説明

電源装置

【課題】ケースを小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小できる電源装置を提供することである。
【解決手段】電源装置において、プリント基板12には半導体素子Q2(半導体素子群Qg)と実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品P1〜P6または二種以上の異型部品P1〜P6とを同一の実装表面12aに配置し、冷却部14は実装表面12aと対向するケース11の対向面11fの一部が少なくとも半導体素子Q2等に向かって突出して形成され、対向面11fはプリント基板12に配置される二以上の異型部品P1〜P6と対向する構成とした。この構成によれば、実装裏面12bには背の高い素子や部品を配置しないので、ケース11を小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小することができる。冷却部14は、ケース11を小型化しても、半導体素子Q2等を直接的または間接的に冷却できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却部を備えたケース内に基板を有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、部品の実装密度を上げることができ、小型化が容易であり、端子接続部での抵抗損失も少なく、電源効率の良いスイッチング電源装置に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。このスイッチング電源装置は、トランス、引き出し部、電極部材などが所定の基板の同一面に固定される。引き出し部は、金属板状の巻き線から延長されたものであり、その端部が電極部材に接続されている。
【0003】
また、小型化が図られた水冷方式のスイッチング電源に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献2を参照)。このスイッチング電源は、スイッチング回路、メイントランス、整流回路、平滑回路をベースプレート上に有する。ベースプレート上に形成される台座部の内部には、電子部品を冷却するための冷媒流路が形成されている。スイッチング回路の制御を行う制御基板は、ベースプレートの上方に配置されている(特許文献2の図6を参照)。特許文献2の図6では図示が省略されているが、スイッチング回路の制御を行うための回路素子は、制御基板の上面に実装せざるを得ない。ベースプレートの上面(すなわち制御基板の下方)には、上記スイッチング回路やメイントランス等が実装されるため、制御基板用の回路素子を実装するスペースを確保し難いからである。仮に実装するとしても、実装時の高さが低い回路素子に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−345245号公報
【特許文献2】特開2004−297887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の技術と特許文献2の技術とを組み合わせると、次のような技術になる。特許文献1の技術ではトランス、引き出し部、電極部材などの素子や部品を基板の同一面上に配置する。一方、特許文献2の技術ではベースプレート上に形成される台座部でスイッチング素子を冷却する必要があるため、必然的に上記基板の反対面(素子や部品を基板に配置する同一面とは反対の面)に配置せざるを得ない。このような配置を行うと、例えば図8のようになる。
【0006】
図8に示すように、基板(BP)に対して、回路素子や部品等の異型部品(Pa,Pb,Pc,Pd,Pe,…)などを実装すると、当該基板の実装面を基準とする高さ方向の寸法(以下では「実装高」と呼ぶ。)は「Hb」になる。これらを全てケース内に収容しようとすると、高さHa(Ha>Hb)よりも大きな空間(高さ)を確保しなければならず、大型化する。一方、基板とベースプレートとの隙間の高さ「Hc」には、回路素子や部品等を配置することも可能である。ところが、ケースを小型化しようとする場合には、実装高の低い回路素子や部品等に制限されるという問題がある。逆に、実装高が大きな回路素子や部品等を上記隙間に配置する場合には、回路素子や部品等が全て同じ実装高ではないので、デッドスペースが生じ易いという問題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、ケースを小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、少なくとも半導体素子および実装時の高さが異なる二以上の異型部品を配置する基板と、前記基板を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースとを有する電源装置において、前記基板には前記半導体素子と実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品または二種以上の異型部品とを同一の実装面に配置し、前記冷却部は前記実装面と対向する前記ケースの対向面の一部が少なくとも前記半導体素子に向かって突出して形成され、前記対向面は前記基板に配置される前記二以上の異型部品と対向することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、基板における同一の実装面には半導体素子や異型部品などが配置され、異型部品は当該実装面に実装されるとともにケースの対向面との間(第1空間)に配置される。このように、所定の高さ以上の高さとなる異型部品を同一の実装面に配置した基板をケースに収容する場合や、二種以上の異型部品を同一の実装面に配置した基板をケースに収容する場合は、異型部品が実装面と対向面との間(第1空間、特に高さ)に配置される。よって、同一の実装面とは反対側の面に背の高い素子や部品を配置しないので、ケースを小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小することができる。また、ケースの対向面の一部に形成される冷却部は、ケースを小型化しても、少なくとも半導体素子を直接的または間接的に冷却することができる。
【0010】
なお「半導体素子」は、半導体による電子部品または電子部品の根幹である機能中心部の素子であれば任意である。例えば、スイッチング素子(FET,IGBT,GTO,パワートランジスタ等を含む)、整流素子(整流回路や整流器等を含む)、IC(LSI,VLSI,ASIC等を含む)などが該当する。「同一の実装面」は、素子や部品などの実装品が配置される基板の一面を意味し、以下では簡単のために「実装表面」と呼ぶことにする。この称呼に伴って、同基板における実装表面とは反対側の面を「実装裏面」と呼ぶことにする。当該実装裏面に実装品を配置するか否かを問わない。「実装品」は、素子(例えば半導体素子や回路素子等を含む)や部品(例えば接続線,台座,端子台等を含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。「所定の高さ」は任意に設定可能であり、例えば3[mm]や10[mm]などが該当する。ただし実装裏面にも実装品を配置する場合には、当該実装裏面への実装時に最も高い実装品の高さ以上の高さ(例えば5[mm]や8[mm]など)を設定する。「異型部品」は、実装品のうちで形状(特に高さ)が異なる部品を意味する。「基板」は、少なくとも半導体素子および異型部品を実装可能な板状部材であれば任意であり、層数(単層や多層等)を問わない。「冷却部」には、実装品を冷却可能であれば任意の装置や部品等を適用できる。例えば、冷媒(空気,水,油などの流体)が流れる通路を有する部位・部品・装置等、冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。「ケース」は基板や冷却部など収容可能であれば任意である。例えば、単体のケースでもよく、仕切部(例えば仕切壁や仕切面など)によって複数の空間が形成されるブロック体にかかる一の空間からなるケースでもよい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記二以上の異型部品のうちで所定の温度以上になり得る異型部品は、前記冷却部に直接的または間接的に接触して配置されるか、または、前記冷却部の近傍に配置されることを特徴とする。この構成によれば、冷却部は半導体素子のみならず、所定の温度以上になり得る異型部品を直接的または間接的に冷却することができる。所定の温度は任意に設定可能であるが、異型部品の耐熱温度(例えば85[℃]や105[℃]など)を設定するのが望ましい。また、冷却部の近傍に配置される異型部品を冷気で冷やすことができる。「所定の温度以上になり得る」形態には、例えば電流が流れるに伴って生じる発熱に伴って温度上昇する形態や、周囲の環境や発熱する周囲部品等による影響を受けて温度上昇する形態などが該当する。「間接的に接触」とは、冷却部と異型部品との間に他の部材(例えば絶縁シート等)を介在させる状態を意味する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記対向面には、前記異型部品に向かって突起させた一以上の突起部を有することを特徴とする。この構成によれば、冷却部からケース(対向面を有する部位)を通じて冷気が突起部に伝達され、当該突起部に接触または非接触(近接)する異型部品を冷却することができる。「突起部」の形状は任意であり、例えば台座状や異型部品の一部または全部を囲むような筒状などが該当する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記実装面と前記対向面との間に全体の一部または全部が挿入して配置され、回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバーを有することを特徴とする。この構成によれば、インサートバスバーは電気的な接続機能を担うとともに、実装面と対向面との間(特にデッドスペース)に全体の一部または全部が挿入して配置されるのでケースの高さに影響しない。したがって、ケースを小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記ケース内には、前記実装面と前記対向面との間に形成される空間(第1空間)以外の空間(第2空間)に配置される回路素子を有し、前記インサートバスバーは、前記回路素子との接続を行うための端子部を有することを特徴とする。この構成によれば、インサートバスバーの端子部と回路素子との間における接続距離を短くすることができる。そのため、ケースを小型化するだけでなく、接続線による影響(例えば電気抵抗や電場発生によるノイズ等)を最小限に抑えることができる。
【0015】
なお、請求項4にいう「回路用部品」と請求項5にいう「回路素子」とは、電気回路に用いる部品や素子という意味で同義であるが、インサートバスバーの電気的な接続を行う対象物と第2空間に配置する対象物とを区別するために用いる。回路用部品に含まれる回路素子があったり、回路素子に含まれる回路用部品があったりする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記冷却部として前記ケースの内側に向かって突出して形成される前記対向面の一部は、前記ケースの隅部(角部)であることを特徴とする。この構成によれば、冷却部をケースの隅部に形成すると、当該隅部以外の部位(例えばケースの中央部等)に形成するよりも基板の実装表面に配置する実装品の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電源装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】電源装置の構成例を模式的に示す平面図である。
【図3】図2の矢印Da方向から見た電源装置の構成例を示す側面図である。
【図4】図2に示すIV−IV線矢視の第1構成例を示す断面図である。
【図5】図2に示すV−V線矢視の第2構成例を示す断面図である。
【図6】図2に示すV−V線矢視の第3構成例を示す断面図である。
【図7】インサートバスバーの構成例を示す三面図である。
【図8】従来技術を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。連続符号は記号「〜」を用いて表記する。例えば「接続端子T1〜T6」は、「接続端子T1,T2,T3,T4,T5,T6」を意味する。
【0019】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1は図1〜図4を参照しながら説明する。図1には電源装置の構成例を模式的に分解斜視図で示す。図2には電源装置の構成例を平面図で示す。図3には図2の矢印Da方向から見た電源装置の構成例を側面図で示す。図4には図2に示すIV−IV線矢視の第1構成例を断面図で示す。
【0020】
図1に示す電源装置10は、いわゆる「DC−DCコンバータ」であって、電力源(例えばバッテリや燃料電池等)から供給される直流電圧を目的の電圧に変換して出力する機能を担う。この電源装置10は、大別してケース11、プリント基板12、図示しない収容部品などを有する。「収容部品」は、ケース11内に収容される部品等であって、プリント基板12上には配置されない部品等を意味する。例えば、回路素子(具体的には整流素子,トランス,フィルタ回路等)や、後述するインサートバスバー(図6,図7を参照)などが該当する。
【0021】
ケース11は、ケース蓋11aとケース本体11bとで構成される。ケース本体11bは、一面を開口させた箱状筐体である。図1の例では簡単のために直方体状の形成例を示すが、プリント基板12や収容部品などを収容可能であれば、形成する形状は任意である。ケース蓋11aは、ケース本体11bの開口部を覆う蓋である。本形態のケース11は金属で形成するが、一部または全部について使用環境条件(例えば温度,磁気遮蔽,剛性等)を満たす他の材料(例えば樹脂等)で形成してもよい。
【0022】
プリント基板12は、実装表面12aおよび実装裏面12bの両面でプリント配線がなされ、実装品を配置して実装する基板である。実装品は、素子(半導体素子や回路素子を含む)や部品(接続線,台座,端子台などを含む)などのように基板に実装可能なものが該当し、表面実装品であるか否かを問わない。このように実装品は様々の種類や形状等があるので、実装表面12aを基準として高さ(実装高)が異なる実装品を以下では「異型部品」と呼ぶ。同一の実装表面12aには、実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品を実装したり、素子や部品等の種類が二種以上の異型部品を実装したりする。一方、実装裏面12bはプリント配線のみとするか、実装高が低い表面実装品のみを配置する。「所定の高さ」は任意に設定可能であり、例えば実装裏面12bへの実装時に最も高い実装品の高さ以上の高さ(例えば5[mm]や8[mm]など)が該当する。図1には、実装表面12aに実装した半導体素子群Qgや異型部品P1〜P6を示す。半導体素子群Qgも異型部品の一つであり、図1では1つの半導体素子Q1と2つの半導体素子Q2(以下では単に「半導体素子Q1,Q2」と呼ぶ。)が該当する。半導体素子Q1,Q2には、例えばFET(具体的にはMOSFET,JFET,MESFET等)、IGBT、GTO、パワートランジスタなどのスイッチング素子を適用できる。図示しないが、半導体素子Q1と半導体素子Q2とは直列接続され、2つの半導体素子Q2は並列接続される。
【0023】
図1に示す台座13や冷却部14は、ケース11の内部(特にケース本体11b)に備えられる。複数の台座13および冷却部14のうちで一方または双方は、ケース本体11bと一体形成してもよく、別体形成した上で固定手段(例えばネジ止めや接着剤等による接着など)によって固定してもよい。複数の台座13は、プリント基板12をケース11内に収容するにあたって、ケース本体11bに固定するために用いる。
【0024】
冷却部14は、半導体素子群Qg、異型部品、収容部品等を冷却する機能を担う。本形態の冷却部14は、冷媒(例えば水,空気,油等)を通すための冷媒通路14cを内部に有する(図4を参照)。冷却部14には、冷媒を流すための入出口となる配管結合部14a,14bを有する。配管結合部14a,14bには配管(例えばパイプ,チューブ,ホースなど)を結合し、冷却部14と図示しない冷却装置(例えばラジエータ等)との間で冷媒が流れるように構成される。このように冷媒を介して冷却を確実に行うため、冷却部14は熱伝導率が高い材料(例えばアルミニウムや銅等の金属やカーボンナノチューブ)で形成するのが望ましい。
【0025】
プリント基板12などを収容した後の電源装置10を図2と図3に示す。具体的には、図2はケース蓋11aで覆わない状態を示し、図3はケース蓋11aを覆った状態を示す。図2に示すIV−IV線矢視の断面を図4に示す。図2に示すように、ケース11内にはプリント基板12のほかに、整流素子15,トランス16,フィルタ部17等のような回路素子が配置される。整流素子15は、例えば整流回路や整流器などが該当する。フィルタ部17は、出力電力の交流成分を低減したり除去したりする機能を有すれば任意であり、パッシブフィルタ(LC回路,RLC回路,RC回路等)やアクティブフィルタ等の種類を問わない。これらの回路素子は、実装表面12aと対向面11fとの間に形成される空間(「第1空間」に相当する;図4を参照)以外の空間(「第2空間」に相当する;図2を参照)に配置される。
【0026】
図3に示すように、電源装置10のケース11と電力変換装置20のケース21とは一体形成されている。電力変換装置20は、いわゆる「インバータ」であるが、構成や機能作用等の詳細については周知であるので図示および説明を省略する。
【0027】
図4において、プリント基板12は、ケース11内に収容されて固定されている。このプリント基板12の実装表面12aは、ケース11の対向面11fと対向する。よって、プリント基板12に配置される異型部品群Pg(異型部品P1〜P6)もまた対向面11fと対向する。この対向面11fを含む部位(仕切壁や仕切面など)は「仕切部」に相当する。なお、図4では簡単のために異型部品P1〜P6を示すが、実際のプリント基板12には多数の異型部品が配置される。また、図4では見易くするためにハッチの図示を省略している(後述する図5と図6でも同様である)。
【0028】
冷却部14は、少なくとも半導体素子群Qg(半導体素子Q1,Q2)に向かって、対向面11fの一部が突出して形成されている。図1の例では、ケース11の隅部(図面左側の隅部)を上方に向けて突出させている。冷却部14の上面には半導体素子群Qg(図4では半導体素子Q2)が直接的にまたは間接的に接触して配置(固定)されている。間接的に接触する形態としては、例えば冷却部14と半導体素子群Qgとの間に絶縁シート等の部材を介在させる形態などが該当する。
【0029】
異型部品群Pgのうちで異型部品P1,P2などは、所定の温度(例えば85[℃]や105[℃]など)以上になり得るため、冷却部14の近傍に配置する。この配置によって、異型部品P1,P2などは冷却部14の冷気によって冷やされるので、該当する異型部品の耐熱温度以下に抑えることができる。なお、異型部品P1,P2には、例えばコンデンサやコモンモードコイルなどが該当する。異型部品P3〜P6には、例えばトランスやコンデンサなどが該当する。
【0030】
図4の構成例によれば、互いに対向する実装表面12aと対向面11fとの間の長さ(高さ)は、高さH1である。実装裏面12bには実装する場合でも実装高の低い素子や部品しか実装しないので、ケース11への収容には高さH2があればよい。仮に、高さH1と図8に示す高さHcとがほぼ等しい場合にはH2<Ha(図8を参照)となり、従来よりもケース11を小型化することができる。
【0031】
なお図4の構成例では、実装表面12aに実装される異型部品のうち異型部品P2の実装高が最も高い。ケース11の高さを抑制するには、異型部品P2が対向面11fに最近接する位置までプリント基板12の位置を下げるか、あるいは対向面11fを二点鎖線で示す位置まで(すなわち高さH3だけ)嵩上げしてもよい。こうすれば高さH2が低くなって、ケース11をさらに小型化でき、デッドスペースをより縮小できる。
【0032】
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、電源装置10において、プリント基板12には半導体素子Q1,Q2と実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品P1〜P6または二種以上の異型部品P1〜P6とを同一の実装表面12aに配置し、冷却部14は実装表面12aと対向するケース11の対向面11fの一部が少なくとも半導体素子Q1,Q2に向かって突出して形成され、対向面11fはプリント基板12に配置される二以上の異型部品P1〜P6と対向する構成とした(図4を参照)。この構成によれば、異型部品P1〜P6が実装表面12aと対向面11fとの間(第1空間)に配置される。よって、同一の実装表面12aとは反対側の面に背の高い素子や部品を配置しないので、ケース11を小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小することができる。冷却部14は、ケース11を小型化しても、少なくとも半導体素子Q1,Q2を直接的または間接的に冷却することができる。
【0033】
請求項2に対応し、二以上の異型部品P1〜P6のうちで所定の温度以上になり得る異型部品P1,P2などは、冷却部14の近傍に配置される構成とした(図4を参照)。この構成によれば、冷却部14は半導体素子Q1,Q2を直接的または間接的に冷却するだけでなく、冷却部14から流出する冷気によって異型部品P1,P2などを冷やすことができる。なお図示しないが、異型部品P1,P2などを冷却部14に直接的または間接的に接触して配置してもよい。この場合には、半導体素子Q1,Q2と同様に、異型部品P1,P2などの冷却を強力に行うことができる。
【0034】
請求項6に対応し、冷却部14は、ケース11(具体的にはケース本体11b)の隅部にかかる対向面11fを、ケース11の内側に向かって突出して形成する構成とした(図4を参照)。この構成によれば、隅部以外の部位(例えばケース11の中央部等)に形成するよりもプリント基板12の実装表面12aに配置する実装品の自由度が高まる。
【0035】
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、上述した実施の形態1の変形例であって、図5を参照しながら説明する。図5には図2に示すV−V線矢視の第2構成例を断面図で示す。なお、電源装置10の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図5に示す第2構成が図4に示す第1構成と相違するのは、対向面11fから実装表面12aに向かって突起させた突起部18をケース本体11bに備える点である。台座状に形成された突起部18は、その先端面が異型部品P8に接触または近接する高さを有する。冷却部14(具体的には冷媒通路14cを通る冷媒)から、当該冷却部14を形成する対向面11fを経て、冷たさが突起部18に伝導する。突起部18にもある程度の冷却機能が生じるので、異型部品P8を冷却することができる。
【0037】
なお図5の構成例では、実装表面12aの実装部のうちで実装高が最も高い異型部品P8に向けて突起部18を形成したが、他の異型部品に向けて突起部18を形成してもよい。例えば、突起部18を二点鎖線で示すように冷却部14まで拡張する。こうすれば異型部品P7や他の異型部品も、異型部品P8と同様に冷却することができる。
【0038】
上述した実施の形態2によれば、請求項3に対応し、対向面11fには、異型部品P8に向かって突起させた一以上の突起部18を有する構成とした(図5を参照)。この構成によれば、冷却部14からケース11(対向面11fを有する部位)を通じて冷気が突起部18に伝達され、当該突起部18に接触または非接触(近接)する異型部品P8などを冷却することができる。なお、請求項1,2,6については、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。また、図5では突起部18によって冷却できるのは異型部品P8のみであるが、二以上の異型部品を冷却可能に一以上の突起部18を構成できることは言うまでもない。
【0039】
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、上述した実施の形態1,2の変形例であって、図6と図7を参照しながら説明する。図6には図2に示すV−V線矢視の第3構成例を断面図で示す。図7には、インサートバスバーの構成例を三面図で示す。なお、電源装置10の構成等は実施の形態1,2と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態3では実施の形態1,2と異なる点について説明する。よって実施の形態1,2で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図6に示す第3構成が図5に示す第2構成と相違するのは、実装表面12aに配置した異型部品群Pgと対向面11fとの隙間に、インサートバスバー19全体の一部または全部を挿入して配置した点である。インサートバスバー19は端子,端子台,配線などを有し、回路用部品の相互間を電気的に接続する機能を担う。配線の一部または全部は、大電流(例えば10[A]や20[A]等)にも耐え得る線材を用いるのが望ましい。
【0041】
インサートバスバー19の構成例を図7に三面図で示す。図7(A)には平面図を示し、図7(B)には図7(A)の右側から見た側面図を示し、図7(C)には図7(A)の下側から見た側面図を示す。図7に示すインサートバスバー19は、固定部19a,19d,19f、バスバー本体19b、接続端子台19c、入力部19e、接続端子T1〜T6などを有する。固定部19a,19d,19fは、インサートバスバー19をプリント基板12やケース本体11bに固定するための部位である。バスバー本体19bは絶縁性材料(例えば樹脂等)で所定形状に形成される。具体的には、射出成形等によるモールディングで形成される。接続端子台19cは、トランス16の端子と対向する位置に備えられ、複数の端子を電気的に接続する機能を担う。接続端子T1〜T6は、プリント基板12の所定位置に電気的に接続する機能を担う。
【0042】
上述した実施の形態3によれば、以下に示す各効果を得ることができる。なお、請求項1,2,6については実施の形態1と同様の作用効果を得ることができ、請求項5については実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
請求項4に対応し、実装表面12aと対向面11fとの間に全体の一部または全部が挿入して配置され、回路素子の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバー19を有する構成とした(図6,図7を参照)。この構成によれば、インサートバスバー19は電気的な接続機能を担うとともに、実装表面12aと対向面11fとの間(特にデッドスペース)に全体の一部または全部が挿入して配置されるのでケース11の高さに影響しない。したがって、ケース11を小型化するとともに、デッドスペースを従来よりも縮小することができる。
【0044】
請求項5に対応し、ケース11内には、実装表面12aと対向面11fとの間に形成される空間(第1空間)以外の空間(第2空間)に配置される回路素子(すなわち整流素子15,トランス16,フィルタ部17である。図2を参照)を有し、インサートバスバー19は回路素子との接続を行うための接続端子台19c(端子部)を有する構成とした(図2,図6,図7を参照)。この構成によれば、接続端子台19cはトランス16の端子と対向する位置に備えられているので、これらの接続距離を短くすることができる。そのため、ケース11を小型化するだけでなく、接続線による影響(例えば電気抵抗や電場発生によるノイズ等)を最小限に抑えることができる。
【0045】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜3に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0046】
上述した実施の形態1〜3では、ケース11はケース21と一体形成する構成とした(図3を参照)。この形態に代えて、単体のケース11のみで構成してもよい。また、電力変換装置20のケース21に代えて、他の装置のケースと一体形成する構成としてもよい。他の装置は、例えばエンジンブロック、ECU装置、車両ボディなどが該当する。仕切部(例えば仕切壁や仕切面など)によって内部に複数の空間が形成されるブロック体にかかる一の空間からなるケース11でもよい。いずれの構成にせよ、ケース11にはプリント基板12や冷却部14など収容することができるので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
上述した実施の形態1〜3では、プリント基板12は、実装表面12aと実装裏面12bとを有する基板を適用した(図1〜図7を参照)。この形態に代えて、一以上の中間層を含む多層基板を適用してもよく、ユニバーサル基板を適用してもよい。いずれの基板にせよ、半導体素子群Qgや異型部品群Pgなどを配置することができるので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
上述した実施の形態1〜3では、冷却部14は、対向面11fから実装表面12aに向けて突出させ、その突出部位に冷媒が流れる冷媒通路14cを有する構成とした(図4〜図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、他の冷却手段を構成してもよい。他の冷却手段は、例えば冷却用フィン(放熱フィン)、ヒートポンプなどのうちで一以上が該当する。他の冷却手段で構成した場合でも、半導体素子群Qgや異型部品を冷却できるので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
上述した実施の形態1〜3では、冷却部14は、ケース本体11b(ケース11)の短辺部(直線や曲線を問わない)に沿う隅部に配置する構成とした(図1,図2,図4〜図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、構造上や設計上などの制約によって、ケース本体11bの長辺部(直線や曲線を問わない)に沿う隅部に配置する構成としてもよい。
【0050】
上述した実施の形態3では、実装表面12aに配置した異型部品群Pgと対向面11fとの隙間にインサートバスバー19を配置する構成とした(図6を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、異型部品群Pgと対向面11fとの隙間に他の部品を配置してもよい。他の部品は、例えばバスバーやファンなどが該当する。隙間を利用して配置するので、デッドスペースをさらに縮小することができる。なお、ファン(扇風機)は冷却部14の近傍に配置するのが望ましい。ケース11内に封入された空気を循環または拡散させて、ケース11内の全体を効率良く冷却することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 電源装置
11 ケース
11f 対向面
12 プリント基板(基板)
12a 実装表面(実装面)
12b 実装裏面
14 冷却部
15 整流素子(回路素子)
16 トランス(回路素子)
17 フィルタ部(回路素子)
18 突起部
19 インサートバスバー
Qg 半導体素子群
Q1,Q2,… 半導体素子
Pg 異型部品群
P1〜P8,… 異型部品(実装品)
T1〜T6,… 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも半導体素子および実装時の高さが異なる二以上の異型部品を配置する基板と、前記基板を収容するとともに冷却を行うための冷却部を備えるケースと、を有する電源装置において、
前記基板には、前記半導体素子と、実装時に所定の高さ以上の高さとなる異型部品または二種以上の異型部品と、を同一の実装面に配置し、
前記冷却部は、前記実装面と対向する前記ケースの対向面の一部が少なくとも前記半導体素子に向かって突出して形成され、
前記対向面は、前記基板に配置される前記二以上の異型部品と対向することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記二以上の異型部品のうちで所定の温度以上になる異型部品は、前記冷却部に直接的または間接的に接触して配置されるか、または、前記冷却部の近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記対向面には、前記異型部品に向かって突起させた一以上の突起部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記実装面と前記対向面との間に全体の一部または全部が挿入して配置され、回路用部品の相互間を電気的に接続するためのインサートバスバーを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記ケース内には、前記実装面と前記対向面との間に形成される空間以外の空間に配置される回路素子を有し、
前記インサートバスバーは、前記回路素子との接続を行うための端子部を有することを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記冷却部として前記ケースの内側に向かって突出して形成される前記対向面の一部は、前記ケースの隅部であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−34271(P2013−34271A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167966(P2011−167966)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】