説明

電源スイッチシステム

【課題】 機器の電源がオフ状態にあるときに、電源からの電流を絶えず取り込むことがない電源スイッチシステムを提供すること。
【解決手段】機器のための電源スイッチシステムであって、力学的な力を電力に変換する変換器と、該変換器とモニタとの間に結合され、前記変換器に加えられる力学的な力に応答して前記モニタに電力を供給する、パワーコンディショナとを備える、機器のための電源スイッチシステム。機器のための電源スイッチシステムであって、変換器に加えられる力学的な力に応答して起電力を生成すること、前記機器のオン状態への移行を指示すること、及び前記機器の前記オン状態への移行が指示されるのに応答して、電源を機器回路に接続することを含む、機器のための電源スイッチシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源スイッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのタイプの電子機器が、手動で起動される電源スイッチによってオン及びオフに切り替えられる。起動されるとき、電源スイッチは通常、モニタ回路によってモニタされる信号線を接地する。モニタ回路が接地された信号線を検出するとき、モニタ回路は制御スイッチを閉じて、結果として、電源からの電力が電子機器内の回路に供給されるようになる。
【0003】
通常の従来技術の電源スイッチングシステム(図1に示される)を用いて、電子機器のオフ状態とオン状態との間の移行を検出するために、モニタ回路は電源に接続される。したがって、モニタ回路は、その機器がオフ状態にあるときでも、電源からの電流iを絶えず取り込む。これにより、モニタ回路は電池を放電し、その機器の利用可能な動作時間を短縮する可能性があるか、又はその放電が電池を空にするほど十分に長い時間に及ぶ場合には、その機器を動作できなくする可能性があるので、これは電池駆動の機器において問題を提起する。低電力の機器の場合、その機器がオフ状態にある間に、電源によってモニタ回路に供給される電力は、その機器の電源使用量のかなりの部分を占める可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機器の電源がオフ状態にあるときに、電源からの電流を絶えず取り込むことがない電源スイッチシステムを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による電源スイッチシステムは、力学的な力を電力に変換する変換器を備える。変換器が機械的に起動されるとき、電源スイッチシステムに収容されるモニタに電力が供給される。変換器によって供給される電力は、電子機器がオフ状態にあるときにモニタが電子機器の電源から電力を取り込むことを不要にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図2は、本発明の実施形態による電源スイッチシステム10の一例を示す。電源スイッチシステム10は、変換器12と、パワーコンディショナ14と、モニタ16とを備える。この例では、電子機器又は他のタイプの機器20内の回路(これ以降、「機器回路18」)が、制御スイッチS1を介して電源22に選択的に接続される。機器20には電池、燃料電池、電力供給装置又は任意の他のタイプの電源22によって動作する任意のデバイス、素子又はシステムを用いることができる。
【0007】
変換器12は、力学的な力を電力に変換するのに適した任意のデバイス、素子又はシステムである。変換器12を機械的に起動する際に、変換器12はモニタ16に電力を供給し、機器20がオフ状態にあるときに、モニタ16が電源22から電力を取り込むことを不要にすることができる。
【0008】
通常、機器20のユーザは、変換器12の可動部を押すこと、可動部を引くこと、可動部の位置をずらすこと、又は他の方法で動かすことによって、変換器12に力学的な力を加える。図2では、変換器12は線形emf(起電力)発生器を含む。線形emf発生器は、スリーブ15内に摺動可能に取り付けられる変位ピストン13に結合されるボタン9を有する。スリーブ15はコイル17、すなわち一連の巻線を有する。変位ピストン13は磁石を含む。通常、変位ピストン13は磁化されるか、又は磁性体を含み、磁石が形成される。変位ピストン13がスリーブ15の中を動かされるとき、コイル17に接続される一対の端子19aと19bとの間に電圧vが生成される。変位ピストン13の動きは、機器20のユーザによってボタン9を介して直に、又は変位ピストン13への種々の機械的な結合のうちの任意のものによって間接的に与えられることができる。本発明の別の実施形態では、コイル17は変位ピストン13上に取り付けることができ、スリーブ15は磁石を含むことができる。図2は、機器20上の固定された場所にあるスリーブ15を示しており、変位ピストン13はスリーブ15内に摺動可能に取り付けられる。別法では、変換器12は、変位ピストン13とスリーブ15との間の相対的な動きを与え、電圧vを供給する起電力を生成する任意の適当な電気機械構造又は電気機械構成を含む。磁石によって生じる磁界、コイル17に含まれる巻線の数、及びコイル17内の巻線と磁石との間の近さは、ユーザが相対的な変位、速度及び力をボタン9に付与して、変位ピストン13とスリーブ15との間に相対的な動きを与える場合に、モニタ16にとって十分な電力が生成されるように選択される。
【0009】
別の実施形態では、変換器12は、図3の変換器12の別の例において図示されるような回転式emf発生器30を備える。回転式emf発生器30は、ピストン33とガイド35との間の相対的な線形変位を回転式emf発生器30内のロータ38の回転に変換するギアアセンブリ32を介して、ピストン33及びガイド35に結合される。ピストン33がガイド35の中を動かされるとき、回転式emf発生器30内のステータ31のコイル37に接続される一対の端子39aと39bとの間に電圧Vが生成される。ピストン33の動きは、機器20のユーザによってボタン9を介して直に、又はピストン33への種々の機械的結合のうちの任意のものによって間接的に与えることができる。本発明の別の実施形態では、コイル37はロータ38上に取り付けることができ、ステータ31は、磁石を含むように磁化することができる。ガイド35は通常、機器20上の固定された位置にあり、ピストン33がガイド35内に摺動可能に取り付けられるが、別法では、変換器12は、ロータ38とステータ31との間の相対的な回転を与え、電圧Vを供給する起電力を発生させる任意の適当な電気機械構造又は電気機械構成を含む。磁石によって生じる磁界、コイル37に含まれる巻線の数、磁石に対する回転式emf発生器30内の巻線の近さ、及びギアアセンブリ32内のギアは、ユーザが相対的な変位、速度及び力をボタン9に付与して、ロータ38とステータ31との間に相対的な動きを与える場合に、モニタ16にとって十分な電力が生成されるように選択される。
【0010】
パワーコンディショナ14(図2に示される)は、変換器12の一対の端子19a、19bに接続される。パワーコンディショナ14は、変換器12から電力を受け取り、その後、一対の端子29a、29bを介して、調整済みの電力をモニタ16に供給する。図4A及び図4Bは、パワーコンディショナ14に収容するのに適した別のタイプの電圧レギュレータ回路の例を示す。図4Aのパワーコンディショナ14は、端子19a、19bにわたって接続される入力キャパシタCと、端子29a、29bにわたって接続される出力キャパシタCと、端子19a、端子29a及び端子19b、29bの間に接続される、線形電圧レギュレータ又はスイッチング電圧レギュレータのようなレギュレータ42とを備える。図4Bのパワーコンディショナ14は、端子19a、19bにわたって接続される入力キャパシタCと、端子19aと端子29aとの間に接続される直列抵抗Rと、端子29aと端子29bとの間に接続される、ツェナーダイオードのようなシャントレギュレータ44とを備える。図4A及び図4Bはパワーコンディショナ14の例を提供するが、別法では、変換器12によって供給される電力をモニタ16によって用いるのに適した形に調整するのに適した任意の適当なデバイス、素子又はシステムが用いられる。変換器12によって供給される電力がモニタ16によって直に用いるのに適しているとき、パワーコンディショナ14は、変換器12とモニタ16との間の直接接続を含むことができる。
【0011】
図2は、説明の便宜上、モニタ16、機器回路18、パワーコンディショナ14及び変換器12を個別の素子として示す。しかしながら、別法では、モニタ16、機器回路18、パワーコンディショナ14及び変換器12は、これらの素子のうちの1つ又は複数の素子が集積されるように実装される。別法では、図2に示される素子は分散して実装され、その場合には、図示される素子間の物理的な境界は図2に示されるものとは異なる。
【0012】
モニタ16は、機器20がオフ状態にあるときには、機器20の電源22からの電力には依存しない。オフ状態では、制御スイッチS1が開き、機器回路18を電源22から切り離す。ダイオードのような、オプションで含まれる方向性スイッチS2は、機器20がオフ状態にあるときには、非導通状態にある。たとえば、機器20のユーザによって、変換器12のボタン9に力学的な力が加えられるとき、モニタ16は、パワーコンディショナ14を介して、モニタ16を動作させるだけの十分な電力を受け取る。変換器12によって供給される電力は、制御スイッチS1を閉じることにより機器回路18に電源22が接続されるまで、モニタ16を動作させるだけの十分な電力である。制御スイッチS1を閉じると、方向性スイッチS2も導通状態に切り替えられ、その際、モニタ16への電力は電源22から供給されるようになる。
【0013】
図5は、本発明の別の実施形態による電源スイッチシステム50の一例の流れ図である。その流れ図のステップ52は、変換器12に力学的な力を加えて、変換器12の端子19a、19bに電圧vを供給する起電力を生成することを含む。流れ図50のステップ54は、機器20のオン状態への移行を指示することを含む。通常接点スイッチS3を閉じることにより、一旦、ステップ52において起電力が生成されたなら、この指示が与えられる。接点スイッチS3を閉じると、信号線11が接地され、それがモニタ16によって検出される。別法では、ステップ54におけるオン状態への移行は、モニタ16が変換器12によって供給される電力を検出することにより指示される。
【0014】
一旦、ステップ54においてオン状態への移行が指示されたなら、流れ図のステップ56において、電源22が機器回路18に接続される。通常、モニタ16は制御スイッチS1を駆動し、制御スイッチS1が閉じられるとき、電源22が機器回路18に接続される。オプションのステップ58では、電源22と機器回路18との間を接続するスイッチS1の制御は、機器20内のプロセッサ21の制御下に置かれる。これは通常、モニタ16によってもたらされる遅延の後に与えられる。
【0015】
図6は、電源スイッチシステム10に収容するのに適しており、且つ電源スイッチシステム50のステップ54〜58を実施するのに適したモニタ16の一例を示す。モニタ16はパワーコンディショナ14の端子29a、29bに接続される(receive)。端子29aは方向性スイッチS2への接続7に接続される。信号線11を接地することにより、ワンショットタイマ62が起動され、機器20のオン状態への移行が指示される。ワンショットタイマ62はパルスPをゲート64への第1の入力に与え、制御スイッチS1が閉じられる。パルスPは、プロセッサ21がゲート64への第2の入力を介してスイッチS1を制御するだけの十分に長いパルス幅、すなわち持続時間を有する。一例では、パルスPは200ミリ秒の持続時間を有し、それは、プロセッサ21がゲート64への第2の入力に対する信号をアサートし、且つ保持できるようにするだけの十分な長さである。モニタ16は、接点スイッチS3のスイッチのはね返りの影響を軽減するか、又は機器20がオン状態に移行中に種々の他の機能を提供するための付加回路(図示せず)も備えることができる。
【0016】
機器20がオン状態にあるとき、プロセッサ21がワンショットタイマ62の出力をモニタする。信号線11の接地によって起動される別のパルスPが、ワンショットタイマ62からプロセッサ21によって検出され、機器20のオン状態からオフ状態への移行が指示される。この検出されたパルスPに応答して、プロセッサ21は機器20のシャットダウンを開始する。プロセッサ21は、ワンショットタイマ62によって与えられるパルスPよりも長いパルスをゲート64の第2の入力に与える。機器20のシャットダウンを完了するために、プロセッサ21は、プロセッサ21がゲート64の第2の入力に以前に加えた信号をデアサートする。これにより制御スイッチS1が開かれて、機器回路18から電源22が切り離され、モニタ16と電源22との間の方向性スイッチS2が非導通状態に設定される。
【0017】
本発明の実施形態が詳細に例示されてきたが、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対する変更及び改変を当業者が思いつくことができることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術の電源スイッチングシステムを示す図である。
【図2】本発明の実施形態による電源スイッチシステムの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による電源スイッチシステムに収容するのに適した変換器の一例を示す図である。
【図4A】図2の電源スイッチシステムに収容されるパワーコンディショナの一例の詳細図である。
【図4B】図2の電源スイッチシステムに収容されるパワーコンディショナの別の例の詳細図である。
【図5】本発明の別の実施形態による電源スイッチシステムの一例の流れ図である。
【図6】本発明の実施形態による電源スイッチシステムに収容するのに適したモニタの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
9 ボタン
12 変換器
13 変位ピストン
14 パワーコンディショナ
15 スリーブ
16 モニタ
17 コイル
18 機器回路
20 機器
21 プロセッサ
22 電源
19a、19b 一対の端子
29a、29b 一対の端子
30 回転式emf発生器
31 ステータ
32 ギアアセンブリ
33 ピストン
35 ガイド
62 ワンショットタイマ
64 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のための電源スイッチシステムであって、
力学的な力を電力に変換する変換器と、
該変換器とモニタとの間に結合され、前記変換器に加えられる力学的な力に応答して前記モニタに電力を供給する、パワーコンディショナとを備える、機器のための電源スイッチシステム。
【請求項2】
前記変換器は線形起電力発生器及び回転式起電力発生器のうちの1つを含む、請求項1に記載の電源スイッチシステム。
【請求項3】
前記モニタに接続される信号線を選択的に接地する接点スイッチをさらに備え、該接点スイッチは前記機器のオン状態とオフ状態との間の移行を指示する、請求項1に記載の電源スイッチシステム。
【請求項4】
前記モニタは、前記信号線の選択的な接地に応答して、電源を機器回路に選択的に接続する制御スイッチを駆動する、請求項3に記載の電源スイッチシステム。
【請求項5】
前記制御スイッチが前記電源を前記機器回路に接続するときに、電力を前記電源から前記モニタに供給する方向性スイッチをさらに備える、請求項4に記載の電源スイッチシステム。
【請求項6】
前記機器がオフ状態にあるときに、前記方向性スイッチは前記モニタを前記電源から切り離す、請求項5に記載の電源スイッチシステム。
【請求項7】
前記機器の前記オフ状態から前記機器の前記オン状態への移行が指示されるときにもたらされる遅延の後に、前記電源と前記機器回路との間の接続を制御するプロセッサをさらに備える、請求項4に記載の電源スイッチシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記制御スイッチを介して前記電源と前記機器回路との間の接続を制御する、請求項7に記載の電源スイッチシステム。
【請求項9】
機器のための電源スイッチシステムであって、
変換器に加えられる力学的な力に応答して起電力を生成すること、
前記機器のオン状態への移行を指示すること、及び
前記機器の前記オン状態への移行が指示されるのに応答して、電源を機器回路に接続することを含む、機器のための電源スイッチシステム。
【請求項10】
前記機器のオン状態への移行が指示されるときにもたらされる遅延の後に、プロセッサを用いて前記電源と前記機器回路との間の接続を制御することをさらに含む、請求項9に記載の電源スイッチシステム。
【請求項11】
前記機器の前記オン状態への移行を指示することは、信号線を接地することを含む、請求項9に記載の電源スイッチシステム。
【請求項12】
前記機器の前記オン状態への移行を指示することは、前記変換器に加えられる前記力学的な力に応答して、生成される前記起電力を検出することを含む、請求項9に記載の電源スイッチシステム。
【請求項13】
前記電源を前記機器回路に接続することは、前記電源を前記機器回路に選択的に接続する制御スイッチを閉じることを含む、請求項9に記載の電源スイッチシステム。
【請求項14】
機器のための電源スイッチシステムであって、
変換器に加えられる力学的な力に応答して生成される起電力からの電力をモニタに供給すること、
前記モニタに前記機器のオン状態への移行を指示すること、及び
前記モニタに前記機器の前記オン状態への移行が指示されるのに応答して、電源を機器回路に接続することを含む、機器のための電源スイッチシステム。
【請求項15】
前記モニタに前記機器の前記オン状態への移行が指示されるときにもたらされる遅延の後に、プロセッサを用いて前記電源と前記機器回路との間の接続を制御することをさらに含む、請求項14に記載の電源スイッチシステム。
【請求項16】
前記機器の前記オン状態への移行を指示することは、信号線を接地することを含む、請求項14に記載の電源スイッチシステム。
【請求項17】
前記機器の前記オン状態への移行を指示することは、前記変換器に加えられる前記力学的な力に応答して生成される前記起電力を検出することを含む、請求項14に記載の電源スイッチシステム。
【請求項18】
前記電源と前記機器回路との間の接続を制御することは、前記電源を前記機器回路に選択的に接続する制御スイッチを制御することを含む、請求項15に記載の電源スイッチシステム。
【請求項19】
前記電源及び前記機器回路が接続されるときに、前記電源から前記モニタに電力を供給することをさらに含む、請求項15に記載の電源スイッチシステム。
【請求項20】
前記電源及び前記機器回路が接続されないときに、前記モニタを前記電源から切り離すことをさらに含む、請求項18に記載の電源スイッチシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−202744(P2006−202744A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74(P2006−74)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】