説明

電源バックアップ回路およびその制御方法

【課題】 バックアップ時間をより長く設定すること。
【解決手段】 DC/DCコンバータは、入力直流電圧を、出力直流電圧より高い昇圧電圧に昇圧する。バックアップ用コンデンサは、バックアップ電圧を出力する。降圧チョッパ回路は、バックアップ用コンデンサの放電時に、バックアップ電圧を、出力直流電圧まで下げる。降圧チョッパ回路は第1のFETを含む。第2のFETは、入力端子と出力端子との間に挿入される。入力直流電圧が負荷の許容電圧範囲内にあるとき、制御部は、第1のFETをオフとする。入力直流電圧が許容電圧範囲の下限値より下がったとき、制御部は、第2のFETをオフとすると共に、第1のFETをチョッパ動作させて、負荷へ許容電圧範囲の下限値より高く且つ上限値より低い出力直流電圧を供給する。バックアップ電圧が出力直流電圧に等しくなると、制御部は第1のFETをオン状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源バックアップ回路に関し、特に、突然の電源の瞬断または停電において、バックアップ用コンデンサを用いて短時間の電源バックアップをする電源バックアップ回路およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器などの装置(負荷)において、内部にコンピュータを内蔵している場合に、ストレージメモリを持つ場合がある。ストレージメモリはファイル構造を管理しているために、書き込み動作を中断すると、ファイル構造がこわれ、ストレージメモリ内のすべてのファイルの読み書きができなくなる恐れがある。
【0003】
特に、装置(負荷)の電源のオフ時には注意が必要である。通常は、装置(負荷)の電源スイッチで電源をオン/オフする。したがって、電源スイッチの操作によって、たとえば、電源オフの操作をした場合、ファイル書き込み処理を完了するまでは装置(負荷)の電源を維持し、ファイル書き込み処理が終わってから電源を切るような動作をする。
【0004】
ところが、装置(負荷)の入力電源が停電した場合は、突然に電源が切れる。そのため、ストレージメモリへのファイルの書き込み中であった場合、書き込み処理が強制的に中断され、ファイル構造が壊れる恐れがある。
【0005】
この対策としては、電源のバックアップしか方法がない。その電源バックアップ方法には、二次電池による方法と、コンデンサによる方法とが知られている。
【0006】
二次電池による方法では、電池の定期的な保守、交換が必要となる。そのため、短時間の電源バックアップでは、コンデンサによる電源バックアップが有利になる。しかしながら、コンデンサによる方法では、バックアップする電力が大きくなると、コンデンサの静電容量も大きくなり、コスト、及び容積が問題になる。したがって、いかにコンデンサの静電容量及び容積を小さくするかが、課題となっていた。
【0007】
コンデンサによる電源バックアップ回路は、従来から種々提案されている。
【0008】
例えば、特開2007−244109公報(特許文献1)は、容量の小さいコンデンサを用いても所定時間の瞬断に耐えられる、小型の「定電圧回路」を提案している。
【0009】
図6は、特許文献1に開示された定電圧回路(電源バックアップ回路)10の構成を示すブロック図である。
【0010】
図6に示す定電圧回路10は、所定の電圧を負荷17に出力する直流電源11と、この直流電源11に接続されて電流を供給され電圧を昇圧して一定電流を出力する昇圧定電流充電回路12と、この昇圧定電流充電回路12の出力を供給されるバックアップコンデンサ13と、直流電源11の電源出力電圧が所定の電圧より低くなったとき、負荷17にバックアップコンデンサ13のバックアップ電圧を出力する切替回路14と、を有する。
【0011】
この定電圧回路10の出力端子15a、15bには、DC/DCコンバータ16を含む負荷17が接続されている。直流電源11の電圧が28Vで、負荷17の入力電圧範囲(許容電圧範囲)が16Vから50Vである。
【0012】
定電圧回路10の切替回路14は、直流電源11の出力電圧を検知する制御回路18と、この制御回路18により開閉され、バックアップコンデンサ13の正の出力端子に一端を接続され出力電圧を供給、切断するスイッチSWと、直流電源11の正の出力端子にそのアノードを接続されたダイオードCR1と、このダイオードCR1のカソードにそのカソードを接続されアノードをスイッチSWの他端に接続されたダイオードCR2とから成る。
【0013】
直流電源11の電圧を昇圧定電流充電回路12で、負荷17の電源電圧範囲(許容電圧範囲)の上限の電圧50Vまで昇圧して、バックアップコンデンサ13に充電をする。バックアップ時には、スイッチSWをオンにして、バックアップコンデンサ13を負荷17に接続して、バックアップコンデンサ13のバックアップ電圧が、負荷17の入力電源電圧範囲(許容電圧範囲)内にある時間だけ、負荷17の電源をバックアップする。
【0014】
バックアップコンデンサ13の充電電圧(バックアップ電圧)は電圧が高いほど、コンデンサの静電容量を小さくでき、バックアップコンデンサ13の容積も小型化できることが知られている。
【0015】
また、特開2007−282447公報(特許文献2)は、バックアップ用コンデンサの充電電圧(バックアップ電圧)を装置(負荷)の許容電圧範囲の上限値より高くしておき、バックアップ時には、バックアップ用コンデンサのバックアップ電圧を降圧用DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を用いて、電圧を下げて使用する方法を開示している。
【0016】
さらに、実開平7−39296号公報(特許文献3)は、直流でのエネルギー供給を目的とする「瞬時電圧低下補償装置」を開示している。この特許文献3に開示された瞬時電圧低下補償装置は、入力交流電圧を充電用交流電圧に変換する充電用変圧器と、この充電用交流電圧を充電用直流電圧に変換する整流素子と、充電用直流電圧を電気エネルギーとして充電(蓄積)するエネルギー蓄積用コンデンサと、このエネルギー蓄積用コンデンサに蓄積されたエネルギーを瞬時電圧低下時に必要に応じた電圧で放出する降圧用チョッパ回路と、を備えている。
【0017】
特許文献3において、エネルギー蓄積用コンデンサを、必要とする出力電圧の数倍のバックアップ電圧で充電している。該バックアップ電圧を、降圧用チョッパ回路を介して必要な出力電圧に降圧し、整流素子を介して瞬時電圧低下補償を必要とする装置(負荷)の内部直流回路と接続する。該出力電圧を該装置(負荷)の内部直流電圧の動作保証範囲の下限値に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−244109号公報([0010]〜[0014]、図1)
【特許文献2】特開2007−282447号公報([0015]〜[0017]、図1、図4)
【特許文献3】実開平7−39296号公報([0004]〜[0005]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上述した特許文献1〜3には、それぞれ、次に述べるような問題点がある。
【0020】
特許文献1では、バックアップコンデンサ13の充電電圧を装置(負荷)17の電源入力電圧(許容電圧範囲)の上限値より高くすると、電源バックアップ時に、装置(負荷)17を壊す恐れがあるので、バックアップコンデンサ13の充電電圧(バックアップ電圧)を装置(負荷)17の電源入力電圧(許容電圧範囲)の上限値より高くすることはできない。
【0021】
特許文献2では、バックアップ時にしか使用しないにもかかわらず、降圧用DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)が必要になる。この降圧用DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)は装置(負荷)の消費電力を担うことになるので、例えば装置(負荷)の消費電力が200Wの場合、降圧用DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)も200Wタイプとなり、コスト、容積から見て実用的ではない。
【0022】
特許文献3では、降圧用チョッパ回路から出力される出力電圧が、負荷の内部直流電圧の動作保証範囲の下限値に設定されているので、降圧用チョッパ回路でのチョッパ動作が終了した時点で、負荷に対する瞬時電圧低下の補償が完了してしまう。
【0023】
したがって、本発明の目的は、バックアップ時間をより長く設定できる、低コスト且つ小型の電源バックアップ回路およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の電源バックアップ回路は、外部電源からの入力直流電圧を入力端子で受け、出力端子から出力直流電圧を負荷へ供給する電源バックアップ回路であって、入力直流電圧を、出力直流電圧より高い電圧に昇圧して、昇圧電圧を出力する昇圧手段と;この昇圧手段により昇圧電圧まで充電されて、バックアップ電圧を出力するバックアップ用コンデンサと;このバックアップ用コンデンサと出力端子との間に挿入されて、バックアップ用コンデンサの放電時に、バックアップ電圧を、出力直流電圧まで下げる降圧チョッパ回路であって、第1のスイッチング手段を含む降圧チョッパ回路と;入力端子と出力端子との間に挿入された第2のスイッチング手段と;入力直流電圧、出力直流電圧、およびバックアップ電圧を監視して、第1および第2のスイッチング手段のオン/オフを制御する制御部と;を備える。制御部は、入力直流電圧が負荷の許容電圧範囲の下限値より下がったとき、第2のスイッチング手段をオフとする。制御部は、入力直流電圧が許容電圧範囲内にあるとき、第1のスイッチング手段をオフとし、入力直流電圧が許容電圧範囲の下限値より下がった時に、第1のスイッチング手段をチョッパ動作させて、負荷へ許容電圧範囲の下限値より高く且つ上限値より低い出力直流電圧を供給し、バックアップ電圧が出力直流電圧に等しくなると、第1のスイッチング手段をオン状態とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、バックアップ時間をより長く設定できる、低コスト且つ小型の電源バックアップ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例による電源バックアップ回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した電源バックアップ回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本発明の第1の実施例の第1の変形例による電源バックアップ回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施例の第2の変形例による電源バックアップ回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施例による電源バックアップ回路の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の電源バックアップ回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
先ず、本発明の特徴について説明する。
【0028】
本発明は、装置(負荷)の電源において、突然の電源の瞬断、または停電において、コンデンサを用いて短時間の電源バックアップをする場合で、コンデンサの静電容量を、従来より小さくできることを特徴とした電源バックアップ回路である。
【0029】
本発明による電源バックアップ回路は、外部電源の定格電圧が12Vで、外部電源の電圧変動範囲が10Vから14Vの外部電源に、装置入力電源の定格電圧が12V、装置の動作可能な電源電圧範囲(許容電圧範囲)が10Vから14Vの装置(負荷)が接続され、外部電源が瞬断、または停電したとき、短時間、例えば0.1秒程度だけ装置(負荷)の電源をバックアップするために、バックアップ用コンデンサを用いる電源バックアップ回路である。外部電源からの入力直流電圧をDC/DCコンバータで昇圧し、負荷の許容電圧範囲の上限値より高い昇圧電圧をバックアップ用コンデンサにバックアップ電圧として充電しておく。バックアップ時には、降圧チョッパ回路で、バックアップ用コンデンサに蓄積されたバックアップ電圧を、負荷の許容電圧範囲の下限値より高く且つ上限値より低い出力直流電圧まで降圧して電源のバックアップを行う。そして、バックアップ電圧が出力直流電圧になると、降圧チョッパ回路の第1のスイッチング手段をオン状態とする。
【0030】
これにより、バックアップ時間を長く設定することができる。
【実施例1】
【0031】
図1を参照して、本発明の第1の実施例による電源バックアップ回路(バックアップ電源)100について説明する。
【0032】
図1において、電源バックアップ回路100は、外部電源からの入力直流電圧VINを入力端子100aで受けて、出力端子100bから出力直流電圧VOUTを負荷である装置200へ供給する回路である。尚、より正確に述べると、図1に示されるように、電源バックアップ回路100は、接地端子100cを持つ。そして、入力端子100aと接地端子100cとの間に入力直流電圧VINが印加され、出力端子100bと接地端子100cとの間から出力電圧VOUTが負荷(装置)200へ供給される。
【0033】
図示の電源バックアップ回路100は、DC/DCコンバータ101と、電流制限回路102と、逆流防止用ダイオード103と、バックアップ用コンデンサ104と、第1のFET105と、コイル106と、コンデンサ107と、ダイオード108と、第2のFET109と、制御部110と、から構成されている。
【0034】
入力端子100aにDC/DCコンバータ101の入力端が接続され、DC/DCコンバータ101の出力端に電流制限回路102の入力端が接続されている。電流制限回路102の出力端には逆流防止用ダイオード103を経由して、バックアップ用コンデンサ104の一端が接続されている。バックアップ用コンデンサ104の他端は、接地端子100cに接続されている。
【0035】
バックアップ用コンデンサ104には、第1のFET105、ダイオード108、コイル106、及びコンデンサ107が接続されている。第1のFET105、ダイオード108、コイル106、及びコンデンサ107は、降圧チョッパ回路120を形成している。降圧チョッパ回路120の出力端は、出力端子100bに接続されている。
【0036】
DC/DCコンバータ101は、入力直流電圧VINを、出力直流電圧VOUTよりも高い電圧に昇圧して、昇圧電圧を出力する昇圧手段として動作する。バックアップ用コンデンサ104は、昇圧手段(DC/DCコンバータ)101により上記昇圧電圧まで充電されて、バックアップ電圧VBAUを出力する。
【0037】
降圧チョッパ回路120は、バックアップ用コンデンサ104と出力端子100bとの間に挿入されている。降圧チョッパ回路120は、バックアップ用コンデンサ104の放電時に、バックアップ電圧VBAUを、出力直流電圧VOUTまで下げる回路である。降圧チョッパ回路120は、第1のスイッチング手段としての第1のFET105を含む。
【0038】
詳述すると、第1のFET105は、NチャネルMOS形FETから成る。第1のFET105のドレインは、バックアップ用コンデンサ104の一端(逆流防止用ダイオード103のカソード)に接続されている。第1のFET105のソースは、コイル106の一端に接続されている。コイル106の他端は出力端子100bに接続されている。コンデンサ107は、出力端子100bと接地端子100cとの間に挿入されている。ダイオード108のアノードは、接地端子100cに接続され、ダイオード108のカソードは、第1のFET105のソースに接続されている。
【0039】
また、外部電源は、入力端子100aから第2のFET109を通して、出力端子100bに接続され、出力端子100bは、装置(負荷)200の装置入力電源に接続されている。すなわち、第2のFET109は、入力端子100aと出力端子100bとの間に挿入された第2のスイッチング手段として働く。詳述すると、第2のFET109も、NチャネルMOS形FETから成る。第2のFET109のドレインは入力端子100aに接続され、第2のFET109のソースは出力端子100bに接続されている。
【0040】
制御部110は、外部電源からの入力直流電圧VIN、装置200への出力直流電圧VOUT、及びバックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧VBAUを監視し、後述するように、第2のFET109及び第1のFET105のゲート電圧を制御して、第2のFET109及び第1のFET105のオン/オフ制御を行う。制御部110は、第1の制御信号COを第1のFET105のゲートへ供給し、第2の制御信号COを第2のFET109へ供給する。
【0041】
図示の例において、外部電源から入力端子100aに供給される入力直流電圧VINの規定電圧(定格電圧)は、12Vであるが、10V〜14Vの間の電圧変動範囲がある。同様に、出力端子100bから装置(負荷)200へ供給される出力直流電圧VOUT(装置入力電源)の規定電圧(定格電圧)は、12Vであるが、10V〜14Vの間の許容電圧範囲(動作可能な電源電圧範囲)がある。
【0042】
後述するように、入力直流電圧VINが負荷(装置)200の許容電圧範囲(10V〜14V)の下限値より下がったとき、制御部110は、第2のFET109をオフするような第2の制御信号COを、第2のFET109のゲートへ供給する。
【0043】
一方、入力直流電圧VINが許容電圧範囲(10V〜14V)内にあるとき、制御部110は、第1のFET105のオフとするような第1の制御信号COを、第1のFET105のゲートへ供給する。入力直流電圧VINが許容電圧範囲(10V〜14V)の下限値より下がった時に、制御部110は、第1のFET105をチョッパ動作させるような第1の制御信号COを、第1のFET105のゲートへ供給して、負荷(装置)200へ許容電圧範囲(10V〜14V)の下限値よりも高く且つ上限値よりも低い出力直流電圧VOUTを供給させる。そして、バックアップ電圧VBAUが出力直流電圧VOUTに等しくなると、制御部110は、第1のFET105をオン状態とするような第1の制御信号COを、第1のFET105のゲートへ供給する。
【0044】
尚、図1には記載していないが、第1のFET105及び第2のFET109のソース、ドレイン間に寄生ダイオードが存在する場合がある。
【0045】
第1のFET105の寄生ダイオードによって、バックアップ用コンデンサ104の充電時において、出力直流電圧VOUTからの回り込みでバックアップ用コンデンサ104を充電することになる。しかしながら、ダイオード103と第1のFET105の寄生ダイオードがダイオードオア回路を形成しているので、電流の逆流は発生せず、第1のFET105の寄生ダイオードの対策は不要である。
【0046】
次に、図1に示す電源バックアップ回路(バックアップ電源)100の動作について、図2に示すタイムチャートを使用して説明する。
【0047】
外部電源がオンになると、入力直流電圧VINとして規定電圧(定格電圧)である12Vが、入力端子100aと接地端子100cとの間に印加される。制御部110は、入力直流電圧VINが立ち上がったことにより、第2のFET109のゲート電圧(第2の制御信号CO)を高くして、第2のFET109をオンにする。第2のFET109のソースには、降圧チョッパ回路120のコンデンサ107が接続されているので、コンデンサ107の充電が行われる。この充電電流は、電源投入に伴う突入電流になるので、制御部110は、第2のFET109のゲート電圧(第2の制御信号CO)をゆっくりと上昇させ、突入電流を防止する。
【0048】
また、外部電源が投入されたことにより、DC/DCコンバータ101により、外部電源からの12Vの入力直流電圧VINを40Vの昇圧電圧に昇圧し、バックアップ用コンデンサ104を充電する。このとき、制御部110は、第1のFET105のゲート電圧(第1の制御信号CO)を低くして、第1のFET105をオフにしておく。バックアップ用コンデンサ104の充電電流が大きくならないように、電流制限回路102により、充電電流を制限する。時間が経過すると、バックアップ用コンデンサ104には40Vの昇圧電圧がバックアップ電圧VBAUとして充電される。
【0049】
バックアップ用コンデンサ104に40Vのバックアップ電圧VBAUが充電された状態において、T1の時刻に停電がおきたとする。この場合、入力直流電圧VINは急激に低下し、それにつれて出力直流電圧VOUTも急激に低下する。出力直流電圧VOUTが装置(負荷)200の許容電圧範囲の下限値10Vに達した時点T2で、制御部110は、第2のFET109のゲート電圧(第2の制御信号CO)を急激に低下させ、第2のFET109を直ちにオフにする。
【0050】
また、制御部110は、第1のFET105を降圧チョッパ回路120としての動作を開始し、電源のバックアップ状態になる。バックアップ状態になった直後はバックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧VBAUは40Vの高い電圧になっているので、制御部110は、第1のFET105のゲート波形のデューティ比を小さくすることで、バックアップ用コンデンサ104の40Vのバックアップ電圧VBAUを出力直流電圧VOUTに等しい12Vまで下げる。
【0051】
バックアップ用コンデンサ104の放電に伴って、バックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧VBAUは低下していくが、第1のFET105のゲート波形のデューティ比を制御部110で制御することで、出力直流電圧VOUTは、略12Vに保たれる。
【0052】
バックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧VBAUが、装置(負荷)200の定格電圧(規定電圧)(すなわち、出力直流電圧VOUT)になった時点T3において、制御部110は、第1のFET105のチョッパの動作をやめさせ、第1のFET105を連続オンの状態にする。この状態では、バックアップ用コンデンサ104は装置(負荷)200の電源入力端子に接続された状態になるので、バックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧VBAUが、装置(負荷)200の許容電圧範囲(10V〜14V)の下限値(すなわち、この例では10V)になる時点T4まで、電源がバックアップされ、装置(負荷)200はT4の時点まで、動作を続けることができる。
【0053】
次に、バックアップ用コンデンサの静電容量について、従来の電源バックアップ回路10(図6)と、本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100とについて具体例を掲げて、比較説明する。なお、装置(負荷)200の電源電圧範囲(許容電圧範囲)は、10Vから14Vまでの間とする。バックアップ用コンデンサの静電容量Cは、次式で表される。
【0054】
C=2・P・t/(Va−Vb)
ここで、Pはバックアップする電力(例として200Wとする)、tはバックアップする時間(例として0.1秒とする)、Vaはバックアップ開始時のコンデンサの電圧、Vbはバックアップ終了時のコンデンサの電圧を表す。
【0055】
従来の電源バックアップ回路10(図6)では、装置(負荷)17の電源電圧範囲(許容電圧範囲)が10Vから14Vに対応するため、バックアップ用コンデンサ13の電圧は14Vから10Vまで放電するので、(Va−Vb)は4Vとなり、Cは2.5Fと計算される。
【0056】
これに対して、本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100では、バックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧は40Vから10Vまで放電するので、(Va−Vb)は30Vとなり、Cは0.044Fと計算される。
【0057】
コンデンサの静電容量は、従来の電源バックアップ回路10(図6)と比較して、本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100は、0.0178倍である。ただし、コンデンサの耐圧は、従来の電源バックアップ回路10(図6)が14Vに対して、本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100では40Vとなる為、本発明の第1の実施例の方が2.9倍の耐圧を必要とする。
【0058】
コンデンサの容積は静電容量及び耐圧に比例して大きくなるので、従来の電源バックアップ回路10(図6)のバックアップ用コンデンサ13の容積を1とした場合、本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100のバックアップ用コンデンサ104の容積は、0.0178倍×2.9倍=0.05倍となる。したがって、従来の電源バックアップ回路10(図6)のバックアップ用コンデンサ13の容積に対して、本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100のバックアップ用コンデンサ104の容積は約1/20の容積となる。
【0059】
DC/DCコンバータ101は、バックアップ用コンデンサ104を充電するためのもので、上記の例では0.044Fを40Vまで充電することになる。充電時間を1分とした場合、充電電流は約30mAとなり、DC/DCコンバータ101の電力は、40V×30mA=1.2Wとなって、小型のDC/DCコンバータで良いことになる。
【0060】
ストレージメモリを実装している情報機器は、必ず停電対策が必要となる。ストレージメモリの保護対策は短時間の電源バックアップ、例えば0.1秒程で良いので、二次電池による電源バックアップよりバックアップ用コンデンサ104による電源バックアップが有効である。
【0061】
また、電源を切る場合、何らかの後処理が必要な機器であって、短時間の停電対策が必要な場合も、バックアップ用コンデンサ104による電源バックアップが有効である。
【0062】
以上説明したように、本発明の第1の実施例に係る電源バックアップ回路100においては、以下に記載するような効果を奏する。
【0063】
バックアップ用コンデンサ104の充電電圧(バックアップ電圧)を高くすることにより、バックアップ用コンデンサ104の静電容量を小さくすることができ、電源バックアップ回路100の小型化が可能となる。
【0064】
また、本発明の第1の実施例では、バックアップ用コンデンサ104のバックアップ電圧を降圧するためのDC/DCコンバータを使用せず、バックアップ電源の切り替え用の第1のFET105を降圧チョッパ回路120と兼用することで、低コスト、且つ小型の電源バックアップ回路100を提供することができる。
【0065】
さらに、チョッパ動作時に降圧チョッパ回路120から出力される出力直流電圧VOUTを、負荷(装置)200の許容電圧範囲の下限値より高く且つ上限値より低い電圧に設定し、バックアップ電圧VBAUが出力直流電圧VOUTに等しくなったときに、降圧チョッパ回路120の第1のFET(第1のスイッチング手段)105をオン状態にしているので、バックアップ時間を長く設定することができる。
【0066】
[変形例1]
次に、図3を参照して、本発明の第1の実施例の第1の変形例に係る電源バックアップ回路100Aについて説明する。
【0067】
図示の電源バックアップ回路100Aは、後述するように、ダイオード111が追加されている点を除いて、図1に示した電源バックアップ回路100と同様の構成を有し、動作をする。したがって、図1に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付し、以下では説明の簡略化のために相違点についてのみ説明する。
【0068】
第2のFET109に寄生ダイオードが存在する場合は、寄生ダイオードを通して、電流が逆流しないような対策が必要になる。
【0069】
そこで、図3に示す電源バックアップ回路100Aでは、第2のFET109と直列にダイオード111を追加する対策を施している。
【0070】
ダイオード111のアノードは、第2のFET109のソースに接続され、ダイオード111のカソードは、出力端子100bに接続されている。
【0071】
とにかく、ダイオード111は、第2のFET109の寄生ダイオードを通して電流が流れるのを防止する逆流防止手段として働く。
【0072】
[変形例2]
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施例の第2の変形例に係る電源バックアップ回路100Bについて説明する。
【0073】
図示の電源バックアップ回路100Bは、後述するように、第3のFET112が追加されている点を除いて、図1に示した電源バックアップ回路100と同様の構成を有し、動作をする。したがって、図1に示したものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付し、以下では説明の簡略化のために相違点についてのみ説明する。
【0074】
図3に示した電源バックアップ回路100Aでは、ダイオード111には装置(負荷)200の電源電流が流れるため、ダイオード111の順方向電圧降下によって、電力の損失が発生する。
【0075】
そこで、図4に示す電源バックアップ回路100Bでは、第2のFET109と逆に接続した第3のFET112を追加する対策を施している。
【0076】
第3のFET112は、NチャネルMOS形FETから成る。第3のFET112のソースは、第1のFET109のソースに接続され、第3のFET112のドレインは、出力端子100bに接続され、第3のFET112のゲートは、制御部110に接続されている。
【0077】
第3のFET112の寄生ダイオードは、図3のダイオード111と同じ働きをする。しかしながら、第3のFET112の寄生ダイオードに順方向電流が流れるとき、制御部110によって第3のFET112をオンにすることで、第3のFET112の寄生ダイオードの順方向電圧降下を小さくでき、電力損失を軽減できる。
【0078】
とにかく、第3のFET112は、制御部110によりオン/オフ制御され、第2のFET109の寄生ダイオードを通して電流が流れるのを防止する逆流防止手段として働く。
【実施例2】
【0079】
図5を参照して、本発明の第2の実施例による電源バックアップ回路(バックアップ電源)100Cについて説明する。
【0080】
図示の電源バックアップ回路100Cは、その基本的構成は、図1に示した電源バックアップ回路100と同様であるが、電源電圧がマイナスの場合に応用したものである。
【0081】
通信機器では電源電圧として、−48Vが多く使用されているので、図5に示した電源バックアップ回路100Cは、電源電圧が−48Vの実施例である。
【0082】
図5によると、バックアップ用コンデンサ104の充電電圧(バックアップ電圧)VBAUを、−100Vに設定し、装置(負荷)200の電源電圧範囲(許容電圧範囲)を−40Vからー56Vとしている。
【0083】
電源バックアップ回路100Cは、図1に示した本発明の第1の実施例の電源バックアップ回路100と同じ構成をとることができる。ただし、マイナス電源なので、ダイオード103、108の向きは逆になる。
【0084】
以上、実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、上述した実施例では、昇圧手段としてDC/DCコンバータ101を用いているが、それに限定されないのは勿論である。また、スイッチング手段として、FET105、109を使用しているが、他のスイッチング手段を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
コンデンサによる電源バックアップが必要なすべての機器は、本発明を利用できる。特に、大電力の電源バックアップが必要な機器では、バックアップ用コンデンサの小型化による効果が大きく、非常に大きな利用価値がある。
【符号の説明】
【0086】
100,100A,100B,100C ・・・ 電源バックアップ回路(バックアップ電源)
100a ・・・ 入力端子
100b ・・・ 出力端子
100c ・・・ 接地端子
101 ・・・ DC/DCコンバータ(昇圧手段)
102 ・・・ 電流制限回路
103 ・・・ 逆流防止用ダイオード
104 ・・・ バックアップ用コンデンサ
105 ・・・ 第1のFET(第1のスイッチング手段)
106 ・・・ コイル
107 ・・・ コンデンサ
108 ・・・ ダイオード
109 ・・・ 第2のFET(第2のスイッチング手段)
110 ・・・ 制御部
111 ・・・ ダイオード(逆流防止手段)
112 ・・・ 第3のFET(逆流防止手段)
120 ・・・ 降圧チョッパ回路
200 ・・・ 装置(負荷)
IN ・・・ 入力電圧
OUT ・・・ 出力電圧
BAU ・・・ バックアップ電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの入力直流電圧を入力端子で受け、出力端子から出力直流電圧を負荷へ供給する電源バックアップ回路であって、
前記入力直流電圧を、前記出力直流電圧より高い電圧に昇圧して、昇圧電圧を出力する昇圧手段と、
該昇圧手段により前記昇圧電圧まで充電されて、バックアップ電圧を出力するバックアップ用コンデンサと、
該バックアップ用コンデンサと前記出力端子との間に挿入されて、前記バックアップ用コンデンサの放電時に、前記バックアップ電圧を、前記出力直流電圧まで下げる降圧チョッパ回路であって、第1のスイッチング手段を含む前記降圧チョッパ回路と、
前記入力端子と前記出力端子との間に挿入された第2のスイッチング手段と、
前記入力直流電圧、前記出力直流電圧、および前記バックアップ電圧を監視して、前記第1および第2のスイッチング手段のオン/オフを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記入力直流電圧が前記負荷の許容電圧範囲の下限値より下がったとき、前記第2のスイッチング手段をオフとし、
前記制御部は、前記入力直流電圧が前記許容電圧範囲内にあるとき、前記第1のスイッチング手段をオフとし、前記入力直流電圧が前記許容電圧範囲の下限値より下がった時に、前記第1のスイッチング手段をチョッパ動作させて、前記負荷へ前記許容電圧範囲の下限値より高く且つ上限値より低い前記出力直流電圧を供給し、前記バックアップ電圧が前記出力直流電圧に等しくなると、前記第1のスイッチング手段をオン状態とする、ことを特徴とする電源バックアップ回路。
【請求項2】
前記昇圧手段と前記バックアップ用コンデンサとの間に配置されて、前記バックアップ用コンデンサへの充電電流を制限する電流制限回路を更に有する、請求項1に記載の電源バックアップ回路。
【請求項3】
前記電流制限回路と前記バックアップ用コンデンサとの間に挿入された逆流防止用ダイオードを更に有する、請求項2に記載の電源バックアップ回路。
【請求項4】
前記昇圧手段は、DC/DCコンバータから構成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源バックアップ回路。
【請求項5】
前記第1乃至第2のスイッチング手段が、それぞれ、第1乃至第2のFETから構成される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電源バックアップ回路。
【請求項6】
前記第2のFETと前記出力端子との間に挿入されて、前記第2のFETの寄生ダイオードを通して電流が逆流するのを防止する逆流防止手段を更に有する、請求項5に記載の電源バックアップ回路。
【請求項7】
前記逆流防止手段がダイオードからなる、請求項6に記載の電源バックアップ回路。
【請求項8】
前記逆流防止手段が、前記制御部によりオン/オフ制御される第3のFETからなる、請求項6に記載の電源バックアップ回路。
【請求項9】
外部電源からの入力直流電圧を入力端子で受け、出力端子から出力直流電圧を負荷へ供給する電源バックアップ回路の制御方法であって、前記電源バックアップ回路は、
前記入力直流電圧を、前記出力直流電圧より高い電圧に昇圧して、昇圧電圧を出力する昇圧手段と、
該昇圧手段により前記昇圧電圧まで充電されて、バックアップ電圧を出力するバックアップ用コンデンサと、
該バックアップ用コンデンサと前記出力端子との間に挿入されて、前記バックアップ用コンデンサの放電時に、前記バックアップ電圧を、前記出力直流電圧まで下げる降圧チョッパ回路であって、第1のスイッチング手段を含む前記降圧チョッパ回路と、
前記入力端子と前記出力端子との間に挿入された第2のスイッチング手段と、を備え、
前記制御方法は、前記入力直流電圧、前記出力直流電圧、および前記バックアップ電圧を監視して、前記第1および第2のスイッチング手段のオン/オフを制御する方法であって、
前記入力直流電圧が前記負荷の許容電圧範囲内にあるとき、前記第1のスイッチング手段をオフとし、
前記入力直流電圧が前記許容電圧範囲の下限値より下がったとき、前記第2のスイッチング手段をオフとすると共に、前記第1のスイッチング手段をチョッパ動作させて、前記負荷へ前記許容電圧範囲の下限値より高く且つ上限値より低い前記出力直流電圧を供給し、
前記バックアップ電圧が前記出力直流電圧に等しくなると、前記第1のスイッチング手段をオン状態とする、
ことを特徴とする電源バックアップ回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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