説明

電源装置の冷却構造及びガイドユニット

【課題】複数の電池スタックを備えた電源装置の各電池スタックの冷却性能のバラツキを抑制する。
【解決手段】電源装置の冷却構造は、積層された複数の蓄電体からなる複数の電池スタックと、電池スタックそれぞれに対し、電池スタックの温度を調整するための温度調節媒体が流通する電池スタックの積層方向に隣接した流路を形成するガイドユニットとを含んで構成される。ガイドユニットは、並んで配置される電池スタック間のスペースに設けられ、当該スペースを電池スタックが並ぶ方向に区画して電池スタックそれぞれに対応する各流路を形成する流路形成部と、流路形成部の電池スタックが並ぶ方向への移動を許容する移動許容部とを含むスタック間ガイド部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池や電気二重層キャパシタ(コンデンサ)といった蓄電装置や燃料電池などの電源装置は、複数の単電池(電源体)が一定の方向に積層されて構成される電池スタックがケース内に収容されている。
【0003】
電池スタック(組電池)の積層方向両側には、冷却風が流通するスペース(冷却経路)を形成するチャンバーが設けられ、冷却装置によって電源装置内に取り込まれた冷却風を、チャンバーによってガイドして電池スタックの周囲及び各単電池間を流通させる電源装置の冷却構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の電池スタックを有する電源装置では、各電池スタック毎にチャンバーを設け、各電池スタックに対して独立した冷却風が流通する冷却経路が形成されている。
【0006】
一方で、吸気ダクトを流れる冷却風を分岐させて独立した冷却経路それぞれに冷却風を供給すると、固定された流路断面積の各冷却経路を流れる冷却風の流量が定まらず、例えば、圧力損失が生じて冷却風が流れにくくなり、電池スタック間の冷却(冷却性能)が不均一となってしまう。
【0007】
本発明は、複数の電池スタックを備えた電源装置に設けられた冷却経路を流れる冷却風の圧力損失を抑制し、各電池スタックの冷却性能のバラツキを低減する電源装置の冷却構造及びガイドユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、積層された複数の蓄電体からなる複数の電池スタックと、前記電池スタックそれぞれに対し、前記電池スタックの温度を調整するための温度調節媒体が流通する前記電池スタックの積層方向に隣接した流路を形成するガイドユニットとを含んで構成され、前記ガイドユニットが、並んで配置される前記電池スタック間のスペースに設けられ、前記スペースを前記電池スタックが並ぶ方向に区画して前記電池スタックそれぞれに対応する前記各流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部の前記並ぶ方向への移動を許容する移動許容部とを含むスタック間ガイド部材を有する。
【0009】
ここで、前記移動許容部は、前記流路形成部によって形成された前記各流路に流れる前記温度調節媒体の流量が異なることで生じる圧力差によって前記並ぶ方向へ前記流路形成部が移動することを許容する。
【0010】
また、前記流路形成部は、前記電池スタック間の一方の電池スタックに設けられ、前記スペースを区画する方向に延びる第1区画部と、前記電池スタック間の他方の電池スタックに設けられ、前記第1区画部に対して所定の間隔を空けて配置されて前記スペースを区画する方向に延びる第2区画部と、を有して構成できる。
【0011】
また、前記第1区画部及び第2区画部ぞれぞれの前記スペースを区画する方向における一端側に、対応する前記電池スタックとの接合部を設けることができ、前記移動許容部は、前記電池スタックに対して前記接合部が接合した状態で前記流路形成部の前記並ぶ方向への移動を許容するスライド構造を有している。
【0012】
また、前記第1区画部及び第2区画部それぞれの他端側が、前記並ぶ方向への変形を許容する変形部材と連結するように構成でき、また、前記第1区画部及び第2区画部に、前記並ぶ方向に変形する変形部を設けることができる。
【0013】
また、前記ガイドユニットによって形成された前記電池スタックそれぞれの前記流路に前記温度調節媒体を供給する吸気ダクトをさらに含んで構成でき、前記吸気ダクトを流れる前記温度調節媒体が分岐して前記電池スタックそれぞれの前記流路に供給されるように構成することができる。
【0014】
さらに、本発明は、積層された複数の蓄電体からなる電池スタックを複数有する電源装置の前記電池スタックそれぞれに対し、前記電池スタックの温度を調整するための温度調節媒体が流通する前記電池スタックの積層方向に隣接した流路を形成するガイドユニットであり、並んで配置される前記電池スタック間のスペースに設けられるスタック間ガイド部材を有する。前記スタック間ガイド部材は、前記スペースを前記電池スタックが並ぶ方向に区画して前記電池スタックそれぞれに対応する前記各流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部の前記並ぶ方向への移動を許容する移動許容部と、を含んで構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池スタック間に設けられるスタック間ガイド部材が、電池スタック間のスペースを区画して電池スタックそれぞれの各流路を形成しつつ、電池スタックが並ぶ方向に移動するので、区画された各流路を流れる温度調節媒体(例えば、冷却風)の流量に応じて各冷却経路の大きさが変動し、冷却経路を流れる冷却風の圧力損失を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の複数の電池スタックを有する電源装置の断面図である。
【図2】実施例1の電源装置の冷却経路及び冷却経路を流れる冷却風の一例を示す図である。
【図3】実施例1のスタック間ガイド部材の斜視図(a)、及びスタック間ガイド部材の平面図(b)である。
【図4】実施例1のスタック間ガイド部材が配置された複数の電池スタックを有する電源装置の斜視図である。
【図5】実施例1のスタック間ガイド部材によって形成された冷却経路を示す図である。
【図6】実施例1のスタック間ガイド部材によって形成された冷却経路が変動する様子を示した図である。
【図7】スタック間ガイド部材の変形例を示す図である。
【図8】複数の電池スタックを有する電源装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
【0018】
図1から図8は、実施例1を示す図である。図1は、複数の電池スタック10を有する電源装置1の断面図である。
【0019】
電池スタック10は、複数の単電池(蓄電体)15が一定の方向に積層された組電池であり、積層方向両端に不図示の一対のエンドプレートを設け、複数の単電池15を拘束部材で積層方向に拘束して構成することができる。
【0020】
電池スタック10は、単電池の積層方向(X方向)に長尺状に形成される。本実施例の電源装置1は、少なくとも2つの電池スタック10がY方向に並んで配置され、電池スタック10それぞれに対し、電池スタック10の温度を調整するための温度調節媒体、例えば、電池スタック10を冷却する冷却風が流通する電池スタック10の積層方向に隣接した各流路を形成するガイドユニット20が設けられている。
【0021】
電源装置1は、電池スタック10及びガイドユニット20を収容するケース部材30、31を含む。例えば、電池スタック10は、ケース部材31の上面に固定され、上方からケース部材30が覆い被さるように電源装置1内に設けることができる。電源装置1は、ハイブリット自動車や電気自動車等に搭載される。
【0022】
以下の説明では、図1の左側の電池スタックを10a、右側の電池スタック10bと称し、電池スタック10を構成する単電池15が積層される方向をX方向、X方向に直交し、電池スタック10a、10bが並んで配置される方向をY方向、電池スタック10の上下方向であるXY平面の鉛直方向をZ方向として、説明する。
【0023】
ガイドユニット20は、電源装置1の冷却構造を構成し、左側電池スタックを10a及び右側電池スタック10bそれぞれの独立した冷却経路を形成する。ガイドユニット20は、Y方向に並んで配置される左側電池スタック10aと右側電池スタック10bとの間のスペースに配置されるスタック間ガイド部材21と、左側電池スタック10aとケース部材30との間に配置されるガイド部材22と、右側電池スタック10bとケース部材30との間に配置されるガイド部材23とを含んで構成される
【0024】
ガイド部材22、23は、電池スタック10a、10bのY方向側面であって、スタック間ガイド部材21が配置される側面の反対側の側面に配置される流路形成部材である。つまり、ガイド22、23は、電池スタック10とケース部材30との間のスペースに、積層方向に隣接した各電池スタックの流路を形成する。
【0025】
ガイド部材22は、積層方向に延び、左側電池スタック10aの左側面に流路11aを形成する。例えば、ガイド部材は、図1に示すように略コの字状に形成することができる。なお、ガイド部材22の形状は、略コの字状に限らず、単電池15の側面の形状等に合わせたり、流路11aを流れる冷却風の流量を十分に確保できる断面積を有するように、適宜任意の形状に構成できる。
【0026】
ガイド部材22の上下方向(Z方向)の両端部には、不図示の接合部が設けられ、左側電池スタック10aを構成する各単電池15に設けられた延設部15aに、接合部を介して取り付けられる。なお、ガイド部材22と左側電池スタック10aとの隙間に、シール部材を設けてもよい。また、各単電池15はX方向に隣り合って積層されているので、各単電池15の延設部15aが積層方向に連なって連続した1つの電池スタック10aの延設部として構成される。単電池15の延設部15aは、左右方向(Y方向)両側面それぞれ設けられている。
【0027】
ガイド部材23は、ガイド部材22同様に、積層方向に延び、右側電池スタック10bの右側面に流路11bを形成するように略コの字状に形成されている。ガイド部材23もその上下方向の両端部に不図示の接合部が設けられ、各単電池15の延設部15aに、接合部を介して右側電池スタック10bの右側面に取り付けられる。
【0028】
スタック間ガイド部材21は、所定の間隔を空けて並んで配置される左側電池スタック10aと右側電池スタック10bとの間のスペースに配置され、このスペースを電池スタック10a、10bが並ぶ左右方向に区画して電池スタック10a、10bそれぞれに対応する流路11c、11dを形成する。
【0029】
図2は、本実施例の電源装置1の冷却経路を説明する図である。電源装置1は、吸気口2及び排気口3を有する。吸気口2には、不図示の冷却装置と接続する吸気ダクト4が接続される。排気口3には、電源装置1の外部に電池スタック10の周囲及び単電池15間を流通した冷却風を排気する排気ダクト5が接続される。
【0030】
左側電池スタック10aの冷却経路は、流路11a、流路11c及び流路11eとで構成される。流路11eは、流路11aと流路11cとに挿通するY方向に延びる流路であり、左側電池スタック10aの積層方向端面とケース部材30との間のスペースで構成されている。
【0031】
流路11cは、吸気ダクト4と挿通しており、吸気ダクト4を流れる冷却風のうち分岐部4aによって分岐されて流路11c側に流入した冷却風が流通する。流路11aは、排気ダクト5と挿通しており、吸気ダクト4から分岐して流路11c側に流入し、左側電池スタック10aとの間で熱交換を行った冷却風が排気ダクト5に向かって流れる。
【0032】
右側電池スタック10bの冷却経路と、左側電池スタック10aの冷却経路とは、独立した冷却経路として構成される。右側電池スタック10bの冷却経路は、流路11b、流路11d及び流路11fとで構成される。流路11fは、流路11bと流路11dとに挿通するY方向に延びる流路であり、右側電池スタック10bの積層方向端面とケース部材30との間のスペースで構成されている。
【0033】
流路11dは、吸気ダクト4と挿通しており、吸気ダクト4を流れる冷却風のうち分岐部4aによって分岐されて流路11d側に流入した冷却風が流通する。流路11bは、排気ダクト4と挿通しており、吸気ダクト4から分岐して流路11d側に流入し、右側電池スタック10bとの間で熱交換を行った冷却風が排気ダクト5に向かって流れる。なお、左側電池スタック10a及び右側電池スタック10bの各冷却経路に接続される各排気ダクト5は、それぞれの排気口3から延設方向の途中で1つの排気ダクトに接続されるように、1つの排気ダクトが2つに分岐されて各排気口3を通じて各冷却経路を接続されるように構成してもよい。
【0034】
また、吸気ダクト4から流れる冷却風を左側電池スタック10aの冷却経路及び右側電池スタック10bの冷却経路それぞれに分岐させる分岐部4aは、例えば、スタック間ガイド部材21の吸気口側に設けることができる。また、分岐部4aを設けずに吸気ダクト4の流出側を、電池スタック10a、10bのそれぞれの冷却経路に接続される2つの分岐したダクトに構成し、分岐された各ダクトと電池スタック10a、10bの各冷却経路をそれぞれ接続してもよい。
【0035】
また、本実施例では、吸気ダクト4から冷却風が流路11c及び流路11dに導かれる一例を示したが、これに限らず、例えば冷却ダクトからの冷却風を流路11a及び流路11bに導くようにしてもよい。さらに、電源装置1の吸気口2及び排気口3を電源装置1の1つの側面に配置しているが、例えば、吸気口2をX方向における一方の側面に、排気口3を他方の側面にそれぞれ配置し、左側電池スタック10a及び右側電池スタック10bの各冷却経路と接続するようにしてもよい。
【0036】
次に、本実施例のスタック間ガイド部材21について詳細に説明する。図3は、スタック間ガイド部材21の斜視図である。
【0037】
スタック間ガイド部材21は、隣り合って配置される2つの電池スタックの間のスペースを一方の電池スタックの冷却経路に対応するスペースと、他方の電池スタックの冷却経路に対応するスペースとに区画し、両電池スタックの独立したそれぞれの冷却風の流路を形成する流路形成部としての機能を担う。
【0038】
スタック間ガイド部材21は、左側電池スタック10aの右側面を積層方向に流れる流路11cを形成する第1区画部21aを有する。第1区画部21aは、電池スタック10a、10b間のスペースを区画する方向(電池スタック10の上下方向(Z方向))に所定の高さを有し、かつ積層方向(X)に延びる板状に形成されている。第1区画部21aは、電池スタック10a、11bの積層方向の長さと略同じ長さを有する。
【0039】
また、スタック間ガイド部材21は、第1区画部21aに対してY方向に所定の間隔Sを空けて位置し、右側電池スタック10bの左側面を積層方向に流れる流路11dを形成する第2区画部21bを有する。第2区画部21bは、第1区画部21aと同じ高さを有し、かつ積層方向に同じ長さで略平行に延びる板状に形成されている。間隔Sで離間する第1区画部21a及び第2区画部21bの間は、間隔Sが空気層の役割を担い、流路11cと流路11dとの間の伝熱を抑制することができる。
【0040】
第1区画部21a及び第2区画部21bは、一体に形成されて所定の間隔Sが形成されるように、Z方向に開口する略コの字状に構成でき、図3の例では、電池スタック10の上方に開口した略コの字状に形成されている。略コの字状に形成された開口側と反対側の底部21cは、間隔Sと同じ幅を有している。底部21c、つまり、第1区画部21a及び第2区画部21bの他端側は、後述する変形部材40と連結される。
【0041】
図4に示すように、第1区画部21aは、略コの字状の開口側であって電池スタック10の上方の延設部15aに対応する端部に、左側電池スタック10aとの接合部22aが設けられている。接合部22aは、延設部15aに設けられた取付部15bと係合し、左側電池スタック10aに対して接合部22aが取付部15bとの係合状態を維持したまま、左右方向(電池スタック10a、10bが並んで配置されるY方向)への移動を許容するスライド構造に形成されている。
【0042】
例えば、突起状の取付部15bと接合部22aに設けられた係合孔23aとが係合した状態で第1区画部21aが左右Y方向に移動することを許容するように、係合孔23aが取付部15bの逃げ領域(逃げ構造)を有したY方向に幅広の長い孔として構成し、取付部15bと接合部22aとを、第1区画部21a(スタック間ガイド部材21)が左右Y方向に移動することを許容するスライド構造に形成することができる。
【0043】
また、取付部15bの逃げ構造以外にも例えば、接合部22aと取付部15b(又は延設部15)とが互いに嵌り合うように形成し、第1区画部21aが左側電池スタック10aから着脱せずに(Z方向への移動が制限された状態で)、左右Y方向への移動を許容するスライド構造とすることができる。
【0044】
第2区画部21bにも同様に接合部22bが設けられ、右側電池スタック10bに対して接合部22b(係合孔23b)が取付部15bとの係合状態を維持したまま、左右方向への移動を許容するスライド構造に形成されている。
【0045】
このように本実施例のスタック間ガイド部材21は、第1区画部21a及び第2区画部21bによって構成される流路形成部と、電池スタック10a、10bが並ぶ方向に流路形成部が移動することを許容するように、電池スタック10a、10bの取付部15bに対して接合部22a、22bそれぞれがスライド構造に形成された移動許容部とを有するガイド部材として構成される。
【0046】
図5は、左側電池スタック10a及び右側電池スタック10bとの間に設けられたスタック間ガイド部材21を示す図であり、スタック間ガイド部材21によって形成された冷却経路である流路11c、流路11dを示している。
【0047】
図5に示すように、接合部22aが第1区画部21aからY方向に延設され、単電池15の延設部15aに設けられた取付部15bと係合する係合孔23aが、取付部15bに対する逃げ領域を有するようにY方向に長尺状に形成されている。接合部22bについても同様であり、取付部15bと係合する係合孔23bが、取付部15bに対する逃げ領域を有するようにY方向に長尺状に形成されている。
【0048】
また、単電池15の延設部15aのY方向の端面と第1区画部21aとの間には、シール部材24が設けられている。シール部材24は、例えば、ウレタン、EPDMやスポンジ素材などの伸縮性を有する材料で構成することができる。同様に、単電池15の延設部15aのY方向の端面と第1区画部21bとの間にもシール部材24が設けられている。
【0049】
左側電池スタック10aと右側電池スタック10bとの間のスペースの下方には、ケース部材31に固定された台座32が設けられている。台座32は、左側電池スタック10aと右側電池スタック10bとが載設される部材であるとともに、左側電池スタック10aと右側電池スタック10bとの間のスペースの上下方向下方における開口領域を塞ぐ部材である。
【0050】
台座32は、開口領域よりも大きく形成され、これら左側電池スタック10a及び右側電池スタック10bそれぞれの延設部15aが載設された状態で、スタック間ガイド部材21によって形成された流路11c、11bを流れる冷却風が、上下方向下方における開口領域から外部に流れ出ないように当該開口領域を塞ぐシール部材としての役割を担う。
【0051】
台座32の上面には、スタック間ガイド部材21と接着等によって連結する変形部材40が設けられている。変形部材40は、スタック間ガイド部材21の底部21cと連結し、スタック間ガイド部材21の左右方向への移動に伴って同じ方向に変形する。
【0052】
変形部材40は、例えば、弾性を有するゴム材を用いることができる。図6に示すように、変形部材40は、電池スタック10a、10bが並ぶ方向への流路形成部の移動によって同じ方向に変形(弾性変形)して、スタック間ガイド部材21の左右方向への移動を補助する役割を担う。
【0053】
図6は、スタック間ガイド部材21によって形成された各電池スタックに対応する冷却経路(流路11c、11d)が変動する様子を示した図である。
【0054】
流路11c及び流路11dの流路断面積は、吸気ダクト4から流れ込む冷却風の流量に対して圧力損失を抑制するように最適化することが好ましいが、吸気ダクト4から分岐された冷却風の各流量は分岐によって変動するので、例えば、固定的な流路断面積を有する流路に対して、冷却風の流量の設定許容量を超えると圧力損失が高くなり、冷却風が流れにくくなってしまう。
【0055】
本実施例のガイドユニット20は、並んで配置される左側電池スタック10aと右側電池スタック10bとの間に、第1区画部21a及び第2区画部21bによって構成される流路形成部と、これら電池スタック10a、10bが並ぶ方向に流路形成部が移動することを許容する移動許容部とを有するスタック間ガイド部材21が配置されるので、流路形成部によって形成された各流路11c、11dに流れる冷却風の各流量が相違しても、相違する各流量によって生じる圧力差によって流路形成部が移動し、流路11c及び流路11dの各流路断面積が変動する。
【0056】
図6に示すように、流路11cを流れる冷却風の流量が、流路11dを流れる冷却風の流量よりも大きくなった場合、圧力損失の発生又は上昇によって流路11c内の圧力が流路11d内の圧力よりも高くなるが、この圧力差によって生じる右方向への力によって流路形成部が右方向に移動して流路11cの流路断面積が流路11dの流路断面積よりも大きくなり、流路11cに流れる冷却風の流量に対して流路断面積を増加、すなわち、流路断面積が変化する前に所定の圧力損失以内で流通可能であった冷却風の許容量を増加させることができる。
【0057】
このように本実施例の電源装置1の冷却構造は、スタック間ガイド部材21によって各流路11c、11dを流れる冷却風の流量が変化しても、流量の変化に対して流路断面積が大きくなったり、小さくなったりと可変するので、冷却風の流量に対して最適な流路11c、11dを可変的に形成することができる。
【0058】
本実施例の電源装置1の冷却構造は、図6の例のように、流路11cを流れる冷却風の圧力損失が流路断面積の変動(流路断面積が大きくなること)によって抑制され、流路11cに冷却風が流れにくくなることを抑制でき、各電池スタック10a、10bの各冷却性能のバラツキを低減させることができる。
【0059】
また、図6に示すように、第1区画部21a及び第2区画部21bの間には、上下方向に間隔Sが設けられているので、第1区画部21a又は第2区画部21bは、流路11c又は流路11d内の圧力によって左右方向に変形することができる。このため、流路形成部の移動による断面積の増加と変形による増加により、冷却風の流量に対して最適な流路11c、11dをより可変的に形成することができる。
【0060】
なお、図6に示すように、シール部材24は伸縮性を有するので、流路形成部が右方向に移動して流路11cの断面積が流路11dの断面積よりも大きくなっても、第1区画部21a側のシール部材24がY方向の伸長し、第2区画部21b側のシール部材24がY方向に縮んで、シール性を損なうことはない。
【0061】
このシール部材24は、図5で示した変形部材40に適用することができる。例えば、第1区画部21a(第2区画部21b)を単電池15の下方の延設部15aのY方向の端面まで延設し、単電池15の下方の延設部15aのY方向の端面と第1区画部21a(第2区画部21b)との間にシール部材24を設けることで、電池スタック10a、10bが並ぶ方向への流路形成部の移動によってY方向に伸縮して、スタック間ガイド部材21の左右方向への移動を補助するように構成することができる。この場合、シール部材24は、スタック間ガイド部材21の左右方向への移動を補助する機能とともに、スタック間ガイド部材21によって形成された流路11c、11bを流れる冷却風が、電池スタック10a、10b間の下方の領域から漏れることを防止するシール機能を担うことができる。
【0062】
図7及び図8は、本実施例の変形例を示す図である。
【0063】
図7は、スタック間ガイド部材21の変形例を示す図であり、第1区画部21a又は第2区画部21bには、流路11c又は流路11d内の圧力による左右方向への変形をしやすくするために、上下方向の任意の箇所に変形部25が設けられている。変形部25は、例えば、壁部の一部を蛇腹状に形成することで第1区画部21a又は第2区画部21bに設けることができる。
【0064】
図8は、電池スタック10が上下方向に並んで配置された電源装置1の変形例を示す図である。図8に示すように、上述した左側電池スタック10a及び右側電池スタック10bが、上下方向(Z方向)に並んで配置され、上下の電池スタック10a、10bの間のスペースに、スタック間ガイド部材21が設けられた冷却構造の一例である。
【符号の説明】
【0065】
1 電源装置
10 電池スタック
20 ガイドユニット
21 スタック間ガイド部材
21a 第1区画部
21b 第2区画部
22a、22b 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の蓄電体からなる複数の電池スタックと、
前記電池スタックそれぞれに対し、前記電池スタックの温度を調整するための温度調節媒体が流通する前記電池スタックの積層方向に隣接した流路を形成するガイドユニットと、を含み、
前記ガイドユニットは、並んで配置される前記電池スタック間のスペースに設けられ、前記スペースを前記電池スタックが並ぶ方向に区画して前記電池スタックそれぞれに対応する前記各流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部の前記並ぶ方向への移動を許容する移動許容部とを含むスタック間ガイド部材を有することを特徴とする電源装置の冷却構造。
【請求項2】
前記移動許容部は、前記流路形成部によって形成された前記各流路に流れる前記温度調節媒体の流量が異なることで生じる圧力差によって前記流路形成部が前記並ぶ方向へ移動することを許容することを特徴とする請求項1に記載の電源装置の冷却構造。
【請求項3】
前記流路形成部は、前記電池スタック間の一方の電池スタックに設けられ、前記スペースを区画する方向に延びる第1区画部と、前記電池スタック間の他方の電池スタックに設けられ、前記第1区画部に対して所定の間隔を空けて配置されて前記スペースを区画する方向に延びる第2区画部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置の冷却構造。
【請求項4】
前記第1区画部及び第2区画部ぞれぞれの前記スペースを区画する方向における一端側には、対応する前記電池スタックとの接合部が設けられ、
前記移動許容部は、前記電池スタックに対して前記接合部が接合した状態で前記流路形成部の前記並ぶ方向への移動を許容するスライド構造を有することを特徴とする請求項3に記載の電源装置の冷却構造。
【請求項5】
前記第1区画部及び第2区画部それぞれの他端側が、前記並ぶ方向への変形を許容する変形部材と連結していることを特徴とする請求項4に記載の電源装置の冷却構造。
【請求項6】
前記第1区画部及び第2区画部は、前記並ぶ方向への変形する変形部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の電源装置の冷却構造。
【請求項7】
前記ガイドユニットによって形成された前記電池スタックそれぞれの前記流路に前記温度調節媒体を供給する吸気ダクトをさらに含み、
前記吸気ダクトを流れる前記温度調節媒体が分岐して前記電池スタックそれぞれの前記流路に供給されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の電源装置の冷却構造。
【請求項8】
積層された複数の蓄電体からなる電池スタックを複数有する電源装置の前記電池スタックそれぞれに対し、前記電池スタックの温度を調整するための温度調節媒体が流通する前記電池スタックの積層方向に隣接した流路を形成するガイドユニットであって、
並んで配置される前記電池スタック間のスペースに設けられるスタック間ガイド部材を有し、
前記スタック間ガイド部材は、
前記スペースを前記電池スタックが並ぶ方向に区画して前記電池スタックそれぞれに対応する前記各流路を形成する流路形成部と、
前記流路形成部の前記並ぶ方向への移動を許容する移動許容部と、
を含むことを特徴とするガイドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58373(P2013−58373A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195724(P2011−195724)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】