説明

電源監視装置

【課題】車両に搭載された電源の充電状態を精度高く監視することができる電源監視装置を提供する。
【解決手段】電源電流制御ユニット102により回転電機3の界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号PWを制御して、電源装置2に流れる電源電流値を零若しくは零近傍の値となるように無通電制御し、所定期間内に於いて電源装置2の電源端子間電圧値Vの変動が所定の範囲内にあることを電源電圧安定判定ユニット104が判定したとき、電源充電状態推定ユニット101により電源装置2の電圧値Vに基づいて電源装置2の充電状態を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載された電源装置の充電状態を監視する電源監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費を削減する技術として、車両の減速時の運動エネルギーを回生発電により電力として回収する車両が開発されており、効率良く回生発電するために、通常の鉛バッテリとは別に、充放電許容量が大きくエネルギー密度が高いバッテリ(例えば、リチウムイオン電池)を搭載する車両が開発されている。このようなバッテリでは、バッテリの寿命や安全性向上のため、バッテリが過充放電状態とならないよう、鉛バッテリと比較して、より厳密にバッテリの充電状態(State of Charge:以下、SOC、と称する)を監視する必要がある。又、回生量を向上するためには、バッテリの充電状態を把握し管理することが重要である。
【0003】
従来の鉛バッテリを用いた車両では、鉛バッテリを放電状態にすると劣化が進行するため、常時、満充電近傍の状態でSOCが制御されている。そのSOCの推定には、車両始動後に鉛バッテリの充電量を増加し、鉛バッテリの充電量が飽和して電流値が小さくなったところで満充電とし、満充電状態から充放電電流量を積算して鉛バッテリのSOCを推定する方法がとられていた。例えば、発電機と電動機の何れとしても動作し得る発電電動機と鉛バッテリとを搭載した車両に於いて、車両の内燃機関の始動後、発電電動機による発電を一旦停止させてバッテリを放電状態とし、バッテリ内部の分極状態を揃えた条件下で徐々にバッテリの充電電流を増加し、バッテリの充電電流が微小となった時点で、バッテリの端子間電圧からSOCを推定するようにしたバッテリの状態監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4039323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された従来の装置では、電源の開放電圧によってSOCを推定するため、車両の内燃機関の始動後に発電電動機の発電を停止させて鉛バッテリを放電状態とし、バッテリ内部の分極状態を揃えた条件下で徐々に発電量を増加して徐々にバッテリの充電電流を増加し、その後、その充電電流が微小となった時点で鉛バッテリの端子間電圧が取得される。しかしながら、例えば、電動格納サイドミラー等の電気負荷の動作終了時期と重複するような場合には、鉛バッテリの端子間電圧の検出の時機を逸してしまう恐れがあった。
【0006】
又、発電電動機の発電電流や電圧には、生成された起電力を整流した際に発生する脈動や界磁巻線に流れる界磁電流のPWM(Pals Wide Modulation)制御に伴う脈動が生じ、この脈動によって充電電流や鉛バッテリの端子間電圧の検出値に誤差が生じるが、特許文献1に示された従来の装置には、そのような検出値の誤差に対する対策について何ら開示されていない。
【0007】
この発明は、従来の電源監視装置に於ける前述のような課題を解決するためになされたもので、電源の充電状態を精度高く監視することができる電源監視装置を得ることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による電源監視装置は、
車両の動力源としての内燃機関との間で動力の授受を行なう回転電機と、蓄電機能を備え前記回転電機との間で電力の授受を行なう電源装置とを備えた車両に搭載され、前記電源装置の少なくとも充電状態を監視するようにした電源監視装置であって、
前記回転電機の界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号を制御して、前記電源装置に流れる電源電流値を零若しくは零近傍の値に制御し得る電源電流制御ユニットと、
前記電源装置に流れる電源電流値が零若しくは零近傍の値にあるか否かを判定する電源無通電判定ユニットと、
前記電源無通電判定ユニットが前記電源電流値が零若しくは零近傍の値にあることを判定したとき、所定期間内に於いて前記電源装置の電源端子間電圧値の変動が所定の範囲内にあるか否かを判定する電源電圧安定判定ユニットと、
前記電源電圧安定判定ユニットが前記電源端子間電圧値の変動が前記所定の範囲内にあることを判定したとき、前記電源装置の電圧値に基づいて前記電源装置の充電状態を推定する電源充電状態推定ユニットと、
を備え、
前記電源充電状態推定ユニットにより推定された充電状態に基づいて、前記電源の充電状態を監視するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明による電源監視装置によれば、電源装置に流れる電源電流値が零若しくは零近傍の値にあり、且つ所定期間内に於いて電源装置の電源端子間電圧値の変動が所定の範囲内にあるとき、電源装置の電源端子間電圧値に基づいて電源装置の充電状態を推定するようにしているので、確実に電源装置の充電状態を推定することができ、この推定に基づいて電源の充電状態を精度高く監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による電源監視装置を備えた車両の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による電源監視装置に於ける、電源SOC推定動作中の内部処理を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による電源監視装置に於ける、電源SOC推定処理の動作の流れを説明するタイムチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による電源監視装置に於ける、電源端子電圧値から電源のSOC推定値を求める電源SOC推定マップである。
【図5】この発明の実施の形態1による電源監視装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【0011】
【図6】この発明の実施の形態2による電源監視装置を備えた車両の構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による電源監視装置に於ける、電源SOC推定動作中の電源監視装置の内部処理を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態3による電源監視装置を備えた車両の構成図である。
【図9】この発明の実施の形態3による電源監視装置に於ける、電源SOC推定動作中の内部処理を示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態3による電源監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】車載ラジオ受信機の選局周波数とPWMキャリア周波数の設定値を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による電源監視装置を備えた車両の構成図である。図1に於いて、電動発電機(Motor Generator:以下、回転電機、と称する)3は、その回転子軸が内燃機関10のクランク軸にベルト31により連結されており、内燃機関10によりベルト31を介して回転子が駆動されたときは発電機として動作して電力を発生し、これに対して電力が電機子巻線に供給されたときは電動機として動作してベルト31を介して内燃機関10を駆動する。
【0013】
内燃機関10は、変速機11を介して車両の駆動輪32と動力の授受を行なう。また、回転電機3は、電源装置としての第1の電源2と電力の授受が可能となるように接続され、更に電圧変換ユニット5との間で電力の授受が可能となるように接続されている。第1の電源2は、充放電許容量が大きくエネルギー密度が高いリチウムイオン電池等のバッテリにより構成されている。電圧変換ユニット5は、回転電機3及び第1の電源2から供給された電力を、電圧変換して第2の電源6及び車両の電気負荷7に電力を供給する。第2の電源6は、鉛蓄電池等のバッテリにより構成され、電圧変換ユニット5から供給された電力を蓄電すると共に、車両の電気負荷7に電力を供給する。
【0014】
この発明の実施の形態1による電源監視装置1は、第1の電源2に付設された電源端子間電圧検出ユニット8から電源端子間電圧値Vを取得し、更に、第1の電源2に付設された電源電流検出ユニット9から電源電流値Iを取得すると共に、回転電機3の界磁巻線に流れる界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号PWを発生して回転電機3の発電量を可変制御する。
【0015】
図2は、この発明の実施の形態1による電源監視装置に於ける、電源SOC推定動作中の内部処理を示す構成図である。図2に於いて、電源電流制御ユニット102は、SOC誤差判定ユニット106から電源無通電制御要求RNを受け取った際に、電源電流検出ユニット9から取得した電源電流値Iが零になるようにフィードバック制御演算を行なうべく、界磁電流PWM制御信号PWを回転電機3に出力する。電源無通電判定ユニット103は、電源電流値Iを監視し,その値が零若しくは零近傍となった場合に、電源無通電状態となったと判定し、電源SOC推定ユニット101に判定結果JIを出力する。
【0016】
電源電圧安定判定ユニット104は、電源端子電圧検出ユニット8からの電源端子電圧値Vに基づいて電源端子間電圧値Vを監視し、後述する所定の電源電圧安定判定期間の間に於ける電源端子間電圧値Vの変動が所定の電源電圧安定判定しきい値の範囲内である場合に、電源電圧が安定したと判定し、電源SOC推定ユニット101にその判定結果JVを出力する。前述の電源電圧安定判定期間と電源電圧安定判定しきい値は、電源の特性によって設定される。例えば、電源電圧安定判定期間は200[msec]に設定され、電源電圧安定判定しきい値は10[mV]に設定される。
【0017】
電源SOC推定ユニット101は、前述の無通電制御中に一定のサンプリング周期毎に電源端子間電圧Vを取得しており、電源無通電判定ユニット103により電源無通電状態と判定され、且つ電源電圧安定判定ユニット104により電源電圧が安定したと判定された時点で取得した電源端子間電圧値Vから、内部に用意した例えば図4に示す電源SOC推定マップを参照して電源SOC推定値SOCを求める。
【0018】
即ち、図4は、この発明の実施の形態1による電源監視装置に於ける、電源端子電圧値から電源のSOC推定値を求める電源SOC推定マップであり、縦軸は電源SOC推定値SOC、横軸は電源端子電圧値Vを夫々示している。ここで、電源端子間電圧値Vと電源SOC推定値SOCの特性は、電源の温度に依存するため、代表温度毎に電源SOC推定マップを設定しておき、別途設けた電源温度検出ユニットから電源温度を取得し、その電源温度に近い代表温度の電源SOC推定マップから取得した電源SOC推定値に基づいて、検出した電源温度での電源SOC推定値SOCを求めるようにしてもよい。
【0019】
SOC誤差判定ユニット106は、車両が停止状態から初めて始動された場合は、電源SOC推定値SOCの信頼性が低下していると判定し、電源SOC推定処理を実施するように電源SOC推定ユニット101に電源SOC推定処理要求RPを発すると共に、電源電流制御ユニット102に無通電制御要求RNを発する。又、SOC誤差判定ユニット106は、前回の電源SOC推定処理を実施した時点からの、前記電源電流値Iの絶対値の積算値を求め、前記積算値が所定の累積誤差許容電流積算値を超過した際にも電源SOC推定値SOCの信頼性が低下したと判定し、再度、電源SOC推定処理を実施するように電源SOC推定ユニット101に電源SOC推定処理要求RPを発すると共に、電源電流制御ユニット102に電源無通電制御要求RNを発する。前述の累積誤差許容電流積算値は、使用する電源電流検出ユニット9の精度を考慮して、例えば、10C(1C=電源の満充電容量)に設定する。
【0020】
電源SOC補正ユニット105は、電源電流値Iを積算し、その積算した値によって電源SOC推定ユニット101が求めた電源SOC推定値SOCを次式(1)に基づいて補正する。

SOC=SOC+(∫Idt÷A)・・・・・・・・・・・・式(1)

ここで、
SOC:電源SOC補正ユニット105が補正した電源SOC推定値
SOC:電源SOC推定ユニット101が求めた電源SOC推定値
I:電源電流値
A:第1の電源2の満充電容量[アンペア秒]
である。
【0021】
図3は、この発明の実施の形態1による電源監視装置に於ける、電源SOC推定処理の動作の流れを説明するタイムチャートである。図3の縦軸は電圧[V]と電流[I]を下段と上段に分けて示しており、横軸は時刻を示している。図3に於いて、Ch1は前述の電源電流値Iの時間的推移を示し、Ch2は前述の電源端子間電圧値Vの時間的推移を示す。時刻t0に於いて、電源電流制御ユニット102は界磁電流PWM制御信号PWを出力し、電源電流値Iが零若しくは零近傍となるように回転電機3の界磁巻線に流れる界磁電流が制御される。
【0022】
時刻t1に於いて、電源電流値Iが零近傍となり、電源無通電判定ユニット103は電源無通電状態であると判定してその判定結果JIを電源SOC推定ユニット101へ出力する。次に、時刻t2に於いて、電源電圧安定判定ユニット104は、電源電圧安定判定期間Δtの間、電源端子間電圧Vの変動が電源電圧安定判定しきい値の範囲内にあった場合に、電源電圧が安定したと判定しその判定結果JVを電源SOC推定ユニット101へ出力する。更に、時刻t2において、電源SOC推定ユニット101は、時刻t2の時点での電源端子間電圧値Vを用いて、図4に示す電源SOC推定マップを参照して電源SOC推定値SOCを求める。
【0023】
尚、図3では、一例として、第1の電源2が放電した状態から電源SOC推定処理を開始しているが、電源SOC推定処理開始時の第1の電源2の電流の通電方向や大きさは特に限定されない。又、車両停止中や車両始動前に、回転電機3や電力変換ユニット5が停止している状態、即ち、第1の電源2に流出入する電流の経路が皆無である状態で、電源電流検出ユニット9の零点校正を行ってオフセット誤差を相殺することで、電源SOC推定の精度をさらに向上することができる。
【0024】
次に、この発明の実施の形態1による電源監視装置の動作を説明する。図5は、この発明の実施の形態1による電源監視装置の動作の流れを示すフローチャートであり、所定の時間間隔でこの処理を繰り返す。図5に於いて、先ず、ステップS100では、SOC誤差判定ユニット106は、前回の電源SOC推定の後に取得した電源電流値Iの絶対値の積算値を算出してSOC誤差判定の処理に入り、ステップS101では、ステップS100で算出した電源電流Iの絶対値の積算値が所定の累積誤差許容電流積算値を超過しているか否かを判定する。ステップS101での判定の結果、電源電流Iの絶対値の積算値が累積誤差許容電流積算値を超過していると判定した場合(Yes)は、電源SOC推定値の誤差が蓄積し信頼性が低下したと判定してステップS102の処理に進み、電源電流値Iの絶対値の積算値が累積誤差許容電流積算値を超過していないと判定した場合(No)は、ステップS105の処理に進む。
【0025】
ステップS102に進むと、電源電流制御ユニット102は、取得した電源電流値Iが零若しくは零近傍の値となるように、界磁電流PWM制御信号PWを回転電機3に出力して無通電制御を実施する。そして電源電流値Iが零若しくは零近傍の値となった場合に、電源無通電状態となったと判定して損判定結果JIを出力し、ステップS103の処理に進む。
【0026】
ステップS103では、電源電圧安定判定ユニット104は、前述の図3に示す電源電圧安定判定期間Δtの間に於ける電源端子電圧値Vの変動が所定の電源電圧安定判定しきい値の範囲内となった場合に、電源電圧が安定したと判定してそ音判定結果JVを出力しステップS104の処理に進む。ステップS104では、電源SOC推定ユニット101は、その時点で取得した電源端子間電圧値Vに基づいて、前述の図4に示す電源SOC推定マップを参照して電源SOC推定値SOCを求め、処理を終了する。
【0027】
一方、ステップS101での判定の結果、電源電流値Iの絶対値の積算値が累積誤差許容電流積算値を超過していないと判定した場合(No)は、ステップS105の処理に進み、電源SOC補正ユニット105は、取得した電源電流値Iの絶対値を積算し、前述のステップS104で求めた電源SOC推定値SOCをその積算値に基づいて補正して電源SOC推定値SOCを発生し、処理を終了する。
【0028】
以上述べたこの発明の実施の形態1による電源監視装置によれば、SOCや温度等の要因で電源を無通電状態にしてから端子間電圧が安定するまでの特性が変化した場合にも、可及的速やかに電源SOC推定を実施することができると共に、電源SOC推定による電源無通電制御の回数や期間を適切に設定することで、電源SOC推定の精度を維持しつつ車両の燃費への影響を低減し、車両減速時の回生発電の機会を逸する可能性を低減することができる。
【0029】
又、この発明の実施の形態1による電源監視装置によれば、第1の電源に流れる電源電流値を零若しくは零近傍となるように、回転電機の界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号を制御することで電源無通電状態に制御し、電源無通電制御中に電源端子間電圧を定期的に取得し、電源端子間電圧の変動が収まった時点で可及的速やかに電源SOC推定の処理を完了して電源無通電制御を終了することができる。このようにすれば、電源に流れる電流による電圧降下や電源の分極による影響を受けずに、開放電圧に相当する電源端子間電圧を取得することができ、電源のSOCを高精度に推定することが可能となり、電源SOC推定処理を速やかに終了することで、車両の燃費への影響を必要最小限にとどめることができ、車両減速時の回生発電の機会を逸する可能性も低減できる。更に、電源の温度、又は、電源SOC、又は、劣化状態等の要因で、電源端子間電圧が安定するまでの所要時間が変化した場合にも、そのような要因の影響を受けることなく電源SOC推定の処理を完了することができる。
【0030】
又、この発明の実施の形態1による電源監視装置によれば、前回の電源SOC推定実行からの電源電流値の絶対値の積算値が所定値以上となった際に、再度、電源SOC推定を実行する。これにより、電源に充放電された電流値を積算して補正している電源SOC推定値に誤差が蓄積した場合には、再度、電源SOC推定値を取得することで電源SOC推定値の精度を維持することが可能となり、電源SOC推定の実行回数を必要最小限にとどめることができる。
【0031】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による電源監視装置について説明する。前述の実施の形態1による電源監視装置では、無通電制御の指示により電源電流が零若しくは零近傍の値となるように回転電機の界磁電流をPWM制御し、電源端子間電圧から電源SOC推定を実施したが、これに加えて、実施の形態2による電源監視装置では、回転電機の発電に伴うノイズによる影響を低減して、電源SOC推定の精度を向上させるようにしたものである。
【0032】
図6は、この発明の実施の形態2による電源監視装置を備えた車両の構成図であり、図1と同一または相当部分には同一符号を付してある。図6に於いて、フィルタ回路12は、電源端子間電圧検出ユニット8が出力した電源端子間電圧値Vの電圧振動のうち、第1の電源2の端子の電気二重層の形成に寄与する高い周波数の電圧振動を除去し、電源監視装置1に電源端子電圧値Vを出力する。その他の構成は、実施の形態1に於ける図1と同様であるので説明を省略する。
【0033】
図7は、この発明の実施の形態2による電源監視装置に於ける、電源SOC推定動作中の電源監視装置の内部処理を示す構成図である。図7に示す電源監視装置1の内部の処理は、実施の形態1の電源監視装置1の内部の処理を示す図2と同一または相当部分には同一符号を付してある。PWM周波数変更ユニット107は、電源SOC推定ユニット101により電源SOC推定動作を行なう場合に、電源電流制御ユニット102から入力された界磁電流PWM制御信号PWのPWMキャリア周波数を、通常発電時より高い周波数(例えば人の可聴域を避けた20[kHz])に変更して回転電機3の界磁巻線に出力する。ここで、PWM周波数変更ユニット107から回転電機3の界磁巻線に出力される界磁電流PWM制御信号PWは、電源電流値Iが零若しくは零近傍の値になるようにフィードバック制御演算を行なうように電源電流制御ユニット102により設定されたPWM駆動デューティを備える。
【0034】
この発明の実施の形態2による電源監視装置の動作の流れは、図5に示される実施の形態1のフローチャートと同様であるが、図5のステップS102に於いて、回転電機3の界磁巻線への界磁電流PWM制御信号PWのキャリア周波数を、前述のように通常発電時より高い周波数に設定する点が実施の形態1の場合とは異なる。その他の構成及び動作は、実施の形態1による電源監視装置と同様である。
【0035】
以上のように構成されたこの発明の実施の形態2による電源監視装置によれば、取得する電源端子電圧値の高周波成分を除去することで、電源SOC推定の精度を向上することができる。又、回転電機の界磁巻線への界磁電流PWM制御信号PWの周波数を、通常の発電時より高く設定することで、界磁電流のPWM制御による脈動の影響を低減し、電源無通電制御や電源SOC推定の精度を向上することができる。
【0036】
前述のように、この発明の実施の形態2による電源監視装置によれば、電源端子間電圧値から電気二重層の形成に寄与する高周波成分をフィルタ回路により除去して電源端子間電圧値及び電源電流値を取得することができる。回転電機の回転に同期して発生する電圧や電流の脈動は1[kHz]を超える高周波となることが多く、電源の電極間での電気二重層の形成に寄与し、電源内部のイオン泳動や化学反応を伴わないため、電源の寿命や安全性に影響しない。
【0037】
又、この発明の実施の形態2による電源監視装置によれば、電源無通電制御時は、回転電機の界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号のキャリア周波数を通常発電時と比較して上昇させることで、界磁巻線による発電電流及び電圧の脈動による影響を低減し、電源無通電制御の制御精度と端子間電圧の取得精度を向上することで、電源SOC推定の精度を向上することが出来る。
【0038】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による電源監視装置について説明する。前述の実施の形態2による電源監視装置では、回転電機の界磁電流を制御する界磁電流PWM制御信号のPWMキャリア周波数を通常より高く設定することで、界磁電流のPWM制御に起因して発生する発電電流及び電圧の脈動による電源SOC推定の精度への悪影響を低減するようにしたが、実施の形態3では、更に、回転電機の界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号のキャリア周波数を適切に選択することで、界磁巻線のPWM駆動による車載ラジオの聴取への干渉を低減するようにしたものである。
【0039】
図8は、この発明の実施の形態3による電源監視装置を備えた車両の構成図であり、図1と同一または相当部分には同一符号を付してある。図8に於いて、自動選局機能を備え中波帯の電波を受信して音声を再生する車載ラジオ受信機13は、その作動状態、及び選局しているラジオ選局周波数を情報として電源監視装置1に伝達する。車載ラジオ受信機13に於ける前述の自動選局機能は、受信電波周波数を走査しながら信号強度が所定値以上となった周波数を取得する。車載ラジオ受信機13は、受信電波周波数を走査しながら信号強度が所定以上となった周波数を取得する自動選局機能による自動選局を実行している場合は、自動選局機能の実施状態を電源監視装置1に情報として伝達する。
【0040】
尚、車載ラジオ受信機13は、電源無通電制御ユニット103が電源無通電制御を実行中であれば、自動選局機能による自動選局の実行を中断するように構成されている。
【0041】
電源監視装置1は、車載ラジオ受信機13の作動状態を取得するラジオ作動状態取得ユニットと、自動選局機能が実施中であることを取得する自動選局状態取得ユニットと、車載ラジオ受信機の選局周波数を取得する選局周波数取得ユニットを有しており、車載ラジオ受信機13が自動選局機能による自動選局の実施中であれば、その選局周波数fに対して、PWM駆動信号のキャリア周波数Fを次式(2)のように設定して前述の電源無通電制御ユニット103による電源無通電制御を実行する。

F=(f−A/2)÷[{f−mod(f,A)}÷A]・・・・・式(2)

ここで、
F:PWMキャリア周波数
f:ラジオ選局周波数
A:基準周波数(例えば、20kHz)
mod(f,A):f/Aの剰余
である。
【0042】
図11は、車載ラジオ受信機の選局周波数とPWMキャリア周波数の設定値を例示するグラフであり、前述の式(2)に基づいてPWMキャリア周波数Fを設定した際の、ラジオ選局周波数fとPWMキャリア周波数Fの関係を示している。その他の構成は、実施の形態1に於ける図1と同様であるので説明を省略する。
【0043】
図9は、この発明の実施の形態3による電源監視装置に於ける、電源SOC推定動作中の内部処理を示す構成図であり、前述の図7と同一若しくは相当部分には同一符号を付してある。図7と異なる部分は、車載ラジオ受信機13の作動状態を取得するラジオ作動状態取得ユニット(図示せず)と、自動選局機能が実施中であることを取得する自動選局状態取得ユニット(図示せず)と、PWM周波数算出ユニット108とが追加された点である。図9に於いて、PWM周波数算出ユニット108は、取得したラジオ選局周波数に基づいて、高次高調波がラジオ選局周波数に干渉しないような通常発電時より高い周波数のPWMキャリア周波数(例えば人の可聴域を避けた20[kHz])を算出し、PWM周波数変更ユニット107に出力する。
【0044】
PWM周波数変更ユニット107は、電源電流制御ユニット102から入力される界磁電流PWM制御信号PWのPWMキャリア周波数を、PWM周波数算出ユニット108により算出されたPWMキャリア周波数に変更して回転電機3の界磁巻線に出力する。ここで、PWM周波数変更ユニット107から回転電機3の界磁巻線に出力される界磁電流PWM制御信号PWは、電源電流値Iが零若しくは零近傍の値となるようにフィードバック制御演算を行なうように電源電流制御ユニット102により設定されたPWM駆動デューティを備える。
【0045】
次に、この発明の実施の形態3による電源監視装置の動作を説明する。図10は、この発明の実施の形態3による電源監視装置の動作の流れを示すフローチャートであり、所定の時間間隔でこの処理を繰り返す。図10に於けるフローチャートは、実施の形態1の図5に示されるフローチャートと同一または相当部分にはそれと同一符号を付してある。
【0046】
図10に於いて、先ず、ステップS100では、SOC誤差判定ユニット106は、前回の電源SOC推定の後に取得した電源電流値Iの絶対値の積算値を算出してSOC誤差判定の処理に入り、ステップS101では、ステップS100で算出した電源電流Iの絶対値の積算値が所定の累積誤差許容電流積算値を超過しているか否かを判定する。ステップS101での判定の結果、電源電流Iの絶対値の積算値が累積誤差許容電流積算値を超過していると判定した場合(Yes)は、電源SOC推定値の誤差が蓄積し信頼性が低下したと判定してステップS106へ進み、電源電流Iの絶対値の積算値が累積誤差許容電流積算値を超過していないと判定した場合(No)は、ステップS105の処理に進む。
【0047】
ステップS106では、車載ラジオ受信機が自動選局機能により自動選局を実行中であるか否を判定し、自動戦局を実行中でなければ(No)ステップS105に進み、自動選局機能が実行されている場合(Yes)にはステップS107に進む。ステップS107では、高次高調波が車載ラジオ選局周波数に干渉しないようなPWMキャリア周波数を算出し、ステップS102へと進む。ステップS102に進むと、電源電流制御ユニット102は、取得した電源電流値Iが零若しくは零近傍の値となるように、界磁電流PWM制御信号PWを回転電機3に出力して無通電制御を実施するが、PWM周波数変更ユニット107により回転電機3の界磁巻線へ供給する界磁電流PWM制御信号PWのキャリア周波数を、ステップS107で算出したPWMキャリア周波数に変更する。
【0048】
ステップS102での電源無通電制御により電源電流値Iが零若しくは零近傍となった場合に、電源無通電状態となったと判定してその判定結果JIを出力しステップS103の処理に進む。ステップS103では、電源電圧安定判定ユニット104は、前述の図3に示す電源電圧安定判定期間Δtの間に於ける電源端子電圧値Vの変動が所定の電源電圧安定判定しきい値の範囲内となった場合に、電源電圧が安定したと判定してその判定結果JVを出力しステップS104の処理に進む。ステップS104では、電源SOC推定ユニット101は、取得した電源端子間電圧値Vに基づいて、前述の図4に示す電源SOC推定マップを参照して電源SOC推定値SOCを求め、処理を終了する。
【0049】
一方、ステップS101での判定の結果、電源電流Iの絶対値の積算値が累積誤差許容電流積算値を超過していないと判定した場合(No)は、ステップS105の処理に進み、電源SOC補正ユニット105は、取得した電源電流値Iの絶対値を積算し、前述のステップS104で求めた電源SOC推定値SOCをその積算値に基づいて補正して電源SOC推定値SOCを発生し、処理を終了する。
【0050】
又、前述のステップS106での判定の結果、車載ラジオ受信機が自動選局機能により自動選局を実行中でなく(No)ステップS105に進んだ場合に於いても、電源SOC補正ユニット105は、取得した電源電流値Iの絶対値を積算し、前述のステップS104で求めた電源SOC推定値SOCをその積算値に基づいて補正して電源SOC推定値SOCを発生し、処理を終了する。
【0051】
以上述べたように、この発明の実施の形態3による電源監視装置によれば、車載ラジオ受信機が作動している際には、回転電機の界磁巻線への界磁電流PWM制御信号の高次高調波によるラジオ聴取への影響を回避することができ、車載ラジオ受信機が自動選局機能を実行する際にも、電源監視装置の処理によってラジオ局の誤検出を引き起こすことはない。
【0052】
又、この発明の実施の形態3による電源監視装置によれば、車載ラジオ受信機の作動時には、選局している周波数の整数分の1のキャリア周波数を回避して回転電機の界磁電流をPWM制御し、PWMキャリア周波数の高次高調波の影響により、ラジオ聴取に雑音を生じることなく、電源SOC推定を実行することができる。
【0053】
更に、この発明の実施の形態3による電源監視装置によれば、車載ラジオ受信機が自動選局機能を実行した際に、電源SOC推定を中止することで、回転電機の界磁電流を制御する界磁電流PWM制御信号のPWMキャリア周波数の高次高調波による自動選局機能実行時のラジオ局の誤検出への影響をなくすことができる。
【0054】
尚、この発明は、その発明の範囲内に於いて、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 電源監視装置 2 第1の電源
3 回転電機(発電電動機) 5 電圧変換ユニット
6 第2の電源 7 車両電気負荷
8 電源端子電圧検出ユニット 9 電源電流検出ユニット
10 内燃機関 11 変速機
12 フィルタ回路 13 車載ラジオ受信機
101 電源SOC推定ユニット 102 電源電流制御ユニット
103 電源無通電判定ユニット 104 電源電圧安定判定ユニット
105 電源SOC補正ユニット 106 SOC誤差判定ユニット
107 PWM周波数変更ユニット 108 PWM周波数算出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源としての内燃機関との間で動力の授受を行なう回転電機と、蓄電機能を備え前記回転電機との間で電力の授受を行なう電源装置とを備えた車両に搭載され、前記電源装置の少なくとも充電状態を監視するようにした電源監視装置であって、
前記回転電機の界磁電流をPWM制御する界磁電流PWM制御信号を制御して、前記電源装置に流れる電源電流値を零若しくは零近傍の値に制御し得る電源電流制御ユニットと、
前記電源装置に流れる電源電流値が零若しくは零近傍の値にあるか否かを判定する電源無通電判定ユニットと、
前記電源無通電判定ユニットが前記電源電流値が零若しくは零近傍の値にあることを判定したとき、所定期間内に於いて前記電源装置の電源端子間電圧値の変動が所定の範囲内にあるか否かを判定する電源電圧安定判定ユニットと、
前記電源電圧安定判定ユニットが前記電源端子間電圧値の変動が前記所定の範囲内にあることを判定したとき、前記電源装置の電圧値に基づいて前記電源装置の充電状態を推定する電源充電状態推定ユニットと、
を備え、
前記電源充電状態推定ユニットにより推定された充電状態に基づいて、前記電源の充電状態を監視するようにした電源監視装置。
【請求項2】
前記電源充電状態推定ユニットが前記充電状態を推定した後に取得した前記電源電流値の絶対値の積算値を求め、前記積算値が所定値を超過したときに前記推定された電源充電状態の推定に誤差が存在すると判定して、前記電源充電状態推定ユニットに前記充電状態の推定を再度行なうように指示する電源充電状態誤差判定ユニットを備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源監視装置。
【請求項3】
前記電源電流値の積算値を求め、前記積算値に基づいて前記電源充電状態推定ユニットが推定した電源充電状態推定値を補正する電源充電状態推定補正ユニットを備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載の電源監視装置。
【請求項4】
前記電源充電状態推定補正ユニットは、前記電源充電状態誤差判定ユニットが前記充電状態の推定に誤差が存在すると判定していない場合に、前記電源充電状態推定値を補正する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電源監視装置。
【請求項5】
前記電源端子間電圧値の電圧振動のうち所定値以上の周波数の電圧振動を除去するフィルタ回路を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の電源監視装置。
【請求項6】
前記電源充電状態推定ユニットが前記充電状態の推定を行なう場合に、前記界磁電流PWM制御信号のキャリア周波数を前記回転電機に於ける通常の発電時の周波数とは異なる周波数に変更するPWM周波数変更ユニットを備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一項に記載の電源監視装置。
【請求項7】
前記車両は車載ラジオ受信機を備えており、
車載ラジオ受信機が作動中の場合に、前記車載ラジオ受信機の選局周波数に基づいて、PWM周波数変更ユニットにより変更する周波数を算出するPWM周波数算出ユニットを備え、
前記PWM周波数変更ユニットは、前記PWM周波数算出ユニットにより算出された周波数に前記界磁電流PWM制御信号のキャリア周波数を変更する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電源監視装置。
【請求項8】
前記車両は、受信周波数を走査しながら信号強度が所定以上となった周波数を取得してラジオ局周波数と認識する自動選局機能を有するラジオ受信機を備えており、
前記電源充電状態推定ユニットは、前記車載ラジオ受信機が前記自動選局機能による自動選局動作を実施しているときは、前記電源充電状態の推定を中止若しくは中断する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちの何れか一項に記載の電源監視装置。
【請求項9】
前記電源充電状態推定ユニットは、前記電源端子間電圧値に対する電源充電状態推定値を記憶したマップに基づいて前記電源充電状態を推定する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか一項に記載の電源監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−104664(P2013−104664A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246227(P2011−246227)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】