説明

電源回路

【課題】低損失で小型化が可能な電源回路を提供すること。
【解決手段】直流電圧と交流電圧との間の相互の変換を行う電源回路であって、直流電圧と交流電圧の大小に対応して区分される複数の区間の中の一部の区間において昇圧動作を行い、残りの区間において降圧動作を行う単相部分昇降圧インバータ1と、単相部分昇降圧インバータ1の制御を行う制御回路2とを備える。単相部分昇降圧インバータ1は、4つのスイッチング素子10、12、14、16、2つのACリアクトル20、22、コンデンサ30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧と交流電圧の双方向の変換を行う電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、昇降圧チョッパと単相インバータとを組み合わせて直流電圧と交流電圧との間の変換を行う電源回路が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。図14は、従来の電源回路の構成を示す図である。図14に示す電源回路は、昇降圧チョッパ100と単相インバータ110とを備える。昇降圧チョッパ100は、DCリアクトル101とスイッチング素子102、103と平滑用コンデンサ104、105とを含んで構成されている。単相インバータ110は、スイッチング素子111、112、113、114と平滑用コンデンサ105とを含んで構成されている。また、単相インバータ110には、ACリアクトル115、116と平滑用コンデンサ117が接続されている。直流電圧Edcから交流電圧eacへの変換は、図15に示すように、昇降圧チョッパ100で直流電圧Edcを交流電圧eacのピーク値よりも高い電圧Vdcに一旦昇圧した後、単相インバータ110でこの電圧Vdcを交流電圧eacに変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−79439号公報
【特許文献2】特開2006−158100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図14に示す従来の電源回路では、直流電圧Edcを一旦これより高い電圧Vdcに変換しているため、この昇圧に伴う損失が大きいという問題があった。また、昇降圧チョッパ100と単相インバータ110という2つの回路が必要であり、しかも、昇降圧チョッパ100にはDCリアクトル101が含まれるため、装置の小型化が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、低損失で小型化が可能な電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の電源回路は、直流電圧と交流電圧との間の相互の変換を行う電源回路であって、直流電圧と交流電圧の絶対値の比較における大小関係に対応して区分される電圧波形の複数の区間の中の、交流電圧が直流電圧より高い区間において直流電圧を交流電圧に昇圧する動作あるいは交流電圧を直流電圧に降圧する動作を行い、残りの区間において直流電圧を交流電圧に降圧する動作あるいは交流電圧を直流電圧に昇圧する動作を行う昇降圧インバータと、昇降圧インバータの制御を行う制御回路とを備えている。また、昇降圧インバータは、直流電圧が入出力される2つの直流端子と、交流電圧が入出力される2つの交流端子を有しており、一方の直流端子と2つの交流端子のそれぞれとの間に、第1のスイッチング素子とリアクトルの直列回路が接続され、他方の直流端子と2つの交流端子のそれぞれとの間に、第2のスイッチング素子が接続され、2つの交流端子の間にコンデンサが接続されている。
【0007】
交流電圧のピーク値よりも高い直流電圧に一旦昇圧する必要がないため、変換時の損失を低減することができる。また、DCリアクトルが含まれない昇降圧インバータのみで直流電圧と交流電圧との間の相互の変換を行っているため、装置の小型化が可能となる。
【0008】
また、上述した制御回路は、直流電圧よりも交流電圧の方が高いときに、一方の直列回路に含まれる第1のスイッチング素子をオンし、他方の直列回路に含まれる第1のスイッチング素子をオフした状態で、他の2つの第2のスイッチング素子を交互にオンオフ制御することにより、昇降圧インバータに、直流電圧を交流電圧に昇圧する動作あるいは交流電圧を直流電圧に降圧する動作を行わせている。また、上述した制御回路は、直流電圧よりも交流電圧の方が低いときに、一方の直列回路に含まれる第1のスイッチング素子をオンし、一方の第2のスイッチング素子をオフした状態で、他方の直列回路に含まれる第1のスイッチング素子と他方の第2のスイッチング素子とを交互にオンオフ制御することにより、昇降圧インバータに、直流電圧を交流電圧に降圧する動作あるいは交流電圧を直流電圧に昇圧する動作を行わせている。このように、オンオフ制御(PWM制御)するスイッチング素子を切り替えることにより、昇圧動作と降圧動作を1つの昇降圧インバータで行うことができる。
【0009】
また、上述した制御回路は、デューティ比が変更可能なPWM信号を生成するPWM信号生成部と、PWM信号生成部から出力されるPWM信号の論理を反転するインバータ回路とを備え、交互にオンオフ制御する2つのスイッチング素子の一方をPWM信号生成部の出力信号に基づいてオンオフ制御し、他方をインバータ回路の出力信号に基づいてオンオフ制御することが望ましい。これにより、1つのPWM信号を用いて2つのスイッチング素子を交互にオンオフすることができ、構成を簡略化することができる。
【0010】
また、上述した制御回路は、変換先となる直流電圧あるいは交流電圧が電圧指令値として与えられたときに、この電圧指令値と実際の直流電圧あるいは交流電圧との差に基づいて、リアクトルに流す電流を示す電流指令値を生成する電流指令値生成部と、電流指令値に基づいて、リアクトルの両端電圧を示す電圧指令値を生成する電圧指令値生成部と、電圧指令値に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成部とを備えることが望ましい。これにより、変換後の電圧を電圧指令値として与えることで直流電圧と交流電圧の間のパワーフローを任意に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態の電源回路の全体構成を示す図である。
【図2】電源回路の入出力電圧波形を示す図である。
【図3】直流電圧を交流電圧に変換する場合の電圧の関係を示す図である。
【図4】正極性の直流電圧を降圧して交流電圧に変換する動作を行う場合のインバータの状態と制御回路との関係を示す図である。
【図5】図4に示すインバータの等価回路図である。
【図6】正極性の直流電圧を昇圧して交流電圧に変換する動作を行う場合のインバータの状態と制御回路との関係を示す図である。
【図7】図6に示すインバータの等価回路図である。
【図8】負極性の直流電圧を降圧して交流電圧に変換する動作を行う場合のインバータの状態と制御回路との関係を示す図である。
【図9】図8に示すインバータの等価回路図である。
【図10】負極性の直流電圧を昇圧して交流電圧に変換する動作を行う場合のインバータの状態と制御回路との関係を示す図である。
【図11】図10に示すインバータの等価回路図である。
【図12】直流電圧を所望の交流電圧に変換する制御回路の詳細な構成を示す図である。
【図13】交流電圧を所望の直流電圧に変換する制御回路の詳細な構成を示す図である。
【図14】従来の電源回路の構成を示す図である。
【図15】従来の電源回路の入出力電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電源回路を適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施形態の電源回路の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の電源回路は、単相部分昇降圧インバータ(以後、単に「インバータ」と称する、)1と制御回路2とを備える。インバータ1は、4つのスイッチング素子10、12、14、16、2つのACリアクトル20、22、コンデンサ30を備えている。このインバータ1には、2つの直流端子a、bと2つの交流端子c、dを有する。一方の直流端子aと一方の交流端子cとの間にはスイッチング素子10とACリアクトル20の直列回路が接続されている。一方の直流端子aと他方の交流端子dとの間にはスイッチング素子14とACリアクトル22の直列回路が接続されている。これらのスイッチング素子10、14が第1のスイッチング素子に対応する。また、他方の直流端子bと一方の交流端子cとの間にはスイッチング素子12が接続されている。他方の直流端子bと他方の交流端子dとの間にはスイッチング素子16が接続されている。これらのスイッチング素子12、16が第2のスイッチング素子に対応する。2つの交流端子c、dの間にはコンデンサ30が接続されている。また、2つのACリアクトル20、22は、磁気的に結合されている。制御回路2は、インバータ1に含まれる4つのスイッチング素子10、12、14、16をオンオフ制御する。
【0014】
本実施形態の電源回路はこのような構成を有しており、次に、その概略的な動作について説明する。図2は、電源回路1の入出力電圧波形を示す図である。図2において、Edc、−Edcは、直流端子a、b間の電圧を、eacは交流端子c、d間の電圧をそれぞれ示している。本実施形態の電源回路では、例えば、直流電圧Edcを交流電圧eacに変換する場合に、直流電圧Edcを交流電圧eacのピーク値よりも高い電圧Vdcに一旦変換することなく直接交流電圧eacに変換している。同様に、交流電圧eacを直流電圧Edcに変換する場合も、交流電圧eacをそのピーク値よりも高い電圧Vdcに一旦変換することなく直接直流電圧Edcに変換している。なお、上記の電圧の高低は、直流電圧Edcと交流電圧eacのそれぞれの絶対値を比較した場合の大小関係を示している。
【0015】
図3は、直流電圧Edcを交流電圧eacに変換する場合の電圧の関係を示す図である。図3において、Aは正極性の直流電圧Edcを降圧して交流電圧eacに変換する区間を、Bは正極性の直流電圧Edcを昇圧して交流電圧eacに変換する区間を、Cは負極性の直流電圧−Edcを降圧して交流電圧eacに変換する区間を、Dは負極性の直流電圧−Edcを昇圧して交流電圧eacに変換する区間をそれぞれ示している。以下では、これらの各区間に対応する動作を説明する。なお、図3では、直流電圧Edcを交流電圧eacに変換する場合を示したが、反対に交流電圧eacを直流電圧Edcに変換する場合についても同様であり、同じ4つの区間に分けて考えることができる。但し、この場合には昇圧と降圧の関係が反対になる。
【0016】
(1)正極性の直流電圧Edcを降圧して交流電圧eacに変換する動作(区間A)
図4は、正極性の直流電圧Edcを降圧して交流電圧eacに変換する動作を行う場合のインバータ1の状態と制御回路2との関係を示す図である。図4に示すインバータ1では、スイッチング素子10が区間Aの間オンされ、スイッチング素子12がオフされるとともに、スイッチング素子14、16が互いのオンオフタイミングが反転するようにオンオフ制御(PWM制御)される。
【0017】
このオンオフ制御を行う駆動信号は、制御回路2に備わった三角波発生回路50、電圧比較器52、インバータ回路54で生成される。三角波発生回路50は、下限値が0V、上限値が1Vの三角波信号を発生する。電圧比較器52は、マイナス入力端子に三角波発生回路50から出力される三角波信号vTRが入力され、プラス入力端子に変調率0〜1の指令値を示す0〜1Vの変調率指令値信号αBU*が入力され、これら2つの信号の電圧の大小に応じてハイ/ローレベルとなる駆動信号(PWM信号)を出力する。スイッチング素子16は、この駆動信号に応じて、具体的にはこの駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。一方、スイッチング素子14は、この駆動信号をインバータ回路54によって反転した反転駆動信号に応じて、具体的にはこの反転駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。
【0018】
図5は、図4に示すインバータ1の等価回路図である。図5に示す等価回路図では、2つのACリアクトル20、22が1つになってACリアクトル20’で表されている。図5に示す等価回路図からも明らかなように、上述したインバータ1は、降圧インバータとして動作し、変調率指令値信号αBU*が1Vに近いほど(変調率が1に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は直流電圧Edcに近い値となる。反対に、変調率指令値信号αBU*が0Vに近いほど(変調率が0に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は0Vに近い値となる。このようにして、図3に示す区間Aに対応する正極性の降圧動作が行われる。
【0019】
(2)正極性の直流電圧Edcを昇圧して交流電圧eacに変換する動作(区間B)
図6は、正極性の直流電圧Edcを昇圧して交流電圧eacに変換する動作を行う場合のインバータ1の状態と制御回路2との関係を示す図である。図6に示すインバータ1では、スイッチング素子10が区間Bの間オンされ、スイッチング素子14がオフされるとともに、スイッチング素子12、16が互いのオンオフタイミングが反転するようにオンオフ制御(PWM制御)される。
【0020】
このオンオフ制御を行う駆動信号は、制御回路2に備わった三角波発生回路50、電圧比較器52、インバータ回路54で生成される。電圧比較器52は、マイナス入力端子に三角波発生回路50から出力される三角波信号vTRが入力され、プラス入力端子に変調率0〜1の指令値を示す0〜1Vの変調率指令値信号αBO*が入力され、これら2つの信号の電圧の大小に応じてハイ/ローレベルとなる駆動信号(PWM信号)を出力する。スイッチング素子12は、この駆動信号に応じて、具体的にはこの駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。一方、スイッチング素子16は、この駆動信号をインバータ回路54によって反転した反転駆動信号に応じて、具体的にはこの反転駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。
【0021】
図7は、図6に示すインバータ1の等価回路図である。図7に示す等価回路図では、2つのACリアクトル20、22が1つになってACリアクトル20’で表されている。図7に示す等価回路図からも明らかなように、上述したインバータ1は、昇圧インバータとして動作し、変調率指令値信号αBO*が0Vに近いほど(変調率が0に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は直流電圧Edcに近い値となる。反対に、変調率指令値信号αBU*が1Vに近いほど(変調率が1に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は直流電圧Edcよりも高い値となる。このようにして、図3に示す区間Bに対応する正極性の昇圧動作が行われる。
【0022】
(3)負極性の直流電圧−Edcを降圧して交流電圧eacに変換する動作(区間C)
図8は、負極性の直流電圧−Edcを降圧して交流電圧eacに変換する動作を行う場合のインバータ1の状態と制御回路2との関係を示す図である。図8に示すインバータ1では、スイッチング素子14が区間Cの間オンされ、スイッチング素子16がオフされるとともに、スイッチング素子10、12が互いのオンオフタイミングが反転するようにオンオフ制御(PWM制御)される。
【0023】
このオンオフ制御を行う駆動信号は、制御回路2に備わった三角波発生回路50、電圧比較器52、インバータ回路54で生成される。電圧比較器52は、マイナス入力端子に三角波発生回路50から出力される三角波信号vTRが入力され、プラス入力端子に変調率0〜1の指令値を示す0〜1Vの変調率指令値信号αBU*が入力され、これら2つの信号の電圧の大小に応じてハイ/ローレベルとなる駆動信号(PWM信号)を出力する。スイッチング素子12は、この駆動信号に応じて、具体的にはこの駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。一方、スイッチング素子10は、この駆動信号をインバータ回路56によって反転した反転駆動信号に応じて、具体的にはこの反転駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。
【0024】
図9は、図8に示すインバータ1の等価回路図である。図9に示す等価回路図では、2つのACリアクトル20、22が1つになってACリアクトル22’で表されている。図9に示す等価回路図からも明らかなように、上述したインバータ1は、降圧インバータとして動作し、変調率指令値信号αBU*が1Vに近いほど(変調率が1に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は直流電圧Edcの極性を反転した電圧−Edcに近い値となる。反対に、変調率指令値信号αBU*が0Vに近いほど(変調率が0に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は極性が直流電圧Edcとは反対であって0Vに近い値となる。このようにして、図3に示す区間Cに対応する負極性の降圧動作が行われる。
【0025】
(4)負極性の直流電圧−Edcを昇圧して交流電圧eacに変換する動作(区間D)
図10は、負極性の直流電圧−Edcを昇圧して交流電圧eacに変換する動作を行う場合のインバータ1の状態と制御回路2との関係を示す図である。図10に示すインバータ1では、スイッチング素子14が区間Dの間オンされ、スイッチング素子10がオフされるとともに、スイッチング素子12、16が互いのオンオフタイミングが反転するようにオンオフ制御(PWM制御)される。
【0026】
このオンオフ制御を行う駆動信号は、制御回路2に備わった三角波発生回路50、電圧比較器52、インバータ回路54で生成される。電圧比較器52は、マイナス入力端子に三角波発生回路50から出力される三角波信号vTRが入力され、プラス入力端子に変調率0〜1の指令値を示す0〜1Vの変調率指令値信号αBO*が入力され、これら2つの信号の電圧の大小に応じてハイ/ローレベルとなる駆動信号を出力する。スイッチング素子16は、この駆動信号に応じて、具体的にはこの駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。一方、スイッチング素子12は、この駆動信号をインバータ回路55によって反転した反転駆動信号に応じて、具体的にはこの反転駆動信号がハイレベルのときにオンされ、ローレベルのときにオフされる。
【0027】
図11は、図10に示すインバータ1の等価回路図である。図11に示す等価回路図では、2つのACリアクトル20、22が1つになってACリアクトル22’で表されている。図11に示す等価回路図からも明らかなように、上述したインバータ1は、昇圧インバータとして動作し、変調率指令値信号αBO*が1Vに近いほど(変調率が1に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は直流電圧Edcの極性を反転した電圧Edcに近い値となる。反対に、変調率指令値信号αBO*が0Vに近いほど(変調率が0に近いほど)、交流端子c、d間の電圧は極性が直流電圧Edcとは反対であって絶対値が電圧Edcより高い値となる。このようにして、図3に示す区間Dに対応する負極性の昇圧動作が行われる。
【0028】
このようにして、インバータ1に含まれるスイッチング素子10〜16のそれぞれのオンオフ制御を制御回路2によって行うことにより、直流電圧Edcに対して部分的な昇圧動作あるいは降圧動作を行い、直流電圧Edcを一旦高い電圧に昇圧することなく直接交流電圧eacに変換することができる。なお、反対に交流電圧eacを直流電圧Edcに変換する場合も基本的に同じであり、インバータ1に含まれるスイッチング素子10〜16のそれぞれのオンオフ制御を制御回路2によって行うことにより、交流電圧eacに対して部分的な昇圧動作あるいは降圧動作を行うことにより、交流電圧eacを一旦高い電圧に昇圧することなく直接直流電圧Edcに変換することができる。
【0029】
次に、制御回路2において行われる詳細な制御動作について説明する。図12は、直流端子a、bに印加された直流電圧Edcを所望の交流電圧eacに変換する制御回路2の詳細な構成を示す図である。なお、図12に示す構成では、制御回路2による制御を実施する際に必要な電流検出部32、33、電圧検出部34、36がインバータ1に追加されている。電流検出部32は、ACリアクトル20に流れるリアクトル電流iLPを検出する。電流検出部33は、ACリアクトル22に流れるリアクトル電流iLNを検出する。電圧検出部34は、直流端子a、b間の電圧Edcを検出する。電圧検出部36は、交流端子c、d間の電圧vacを検出する。なお、電圧検出部34は、直流電圧Edcを交流電圧eacに変換する動作では使用されないが、交流電圧eacを直流電圧Edcに変換する動作(後述する)で必要になるため、図12のインバータ1には含ませてある。
【0030】
図12に示すように、制御回路2は、電流指令値生成部70、加算器80、82、比例積分調節器86、変調率指令信号演算部88、三角波発生回路50、電圧比較器52、インバータ回路54、SWドライバ90を含んで構成されている。電流指令値生成部70は、加算器72、比例積分調節器74を含んで構成されている。変調率指令信号演算部88、三角波発生回路50、電圧比較器52がPWM信号生成部に、比例積分調節器86が電圧指令値生成部にそれぞれ対応する。
【0031】
上述したように、図1等に示したインバータ1を動作させる場合には、降圧時には変調率指令値信号αBU*を指定し、昇圧時には変調率指令値信号αBO*を指定する必要がある。そこで、まず、図5あるいは図7に示した等価回路を用いて電圧方程式を求めることにより、ACリアクトル20’の両端電圧vLと変調率指令値信号との関係を導出する。
【0032】
図5に示した降圧時の等価回路図を用いて電圧方程式を求まると、以下のようになる。
【0033】
αBU*dc=vL+|eac| ・・・(1)
ここで、vLはACリアクトル20’の両端電圧である。なお、図9に示した等価回路も基本的に同じ構成を有しており、電圧方程式も(1)式と同じになる。(1)式を変形すると、以下のようになる。
【0034】
L=αBU*dc−|eac| ・・・(2)
また、図7に示した昇圧時の等価回路を用いて電圧方程式を求めると、以下のようになる。
【0035】
dc+vL=(1−αBO*)|eac| ・・・(3)
なお、図11に示した等価回路も基本的に同じ構成を有しており、電圧方程式も(3)式と同じになる。(3)式を変形すると、以下のようになる。
【0036】
L=(1−αBO*)|eac|−Edc ・・・(4)
ところで、ACリアクトル20’のインダクタンスをLac、ACリアクトル20’に流れる電流をiLとすると、vLとiLとの間には、以下の関係がある。
【0037】
L=Lac(diL/dt) ・・・(5)
上述したように、変調率指令値信号αBU*あるいはαBO*を用いてvLを連続的に制御することができるとともに、iLを線形制御できることがわかる。図12に示す制御回路2において、加算器80よりも後段の構成は、iLを与えることにより、vLを取得し、さらにαBU*あるいはαBO*を取得するためのものである。
【0038】
すなわち、加算器80は、一方の入力端に入力される電流指令値iL*(後述する)から実際に電流検出部32、33によって検出された電流iL(電流検出部32によって検出された電流iLPと、電流検出部33によって検出された電流iLNとを加算器82で合成することにより電流iLが得られる)を減算した電流値(差分値)を比例積分調節器86に入力する。比例積分調節器86は、入力される電流値を流すために必要なACリアクトル20’の両端電圧の指令値である電圧指令値vL*を比例積分制御によって求めて出力する。変調率指令信号演算部88は、降圧時には(2)式を用いて、昇圧時には(4)式を用いて変調率指令値信号αBU*あるいはαBO*を演算して出力する。これらの変調率指令値信号は電圧比較器52のプラス入力端子に入力される。SWドライバ90は、電圧比較器52の出力信号(PWM信号)が直接入力されているとともに、この出力信号の論理を反転した信号が入力されており、これら2種類のPWM信号を含む4種類の駆動信号S1、S2、S3、S4のそれぞれをインバータ1のスイッチング素子10、12、14、16に入力する。これら4種類の駆動信号S1、S2、S3、S4の内容は、図3に示した4種類の区間A〜Dのそれぞれに対応して切り替えられる。
【0039】
区間A(正極性、降圧時)については、図4に示す各スイッチング素子の制御を行うために、以下の内容の駆動信号が用いられる。
・スイッチング素子10に入力される駆動信号S1:ハイレベルの信号
・スイッチング素子12に入力される駆動信号S2:ローレベルの信号
・スイッチング素子14に入力される駆動信号S3:インバータ回路54の出力信号
・スイッチング素子16に入力される駆動信号S4:電圧比較器52の出力信号。
【0040】
区間B(正極性、昇圧時)については、図6に示す各スイッチング素子の制御を行うために、以下の内容の駆動信号が用いられる。
・スイッチング素子10に入力される駆動信号S1:ハイレベルの信号
・スイッチング素子12に入力される駆動信号S2:電圧比較器52の出力信号
・スイッチング素子14に入力される駆動信号S3:ローレベルの信号
・スイッチング素子16に入力される駆動信号S4:インバータ回路54の出力信号。
【0041】
区間C(負極性、降圧時)については、図8に示す各スイッチング素子の制御を行うために、以下の内容の駆動信号が用いられる。
・スイッチング素子10に入力される駆動信号S1:インバータ回路54の出力信号
・スイッチング素子12に入力される駆動信号S2:電圧比較器52の出力信号
・スイッチング素子14に入力される駆動信号S3:ハイレベルの信号
・スイッチング素子16に入力される駆動信号S4:ローレベルの信号。
【0042】
区間D(負極性、昇圧時)については、図10に示す各スイッチング素子の制御を行うために、以下の内容の駆動信号が用いられる。
・スイッチング素子10に入力される駆動信号S1:ローレベルの信号
・スイッチング素子12に入力される駆動信号S2:インバータ回路54の出力信号
・スイッチング素子14に入力される駆動信号S3:ハイレベルの信号
・スイッチング素子16に入力される駆動信号S4:電圧比較器52の出力信号。
【0043】
次に、電流指令値iL*の生成について説明する。上述したように、電流指令値iL*を加算器80の一方の入力端に入力することにより、インバータ1を制御することができるが、直流端子a、bに印加された直流電圧Edcを所望の交流電圧eacに変換する際に必要な電流指令値iL*は、電流指令値生成部70によって生成される。電流指令値生成部70では、加算器72の一方の入力端に所望の交流電圧eacに対応する電圧指令値vac*(=Emsin(ωt))が入力され、他方の入力端に交流端子c、d間の実際の電圧vacが入力され、これらの差分に相当する電圧指定値が比例積分調節器74に入力される。比例積分調節器74は、入力された電圧指令値に対応する電流指令値iL*を比例積分制御によって求めて出力する。生成された電流指令値iL*は、加算器80に入力される。このようにして、変換後の出力電圧を指令値vac*として入力することにより、確実に図2に示した直流電圧Edcから交流電圧eacへの変換を行うことができる。
【0044】
図13は、交流端子c、dに印加された交流電圧eacを所望の直流電圧Edcに変換する制御回路2の詳細な構成を示す図である。図13に示す制御回路2は、図12に示した制御回路2に対して、電流指令値生成部70を電流指令値生成部60に置き換えた構成を有している。電流指令値生成部60は、加算器62、比例積分調節器64、乗算器66を含んで構成されている。交流端子c、dに印加された交流電圧eacを所望の直流電圧Edcに変換する際に必要な電流指令値iL*は、この電流指令値生成部60によって生成される。
【0045】
電流指令値生成部60では、加算器62の一方の入力端に所望の直流電圧Edcに対応する電圧指令値Edc*が入力され、他方の入力端に電圧検出部34によって検出された直流端子a、b間の実際の電圧Edcが入力され、これらの差分に相当する電圧指定値が比例積分調節器64に入力される。比例積分調節器64は、入力された電圧指令値に対応する電流指令値iL*の振幅値|iL*|を比例積分制御によって求めて出力する。乗算器66は、比例積分調節器64から出力される振幅値|iL*|と、電圧検出部36によって検出された交流端子c、d間の実際の電圧vac(交流電圧eacに同期して周波数および位相が同じである正弦波信号)とを乗算することにより電流指令値iL*を生成する。生成された電流指令値iL*は、加算器80に入力される。このようにして、変換後の出力電圧を指令値Edc*として入力することにより、確実に図2に示した交流電圧eacから直流電圧Edcへの変換を行うことができる。
【0046】
このように、本実施形態の電源回路では、交流電圧(絶対値)のピーク値よりも高い直流電圧(絶対値)に一旦昇圧する必要がないため、変換時の損失を低減することができる。また、DCリアクトルが含まれないインバータ1のみで直流電圧と交流電圧との間の相互の変換を行っているため、装置の小型化が可能となる。また、オンオフ制御(PWM制御)するスイッチング素子10〜16を切り替えることにより、昇圧動作と降圧動作を1つの昇降圧インバータ1で行うことができる。さらに、変換後の電圧を電圧指令値として与えることで直流電圧と交流電圧の間のパワーフローを任意に制御することが可能となる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、図12に示した構成を用いた直流電圧Edcから交流電圧eacへの変換動作と、図13に示した構成を用いた交流電圧eacから直流電圧Edcへの変換動作とを別々に説明したが、インバータ1によって双方向の変換動作を行うために、制御回路2は、図12に示す構成と図13に示す構成の両方を備えて備えている。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、交流電圧のピーク値よりも高い直流電圧に一旦昇圧する必要がないため、変換時の損失を低減することができる。また、DCリアクトルが含まれないインバータ1のみで直流電圧と交流電圧との間の相互の変換を行っているため、装置の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 単相部分昇降圧インバータ
2 制御回路
10、12、14、16 スイッチング素子
20、22 ACリアクトル
30 コンデンサ
32、33 電流検出部
34、36 電圧検出部
50 三角波発生回路
52 電圧比較器
54 インバータ回路
60、70 電流指令値生成部
62 加算器
64、74、86 比例積分調節器
66 乗算器
68 正弦波信号生成部
72、80、82 加算器
88 変調率指令信号演算部
90 SWドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧と交流電圧との間の相互の変換を行う電源回路であって、
前記直流電圧と前記交流電圧の絶対値の比較における大小関係に対応して区分される電圧波形の複数の区間の中の、前記交流電圧が前記直流電圧より高い区間において前記直流電圧を前記交流電圧に昇圧する動作あるいは前記交流電圧を前記直流電圧に降圧する動作を行い、残りの区間において前記直流電圧を前記交流電圧に降圧する動作あるいは前記交流電圧を前記直流電圧に昇圧する動作を行う昇降圧インバータと、
前記昇降圧インバータの制御を行う制御回路と、を備え、
前記昇降圧インバータは、前記直流電圧が入出力される2つの直流端子と、前記交流電圧が入出力される2つの交流端子を有しており、
一方の前記直流端子と2つの前記交流端子のそれぞれとの間に、第1のスイッチング素子とリアクトルの直列回路が接続され、
他方の前記直流端子と2つの前記交流端子のそれぞれとの間に、第2のスイッチング素子が接続され、
2つの前記交流端子の間にコンデンサが接続されていることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御回路は、前記直流電圧よりも前記交流電圧の方が高いときに、一方の前記直列回路に含まれる前記第1のスイッチング素子をオンし、他方の前記直列回路に含まれる前記第1のスイッチング素子をオフした状態で、他の2つの前記第2のスイッチング素子を交互にオンオフ制御することにより、前記昇降圧インバータに、前記直流電圧を前記交流電圧に昇圧する動作あるいは前記交流電圧を前記直流電圧に降圧する動作を行わせることを特徴とする電源回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記制御回路は、前記直流電圧よりも前記交流電圧の方が低いときに、一方の前記直列回路に含まれる前記第1のスイッチング素子をオンし、一方の前記第2のスイッチング素子をオフした状態で、他方の前記直列回路に含まれる前記第1のスイッチング素子と他方の前記第2のスイッチング素子とを交互にオンオフ制御することにより、前記昇降圧インバータに、前記直流電圧を前記交流電圧に降圧する動作あるいは前記交流電圧を前記直流電圧に昇圧する動作を行わせることを特徴とする電源回路。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記制御回路は、デューティ比が変更可能なPWM信号を生成するPWM信号生成部と、前記PWM信号生成部から出力されるPWM信号の論理を反転するインバータ回路とを備え、交互にオンオフ制御する2つのスイッチング素子の一方を前記PWM信号生成部の出力信号に基づいてオンオフ制御し、他方を前記インバータ回路の出力信号に基づいてオンオフ制御することを特徴とする電源回路。
【請求項5】
請求項4において、
前記制御回路は、
変換先となる前記直流電圧あるいは前記交流電圧が電圧指令値として与えられたときに、この電圧指令値と実際の前記直流電圧あるいは前記交流電圧との差に基づいて、前記リアクトルに流す電流を示す電流指令値を生成する電流指令値生成部と、
前記電流指令値に基づいて、前記リアクトルの両端電圧を示す電圧指令値を生成する電圧指令値生成部と、
前記電圧指令値に基づいて前記PWM信号を生成する前記PWM信号生成部と、
を備えることを特徴とする電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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