説明

電流駆動型ELディスプレイの電源電圧の動的適応

本発明は、エレクトロルミネッセンスディスプレイのディスプレイ駆動部を制御するディスプレイ駆動部制御回路および方法を提供する。ディスプレイ制御部は、表示素子を駆動する少なくとも1つの実質的定電流発生器(610)を備えており、制御回路は、定電流発生器によって電流が調整される第1の線(1、2、・・・、m)の駆動電圧(Vmax)を検知する駆動電圧センサ(630)と、供給線から定電流発生器へ提供される供給電圧(Vdd)からオフセットされた参照電圧(Vref)を提供する参照電圧発生器(645)と、参照電圧(Vref)と駆動電圧(Vmax)との差を決定して調整信号を生成する手段(650)とを備え、調整信号に応じて供給電圧を調整するように電圧制御部(655)が構成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機発光ダイオード(Organic light emitting diode、OLED)は、著しく有利な形態の電気光学ディスプレイを構成する。OLEDは明るく、色彩に富み、スイッチングが高速で、広い視野角が得られ、多様な基板上で容易かつ安価に製造できる。
【0002】
有機LED(ここでは有機金属系のLEDを含む)は、ポリマーまたは小分子のいずれかを用いて、使用される材料に依存するさまざまな色で製造され得る。ポリマー系の有機LEDの例は、国際公開第90/13148号、国際公開第95/06400号、および国際公開第99/48160号に記載され、小分子系のデバイスの例は、米国特許第4,539,507号明細書に記載され、デンドリマー系の材料の例は、国際公開第99/21935号および国際公開第02/067343号に記載されている。
【0003】
典型的な有機LEDの基本構造100を図1aに示す。ガラスまたはプラスチックの基板102が透明なアノード層104を支持し、アノード層104は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)で構成され、その上に正孔輸送層106、エレクトロルミネッセンス層108、およびカソード110が堆積させられる。エレクトロルミネッセンス層108は、例えばPEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェンのポリスチレンスルホン酸ドープ体)で構成されてよい。カソード層110は、典型的には、カルシウムのような低仕事関数金属で構成され、また、電子のエネルギー準位の整合を向上させるため、アルミニウムの層のような付加的な層をエレクトロルミネッセンス層108に直接隣接して含んでよい。アノードおよびカソードへの接触ワイヤ114および116は、それぞれ電源118への接続を提供する。小分子のデバイスにも同様の基本構造が用いられ得る。
【0004】
図1aに示す例では、光120は、透明なアノード104および基板102を通して発せられる。このようなデバイスは、「ボトムエミッタ」と呼ばれる。カソードを通して発するデバイスも、例えば、カソードが実質的に透明になるようにカソード層110の厚さを約50〜100nmより小さく保つことによって、構成され得る。
【0005】
有機LEDは、画素のマトリクスという形で基板上にデポされて、単色または多色画素型ディスプレイを構成し得る。多色型ディスプレイは、赤、緑、および青の発光画素群を用いて構成されてよい。そのようなディスプレイでは、複数の行ライン(または列ライン)をアクティブにすることによって個々の素子が全体的にアドレス指定されて複数の画素が選択され、複数の行(または列)の画素に書き込みが行われて、表示が作り出される。いわゆるアクティブマトリクスディスプレイは、各画素と関連付けられた、典型的には蓄積キャパシタおよびトランジスタであるメモリ素子を有し、一方、パッシブマトリクスディスプレイはそのようなメモリ素子を持たず、その代わり、安定した画像という印象を与えるために、テレビ映像と幾分同じように、繰り返し走査される。
【0006】
図1bは、パッシブマトリクスOLEDディスプレイ150の断面を示す図であり、同図において、図1aのものと同じ要素は同じ参照番号で示されている。パッシブマトリクスディスプレイ150において、エレクトロルミネッセンス層108は複数の画素152を備え、カソード層110は電気的に互いに絶縁された複数の導線154を備え、導線154は、図1bにおいてページを貫くように通っており、付随する接点156がそれぞれに付いている。同様に、ITOアノード層104も、カソード線と直交して通っている複数のアノード線158を備えており、そのうちの1本のみが図1bに示されている。また、各アノード線にも接点(図1bには図示しない)が設けられている。カソード線およびアノード線の交点のエレクトロルミネッセンス画素152は、該当するアノード線とカソード線との間に電圧を印加することによってアドレス指定されてよい。
【0007】
次に、図2aを参照すると、この図は図1bに示した種類のパッシブマトリクスOLEDディスプレイ150用の駆動構成を概念的に示すものである。複数の定電流発生器200が設けられ、そのそれぞれが供給線202と複数の列ライン204のうちの1本とに接続されているが、明快にするため、そのうちの1本のみを示してある。複数の行ライン206(そのうちの1本のみを示してある)も設けられており、そのそれぞれは、交換接続210によって接地線208へ選択的に接続されてよい。図示のように、線202の供給電圧が正なので、列ライン204はアノード接続158を備え、行ライン206はカソード接続154を備えるが、電源供給線202が接地線208に対して負である場合は、これらの接続は逆にされる。
【0008】
図示のように、ディスプレイの画素212には電力が供給され、それにより点灯する。画像を生成するためには、行の接続210を保ったまま、各列ラインを、行全体がアドレス指定されるまで順にアクティブ化し、そして次の行を選択してこの処理を繰り返す。あるいは、行を選択してすべての列を並行して書き込む、すなわち、行を選択し電流を各列ラインに同時に送り込んで行の各画素をそれぞれの所望の明るさで同時に点灯させてもよい。後者の構成は、さらなる列駆動回路が必要にはなるが、各画素のリフレッシュを高速化できるので好ましい。さらなる代替構成では、列の各画素を順にアドレス指定してから次の列をアドレス指定するようにしてもよいが、これは、特に以下に述べるような列の静電容量の効果の理由から、普通は好ましくない。なお、図2aの構成において、列駆動回路の機能と行駆動回路の機能とを入れ替えてもよいことは理解されるであろう。
【0009】
通常、OLEDに対しては電圧制御型の駆動ではなく電流制御型の駆動を施すが、これは、OLEDを流れる電流によってOLEDが出力する光子の数が決まり、それによってOLEDの明るさが決まるからである。電圧制御型の構成では、ディスプレイの領域にわたって明るさが変化したり、時間、温度、経年とともに明るさが変化したりする可能性があり、そのため、所与の電圧で駆動された時に画素がどれくらいの明るさで光るのかを予測することが困難になる。カラーディスプレイでは、色表現の正確さが影響を受ける恐れもある。
【0010】
図2b〜2dはそれぞれ、画素がアドレス指定された際の、画素にかけられる電流駆動220と、画素端子間の電圧222と、画素からの光出力224とを、時間226に対して示す図である。画素を含む行をアドレス指定し、破線228で示す時刻にその画素の列ラインに電流を流す。列ライン(および画素)は付随する静電容量を有するので、電圧は徐々に最大値230まで上昇する。画素が発光し始めるのは、画素端子間の電圧がOLEDのダイオード電圧降下よりも大きくなる点232に達してからである。同様に、時刻234で駆動電流を切ると、電圧および光出力は、列の静電容量が放電するに連れて徐々に減衰する。行の画素がすべて同時に書き込まれる場合、すなわち列が並行して駆動される場合は、時刻228と時刻234との時間間隔はライン走査周期と一致する。
【0011】
図3は、パッシブマトリクスOLEDディスプレイ用の一般的な駆動回路の概略図300を示す。OLEDディスプレイは、破線302で示されており、対応する行電極接点306をそれぞれが持つ複数のn本の行ライン304と、対応する複数の列電極接点310をもつ複数のm本の列ライン308とを備える。OLEDは、行ラインと列ラインとの各組の間に接続されており、図示の構成では、OLEDのアノードが列ラインに接続されている。Yドライバ314は定電流で列ライン308を駆動し、Xドライバ316は行ライン304を、行ラインを選択的に接地させて駆動する。Yドライバ314およびXドライバ316は、典型的には、両方ともプロセッサ318に制御される。電源320は、回路、特にYドライバ314へ電力を供給する。
【0012】
図4は、図3のディスプレイ302のようなパッシブマトリクスOLEDディスプレイの列ライン1本用の電流駆動部402の主な特徴を模式的に示す図である。パッシブマトリクスディスプレイの複数の列電極を駆動するため、典型的には、このような電流駆動部が図3のYドライバ314のような列駆動集積回路に複数設けられる。
【0013】
図4の電流駆動部402は、この回路の主な特徴を概説するものであり、バイポーラトランジスタ416を内蔵する電流駆動ブロック406を備え、バイポーラトランジスタ416は、供給電圧Vsの電源供給線404へ実質的に直接接続されたエミッタ端子を有する(これは、エミッタ端子が駆動部用の電源供給線または端子に最も直接的な経路で接続されることが必ずしも必要であるということではなく、エミッタと電源供給レールとの間の駆動回路内の経路または接続部分に内在する抵抗は別として、間に入る構成要素がないことが好ましいということである)。列駆動出力408は、通常は行駆動MOSスイッチ(図4には図示しない)を介して、OLED412に電流駆動を提供する。OLED412は、接地接続414も有する。電流駆動ブロック406には電流制御入力410が提供される。電流制御入力410については、説明のためトランジスタ416のベースに接続された状態を示すが、実際には電流ミラー構成が好ましい。電流制御線410の信号は、電圧信号または電流信号のいずれかを含んでよい。電流駆動ブロック406が可変の制御可能電流源を提供する場合は、各電流駆動ブロックは、インターフェースを介してデジタル・アナログコンバータからのアナログ出力により制御されてよい。そのような制御可能電流源により、輝度可変またはグレースケールのディスプレイを提供できる。画素の明るさを変える他の方法としては、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)を用いて画素点灯時間を変えることなどがある。PWM方式では、画素は完全に点灯されるか完全に消灯されるかのいずれかであるが、観察者の肉眼における時間積分によって画素の見かけの明るさが変わる。
【発明の概要】
【0014】
図5を参照すると、制御可能定電流源から駆動されるOLEDについて、電源電圧に対する、電源から引き込まれる電流のグラフ420が示してある。この曲線には、最初「感度のない」領域があり、この領域では、順方向電圧がOLEDを点灯させるのに十分になるまで、実質的にまったく電流が流れない。そして、直線でない領域422の次には、破線426で示された電圧より上で曲線の実質的に平坦な部分424が続き、だいたい「S」の形の曲線となっている。提供するように制御された電流で定電流源が正常に動作することを保証する最低供給電圧が、破線426で示された電圧で定まる。
【0015】
図5から容易に分かるように、電力を上げても電力損失が増すだけという領域424が存在する。従って、破線426で示される電圧またはその近傍で動作させることが好ましい。しかしながら、この境界の電源電圧は、ディスプレイの古さやディスプレイの温度などのいくつかの要因に依存し、可変電流が供給される場合には定電流源から提供されている電流に依存する。それゆえに、変動する環境または駆動状態に対して電源電圧を適応させることのできる技術の必要性が継続的に存在する。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、エレクトロルミネッセンスディスプレイのディスプレイ駆動部を制御するディスプレイ駆動部制御回路が提供され、ここで、ディスプレイは、表示素子を駆動する少なくとも1つの実質的定電流発生器を備えており、制御回路は、定電流発生器によって電流が調整される第1の線の駆動電圧を検知する駆動電圧センサと、供給線から定電流発生器へ提供される供給電圧からオフセットされた参照電圧を提供する参照電圧発生器と、参照電圧と駆動電圧との差を決定して調整信号を生成する手段とを備え、調整信号に応じて供給電圧を調整するように電圧制御部が構成される。
【0017】
好ましくは、ディスプレイは、複数のエレクトロルミネッセンス表示素子と複数の実質的定電流発生器とを有するパッシブマトリクスディスプレイであり、駆動電圧センサは、最大電圧を検知するように構成され、決定手段は、参照電圧と最大電圧との差を決定するように構成された比較器である。
【0018】
さらに好ましくは、駆動電圧センサは、複数のトランジスタを備え、複数のトランジスタのそれぞれは、定電流発生器によって電流が調整される線へのゲート接続を有しており、複数のトランジスタの各ソース端子は、共に供給線に接続され、複数のトランジスタの各ドレイン端子は、共にさらなる線に接続される。
【0019】
好ましくは、トランジスタは、nチャネル電界効果トランジスタであり、また随意に、さらなる線は、グラウンド電位に、または供給電圧より下の電位にある。
【0020】
好ましくは、参照電圧発生器は、いくつかの接合電圧を備え、電圧制御部は、好ましくはDC−DCコンバータを備える。
【0021】
本発明の第1の態様は一般的なパッシブマトリクス駆動方式に適合するが、本回路は、マルチラインアドレッシング用に構成されることが好ましく、エレクトロルミネッセンス素子のルミネッセンスは、素子への連続する駆動信号の実質的線形和によって得られる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、エレクトロルミネッセンスディスプレイを駆動するディスプレイ駆動部の電源電圧を調整する方法が提供され、ここで、ディスプレイは、少なくとも1つのエレクトロルミネッセンス表示素子を備え、駆動部は、表示素子を駆動する少なくとも1つの実質的定電流発生器を含むとともに電流発生器に電源電圧を供給する電源供給線を有しており、方法は、供給電圧からオフセットされた駆動電圧を検知し、参照電圧と駆動電圧との差を決定して調整信号を生成し、調整信号に応じて供給電圧を制御することを含む。
【0023】
好ましくは、ディスプレイは、複数のエレクトロルミネッセンス表示素子と複数の実質的定電流発生器とを有するパッシブマトリクスディスプレイであり、駆動電圧の検知は、最大電圧を検知することを含み、決定は、参照電圧と最大電圧との差を決定することを含む。
【0024】
本発明の第2の態様は一般的なパッシブマトリクス駆動方式に適合するが、本方法は、以下のように、マルチラインアドレッシング用に構成されることが好ましい。すなわち、パッシブマトリクスディスプレイが、行電極と列電極とのアレイを備え、ディスプレイを駆動する方法が、2つ以上の行電極を駆動すると同時に複数の列電極を駆動することを含むように、である。また、さらに好ましくは、エレクトロルミネッセンス素子の所望のルミネッセンスは、画素への連続する駆動信号の実質的線形和によって得られる。
【0025】
好ましくは、制御ステップは、適宜、供給電圧を上昇させること、または供給電圧を低下させることのいずれか一方を含み、供給電圧の上昇は、供給電圧の低下よりも迅速に行われる。
【0026】
OLEDディスプレイの寿命を向上させることのできる技術の必要性もまた、継続的に存在する。パッシブマトリクスディスプレイに適用できる技術については特に必要性があるが、これはパッシブマトリクスディスプレイの製造がアクティブマトリクスディスプレイよりも非常に安く済むからである。OLEDの駆動レベル(ひいては明るさ)を低減させることにより、デバイスの寿命を著しく向上できる。例えば、OLEDの駆動・明るさを半分にすることにより、その寿命をおよそ4倍に延ばすことが可能である。国際公開第2006/035246号、国際公開第2006/035247号、および国際公開第2006/035248号の内容は引用することによりここに組み込まれているものとするが、これらの出願において、本出願人は、特にパッシブマトリクスOLEDディスプレイにおいて、ディスプレイ駆動レベルのピークを下げ、それによりディスプレイの寿命を延ばすために用いられるマルチラインアドレッシング技術に、一つの解決策があることを認めた。大まかに言えば、これらの方法は、OLEDディスプレイの2つ以上の行電極を第1の行駆動信号セットで駆動するのと同時にOLEDディスプレイの複数の列電極を第1の列駆動信号セットで駆動することを含み、次いで、2つ以上の行電極が第2の行駆動信号セットで駆動されるのと同時に列電極が第2の列駆動信号セットで駆動される。好ましくは、行駆動信号および列駆動信号は、電流源または電流シンクのような実質的定電流発生器からの電流駆動信号で構成される。また、こうした電流発生器は、例えばデジタル・アナログコンバータを用いて、制御可能またはプログラム可能となっていることが好ましい。
【0027】
2つ以上の行と同時に列を駆動することの効果は、行駆動信号により定められる比率で、2つ以上の行の間で列駆動を分割するということである。言い換えると、電流駆動の場合は、行駆動信号の相対値または比率により定められる比率で、2つ以上の行の間で列の電流が分割される。大まかに言えば、これにより画素の行またはラインのルミネッセンスプロファイルが複数のライン走査周期にわたって構築されるので、OLED画素のピーク輝度が効果的に低減され、その結果、ディスプレイの画素の寿命が延びる。電流駆動では、画素の所望のルミネッセンスが画素への連続する駆動信号の実質的線形和によって得られる。
【0028】
従って、本発明は、特にパッシブマトリクスOLEDディスプレイの効率を改善することに関係する。また、本発明は、マルチラインアドレッシング技術に適合することも有利である。
【0029】
次に、本発明のこれらおよびさらなる実施の形態について、単に例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1aおよび図1bはそれぞれ、有機発光ダイオードおよびパッシブマトリクスOLEDディスプレイの断面を示す図である。
【図2】図2aないし図2dはそれぞれ、パッシブマトリクスOLEDディスプレイの概念的な駆動部構成と、ディスプレイ画素の、時間に対する電流駆動のグラフと、時間に対する画素電圧のグラフと、時間に対する画素光出力のグラフとを示す図である。
【図3】図3は、従来技術によるパッシブマトリクスOLEDディスプレイの一般的な駆動回路の概略図を示す。
【図4】図4は、パッシブマトリクスOLEDディスプレイの列の電流駆動部を示す図である。
【図5】図5は、OLED表示素子およびその関連電流源の電流−電圧曲線を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態によるパッシブマトリクスOLED駆動回路の概略図の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記したように、図6は、本発明の第1の実施の形態によるパッシブマトリクスOLEDディスプレイ600の概略図の一部を示す図である。ディスプレイ600は、行駆動回路(図6には図示しない)により駆動される行電極と、列駆動部605により駆動される列電極ライン1、2、3、・・・、mとを備える。各列の駆動部は、図4で説明したような実質的定電流発生器610(電流源で示されている)を備える。図6において、各電流発生器610は、供給線615の電源電圧Vddによって電力を供給され、デジタル・アナログコンバータ620からのアナログ出力によって制御される。列駆動部610へ表示データを提供するため、制御入力625がディスプレイ駆動論理部からデジタル・アナログコンバータ620へ提供される。また、ディスプレイ駆動論理部は、行選択制御を行駆動部(図示しない)へ提供してもよい。デジタル・アナログコンバータ620は、列電極ライン1、2、3、・・・、mのそれぞれに設けられてもよいし、例えば時間多重化によって、単一のデジタル・アナログコンバータが列ライン間で共用されてもよい。
【0032】
図6に描いたように、電流源は、輝度可変またはグレースケールのディスプレイを提供するために制御可能な電流源となっているが、他の実施の形態では固定電流源が用いられてもよい。これらの実施の形態では、人間の目における見かけの輝度が可変となるようにパルス幅変調が用いられてもよいし、あるいは、ディスプレイの画素がすべて実質的に同じ相対輝度を有しても、つまりディスプレイがグレースケールのディスプレイでなくてもよい。さらに他の実施の形態では、異なる色の画素をディスプレイに用いて色可変のディスプレイを提供してもよい。
【0033】
各列電極ライン1、2、3、・・・、mは、nチャネル電界効果トランジスタ(FET)630のゲート端子Gに接続され、nチャネルFET630のソース端子Sは、共にプルダウン抵抗器635を介してグラウンド640(または供給電圧の電圧よりも低い他の電圧)へと接続される。nチャネルFET630のドレイン端子Dは、共に供給線615に接続される。
【0034】
参照電圧源645は、内蔵された接合電圧のアレイを備え、一端が供給線615に接続され、他端が比較器650の第1の入力端子に接続される。比較器650は、nチャネル電界効果トランジスタ630の各ソース端子に接続された第2の入力端子を有する。比較器の出力端子は、電圧制御部655に接続される。電圧制御部655は、列駆動部605へ提供される出力供給電圧を変えるように構成される。このような電圧制御部655は、当技術分野で周知のようにDC−DC制御部を備えてよい。
【0035】
動作時は、まず電源電圧Vddが例えば15Vという値をとり、参照電圧源645が3Vの電圧降下を提供して、それにより参照電圧Vrefが比較器650への第1の入力12Vに保持される。各FET630のソース接続は最大列電圧Vmaxとして設けられており、列電極ライン1、2、3、・・・、mのいずれかが最大列電圧よりも上昇すると、対応するFET630のゲート端子Gがソース端子Sよりも引き上げられてFET630がオンになり、FET630がオフになるまで、あるいは対応するFET630の電流がプルダウン抵抗器635を流れ落ちる電流に釣り合うに足るだけ、ソース端子電圧Sが引き上げられる。最大列電圧Vmaxは比較器650によって参照電圧Vrefと比較され、比較器650は、電源電圧Vddの上昇が必要なのか低下が必要なのかを示す1ビットの信号を生成する。電源電圧Vddの上昇が必要な場合は、DC−DC制御部は、電源電圧を迅速に上昇させるように動作可能である。電源電圧Vddの低下が必要な場合は、DC−DC制御部は、電源電圧を徐々に減衰させるように動作可能である。特に、ディスプレイの明るさおよび画像内容の増加のために電源電圧の迅速な上昇が必要とされることがある。
【0036】
無論、当業者には他の多くの効果的な代替例が見いだされるであろう。本発明が、記載された実施の形態に限定されず、本明細書に添付された請求の範囲の精神と範囲内にある、当業者にとって明らかな変更を包含することは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンスディスプレイのディスプレイ駆動部を制御するディスプレイ駆動部制御回路であって、前記ディスプレイは、表示素子を駆動する少なくとも1つの実質的定電流発生器を備えており、前記制御回路は、
前記定電流発生器によって電流が調整される第1の線の駆動電圧を検知する駆動電圧センサと、
供給線から前記定電流発生器へ提供される供給電圧からオフセットされた参照電圧を提供する参照電圧発生器と、
前記参照電圧と前記駆動電圧との差を決定して調整信号を生成する手段と
を備え、前記調整信号に応じて前記供給電圧を調整するように電圧制御部が構成されるディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項2】
前記ディスプレイは、複数のエレクトロルミネッセンス表示素子と複数の実質的定電流発生器とを有するパッシブマトリクスディスプレイであり、前記駆動電圧センサは、最大電圧を検知するように構成され、前記決定手段は、前記参照電圧と前記最大電圧との差を決定するように構成された比較器である請求項1に記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項3】
前記駆動電圧センサは、複数のトランジスタを備え、前記複数のトランジスタのそれぞれは、前記定電流発生器によって電流が調整される線へのゲート接続を有しており、前記複数のトランジスタの各ソース端子は、共に前記供給線に接続され、前記複数のトランジスタの各ドレイン端子は、共にさらなる線に接続される請求項2に記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項4】
前記トランジスタは、nチャネル電界効果トランジスタである請求項3に記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項5】
前記さらなる線は、グラウンド電位に、または前記供給電圧より下の電位にある請求項3または4に記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項6】
前記参照電圧発生器は、いくつかの接合電圧を備える上記請求項のいずれか1項に記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項7】
前記電圧制御部は、DC−DCコンバータを備える上記請求項のいずれかに記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項8】
前記エレクトロルミネッセンス表示素子は、有機発光ダイオードを備える上記請求項のいずれかに記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項9】
前記パッシブマトリクスディスプレイは、行と列とのアレイを備え、前記回路は、マルチラインアドレッシング用に構成される請求項2に記載のディスプレイ駆動部制御回路。
【請求項10】
前記エレクトロルミネッセンス素子のルミネッセンスは、前記素子への連続する駆動信号の実質的線形和によって得られる請求項9に記載のディスプレイ駆動回路。
【請求項11】
エレクトロルミネッセンスディスプレイを駆動するディスプレイ駆動部の電源電圧を調整する方法であって、前記ディスプレイは、少なくとも1つのエレクトロルミネッセンス表示素子を備え、前記駆動部は、前記表示素子を駆動する少なくとも1つの実質的定電流発生器を含むとともに前記電流発生器に前記電源電圧を供給する電源供給線を有しており、前記方法は、
前記供給電圧からオフセットされた駆動電圧を検知し、
参照電圧と前記駆動電圧との差を決定して調整信号を生成し、
前記調整信号に応じて前記供給電圧を制御する
ことを含む方法。
【請求項12】
前記ディスプレイは、複数のエレクトロルミネッセンス表示素子と複数の実質的定電流発生器とを有するパッシブマトリクスディスプレイであり、前記駆動電圧の検知は、最大電圧を検知することを含み、前記決定は、前記参照電圧と前記最大電圧との差を決定することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パッシブマトリクスディスプレイは、行電極と列電極とのアレイを備え、前記ディスプレイを駆動する方法は、2つ以上の行電極を駆動すると同時に複数の列電極を駆動することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エレクトロルミネッセンス素子の所望のルミネッセンスは、前記画素への連続する駆動信号の実質的線形和によって得られる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エレクトロルミネッセンス素子は、有機発光ダイオードを備える請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記制御ステップは、前記供給電圧を上昇させること、または前記供給電圧を低下させることのいずれか一方を含み、前記供給電圧の上昇は、前記供給電圧の低下よりも迅速に行われる請求項11ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
実質的に上に、および/または添付の図面の図6を参照して記載されたディスプレイ駆動部。
【請求項18】
実質的に上に、および/または添付の図面の図6を参照して記載された、ディスプレイ駆動部の電源電圧を調整する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−541012(P2010−541012A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527514(P2010−527514)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003293
【国際公開番号】WO2009/044114
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】