説明

電源装置

【課題】従来の電源装置においては、昇圧型DC−DCコンバータを採用し、制御回路により負荷変動による駆動電圧の変化は、昇圧機能における調整範囲を利用しているので、想定以上の電圧低下が要求された時には対応する手段がないものとなっていた。
【解決手段】本発明により、1つの昇降型正電位発生回路と、この昇降型正電位発生回路の出力に対応する負電位を発生する負電位発生回路とを接続し、それぞれの電位発生回路の出力の差分電圧で負荷を駆動する電源装置であって、出力電圧を昇降型正電位発生回路からの出力に対して2倍得ることを可能とし、かつ、昇降型正電位発生回路に電圧制御回路を付属させることで、負荷の変動により、この負荷に要求される入力電圧が半分以下となった場合においても、電圧制御回路により、負荷が正常に動作する出力電圧を出力可能な構成としたことを特徴とする電源装置とすることで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関するものであり、詳細にはDC電源を用いて、より高圧のDC電源を得るときに使用される、いわゆる、昇圧用電源回路にかかるものであり、この昇圧用電源回路を簡便な回路で安価に実現可能で、かつ、負荷変動に対する対応性の良い電源回路の提供を目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の電源装置100を、車両用灯具用として構成したときの例を示すものが図3であり、車両用の電源112にはスイッチ202aと、スイッチ202bとが取付けられ、これら、スイッチ202aとスイッチ202bとは、ダイオード124a、124bを介して、トランス128の一次側コイルに接続されている。
【0003】
そして、トランス128の二次側には、LEDランプの適宜数が直列に接続された光源ブロック58aと、光源ブロック58bとが、直列に接続されている。このとき、光源ブロック58bにはFET204を含む短絡回路が形成されていて、前記FET204を導通させることで、光源ブロック58bは短絡されて消灯されるものとなる。
【0004】
また、前記FET204のゲートにはベースが接地されたPNPトランジスタ206のコレクタが接続されており、このPNPトランジスタ206のベースには電源112からの電圧がスイッチ202aが投入されたときには印加されるものとなっている。このようにしたことで、スイッチ202aが投入されたときには、PNPトランジスタ206はOFFし、これに伴いFET204もOFFする。
【0005】
よって、光源ブロック58aと光源ブロック58bとは、双方とも点灯状態となる。またスイッチ202bのみが投入されたときには、PNPトランジスタ206はONと成り、よってFET204もONとなる。従って、光源ブロック58bは短絡されて消灯し光源ブロック58aのみが点灯するものとなり、例えば、テールランプとストップランプ、あるいは、すれ違いビームと走行ビームとの切り換えが可能となる。
【0006】
また、図4に示す電源装置90は、電源V2から供給された電圧を、制御回路91、コイル92、FET93、ダイオード94で昇圧を行い、コンデンサ95に正電が得られる。また、コンデンサ98a、ダイオード98b、98cでコンデンサ98dに負電圧を得ることができ、その差分で負荷(LEDなど)を駆動することで、従来の2倍の出力電圧を得ることができる。
【0007】
これにより、トランスを使用しないため、高効率の電源を構成できるようになる。また、LEDは定電流駆動を行う行うため、ダイオード94とコンデンサ98a、ダイオード98b、98cの間には、図5に配線図で示すような、OPアンプ99a、FET99b、電池99cなどで構成された定電流回路99が挿入されて、LEDの定電流駆動が行われている。
【特許文献1】特開2004−136716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の電源装置100においては、トランス128を使用しなければならないものであるので、効率が低いという問題点を生じるものとなっている。また、トランス128はコスト的にも高価となり、電源装置全体がコストアップするという問題点を生じている。
【0009】
また、図4に示した従来の電源装置90においては、昇圧回路のみを有するものであるので、例えば、一部の負荷の短絡により供給電力の低減が必要となったときに、出力電圧の加減幅が狭く、必要とされる電圧まで低下させることができず、この電源装置90を使用した装置全体が使用不要となるなどの問題点を生じている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記した従来の課題を解決するための具体的な手段として、1つの昇降型正電位発生回路の出力に対応する負電位を発生する負電位発生回路とを接続し、それぞれの前記電位発生回路の出力の差分電圧で負荷を駆動する電源装置であって、出力電圧を前記昇降型正電位発生回路からの出力に対して2倍得ることを可能とし、かつ、前記負荷の変動により、この負荷に要求される負荷電圧が、入力電圧の半分以下となった場合においても、電圧制御回路により、前記負荷が正常に動作する出力電圧を出力可能な構成としたことを特徴とする電源装置を提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、1つの昇降型正電位発生回路と、この昇降型正電位発生回路の出力のに対応する負電位発生装置を接続し、両電位発生装置の出力の差分電圧で他を駆動する電源装置としたことで、例えば、図4に示した従来の方式では、負荷の切り換えを行う場合などに、負荷が入力電圧×(2+α)倍以下となったときに、正(負)電源から見ると、入力電圧=負荷電圧×(α/2)となるため、負荷が変動する用途、特に入力電圧×(α/2)以下になる可能性がある用途のは対応できなかった点を解決し、より電源装置の汎用性を高めるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次ぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは、本発明に係る電源装置1を示すブロック図であり、この電源装置1には、DC−DCコンバータなどを制御する制御回路2が設けられ、この制御回路2には昇降圧型とした正電源部3が接続されている。
【0013】
そして、前記正電源部3から出力された信号は、正側短絡検出回路4を介してLEDなどである負荷部5の一端に入力されている。また、前記正電源部3からはチャージポンプなどとされた負電源部6に接続され、この負電源部6の出力は、負側短絡検出回路7を介して前記負荷部5の他端に接続されている。よって、前記負荷部5はフローティング状態で 駆動されている。
【0014】
また、前記正電源部3、正側短絡検出回路4、負側短絡検出回路7には、定電流制御部/保護制御部8が接続されていて、例えば、負荷部5が規定電流で点灯されているか否かなど夫々の部分の状態を測定し、制御回路2により正常状態が保たれるようフィードバック信号を送信している。
【0015】
図2は、図1に示したブロック図の要部を配線図化したものであり、前記正電源部3としては、いわゆる、SEPIC(Single Ended Primary Inductance Converter)と称され、例えば、制御回路2により制御されている正電源部3中に設けられているFETに与えるパルス波のデューティを変化させることで、昇圧と降圧とが行える昇降圧型と称されているDC−DCコンバータが採用されている。尚、上記SEPIC型と同様に昇降圧が行えるDC−DCコンバータとしては、Zetaコンバータ、Cukコンバータなどが知られており、本発明はこれらを採用することでも実現可能である。
【0016】
よって、前記正電源部3は、図2にも示されるように、従来採用されていた1個のインダクタンスと、1個のダイオードと、1個のコンデンサとから構成されるものではなく、2個のインダクタンスL1、L2と、2個のコンデンサC1、C3と、1個のダイオードD1が使用されているものとなっている。但し、この実施例における2個のインダクタンスL1と、インダクタンスL2とは、図3に示した従来例のトランス128とは異なり相互が電磁的に結合している必要はない。
【0017】
尚、前記正電源部3の出力端には抵抗器R1、R2とで成る電圧検出回路が設けられ、前記正電源部3が発生している電圧が定電流制御部/保護制御部8に入力されて、常時監視が行われると共に、前記制御回路2にフィードバックが行われ、前記正電源部3が発生する電圧が所定値となるように制御が行われている。
【0018】
また、前記正電源部3の出力と、LEDなど負荷部5との間には直列に抵抗器R3が挿入され、負荷部5に流れる電流値が、前記定電流制御部/保護制御部8を介して制御回路2にフィードバックされ、例えば、前記LEDの一部に短絡を生じたときには、電流制限を行うなどして、過電流により他のLEDまで破損が及ぶのを防止する。
【0019】
ここで、本発明では、前記正電源部3のスイッチング波形を利用し、正電源部3の出力と極性を反転した負電圧を負電源部6のダイオードD2、D3とコンデンサC4とで発生させる。従って、本発明では、前記負荷部5が、例えば複数のLEDである場合、前記LEDの半数を前記正電源部3からの電圧(電流)で点灯させ、残る半数を負電源部6からの電圧(電流)でフローティング状態として点灯しているものとなる。
【0020】
よって、前記正電源部3、および、負電源部6に要求される電圧は全LEDを点灯させるための電圧の半分で良く、それぞれの電源部3、6の回路の耐圧も半分で良いものとなり、部品のコストダウンにも寄与するものとなる。
【0021】
ここで、本発明の電源装置1にも、従来例のものと同様に負荷部5の一部を短絡するスイッチSWが設けられていて、例えば、全LEDを点灯しているときには前照灯の走行配光が得られ、一部を短絡したときにはすれ違い配光が得られるなど、明るさの調整が可能な構成とされているとする。よって、一部が短絡されたときには、電源装置1としては、短絡されたLEDの消費電力分だけ出力電圧を低減しなければならないものとなる。
【0022】
つまり、図2に示す回路の場合、スイッチSWが開放されている場合には4個のLEDを点灯させ、スイッチSWが閉止された場合には2個のLEDを点灯させれば良いものとなり、すなわち、負荷変動は2倍という大きなものとなり、印加する電圧も半減させなければ成らないものとなる。
【0023】
ここで、本発明の電源装置1においては、コイルL1、FETQ1とから成る昇圧部と、ダイオードD2、コイルL2による減圧部とが組合わされたSEPIC回路を採用しているので、前記制御回路から出力されるパルスのデューティなどを適宜化することで、2個直列のLEDの駆動に適切な電流を流すことのできる電圧を出力することが可能となる。
【0024】
尚、このときには、カップリングコンデンサC2を経由して、ダイオードポンプを構成するダイオードD2、D3に入力することで、正電圧と極性の反転した負電圧が発生するものであることは4個のLEDが点灯されているときと同様であるが、正電圧が半減していれば、負電圧も半減するので、両電源部3、6の出力の総合で2個直列のLEDの駆動に適切な電流値を流す電圧となる。
【0025】
以上に説明したように、本発明の電源装置1は車両用灯具の電源部として使用した例で説明したが、本発明はこれを限定するものではなく、街路灯、照明器具など、複数のLEDを光源として採用する灯具であれば、どのような目的の灯具に対しても実施が可能であり、このときには、上記と同様に点灯個数の切り換えによる調光も可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同じく、本発明に係る電源装置の構成を示す配線図である。
【図3】従来例を示す回路図である。
【図4】別の従来例を示す回路図である。
【図5】別の実施例に使用される定電流回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0027】
1…電源装置
2…制御回路
3…正電源部
4…正側短絡検出回路
5…負荷部
6…負電源部
7…負側短絡検出回路
8…定電流制御部/保護制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの昇降型正電位発生回路の出力に対応する負電位を発生する負電位発生回路とを接続し、それぞれの前記電位発生回路の出力の差分電圧で負荷を駆動する電源装置であって、出力電圧を前記昇降型正電位発生回路からの出力に対して2倍得ることを可能とし、かつ、前記負荷の変動により、この負荷に要求される負荷電圧が、入力電圧の半分以下となった場合においても、電圧制御回路により、前記負荷が正常に動作する出力電圧を出力可能な構成としたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記昇降型正電位発生回路がSEPICコンバータ、Zetaコンバータ、Cukコンバータの何れかであることを特徴とする請求項1記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−50067(P2009−50067A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212629(P2007−212629)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】