説明

電源システムの異常判断装置

【課題】電源システムの異常の有無を適切に判断し、電源システムの信頼性の低下の抑制を図ることのできる電源システムの異常判断装置を提供する。
【解決手段】第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータと、第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータとの差の絶対値が閾値を上回ると判断された場合、電源システムに異常が生じている旨判断する。ここで、異常判断用パラメータとして、入力側電圧センサ22の検出値、入力側電流センサ24の検出値、出力側電圧センサ26の検出値及びスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対する操作量(Duty)を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子の開閉操作信号を生成する制御回路を有して且つ、前記生成される操作信号に基づく前記スイッチング素子の開閉操作によって入力電圧を所定に変換して出力する電力変換装置を備える電源システムに適用される電源システムの異常判断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1,2に見られるように、スイッチング素子のオンオフ操作によって入力側の直流電圧を所定の直流電圧に変換して出力するDCDCコンバータを備える電源システムが知られている。
【0003】
また、電源システムとしては、下記特許文献3に見られるように、複数のDCDCコンバータの並列接続体を備えるものも知られている。こうした構成は、電源システムの信頼性の向上を図ることなどを目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−94690号公報
【特許文献2】特開2006−101680号公報
【特許文献3】特開2007−318949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記DCDCコンバータに異常が生じる等、電源システムに異常が生じることがある。この場合、電源システムの給電先に電力を適切に供給することができなくなる等の不都合が生じる懸念がある。例えば、複数のDCDCコンバータのうち1つの出力が低くなった場合、補完するDCDCコンバータの出力電流容量が小さいと、出力電圧低下となる。また、複数のDCDCコンバータのうち1つの出力が高くなった場合は、供給先の定格電圧を超えて、故障に至る可能性がある。
【0006】
このため、電源システムに異常が生じた後の対応を適切にとるためには、電源システムに自身の異常の有無を適切に判断することのできる技術を採用することが望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電源システムの異常の有無を適切に判断することのできる新たな電源システムの異常判断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、スイッチング素子の開閉操作信号を生成する制御回路を有して且つ、前記生成される操作信号に基づく前記スイッチング素子の開閉操作によって入力電圧を所定に変換して出力する電力変換装置を備える電源システムに適用され、前記電源システムには、該電源システムの電流流通経路の電気的な状態量を検出する検出手段が備えられ、前記制御回路は、前記検出手段の検出値を入力として前記操作信号を生成して且つ、1つの前記電力変換装置に複数備えられ、複数の前記制御回路のそれぞれに入力された前記検出手段の検出値同士の比較、及び複数の前記制御回路のそれぞれによって生成された前記操作信号同士の比較のうち少なくとも1つに基づき、前記電源システムの異常の有無を判断する異常判断手段を備えることを特徴とする。
【0010】
検出手段や、検出手段及び制御回路の間を接続する信号経路、更には制御回路等に異常が生じると、制御回路において用いられる検出手段の検出値が真値から大きくずれ得る。また、上記異常が生じると、制御回路において生成されるスイッチング素子の操作信号が適切な信号ではなくなり得る。すなわち、複数の制御回路を有する電力変換装置が備えられる電源システムにおいて、上述した異常が生じる場合、これら制御回路のそれぞれに入力された検出手段の検出値同士が大きく相違したり、これら制御回路のそれぞれによって生成された操作信号同士が大きく相違したりすることが考えられる。
【0011】
この点に鑑み、上記発明では、1つの電力変換装置に複数の制御回路を備え、これら制御回路のそれぞれに入力された検出手段の検出値同士の比較、及び複数の制御回路のそれぞれによって生成された操作信号同士の比較のうち少なくとも1つに基づき、電源システムの異常の有無を判断する。こうした上記発明によれば、電源システムの異常の有無を適切に判断することができ、ひいては電源システムの信頼性の低下を抑制することができる。
【0012】
なお、上記発明において、上記検出手段の検出値同士の比較に基づく異常判断手法としては、例えば、上記検出手段の検出値同士の差の絶対値が第1の規定値を上回ることに基づき、上記電源システムに異常が生じている旨判断する手法を採用することができる。また、上記生成された操作信号同士の比較に基づく異常判断手法としては、例えば、上記生成された操作信号同士の差の絶対値が第2の規定値を上回ることに基づき、上記電源システムに異常が生じている旨判断する手法を採用することができる。
【0013】
さらに、上記発明において、電源システムに備えられる電力変換装置は1つであってもよいし、複数であってもよい。ここで、電源システムに備えられる電力変換装置が複数の場合、複数の電力変換装置のそれぞれに複数の制御回路が備えられることとなる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記異常判断手段によって前記電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記電力変換装置の動作を停止させる異常時停止手段を更に備えることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、異常時停止手段を備えることで、電源システムに異常が生じた旨判断された場合に電力変換装置の動作を停止させる。このため、異常が生じた状態で電力変換装置の動作が継続される事態を回避でき、ひいては電源システムの信頼性の低下を好適に抑制することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数の前記制御回路のうち少なくとも一対の前記制御回路のそれぞれは、互いに同期したタイミングで前記操作信号を前記スイッチング素子に対して出力し、前記異常判断手段によって前記電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記少なくとも一対の制御回路のそれぞれによって生成された前記操作信号のうち前記スイッチング素子が閉状態とされる時間が最短となる操作信号によって前記スイッチング素子を開閉操作する異常時操作手段を更に備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、異常時操作手段を備えることで、電源システムに異常が生じた旨判断された場合に、上記スイッチング素子が閉状態(オン状態)とされる時間が最短となる操作信号によってスイッチング素子を開閉操作する。このため、電力変換装置の出力電圧が想定した電圧に対して過度に高くなる事態等の発生を好適に抑制することができ、ひいては電源システムの信頼性の低下を好適に抑制することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数の前記制御回路のうち少なくとも一部であって且つ3つ以上の前記制御回路のそれぞれは、互いに同期したタイミングで前記スイッチング素子に対して出力するための前記操作信号を生成し、前記異常判断手段によって前記電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記3つ以上の制御回路のそれぞれによって生成された前記操作信号のうち互いに同一となる操作信号の数が最も多い操作信号によって前記スイッチング素子を開閉操作する異常時多数決操作手段を更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、異常時多数決操作手段を備えることで、電源システムに異常が生じた旨判断された場合に、上記互いに同一になる操作信号の数が最も多い操作信号によってスイッチング素子を開閉操作する。すなわち、正常である蓋然性の高い操作信号によってスイッチング素子を開閉操作する。こうした上記発明によれば、電源システムの信頼性の低下を好適に抑制することができる。
【0020】
なお、上記発明において、上記複数の制御回路のうち少なくとも一部であって且つ3つ以上の制御回路には、操作信号を生成した後、スイッチング素子に対して操作信号を出力可能な回路構成の制御回路に限らず、スイッチング素子に対して操作信号を出力しない回路構成の制御回路も含まれ得る。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、複数の前記制御回路のうち少なくとも一対の前記制御回路のそれぞれは、前記スイッチング素子に対する前記操作信号の出力タイミングが互いに相違することを特徴とする。
【0022】
上記発明では、少なくとも一対の制御回路のそれぞれによって生成される操作信号の出力タイミングを互いに相違させることで、スイッチング素子の操作信号の更新周期を短くすることができる。このため、電力変換装置の出力電圧の調節精度を向上させ、また、電力変換装置を構成する部品の小型化を図ることができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記電源システムは、車両に搭載され、前記車両には、高圧側車載負荷と、該高圧側車載負荷及び前記電力変換装置の電力供給源となる高圧バッテリとが備えられることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、高圧側車載負荷(例えば主機回転機や、空調装置の備える電動式の圧縮機)及び電力変換装置の双方の電力供給源が高圧バッテリとなっている。ここで、高圧側車載負荷の要求電力が変動すると、高圧バッテリの電圧が変動し、電力変換装置の出力電圧が変動することが懸念される。特に、高圧側車載負荷の要求電力の急変時においては、高圧バッテリの電圧の変動が顕著となることで、電力変換装置の出力電圧の変動が大きくなることが懸念される。このため、上記出力電圧の変動が顕著となり得る上記発明は、スイッチング素子の操作信号の更新周期を短くできる請求項5記載の発明の発明特定事項を備えるメリットが大きい。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、複数の前記制御回路のうち一部の回路構成は、残余の回路構成と相違することを特徴とする。
【0026】
制御回路の回路構成が相違すると、制御回路の故障箇所が相違すること等に起因して、これら制御回路が同時に故障する頻度が小さくなると考えられる。この点に鑑み、上記発明では、複数の制御回路のうち一部の回路構成と残余の回路構成とを相違させる。このため、電源システムの信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
なお、制御回路の回路構成が相違するとは、例えば、演算処理速度等のスペックや、構成部品が相違することをいう。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段は、前記電力変換装置に備えられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図2】同実施形態にかかるDCDCコンバータの制御処理に関する機能ブロック図。
【図3】同実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態にかかるDCDCコンバータの出力特性を示す図。
【図5】同実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図7】同実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図8】第3の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図9】同実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図10】第4の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図11】同実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図12】第5の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【図13】同実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示すタイムチャート。
【図14】第6の実施形態にかかる電源システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる異常判断装置をハイブリッド車両に搭載された電源システムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
【0032】
図示される高圧バッテリ10は、車載主機としての図示しない回転機(モータジェネレータ)、及び図示しない空調装置の備える電動式圧縮機等の電力供給源であり、例えば数百V以上の所定の高電圧を有する蓄電池である。ちなみに、高圧バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を採用することができる。
【0033】
高圧バッテリ10は、DCDCコンバータ12に接続可能とされている。DCDCコンバータ12は、一対のスイッチング素子Sp1,Sn1の直列接続体と一対のスイッチング素子Sp2,Sn2の直列接続体との並列接続体(フルブリッジ回路)、トランス14及び複数の制御回路(第1の制御回路16及び第2の制御回路18)を備えて構成される電力変換装置である。詳しくは、DCDCコンバータ12は、これら部品が回路基板(例えば単一の回路基板)上に実装されて且つ上記回路基板が筐体(ケース)に収容されてなり、高圧バッテリ10の電圧を降圧して出力する絶縁型コンバータである。ここで、本実施形態において、単一のDCDCコンバータ12に複数の制御回路が備えられているのは、電源システムの信頼性の向上を図るためである。また、本実施形態では、上記スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2として、NチャネルMOSトランジスタを想定している。
【0034】
高電位側のスイッチング素子Sp1,Sp2の入力端子(ドレイン)は、高圧バッテリ10の正極側に接続され、低電位側のスイッチング素子Sn1,Sn2の出力端子(ソース)は、高圧バッテリ10の負極側に接続されている。なお、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2の入出力端子間のそれぞれには、図示しないフリーホイールダイオードが接続されている。
【0035】
一対のスイッチング素子Sp1,Sn1の接続点、及び一対のスイッチング素子Sp2,Sn2の接続点のそれぞれには、トランス14の1次側コイル14aの両端のそれぞれが接続されている。
【0036】
トランス14の2次側コイル14bの両端のそれぞれは、ダイオードRD1,RD2のアノード側に接続され、これらダイオードRD1,RD2のカソード側は短絡されている。そして、ダイオードRD1,RD2は、リアクトル20a及びコンデンサ20bからなる平滑回路20(LCフィルタ)に接続されている。
【0037】
上記高圧バッテリ10やDCDCコンバータ12の1次側は、車載高圧システムを構成し、DCDCコンバータ12の上記ケースに接続されたグランドラインGLから絶縁されている。これに対し、DCDCコンバータ12の2次側は、グランドラインGLを基準電位として動作する車載低圧システムを構成する。
【0038】
このため、本実施形態では、トランス14の2次側コイル14bの中点タップmtがグランドラインGLに接続されている。こうした構成によれば、ダイオードRD1,RD2は、高電位側のスイッチング素子Sp1及び低電位側のスイッチング素子Sn2がオン状態とされるか、高電位側のスイッチング素子Sp2及び低電位側のスイッチング素子Sn1がオン状態とされるかに応じて、2次側コイル14bの両端の電圧の「1/2」の電圧を交互に出力することとなる。なお、中点タップmtとは、トランス14の2次側コイル14bの中央(両端子から等距離にある点である中点)に接続された端子のことである。
【0039】
DCDCコンバータ12の1次側には、上記フルブリッジ回路の入力電圧VHを検出する入力側電圧センサ22、及びトランス14の1次側コイル14aを流れる入力電流IHを検出する入力側電流センサ24が備えられている。また、DCDCコンバータ12の2次側には、DCDCコンバータ12の出力電圧(平滑回路20からの出力電圧)を検出する出力側電圧センサ26が備えられている。
【0040】
DCDCコンバータ12の一対の出力側は、低圧バッテリ28、車両ECU30、及び車載負荷32(車両ECU30を除く)の並列接続体に接続されている。低圧バッテリ28は、低圧システムの一部を構成し、高圧バッテリ10の電圧よりも低い所定の低電圧(例えば12V)を出力する蓄電池(例えば鉛蓄電池)である。なお、上記車載負荷32は、例えば、空調装置(より詳しくは、空調装置の送風用のファンや暖房用のヒータ等)や、ヘッドライト、更には車載主機としてのエンジン駆動用のアクチュエータ(燃料噴射弁等)を含むものである。
【0041】
車両ECU30は、第1の制御回路16及び第2の制御回路18よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求を最上流とした場合の上流側)の制御回路を備える制御装置であり、低圧バッテリ28を電力供給源としつつ、車両の制御を統括する機能を有する。なお、車両ECU30や、第1の制御回路16、第2の制御回路18の基準電位は、グランドラインGLの電位である。また、車両ECU30には、DCDCコンバータ12の出力電圧を検出する電圧センサ30aが内蔵されている。
【0042】
車両ECU30は、車両の走行がユーザによって許可されたと判断されることで低圧バッテリ28から電力が供給されて且つ、DCDCコンバータ12及び車載負荷32に対して共通の動作信号を出力する。ここで、本実施形態では、車両の走行がユーザによって許可されたか否かを、ユーザによってイグニッションスイッチ34がオンされたか否かで判断する。
【0043】
第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれは、低圧バッテリ28を電力供給源としつつ、同バッテリや、車両ECU30、車載負荷32に電力を供給すべく、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2を操作する機能を有する。詳しくは、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれは、例えば同一のマイコンであり、これら制御回路16,18は、アナログ信号としての入力側電圧センサ22や、入力側電流センサ24、更には出力側電圧センサ26の検出値を所定周期でデジタル信号に変換するAD変換部16a,18a、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2の操作に関する種々の演算処理を行う演算処理部16b,18b、タイマ回路16c,18c、演算処理部16b,18bの演算結果を外部に出力する出力ポート16d,18d、及び第1,第2の制御回路16,18間で情報をやり取りするためのインターフェース16e,18eを備えて構成されている。
【0044】
なお、高圧システムと、低圧システムとは、図示しない絶縁素子(例えば、光絶縁素子としてのフォトカプラや、磁気絶縁素子としてのパルストランス)によって絶縁されており、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2の操作信号は、スイッチング回路36内の上記絶縁素子を介してこれらスイッチング素子に伝達される。また、入力側電圧センサ22や、入力側電流センサ24の検出値は、上記絶縁素子を介してAD変換部16a,18aに入力される。
【0045】
次に、図2を用いて、演算処理部16b,18bによって実行されるDCDCコンバータ12の制御処理について説明する。詳しくは、図2は、本実施形態にかかるDCDCコンバータ12の制御処理の機能ブロック図である。
【0046】
電圧偏差算出部B1は、出力側電圧センサ26によって検出されるDCDCコンバータ12の出力電圧VLと目標電圧VREFとの偏差ΔVLを算出する。詳しくは、目標電圧VREFから上記出力電圧VLを減算した値として上記偏差ΔVLを算出する。ちなみに、上記処理において、出力側電圧センサ26の検出値に代えて、低圧バッテリ28や車載負荷32の両端の電圧を検出するセンサを備え、このセンサの検出値を用いてもよい。
【0047】
電圧フィードバック制御部B2は、上記偏差ΔVLに基づく比例積分制御(PI制御)によってDCDCコンバータ12の出力電圧VLを目標電圧VREFにフィードバック制御するための操作量(Duty)を算出する。ここで、Dutyは、規定時間Tαに対するスイッチング素子のオン時間Tonの比率「Ton/Tα」である。すなわち、Dutyが大きいほど、スイッチング素子のオン時間Tonが長くなる。
【0048】
入力電圧操作量算出部B3は、入力側電圧センサ22によって検出される入力電圧VHに基づき、DCDCコンバータ12の出力電圧を目標電圧VREFとするための操作量を算出する。詳しくは、入力電圧VHが高いほど上記操作量を小さく算出する。
【0049】
電圧変化算出部B4は、上記入力電圧VHの変化量(入力電圧変化量ΔVH)を算出する。詳しくは、今回の処理周期においてAD変換された入力側電圧センサ22の検出値から前回の処理周期においてAD変換された入力側電圧センサ22の検出値を減算した値として入力電圧変化量ΔVHを算出すればよい。
【0050】
補正量算出部B5は、入力電圧変化量ΔVHに基づき、入力電圧操作量算出部B3から出力される操作量の補正量ΔDutyを算出する。詳しくは、入力電圧変化量ΔVHが0よりも大きいほど入力電圧操作量算出部B3から出力される操作量を小さくするような補正量ΔDutyを算出し、入力電圧変化量ΔVHが0よりも小さいほど入力電圧操作量算出部B3から出力される操作量を大きくするような補正量ΔDutyを算出する。この処理は、演算処理部16b,18bの演算タイミング間において入力電圧VHが変化することに起因する操作量の算出精度の低下を抑制するための処理である。
【0051】
加算部B6は、入力電圧操作量算出部B3から出力される操作量と、上記補正量ΔDutyとの加算値として操作量の上限値(ガード値)を算出する。
【0052】
出力電流算出部B7は、入力側電流センサ24によって検出される入力電流IHに基づき、DCDCコンバータ12の出力電流ILを算出する。
【0053】
電流偏差算出部B8は、上記出力電流ILと電流制限値IREFとの偏差ΔILを算出する。詳しくは、電流制限値IREFから上記出力電流ILを減算した値として上記偏差ΔILを算出する。なお、電流制限値IREFは、DCDCコンバータ12(より詳しくは、DCDCコンバータ12内の電流流通経路の素子等)の信頼性を維持可能な電流の上限値に設定すればよい。
【0054】
電流フィードバック制御部B9は、上記偏差ΔILに基づくPI制御によってDCDCコンバータ12の出力電流ILを電流制限値IREFにフィードバック制御するための操作量を算出する。
【0055】
DUTY選択部B10は、電圧フィードバック制御部B2及び電流フィードバック制御部B9から出力される操作量(Duty)のうち最小値を選択して出力ポート16d,18dから出力させる処理を行う。なお、上記最小値が上記ガード値よりも大きい場合、出力ポート16d,18dからガード値を出力させる処理を行う。
【0056】
こうした構成によれば、DCDCコンバータ12の出力電流ILが電流制限値IREFを超えるまでは、電圧フィードバック制御によって出力電圧VLが高いほどDutyが小さくされる(スイッチング素子のオン時間Tonが短くされる)こととなる。一方、DCDCコンバータ12の出力電流ILが電流制限値IREFを超える場合には、電流フィードバック制御によってDCDCコンバータ12の出力電流ILが電流制限値IREFで制限されるため、上記出力電圧VLが低下される。すなわち、DCDCコンバータ12は、定電流垂下特性を有する。
【0057】
続いて、先の図1を用いて、第1の制御回路16の出力ポート16d及び第2の制御回路18の出力ポート16dと上記スイッチング回路36とを接続する論理回路について説明する。
【0058】
第1の制御回路16の演算処理部16bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート16dを介してAND回路38p1,38n1,38p2,38n2のそれぞれに入力される。
【0059】
また、第2の制御回路18の演算処理部18bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート18dを介して上記AND回路38p1,38n1,38p2,38n2のそれぞれに入力される。
【0060】
上記AND回路38p1,38n1,38p2,38n2の出力信号のそれぞれは、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれの開閉制御端子(ゲート)に伝達される。
【0061】
次に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。本実施形態では、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに入力された入力電圧VH同士等の比較に基づき、電源システムの異常の有無を判断する。
【0062】
図3に本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理を含むDCDCコンバータ12の制御処理の手順を示す。この処理は、車両ECU30から動作信号がタイマ回路16c,18cに入力されることをトリガとして、タイマ回路16c,18cのカウント値に基づき、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれによって同一処理周期で繰り返し実行される。
【0063】
なお、本実施形態では、DCDCコンバータ12の一連の制御処理(後述するAD変換処理、演算処理、通信処理及び異常判断処理)のそれぞれの開始タイミングが第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれで同期されている。また、本実施形態では、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれによって実行される上記一連の制御処理内容が同一である。このため、図3では、第1の制御回路16を主体として説明する。
【0064】
この一連の処理では、まず、ステップS10において、AD変換部16aにてアナログ信号としての上記入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLをデジタル信号に変換するAD変換処理を行う。なお、以降、デジタル信号に変換された入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLをAD変換値と称すこととする。
【0065】
続くステップS12では、AD変換値に基づき先の図2に示した手法でスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応するDuty(オン時間Ton)を算出する演算処理を行う。
【0066】
続くステップS14では、スイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれのDutyに応じた操作信号を出力ポート16dから出力させるための出力設定処理を行う。この処理は、タイマ回路16cの有する機能であるPWM機能(所定周期及び所定のDutyのパルスを出力する機能)を用いて、今回の処理周期において生成された操作信号を、次回の処理周期において出力させるための処理である。
【0067】
続くステップS16では、今回の処理周期に対応する異常判断用パラメータPをインターフェース16eを介して第2の制御回路18に送信して且つ、今回の処理周期に対応する異常判断用パラメータPを第2の制御回路18からインターフェース16eを介して受信する通信処理を行う。ここで、本実施形態では、異常判断用パラメータPとして、スイッチング素子のオン時間Tonと、入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLのAD変換値とを用いる。
【0068】
続くステップS18,S20では、電源システムの異常判断処理を行う。詳しくは、ステップS18では、第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータP及び第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータP同士の差の絶対値が閾値γよりも大きいか否かを判断する。
【0069】
具体的には、出力電圧VL同士の差に基づく異常判断処理を例にして説明すると、第1の制御回路16でAD変換された出力電圧VLと第2の制御回路18でAD変換された出力電圧VLとの差の絶対値が閾値γよりも大きいと判断された場合、出力側電圧センサ26の異常や、出力側電圧センサ26及びAD変換部16aを接続する信号経路の異常(例えば断線)、AD変換部16aの異常、更にはAD変換部16a及び演算処理部16bを接続する信号経路の異常(例えば断線)等を含む電源システムの異常が生じている旨判断する。
【0070】
また、オン時間Ton同士の差に基づく異常判断処理を例にして説明すると、第1の制御回路16で算出されたオン時間Tonと第2の制御回路18で算出されたオン時間Tonとの差の絶対値が閾値γよりも大きいと判断された場合、出力電圧VL同士の差に基づく上述した電源システムの異常に加えて、演算処理部16bの異常等を含む電源システムの異常が生じている旨判断する。
【0071】
なお、電源システムの異常としては、上述したものの他に、電源システムに一時的に生じる異常もある。この一時的な異常としては、例えば、外部からのノイズ(電磁波等)に起因して、制御回路の備えるメモリ(RAM)のデータが変化する(化ける)異常がある。
【0072】
また、上記閾値γは、第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータP及び第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータP同士が実質的に同一であるか否かを判断可能な観点から設定される。以下、閾値γの設定について説明する。
【0073】
上記AD変換値に対応する閾値γは、例えば、想定されるサンプリング誤差の最大値よりもやや大きい値として設定すればよい。ここで、サンプリング誤差とは、AD変換処理(AD変換の変換桁数等)に起因した入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLの真値からのずれのことである(図4参照)。
【0074】
また、オン時間Tonに対応する閾値γについて説明すると、オン時間Tonがサンプリング誤差を含んだAD変換値に基づき算出され得ることから、オン時間Tonに対応する上記閾値γは、サンプリング誤差によるAD変換値の変動幅に対応したオン時間Tonの変動幅に基づき設定すればよい。
【0075】
詳しくは、基本的には、図4(a)に実線にて示すように、入力電圧VHや出力電圧VLが高くなるほどオン時間Tonが短くされる傾向にあることに鑑み、入力電圧VHや出力電圧VLのサンプリング誤差によるAD変換値の変動幅に対応したオン時間Tonの変動幅に基づき、閾値γを設定すればよい。ただし、出力電流ILが電流制限値IREFに達する場合には、図4(b)に実線にて示すように、出力電流ILが電流制限値IREFで制限される。そして、この場合には、オン時間Tonが先の図2に示した電流フィードバック制御部B9によって定まるため、入力電流IHのサンプリング誤差によるAD変換値の変動幅に対応したオン時間Tonの変動幅に基づき、閾値γを設定すればよい。なお、上記閾値γは、異常判断用パラメータPのそれぞれについて各別に設定してもよいし、これらの入力電流IH及び出力電圧VL等のそれぞれに応じた閾値γのうち最も大きい値に設定してもよい。
【0076】
図3の説明に戻り、ステップS18において肯定判断された場合には、電源システムに異常が生じている旨判断し、ステップS20に進む。ステップS20では、出力設定処理によって設定された出力ポート16dからの操作信号の出力を停止させる処理を行う。
【0077】
ちなみに、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、その旨を車両ECU30に通知する処理を行うことが望ましい。そして、異常が生じている旨の通知を受けた車両ECU30において、例えば、電源システムに異常が生じている旨をユーザに報知する報知処理を行ったり、低圧バッテリ28の電力の使用を制限する処理を行ったりすればよい。
【0078】
なお、上記ステップS18において否定判断された場合や、ステップS20の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0079】
図5に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図5(a)に、車両ECU30からの動作信号の出力状態の推移を示し、図5(b−1)〜図5(b−3)に第1の制御回路16の動作状態の推移を示し、図5(c−1)〜図5(c−3)に第2の制御回路18の動作状態の推移を示し、図5(d)に、スイッチング回路36からスイッチング素子に対して出力される操作信号の推移を示す。より詳しくは、図5(b−1)に、タイマ回路16cのカウンタ値の推移を示し、図5(b−2)に、第1の制御回路16の処理内容の推移を示し、図5(b−3)に、第1の制御回路16(出力ポート16d)からの操作信号の出力状態の推移を示す。また、図5(c−1)〜図5(c−3)は、同図(b−1)〜同図(b−3)に対応している。なお、図5では、DCDCコンバータ12に4つ備えられるスイッチング素子のうち1つに対応する操作信号の推移を示している。
【0080】
図示される例では、車両ECU30から動作信号が出力される時刻t1において、第1の制御回路16のタイマ回路16c及び第2の制御回路18のタイマ回路18cのそれぞれによるカウントアップが開始される。そして、これらタイマ回路16c,18cのそれぞれがリセットされるタイミングは同期しており、タイマ回路16c,18cがリセットされる時間間隔を1処理周期(時刻t1〜t2、t2〜t3、t3〜t4、t4〜t5等)として、第1の制御回路16及び第2の制御回路18においてDCDCコンバータ12の一連の制御処理が行われる。
【0081】
詳しくは、時刻t1〜t2の処理周期において、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれの異常判断処理により、これら制御回路16,18のそれぞれで電源システムに異常が生じていない旨判断される。このため、時刻t1〜t2における出力設定処理によって設定された操作信号が次回の処理周期t2〜t3において第1の制御回路16及び第2の制御回路18の双方から出力され、これにより、スイッチング素子のゲートに操作信号が伝達される。なお、時刻t2〜t3の処理周期においても、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれで異常が生じていない旨判断される。このため、この処理周期において出力設定処理にて設定された操作信号が次回の処理周期t3〜t4においてこれら制御回路16,18の双方から出力される。
【0082】
ここで、時刻t3〜t4の処理周期において、電源システムに一時的な異常が生じることにより、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれで電源システムに異常が生じた旨判断される。このため、時刻t3〜t4における出力設定処理によって設定された操作信号は、次回の処理周期t4〜t5において第1の制御回路16及び第2の制御回路18の双方から出力されない。
【0083】
なお、時刻t6において車両ECU30からの動作信号の出力が停止されることで、その後、第1の制御回路16及び第2の制御回路18の処理が停止される。
【0084】
このように、本実施形態では、DCDCコンバータ12に第1の制御回路16及び第2の制御回路18を備え、これら制御回路16,18にて異常判断処理を行うことで、電源システムの異常の有無を適切に判断することができる。
【0085】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0086】
(1)DCDCコンバータ12の入力電圧VH、入力電流IH、出力電圧VL及びオン時間Tonを異常判断用パラメータPとし、第1の制御回路16に対応する異常判断用パラメータP及び第2の制御回路18に対応する異常判断用パラメータP同士の差の絶対値が上記閾値γよりも大きいと判断された場合、電源システムに異常が生じている旨判断した。これにより、電源システムの異常の有無を適切に判断することができ、ひいては電源システムの信頼性の低下を好適に抑制することができる。
【0087】
(2)電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16及び第2の制御回路18の双方からの操作信号の出力を停止させた。このため、車両ECU30に対するDCDCコンバータ12の印加電圧が過度に高くなる状態が継続される等、電源システムに異常が生じた状態でこのシステムの使用が継続される事態を回避できる。これにより、電源システムの信頼性の低下をより好適に抑制することができる。
【0088】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0089】
図6に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態では、電源システムのうち第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから出力される操作信号をスイッチング回路36まで伝達する論理回路以外の構成は、基本的には上記第1の実施形態と同一である。このため、図6では主に、上記論理回路について説明する。また、本実施形態において、先の第1の実施形態の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0090】
図示されるように、第1の制御回路16の演算処理部16bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート16dを介してOR回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれに入力される。
【0091】
また、第2の制御回路18の演算処理部18bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート18dを介して上記OR回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれに入力される。
【0092】
上記OR回路40p1,40n1,40p2,40n2のそれぞれの出力側は、AND回路42p1,42n1,42p2,42n2のそれぞれに入力される。また、AND回路42p1,42n1,42p2,42n2のそれぞれには、更に、第1の制御回路16の出力ポート16dから出力される第1の判断信号、及び第2の制御回路18の出力ポート18dから出力される第2の判断信号が入力される。
【0093】
上記AND回路42p1,42n1,42p2,42n2の出力信号のそれぞれは、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれのゲートに伝達される。
【0094】
上記第1の判断信号及び第2の判断信号の論理の少なくとも1つが「L」とされることで、第1の制御回路16及び第2の制御回路18からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。
【0095】
こうした論理回路構成を採用するのは、電源システムの異常判断処理を行うことに加えて、スイッチング周波数を高周波としつつスイッチング素子の操作信号の更新周期を短くするためである。詳しくは、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれによって実行されるDCDCコンバータ12の一連の制御処理の開始タイミングを相違させることで、これら制御回路16,18のそれぞれからの操作信号の出力タイミングをずらし、スイッチング周波数を高周波としつつ上記操作信号の更新周期を短くする。
【0096】
ここで、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理を含むDCDCコンバータ12の一連の制御処理の手順は、先の図3に示した手順に準ずる。詳しくは、通信処理は、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうち送信側の制御回路の直近の過去のAD変換値を受信側の制御回路が受信する処理となる。
【0097】
また、異常判断処理は、異常判断用パラメータPとして上記AD変換値のみを用いる。ここで、異常判断処理における上記閾値γは、以下のように設定する。
【0098】
DCDCコンバータ12の入力電圧VHは、高圧バッテリ10を電力供給源とするモータジェネレータ等の要求電力の変動によって変動する。これに応じて、DCDCコンバータ12の出力電圧VLや入力電流IH(出力電流IL)も変動する。このため、上記閾値γは、例えば、先の図4(a),(b)に示すように、各制御回路のAD変換処理の実行間隔において想定されるAD変換値の最大変動量(想定変動量)に基づき設定し、より具体的には、上記想定変動量よりもやや大きい値として設定すればよい。なお、上記想定最大値は、例えば、車両の通常の使用態様における電圧等の計測結果に基づき算出すればよい。
【0099】
図7に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図7(a)、図7(b−1)〜図7(b−3)、図7(c−1)〜図7(c−3)及び図7(d)は、先の図5(a)、図5(b−1)〜図5(b−3)、図5(c−1)〜図5(c−3)及び図5(d)に対応している。また、図7(b−4)は、第1の制御回路16(出力ポート16d)からの第1の判断信号の出力状態の推移を示し、図7(c−4)は、第2の制御回路18(出力ポート18d)からの第2の判断信号の出力状態の推移を示す。
【0100】
図示される例では、第2の制御回路18によるDCDCコンバータ12の一連の制御処理の開始タイミングが第1の制御回路16による上記一連の制御処理の開始タイミングから半処理周期遅れるものとなっている。こうした構成によれば、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから交互に操作信号が出力されることとなり、図7(d)に示すように、スイッチング周期は、上記第1の実施形態におけるスイッチング周期の半分となる。すなわち、上述したように、スイッチング周波数が高周波とされつつスイッチング素子の操作信号の更新周期が短くされている。
【0101】
こうした構成において、時刻t1〜t3までの第1の制御回路16の処理周期にて、第2の制御回路18のAD変換値を第1の制御回路が受信して異常判断処理を行う。この結果、電源システムに異常が生じていない旨判断され、次回の処理周期t3〜t5において第1の制御回路16から出力された操作信号がスイッチング回路36に伝達される。
【0102】
その後、時刻t4〜t6までの第2の制御回路18の処理周期において、電源システムに一時的な異常が生じることで、第1の制御回路16から受信した直近の過去のAD変換値と第2の制御回路18のAD変換値との差の絶対値が閾値γを上回ると判断される。このため、時刻t6において、第2の判断信号の論理が「H」から「L」に反転され、これにより、第2の制御回路18からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。
【0103】
また、時刻t5〜t7までの第1の制御回路16の処理周期においても、電源システムに異常が生じている旨判断されることで、時刻t7において第1の判断信号の論理が「L」に反転される。これにより、第1の制御回路16からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。
【0104】
その後、第2の制御回路18において電源システムに異常が生じていない旨判断されることで、時刻t8において第2の判断信号の論理が「H」に反転され、その後第1の制御回路16において電源システムに異常が生じていない旨判断されることで、時刻t9において第1の判断信号の論理が「H」に反転される。これにより、その後、第1の制御回路16及び第2の制御回路18からスイッチング回路36への操作信号の伝達が再開される。
【0105】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1の実施形態で得られる上記(1)及び(2)の効果に加えて、以下の効果が得られるようになる。
【0106】
(3)操作信号の出力タイミングを第1の制御回路16及び第2の制御回路18で互いに相違させた。こうした構成によれば、スイッチング周波数を高周波としつつスイッチング素子の操作信号の更新周期を短くすることができる。これにより、DCDCコンバータ12の出力電圧VLの調節精度を向上させ、また、DCDCコンバータ12を構成する部品(トランス14やスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2等)の小型化を図ることができる。
【0107】
単一の制御回路によってスイッチング素子の操作信号を生成する場合には、制御回路の演算速度の制約や従来の制御回路を流用するなどの都合上、スイッチング素子の操作信号の更新周期を短くすることが困難となり、複数スイッチング周期(例えば5スイッチング周期)に渡って同一のDutyに対応する操作信号を出力せざるを得ないことも考えられる。ここで、上述した出力電圧VLの調節精度の向上によれば、高圧バッテリ10を電力供給源とする高圧システム側の機器の要求電力が変動する場合であっても、この変動が出力電圧VLに及ぼす影響を抑制することができる。これにより、例えば、車載負荷32(ヘッドライト)の印加電圧の変動を抑制することができ、ヘッドライトの照度の変動に起因してユーザに違和感を与える事態を回避することなどもできる。
【0108】
さらに、上記出力電圧VLの調節精度の向上によれば、先の図2の電圧変化算出部B4、補正量算出部B5及び加算部B6を廃止することなども期待できる。
【0109】
(第3の実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0110】
図8に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態において、先の第2の実施形態の図6に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0111】
図示されるように、本実施形態では、第1の制御回路16及び第2の制御回路18に加えて、第3の制御回路(以下、監視回路44)をDCDCコンバータ12に備えている。そして、監視回路44によって電源システムの異常判断処理を行う。
【0112】
監視回路44は、第1の制御回路16及び第2の制御回路18と同様に、AD変換部44a、演算処理部44b、タイマ回路44c、出力ポート44d及びインターフェース44eを備えて構成されている。監視回路44には、インターフェース44eを介して第1の制御回路16や第2の制御回路18からの情報が入力される。そして、監視回路44は、DCDCコンバータ12の上述した一連の制御処理を行う。なお、本実施形態では、監視回路44にて異常判断処理を行うことから、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれでは、上記一連の制御処理のうち異常判断処理は行われない。また、監視回路44の回路構成は、第1の制御回路16及び第2の制御回路18の回路構成と略同一である。
【0113】
第1の制御回路16の演算処理部16bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート16dを介してAND回路46p1,46n1,46p2,46n2のそれぞれに入力される。また、上記AND回路46p1,46n1,46p2,46n2のそれぞれには、監視回路44の出力ポート44dから出力される第1の判断信号が入力される。
【0114】
第2の制御回路18の演算処理部18bで算出されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート18dを介してAND回路48p1,48n1,48p2,48n2のそれぞれに入力される。また、上記AND回路48p1,48n1,48p2,48n2のそれぞれには、出力ポート44dから出力される第2の判断信号が入力される。
【0115】
上記AND回路46p1,46n1,46p2,46n2のそれぞれの出力側と、上記AND回路48p1,48n1,48p2,48n2のそれぞれの出力側とは、OR回路50p1,50n1,50p2,50n2のそれぞれに入力される。
【0116】
上記OR回路50p1,50n1,50p2,50n2の出力信号のそれぞれは、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれのゲートに伝達される。
【0117】
こうした構成において、監視回路44から論理「L」の第1の判断信号が出力されることで、第1の制御回路16からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。また、論理「L」の第2の判断信号が出力されることで、第2の制御回路18からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。
【0118】
図9に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図9(a)、図9(b−1)〜図9(b−3)、図9(c−1)〜図9(c−3)及び図9(e)は、先の図7(a)、図7(b−1)〜図7(b−3)、図7(c−1)〜図7(c−3)及び図7(d)に対応している。また、図9(d−1)に、タイマ回路44cのカウンタ値の推移を示し、図9(d−2)に、監視回路44の処理内容の推移を示し、図9(d−3)に、監視回路44において生成される操作信号の推移を示し、図9(d−4)に、監視回路44(出力ポート44d)からの第1の判断信号の出力状態の推移を示し、図9(d−5)に、監視回路44からの第2の判断信号の出力状態の推移を示す。
【0119】
なお、本実施形態では、監視回路44においてDCDCコンバータ12の一連の制御処理を所定の処理周期(第1の制御回路16又は第2の制御回路18の半処理周期)内に完了することが要求されることから、監視回路44では複数の処理が並行して実行される。
【0120】
図示される例では、監視回路44による一連の制御処理の開始タイミングが第2の制御回路18による一連の制御処理の開始タイミングよりも遅いものとなっている。
【0121】
ここで、時刻t1〜t2において、受信された第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき、監視回路44によって電源システムに異常が生じていない旨判断される。このため、第1の判断信号の論理が「H」に維持され、時刻t1〜t2において第1の制御回路16にて生成された操作信号が時刻t2〜t3の処理周期において出力されてスイッチング回路36に伝達される。
【0122】
続く時刻t2〜t3において、受信された第2の制御回路18のAD変換値に基づき監視回路44によって電源システムに異常が生じていない旨判断される。このため、第2の判断信号の論理が「H」に維持され、第2の制御回路18にて生成された操作信号がその後スイッチング回路36に伝達される。
【0123】
その後、時刻t3〜t4において、電源システムに一時的な異常が生じることで、監視回路44において第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき電源システムに異常が生じている旨判断されることで、時刻t4において、第1の判断信号の論理が「H」から「L」に反転される。これにより、第1の制御回路16からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。
【0124】
その後、時刻t6〜t7において、第2の制御回路18のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき電源システムに異常が生じている旨判断されることで、時刻t7において、第2の判断信号の論理が「L」に反転される。これにより、第2の制御回路18からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断される。
【0125】
なお、その後、第1の制御回路16のAD変換値と、監視回路44のAD変換値とに基づき電源システムに異常が生じていない旨判断されることで、時刻t8において第2の判断信号の論理が「H」に反転される。これにより、第1の制御回路16からスイッチング回路36への操作信号の伝達が再開される。
【0126】
このように、本実施形態では、監視回路44によって電源システムの異常判断処理を行うことで、電源システムの異常の有無を適切に判断することができる。
【0127】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0128】
図10に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態では、電源システムのうち第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれから出力される操作信号をスイッチング回路36まで伝達する論理回路以外の構成は、基本的には上記第1の実施形態と同一である。このため、図10では主に、上記論理回路について説明する。また、本実施形態において、先の第1の実施形態の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0129】
本実施形態では、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれで算出されるスイッチング素子のオン時間Tonのうち短い方をスイッチング回路36に出力させる処理を行う。
【0130】
こうした処理を行うべく、図示されるように、演算処理部16bにて生成されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート16dを介してAND回路52p1,52n1,52p2,52n2のそれぞれに入力される。また、上記AND回路52p1,52n1,52p2,52n2のそれぞれには、第2の制御回路18の出力ポート18dから出力される第1の判断信号が入力される。
【0131】
また、第2の制御回路18の演算処理部18bにて生成されるスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2に対応する操作信号のそれぞれは、出力ポート18dを介してAND回路54p1,54n1,54p2,54n2のそれぞれに入力される。また、上記AND回路54p1,54n1,54p2,54n2のそれぞれには、第1の制御回路16の出力ポート16dから出力される第2の判断信号が入力される。
【0132】
上記AND回路52p1,52n1,52p2,52n2のそれぞれの出力側と、上記AND回路54p1,54n1,54p2,54n2のそれぞれの出力側とは、OR回路56p1,56n1,56p2,56n2のそれぞれに入力される。
【0133】
上記OR回路56p1,56n1,56p2,56n2の出力信号のそれぞれは、スイッチング回路36を介してスイッチング素子Sp1,Sn1,Sp2,Sn2のそれぞれのゲートに伝達される。
【0134】
こうした構成において、第1の制御回路16及び第2の制御回路18において電源システムに異常が生じている旨判断された場合、これら制御回路16,18のうちオン時間Tonが短い方に対応する制御回路から出力される判断信号の論理を「H」から「L」に反転させる。具体的には、第2の制御回路18において自身のオン時間Tonの方が短いと判断された場合、第2の制御回路18から論理「L」の第1の判断信号が出力される。これにより、第1の制御回路16からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断され、第2の制御回路18によって生成される操作信号がスイッチング回路36に伝達される。一方、第1の制御回路16において自身のオン時間Tonの方が短いと判断された場合、第1の制御回路16から論理「L」の第2の判断信号が出力される。これにより、第2の制御回路18からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断され、第1の制御回路16によって生成される操作信号がスイッチング回路36に伝達される。
【0135】
図11に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図11(a)、図11(b−1)〜図11(b−3)、図11(c−1)〜図11(c−3)及び図11(d)は、先の図5(a)、図5(b−1)〜図5(b−3)、図5(c−1)〜図5(c−3)及び図5(d)に対応している。また、図11(b−4)に、第1の制御回路16からの第2の判断信号の出力状態の推移を示し、図11(c−4)に、第2の制御回路18からの第1の判断信号の出力状態の推移を示す。
【0136】
図示される例では、動作信号がオンされた後、時刻t1〜t2の処理周期において、異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断される。このため、次回の処理周期である時刻t2〜t3において、第2の判断信号の論理が「H」から「L」に反転されることにより、スイッチング素子のオン時間Tonが短い方である第1の制御回路16からスイッチング回路36に操作信号が出力される。
【0137】
このように、本実施形態では、電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうちスイッチング素子のオン時間Tonが短い方に対応する制御回路からスイッチング回路36へと操作信号を伝達させた。こうした構成によれば、例えばDCDCコンバータ12の出力電圧VLが過度に高くなることを抑制でき、電源システムの信頼性の低下を抑制することができる。
【0138】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0139】
図12に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態において、先の第3の実施形態の図8に示した部材と同一の部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0140】
図示されるように、監視回路44からは、判断信号A及び判断信号Bが出力される。そして、これら判断信号が論理反転された信号は、AND回路58に入力される。
【0141】
第1の制御回路16から出力される第2の判断信号、第2の制御回路18から出力される第1の判断信号、及びAND回路58から出力される信号は、AND回路60に入力される。
【0142】
上記判断信号Aと、AND回路60の出力信号とは、OR回路62に入力される。
【0143】
上記AND回路46p1,46n1,46p2,46n2のそれぞれには、OR回路62の出力信号が入力される。また、上記AND回路48p1,48n1,48p2,48n2のそれぞれには、判断信号Bが入力される。
【0144】
なお、本実施形態において、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のDCDCコンバータ12の一連の制御処理のそれぞれの開始タイミングは、上記第1の実施形態と同様に同期されている。
【0145】
次に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。
【0146】
本実施形態では、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれによって算出されたオン時間Tonのうち互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いオン時間Tonに対応する操作信号よってスイッチング素子を操作する多数決処理を行う。
【0147】
この処理について詳述すると、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44同士で相互に電源システムに異常が生じているか否かを判断する。ここで、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれが主体となる異常判断手法は、先の図3に示した手順に準ずる。
【0148】
第1の制御回路16及び第2の制御回路18同士の異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、第1の判断信号及び第2の判断信号の双方の論理を「H」から「L」に反転させる。一方、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、判断信号Aの論理を「L」に反転させる。他方、第2の制御回路18及び監視回路44同士の異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断された場合、判断信号Bの論理を「L」に反転させる。
【0149】
図13に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図13(a)、図13(b−1)〜図13(b−3)、図13(c−1)〜図13(c−3)、図13(d−1)〜図13(d−3)及び図13(e)は、先の図9(a)、図9(b−1)〜図9(b−3)、図9(c−1)〜図9(c−3)、図9(d−1)〜図9(d−3)及び図9(e)に対応している。また、図13(b−4)は、第1の制御回路16からの第2の判断信号の出力状態の推移を示し、図13(c−4)は、第2の制御回路18からの第1の判断信号の出力状態の推移を示し、図13(d−4)は、監視回路44からの判断信号Aの出力状態の推移を示し、図13(d−5)は、監視回路44からの判断信号Bの出力状態の推移を示す。
【0150】
図示される例では、時刻t1〜t2の処理周期において、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のいずれにおいても電源システムに異常が生じている旨判断されない。このため、第2の判断信号、第1の判断信号、判断信号A及び判断信号Bの論理が「H」に維持され、第1の制御回路16及び第2の制御回路18の双方からスイッチング回路36に操作信号が伝達される。
【0151】
ここで、時刻t2〜t3の処理周期において、第1の制御回路16及び第2の制御回路18同士の異常判断処理と、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理とで電源システムに異常が生じている旨判断される。ここでは、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれによって算出されたオン時間Tonのうち互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いものが第2の制御回路18及び監視回路44によって算出されたオン時間Tonである。互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いオン時間Tonは、正常である蓋然性が高い。このことから、次回の処理周期である時刻t3〜t4において第2の制御回路18によって算出されたオン時間Tonに対応する操作信号をスイッチング回路36に出力させるべく、次回の処理周期において判断信号Bの論理が「H」に維持されつつ、第1の判断信号、第2の判断信号及び判断信号Aの論理が「L」に反転される。このため、AND回路58,60の出力信号の論理が「L」とされ、OR回路62の出力信号の論理が「L」とされる。これにより、次回の処理周期である時刻t3〜t4において、第1の制御回路16からスイッチング回路36への操作信号の伝達が遮断されて且つ、第2の制御回路18の操作信号がスイッチング回路36に伝達される。
【0152】
続く時刻t3〜t4の処理周期において、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44同士の相互の異常判断処理によって電源システムに異常が生じている旨判断される。ここでは、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれによって算出されたオン時間Tonが互いに相違するため、いずれのオン時間Tonも正常である蓋然性が低い。このため、次回の処理周期である時刻t4〜t5において、第1の制御回路16及び第2の制御回路18の双方からスイッチング回路36への操作信号の伝達を遮断すべく、次回の処理周期において判断信号Bの論理が「L」に反転される。これにより、AND回路58の出力信号の論理が「H」とされるものの、AND回路60に入力される第1の判断信号及び第2の判断信号の論理が「L」のため、OR回路62の出力信号の論理は「L」とされる。したがって、次回の処理周期時刻t4〜t5において、第1の制御回路16又は第2の制御回路18のいずれの操作信号もスイッチング回路36に伝達されない。
【0153】
続く時刻t4〜t5の処理周期において、第1の制御回路16及び監視回路44同士の異常判断処理と、第2の制御回路18及び監視回路44同士の異常判断処理とで異常が生じている旨判断される。ここでは、第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44のそれぞれによって算出されたオン時間Tonのうち互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いものが第1の制御回路16及び第2の制御回路18によって算出されたオン時間Tonである。このため、次回の処理周期である時刻t5以降において上記互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いオン時間Tonに対応する操作信号をスイッチング回路36に出力させる。これを実現すべく、次回の処理周期において第1の判断信号、第2の判断信号及び判断信号Aの論理が「L」から「H」に反転されるとともに、判断信号Bの論理が「L」に維持される。このため、AND回路58,60の出力信号の論理が「L」となり、OR回路62の出力信号の論理が「H」とされる。これにより、次回の処理周期において上記互いに同一となるオン時間Tonの数が最も多いオン時間Tonに対応する操作信号である第1の制御回路16の操作信号がスイッチング回路36に伝達される。
【0154】
このように、本実施形態では、上記態様の多数決処理を行うことで、電源システムの信頼性の低下を好適に抑制することができる。
【0155】
(第6の実施形態)
以下、第6実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0156】
図14に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。なお、本実施形態において、先の第3の実施形態の図8に示した部材と同一の部材又は対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。
【0157】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータ12に一対のマイクロコンピュータ(以下、マイコンA及びマイコンB)が備えられている。そして、マイコンAは、第1の制御回路16及び第2の制御回路18を備えて構成されている。すなわち、マイコンAは、いわゆるデュアルコアマイコンである。また、マイコンBは、監視回路44を備えて構成されている。なお、マイコンAにおいて、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに対応するタイマ回路等は共通化されている。
【0158】
ここで、本実施形態において、回路構成の相違するマイコンA,Bを備えるのは、電源システムの信頼性を向上させるためである。これは、マイコンの回路構成を相違させると、制御回路の故障箇所が相違すること等に起因して、マイコンA,B(第1の制御回路16、第2の制御回路18及び監視回路44)が同時に故障する頻度が小さくなると考えられることによる。
【0159】
このように、本実施形態では、回路構成の相違する2つのマイコンA,BをDCDCコンバータ12に備えることで、電源システムの信頼性の向上を図ることができる。さらに、マイコンAにおいて第1の制御回路16及び第2の制御回路18に対応するタイマ回路等を共通化すること等により、制御回路を複数備えることによってマイコンAの体格が大きくなることを極力抑制することもできる。
【0160】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0161】
・上記各実施形態では、電力変換装置としてのDCDCコンバータ12に備えられたセンサ(出力側電圧センサ26等)の検出値を用いて異常判断処理を行ったがこれに限らない。例えば、電源システム内であって且つDCDCコンバータ12外にDCDCコンバータ12の出力電圧や出力電流を検出するセンサを備え、上記センサの検出値に基づき異常判断処理を行ってもよい。
【0162】
・上記第1,第2,第4の実施形態では、DCDCコンバータ12の備える第1の制御回路16及び第2の制御回路18によって異常判断処理を行ったがこれに限らない。例えば、これら制御回路及び車両ECU30の間で情報をやり取りする手段(信号線)を備え、制御回路のAD変換値等を入力して車両ECU30によって異常判断処理を行ってもよい。
【0163】
・電源システムの異常判断処理に用いる異常判断用パラメータPとしては、上記入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLのAD変換値の全てに限らず、例えば、これらのうち1つ又は2つを用いてもよい。また、異常判断用パラメータPとして、例えば、スイッチング素子のオン時間Tonのみを用いてもよい。
【0164】
・上記第3,第5の実施形態において、異常判断用パラメータPとして、AD変換値に加えて又は代えて、スイッチング素子のオン時間Tonを用いてもよい。
【0165】
・上記第1の実施形態では、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに共通の入力側電圧センサ22等の検出値が入力される構成としたがこれに限らない。例えば、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のそれぞれに対応した入力側電圧センサ等を各別に備え、これら制御回路16,18のそれぞれに対応したセンサの検出値を用いて異常判断処理を行ってもよい。
【0166】
・上記第2の実施形態では、入力電圧VH、入力電流IH及び出力電圧VLのAD変換値に基づき異常判断処理を行ったがこれに限らない。例えば、スイッチング素子のオン時間Tonを用いて異常判断処理を行ってもよい。この場合の異常判断手法について説明すると、具体的には例えば、第1の制御回路16及び第2の制御回路18のうち一方の直近の過去のAD変換値を他方に送信する。そして、上記直近のAD変換値を受信した他方の制御回路において、受信したAD変換値から算出されたオン時間Tonと、自身のAD変換値から算出されたオン時間Tonとの比較による異常判断処理を採用すればよい。
【0167】
・上記第2の実施形態では、1対の制御回路のそれぞれの操作信号の出力タイミングを互いに相違させたが、制御回路を3つ以上備える場合、操作信号の出力タイミングを3段階以上のタイミングで相違させてもよい。
【0168】
・第2の実施形態において、制御回路を4つ以上の偶数個備える場合、これら制御回路を複数個ずつ2分した一方と他方とのそれぞれで操作信号の出力タイミングを相違させて且つ、これら制御回路を2分したそれぞれのグループ内で操作信号の出力タイミングを同期させる構成としてもよい。この場合、これら制御回路を2分したそれぞれのグループ内では上記第1の実施形態で示した異常判断処理を行い、これら制御回路を2分したそれぞれのグループ間では上記第2の実施形態で示した異常判断処理を行ってもよい。
【0169】
・上記各実施形態では、制御回路のそれぞれにおいて、1スイッチング周期毎に操作信号(Duty)を更新したがこれに限らず、例えば、複数スイッチング周期(例えば5スイッチング周期)毎に更新してもよい。
【0170】
・上記第5の実施形態において、4つ以上であって且つ偶数個の制御回路がDCDCコンバータ12に備えられる場合、多数決処理によってどの操作信号を選択すべきか決定できないことも考えられる。この場合、例えば、上記第1の実施形態のように、操作信号の出力を停止させる制御ロジックを採用してもよい。
【0171】
・DCDCコンバータ12に備えられる回路構成の相違する制御回路としては、上記第6の実施形態に例示したものに限らず、例えば、マイコン及びDSP(Digital Signal Processor)であってもよい。
【0172】
・上記各実施形態では、1つのDCDCコンバータが電源システムに備えられたがこれに限らず、複数のDCDCコンバータの並列接続体が備えられていてもよい。こうした構成は、車載負荷等への供給電流の最大値を増大させること等を目的としたものである。
【0173】
・電力変換装置の備えるスイッチング素子としては、上記各実施形態に例示したものに限らず、例えば、バイポーラトランジスタやIGBT等であってもよい。
【0174】
・電力変換装置としては、降圧コンバータに限らず、昇圧コンバータであってもよい。また、電力変換装置としては、絶縁型のものに限らず、非絶縁型のものであってもよい。さらに、電力変換装置としては、DCDCコンバータに限らず、直流交流変換装置(インバータ)であってもよい。
【0175】
・本願発明が適用される車両としては、ハイブリッド車両に限らず、例えば、車載主機として回転機のみを備える電気自動車であってもよい。また、本願発明の適用対象としては、車両に限らない。
【符号の説明】
【0176】
10…高圧バッテリ、12…DCDCコンバータ、16…第1の制御回路、18…第2の制御回路、22…入力側電圧センサ、24…入力側電流センサ、26…出力側電圧センサ、Sp1,Sn1,Sp2,Sn2…スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の開閉操作信号を生成する制御回路を有して且つ、前記生成される操作信号に基づく前記スイッチング素子の開閉操作によって入力電圧を所定に変換して出力する電力変換装置を備える電源システムに適用され、
前記電源システムには、該電源システムの電流流通経路の電気的な状態量を検出する検出手段が備えられ、
前記制御回路は、前記検出手段の検出値を入力として前記操作信号を生成して且つ、1つの前記電力変換装置に複数備えられ、
複数の前記制御回路のそれぞれに入力された前記検出手段の検出値同士の比較、及び複数の前記制御回路のそれぞれによって生成された前記操作信号同士の比較のうち少なくとも1つに基づき、前記電源システムの異常の有無を判断する異常判断手段を備えることを特徴とする電源システムの異常判断装置。
【請求項2】
前記異常判断手段によって前記電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記電力変換装置の動作を停止させる異常時停止手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の電源システムの異常判断装置。
【請求項3】
複数の前記制御回路のうち少なくとも一対の前記制御回路のそれぞれは、互いに同期したタイミングで前記操作信号を前記スイッチング素子に対して出力し、
前記異常判断手段によって前記電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記少なくとも一対の制御回路のそれぞれによって生成された前記操作信号のうち前記スイッチング素子が閉状態とされる時間が最短となる操作信号によって前記スイッチング素子を開閉操作する異常時操作手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の電源システムの異常判断装置。
【請求項4】
複数の前記制御回路のうち少なくとも一部であって且つ3つ以上の前記制御回路のそれぞれは、互いに同期したタイミングで前記スイッチング素子に対して出力するための前記操作信号を生成し、
前記異常判断手段によって前記電源システムに異常が生じている旨判断された場合、前記3つ以上の制御回路のそれぞれによって生成された前記操作信号のうち互いに同一となる操作信号の数が最も多い操作信号によって前記スイッチング素子を開閉操作する異常時多数決操作手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の電源システムの異常判断装置。
【請求項5】
複数の前記制御回路のうち少なくとも一対の前記制御回路のそれぞれは、前記スイッチング素子に対する前記操作信号の出力タイミングが互いに相違することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源システムの異常判断装置。
【請求項6】
前記電源システムは、車両に搭載され、
前記車両には、高圧側車載負荷と、該高圧側車載負荷及び前記電力変換装置の電力供給源となる高圧バッテリとが備えられることを特徴とする請求項5記載の電源システムの異常判断装置。
【請求項7】
複数の前記制御回路のうち一部の回路構成は、残余の回路構成と相違することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電源システムの異常判断装置。
【請求項8】
前記異常判断手段は、前記電力変換装置に備えられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電源システムの異常判断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−85332(P2013−85332A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221971(P2011−221971)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】