説明

電源装置

【課題】商用電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する電源装置(AC/DCコンバータ)において、電源装置を構成するダイオードやスイッチ素子などによる損失を低減させる。
【解決手段】トランス5と、商用電源2の端子間に接続され、整流作用とスイッチング作用を有する2つの双方向スイッチ素子Q1,Q2の直列回路と、一方の双方向スイッチ素子Q2の両端部とトランス5の一次巻線Npとの間に接続されたLC共振回路と、トランス5の二次巻線Ns1,Ns2に接続された整流素子D13,D14と、双方向スイッチ素子Q1,Q2にゲート駆動信号を入力する制御回路6を備え、双方向スイッチ素子Q1,Q2二より同期整流を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する電源装置(AC/DCコンバータ)に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビジョン受像機などの電源として、ハーフブリッジ式複合共振型スイッチング回路を用いた電源装置(AC/DCコンバータ)が知られている(特許文献1参照)。従来の一般的なAC/DCコンバータ50の構成を図10に示す。AC/DCコンバータ50は、商用電源52からの交流電力を、一旦ダイオードブリッジなどの整流回路53で整流し、コンデンサ54で平滑化した後、複合共振型ハーフブリッジを用いたDC/DCコンバータで電圧変換を行う。DC/DCコンバータは、トランス51の一次巻線Np50に接続された2つのスイッチ素子Q51及びQ52で構成されたハーフブリッジ式複合共振スイッチング回路と、トランス51の二次巻線Ns51,Ns52に接続された整流用のダイオードD53及びD54を有している。さらに、トランス51の一次巻線Np50には、インダクタLr及びコンデンサCv及びCiで構成された共振回路が接続されている。
【0003】
スイッチ素子Q51及びQ52としては、例えばMOSFETが用いられており、これらスイッチ素子Q51及びQ52は、所定のデッドオフ時間を介して交互にオン/オフされる。AC/DCコンバータ50の電源となる商用電源52は50Hz又は60Hzであるが、商用電源52の周期に対してスイッチ素子Q51及びQ52を交互にオン/オフさせる周期を短くすることにより、トランス51の一次巻線Np50の入力電流を高周波化することができる。
【0004】
AC/DCコンバータ50のスイッチング周波数を高くすることによって、トランス51やインダクタLrなどを小型化することができる。一方、スイッチング周波数を高くすることによってスイッチ損失が増加するものの、複合共振スイッチング回路においては、ZVS(ゼロボルトスイッチング)又はZCS(ゼロカレントスイッチング)によってその損失を抑えることができるので、高周波に適した回路方式といえる。
【0005】
上記のように、ハーフブリッジ式複合共振型スイッチング回路はスイッチング損失が少ないという特徴を有するため、小型高効率電源として用いられる。このような高効率電源においてさらに回路効率を追求する場合、もはやスイッチング条件の工夫によるところは少なく、主な損失源はダイオードとトランスに限られる。特に、負荷容量が大きくなるのに比例してダイオード損失が増加することから、ダイオード類の削減が重要な課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−214559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来例の問題点を解決するためになされたものであり、電源装置を構成するダイオードやスイッチ素子などによる損失を低減しうる商用電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る商用電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する電源装置は、トランスと、商用電源の端子間に接続され、整流作用とスイッチング作用を有する2つの双方向スイッチ素子の直列回路と、一方の前記双方向スイッチ素子の両端部と前記トランスの一次巻線との間に接続されたLC共振回路と、前記トランスの二次巻線に接続された整流素子と、前記双方向スイッチ素子にゲート駆動信号を入力する制御回路を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成において、前記双方向スイッチ素子は、それぞれ前記商用電源から流れる交流電流に対して寄生ダイオードが順方向及び逆方向となる2つのチャンネル及びそれに対応する2つのゲートを有し、前記制御回路は、2つの前記双方向スイッチ素子について、それぞれ交流電流の1/2周期の間に、前記順方向のチャンネルに対応するゲートに、前記交流電流の1/2周期とほぼ等しいパルス幅を有する第1ゲート駆動信号を入力して同期整流を行い、一方の前記双方向スイッチ素子の前記逆方向のチャンネルに対応するゲートに、所定パルス幅を有する複数の第2ゲート駆動信号を所定周期で入力し、他方の前記双方向スイッチ素子の前記逆方向のチャンネルに対応するゲートに、前記第2ゲート駆動信号に対して位相が1/2周期ずれた別の複数の第2ゲート駆動信号を所定周期で入力し、それによって、前記商用電源の周波数よりも高い周波数でスイッチングさせることが好ましい。
【0010】
また、前記双方向スイッチ素子は、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有するスイッチ素子であることが好ましい。
【0011】
また、前記制御回路は、1つの前記双方向スイッチ素子について、前記第1ゲート及び前記第2ゲートにそれぞれ接続された独立した第1ゲート駆動回路及び第2ゲート駆動回路を含み、前記第1ゲート駆動回路及び前記第2ゲート駆動回路は、それぞれトランスによって一次巻線側と二次巻線側が絶縁されており、前記第1ゲート駆動回路及び前記第2ゲート駆動回路の前記トランスの一次巻線にはそれぞれAND回路が接続されており、前記制御回路は、交流電流の1/2周期の間、2つの前記AND回路について、一方の入力端子に対して駆動パルス信号の周波数に対して十分に高い周波数の搬送波を入力し、前記第1ゲート駆動回路の前記AND回路の他方の入力端子に対して、前記第1ゲート駆動信号を発生させる第1駆動パルス信号を入力し、前記第2ゲート駆動回路の前記AND回路の他方の入力端子に対して、前記第2ゲート駆動信号を発生させるための第2駆動パルス信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を発生させるための別の第2駆動パルス信号を入力し、前記AND回路によって前記搬送波と前記第1駆動パルス信号及び前記第2駆動パルス信号又は前記別の第2駆動パルス信号と論理積をとり、それによって、前記トランスの一次巻線を前記搬送波の周波数で励磁し、前記トランスの二次巻線に誘起された出力から、ハイパスフィルターにより前記搬送波の周波数成分を取り除いて、前記第1ゲート駆動信号及び前記第2ゲート駆動信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を得ることが好ましい。
【0012】
または、前記制御回路は、1つの前記双方向スイッチ素子について、前記第1ゲート及び前記第2ゲートにそれぞれ接続された第1ゲート駆動回路及び第2ゲート駆動回路を含み、前記第1ゲート駆動回路及び前記第2ゲート駆動回路は、二次巻線を2つ有する1つのトランスによって一次巻線側と二次巻線側が絶縁されており、前記トランスの一次巻線にはそれぞれAND回路が接続されており、前記トランスの2つの二次巻線側には、それぞれ前記商用電源の電圧の極性に応じてオン又はオフされるフォトカプラが、前記寄生ダイオードが順方向となるチャンネルがオンするように接続されており、前記制御回路は、交流電流の1/2周期の間、前記フォトカプラの出力から前記第1ゲート駆動信号を得、前記AND回路の一方の入力端子に対して、駆動パルス信号の周波数に対して十分に高い周波数の搬送波を入力し、前記AND回路の他方の入力端子に対して、前記第2ゲート駆動信号を発生させるための第2駆動パルス信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を発生させるための別の第2駆動パルス信号を入力し、前記AND回路によって前記搬送波と前記第2駆動パルス信号又は前記別の第2駆動パルス信号と論理積をとり、それによって、前記トランスの一次巻線を前記搬送波の周波数で励磁し、前記トランスの二次巻線に誘起された出力から、ハイパスフィルターにより前記搬送波の周波数成分を取り除いて、前記第2ゲート駆動信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を得ることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、商用電源からの交流電流を、整流回路を経由せずに双方向スイッチ素子を用いて直接同期整流している。すなわち、従来の構成に比べて、整流回路を構成するダイオードが不要になり、ダイオードによる損失は生じない。また、双方向スイッチ素子による同期整流の損失は、MOSFETなどの寄生ダイオードによる損失に比べてきわめて小さいので、結果的に、低損失の電源装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る電源装置(AC/DCコンバータ)の構成を示す図。
【図2】上記AC/DCコンバータにおける双方向スイッチ素子を駆動するためのゲート駆動回路の構成を示す図。
【図3】上記双方向スイッチの等価回路を示す図。
【図4】上記AC/DCコンバータの各双方向スイッチ素子に入力される駆動信号の波形を示す図。
【図5】双方向スイッチ素子(デュアルゲート)の構成を示す平面図。
【図6】図5におけるA−A断面図。
【図7】上記実施形態におけるゲート駆動回路の他の構成例を示す図。
【図8】上記他の構成例における各双方向スイッチ素子に入力される駆動信号の波形を示す図。
【図9】ゲート駆動回路のより具体的な回路構成例を示す図。
【図10】従来のAC/DCコンバータの基本的な構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る電源装置について説明する。図1は、本実施形態に係る電源装置(AC/DCコンバータ)1の構成を示す。図1に示すように、AC/DCコンバータ1において、トランス5の一次巻線Np側に2つの双方向スイッチ素子Q1及びQ2などで構成されたハーフブリッジ式複合共振スイッチング回路が接続されている。商用電源(交流電源)2はこのスイッチング回路に接続されている。一方、トランス5の二次巻線Ns1及びNs2側には、それぞれダイオードなどの整流素子D13及びD14が接続されている。双方向スイッチ素子Q1,Q2は、図10に示す従来例における整流回路53とスイッチ素子Q51,Q52を兼ね、同期整流作用とスイッチング作用を実現する。そのため、双方向スイッチ素子Q1,Q2として、ゲートを2つ備えたデュアルゲート型スイッチ素子を用いている。制御回路6は、これら双方向スイッチ素子Q1,Q2の2つのゲート(全体で4つのゲート)に対して、所定のゲート駆動信号を入力する。なお、作図上の都合により、制御回路6と双方向スイッチ素子Q1及びQ2のゲートとの結線は省略する。
【0016】
双方向スイッチ素子Q1,Q2の等価回路を図3に示す。双方向スイッチ素子Q1,Q2は、(等価回路上)2つのMOSFETQ11及びQ12を、寄生ダイオードD11とD12の向きが逆になるように接続したような構造を有している。部分的に寄生ダイオードD11及びD12は存在するがスイッチ素子全体としては寄生ダイオードを有していない。なお、C11及びC12は寄生容量を示す。
【0017】
次に、双方向スイッチ素子Q1,Q2の具体例について説明する。図5及び6は、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有する双方向スイッチ素子300の構成を示す。図5は双方向スイッチ素子300の構成を示す平面図であり、図6はA−A断面図である。なお、この双方向スイッチ素子300は、2つの電極D1及びD2間に2つのゲートG1及びG2が設けられているので、デュアルゲート型と呼ばれている。
【0018】
図5及び6に示すように、横型のデュアルゲートトランジスタ構造の双方向スイッチ素子300は、耐圧を維持する箇所を1箇所とした損失の少ない双方向素子を実現する構造である。すなわち、ドレイン電極D1及びD2はそれぞれGaN層に達するように形成され、ゲート電極G1及びG2はそれぞれAlGaN層の上に形成されている。ゲート電極G1,G2に電圧が印加されていない状態では、ゲート電極G1,G2の直下のAlGaN/GaNヘテロ界面に生じる二次元電子ガス層に電子の空白地帯が生じ、電流は流れない。一方、ゲート電極G1,G2に電圧が印加されると、ドレイン電極D1からD2に向かって(又はその逆に)AlGaN/GaNヘテロ界面に電流が流れる。ゲート電極G1とG2の間は、耐電圧を必要とし、一定の距離を設ける必要があるが、ドレイン電極D1とゲート電極G1の間及びドレイン電極D2とゲート電極G2の間は耐電圧を必要としない。そのため、ドレイン電極D1とゲート電極G1及びドレイン電極D2とゲート電極G2とが、絶縁層Inを介して重複していてもよい。なお、この構成の素子はドレイン電極D1,D2の電圧を基準として制御する必要があり、2つのゲート電極G1,G2にそれぞれ駆動信号を入力する必要がある(そのため、デュアルゲートトランジスタ構造と呼ぶ)。
【0019】
双方向スイッチ素子Q1及びQ2の各ゲートには、それぞれ、図4に示すような駆動信号Vg11,Vg12,Vg21,Vg22が入力される。AC/DCコンバータ1の電源である商用電源52は、50Hz又は60Hzで入力電圧の極性が反転する。一方、双方向スイッチ素子Q1,Q2は、寄生ダイオードの向きが互いに逆方向となるように構成されている。そのため、商用電源52からの交流電流に対して寄生ダイオードが順方向となるチャンネルに対しては、そのチャンネルに対応するゲート(第1ゲート)にゲート駆動信号を入力しなくても、ダイオード作用により電流は流れうる。しかしながら、双方向スイッチ素子Q1,Q2の寄生ダイオードによる損失は、従来のダイオードによる損失と大差ない。そこで、本実施形態では、図4に示すように、交流電流の1/2周期(T/2)の間に、第1ゲートに、交流電流の1/2周期とほぼ等しいパルス幅を有する第1ゲート駆動信号Vg11,Vg21を入力して同期整流を実現させている。すなわち、図10に示す従来例と比較して、ダイオードブリッジなどによる整流回路53を省略することにより、ダイオードによる損失は発生しない。さらに、双方向スイッチQ1,Q2による同期整流は、双方向スイッチQ1,Q2の寄生ダイオードD11,D12に比べて導通抵抗がはるかに小さいため、同期整流による損失は非常に小さい。その結果、従来の構成に比べて、電源装置を構成する素子による損失を大幅に低減させることができる。
【0020】
また、一方の双方向スイッチ素子Q1の、交流電流に対して寄生ダイオードが逆方向となるチャンネルに対応する第2ゲートに対して、所定パルス幅を有する複数の第2ゲート駆動信号が所定周期で入力される。また、他方の双方向スイッチ素子Q2の逆方向のチャンネルに対応するゲートに対して、上記第2ゲート駆動信号に対して位相が1/2周期ずれた別の複数の第2ゲート駆動信号が所定周期で入力される。すなわち、交流電流の1/2周期の間に、双方向スイッチ素子Q1とQ2を交互に複数回スイッチングさせることにより、商用電源2の周波数よりも高い周波数でスイッチングさせている。それによって、トランス5の一次巻線Npには、商用電源2の周波数よりも高い周波数の交流電流が流れ、高周波化が実現される。
【0021】
基本的に、これらの駆動信号Vg11,Vg12,Vg21,Vg22は制御回路6から出力されるものとして説明するが、後述するように、これらの全てが制御回路6から出力されるとは限らない。また、ゲート駆動回路がトランスで絶縁されている場合は、トランスの二次側に、整流後のこれらの駆動信号Vg11,Vg12,Vg21,Vg22が発生されるように、トランスの一次側には所定周波数のパルス信号が入力される。なお、交流電流の後半の1/2周期では、商用電源52からの交流電流の流れる方向が反転するため、寄生ダイオードの順方向及び逆方向及びそれに対応する第1ゲート及び第2ゲートが入れ替わる。そのため、駆動信号Vg11,Vg12,Vg21,Vg22も、第1ゲート駆動信号と第2ゲート駆動信号及び別の第2ゲート駆動信号の関係が入れ替わる。
【0022】
図2は、1つの双方向スイッチ素子Q1又はQ2の2つのゲートG1,G2に駆動信号を入力するためのゲート駆動回路の一構成例を示す。図2に示す構成例では、双方向スイッチ素子Q1又はQ2の第1ゲートG1及び第2ゲートG2に対して、それぞれ独立した同じ構成を有する第1ゲート駆動回路21及び第2ゲート駆動回路22がそれぞれ接続されている。第1ゲート駆動回路21及び第2ゲート駆動回路22は、それぞれトランス21a,22aの一次巻線側と二次巻線側が電気的に絶縁されている。第1ゲート駆動回路21及び第2ゲート駆動回路22は、トランス21a,22aの二次巻線に発生した誘起電圧を整流し平滑化してゲート駆動電力を得ると共に、当該誘起電圧から駆動信号Vg11及びVg12又はVg21及びVg22を発生させる。そのため、制御回路6は、一次巻線に所定周波数のパルス信号を所定時間だけ入力する必要がある。以下の説明において、ゲート駆動信号Vg11〜Vg22と区別するために、ゲート駆動信号Vg11〜Vg22を発生させるためのパルス信号を駆動パルス信号と呼ぶ。なお、ゲート駆動信号と駆動パルス信号の波形自体は同一又は相関を有する。
【0023】
既に図4を用いて説明したように、当該ゲート駆動回路においては商用電源の1/2周期にわたる比較的長い期間、ゲート電力を供給する必要がある。本発明で想定した双方向スイッチ素子が、そのオン状態を維持するのにゲート電流の供給が必要な電流駆動型である場合、その間の駆動電力を、トランスを介して確保するためには、トランスが大きくなるなどの課題がある。図2の構成において、トランス21a、22aの一次巻線を駆動パルス信号で励磁する場合、駆動パルス信号の周波数に対して十分に高い周波数の搬送波(例えば1.5MHz)を用い、AND回路21b、22bによって搬送波と駆動パルス信号の論理積をとる。それによって、トランス21a、22aの一次巻線は搬送波の周波数で励磁される。トランス21a、22aの二次巻線に誘起された出力は、それぞれ整流回路を介して整流され平滑化されてゲート駆動用のバッファIC21e,22eに制御電源として供給される。同時に、トランス21a、22aの二次巻線に誘起された出力は、ハイパスフィルターである抵抗とコンデンサ回路を介して搬送波周波数成分が取り除かれ、バッファIC21e,22eに入力される。それによって、ゲート駆動信号Vg11〜Vg22が得られる。
【0024】
図7は、ゲート駆動回路の他の構成例を示す。また、図8はこの構成例におけるゲート駆動信号Vg11〜Vg22及び駆動パルス信号Vg1及びVg2の波形を示す。図7に示す構成例では、図2に示す構成例に加えて、商用電源2の電圧の極性をフォトカプラ21d,22dで検出し、いずれか一方のゲートG1又はG2に常時ゲート駆動信号が入力されるように構成されている。このような構成によれば、図2に示した構成例では1つのスイッチ素子に対して2つのトランスを用いていたものを、二次巻線を2つ有する1つのトランスに置き換えることができる。また、2つのゲート駆動を個別に行うために、図2に示した構成例ではタイミングの異なる2つの駆動パルス信号が必要であったが、駆動パルス信号を1つにすることができるので、制御回路を簡略化することができる。
【0025】
図8に示すように、制御回路で生成される駆動パルス信号は、2つのスイッチ素子Q1,Q2に対応したVg1,Vg2の2つで足りる。Vg1を駆動パルス信号とすると、Vg2は別の駆動パルス信号に相当する。これらは重複する部分を回避するためのデッドオフ時間を付加して交互にオン/オフされる単純な信号である。駆動パルス信号Vg1,Vg2は、図2の場合と同様に、搬送波で変調されてトランスの一次巻線を励磁し、2つの二次巻線にそれぞれ誘起電圧が発生される。2つの二次巻線に生じた誘起電圧は、それぞれ整流され平滑化されて、ゲート駆動用バッファIC21e,22eに制御電源として供給されると共に、ハイパスフィルターにより復調され、バッファIC21e,22eに入力される。また、商用電源の極性を判別するフォトカプラ21d、22dの出力側(トランジスタ側)は、上記制御電源の+側とゲート駆動用バッファIC21e,22eの入力端子間に接続されて、商用電源の対応する1/2周期の間、駆動用バッファIC21e,22eの出力がハイレベルの状態を維持する。その間、トランスを介する搬送波によって駆動電力は供給され続けるので、商用電源の半周期の間に制御電源が低下することはない。
【0026】
図9は、搬送波を生成する手段として無安定マルチバイブレータを用いた構成例を示す。IC25は、例えばLMC555(ナショナルセミコンダクタ社)などのタイマー用IC25で構成される。IC25の出力(搬送波)は、AND回路21b、22bによって駆動パルス信号と論理積され、ドライバICを介してトランス21a,22aの一次巻線を励磁する。トランス21a,22aの二次巻線に誘起された出力電圧は、2つのダイオードと2つコンデンサで倍電圧整流及び平滑化され、ゲート駆動用バッファIC21e,22eの制御電源を生成する。バッファIC21e,22eの入力には、二次巻線の出力から抵抗とコンデンサによるハイパスフィルターで搬送波の周波数成分が除去された信号が入力される。なお、この構成例では、倍電圧整流を用いて高いゲート電圧のスイッチング素子にも対応できる形を示したが、当然ながら通常の全波整流を用いることもできる。
【0027】
以上説明したように、本発明の構成によれば、双方向スイッチ素子を用いて同期整流しているため、ダイオードブリッジなどの整流回路が不要になり、ダイオードによる損失は生じない。また、双方向スイッチ素子による同期整流の損失は、MOSFETなどの寄生ダイオードによる損失に比べてきわめて小さいので、結果的に、低損失の電源装置を実現することができる。また、交流電流の1/2周期の間に、2つのスイッチ素子を複数回交互にオン/オフさせることにより、商用電源の周波数よりも高い周波数でスイッチングさせることができる。さらに、トランスで駆動パルス信号を伝達する場合に、当該信号の周波数に対して十分に高い周波数の搬送波を用いることでトランスの小型化が可能となる。また、商用電源の1/2周期の間、ゲート電力を供給する場合でも、その制御電力を確実に得ることができる。そのため、ハーフブリッジ式複合共振型スイッチング回路を双方向スイッチ素子で構成した場合に確実な制御を可能とし、目標とした商用電源からの入力部整流手段を省略できることによる更なる高効率化ができる。
【符号の説明】
【0028】
1 電源装置(AC/DCコンバータ)
2 商用電源(交流電源)
3 負荷
5 トランス
6 制御回路
21 第1ゲート駆動回路
22 第2ゲート駆動回路
Q1,Q2 双方向スイッチ素子
D13,D14 整流素子
G1 第1ゲート
G2 第2ゲート
Np (トランスの)一次巻線
Ns1,Ns2 (トランスの)二次巻線
Vg11,Vg12,Vg21,Vg22 ゲート駆動信号
Vg1,Vg2 駆動パルス信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、商用電源の端子間に接続され、整流作用とスイッチング作用を有する2つの双方向スイッチ素子の直列回路と、一方の前記双方向スイッチ素子の両端部と前記トランスの一次巻線との間に接続されたLC共振回路と、前記トランスの二次巻線に接続された整流素子と、前記双方向スイッチ素子にゲート駆動信号を入力する制御回路を備えたことを特徴とする商用電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する電源装置。
【請求項2】
前記双方向スイッチ素子は、それぞれ前記商用電源から流れる交流電流に対して寄生ダイオードが順方向及び逆方向となる2つのチャンネル及びそれに対応する2つのゲートを有し、
前記制御回路は、
2つの前記双方向スイッチ素子について、それぞれ交流電流の1/2周期の間に、前記順方向のチャンネルに対応するゲートに、前記交流電流の1/2周期とほぼ等しいパルス幅を有する第1ゲート駆動信号を入力して同期整流を行い、
一方の前記双方向スイッチ素子の前記逆方向のチャンネルに対応するゲートに、所定パルス幅を有する複数の第2ゲート駆動信号を所定周期で入力し、
他方の前記双方向スイッチ素子の前記逆方向のチャンネルに対応するゲートに、前記第2ゲート駆動信号に対して位相が1/2周期ずれた別の複数の第2ゲート駆動信号を所定周期で入力し、
それによって、前記商用電源の周波数よりも高い周波数でスイッチングさせることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記双方向スイッチ素子は、GaN/AlGaNを用いた横型トランジスタ構造を有するスイッチ素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、1つの前記双方向スイッチ素子について、前記第1ゲート及び前記第2ゲートにそれぞれ接続された独立した第1ゲート駆動回路及び第2ゲート駆動回路を含み、
前記第1ゲート駆動回路及び前記第2ゲート駆動回路は、それぞれトランスによって一次巻線側と二次巻線側が絶縁されており、
前記第1ゲート駆動回路及び前記第2ゲート駆動回路の前記トランスの一次巻線にはそれぞれAND回路が接続されており、
前記制御回路は、交流電流の1/2周期の間、
2つの前記AND回路について、一方の入力端子に対して駆動パルス信号の周波数に対して十分に高い周波数の搬送波を入力し、
前記第1ゲート駆動回路の前記AND回路の他方の入力端子に対して、前記第1ゲート駆動信号を発生させる第1駆動パルス信号を入力し、
前記第2ゲート駆動回路の前記AND回路の他方の入力端子に対して、前記第2ゲート駆動信号を発生させるための第2駆動パルス信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を発生させるための別の第2駆動パルス信号を入力し、
前記AND回路によって前記搬送波と前記第1駆動パルス信号及び前記第2駆動パルス信号又は前記別の第2駆動パルス信号と論理積をとり、それによって、前記トランスの一次巻線を前記搬送波の周波数で励磁し、
前記トランスの二次巻線に誘起された出力から、ハイパスフィルターにより前記搬送波の周波数成分を取り除いて、前記第1ゲート駆動信号及び前記第2ゲート駆動信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を得ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、1つの前記双方向スイッチ素子について、前記第1ゲート及び前記第2ゲートにそれぞれ接続された第1ゲート駆動回路及び第2ゲート駆動回路を含み、
前記第1ゲート駆動回路及び前記第2ゲート駆動回路は、二次巻線を2つ有する1つのトランスによって一次巻線側と二次巻線側が絶縁されており、
前記トランスの一次巻線にはそれぞれAND回路が接続されており、前記トランスの2つの二次巻線側には、それぞれ前記商用電源の電圧の極性に応じてオン又はオフされるフォトカプラが、前記寄生ダイオードが順方向となるチャンネルがオンするように接続されており、
前記制御回路は、交流電流の1/2周期の間、
前記フォトカプラの出力から前記第1ゲート駆動信号を得、
前記AND回路の一方の入力端子に対して、駆動パルス信号の周波数に対して十分に高い周波数の搬送波を入力し、
前記AND回路の他方の入力端子に対して、前記第2ゲート駆動信号を発生させるための第2駆動パルス信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を発生させるための別の第2駆動パルス信号を入力し、
前記AND回路によって前記搬送波と前記第2駆動パルス信号又は前記別の第2駆動パルス信号と論理積をとり、それによって、前記トランスの一次巻線を前記搬送波の周波数で励磁し、
前記トランスの二次巻線に誘起された出力から、ハイパスフィルターにより前記搬送波の周波数成分を取り除いて、前記第2ゲート駆動信号又は前記別の第2ゲート駆動信号を得ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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