電子ビーム源の設定を変えることなく、電子ビームのエネルギーレベルを大きく変えられるので、高速で電子ビームのエネルギーレベルを変更できる。このため、電子ビームのエネルギーレベルを変更した後に同じ場所に電子ビーム照射できるので、複数のエネルギーレベルの電子ビームを用いて測定する場合、測定精度を著しく向上させることができ、またスループットを向上させることができる。
【0076】
また、本発明によれば、1つの電子ビームエネルギーを設定するときに、電子ビーム源側及び電流測定回路側のそれぞれで、いろいろな条件の組み合わせができる。例えば、電子ビーム源に印加する高圧電源Vh、加速電圧Va、減速電圧Vd、バイアス電圧Vm、バイアス電圧Vmの波形などを組み合わせることができる。その結果、平均的には同じエネルギーを持つ電子ビームのエネルギー分散状態や空間分布についての調節が可能なので用途に応じて最適な組み合わせの電子ビーム照射形態を選んで使用できる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の電流測定装置及び電流測定方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、測定サンプルへの電子ビームの照射によりその測定サンプルに流れる電流を測定することとしたが、本発明はこれに限定されず、測定サンプルへの電子ビームの照射によって発生した散乱電子又は二次電子を回収する電極を設け、その電極に流れる電流について、上記実施形態と同様にして測定することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電子ビームの照射により半導体基板などの測定サンプルに流れる電流などを測定する際に、測定サンプルして対してダメージを与えることなく、その測定について感度と精度を向上させるので、本発明は、各種の電流測定装置及び電流測定方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図8】本発明の第8実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図9】本発明の第9実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図10】本発明の第10実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図11】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図12】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図13】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図14】電流測定についての説明図である。
【図15】従来の電流測定装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1…チャンバー、2…電子ビーム源、3…電子ビーム、4…測定サンプル、5…電流計、5a…電流測定回路、6…バイアス電源、7…可変電源、8…制御信号発生部、9…XYステージ、10…電極、11…加速電極、11a…加速電源、12…アパーチャ、13…減速電極、13a…減速電源、14…演算増幅器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、
電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、
電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、
前記測定サンプルに流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、
前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、
電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、
電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、
前記測定サンプルに容量結合している電極と、
前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、
前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項3】
電子ビームを測定サンプルに照射することにより生じる電流を測定する電流測定装置であって、
電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、
電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、
前記測定サンプルへの電子ビームの照射によって発生した散乱電子又は二次電子を回収する電極と、
前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、
前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項4】
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを第1のエネルギーレベルに加速する加速電極と、
前記加速電極に電圧を印加する加速電源と、
前記加速電極で加速された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャと、
前記アパーチャを通過した電子ビームのエネルギーを第2のエネルギーレベルに変換する減速電極と、
前記減速電極に電圧を印加する減速電源とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記電圧印加手段は、前記電流測定回路と接地電位との間に可変電圧を印加する可変電源を有してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項7】
前記電流測定回路の電流測定タイミングと同期して、前記電圧印加手段又は可変電源による電圧印加のタイミングを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項8】
前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、
前記演算増幅器における正又は負入力端子に電圧を印加するバイアス電源とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項9】
前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、
前記演算増幅器における正又は負入力端子に可変電圧を印加する演算増幅器用可変電源と、
前記可変電源の出力電圧を制御する信号を出力する制御信号発生部とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項10】
電子ビームを測定サンプルに照射し、該測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定方法であって、
前記測定サンプルに生じる電流について増幅する増幅回路を配置する手順と、
前記増幅回路と接地電位との間に電圧を印加する手順とを有することを特徴とする電流測定方法。
【請求項1】
電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、
電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、
電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、
前記測定サンプルに流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、
前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
電子ビームが照射された測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定装置であって、
電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、
電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、
前記測定サンプルに容量結合している電極と、
前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、
前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項3】
電子ビームを測定サンプルに照射することにより生じる電流を測定する電流測定装置であって、
電子ビームの放出が可能なように雰囲気制御されたチャンバーと、
電子ビームを設定されたエネルギーで放出する電子ビーム放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを測定サンプルの特定場所に照射する手段と、
前記測定サンプルへの電子ビームの照射によって発生した散乱電子又は二次電子を回収する電極と、
前記電極に流れる電流について少なくとも増幅する電流測定回路と、
前記電流測定回路と接地電位との間に電圧を印加する電圧印加手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項4】
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記電子ビーム放出源から放出された電子ビームを第1のエネルギーレベルに加速する加速電極と、
前記加速電極に電圧を印加する加速電源と、
前記加速電極で加速された電子ビームの一部分を通過させるアパーチャと、
前記アパーチャを通過した電子ビームのエネルギーを第2のエネルギーレベルに変換する減速電極と、
前記減速電極に電圧を印加する減速電源とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記電圧印加手段は、前記電流測定回路と接地電位との間に可変電圧を印加する可変電源を有してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項7】
前記電流測定回路の電流測定タイミングと同期して、前記電圧印加手段又は可変電源による電圧印加のタイミングを制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項8】
前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、
前記演算増幅器における正又は負入力端子に電圧を印加するバイアス電源とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項9】
前記電流測定回路の構成要素をなすものであるとともに、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する演算増幅器と、
前記演算増幅器における正又は負入力端子に可変電圧を印加する演算増幅器用可変電源と、
前記可変電源の出力電圧を制御する信号を出力する制御信号発生部とを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項10】
電子ビームを測定サンプルに照射し、該測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定方法であって、
前記測定サンプルに生じる電流について増幅する増幅回路を配置する手順と、
前記増幅回路と接地電位との間に電圧を印加する手順とを有することを特徴とする電流測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−186103(P2006−186103A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378122(P2004−378122)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(502277762)ファブソリューション株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(502277762)ファブソリューション株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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