説明

電源装置

【課題】電流により磁気結合極性が変化する複合リアクトルを提供する。
【解決手段】複合リアクトルは、磁性部材1に巻線101,103を巻回し、磁性部材2に巻線102,104を巻回し、巻線101,102を接続してリアクトル11、巻線103,104を接続してリアクトル21として構成される。磁性部材1,2の磁性材料は、磁束密度が大きいほど透磁率が小さくなる性質とした。巻線101と102を、リアクトル21に流れる電流が生成した誘起電圧が弱めあう向きに接続することで、リアクトル11,21間の磁気結合極性はリアクトルに流れる電流によって変化し、一方がエネルギーを蓄積するとき他方の電流が増加し、一方がエネルギーを放出するとき他方の電流が減少する向きに磁気結合するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高効率化、低コスト化に伴い、電源装置にも小型化、高効率化、低コスト化が求められている。下記の特許文献1には、2つのインダクタで磁気ループの一部を共用し、低コスト化を図ったインダクタが開示されている。この特許文献1には、1つのコア部材を用いて、磁気的に独立した2つのインダクタを提供する技術が開示されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には、複数の閉磁路に複数の巻線を巻回して構成した、共振用リアクトルと平滑用リアクトルが開示されている。この特許文献2に開示された共振用リアクトルは、平滑用リアクトルと磁気的に結合しており、平滑用リアクトルに流れる電流を減少させるものである。
【0004】
また、下記の特許文献3には、1つの閉磁路に2つの巻線を施したチョークコイルが開示されている。この特許文献3に開示されたチョークコイルは、所定のインダクタンスを容易に得ることができて小型で安価なチョークコイルや、閉磁路を形成する磁性部材に狭磁路部を設けてインダクタンスに非線形性を持たせたチョークコイルを提供するものである。
【0005】
また、下記の非特許文献1には、タップ付インダクタ形フィルタを用いた絶縁型DC−DCコンバータが開示されている。この非特許文献1に開示されたDC−DCコンバータは、平滑インダクタがエネルギーを放出する期間に、トランスに流れる循環電流を低減し、高効率なDC−DCコンバータを提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−298219号公報
【特許文献2】特開2005−176540号公報
【特許文献3】特開2001−319817号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】電子情報通信学会技術研究報告.EE,電子通信エネルギー技術 Vol.102,No.475(20021018)pp.73−78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された従来のインダクタでは、2つのインダクタは磁気的に独立しており、電源回路の設計自由度を制限する場合があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された従来のリアクトルでは、2つのリアクトルの磁気結合極性は、リアクトルに流れる電流の向きや大きさによらず同極性であり、やはり電源回路の設計自由度を制限する場合があった。
【0010】
また、特許文献3に開示された従来のチョークコイルでも、2つの巻線の磁気結合極性は、巻線に流れる電流の向きや大きさによらず同極性であり、やはり電源回路の設計自由度を制限する場合があった。
【0011】
また、非特許文献1に開示された従来のDC−DCコンバータでは、循環電流を低減するためにフリーフィーリングダイオードが必要であり、コストを増加させる要因がある欠点があった。
【0012】
本発明の目的の1つは、2つのリアクトルに流れる電流の向きや大きさによって、この2つのリアクトルの磁気結合極性が変化する複合リアクトルを用いて、小型、高効率、低コストの電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電源装置はその一面において、複合リアクトルと、第1及び第2のスイッチング素子を直列接続した第1のスイッチングレッグと、第3及び第4のスイッチング素子を直列接続した第2のスイッチングレッグと、前記第1及び第2のスイッチングレッグと直流電源とに並列接続された第1の平滑コンデンサと、前記第1及び第2のスイッチング素子の直列接続点と前記第3及び第4のスイッチング素子の直列接続点との間に接続された、共振リアクトルとトランス1次巻線との直列接続体と、前記トランス1次巻線とトランス2次巻線とを磁気結合するトランスと、前記トランス2次巻線に生じた電圧を整流する整流回路と、前記整流回路により整流された電圧を平滑する平滑リアクトルおよび第2の平滑コンデンサと、を含み、前記第2の平滑コンデンサに並列接続された負荷に電力を供給する電源装置において、前記複合リアクトルは、少なくとも第1及び第2の閉磁路を形成し、前記各閉磁路を通る磁束の増加に伴って磁気抵抗が増加するように構成された磁性部材と、それぞれ前記第1及び第2の閉磁路の少なくとも一部を巻回する1又は複数の巻線を含み、当該各巻線を接続してなる第1のリアクトルと、それぞれ前記第1及び第2の閉磁路の少なくとも一部を巻回する1又は複数の巻線を含み、当該各巻線を接続してなる第2のリアクトルと、を含み、前記第1及び第2のリアクトルにともに電流が流れる場合に、前記第1のリアクトルに流れる電流が生成した磁束と、前記第2のリアクトルに流れる電流が生成した磁束とが、前記第1又は第2の閉磁路のうち一方の前記閉磁路については磁束を強め合い、他方の前記閉磁路については磁束を弱め合うように構成され、前記平滑リアクトルと前記共振リアクトルとに、前記第1と第2のリアクトルとを用いて、前記平滑リアクトルと前記共振リアクトルとを磁気的に結合させ、前記平滑リアクトルと前記共振リアクトルとの磁気結合極性が、前記共振リアクトルに流れる電流の向きとともに逆転するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の望ましい実施態様によれば、第1及び第2のリアクトルに流れる電流の向きや大きさに応じて第1及び第2のリアクトルを構成する各巻線の磁気結合の強さが変化することによって、各リアクトルの極性が変化する複合リアクトルを電源装置の平滑リアクトルと共振リアクトルとに適用することで、絶縁型DC−DCコンバータの平滑リアクトルがエネルギーを放出する期間に、共振リアクトルおよびトランス巻線に流れる循環電流を低減し、小型、高効率、低コストの電源装置を提供することができる。
【0015】
本発明によるその他の目的と特徴は、以下に述べる実施例の中で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る複合リアクトルの構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る複合リアクトルの構成図である。
【図3】本発明の実施例3に係る複合リアクトルの構成図である。
【図4】本発明の実施例4に係る複合リアクトルの構成図である。
【図5】本発明の実施例5に係る電源装置の回路構成図である。
【図6】本発明の実施例6に係る電源装置の回路構成図である。
【図7】本発明の実施例7に係る電源装置の回路構成図である。
【図8】本発明の実施例8に係る電源装置の回路構成図である。
【図9】本発明の実施例9に係る電源装置の回路構成図である。
【図10】本発明の実施例5に係る電源装置の動作を説明する電圧・電流波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態(以下、実施形態)について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面では、同一または相当部分には同一符号を付している。また、本実施形態においては、整流素子の一例としてダイオードを用いることとするがそれに限られるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1による複合リアクトルの構成図である。図1において、実施例1による複合リアクトルは、第1、第2の閉磁路を形成する磁性部材1,2を備える。磁性部材1には巻線101,103が巻回され、磁性部材2には巻線102,104が巻回されている。巻線103の一端と巻線104の一端とを接続し、巻線103の他端を端子123とし、巻線104の他端を端子124とし、端子123,124間をリアクトル21とする。巻線101と巻線102とは、リアクトル21に流れる電流を変化させた場合に生じる巻線101の誘起電圧と巻線102の誘起電圧とが弱め合う向きに接続される。そして、巻線101の他端を端子121とし、巻線102の他端を端子122とし、端子121,122間をリアクトル11とする。
【0019】
図1には、端子121から端子122へ電流が流れたときに巻線101,102が生成する磁束の向き111,112と、端子123から端子124へ電流が流れたときに巻線103,104が生成する磁束の向き113,114とを示している。
【0020】
ここで実施例1による複合リアクトルの作用を説明する。ただし、以下の説明においては、巻線101と巻線102の巻数は同一とし、巻線103と巻線104の巻数は同一とする。また、磁性部材1と磁性部材2の形状および磁性材料は同一とする。磁性部材1,2を形成する磁性材料には、磁束密度の増加に伴い徐々に透磁率が減少していく特性を有する材料を用いることにより、各磁性部材を通る磁束が増加するに伴って徐々に磁気抵抗が増加していくようにしている。
【0021】
まず、リアクトル11,21の一方にのみ電流が流れている場合について説明する。
【0022】
リアクトル11に電流が流れていない場合において、リアクトル21に電流が流れると、巻線103,104が第1、第2の閉磁路に等しい起磁力を生じ、磁性部材1,2には等しい磁束が誘起される。巻線101,102に生じる誘起電圧は等しく両者の誘起電圧は相殺されるため、リアクトル11の両端には電圧を生じない。したがって、この条件の下ではリアクトル11とリアクトル21は、磁気的に独立した特性を示す。
【0023】
同様に、リアクトル21に電流が流れていない場合には、リアクトル11に電流が流れてもリアクトル21の両端には電圧を生じないことが容易に理解できる。したがって、リアクトル11,21の一方にのみ電流が流れる場合には、リアクトル11とリアクトル21は、磁気的に独立した特性を示す。
【0024】
次に、リアクトル11,21の両方に電流が流れている場合を説明する。
【0025】
まず、リアクトル11には端子121から端子122へ、リアクトル21には端子123から端子124へ電流が流れている場合を説明する。巻線101〜104が生成する磁束の向き111〜114からも明らかなように、磁性部材1では磁束が弱め合い、磁性部材2では磁束が強め合うから、磁性部材2の方が磁性部材1よりも磁束密度が大きくなる。上述したように、磁性材料1,2は、磁束密度が大きいほど透磁率が小さい特性を有するため、第2の閉磁路の方が第1の閉磁路よりも磁気抵抗が大きくなる。したがって、巻線102と巻線104の磁気結合よりも、巻線101と巻線103の磁気結合の方が強くなり、リアクトル11とリアクトル21の磁気結合極性は、巻線101と巻線103の磁気結合極性に基づいて決定される。この場合には、リアクトル11とリアクトル21は、端子121と端子124が同極性になるように磁気結合する。
【0026】
したがって、上記の条件下ではリアクトル11とリアクトル21とは以下の相互関係を有する。まず、端子121に正、端子122に負の電圧を印加すると、端子124に正、端子123に負の電圧が生じる、すなわちリアクトル11がエネルギーを蓄積すると、リアクトル21が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じる。逆に、端子121に負、端子122に正の電圧を印加すると、端子124に負、端子123に正の電圧が生じる、すなわちリアクトル11がエネルギーを放出するとリアクトル21が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。また、端子123に正、端子124に負の電圧を印加すると、端子122に正、端子121に負の電圧が生じる、すなわちリアクトル21がエネルギーを蓄積するとリアクトル11が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じる。また逆に、端子123に負、端子124に正の電圧を印加すると、端子122に負、端子121に正の電圧が生じる、すなわちリアクトル21がエネルギーを放出するとリアクトル11が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。
【0027】
次に、リアクトル11には端子121から端子122へ電流が流れている状態のまま、リアクトル21には逆に端子124から端子123へ電流が流れている場合を説明する。この場合には、磁性部材2で磁束が弱め合い、巻線102と巻線104の磁気結合が強くなるから、リアクトル11とリアクトル21の磁気結合極性は、巻線102と巻線104の磁気結合極性で決定される。この場合には、リアクトル11とリアクトル21は、端子121と端子123が同極性になるように磁気結合する。したがって、リアクトル11がエネルギーを蓄積すると、リアクトル21が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じる。逆に、リアクトル11がエネルギーを放出すると、リアクトル21が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。また、リアクトル21がエネルギーを蓄積すると、リアクトル11が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じる。また逆に、リアクトル21がエネルギーを放出すると、リアクトル11が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。
【0028】
同様に、リアクトル11に端子122から端子121へ、リアクトル21に端子123から端子124へ電流が流れている場合は、リアクトル11とリアクトル21の磁気結合極性は、巻線102と巻線104の磁気結合極性で決まり、端子121と端子123が同極性になるように磁気結合する。この場合にも、リアクトル11がエネルギーを蓄積すると、リアクトル21が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じ、リアクトル11がエネルギーを放出すると、リアクトル21が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。また、リアクトル21がエネルギーを蓄積すると、リアクトル11が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じ、リアクトル21がエネルギーを放出すると、リアクトル11が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。
【0029】
さらに同様に、リアクトル11に端子122から端子121へ、リアクトル21に端子124から端子123へ電流が流れている場合は、リアクトル11とリアクトル21の磁気結合極性は、巻線101と巻線103の磁気結合極性で決まり、端子121と端子124が同極性になるように磁気結合する。この場合にも、リアクトル11がエネルギーを蓄積すると、リアクトル21が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じ、リアクトル11がエネルギーを放出すると、リアクトル21が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。また、リアクトル21がエネルギーを蓄積すると、リアクトル11が自身の電流を増加させる向きに電圧を生じ、リアクトル21がエネルギーを放出すると、リアクトル11が自身の電流を減少させる向きに電圧を生じる。
【0030】
以上のことから、リアクトル11,21の両方に電流が流れている場合は、リアクトル11とリアクトル21は磁気的に結合した特性を示し、一方の電流の向きを反転すると磁気結合極性が変化し、両方の電流の向きを反転すると磁気結合極性は変化しない。また、リアクトル11,21に流れる電流の向きによらず、一方がエネルギーを蓄積するとき他方の電流が増加する向きに磁気結合し、一方がエネルギーを放出するとき他方の電流が減少する向きに磁気結合している。
【0031】
以上説明した実施例1による複合リアクトルの作用は、巻線101と巻線102の巻数が同一、巻線103と巻線104の巻数が同一であって、磁性部材1と磁性部材2の形状および磁性材料が同一の場合である。これらの条件が変化すると、リアクトル11,21の一方に電流が流れていない場合にもリアクトル11とリアクトル21が磁気的に結合した特性を示すことや、リアクトル11,21の両方に電流が流れている場合にリアクトル11,21の磁気結合極性が変化する電流しきい値がゼロではなくなることなどは、容易に理解できる。
【0032】
また、図1において、磁性部材2は、第1の閉磁路が形成する平面からほぼ垂直に、磁性部材1を平行移動させた位置に配置されている。磁性部材1,2をこのような相対位置関係で配置することで、本発明の実施形態に係る複合リアクトルを小型化することができる。また、上記の実施形態に係る複合リアクトルを電源装置に適用する場合には、磁性部材1と磁性部材2の間に、トランスなど他の回路部品を配置することで、電源装置のさらなる小型化が期待できる。
【0033】
また、図1において、第1、第2の閉磁路が形成する平面の形状は四角形だが、いわゆるトロイダルコアなどの円形形状をした磁性部材を用いても同様の効果を得られることは当然である。また、第1、第2の閉磁路が分岐点を有した、いわゆるEEコアやEIコアなどの磁性部材を用いても同様の効果を得られることは当然である。さらに、フェライトなどのように、透磁率が比較的高い磁性材料を用いた場合や、磁束密度の増減に対して透磁率の変化が少なく、所定の閾値よりも磁束密度が増加すると急激に透磁率が減少するような磁性材料を用いた場合には、第1、第2の閉磁路を通る磁束の増加に伴って徐々に磁気抵抗が増加するようにギャップを設けてもよい。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の実施例2に係る複合リアクトルについて図2を参照しつつ説明する。図2は、本発明の実施例2による複合リアクトルの構成図である。図2において、実施例2による複合リアクトルは、第1、第2の閉磁路を形成する磁性部材1,2を備える。磁性部材1には巻線201が巻回され、磁性部材2には巻線202が巻回され、磁性部材1,2を束ねるように巻線203が巻回されている。巻線201に流れた電流が生成した磁束と、巻線202に流れた電流が生成した磁束とが、巻線203と逆向きに鎖交するように、巻線201の一端と巻線202の一端とを接続し、巻線201の他端を端子221とし、巻線202の他端を端子222とし、端子221,222間をリアクトル12とする。また、巻線203の両端を端子223,224とし、端子223,224間をリアクトル22とする。
【0035】
図2には、端子221から端子222へ電流が流れたときに巻線201,202が生成する磁束の向き211,212と、端子223から端子224へ電流が流れたときに巻線203が磁性部材1,2に生成する磁束の向き213,214とを示している。
【0036】
この実施例2による複合リアクトルが備えたリアクトル12,22の作用は、図1の実施例1による複合リアクトルが備えたリアクトル11,21の作用と同様であることが理解できる。実施例2による複合リアクトルは、実施例1による複合リアクトルと比べ、リアクトル22の構成を簡素化できる効果がある。
【実施例3】
【0037】
図3は、本発明の実施例3による複合リアクトルの構成図である。図3において、実施例3による複合リアクトルは、閉磁路331,332,333を形成する磁性部材3を備える。閉磁路331,333の共通部分に巻線301が巻回され、閉磁路332,333の共通部分に巻線302が巻回され、閉磁路331,332の共通部分に巻線303が巻回されている。巻線303の両端を端子323,324とし、端子323,324間をリアクトル23とする。リアクトル23に流れた電流が生成した巻線301の誘起電圧と巻線302の誘起電圧とが弱め合う向きに、巻線301の一端と巻線302の一端とを接続し、巻線301の他端を端子321とし、巻線302の他端を端子322とし、端子321,322間をリアクトル13とする。
【0038】
閉磁路331,333の共通部分と閉磁路332,333の共通部分には、それぞれギャップ341,342が設けられている。このギャップは、磁性部材の通常の部位に比べて断面積の小さな部位となっており、磁性部材を通る磁束の増加に伴って徐々に磁気抵抗が増加するように、磁路に対して垂直方向に対して徐々に断面積が変化する形状としている。もちろん、磁性部材3として、磁束密度の増加に伴い徐々に透磁率が減少していく性質の磁性材料を用いることとしてもよく、その場合にはギャップを設けなくても構わない。また、ギャップは、図3に示されている態様に限られず、磁性部材に1又は複数個設けることとしてもよい。
【0039】
この実施例3による複合リアクトルの閉磁路331,332が、実施例1による複合リアクトルの第1、第2の閉磁路に相当し、どちらも磁束の増加に伴って徐々に磁気抵抗が増加することを考慮すれば、実施例3による複合リアクトルが備えたリアクトル13,23の作用は、図1の実施例1による複合リアクトルが備えたリアクトル11,21の作用と同様であることが理解できる。なお、実施例3による複合リアクトルは、実施例1による複合リアクトルと比べ、磁性部材の数を減らす効果がある。
【実施例4】
【0040】
次に図4を参照しつつ、本発明の実施例4に係る複合リアクトルについて説明する。図4は、本発明の実施例4による複合リアクトルの構成図である。図4において、実施例4による複合リアクトルは、第1、第2の閉磁路を形成する磁性部材1,2を備える。磁性部材1には巻線401,403が巻回され、磁性部材2には巻線402,404が巻回されている。巻線403の両端を端子423,424とし、端子423,424間をリアクトル34とする。巻線404の両端を端子425,426とし、端子425,426間をリアクトル44とする。端子423から端子424に流れた電流が生成した巻線401の誘起電圧と、端子425から端子426に流れた電流が生成した巻線402の誘起電圧とが弱め合う向きに、巻線401の一端と巻線402の一端とを接続し、巻線401の他端を端子421とし、巻線402の他端を端子422とし、端子421,422間をリアクトル14とする。
【0041】
図4には、端子421から端子422へ電流が流れたときに巻線401,402が生成する磁束の向き411,412と、端子423から端子424へ電流が流れたときに巻線403が生成する磁束の向き413と、端子425から端子426へ電流が流れたときに巻線404が生成する磁束の向き414とを示している。
【0042】
実施例4による複合リアクトルの作用を説明する。ただし、この説明では、巻線401と巻線402の巻数は同一とし、巻線403と巻線404の巻数は同一とする。また、磁性部材1と磁性部材2の形状および磁性材料は同一とする。磁性部材1,2を通る磁束の増加に伴って徐々に磁気抵抗が増加していくように、この磁性部材1,2を構成する磁性材料には、磁束密度の増加に伴い徐々に透磁率が減少していく特性を有する材料を用いる。
【0043】
この実施例4による複合リアクトルの構成は、図1の実施例1による複合リアクトルの構成において、リアクトル21を分離して、2つのリアクトル34,44としたことが理解できる。したがって、リアクトル34に端子423から端子424へ電流が流れ、リアクトル44に端子425から端子426へ電流が流れ、両者の電流と電流変化がほぼ等しく、ともにエネルギーを放出するとき、リアクトル14の電流が減少する向きに磁気結合していることは容易に理解できる。
【0044】
リアクトル34,44が、ともにエネルギーを放出するときでも、リアクトル34とリアクトル44に流れる電流の大きさが異なれば、リアクトル14に流れる電流の向きによって、リアクトル14の電流が減少する効果の大小が変わる場合もある。例えば、リアクトル34,44の電流の向きは上記の通りで、リアクトル34の電流よりもリアクトル44の電流の方が大きく、巻線404が生成する起磁力よりも巻線401,402が生成する起磁力の方が小さい場合は、リアクトル14には端子421から端子422へ電流が流れた方が、逆向きに電流が流れるよりも、磁性部材1、2の磁束密度の差が大きくなるため、第1、第2の閉磁路の磁気抵抗の差が顕著となり、よりリアクトル14の電流が減少する効果が得られる。
【実施例5】
【0045】
次に図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る複合リアクトルを適用した電源装置について説明する。図5は、本発明の実施例5による電源装置の回路構成図である。図5において、ダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q1,Q2を直列接続した第1のスイッチングレッグと、ダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子Q3,Q4を直列接続した第2のスイッチングレッグと、平滑コンデンサC1とが直流電源Vに並列に接続されている。ここで、スイッチング素子としてMOSFETを用いた場合は、逆並列ダイオードを省略し、MOSFETのボディダイオードを利用することができる。スイッチング素子Q1、Q2の直列接続点と、スイッチング素子Q3,Q4の直列接続点との間に、巻線N1と共振リアクトルLrとが直列接続されている。
【0046】
トランスTr1は、巻線N1,N21,N22を磁気結合している。巻線N21の一端と巻線N22の一端とが接続され、巻線N21の他端はダイオードD1の一端に接続され、巻線N22の他端はダイオードD2の一端に接続され、ダイオードD1の他端とダイオードD2の他端とが接続されている。ダイオードD1,D2の接続点に平滑リアクトルLの一端が接続され、平滑リアクトルLの他端に平滑コンデンサC2の一端が接続され、平滑コンデンサC2の他端に巻線N21,N22の接続点が接続されている。
【0047】
この実施例5による電源装置は、スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフし、平滑コンデンサC2に並列接続された負荷Rに、直流電源Vのエネルギーを供給する。
【0048】
ここで、共振リアクトルLrと平滑リアクトルLとして、図1の本発明の実施例1に係る複合リアクトルを用いている。ここでは、共振リアクトルLrにリアクトル11を適用し、平滑リアクトルLにリアクトル21を適用している。
【0049】
まず、詳細な動作説明に先立って、図5の回路図において電圧、電流を表す記号を定義する。スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフさせるための制御信号をゲート信号VgQ1〜VgQ4とし、論理"H"でオン状態、論理"L"でオフ状態とする。また、スイッチング素子Q1〜Q4と、それぞれ逆並列に接続されたダイオードとに流れる合成電流は、それぞれIQ1〜IQ4とし、スイッチング素子の順方向を正とする。ダイオードD1,D2の電流ID1,ID2は、ダイオードの順方向を正とする。
【0050】
巻線N1の両端の電圧VN1は、第2のスイッチングレッグから第1のスイッチングレッグへ向く向きを正とする。また、共振リアクトルLrの電流ILrは、第1のスイッチングレッグから第2のスイッチングレッグへ流れる向きを正とする。平滑リアクトルLの電流ILは、ダイオードD1,D2の接続点から平滑コンデンサC2へ流れる向きを正とする。
【0051】
図10は、実施例5の動作を説明する電圧・電流波形図である。以下、図10を参照しながら実施例5に係る電源装置の動作を詳細に説明する。ただし、図10において、(a)〜(g)は、モードa〜gを表す。
【0052】
(モードa)
まず、モードaでは、スイッチング素子Q1,Q4がオン状態、スイッチング素子Q2,Q3がオフ状態であり、直流電源Vの電圧が、スイッチング素子Q1,Q4、共振リアクトルLrを介してトランスTr1の巻線N1に印加されている。ダイオードD2は阻止状態であり、巻線N21に生じた電圧が、ダイオードD1、平滑コンデンサC2を介して平滑リアクトルLに印加され電流ILが徐々に増加し、負荷Rにエネルギーが供給される。
【0053】
(モードb)
スイッチング素子Q4をオフすると、Q4を流れていた電流ILrは、スイッチング素子Q3の逆並列ダイオードを導通する。このとき、スイッチング素子Q3をオンする。電流ILrは、共振リアクトルLr、巻線N1、スイッチング素子Q3の逆並列ダイオード、スイッチング素子Q1を通る経路で還流する。このように、モードbにおいて共振リアクトルLrと巻線N1とを流れる電流を、以後、循環電流とする。
【0054】
巻線N1には直流電源Vの電圧が印加されていない。したがって、平滑リアクトルLに蓄積されているエネルギーは負荷Rに供給され、電流ILは徐々に減少していく。
【0055】
この実施例5では、共振リアクトルLrと平滑リアクトルLとして、図1の実施例1による複合リアクトルを用いている。ここでは、共振リアクトルLrとしてリアクトル11を用い、平滑リアクトルLとしてリアクトル21を用いている。前述の通り、実施例1の複合リアクトルは、リアクトル21がエネルギーを放出するとき、リアクトル11の電流が減少する向きに磁気結合している。
【0056】
したがって、リアクトルLrの電流ILrは徐々に減少し、循環電流は減少していく。循環電流が減少すると、循環電流が流れる経路で損失するエネルギーを低減できる。
【0057】
また、循環電流の低減に伴い、巻線N21とダイオードD1を通る経路に流れていた電流は、巻線N22とダイオードD2を通る経路にも分流する。循環電流を低減するほど、この2つの経路に均等に電流が分流するようになるため、導通損失を低減できる。
【0058】
さらに、循環電流を低減すると、後述の、モードbからモードcへの切り替わりにおいて、スイッチング素子Q1の遮断電流が低減し、スイッチング損失も低減できる。
【0059】
このように、循環電流を低減すると導通損失とスイッチング損失を低減でき、電源装置の効率を向上する効果がある。
【0060】
(モードc)
スイッチング素子Q1をオフすると、Q1を流れていた循環電流は、平滑コンデンサC1を介してスイッチング素子Q2の逆並列ダイオードを導通する。このとき、スイッチング素子Q2をオンする。スイッチング素子Q2の逆並列ダイオード、共振リアクトルLr、巻線N1、スイッチング素子Q3の逆並列ダイオードを流れ、平滑コンデンサC1へ電流が流れる。共振リアクトルLrには、直流電源Vの電圧が印加され、電流ILrは減少していく。
【0061】
スイッチング素子Q2,Q3はオン状態であるから、電流ILrがゼロに達した後は、逆向きに電流ILrが増加していく。これに伴い、巻線N21とダイオードD1を通る電流ID1は減少し、巻線N22とダイオードD2を通る電流ID2が増加していく。
【0062】
(モードd)
電流ID1がゼロに達すると、モードdに移行する。このモードdは、モードaの対称動作である。以降、モードe,fの後、モードaへ戻る。モードd〜fは、モードa〜cの対称動作であり、容易に理解できるため、詳細な説明は省略する。
【0063】
このように、実施例5による電源装置では、実施例1による複合リアクトルを用いて循環電流を低減し、導通損失とスイッチング損失を低減して、電源装置の効率を向上している。また、損失が低減するので放熱構造を簡素化でき、電源装置の小型化や低コスト化にも効果がある。
【0064】
この実施例5による電源装置では、実施例1による複合リアクトルを用い、共振リアクトルLrとしてリアクトル11を用いて、平滑リアクトルLとしてリアクトル21を用いているが、逆に共振リアクトルLrとしてリアクトル21を用い、平滑リアクトルLとしてリアクトル11を用いてもよい。また、実施例2や実施例3による複合リアクトルを用いてもよい。もちろん、2つのリアクトルに流れる電流の向きに寄らず、一方がエネルギーを放出するとき他方の電流が減少する向きに磁気結合された他の複合リアクトルを用いてもよい。
【0065】
また、図5に示した実施例5による電源装置の回路構成では、2つのダイオードD1,D2を用いた整流回路としているが、4つのダイオードを用いてダイオードブリッジ整流回路を構成しても、同様の原理で循環電流を低減すれば、導通損失とスイッチング損失を低減できることは容易に理解できる。
【実施例6】
【0066】
次に図6を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る複合リアクトルを適用した実施例6の電源装置について説明する。図6は、本発明の実施例6による電源装置の回路構成図である。図6において、図5の実施例5による電源装置の回路構成と異なる点を説明する。まず、実施例6の電源装置は、実施例5の共振リアクトルLrを、2つの共振リアクトルLr1,Lr2の直列接続としている点で相違している。
【0067】
トランスTr2は、巻線N1,N2を磁気結合している。巻線N2の一端にダイオードD1の一端と平滑リアクトルL2の一端が接続され、巻線N2の他端にダイオードD2の一端と平滑リアクトルL1の一端が接続され、平滑リアクトルL1の他端と平滑リアクトルL2の他端とが接続され、ダイオードD1の他端とダイオードD2の他端とが接続されている。平滑リアクトルL1,L2の接続点と、ダイオードD1,D2の接続点との間に平滑コンデンサC2が接続されている。
【0068】
この実施例6による電源装置も、スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフし、平滑コンデンサC2に並列接続された負荷Rに、直流電源Vのエネルギーを供給する。
【0069】
ここで、共振リアクトルLr1と平滑リアクトルL1として、また共振リアクトルLr2と平滑リアクトルL2として、それぞれ図1の本発明の実施例1による複合リアクトルを用いている。つまり、実施例6による電源装置は、2つの複合リアクトルを用いており、それぞれを第1のリアクトル、第2のリアクトルとする。ここでは、第1の複合リアクトルのリアクトル11,21をそれぞれ共振リアクトルLr1、平滑リアクトルL1とし、第2の複合リアクトルのリアクトル11,21をそれぞれ共振リアクトルLr2、平滑リアクトルL2としている。また、第1及び第2の複合リアクトルにおいて各リアクトルをそれぞれ入れ替えてもよいことは、実施例5と同様である。
【0070】
実施例6による電源装置では、実施例5による電源装置に一般的なカレントダブラ整流回路を適用しており、動作は容易に理解できる。また、循環電流が流れる期間には、平滑リアクトルL1,L2がともにエネルギーを放出すること、このとき共振リアクトルLr1,Lr2がともに電流が減少する向きに磁気結合していることに注意すれば、実施例5による電源装置と同様に、循環電流を低減できることは、容易に理解できる。
【0071】
この実施例6による電源装置では、カレントダブラ整流回路を適用しており、出力電流が比較的大きい場合にも高効率を得やすい効果がある。
【実施例7】
【0072】
次に図7を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る複合リアクトルを適用した実施例7の電源装置について説明する。図7は、本発明の実施例7による電源装置の回路構成図である。図7において、図6の実施例6による電源装置の回路構成と異なる点を説明する。まず、実施例7の電源装置は、実施例6の共振リアクトルLr1,Lr2の直列接続を、1つの共振リアクトルLr3としている点で相違している。
【0073】
この実施例7による電源装置も、スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフし、平滑コンデンサC2に並列接続された負荷Rに、直流電源Vのエネルギーを供給する。
【0074】
ここで、共振リアクトルLr3と平滑リアクトルL3,L4として、図4の本発明の実施例4による複合リアクトルを用いている。ここでは、共振リアクトルLr3としてリアクトル14を用い、平滑リアクトルL3としてリアクトル44を用い、平滑リアクトルL4としてリアクトル34を用いている。リアクトル34,44の極性は、端子424と端子426とを図7に示される態様で接続された場合のものとなっている。また、リアクトル14の極性は、端子421が第1のスイッチングレッグに接続された場合のものとなっている。このように接続すれば、電流ILrが正の向きに循環電流が流れる期間に、平滑リアクトルL4よりも平滑リアクトルL3の方が電流が大きく、ともにエネルギーを放出することから、実施例4で説明した原理により、循環電流を低減できる。
【0075】
実施例6による電源装置では、カレントダブラ整流回路を構成するために、2つの複合リアクトルを用いていたが、この実施例7による電源装置では、実施例4による複合リアクトルを適用し、1つの複合リアクトルでカレントダブラ整流回路を構成でき、小型化、低コスト化に効果がある。
【実施例8】
【0076】
次に図8を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る複合リアクトルを適用した実施例8の電源装置について説明する。図8は、本発明の実施例8による電源装置の回路構成図である。図8において、図7の実施例7による電源装置の回路構成と異なる点を説明する。実施例7では、共振リアクトルLr3として、図4の実施例4の複合リアクトルのリアクトル14を用いているが、実施例8では、リアクトル14を構成する巻線401と巻線402とを分離し、巻線401を共振リアクトルLr31とし、巻線402を共振リアクトルLr32とし、巻線401,402間にトランスTr2の巻線N1を接続している。つまり、実施例7では、第1のスイッチングレッグから第2のスイッチングレッグに向かい、巻線401、巻線402、巻線N1の順に直列接続されているが、実施例8では接続順序が異なり、巻線401、巻線N1、巻線402の順に直列接続されている。
【0077】
図4の実施例4の巻線と、図8の実施例8の回路図との対応関係をまとめる。まず、巻線401,402間は、接続が切り離されて、巻線N1が接続されている。巻線401を共振リアクトルLr31とし、端子421を第1のスイッチングレッグと接続するとともに、巻線402を共振リアクトルLr32とし、端子422を第2のスイッチングレッグと接続している。また、巻線404を平滑リアクトルL3とし、端子426を平滑コンデンサC2と接続するとともに、巻線403を平滑リアクトルL4とし、端子424を平滑コンデンサC2と接続している。
【0078】
実施例4の複合リアクトルは、磁気結合極性が変化しない2つの複合リアクトル(巻線401,403と、巻線402,404)で構成されていると考えてもよい。図8には、磁気結合極性を示している。
【0079】
以上のように、実施例7、8を比較すると、第1、第2のスイッチングレッグ間に接続されている直列接続体を構成する要素の直列接続順序が異なるだけであり、回路動作が同様であることは、容易に理解できる。
【0080】
この実施例8による電源装置では、実施例7による電源装置と比べ、第1、第2のスイッチングレッグ間に接続されている直列接続体を構成する要素の直列接続順序を自由に選ぶことができ、部品配置を最適化できるため、小型化、低コスト化に効果がある。
【実施例9】
【0081】
図9は、本発明の実施例9による電源装置の回路構成図である。図9において、図5の実施例5による電源装置の回路構成と異なる点について説明する。
【0082】
トランスTr2は、巻線N1,N20を磁気結合している。巻線N20の一端にダイオードD11,D12の一端が接続され、巻線N20の他端にダイオードD13,D14の一端が接続され、ダイオードD11,D13の他端に平滑リアクトルLの一端が接続され、ダイオードD12,D14の他端に平滑コンデンサC2の一端が接続され、平滑リアクトルLの他端と平滑コンデンサC2の他端とが接続されている。
【0083】
この実施例9による電源装置も、スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフし、平滑コンデンサC2に並列接続された負荷Rに、直流電源Vのエネルギーを供給する。
【0084】
ここで、共振リアクトルLrと平滑リアクトルLとして、それぞれ図1の本発明の実施例1による複合リアクトルを用いている。ここでは、第1の複合リアクトルのリアクトル11,21をそれぞれ共振リアクトルLr、平滑リアクトルLとしている。また、他のリアクトルとしてもよいことは、実施例5と同様である。
【0085】
実施例9による電源装置では、実施例5による電源装置に一般的なブリッジ整流回路を適用しており、動作は容易に理解できる。また、循環電流が流れる期間には、平滑リアクトルLがエネルギーを放出すること、このとき共振リアクトルLrは電流が減少する向きに磁気結合していることに注意すれば、実施例5による電源装置と同様に、循環電流を低減できることは、容易に理解できる。
【0086】
この実施例9による電源装置では、ブリッジ整流回路を適用して整流素子の耐圧を低減でき、出力電圧が比較的高い場合にも低コスト、高効率を得やすい効果がある。
【0087】
なお、本発明に関して、上記リアクトルとして表現した素子をインダクタと置き換えても構わない。
【符号の説明】
【0088】
1〜3 磁性部材、11〜14,21〜23,34,44 リアクトル、101〜104,201〜203,301〜303,401〜404,N1,N2,N21,N22 巻線、111〜114,211〜214,411〜414 磁束の向き、121〜124,221〜224,321〜324,421〜426 端子、331〜333 閉磁路、341,342 ギャップ、V 直流電源、R 負荷、C1,C2 平滑コンデンサ、L,L1〜L4 平滑リアクトル、Lr,Lr1〜Lr3,Lr31,Lr32 共振リアクトル、Tr1,Tr2 トランス、Q1〜Q4 スイッチング素子、D1,D2 ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合リアクトルと、
第1及び第2のスイッチング素子を直列接続した第1のスイッチングレッグと、
第3及び第4のスイッチング素子を直列接続した第2のスイッチングレッグと、
前記第1及び第2のスイッチングレッグと直流電源とに並列接続された第1の平滑コンデンサと、
前記第1及び第2のスイッチング素子の直列接続点と前記第3及び第4のスイッチング素子の直列接続点との間に接続された、共振リアクトルとトランス1次巻線との直列接続体と、
前記トランス1次巻線とトランス2次巻線とを磁気結合するトランスと、
前記トランス2次巻線に生じた電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電圧を平滑する平滑リアクトルおよび第2の平滑コンデンサと、を含み、前記第2の平滑コンデンサに並列接続された負荷に電力を供給する電源装置において、
前記複合リアクトルは、
少なくとも第1及び第2の閉磁路を形成し、前記各閉磁路を通る磁束の増加に伴って磁気抵抗が増加するように構成された磁性部材と、
それぞれ前記第1及び第2の閉磁路の少なくとも一部を巻回する1又は複数の巻線を含み、当該各巻線を接続してなる第1のリアクトルと、
それぞれ前記第1及び第2の閉磁路の少なくとも一部を巻回する1又は複数の巻線を含み、当該各巻線を接続してなる第2のリアクトルと、を含み、
前記第1及び第2のリアクトルにともに電流が流れる場合に、前記第1のリアクトルに流れる電流が生成した磁束と、前記第2のリアクトルに流れる電流が生成した磁束とが、前記第1又は第2の閉磁路のうち一方の前記閉磁路については磁束を強め合い、他方の前記閉磁路については磁束を弱め合うように構成され、
前記平滑リアクトルと前記共振リアクトルとに、前記第1と第2のリアクトルとを用いて、前記平滑リアクトルと前記共振リアクトルとを磁気的に結合させ、前記平滑リアクトルと前記共振リアクトルとの磁気結合極性が、前記共振リアクトルに流れる電流の向きとともに逆転するようにした
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第1乃至第4のスイッチング素子のそれぞれに、逆並列接続されたダイオードを備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記整流回路は、前記第1及び第2のダイオードを直列接続した第1のダイオードレッグと、前記第3及び第4のダイオードを直列接続した第2のダイオードレッグとを含み、
前記第1及び第2のダイオードの直列接続点と前記第3及び第4のダイオードの直列接続点との間に前記トランス2次巻線を接続し、前記第1及び第2のダイオードレッグの一端と前記平滑リアクトルの一端とを接続し、前記平滑リアクトルの他端に前記第2の平滑コンデンサの一端を接続し、前記第2の平滑コンデンサの他端に前記第1及び第2のダイオードレッグの他端を接続した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記整流回路は、第1及び第2のダイオードを含み、
前記トランス2次巻線は、第1のトランス2次巻線の一端と第2のトランス2次巻線の一端との接続体を含み、
前記第1のトランス2次巻線の他端に前記第1のダイオードの一端を接続し、前記第2のトランス2次巻線の他端に前記第2のダイオードの一端を接続し、前記第1のダイオードの他端と前記第2のダイオードの他端とを接続し、前記第1及び第2のダイオードの接続点と前記第1及び第2のトランス2次巻線の接続点との間に、前記平滑リアクトルと前記第2の平滑コンデンサとの直列接続体を接続した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記整流回路は、第1及び第2のダイオードを含み、
前記平滑リアクトルは、第1の平滑リアクトルの一端と第2の平滑リアクトルの一端との接続体を含み、
前記トランス2次巻線の一端に前記第1のダイオードの一端と前記第1の平滑リアクトルの他端とを接続し、前記トランス2次巻線の他端に前記第2のダイオードの一端と前記第2の平滑リアクトルの他端とを接続し、前記第1のダイオードの他端と前記第2のダイオードの他端とを接続し、前記第1及び第2のダイオードの接続点と前記第1及び第2の平滑リアクトルの接続点との間に、前記第2の平滑コンデンサを接続した、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項6】
前記磁性部材は、前記第1及び第2の閉磁路をそれぞれ形成する第1及び第2の磁性部材を含み、
前記第1のリアクトルは、前記第1の閉磁路を巻回する第1の巻線と、前記第2の閉磁路を巻回する第2の巻線とを接続して構成され、
前記第2のリアクトルは、前記第1の閉磁路を巻回する第3の巻線と、前記第2の閉磁路を巻回する第4の巻線とを含み、
前記第1のリアクトルは、前記第2のリアクトルに流れた電流が生成した、前記第1の巻線の誘起電圧と前記第2の巻線の誘起電圧とが弱め合う向きに、前記第1の巻線と前記第2の巻線とを接続して構成され、
前記共振リアクトルに前記第1のリアクトルを用いるとともに、前記第1及び第2の平滑リアクトルに前記第3及び第4の巻線を用いた、
ことを特徴とする請求項5に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−229396(P2011−229396A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171207(P2011−171207)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2007−320221(P2007−320221)の分割
【原出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】