説明

電流駆動回路、発光素子駆動装置、および携帯装置

【課題】よりノイズの少ないスロープ機能を実現可能な電流駆動回路、この電流駆動回路を備えた発光素子駆動装置、およびそれを用いた携帯装置を提供する。
【解決手段】スロープコントローラ13で、スロープDAC15の出力する基準電流値の時間変化に含まれる、スロープ時間)を設定して、スロープDAC15のスイッチング部分をスイッチングするためのデータをグレイコードとして生成して、たとえば6ビットにデコードし、基準電流Irefを2n-1個の基準素子でカレントミラー処理する構造を有するスロープDAC15でスロープコントローラ13からのデータに基づいてスイッチング処理をして各ミラー電流I1+I2+…+I(2n-1)の値が、スロープDAC15の出力値となり、このスロープDAC15の出力電流がドライバ16の基準電流として入力される。ドライバ16は、基準電流Ioutrefをある定数C倍にして駆動対象であるLED20を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電流をモニタする電流出力型のドライバ回路に基準電流を供給する電流駆動回路、この電流駆動回路を備えた発光素子駆動装置、およびそれを用いた携帯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯装置には、たとえば液晶表示デバイス(LCD)からなる画像表示装置のバックライトとしての発光、あるいは着信表示等を行うために、発光色の異なる複数の発光素子としての発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、LEDと表記する)が設けられている。
現在の携帯装置においては、赤色(R)LED、緑色(G)LED、青色(B)LED,並びに白色(W)LEDが設けられているのが一般的である。
【0003】
近年においては、これらLEDを点灯、あるいは階調制御によって時間的に輝度を変調させる機能を備えている携帯装置が実用に供されている。
LEDの点灯輝度を調整する方法の一つとして、図1に示すようなPWM制御で点灯の明・暗ならびにスロープ機能を実現する方法がある(PWM制御については特許文献1参照))。
スロープ機能とは、LEDの点灯を時間に対して徐々に明るく、あるいは徐々に暗くする機能である。
【0004】
図1に示すような階調表示の方式では、LEDの点灯と消灯とが交互に繰返され、しかもその繰返しの割合は表示の単位周期内で1回ずつであり、階調に応じて相対的な割合が時間的に変化する。
この方式において、LEDドライバからの出力電流はPWM(離散的)であり、常にオン(ON)とオフ(OFF)を繰り返している。
LEDドライバIC内で低消費電力を目指し、LEDのアノード−カソード間電圧をモニタして電源電圧に帰還する場合、LEDのアノード−カソード間電圧が離散的に変動してはならない。
【特許文献1】特開平2−1812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、パルスのON/OFFによって制御する方法では第1にパルスのON/OFF自体がノイズ源になる。これは階調制御の精度を低下させる要因である。
第2に、パルスのON/OFFに応じてLEDカソード端の電位が時間的に大きく変動する。たとえばLEDのカソード電圧をモニタしてフィードバックをかけるような回路構成においてカソード端子はDC(安定した電位)になることが必要になる。
【0006】
本発明の目的は、よりノイズの少ないスロープ機能を実現可能な電流駆動回路、この電流駆動回路を備えた発光素子駆動装置、およびそれを用いた携帯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、駆動対象を駆動する時間に対して徐々に強くまたは徐々に弱くするスロープ機能を有する電流駆動回路であって、スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記駆動対象に供給するドライバとを有する。
【0008】
本発明の第2の観点は、駆動対象である発光素子を駆動する時間に対して徐々に明るくまたは徐々に暗くするスロープ機能を有する発光素子駆動装置であって、スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記発光素子に供給するドライバとを有する。
【0009】
好適には、上記電流出力型デジタル/アナログコンバータは、上記基準電流源に接続された基準素子と複数のカレントミラー素子とを有するカンレトミラー構造を有し、上記カレントミラー素子による各ミラー電流が加算されて、上記基準電流出力を得る。
【0010】
好適には、上記カンレトミラー素子の各々に上記デジタル信号でスイッチ可能なスイッチング素子が接続されている。
【0011】
好適には、上記基準素子にオン状態にあるスイッチング素子が接続されている。
【0012】
好適には、上記コントローラが生成するデジタル信号は、グレイコードを含む。
【0013】
好適には、上記発光素子に駆動電圧を供給する電源回路を有し、上記電源回路は、上記ドライバの電流出力端の端子レベルをモニタして、上記発光素子への駆動電圧を設定する。
【0014】
好適には、上記ドライバは、上記電流出力型デジタル/アナログコンバータによる基準電流を定数倍して上記駆動対象に供給する。
【0015】
本発明の第3の観点は、発光に必要な駆動電圧が異なる複数の発光素子が並列に接続され、当該複数の発光素子のうちの一または複数の発光素子を駆動する発光素子駆動装置であって、上記複数の発光素子の対応する発光素子に接続され、設定値に基づいた輝度をもって対応する発光素子を駆動する複数の電流駆動回路と、上記複数の駆動回路の各駆動状態に基づいて、発光駆動されている一または複数の発光素子のうち最大の駆動電圧値を判別し、少なくとも判別した値の駆動電圧を上記複数の発光素子に供給する電源回路と、を有し、上記各電流駆動回路は、駆動対象である発光素子を駆動する時間に対して徐々に明るくまたは徐々に暗くするスロープ機能を有し、スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記発光素子に供給するドライバと、を含む。
【0016】
本発明の第4の観点は、電源電圧源として電池を有する携帯装置であって、発光に必要な駆動電圧が異なる複数の発光素子と、上記発光素子により照明される少なくとも一つの被照明部と、上記複数の発光素子が並列に接続され、当該複数の発光素子のうちの一または複数の発光素子を駆動する発光素子駆動装置と、を有し、上記発光素子駆動装置は、上記複数の発光素子の対応する発光素子に接続され、設定値に基づいた輝度をもって対応する発光素子を駆動する複数の電流駆動回路と、上記複数の駆動回路の各駆動状態に基づいて、発光駆動されている一または複数の発光素子のうち最大の駆動電圧値を判別し、少なくとも判別した値の駆動電圧を上記複数の発光素子に供給する電源回路と、を有し、上記各電流駆動回路は、駆動対象である発光素子を駆動する時間に対して徐々に明るくまたは徐々に暗くするスロープ機能を有し、スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記発光素子に供給するドライバと、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、出力電流値の精度は電流DACの精度のみで決定し、スイッチングのノイズやカレントミラー比などの問題を克服することで、DACの精度を上げることが可能となり、結果的にはドライバ段からの出力ノイズが抑制される。
また、ドライバ段の基準電流値をDACにより制御することで、ドライバの設定値によらず2n階調の発光素子点灯を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る電流駆動回路を備えた発光素子駆動装置の構成例を示すブロック図である。図3は、図2におけるスロープ機能を実現する電流駆動回路を示すブロック図である。図4は、本実施形態に係るDACのスロープ期間を含んだ出力電流値の時間変化を示す図である。
【0020】
本実施形態の発光素子駆動装置10は、DACによる電流制御を行いながらも、よりノイズの少ない多階調、たとえば64階調でのスロープ機能を実現可能に構成されている。
発光素子駆動装置10は、図2に示すように、発振器11、カウンタ12、スロープコントローラ(Slope CTRL)13、レベルシフト回路(LSFT)14、スイッチング部分を含むスロープ機能付き電流出力デジタル/アナログコンバータ(以下、スロープDACという)15、およびドライバ16を有している。また、図3の17は基準電流源を示している。
【0021】
発振器11は、周波数fr[Hz]の基準クロックCLKをカウンタ12に供給する。
【0022】
カウンタ12は、発振器11による基準クロックCLKをカウントとして、換言すれば分周した分周クロックをスロープコントローラ13に供給する。
【0023】
スロープコントローラ13は、図示しない制御系からスロープモード突入信号STRATおよびスロープ時間設定信号SLPTMを受けて、カウンタ12の出力に基づいてスロープDAC15の出力する基準電流値の時間変化に含まれる、たとえば図4に示すような、スロープ時間(図4中のTrあるいはTf)を設定してレベルシフト回路14に出力する。
スロープコントローラ13は、カウンタ12の出力信号を受けて、スロープDAC15のスイッチング部分をスイッチングするためのデータをグレイコードとして生成して、たとえば6ビットにデコードしてレベルシフト回路14に出力する。
【0024】
レベルシフト回路14は、たとえば3V系のスロープコントローラ13の出力信号(データ)を4.5V系にレベルシフトさせてスロープDAC15に供給する。
【0025】
スロープDAC15は、図3に示すように、基準電流Irefを2n-1個の基準素子でカレントミラー処理する構造となっている。各ミラー電流I1+I2+…+I(2n-1)の値が、スロープDAC15の出力値となり、このスロープDAC15の出力電流はドライバ16の基準電流として入力される。
【0026】
ドライバ16は、スロープDAC15により基準電流Ioutrefをモニタし、その基準電流Ioutrefをある定数C倍にして駆動対象であるLED20を駆動する。
【0027】
以下、上記構成による基本的な動作、バイナリコードの代わりにグレイコードを用いる理由、並びに、スロープDAC15およびドライバ16の具体的な構成および機能について順を追って説明する。
【0028】
本実施形態においては、スロープDAC15のスロープ時間(図5中のTrあるいはTf)はスロープコントローラ13によって設定される。
スロープ時間決定用にカウンタ12回路が必要である。カウンタ12から出力されるCLK周波数f [Hz]によってスロープ時間が決定され、たとえば64階調(6Bit)制御では立ち上がりのスロープ時間Trおよび立ち下りのスロープ時間Tfは、64/f[秒(s)]となる。
スロープコントローラ13においては、カウンタ12からの出力信号がグレイコードに変換された後、6ビット(6Bit)にデコードされ、レベルシフト回路14を介してスロープDAC15のスイッチング部分に入力される。
このように、6Bitにデコードする際にあらかじめグレイコードに変換しておくことが本実施形態の特徴的な要素の1つである。
【0029】
スロープDAC15内においては、基準電流Irefを2n-1個の基準素子でカレントミラー処理され、各ミラー電流I1+I2+…+I(2n-1)の値IoutrefがスロープDAC15の出力値となり、これはドライバ16の基準電流として入力される。
つまり、スロープ中はドライバ16に供給される基準電流値を時間的に増加(上りスロープ中)あるいは減少(下りスロープ中)させており、これは本実施形態の特徴的な要素の1つである。
【0030】
ドライバ16においては、スロープDAC15から供給する基準電流をある定数C倍にして出力しLED20を駆動する。
つまり、スロープ中ドライバ16のミラー比一定のとき、スロープDAC15の出力電流をIoutref、ドライバ段の出力電流をIoutとすると、次式が成り立つ。
【0031】
(数1)
Iout(t)=C×Ioutref(t) (1)
【0032】
したがって、同じIoutref(t)の関数であっても、図5に示すように、ドライバ段でミラー比Cの設定を変更(図5においてはC1,C2,C3)することで、スロープ時間は同じで最終到達電流値(つまりはLEDの輝度)が異なるスロープ点灯を可能にする。
【0033】
一方で、アナログ的に電流値を制御するので、たとえばDAC部分で参照電流側の信号に混在するヒゲなどのノイズは出力電流にそのままノイズとなるおそれがある。
【0034】
次に、本実施形態で、電流DAC方式においてバイナリコードの代わりにグレイコードを用いる理由について説明する。
【0035】
一般的に、電流DAC方式において、図6(A)〜(C)に示すような2進バイナリコードを用いてスイッチを切り替えてアナログ電流値を得る方法がある。
図6は例として2ビット(2bit)信号(01)から(10)に切り替わったとき場合を示している。
図6(C)に示すようにあるように、ビットの切り替わりに時間的なずれが生じるとグリッジと呼ばれるようなノイズが発生する。また、DACに重み付けを行っていることにより、高ビットでのズレが大きくなる可能性がある。つまり、DAC出力が線形でなくなる。
【0036】
この問題を解決する一つの方法として、温度計(サーモメーター)コードを用いることが可能である。
【0037】
図7は、バイナリコードと温度計コードの対応関係を示す図である。図8はバイナリコードを温度計コードに変換した場合のDACの構成例を示す図である。図9(A)〜(G)はバイナリコードにおけるビット切り替わりの様子を示す図である。
また、図10はバイナリコードと温度計コードの対応関係を示す図である。図11(A)〜(G)はグレイコードにおけるビット切り替わりの様子を示す図である。
【0038】
温度計コードは、図7に示すように、バイナリコードの値の増加に伴って“1”を出力するビットが1ビットずつ単調増加していく。これにより、図8に示すように、nビットの2進バイナリ信号は2n-1の温度計コードにデコードして同じく2n-1個のスイッチを1つずつONさせていく。なお、図8において、1はDACを、2は温度計コード変換回路をそれぞれ示している。
しかしこの際、もう1つのノイズ源が存在する。それはバイナリコードをデコードする際に発生するおそれのあるヒゲである。
図9(A)〜(G)に示すように、バイナリコードではビット信号が同時に切り替わるタイミングが存在する。これらの信号同士を論理ゲートに入力した場合、たとえば図9(G)に示すようなヒゲが発生する原因となる。このように、温度計コードにデコードされた信号に存在するノイズはDACのグリッジノイズ発生の原因となる。
【0039】
そこで、DAC精度への影響を解消するために、デコードする前の信号にバイナリコードを用いず、代わりにグレイコードを用いる。
図11および図10に示すように、グレイコードはバイナリコードと異なり2ビット以上が同時に切り替わるタイミングが存在しない。それゆえビット切り替わり時のヒゲを削減することができる。デコードした後の信号は、図10に示すように、同じく温度計コードを用いる。
【0040】
以上のように、本実施形態においては、DACの重み付けを行わず温度計コードによって基本単位を単純加算することで出力の精度を上げ、線形性を保つことができる。
また同時に2進バイナリコードではなく、2進グレイコードをデコードする(温度計コードに変換する)ことでよりDACのノイズを劇的に低減させる。
【0041】
本実施形態においては、スロープDAC15からの出力電流Ioutrefは後段ドライバ16の基準電流として供給される。本実施形態の回路構成では、ドライバの基準電流を可変にし、ドライバ段である一定のミラー比倍することでLEDを駆動する電流値を変化させて輝度変調を可能にしている。つまり、図5に示すように、ドライバ段のミラー比によりスロープの最終到達輝度が可変である。
また、他のLEDの輝度変調の手段として用いられるPWM制御方式(図1)と比較して、本実施形態で採用する電流加算のDAC方式ではスロープ中においても常に連続的なDC信号としてドライバ電流を出力している点が大きな違いである。このことは出力をフィードバックするような構成において不可欠な要素である。この出力をフィードバックするような構成については、後で詳述する。
【0042】
次に、スロープDAC15およびドライバ16の具体的な構成および機能について説明する。
【0043】
<スロープDACの第1構成例>
図12は、本実施形態に係るスロープDACの第1の構成例を示す回路図である。
【0044】
図12のスロープDAC15Aは、pチャネルMOS(PMOS)トランジスタPT0〜PT63、スイッチSW1−1〜SW1−63、スイッチSW2−1〜SW2−63、およびインバータINV1〜INV63を有している。
また、ドライバ16は、nチャネルMOS(NMOS)トランジスタNT0〜NTx(xは正の整数)を有している。
【0045】
スロープDAC15Aにおいて、基準素子としてのPMOSトランジスタPT0のドレインおよびゲートが基準電流源17に共通に接続され、ソースが電源電圧VCCの供給ライン18に接続されている。また、カレントミラー素子としてのPMOSトランジスタPT1〜PT63のソースが電源電圧VCCの供給ライン18に共通に接続され、各ドレイン同士が接続され(ワイヤードOR接続されて)、このドレインの共通接続点ND15によりスロープDAC15の基準電流出力のノードND15Iが形成されている。
また、電源電圧VCCの供給ライン18とPMOSトランジスタPT0のドレイン・ゲートとの接続ライン19との間に2つ1組のスイッチSW1−1とSW2−1、・・・、SW63−1とSW63−2との直列スイッチ群SWG1〜SW63が並列に接続され、各直列スイッチ群SWG1〜SWG63におけるスイッチ同士の接続点が、対応するカレントミラー素子としてのPMOSトランジスタPT1〜PT63のゲートにそれぞれ接続されている。
直列スイッチ群SWG1〜SWG63の2つのスイッチは、対応するデコード信号によりインバータINV1〜INV63を通して相補的にオン、オフ制御される。
また、基準素子としてのPMOSトランジスタPT0のサイズと、カレントミラー素子としての他のPMOSトランジスタPT1〜PT63のサイズ比は、たとえば8:1に設定されている。
【0046】
ドライバ16において、NMOSトランジスタNT0のドレインおよびゲートがスロープDAC15の電流出力ノードND15I、並びにカレントミラー素子としての他のNMOSトランジスタNT1〜NRxのゲートに共通に接続されている。
NMOSトランジスタNT0〜NTxのソースは接地され、NMOSトラジスタNT1〜NTxのドレインが駆動対象のLED20のカソードに接続されている。
【0047】
図12のスロープDAC15Aにおいては、スイッチを簡略化して記号で記しているが、実際にはたとえばPMOSスイッチを用いる。
スロープDAC15Aの電流出力がドライバ段の基準電流となる。
本実施形態では、6ビット階調を実現しており、スイッチSW1−1とSW2−1、・・・、SW63−1とSW63−2との直列スイッチ群SWG1〜SW63の一方のスイッチを温度計コードにより1つずつ順次ON/OFFすることに伴い、カレントミラー素子としてのPMOSトランジスタPT1〜PT63の63個ならびにスイッチ63×2個要する。
カレントミラー素子がONのときはそのゲートに接続された下側のスイッチ(SWx−2)がONとなり、その逆相の信号が上側のスイッチ(SWx−1)に入力される。
仮に下側のスイッチのみ存在する場合、OFFしているカレントミラー素子に対してそのゲート電圧は不定となり、寄生容量で電圧をホールドしてしまうため、OFFできない。そのためOFF時には上側のスイッチをONにしてカレントミラー素子のゲートを電源電位VCCに接続して安定動作させる。
【0048】
ゲートをスイッチングする図12の回路構成における特徴は、スイッチの一端が基準素子としてのPMOSトランジスタPT0のゲートや他のカレントミラー素子に対応のスイッチと繋がっていることである。
つまりこのような構造ではあるビットのスイッチング信号がスイッチのゲート容量を介して他のカレントミラー素子全てのゲート電圧を揺らし、出力電流に誤差を生じてしまう可能性がある。
【0049】
<スロープDACの第2構成例>
図13は、本実施形態に係るスロープDACの第2の構成例を示す回路図である。
図13において図12の回路と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0050】
図13のスロープDAC15Bは、スイッチング信号が他のカレントミラー素子(PMOSトランジスタPT1〜PT63)のゲートに干渉しないように考慮した回路構成である。
【0051】
図12の構成ではスイッチへのノイズがゲート容量を介して他のゲート電圧を変動させて出力変動をしてしまうおそれがあったが、図13の構成ではゲートを切り替えるのではなく、ソース側にスイッチSW1〜SW63を挿入してある。
これにより、各カレントミラー素子としてのPMOSトランジスタPT1〜PT63およびそれをON/OFFさせるためのスイッチSW1〜SW63はそれぞれノイズに対して独立であり、スイッチSW1〜SW63へのノイズは他のカレントミラー素子としてのPMOSトランジスタPT1〜PT63への影響は少ない。それゆえ最小限の誤差に押さえ込むことができる。
【0052】
<スロープDACの第3構成例>
図14は、本実施形態に係るスロープDACの第3の構成例を示す回路図である。
図14において図13の回路と同一構成部分は同一符号をもって表している。
【0053】
図14のスロープDAC15Cは図13の回路を改良したものである。
図13ように、カレントミラー素子としてのPMOSトランジスタPT1〜PT63のソース側にスイッチSW1〜SW63を挿入することでノイズ耐性は高められたものの、このスイッチのON抵抗による電圧ドロップがミラー比の不一致を引き起こしてしまうおそれがある。つまり基準素子であるPMOSトランジスタPT0ソース電位が電源電圧VCC)であるのに対して、カレントミラー側のソース電位VSは次のようになる。
【0054】
(数2)
VS=VCC−(I/gm) (2)
【0055】
ここで、Iは各ビットtのミラー電流、gmはスイッチのコンダクタンスである。
また、図13においてスイッチとしてPMOSを用いた場合、このgmは次式で与えられる。
【0056】
(数3)
gm=√(2μpCox(W/L) ID)=2ID/(Vgs−Vth) (3)
【0057】
さらに、次のように表せる。
【0058】
(数4)
gm=μpCox(W/L) (Vgs−Vth) (4)
【0059】
ここで基準素子(PMOSトランジスタPT0)側とカレントミラー素子(PMOSトランジスタPT1〜PT63)側とのソース電位が異なることによるミラー比のずれの問題について解決するためには、カレントミラー素子側のドロップを無視できるほどスイッチのコンダクタンスを上げるか、あるいは基準素子側のソース電位もカレントミラー素子側と同等分ドロップさせて一致させることが考えられる。
しかし前者の実現のためには式(3)、(4)からミラー電流を大きくするか、トランジスタのサイズW(チャネル幅)を大きくする必要がある。電流値の増加は消費電流が増大し、サイズの増加はレイアウト面積が大きくなる(1chにつき2n-1個のスイッチが存在することを考えると高ビットが厳しくなる)。
それゆえ、図14のスロープDAC15Cにおいては、基準素子側のソース電圧も同様にドロップさせる方法を採用する。
【0060】
図14のスロープDAC15Cにおいては、基準素子であるPMOSトランジスタPT0のソース側に常時ON状態のスイッチ(PMOSスイッチを用いゲートは接地する)SW0を挿入することで基準素子側とカレントミラー素子側とのソース−ゲート間電圧を一致させる。
ただしこのとき、基準素子側とカレントミラー素子側でミラー比が8:1であることを考慮してスイッチのコンダクタンスgを一致させなければならない。つまり基準素子側に8倍の電流が流れるので式(3)より、基準側のコンダクタンスを8倍にする必要がある。これについては式(4)よりチャネル長Lを同一(しきい値Vthが同じ)にした上で基準素子側のスイッチのチャネル幅Wを8倍にすればよい。
【0061】
以上より、本実施形態においては、ノイズの影響をできるだけ排除し、ミラー比のマッチングを取り、さらに温度計コードで線形性の高いDAC出力をドライバ段の基準電流に供給するために、好適には図15の構成図を採用することが望ましい。
図15のスロープDACは図14の回路構成に対応したものである。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、電流DAC方式を用い、DACの出力電流をドライバの基準電流に供給することでPWM方式の階調制御と比べて以下のような効果をもたらす。
【0063】
出力電流値の精度は電流DACの精度のみで決定し、スイッチングのノイズやカレントミラー比などの問題を克服することで、DACの精度を上げることが可能となり、結果的にはドライバ段からの出力ノイズが抑制される。
PWM方式ではドライバの設定値が低いときにはスロープの階調は低くなるが、本実施形態のようにドライバ段の基準電流値をDACにより制御することで、ドライバの設定値によらず2n階調のLED点灯を実現できる。
【0064】
出力がDCであることはアナログ回路において有用である。たとえば出力値をモニタし、フィードバックをかけることにより必要最低限の駆動電圧でLEDを点灯させることが可能である。本回路構成は昇圧型DC―DCコンバータによりLEDが高効率に駆動されることを念頭に動作可能に設計したものであり、携帯機器などのICの消費電力削減に必要不可欠なスロープ機能実現回路である。
【0065】
図16は、本実施形態に係るDC−DCコンバータへのフィードバック制御を採用して複数の発光素子(LED)を駆動するLED駆動回路の構成例を示す回路図である。
【0066】
本LED駆動装置100は、図16に示すように、発光させるために必要な駆動電圧、すなわち順方向電圧Vfが異なる複数個n(nは正の整数)のLED20−1〜20−nが並列に接続され、これらLED20−1〜20−nをそれぞれ任意の輝度(駆動電流)で駆動する。
図16の例においては、7個のLED20−1〜20−7を並列に設けた場合を一例として示している。
7個のLEDのうちLED20−1〜20−4の4個が白色LED、LED20−5の1個が赤色LED、LED20−6の1個が緑色LED、LED20−7の1個が青色LEDである。
【0067】
LED駆動装置100は、並列接続された複数のLED20−1〜0−7のうち、最大の順方向電圧Vfを持つLEDの設定電流で駆動することができる最適な電圧(たとえば最低の電圧)を端子TVOから各LED20−1〜20−7のアノードに出力する。
なお、本LED駆動装置100は、たとえば電池等の電源電圧源により端子TVIを介して電源電圧DVCCが供給される。
【0068】
LED駆動装置100は、図2等に関連付けて説明したスロープDACを採用した電流駆動回路10を赤色LED20−5、緑色LED20−6、および青色LED20−7に対応して設けられている。
図16においては、理解を容易にするために、図2等と同一構成部分は、図2等と同一符号をもって表している。
【0069】
図16のLED駆動装置100は、発振器11、カウンタ12、RGB用電流駆動回路101、W用駆動回路102、シリアルパラレル変換回路(S/P)103、輝度設定回路104、レベルシフト回路105、DC−DCコンバータ106、PMOSトランジスタ107、NMOSトランジスタ108、並びに、外付けのインダクタL101、キャパシタC101〜C106を有している。
【0070】
そして、RGB用電流駆動回路101は、R用スロープコントローラ13R、G用スロープコントローラ13G、B用スロープコントローラ13B、R用レベルシフト回路14R、G用レベルシフト回路14G、B用レベルシフト回路14B、R用スロープDAC15R、G用スロープDAC15G、B用スロープDAC15B、R用ドライバ16R、G用ドライバ16G、およびB用ドライバ16Bを有する。
これらの機能は、図2等に関連付けて説明した機能と同様であることからここではその説明を省略する。
R用ドライバ16Rの出力が端子TRを介してLED20−5のカソードに接続され、G用ドライバ16Gの出力が端子TGを介してLED20−6のカソードに接続され、B用ドライバ16Bの出力が端子TBを介してLED20−7のカソードに接続されている。
【0071】
W用駆動回路102は、4つのドライバ1021〜1024のみを有し、ドライバ1021の出力が端子TW1を介してLED20−1のカソードに接続され、ドライバ1022の出力が端子TW2を介してLED20−2のカソードに接続され、ドライバ2023の出力が端子TW3を介してLED20−3のカソードに接続され、ドライバ2024の出力が端子TW4を介してLED20−4のカソードに接続されている。
ドライバ1021〜1024は、レベルシフト回路105でレベルシフトされた輝度設定信号に応じて対応する白色LED20−1〜20−4を駆動する。
【0072】
また、ドライバ1021〜1024は端子TG1を通してグランドに接続されている。同様に、RGB用電流駆動回路101のドライバ16R、16G、16Bは端子TG2を通してグランドに接続されている。
【0073】
また、RGB用電流駆動回路101のドライバ16R、16G、16Bの出力、並びにドライバ1021〜1024の各出力(LED20−1〜LED20−7のカソードとの接続レベル)がDC−DCコンバータ106にフィードバックされる。
【0074】
シリアルパラレル変換回路103は、端子TDIを介して入力した、図示しないCPU等の上位装置により供給されるLED20−1〜20−nを駆動すべき電流(輝度)値に関するデジタルシリアルデータSDATをパラレルデータに変換し、変換後の電流(輝度)値に関するデジタルデータID1〜IDnを対応する輝度設定回路104に出力する。
また、シリアルパラレル変換回路103は、端子TDIを介して入力した、図示しないCPU等の上位装置により供給されるLED20−1〜20−nを駆動すべき電流(輝度)値に関するデジタルシリアルデータSDATをパラレルデータに変換し、電流駆動回路101のスロープコントローラ13R、13G,13Bにスロープモード突入信号START、およびスロープ時間設定信号SLPTMを生成して供給する。
【0075】
輝度設定回路104は、シリアルパラレル変換回路103により供給された駆動電流(輝度)値に関するデータを電流設定信号LEDoutに変換してレベルシフト回路105に供給する。
この電流設定信号LEDoutは、LED20−1〜20−7の輝度を設定する信号であり、具体的にはドライバ段のミラー比を設定するための信号である。スロープ動作においては、ここでの設定値がスロープ最終到達輝度となる。また、各チャネル別に設定可能である。
【0076】
レベルシフト回路105は、輝度設定回路104による電流設定信号をたとえば3V系が4.5V系に変換してWおよびRGB用駆動回路に供給する。
【0077】
DC−DCコンバータ106は、発振器11による基準クロックCLKを動作クロックとして供給され、LED20−1〜20−7、特にLED20−5〜20−7のカソード電圧Vf1〜Vf3をバス109を介してモニタし、電源電圧VCCが低下し、カソード電圧Vf(1〜3)のいずれかがあるしきい値よりも下回ると、動作して電源電圧を昇圧し、端子TVOからn個(図16では7個)のLED20−1〜20−7に駆動電圧VDCDCを並列に供給する。
DC−DCコンバータ106においては、LEDのカソード電圧値(=VDCDC−Vf(1〜3))が必要最低限の値になるようにDC−DC電圧は制御される。つまり高効率にLEDを駆動する。この機能実現のためにはVf1〜Vf3が交流(ac)的に振幅してはいけない。つまりPWM方式は適さない。そこで電流DAC方式のスロープDACが必要となる。
【0078】
PMOSトランジスタ107のソースが駆動電圧VDCDCの供給ラインに接続された端子TVO2に接続され、ドレインがNMOSトランジスタ108のドレインに接続されて、NMOSトランジスタ108のソースが端子TG3,TG4を介してグランドに接続されている。
PMOSトランジスタ107とNMOSトランジスタ108の各ドレインは端子TD1,TD2を介してインダクタL101の一端側に接続されている。
PMOSトランジスタ107とNMOSトランジスタ108のゲートの制御電位がDC−DCコンバータ106により制御され、所望の駆動電圧VDCDCを形成する。
【0079】
本実施形態に係るLED駆動装置100は、DC−DCコンバータ106の閾値電圧が1Vである場合には、最大の順方向電圧Vfを持つLEDのカソードが接続された端子電圧、換言すれば、ドライバ16R,16G,16BのNMOSトランジスタNT1〜NTxのドレイン電圧が1Vとなるように昇圧電源に帰還がかかるように構成されている。
【0080】
次に、上記構成による動作を説明する。
【0081】
たとえば、上位装置から動作モードに応じて駆動すべきLED20−5〜20−7に対する電流(輝度)値に関するデジタルシリアルデータが、端子TDIを介してシリアルパラレル変換回路103に入力される。
シリアルパラレル変換回路103では、供給されたLED20−1〜20−nを駆動すべき電流(輝度)値に関するデジタルシリアルデータがパラレルデータに変換される。
シリアルパラレル変換回路103ではスロープモード突入信号START、およびスロープ時間設定信号SLPTMが生成されて、電流駆動回路101のスロープコントローラ13R、13G,13Bに成して供給される。
なお、デジタルデータID1〜IDnには対応するLEDを駆動しない情報も含まれる。
【0082】
スロープコントローラ13R、13G、13Bにおいては、カウンタ12の出力に基づいてスロープDAC15の出力する基準電流値の時間変化に含まれる、たとえば図4に示すような、スロープ時間(図4中のTrあるいはTf)が設定されてレベルシフト回路14R,14G、14Bに出力される。
スロープコントローラ13R、13G、13Bにおいては、カウンタ12の出力分周信号を受けて、スロープDAC15R、15G、15Bのスイッチング部分をスイッチングするためのデータをグレイコードとして生成され、たとえば6ビットにデコードされレベルシフト回路14R、14G、14Bを通してスロープDAC15R,15G,15Bに供給される。
スロープDAC15R、15G、15Bは、図3に示すように、基準電流Irefを2n-1個の基準素子でカレントミラー処理する構造となっており、各ミラー電流I1+I2+…+I(2n-1)の値が、スロープDAC15R、15G、15Bの出力値となり、このスロープDAC15R、15G、15Bの出力電流がドライバ16R、16G、16Bの基準電流として入力される。
ドライバ16R、16G、16Bにおいては、スロープDAC15R、15G、15Bによる基準電流Ioutrefがモニタされ、その基準電流Ioutrefをある定数C倍にして駆動対象であるLED20−5〜20−7が発光駆動される。
【0083】
そして、図16では例として3chのLED20−5〜20−7のカソード電圧Vf1〜Vf3をモニタする構造となっており、電源電圧VCCが低下し、電圧Vf1〜Vf3のいずれかがあるしきい値よりも下回るとDC−DCコンバータ106が動作し電源電圧の昇圧動作が行われる。このとき、LED20−5〜20−7のカソード電圧(=VDCDC−Vf1〜Vf3)が必要最低限の値になるようにDCDC電圧は制御される。つまり高効率にLED20−5〜20−7が駆動される。
【0084】
各色のLEDの発光(点灯)に対する昇圧電源としてのDC−DCコンバータ106の具体的な動作な以下の通りとなる。
なお、ここでは、LED20−1〜20−nには、1または複数の赤色(R)LED、緑色(G)LED、青(B)LED、並びに白色LEDがそれぞれ含まれているものとする。
各色のLEDの順方向電圧は、以下のとおりとする。
赤色LEDの順方向電圧Vfrは1.9V、緑色および青色LEDの順方向電圧Vfg,Vfbは略3.1V、白色LEDの順方向電圧Vfwは3.5Vに設定されている。
また、電源電圧源がリチウムイオン電池であることを想定して、電源電圧VCCは3.2V〜4.2Vの範囲で使用するものとする。
さらに、LEDの電流駆動回路101に必要な最低動作電圧αを0.5Vとする。
また、以下の説明において、「スルー」とは、昇圧電源の出力段を構成するPMOSトランジスタ107をオン、NMOSトランジスタ108をオフとする(DC−DCコンバータの動作としては100%デューティで動作する)ことを示す。
【0085】
順方向電圧Vfwが3.5Vの白色LEDを点灯させるためには、駆動電圧VDRVとして必要な電圧は4V(=3.5V+0.5V)である。
この場合の昇圧電源15の動作は、電源電圧VCCが、4.0V<VCC<4.2Vの範囲にあるときは、「スルー」となる。
一方、電源電圧VCCが、3.2V<VCC<4.0Vの範囲にあるときは、たとえば4V「昇圧」する動作とする。
【0086】
順方向電圧Vfg,Vfbが3.1Vの緑色LED、青色LEDを点灯させるためには、駆動電圧VDRVとして必要な電圧は3.6V(=3.1V+0.5V)である。
この場合の昇圧電源15の動作は、電源電圧VCCが、3.6V<VCC<4.2Vの範囲にあるときは、「スルー」となる。
一方、電源電圧VCCが、3.2V<VCC<3.6Vの範囲にあるときは、たとえば3.6Vに「昇圧」する動作とする。
【0087】
順方向電圧Vfrが1.9Vの赤色LEDを点灯させるためには、駆動電圧VDRVとして必要な電圧は2.4V(=1.9V+0.5V)である。
この場合の昇圧電源15の動作は、電源電圧VCCが、3.2V<VCC<4.2Vの範囲にあると想定しており、本実施形態では、降圧電源を含まないことから、全範囲で「スルー」となる。
【0088】
つまり、昇圧電源の動作は、帰還をかけることにより期待される昇圧電源の出力が、電源電圧(電池電圧)VCC以下の場合には「スルー」になるため、電源電圧VCCで直接LEDを駆動することになる。
【0089】
以上説明したように、図16のLED駆動装置によれば、電流駆動回路101、102の出力値をモニタし、フィードバックをかけることにより必要最低限の駆動電圧でLEDを点灯させることが可能である。本回路構成は昇圧型DC―DCコンバータ106によりLEDが高効率に駆動されることを念頭に動作可能に設計したものであり、携帯機器などのICの消費電力削減に必要不可欠なスロープ機能実現回路である。
【0090】
図17は、上述した図16のLED駆動装置を適用可能な携帯装置(端末)の構成例を示すブロック図である。
【0091】
本携帯装置200は、たとえば携帯電話装置等により構成され、図17に示すように、CPU201、第1画像表示装置202、第2画像表示装置203、入力装置204、着信表示部205、同期信号供給回路206、および図16の構成を有するLED駆動装置207を有している。
そして、第1画像表示装置202、第2画像表示装置203、入力装置204、および着信表示部205がLEDで照明される被照明部を構成する。
【0092】
CPU201は、入力装置204による入力データに基づく装置の動作制御、電源オン時における第1画像表示装置202、第2画像表示装置203の表示制御、同期信号供給回路206の駆動制御、並びに、動作モードに応じた電流(輝度)設定データや点滅動作命令データ等のLED駆動装置207への供給制御等を行う。
【0093】
第1画像表示装置202は、携帯装置200のメイン表示部として機能し、カラー表示可能な液晶表示装置により構成されている。
第1画像表示装置202の近傍には、照明用バックライトとして、LED駆動装置207に対して並列に接続された4個の白色LED(図16の例ではLED20−1〜20−4)が配置されている。
第1画像表示装置202には、CPU201の制御の下、電波受信状態、アイコンメニューや各種画像、入力装置204により入力された、あるいは着信した相手先電話番号やメッセージ等が表示される。
【0094】
第2画像表示装置203は、携帯装置200のサブ表示部として機能し、液晶表示装置により構成されている。
第2画像表示装置203の近傍には、照明用として、LED駆動装置207に対して並列に接続された赤、緑、青の3色のLED(図16の例ではLED20−5〜20−7)が配置されている。
第2画像表示装置203には、CPU201の制御の下、時刻や日時等が表示され、また、着信や送信時に、LED駆動装置207により3色のLEDのうちの1色、あるいはいずれか2色、あるいは全色のLEDが点灯あるいは点滅される。
【0095】
入力装置204は、電源スイッチやテンキー等を有し、近傍には、照明用として、LED駆動装置207に対して並列に接続された赤、緑、青の3色のLED(図16例ではLED20−5〜20−7)が配置されている。
入力装置204には、CPU201の制御の下、電源オン時には、LED駆動装置207により3色のLEDのうちの1色、あるいはいずれか2色、あるいは全色により照明される。
【0096】
着信表示部205は、LED駆動装置207に対して並列に接続された赤、緑、青の3色のLED(図16の例ではLED20−5〜20−7)が配置されている。
着信表示部205は、着信時にLED駆動装置207により3色のLEDのうちの1色、あるいはいずれか2色、あるいは全色のLEDが点灯あるいは点滅される。
【0097】
同期信号供給回路206は、たとえばMIDI等の音源ICにより構成され、CPU201の制御の下、たとえば点滅動作に用いる同期信号SYNCをLED駆動装置207に供給する。
【0098】
なお、本携帯装置200の電源には、たとえば、リチウムイオン電池208が用いられる。
【0099】
このような構成を有する携帯装置200において、第1画像表示装置202、第2画像表示装置203、着信表示部205が配置されている第1部位と入力装置204が配置されている第2部位とが蝶番機構によって、たとえば2つ折りの折り畳まれた状態で使用者に携帯される。
【0100】
そして、使用者が第1部位と第2部位を開放するように操作すると、たとえば電源スイッチがオンされているときは、第1画像表示装置202をバックライトにより照明させるべく、CPU201によりLED駆動装置207に対して白色LEDを駆動するための電流(輝度)設定データが供給される。
これにより、LED駆動装置207により白色LEDが駆動されて、第1画像表示装置42が白色に明るく照明される。
またこのとき、たとえば入力装置207を緑色LEDにより照明するように、CPU201によりLED駆動装置207に対して緑色LEDを駆動するための電流(輝度)設定データが供給される。
これにより、LED駆動装置207により緑色LEDが駆動されて、入力装置204が緑色に淡く照明される。
【0101】
また、たとえば電源オンで第1部位と第2部位とが折り畳まれた状態で、着信があると、着信表示部205や第2画像表示装置203を、たとえば赤色LEDにより点灯あるいは点滅させるべく、CPU201によりLED駆動装置207に対して赤色LEDを駆動するための電流(輝度)設定データが供給される。また、点滅動作をさせるモードに設定されている場合には、点滅動作指示命令データがCPU201によりLED駆動装置207に出力され、また、同期信号供給回路206から同期信号SYNCがLED駆動装置207に供給されるように制御される。
これにより、LED駆動装置207により赤色LEDが駆動されて、着信表示部205や第2画像表示装置203が赤色に点灯あるいは点滅表示される。
【0102】
以上の各動作時におけるLED駆動装置207の動作は、最大の順方向電圧Vfを持つLEDのカソードが接続された端子電圧がしきい値電圧(基準電圧)となるように、電源電圧VCCの値を調整して駆動電圧VDCDCとして出力される。
これにより、複数のLEDの輝度を個々に調整しても、また、順方向電圧が異なる複数のLEDを同時に駆動しても、常に駆動条件を満足する最低電圧が出力される。
したがって、発光効率が高く、電力損失も低く抑えられている。
ここでは、LED駆動装置207の詳細な動作については省略する。
【0103】
図17の携帯装置200によれば、照明用LEDを、常に駆動条件を満足する最低電圧を出力することができ、発光効率の向上を図れ、しかも、電力損失の低減を図ることができ、ひいては電池寿命を延ばすことができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】PWM制御によるLEDスロープ機能の実現例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る電流駆動回路を備えた発光素子駆動装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2におけるスロープ機能を実現する電流駆動回路を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係るDACのスロープ期間を含んだ出力電流値の時間変化を示す図である。
【図5】スロープ時間が同一で最終到達値が異なるスロープ出力波形例を示す図である。
【図6】バイナリコード方式で見られるビット切り替わり時のグリッジの一例を示す図である。
【図7】バイナリコードと温度計コードの対応関係を示す図である。
【図8】バイナリコードを温度計コードに変換した場合のDACの構成例を示す図である。
【図9】バイナリコードにおけるビット切り替わりの様子を示す図である。
【図10】グレイコードと温度計コードの対応関係を示す図である。
【図11】グレイコードにおけるビット切り替わりの様子を示す図である。
【図12】本実施形態に係るスロープDACの第1の構成例を示す回路図である。
【図13】本実施形態に係るスロープDACの第2の構成例を示す回路図である。
【図14】本実施形態に係るスロープDACの第3の構成例を示す回路図である。
【図15】本実施形態に係るスロープDACの好適な構成例を示す回路図である。
【図16】本実施形態に係るDC−DCコンバータへのフィードバック制御を採用して複数の発光素子(LED)を駆動するLED駆動回路の構成例を示す回路図である。
【図17】図16のLED駆動装置を適用可能な携帯装置(端末)の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0105】
10・・・発光素子駆動装置、11・・・発振器、12・・・カウンタ、13,13R、13G,13B・・・スロープコントローラ、14、14R,14G、14B・・・レベルシフト回路、15,15A〜15C,15R,15G,15B・・・スイッチング部分を含むスロープ機能付き電流出力デジタル/アナログコンバータ(スロープDACという)、16,16R,16G,16B・・・ドライバ、17・・・基準電流源、20,20−1〜20−7・・・LED、100・・・LED駆動装置、101・・・電流駆動回路、102・・・駆動回路、103・・・シリアルパラレル変換回路(S/P)、104・・・輝度設定回路、105・・・レベルシフト回路、106・・・DC−DCコンバータ、200・・・携帯装置、201・・・CPU、202・・・第1画像表示装置、203・・・第2画像表示装置、204・・・入力装置、205・・・着信表示部、206・・・同期信号供給回路、207・・・LED駆動装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象を駆動する時間に対して徐々に強くまたは徐々に弱くするスロープ機能を有する電流駆動回路であって、
スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記駆動対象に供給するドライバと
を有する電流駆動回路。
【請求項2】
上記電流出力型デジタル/アナログコンバータは、上記基準電流源に接続された基準素子と複数のカレントミラー素子とを有するカンレトミラー構造を有し、上記カレントミラー素子による各ミラー電流が加算されて、上記基準電流出力を得る
請求項1記載の電流駆動回路。
【請求項3】
上記カンレトミラー素子の各々に上記デジタル信号でスイッチ可能なスイッチング素子が接続されている
請求項2記載の電流駆動回路。
【請求項4】
上記基準素子にオン状態にあるスイッチング素子が接続されている
請求項3記載の電流駆動回路。
【請求項5】
上記コントローラが生成するデジタル信号は、グレイコードを含む
請求項1記載の電流駆動回路。
【請求項6】
駆動対象である発光素子を駆動する時間に対して徐々に明るくまたは徐々に暗くするスロープ機能を有する発光素子駆動装置であって、
スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記発光素子に供給するドライバと
を有する発光素子駆動装置。
【請求項7】
上記電流出力型デジタル/アナログコンバータは、上記基準電流源に接続された基準素子と複数のカレントミラー素子とを有するカンレトミラー構造を有し、上記カレントミラー素子による各ミラー電流が加算されて、上記基準電流出力を得る
請求項6記載の発光素子駆動装置。
【請求項8】
上記カンレトミラー素子の各々に上記デジタル信号でスイッチ可能なスイッチング素子が接続されている
請求項7記載の発光素子駆動装置。
【請求項9】
上記基準素子にオン状態にあるスイッチング素子が接続されている
請求項8記載の発光素子駆動装置。
【請求項10】
上記コントローラが生成するデジタル信号は、グレイコードを含む
請求項6記載の発光素子駆動装置。
【請求項11】
上記発光素子に駆動電圧を供給する電源回路を有し、
上記電源回路は、上記ドライバの電流出力端の端子レベルをモニタして、上記発光素子への駆動電圧を設定する
請求項6記載の発光素子駆動装置。
【請求項12】
上記ドライバは、上記電流出力型デジタル/アナログコンバータによる基準電流を定数倍して上記発光素子に供給する
請求項6記載の発光素子駆動装置。
【請求項13】
発光に必要な駆動電圧が異なる複数の発光素子が並列に接続され、当該複数の発光素子のうちの一または複数の発光素子を駆動する発光素子駆動装置であって、
上記複数の発光素子の対応する発光素子に接続され、設定値に基づいた輝度をもって対応する発光素子を駆動する複数の電流駆動回路と、
上記複数の駆動回路の各駆動状態に基づいて、発光駆動されている一または複数の発光素子のうち最大の駆動電圧値を判別し、少なくとも判別した値の駆動電圧を上記複数の発光素子に供給する電源回路と、を有し、
上記各電流駆動回路は、
駆動対象である発光素子を駆動する時間に対して徐々に明るくまたは徐々に暗くするスロープ機能を有し、
スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記発光素子に供給するドライバと、を含む
発光素子駆動装置。
【請求項14】
電源電圧源として電池を有する携帯装置であって、
発光に必要な駆動電圧が異なる複数の発光素子と、
上記発光素子により照明される少なくとも一つの被照明部と、
上記複数の発光素子が並列に接続され、当該複数の発光素子のうちの一または複数の発光素子を駆動する発光素子駆動装置と、
を有し、
上記発光素子駆動装置は、
上記複数の発光素子の対応する発光素子に接続され、設定値に基づいた輝度をもって対応する発光素子を駆動する複数の電流駆動回路と、
上記複数の駆動回路の各駆動状態に基づいて、発光駆動されている一または複数の発光素子のうち最大の駆動電圧値を判別し、少なくとも判別した値の駆動電圧を上記複数の発光素子に供給する電源回路と、を有し、
上記各電流駆動回路は、
駆動対象である発光素子を駆動する時間に対して徐々に明るくまたは徐々に暗くするスロープ機能を有し、
スイッチング部を有し、基準電流源の基準電流に対して所定の比率をもって所定階調分だけ設定された電流値であって、所定のデジタル信号に応じて上記スイッチング部のスイッチング処理により選択された電流値を加算して基準電流出力を得る電流出力型デジタル/アナログコンバータと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力する基準電流値の時間変化に含まれるスロープ時間を設定して、当該スロープ時間に基づいて上記デジタル/アナログコンバータの上記スイッチング部をスイッチングするための上記デジタル信号を生成するコントローラと、
上記デジタル/アナログコンバータの出力基準電流に基づいた電流を上記発光素子に供給するドライバと、を含む
携帯装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−339458(P2006−339458A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163268(P2005−163268)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】