説明

電源アイソレーション装置

【課題】従来に比べて少数部品で構成し、EMIの低減を実現することが可能な電源アイソレーション装置を提供する
【解決手段】制御装置16が出力する第1ISL信号18によって、第1スイッチ群12がON動作し、第2スイッチ群14がOFF動作すると、DC電源からの電力は第1キャパシターC1に蓄積される。次に、制御装置16からの第1ISL信号18が反転し第2ISL信号20が出力されると、第1スイッチ群12がOFF動作し、第2スイッチ群14がON動作すると、第1キャパシターC1に蓄積された電力は、第2スイッチ群14を介して、第2キャパシターC2に供給される。この第2キャパシターC2から出力電力が取り出される。第1スイッチ群12と第2スイッチ群14とは、同時にON動作することはないので、DC電源と出力とは、互いにアイソレートされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源アイソレーション装置に関し、ノイズや電波の影響を低減・除去する目的で電気的に絶縁する必要がある装置、及びその他種々のアイソレーションをする必要がある装置と共に用いられる電源アイソレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサを始めとする種々の電子機器の電源は、従来から、トランス等を用いてアイソレーションを行うことが一般的である。
【0003】
一方、電子機器の開発者には、より一層ノイズや電波障害に強い製品を設計することが求められており、それに伴って、電源のアイソレーションも電子機器の設計における重要なテーマとなっている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、フォトダイオードとフォトトランジスタと抵抗とを組み合わせた半2重シリアル伝送に用いられるアイソレーション回路が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、広域用絶縁トランスと低域用絶縁パルストランスとを組み合わせることによって周波数帯域を広げたアイソレーションアンプが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献3には、発光ダイオードとフォトトランジスタと増幅器とを組み合わせてなるアイソレーション装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−36507号公報
【特許文献2】特開2002−271153号公報
【特許文献3】特開2007−319488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に述べたように、従来から、トランス等を用いてアイソレーションを行うものが広く知られている。
【0009】
例えば、トランス等を使用したDC/DCインバータが知られている。このDC/DCインバータによれば、アイソレーションが実現できるが、しかし一方で、EMIの問題が発生しがちであり、この問題を解決することが望まれている。また、このDC/DCインバータは、部品点数が多くなりやすいという課題もある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比べて少数部品で構成し、EMIの低減を実現することが可能な電源アイソレーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、本件発明に係る電源アイソレーション装置は、以下に示す構成からなる。
【0012】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、第1スイッチ群と、第1キャパシターと、第2スイッチ群と、第2キャパシターと、制御装置と、からなり、電源と出力とをアイソレーションする電源アイソレーション装置において、前記第1スイッチ群は、前記電源のプラス側と前記第1キャパシターのホット側端子とを接続する第1ホット側スイッチと、前記電源のマイナス側と前記第1キャパシターのコールド側端子とを接続する第1コールド側スイッチと、を有し、前記第2スイッチ群は、前記第1キャパシターのホット側端子と前記第2キャパシターのホット側端子とを接続する第2ホット側スイッチと、前記第1キャパシターのコールド側端子と前記第2キャパシターのコールド側端子とを接続する第2コールド側スイッチと、を有し、前記制御装置は、前記第1スイッチ群と前記第2スイッチ群とを交互にON動作させ、前記第2キャパシターのホット側端子とコールド側端子から前記出力が取り出されていることを特徴とする電源アイソレーション装置である。
【0013】
(2)また、本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)に記載の電源アイソレーション装置において、前記第1キャパシター及び第2キャパシターの代わりに、充放電可能なバッテリーを用いたことを特徴とする電源アイソレーション装置である。
【0014】
(3)また、本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)に記載の電源アイソレーション装置において、前記第1スイッチ群及び第2スイッチ群は、FETから構成されることを特徴とする電源アイソレーション装置である。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本件発明によれば、少数の部品によって効果的なアイソレーション機能を備える電源アイソレーション装置を構成することが可能である。
【0016】
さらに、本件発明によれば、EMIの問題を低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本件発明に係る電源アイソレーション装置の実施の形態を、図面に基づき説明する。
【0018】
(1)実施の形態1
回路構成
図1には、電源アイソレーション装置10の構成を示す模式図が示されている。
【0019】
この図1に示されるように、電源アイソレーション装置10は、第1スイッチ群12と第2スイッチ群14とを備える。
【0020】
第1スイッチ群12は、第1ホット側スイッチISL1と第1コールド側スイッチISL2とを備える。第1ホット側スイッチISL1は、DC電源のプラス側と第1キャパシターC1のホット側とを接続している。また、第1コールド側スイッチISL2は、DC電源のマイナス側と第1キャパシターC1のコールド側とを接続している。
【0021】
第2スイッチ群14は、第2ホット側スイッチISL3と第2コールド側スイッチISL4とを備える。第2ホット側スイッチISL3は、第1キャパシターC1のホット側と第2キャパシターC2のホット側とを接続している。また、第2コールド側スイッチISL4は、第1キャパシターC1のコールド側と第2キャパシターC2のコールド側とを接続している。
【0022】
このように、第1スイッチ群12と第2スイッチ群14とが2段縦続接続されるいる。
【0023】
なお、第1ホット側スイッチISL1、第1コールド側スイッチISL2、第2ホット側スイッチISL3、第2コールド側スイッチISL4としては、例えばフォトMOSリレーやFETなどのアイソレーションデバイスが好適に用いられる。
【0024】
第1キャパシターC1及び第2キャパシターC2は、種々のキャパシターを用いることが可能であるが、用途によっては、充放電可能ないわゆるバッテリーを用いることも可能である。もちろん、このようなバッテリーをキャパシターとして用いる場合には、使用する電圧と、そのバッテリーの電圧とを合わせる必要があることに留意されたい。一般に、バッテリーは、その規定電圧が予め決まっているので、その電圧と異なる電圧の充放電は困難だからである。
【0025】
第1キャパシターC1は、第2キャパシターC2の入力電源となり、第1キャパシターC1に充電された電力は、第2スイッチ群14を介して第2キャパシターC2に伝送される。また、第2キャパシターC2に充電された電力は、外部に取り出される。
【0026】
制御装置16は、スイッチング動作のために第1ISL信号18を送信する。第1スイッチ群12は、この制御装置16が送信した第1ISL信号18を受信し、それに基づきスイッチング動作を行う。この第1ISL信号18とは、矩形波である。一方、制御装置16は、上記第1ISL信号18とは逆位相の第2ISL信号20をも出力している。第2スイッチ群14は、この第2ISL信号20を受信し、スイッチング動作を行っている。
【0027】
従って、第1スイッチ群12及び第2スイッチ群14が、同時にON動作することはなく、交互に、互いにON動作を行う。すなわち、電源アイソレーション装置10の出力が、DC電源と直接接続されることはない。この結果、(ACノイズを含む)DC電源からの入力が、電源アイソレーション装置10の出力とアイソレーションされたことになる。
【0028】
回路動作
以下に、図1の電源アイソレーション装置10の動作シーケンスを説明する。
【0029】
第1ホット側スイッチISL1及び第1コールド側スイッチISL2は、ISL信号がONの時に導通状態となる。
【0030】
第1ホット側スイッチISL1及び第1コールド側スイッチISL2が導通状態のとき、第1キャパシターC1は充電される。
【0031】
第1ホット側スイッチISL1及び第1コールド側スイッチISL2が不導通状態のとき、第2ホット側スイッチISL3及び第2コールド側スイッチISL4は導通状態となる。
【0032】
第2ホット側スイッチISL3及び第2コールド側スイッチISL4が導通状態のとき、第1キャパシターC1から電流が流れ、第2キャパシターC2に充電される。
【0033】
このように、第1スイッチ群12及び第2スイッチ群14は、交互に、導通状態と不導通状態とを繰り返すため、電源アイソレーション装置10の入力側と出力側が同時に接続されることはなく、アイソレーションが保たれる。
【0034】
本実施の形態においては、スイッチング動作を制御するために、第1ISL信号18及び第2ISL信号20を出力している。これらは、互いに180度位相が異なる。すなわち、逆位相の矩形信号でありデューティー比50%の矩形波信号である。
【0035】
第1スイッチ群12と、第2スイッチ群14とが同時にON動作することを防止するために、第1ISL信号18と、第2ISL信号20との間にいわゆるデッドタイムを設け、一方のスイッチ群が確実にOFF動作した後に、他方のスイッチ群をON動作するようにすることも望ましい。
【0036】
このようにして、電源アイソレーション装置10は、DC/ACアイソレーションを簡便な回路で構成することができる。また、EMIの発生を低減することを可能とする。
【0037】
(2)実施の形態2
回路構成
図2には、双極双投スイッチ22を用いて構成した図1と同様の機能を有する電源アイソレーション装置10’の回路構成が示されている。
【0038】
この図2に示されるように、電源アイソレーション装置10’は、双極双投スイッチ22と、第1キャパシターC1と、第2キャパシターC2とを備える。
【0039】
双極双投スイッチ22は、ホット側単極双投スイッチ24とコールド側単極双投スイッチ26とを備える。
【0040】
ホット側単極双投スイッチ24は、第1端子28と、第2端子30と、第3端子32とを備える。第1端子28は、DC電源プラス側に接続されている。また、第2端子30は、第1キャパシターC1ホット側端子に接続されている。また、第3端子32は、第2キャパシターC2ホット側端子に接続されている。
【0041】
コールド側単極双投スイッチ26は、第4端子34と、第5端子36と、第6端子38とを備える。第4端子34は、DC電源マイナス側に接続されている。また、第5端子36は、第1キャパシターC1ホット側端子に接続されている。また、第6端子38は、第2キャパシターC2ホット側端子に接続されている。
【0042】
双極双投スイッチ22は、以下に説明する2つの接続状態のうち、いずれかの接続状態を取る。
【0043】
第1の接続状態は、ホット側単極双投スイッチ24が、第1端子28と第2端子30とを接続し、コールド側単極双投スイッチ26が、第4端子34と第5端子36とを接続する状態である。図2には、この第1の接続状態が示されている。
【0044】
第2の接続状態は、ホット側単極双投スイッチ24が、第2端子30と第3端子32とを接続し、コールド側単極双投スイッチ26が、第5端子36と第6端子38とを接続する状態である。
【0045】
なお、双極双投スイッチ22は、所定の制御装置を用いて動作させても良いし、使用者が手動で操作しても良い。
【0046】
回路動作
以下に、図2の電源アイソレーション装置10’の動作シーケンスを説明する。
【0047】
双極双投スイッチ22が、上記第1の接続状態にあるとき、第1キャパシターは充電される。
【0048】
双極双投スイッチ22の接続状態が上記第2の接続状態に切り替わると、第1キャパシターC1から電流が流れ、第2キャパシターC2に充電される。そして、この第2キャパシターC2に充電された電力が、電源アイソレーション装置10’から出力される電力となる。
【0049】
このように、双極双投スイッチ22は、上記第1の接続状態と第2の接続状態とを交互に繰り返すので、電源アイソレーション装置10’の入力側と出力側が同時に接続されることはなく、アイソレーションが保たれる。
【0050】
(3)実施の形態3
回路構成
図3には、トランス方式を採用する電源アイソレーション装置10’’の回路構成が示されている。この図3に示される電源アイソレーション装置10’’によって、簡単に電源をアイソレートすることができる。
【0051】
図3に示されるように、電源アイソレーション装置10’’は、以下に挙げる4つの部品を備える。
【0052】
クロックドライバー40またはTTLゲート(ロジック)
フェライトトランスT1
ダイオードブリッジ42(ショットキーダイオード)
第1キャパシターC1(0.01μF)
また、フェライトトランスT1は、コイルL1及びL2と、高周波フェライトコア44と、からなる。
【0053】
回路動作
クロックドライバー40は、所定の出力波形で表される信号をフェライトトランスT1に供給する。この際、直流成分を除去するため、第1キャパシターC1が設けられている。フェライトトランスT1によって、アイソレートが行われた後、フェライトトランスT1の二次側にはブリッジダイオード42を介して、二次側の第1キャパシターC1に蓄電される。そして、第1キャパシターC1に蓄電された電力は、アイソレーテッド電源出力として外部に出力される。
【0054】
本実施の形態3に係る電源アイソレーション装置10’’は、DC/DCコンバータとしての機能を備え、従来から知られたDC/DCインバータよりも更なるローコスト化が可能である。
【0055】
電源アイソレーション装置10’’の出力電圧は、フェライトトランスT1の1次/2次の巻き数比で決定される。
【0056】
また、システムクロック等を利用すると、通常では数MHz以上なので、直径数ミリのトロイダルコアが使用できる。
【0057】
(4)応用例
本実施の形態の電源アイソレーション装置10は、以下に挙げるシステムに応用することも好ましい。
【0058】
1.医療関連機器の電撃防止策やノイズ防止が要求されるシステム。
【0059】
2.EMIの解決が強く要求され、DC/DCインバータの使用が困難なシステム。
【0060】
3.電子機器の電源をDC/AC共に他から分離したいシステム。
【0061】
4.シングルエンデッド入力回路を擬似的にバランス入力として動作させるシステム。
【0062】
5.入力電圧とアイソレーテッド電源を相互に接続して各種電圧を得る。(後述する回路例1〜3を参照)
6.その他システムの要求により、共通グランドに不都合がある場合。
【0063】
(5)他の電圧を得る回路例
以下、回路例1〜3には、電源アイソレーション装置10を利用して各種電圧を得る例が示されている。
【0064】
回路例1
図4には、電源アイソレーション装置10にDC5Vの電源が接続されている回路構成が示されている。
【0065】
この図4において特徴的なことは、電源アイソレーション装置10のマイナス側出力が電源アイソレーション装置10のプラス側入力に接続されていることである。
【0066】
この結果、図4に示されるように、DC+5V、及びDC+10Vの2種類の異なる電圧の出力が得られる。
【0067】
回路例2
には、電源アイソレーション装置10のプラス側出力がグランド端子に接続された例が示されている。
【0068】
この結果、図5に示されるように、DC−5Vの出力が得られる。
【0069】
回路例3
図6には、電源アイソレーション装置10のマイナス側出力が電源アイソレーション装置10のプラス側入力に接続された例が示されている。
【0070】
この結果、図に示されるように、DC−5V、及びDC+5Vの2種類の異なる電圧の出力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】電源アイソレーション装置10の回路構成を示す図である。
【図2】双極双投スイッチ22を利用した電源アイソレーション装置10’の回路構成を示す図である。
【図3】トランス方式を採用する電源アイソレーション装置の回路構成を示す図である。
【図4】マイナス側出力とプラス側入力とを接続した電源アイソレーション装置10の回路構成を示す図である。
【図5】プラス側出力とグランド端子とを接続した電源アイソレーション装置10の回路構成を示す図である。
【図6】マイナス側出力とプラス側入力とを接続した電源アイソレーション装置10の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10、10’、10’’ 電源アイソレーション装置
12 第1スイッチ群
14 第2スイッチ群
16 制御装置
18 第1ISL信号
20 第2ISL信号
22 双極双投スイッチ
24 ホット側単極双投スイッチ
26 コールド側単極双投スイッチ
28 第1端子
30 第2端子
32 第3端子
34 第4端子
36 第5端子
38 第6端子
40 クロックドライバー
42 ダイオードブリッジ
44 高周波フェライトコア
C1 第1キャパシター
C2 第2キャパシター
ISL1 第1ホット側スイッチ
ISL2 第1コールド側スイッチ
ISL3 第2ホット側スイッチ
ISL4 第2コールド側スイッチ
L1、L2 コイル
T1 フェライトトランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチ群と、第1キャパシターと、第2スイッチ群と、第2キャパシターと、制御装置と、からなり、電源と出力とをアイソレーションする電源アイソレーション装置において、
前記第1スイッチ群は、
前記電源のプラス側と前記第1キャパシターのホット側端子とを接続する第1ホット側スイッチと、
前記電源のマイナス側と前記第1キャパシターのコールド側端子とを接続する第1コールド側スイッチと、
を有し、
前記第2スイッチ群は、
前記第1キャパシターのホット側端子と前記第2キャパシターのホット側端子とを接続する第2ホット側スイッチと、
前記第1キャパシターのコールド側端子と前記第2キャパシターのコールド側端子とを接続する第2コールド側スイッチと、
を有し、
前記制御装置は、前記第1スイッチ群と前記第2スイッチ群とを交互にON動作させ、前記第2キャパシターのホット側端子とコールド側端子から前記出力が取り出されていることを特徴とする電源アイソレーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源アイソレーション装置において、
前記第1キャパシター及び第2キャパシターの代わりに、充放電可能なバッテリーを用いたことを特徴とする電源アイソレーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源アイソレーション装置において、
前記第1スイッチ群及び第2スイッチ群は、FETから構成されることを特徴とする電源アイソレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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