説明

電源装置

【課題】蓄電池が自己放電により大きな電圧降下を起こしても出力電圧の変動を抑制する。
【解決手段】蓄電池8と、蓄電池8の正電位出力側へ順に直列接続された第1のスイッチ9と充電回路10とDCDCコンバータ11と出力端子12と、充電回路10とDCDCコンバータ11との間に正電位端子を接続されるとともに負電位端子を接地接続されたキャパシタ14と、キャパシタ14の正電位端子と蓄電池8の正電位出力側との間に接続されたキャパシタ電圧検出回路15と、充電回路10の入力側と蓄電池8の正電位出力側との間に接続されて前記キャパシタ電圧検出回路15からの信号により制御される第2のスイッチ16とを備え、通常起動モードと、非常起動モードと、放置モードとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種車両の起動の際に補助給電用に使用される電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の電源装置について図面を用いて説明する。図4は従来の電源装置の構成を示すブロック図である。この電源装置では蓄電池1から負荷2へ所定の電圧を印加する際に、予め蓄電池1の電圧を負荷側スイッチ3が切断された状態で電圧検出器4によって検出し、その電圧が負荷2へ印加するにあたって負荷2が動作するために適切な値である場合は負荷側スイッチ3を接続するものであった。
【0003】
また、仮に上記の電圧が負荷2へ印加するにあたって負荷2が動作するためには不十分で低い値である場合は、電圧検出器4からDCDCコンバータ5とコンバータ側スイッチ6とへ指示を出し、キャパシタ7に蓄えられた電荷による電圧をDCDCコンバータ5により任意の重畳用電圧としたうえでコンバータ側スイッチ6を接続し、負荷2へ印加する電圧を重畳後の適切な値として負荷側スイッチ3を接続するものであった。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−158831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電源装置では、蓄電池1が長期間にわたり放置されて自己放電を起こすことなどにより、蓄電池の端子電圧が降下した場合、特にその電圧降下が大きな値である時は電圧降下の絶対値のみならず電圧降下の変動幅もまたその時々によって大きく異なるという点を鑑み、その降下幅に対応するためのキャパシタ7の定数やDCDCコンバータ5の昇圧幅の設定は場合に応じて変動させる必要がある。しかしながら、これに対しては制御が非常に難しく、その結果として負荷2へ印加する電圧を適切な値へ設定することもまた難しくなるものであった。
【0007】
そこで本発明は、蓄電池が自己放電により大きな電圧降下を起こしても安定した電圧の供給が可能な電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために、本発明の蓄電装置は、蓄電池と、この蓄電池の正電位出力側へ順に直列接続された第1のスイッチと充電回路とDCDCコンバータと出力端子と、前記充電回路と前記DCDCコンバータとの間に正電位端子を接続されるとともに負電位端子を接地接続されたキャパシタと、このキャパシタの正電位端子と前記蓄電池の正電位出力側との間に接続された電圧検出回路と、前記充電回路の入力側と前記蓄電池の正電位出力側との間に接続されて前記電圧検出回路からの信号により制御される第2のスイッチとを備え、前記蓄電池の出力電圧が蓄電池閾値以上の際に前記出力端子への電圧出力が要求された場合の、前記第1のスイッチを接続状態とするとともに前記第2のスイッチを開放状態としたうえで前記キャパシタを充電しつつ前記DCDCコンバータを短絡状態とする通常起動モードと、前記蓄電池の出力電圧が前記蓄電池閾値以下の際に前記出力端子への電圧出力が要求された場合の、前記第1のスイッチを開放状態とするとともに前記キャパシタの電位を前記DCDCコンバータにより昇圧させる非常起動モードと、前記通常起動モードおよび前記非常起動モード以外の常時において、前記キャパシタの正電位端子の電位がキャパシタ第1閾値以下であることを前記電圧検出回路により検出されると前記第2のスイッチを短絡状態として前記キャパシタの正電位端子の電位がキャパシタ第2閾値以上となるまで充電される放置モードとを設けたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄電池が自己放電などにより大きな電圧降下を起こしても電源装置からは車両の起動に必要な電圧の供給が可能となり、長期間にわたって蓄電池への充電が行われなかった場合においても安定した車両の起動ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における電源装置のブロック図
【図2】本発明の一実施形態における電源装置の動作時の時間と電圧との関係図
【図3】本発明の一実施形態における電源装置でのDCDCコンバータ部のブロック図
【図4】従来の電源装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は本発明の電源装置の構成を示す回路ブロック図である。ここでは、蓄電池8と、この蓄電池8の正電位出力側に順に第1のスイッチ9と充電回路10とDCDCコンバータ11と出力端子12とからなる直列接続の回路とを接続し、負荷13へ出力電圧を印加している。そして、充電回路10とDCDCコンバータ11との間にキャパシタ14を接続しており、このキャパシタ14の正電位端子側を充電回路10とDCDCコンバータ11との間に、負電位端子側を接地接続している。また、キャパシタ14の正電位端子側と蓄電池8の正電位出力側との間にはキャパシタ電圧検出回路15を、充電回路10の入力側と蓄電池8の正電位出力側との間には第2のスイッチ16をそれぞれ接続し、第2のスイッチ16はキャパシタ電圧検出回路15からの信号によって、その接続、開放を制御されている。
【0013】
そして、上記の回路構成は以下の個別の機能モードによって動作することとなる。
【0014】
まず、蓄電池8の出力電圧が蓄電池閾値以上である場合となる通常起動モードについて説明する。ここで、通常起動モードとは電源起動指示端子17へ起動を指示する信号が入力された際、これと同時に蓄電池電圧検出回路18が動作し、この蓄電池電圧検出回路18によって蓄電池8の電圧が蓄電池閾値以上であることが検出された状態の動作を示している。また蓄電池閾値とは、その電圧を蓄電池8が有することによって負荷13が動作する出力電圧を出力端子12から取り出すことが可能となる値であり、この閾値は負荷の特性に応じて任意に設定すればよい。
【0015】
そして、蓄電池8の電圧が蓄電池閾値以上であることを検出すると、起動が指示されるまでは開放状態であった第1のスイッチ9を接続状態として、この電圧を充電回路10の内部に設けた分圧回路(図示せず)によって降下させ、その降下後の電圧をDCDCコンバータ11へ入力する。このときDCDCコンバータ11は電圧変換機能を有さない短絡状態となるよう、蓄電池電圧検出回路18からの制御信号によって制御され、充電回路10からの電圧がそのまま出力端子12の出力電圧として負荷13へ印加されることとなる。ここでは同時にキャパシタ14に対しても、充電回路10からの電圧により電荷の蓄積である充電が行われることとなる。
【0016】
また、キャパシタ電圧検出回路15は、キャパシタ14が充電状態にあることを検出することや、あるいは蓄電池8の電圧が蓄電池閾値以上であることを検出することによって第2のスイッチ16を開放状態として制御している。またさらに、第1のスイッチ9と第2のスイッチ16とが同時に短絡状態となることは無く、通常起動モードでは第2のスイッチ16は常に開放状態としている。
【0017】
ここで、充電回路10では例えば、蓄電池8の規格値電圧を12(V)とした場合、充電回路10の出力側の電圧が5(V)となるように分圧降下させ、この5(V)を出力端子12から負荷13へ印加するようにしている。また、キャパシタ14への充電電圧は、上記の充電回路10の出力側の電圧よりも低い値を上限値となるようキャパシタ14の定数を決定するとよい。そして、ここでのキャパシタ14の定数あるいは充電電圧は、キャパシタ14の充電電圧を適用したDCDCコンバータ11の動作時における昇圧の度合いやDCDCコンバータ11の安定動作範囲に応じて決定すればよい。
【0018】
次に、蓄電池8の出力電圧が蓄電池閾値以下である場合となる非常起動モードについて説明する。ここで、非常起動モードとは電源起動指示端子17へ起動を指示する信号が入力された際、これと同時に蓄電池電圧検出回路18が動作し、この蓄電池電圧検出回路18によって蓄電池8の電圧が蓄電池閾値以下であることが検出された状態の動作を示している。また蓄電池閾値とは、先に述べたものと同様である。
【0019】
そして、蓄電池8の電圧が蓄電池閾値以下であることを検出すると、起動が指示されるまで開放状態であった第1のスイッチ9を引き続き開放状態とするとともにDCDCコンバータ11を動作状態とするように蓄電池電圧検出回路18からの制御信号によって制御し、キャパシタ14における充電電圧をDCDCコンバータ11によって昇圧することで負荷13が動作可能となる出力電圧を出力端子12へ供給することとなる。つまり、蓄電池8と負荷13とは遮断された状態であり、蓄電池8から負荷13へは直接の電力供給は行わないこととなる。また、非常起動モードでも第2のスイッチ16は常に開放状態である。
【0020】
ここで、DCDCコンバータ11で昇圧させるための電圧に対応するキャパシタ14への予めの充電は、先に述べた通常起動モードにおいて負荷13への電力の供給と並行して行われた電荷の蓄積を適用する場合と、次に説明する放置モードにおいて行われる電荷の蓄積を適用する場合との何れかを適用することとなる。
【0021】
しかしながら実際には、通常起動モードにおいて負荷13への電力の供給と並行して行われた電荷の蓄積をそのまま適用する期間は非常に限られている。それは非常起動モードの動作を行う際、その前に電源装置が通常の動作をしていた時に充電していた電荷が十分残っていた場合のみであり、キャパシタ電圧検出回路がキャパシタ14の電圧を検出する検出動作によって電圧不足の検出を行うまでの期間となる。その一方で、以下で説明する放置モードにおいて行われる電荷の蓄積を適用する期間は上記の期間に比較して非常に長いものとなる。
【0022】
ここで、先に述べた通常起動モードおよび非常起動モード以外の状態である放置モードについて説明する。またここで、放置モードとは電源起動指示端子17へ起動を指示する信号が何ら存在しない放置された状態のモードを示しているものである。そして、特にその時における第1のスイッチ9を開放した状態で、かつ、第2のスイッチ16を時機に応じて接続することでのキャパシタ14に対する予めの充電が蓄電池8によって行われることが重要な機能となっている。
【0023】
この状態においては、常時連続して、あるいは一定期間毎に蓄電池8の電圧とキャパシタ14の正電位端子の電位をキャパシタ電圧検出回路15によって検出している。そこで、キャパシタ14の正電位端子の電位がキャパシタ第1閾値以下であることが検出された際には当初は開放状態であった第2のスイッチ16を短絡状態へと切り替えてキャパシタ14を充電する回路接続とするものである。また、キャパシタ14に対しては、その正電位端子の電位が上記のキャパシタ第1閾値よりも高い値であるキャパシタ第2閾値となることがキャパシタ電圧検出回路15によって検出されるまで、第2のスイッチ16を短絡状態としてキャパシタ14の充電を継続する。実際にはこの充電は瞬間的に行われることとなるため、キャパシタ第2閾値の検出は行わずに充電時間を設定することで対応し、検出動作に要する電力を抑制しても問題ない。この動作においは、蓄電池8の電圧がキャパシタ第2閾値よりも高い値を保持している際は、当然ながらキャパシタ14の充電をキャパシタ第2閾値に達するまで行うことは可能である。
【0024】
またここで、キャパシタ第1閾値は先にも述べたように、キャパシタ14の充電電圧を適用したDCDCコンバータ11における定電圧出力のための動作が可能となる下限値よりも高い値とすればよく、キャパシタ第2閾値はキャパシタ第1閾値よりも高い値であるとともに、キャパシタ14の定格電圧値と同等もしくはそれ以下であり、DCDCコンバータ11における定電圧出力動作が可能な値であればよい。あるいは、キャパシタ14の充電がキャパシタ第2閾値まで達することができない場合、つまり、蓄電池8の電圧がキャパシタ第2閾値以下へと低下している場合は、キャパシタ14の充電電圧値はその時の蓄電池8の電圧相当である充電可能上限値であって構わない。また、仮にキャパシタ14の正電位端子の電位がキャパシタ第1閾値以下であることが検出された場合であっても、蓄電池8の電圧がキャパシタ14の正電位端子の電位よりも低いことを検出すると、第2のスイッチ16は開放状態として、蓄電池8とキャパシタ14との接続は行わない。
【0025】
ここで、キャパシタ14の電圧についての充電の要否判断基準は、キャパシタ第1閾値とキャパシタ第2閾値との2つの値を設定してここで説明しているが、この値は単一の値として、この値以下もしくはそれ以上という点でキャパシタ電圧検出回路15による判断を行っても構わないが、次に説明するように、キャパシタ14の電圧を定期的に時間間隔を設けて検出することで小電力化を図り、これによって放置モードの特長を効果的にする点で2つの値は異なるものとするのが望ましい。そして、これらの決定については蓄電池8の自己放電特性に応じて2つの値の間隔を決定すればよい。そして、この放置モードでキャパシタ14に蓄えられた電荷が、非常起動モードにおける電力として適用されることが可能となる。
【0026】
また、放置モードにおけるキャパシタ電圧検出回路15の動作については、検出動作を連続して行うよりも、一定時間の間隔を開けて定期的に行うことが望ましい。これは、微弱ではあるもののキャパシタ電圧検出回路15の動作や第2のスイッチ16の動作にあたっては蓄電池8からの電力供給を受けることで可能となるものであるため、蓄電池8の長寿命化という観点でも一定間隔毎に行うのがよい。ここでは、説明の便宜上、キャパシタ電圧検出回路15と蓄電池電圧検出回路18とを個別の検出回路として示しているものの、単一の検出回路により構成しても構わないが、蓄電池電圧検出回路18は電源起動指示端子17であるところの車両でのアクセサリースイッチに接続する部分であるため、耐ノイズや突入性の信号に対応するための機能をもたせた上で独立していることが望ましい。これは同様に、キャパシタ電圧検出回路15は蓄電池電圧検出回路18に比較して小さな電力に対応し、かつキャパシタ14の電圧変動に対して感度良く対応できる特性を有していることが望ましい。
【0027】
また、第1のスイッチ9および第2のスイッチ16に関しても単一のスイッチ素子ではなく、それぞれによって使い分けを行うのが望ましい。ここでの第1のスイッチ9は、蓄電池8が通常に動作可能な蓄電池閾値以上の状態の際に接続(動作)し、それ以後は蓄電池8に電力を供給する発電機(図示せず)が動作する電源装置の連続運転の状態で連続して接続を行うため、大きな電流に対応可能なものであれば、第2のスイッチ16に比較して電力の消費量が大きなものであっても構わない。そして、第2のスイッチ16は蓄電池8が蓄電池閾値以下の状態の際に時限的かつ限られた容量のキャパシタ14に対しての接続を行うため、消費電力が小さく、短時間の動作に対応が可能な電流や電力容量のものであれば構わない。
【0028】
そして、この放電モードにおいては限られた蓄電池8からの電力によってキャパシタ14への充電を行うため、充電回路10においては分圧回路(図示せず)はその中で接続されずに、分圧回路(図示せず)相当の部位は短絡されて電力損失を可能な限り低減した接続としている。
【0029】
以上の構成により、通常起動モードと非常起動モードとでは、それぞれが複数の電圧を重畳させて必要な電圧を得るものではなく、それぞれのモードに対応した異なる蓄電素子からのエネルギーの供給を受けて電圧の出力を行うものとしている。これにより、各モードにおける電圧の供給源が独立し、そのうち通常起動モードでは適切な充電回路10の中の分圧回路(図示せず)における分圧比の設定とすること、あるいは非常起動モードではキャパシタ14の充電電圧の変動幅を、DCDCコンバータ11における定圧出力のための許容範囲内とすることで、いずれの場合においても出力電圧値を精度良く、かつ容易な回路構成によって得ることを可能とするものである。
【0030】
また、キャパシタ14には蓄電池8に比較して長期にわたり、DCDCコンバータ11を動作させて所望の電圧を出力端子12へ供給するための十分な電荷が蓄積された状態とすることができるため、通常起動モードに比較して非常起動モードは長期間の放置後の対応が可能となるものである。
【0031】
一般に、長期間に渡って電源装置が放置された状態に該当する、上記の通常起動モードの動作が行われない場合、蓄電池8は自己放電を起こすため、図2に示す蓄電池電圧の曲線のように、その電圧が徐々に低下することとなる。この状態が継続することにより何れかの時期に、図1に示す負荷13へ供給すべき電圧の下限となる蓄電池閾値を図2に示すように下回ることとなる(図中A点)。しかしながら、蓄電池閾値を図1に示す蓄電池8の電圧が下回ってもキャパシタ14には、DCDCコンバータ11によって昇圧させることにより負荷13を動作させるために十分な電圧を供給することのできる充電電圧が蓄えられることとなる。
【0032】
また、図2については先にも述べたように蓄電池電圧がキャパシタ第2閾値以下である場合は、キャパシタ電圧値をその時の蓄電池電圧相当である充電可能上限値であって構わない(図中B点)。そして、蓄電池電圧がキャパシタ第1閾値を下回った時点(図中C点)以後は充電動作が行われない。これらは図1に示すキャパシタ電圧検出回路15と蓄電池電圧検出回路18とを相互に関連して動作させることで制御している。
【0033】
つまり、蓄電池8の自己放電後であっても少なくともその電圧が、DCDCコンバータ11の動作下限値以上であればキャパシタ14に蓄積したエネルギーによって電源装置の起動が可能となる。そしてそれだけでなく、一定期間毎のキャパシタ14の電圧に対するキャパシタ電圧検出回路15での検出動作に伴うキャパシタ14への充電動作によって、蓄電池8の自己放電後においては、より長い期間においてキャパシタ14に蓄積したエネルギーでの電源装置の起動が車両でのアクセサリースイッチに該当する起動指示信号に応答する形態で可能となる。起動指示信号によって負荷13へ電圧を印加するにあたって、そこで供給する電力は例えば、5(V)、200(mA)程度であり、時間としても短時間であるため、充電の素子としてはキャパシタ14での対応が可能であり、耐電圧として2〜3(V)、容量としては30〜40(F)の自己放電を起こし難い電気二重層コンデンサを適用することが望ましい。
【0034】
これについて図2を用いて説明すると、蓄電池電圧が蓄電池閾値(VB)よりも高い期間は通常起動モードによる対応が可能な期間であり、蓄電池電圧が蓄電池閾値(VB)よりも低くなった時点のT1から、キャパシタ電圧がDCDCコンバータ動作下限値(VD)より低くなるT4までの期間が非常起動モードによる対応が可能な期間である。そして、T1〜T2においてのキャパシタの自己放電による電位低下を蓄電池電圧からの充電により蓄電する一連の動作や期間が、放置モードの動作によるものに該当することとなる。また、T2以後のキャパシタ電圧が蓄電池電圧よりも高くなった期間もまた放置モードのもとで判定を行っている期間でもある。ここでは曲線を簡略化したものとして示しているが、特にキャパシタ第1閾値とキャパシタ第2閾値との間隔が小さい場合、実際にはT1からT2の期間内にも定期的に複数回のキャパシタ電圧は充放電を繰り返し行っている可能性が非常に高いこととなる。このキャパシタ第1閾値とキャパシタ第2閾値との間隔については図1に示すDCDCコンバータ11の安定動作範囲が広い場合は、当然ながら図2に示すキャパシタ第1閾値とキャパシタ第2閾値との間隔もまた広くできると同時に、キャパシタ電圧に対する検出動作期間を長く設定でき、一層の小電力化を図ることが可能となる。
【0035】
以上のように、放置モードを設けることにより非常起動モードの対応可能期間を、T1〜T3であったものに比べてT1〜T4へと長くすることが可能となる。
【0036】
そして、この機能を維持するために、図1に示すキャパシタ14の自己放電曲線の傾きを蓄電池8の自己放電曲線の傾きよりも小さくすること、つまり、キャパシタ14の方が自己放電の進行度合いを蓄電池8よりも遅くすることが必要であることは言うまでもない。厳密には図2に示すように、キャパシタ第2閾値からキャパシタ第1閾値に至るキャパシタの自己放電の傾斜が、キャパシタ第2閾値へと低下した以降の蓄電池における自己放電の傾斜よりも小さいことが必要である。
【0037】
ここでは電源装置の起動について述べているが、この図1に示す電源装置全体としての起動と、これにより車両全体のシステムの起動が行われることにより、発電機(図示せず)なども当然ながら起動されることとなり、その結果として電圧が低下した蓄電池8に対して本来のあるべき基準の電圧にまで充電が行われ、電源装置全体が初期の状態へ移ることとなる。そして、キャパシタ14はDCDCコンバータ11を介して電力を供給することで上記の発電機(図示せず)が起動する状態へ移行するための瞬時的な電力を蓄える容量があればよい。
【0038】
また、上記のように非常起動モードは蓄電池8の電圧が低下した状態である、つまりは電力が不足気味の状態での起動となるため、図3に示すようにDCDCコンバータ11を起動させる際においても例えば0.4(V)程度の低電圧起動、小電力起動であることが求められる。ここでは、DCDCコンバータ11の動作を制御する制御部19に対して、これを動作させるための電圧を、DCDCコンバータ11の外部から得て一旦は昇圧回路部20へ入力し、この昇圧回路部20の出力電圧を制御部19のための動作電圧としている。これにより、図1に示す蓄電池8への負担の抑制ができ、蓄電池8の自己放電後の電圧が低下した状態であっても電圧によって、DCDCコンバータ11を動作させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の電源装置は、車両用電源における安定起動を可能とする効果を有し、各種車両において有用である。
【符号の説明】
【0040】
8 蓄電池
9 第1のスイッチ
10 充電回路
11 DCDCコンバータ
12 出力端子
13 負荷
14 キャパシタ
15 キャパシタ電圧検出回路
16 第2のスイッチ
17 電源起動指示端子
18 蓄電池電圧検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
この蓄電池の正電位出力側へ順に直列接続された第1のスイッチと充電回路とDCDCコンバータと出力端子と、
前記充電回路と前記DCDCコンバータとの間に正電位端子を接続されるとともに負電位端子を接地接続されたキャパシタと、
このキャパシタの正電位端子と前記蓄電池の正電位出力側との間に接続された電圧検出回路と、
前記充電回路の入力側と前記蓄電池の正電位出力側との間に接続されて前記電圧検出回路からの信号により制御される第2のスイッチとを備え、
前記蓄電池の出力電圧が蓄電池閾値以上の際に前記出力端子への電圧出力が要求された場合の、前記第1のスイッチを接続状態とするとともに前記第2のスイッチを開放状態としたうえで前記キャパシタを充電しつつ前記DCDCコンバータを短絡状態とする通常起動モードと、
前記蓄電池の出力電圧が前記蓄電池閾値以下の際に前記出力端子への電圧出力が要求された場合の、前記第1のスイッチを開放状態とするとともに前記キャパシタの電位を前記DCDCコンバータにより昇圧させる非常起動モードと、
前記通常起動モードおよび前記非常起動モード以外の常時において、前記キャパシタの正電位端子の電位がキャパシタ第1閾値以下であることを前記電圧検出回路により検出されると前記第2のスイッチを短絡状態として前記キャパシタの正電位端子の電位が前記キャパシタ第1閾値以上となるまで充電される放置モードとを設けた電源装置。
【請求項2】
電圧検出回路によるキャパシタ電圧の検出は定期的な間欠動作で行われる請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
放置モードでは、キャパシタの正電位端子の電位がキャパシタ第1閾値以下であることを電圧検出回路により検出されると第2のスイッチを短絡状態として前記キャパシタの正電位端子の電位が前記キャパシタ第1閾値以上として設定したキャパシタ第2閾値以上となるまで充電される請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
放置モードでは、キャパシタの正電位端子の電位がキャパシタ第1閾値以下であることを前記電圧検出回路により検出されると前記第2のスイッチを短絡状態として前記キャパシタの正電位端子の電位が前記キャパシタ第1閾値以上、あるいは蓄電池の出力電位となるまで充電される請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
第2のスイッチは第1のスイッチよりも消費電力を小さくした請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
DCDCコンバータを制御するDCDCコンバータ制御部は、このDCDCコンバータの外部から得た電圧を昇圧する昇圧回路部から電力供給がおこなわれる請求項1に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−257355(P2012−257355A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127891(P2011−127891)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】