説明

電着塗料

【課題】 揮発性有機溶剤含有量が少なく(低VOC)、かつ造膜性が良好で、防錆鋼板に電着塗装してもピンホールの発生がなく、防食性、塗料安定性に優れた電着塗料を提供すること。
【解決手段】 分子量が1,000以下の特定のポリエーテル化合物を配合することにより、安定性に優れ、長期間塗装ラインにおいて電着塗料として使用した後でも塗装性や防食性などの特性が変化することがない電着塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の含有量が少なく、防食性、防錆鋼板に対する電着塗装性、造膜性、耐ピンホール性、塗料安定性などに優れた電着塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗料は、自動車ボディや自動車部品を始めとする幅広い用途に使用されており、従来から、種々の特性をもつ電着塗料、例えば、防食性、防錆鋼板に対する電着塗装性、造膜性、塗料安定性などに優れた電着塗料の開発が行われてきた。
【0003】
電着塗料には、長期間にわたる造膜性を維持するために、通常、沸点が約120℃以下の有機溶剤(例えば、メチルイソブチルケトン(116℃)、メチルエチルケトン(80℃)など)、沸点が120〜200℃の有機溶剤(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル(171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121℃)など)、分子量が4,000以下の低分子量軟質樹脂(例えば、キシレン樹脂、ポリプロピレングリコールなど)等が配合されている。近年、環境への配慮などから低VOC(揮発性有機化合物、volatile organic compounds)規制やHAPs(有害性大気汚染物質、Hazardous Air Pollutants)規制によってその使用が制限されている。
【0004】
一方、電着塗料中の揮発性有機化合物の含有量を制限すると、経時的に造膜性(膜厚保持性)が徐々に低下し、所定の膜厚に塗装することが困難となって仕上り性が低下し、また、自動車外板部(例えば、ドア、フェンダー)に多用されている合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(亜鉛と鉄との合金メッキで被覆された防錆鋼板)においてはピンホール(所謂、ガスピン)が発生して塗膜欠陥を生じる等の問題が生じる。
【0005】
また、揮発性有機化合物の低減を目的として、減圧蒸留などによって、電着塗料中に含まれる有機溶剤などの揮発性成分の含有率が1重量%以下となるまで除去することも行われているが、そうすると、硬化塗膜で20μm以上の膜厚に塗装することが困難となったり、塗膜の融着能が低下してピンホールが発生し易くなるおそれがある等の問題が生じる。
【0006】
特許文献1には、1分子当たり少なくとも3個のエーテル酸素と該エーテル酸素間に1〜4個の飽和炭化水素基とを有するが、水酸基を有さないアルキル化ポリエーテルを含有するカチオン電着塗料が開示されている。このカチオン電着塗料は、低VOCでかつ塗膜の仕上り性や防食性に優れているが、防錆鋼板に対する電着塗装性、造膜性、塗料安定性などに難点があり、十分に満足できるものではない。
【0007】
また、特許文献2には、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのアルキレン系ポリエーテルポリオールやビスフェノールを単独でもしくはグリコールと組合せて使用することにより得られる芳香環含有ポリエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオールを含有するカチオン電着塗料が開示されており、このカチオン電着塗料は、低VOCでかつ造膜性に優れ、防錆鋼板に対する電着塗装性(合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の耐ピンホール性)や防食性に優れた塗膜を形成するが、該ポリエーテルポリオールを塗料中に多量に添加すると、防食性(厳しい腐食環境下では低下が著しい)や塗料安定性が低下したり、電着塗膜上のシーラー付着性が低下する等の問題がある。
【特許文献1】特公平6−45772号公報
【特許文献2】特開2001−3005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、揮発性有機化合物の含有量が少なく、かつ防食性、防錆鋼板に対する電着塗装性、造膜性、耐ピンホール性、塗料安定性などに優れた電着塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、今回、電着塗料に分子量が1,000以下の特定のポリエーテル化合物を添加剤として配合することにより上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、下記式(1)〜(4)
【0011】
【化1】

【0012】
式中、
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表し、
は水素原子又はメチル基を表し、ここでp及びqがそれぞれ2以上
である場合、式(1)又は(2)中の複数個のRはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよく、
は炭素数2〜10のr価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基を表し、
は炭素数4〜24の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキレン基を表し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、ここでm及びnがそれぞれ2以上である場合、式(4)中の複数個のR及び複数個のRはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよく、
pは0〜4の整数であり、
qは1〜4の整数であり、
rは2〜4の整数であり、そして
m及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数である、
よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物を含有する電着塗料が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電着塗料は、揮発性有機化合物の含有量が少なく、塗膜の防食性や仕上り性のみならず、造膜性にも優れており、また、合金溶融亜鉛メッキ鋼板に電着塗装してもピンホールの発生が認められないなどの優れた特性を有する。本発明の電着塗料は、また、安定性にも優れており、上記の特性は、長期間、塗装ラインにおいて電着塗料を使用した後であっても変化することがない。
【0014】
本発明の電着塗料が上記の特性に優れている理由は、正確にはわからないが、防食性に関しては、式(1)〜(4)の化合物中の水酸基が基体樹脂や硬化剤と反応して塗膜中で架橋し、3次元的な網目構造を形成することにより、外部からの腐食生成物質に対する耐性が向上することが考えられる。また、仕上り性に関しては、式(1)〜(4)の化合物は比較的低分子量であるため、焼付け時の流動特性に効果を示すと考えられる。
【0015】
さらに、式(1)〜(4)の化合物は可塑剤として働き、析出塗膜そのものを軟化させ、電着時発生するジュール熱の影響で、電着塗装時に発生したピンホールを埋めると考えられる。
【0016】
以下、本発明の電着塗料についてさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の電着塗料は、添加剤として、前記式(1)、(2)、(3)及び(4)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物を含有する点に新規な特徴を有するものである。したがって、まず、これらのポリエーテル化合物について説明する。
【0018】
本発明で使用するポリエーテル化合物は、電着浴に可溶性ないし易分散性のものであることが望ましく、一般に100〜1,000、特に250〜800、さらに特に250〜600の範囲内の分子量を有するものが好適である。
【0019】
本発明において添加剤として用いられる下記式(1)
【0020】
【化2】

【0021】
式中、
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜10、好ましくは2〜9、さらに好ましくは3〜8のアルキル基又はフェニル基を表し、
は水素原子又はメチル基を表し、ここでpが2以上である場合、式中の複数個のRはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよく、そして
pは0〜4の整数である、
で示されるポリエーテル化合物は、例えば、下記式(5)
【0022】
【化3】

【0023】
式中、Rは前記と同義である、
で示されるグリシジルエーテル化合物を下記式(6)
【0024】
【化4】

【0025】
式中、R、R及びpは前記と同義である、
で示されるアルコール化合物と反応させることにより得ることができる。
【0026】
上記式(5)のグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0027】
また、式(6)のアルコール化合物としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ブタノール等が挙げられる。
【0028】
式(5)のグリシジルエーテル化合物に対する式(6)のアルコール化合物の使用割合は、厳密に制限されるものではないが、一般には、式(5)のグリシジルエーテル化合物1モルあたり、式(6)のアルコール化合物を0.5〜2モル、特に0.5〜1.5モル、さらに特に1〜1.2モルの範囲内で使用するのが好適である。
【0029】
上記の反応は、通常、式(5)のグリシジルエーテル化合物に、無溶媒もしくは適当な不活性溶媒中にて、約50〜約150℃、好ましくは約130〜約140℃の範囲内の温度で30分間〜6時間程度、好ましくは1〜3時間程度かけて式(6)のアルコール化合物を導入することにより行うことができる。反応生成物はそのまま使用してもよいが、未反応物を減圧留去して使用してもよい。
【0030】
上記反応において使用しうる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;或いはこれらの混合物などが挙げられる。
【0031】
本発明において添加剤として用いられる下記式(2)
【0032】
【化5】

【0033】
式中、
は水素原子又はメチル基を表し、ここでqが2以上である場合、式中の複数個のRは同一であっても互いに異なっていてもよく、
は炭素数1〜10、好ましくは2〜9、さらに好ましくは3〜8のアルキル基又はフェニル基を表し、
は、炭素数2〜10、好ましくは3〜9、さらに好ましくは4〜8のr価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基を表し、
qは1〜4の整数であり、そして
rは2〜4の整数である、
で示されるポリオール化合物は、例えば、下記式(7)
【0034】
【化6】

【0035】
式中、R及びrは前記と同義である、
で示されるポリグリシジル化合物を下記式(8)
【0036】
【化7】

【0037】
式中、R、R及びqは前記と同義である、
で示されるアルコール化合物を反応させることにより得ることができる。
【0038】
上記式(7)のポリグリシジル化合物としては、例えば、トリメチロールトリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0039】
また、式(8)のアルコール化合物としては、ブタノール以外の前記式(6)のアルコール化合物について例示したものが挙げられる。
【0040】
式(7)のポリグリシジル化合物に対する式(8)のアルコール化合物の使用割合は、厳密に制限されるものではないが、一般には、式(7)のポリグリシジル化合物のグリシジル基1当量あたり、式(8)のアルコール化合物を0.5〜2モル、特に0.5〜1.5モル、さらに特に1〜1.2モルの範囲内で使用するのが好適である。
【0041】
上記の反応は、通常、式(7)のポリグリシジル化合物に、無溶媒もしくは適当な不活性溶媒中にて、約50〜約150℃、好ましくは約130〜約140℃の範囲内の温度で30分間〜6時間程度、好ましくは1〜3時間程度かけて式(8)のアルコール化合物を導入することにより行うことができる。反応生成物はそのまま使用してもよいが、未反応物を減圧留去して使用してもよい。
【0042】
上記反応において使用しうる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;或いはこれらの混合物などが挙げられる。
【0043】
本発明において添加剤として用いられる下記式(3)
【0044】
【化8】

【0045】
式中、
は炭素数1〜10、好ましくは2〜9、さらに好ましくは3〜8のアルキル基又はフェニル基を表し、
は炭素数2〜10、好ましくは3〜9、さらに好ましくは4〜8のr価の脂肪族もしくは脂環状炭化水素基を表し、そして
rは2〜4の整数である、
で示されるポリエーテル化合物は、例えば、前記式(5)のグリシジルエーテル化合物を下記式(9)
(OH)r (9)
式中、R及びrは前記と同義である、
で示される多価アルコールと反応させることにより得ることができる。
【0046】
上記式(9)の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロへキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、特に、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールが好適である。
【0047】
式(5)のグリシジルエーテル化合物に対する式(9)の多価アルコールの使用割合は、厳密に制限されるものではないが、一般には、式(5)のグリシジルエーテル化合物のグリシジル基1当量あたり、多価アルコールの水酸基が0.5〜2当量、特に0.5〜1.5当量となる範囲内で使用することが好ましい。
【0048】
上記の反応は、通常、式(5)のグリシジルエーテル化合物に、無溶媒もしくは適当な不活性溶媒中にて、約50〜約150℃、好ましくは約130〜約140℃の範囲内の温度で30分間〜6時間程度、好ましくは1〜3時間程度かけて式(9)の多価アルコール化合物を導入することにより行うことができる。反応生成物はそのまま使用してもよいが、未反応物を減圧留去して使用してもよい。
【0049】
上記反応において使用しうる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;或いはこれらの混合物などが挙げられる。
【0050】
本発明において添加剤として用いられる下記式(4)
【0051】
【化9】

【0052】
式中、
は炭素原子数4〜24個、好ましくは5〜18、さらに好ましくは6〜15の直鎖状もしくは分岐鎖状アルキレン基を表し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、ここでm及びnがそれぞれ2以上である場合、式中の複数個のR及び複数個のRはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよく、
m及びnはそれぞれ独立に1〜10、好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜5の整数であり、
式中のポリオキシアルキレン部分(CH(R)CHO)及び(CH(R)CHO)は、それぞれ、各繰り返し単位中のm個のR及びn個のRが同一であるホモポリマータイプのものであってもよく、或いは各繰り返し単位中のm個のR及びn個のRが互いに異なるランダムもしくはブロックコポリマータイプのものであってもよい、
で示されるポリエーテル化合物は、例えば、下記式(10)
【0053】
【化10】

【0054】
式中、Rは前記と同義である、
で示されるジオールを下記式(11)及び(12)
【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
式中、R及びRは前記と同義である、
で示されるアルキレンオキサイドと反応(付加)させることにより得ることができる。
【0058】
上記式(10)で示されるジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらの中で特に、2−メチル−1,3−プロパンジオール及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが好適である。
【0059】
また、上記式(11)又は(12)で示されるアルキレンオキサイドには、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが包含される。
【0060】
式(10)のジオールに対する式(11)及び(12)のアルキレンオキサイドの使用割合は、厳密に制限されるものではないが、一般には、式(2)のジオールの水酸基1当量あたり、式(11)及び(12)のアルキレンオキサイドを合計で1〜10モル、特に1〜7モル、さらに特に1〜5モルの範囲内で使用するのが好適である。
【0061】
上記の反応は、通常、式(10)のジオールに、無溶媒もしくは適当な不活性溶媒中にて、約50〜約150℃、好ましくは約130〜約140℃の範囲内の温度で30分間〜6時間程度、好ましくは1〜3時間程度かけて式(11)及び(12)のアルキレンオキサイドを導入することにより行うことができる。反応生成物はそのまま使用してもよいが、未反応物を減圧留去して使用してもよい。
【0062】
式(11)及び(12)のアルキレンオキサイドとして、2種もしくはそれ以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、それらは同時に添加してもよく、或いは任意の順序で別々に添加してもよい。例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合、まず少量のプロピレンオキサイドを添加して反応させた後、次いでエチレンオキサイドを添加して反応させることができる。
【0063】
上記反応において使用しうる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;或いはこれらの混合物などが挙げられる。
【0064】
かくの如くして製造される式(1)、(2)、(3)及び(4)よりなる群から選ばれるポリエーテル化合物は、基体樹脂及び硬化剤を含んでなる電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料に配合される。該ポリエーテル化合物は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて電着塗料に配合することができる。
【0065】
以下、カチオン電着塗料として一般的な、基体樹脂としてカチオン性樹脂及び硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を含んでなるカチオン電着塗料について説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0066】
基体樹脂として使用されるカチオン性樹脂は、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などのカチオン化可能な基を有する樹脂であり、樹脂種としては、電着塗料の基体樹脂として通常使用されているもの、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などのいずれであってもよい。特に、エポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂が好適である。
【0067】
上記のアミン付加エポキシ樹脂としては、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等を挙げることができる。
【0068】
上記のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、一般に少なくとも200、好ましくは400〜4,000、更に好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量(注1)及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
【0069】
(注1)数平均分子量:JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとしてTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー株式会社製)及び溶離液としてtGPC用テトラヒドロフランを用い、40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムとポリスチレンの検量線から計算により求めた値である。
【0070】
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−2もしくは3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0071】
該エポキシ樹脂は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと部分的に反応させたものであってもよく、更にまた、ε−カプロラクトンなどのカプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものであってもよい。
【0072】
上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
【0073】
上記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基を有する化合物(例えば、モノメチルアミン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなど)にケトン化合物を反応させてなるケチミン化物を挙げることができる。
【0074】
上記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物(例えば、モノエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなど)にケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
【0075】
前記アミン付加エポキシ樹脂には、さらに、前記エポキシ樹脂、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物及びアミノ基含有化合物を反応させてなるポリオール変性アミン付加エポキシ樹脂も包含され、好適に使用することができる。
【0076】
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物としては、一般に、62〜5,000、特に70〜3,000の範囲内の分子量を有し、1分子当り2〜30個、特に3〜25個の活性水素含有基を含有するものが好ましく、該活性水素含有基としては、例えば、水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基などを挙げることができる。
【0077】
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテルなどの線状又は分岐状ポリエーテルポリオール;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの有機ジカルボン酸又はその無水物と、上記低分子量ポリオールなどの有機ジオールとを有機ジオール過剰の条件下で重縮合反応させてなるポリエステルポリオール;ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサノン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアミン化合物;ピペラジンやこれらのアミン化合物から誘導されるポリアミド、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、ケチミン、アルジミンなどを挙げることができる。
【0078】
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物に付加反応せしめられるカプロラクトンとしては、例えば、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどが挙げられ、特にε−カプロラクトンが好適である。
【0079】
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物とカプロラクトンとの付加反応は、それ自体既知の方法で行うことができ、この付加反応によってポリオール化合物が得られる。
【0080】
上記ポリオール変性アミン付加エポキシ樹脂の製造に用いられるアミノ基含有化合物は、樹脂中にアミノ基を導入して、該樹脂をカチオン性化するためのカチオン性付与成分であり、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個有するものを使用することができる。
【0081】
その具体例としては、例えば、前記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミン;前記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミン;前記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物として使用可能なものを挙げることができる。
【0082】
カチオン性樹脂は、一般に、数平均分子量が700〜6,000、特に1,000〜4,000の範囲内にあり、カチオン性基を樹脂1kgあたり0.5〜3当量、特に0.7〜2当量の範囲内の量で有するものが好ましい。
【0083】
また、カチオン性樹脂は、カチオン化可能な基としてアミノ基を有する場合には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機カルボン酸;塩酸、硫酸などの無機酸などの酸によって中和することにより水溶化ないしは水分散化することができ、他方、カチオン化可能な基としてアンモニウム塩基、スルホニウム塩基又はホスホニウム塩基などのオニウム塩基を有する場合には、中和することなく、そのまま水溶化ないしは水分散化することができる。
【0084】
基体樹脂には、さらに、エポキシ当量が180〜3,000、好ましくは250〜2,000のエポキシ樹脂にキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂が包含される。
【0085】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂の製造のための出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、前記のカチオン性樹脂について述べたものと同様のエポキシ樹脂が好適である。
【0086】
キシレンホルムアルデヒド樹脂は、エポキシ樹脂の内部可塑化(変性)に役立つものであり、例えば、キシレン及びホルムアルデヒドならびにさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下に縮合反応させることにより製造することができる。
【0087】
上記のホルムアルデヒドとしては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物などを例示することができる。
【0088】
さらに、上記のフェノール類には、2もしくは3個の反応サイトを持つ1もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて用いることができる。この中で特に、フェノール、クレゾールが好適である。
【0089】
以上に述べたキシレン及びホルムアルデヒドならびにさらに場合によりフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等が挙げられるが、一般的には、特に硫酸が好適である。
【0090】
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリン等が還流する温度、通常、約80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができる。
【0091】
上記の条件下に、キシレンとホルムアルデヒド及びさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下で加熱反応させることによって、キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
【0092】
かくして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、20〜50,000センチポイズ(25℃)、好ましくは25〜30,000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは30〜15,000センチポイズ(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に150〜30,000、さらに特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
【0093】
アミノ基含有化合物はエポキシ樹脂にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン性化するためのカチオン性付与成分であり、前記カチオン性樹脂の製造の際に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0094】
前記エポキシ樹脂に対する上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂に対して、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を同時に反応させるのが好適である。
【0095】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系溶媒;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0096】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、適宜変えることができるが、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の3成分の合計固形分重量を基準にして以下の範囲内が適当である。すなわち、エポキシ樹脂は、一般に50〜90重量%、好ましくは50〜85重量%;キシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に5〜45重量%、好ましくは6〜43重量%;アミノ基含有化合物は、一般に5〜25重量%、好ましくは6〜20重量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0097】
以上に述べた基体樹脂と併用される硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物とブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物であるブロック化ポリイソシアネート化合物が硬化性や防食性などの面から好ましい。
【0098】
ここで使用されるポリイソシアネート化合物としては、従来から知られているものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体、イソシアネートビゥレット体;これらのポリイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物などを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0099】
一方、ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0100】
そのような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。
【0101】
さらに、分子量76〜150のジオール又は分子量106〜500のカルボキシル基含有ジオールをブロック剤として用いたブロック化ポリイソシアネートも硬化剤として用いることができる。
【0102】
上記ジオールは、反応性の異なる2個の水酸基、例えば、第1級水酸基と第2級水酸基、第1級水酸基と第3級水酸基、第2級水酸基と第3級水酸基との組み合わせの2個の水酸基を有し且つ76〜150の分子量を有するものであることができ、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどの反応性の異なる2個の水酸基を有するジオール類を挙げることができる。
【0103】
なかでもプロピレングリコールがブロック化ポリイソシアネートの反応性、加熱減量の低減、塗料の貯蔵安定性などの観点から好適である。これらのジオールは、通常、反応性の高いほうの水酸基からイソシアネート基と反応しイソシアネート基をブロックする。
【0104】
上記のカルボキシル基含有ジオールには、分子量106〜500のカルボキシル基含有ジオールが包含され、分子中にカルボキシル基を有することによって、低温解離性が向上し低温での硬化性を向上させることができ、特に、硬化触媒として、有機錫化合物を使用した場合に低温での硬化性を大きく向上させることができる。
【0105】
カルボキシル基含有ジオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸、グリセリン酸等を挙げることができる。
【0106】
以上に述べた基体樹脂及び硬化剤は、一般に、両者の合計固形分を基準にして、基体樹脂は50〜95重量%、特に65〜85重量%の範囲内、そして硬化剤は5〜50重量%、特に15〜35重量%の範囲内で使用することができる。また、カチオン電着塗料は、基体樹脂及び硬化剤を、合計固形分として、10〜40重量%、特に15〜25重量%の範囲内の濃度で含有することができる。
【0107】
本発明のカチオン電着塗料は、式(1)、(2)、(3)及び(4)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物と、基体樹脂及び硬化剤に加えて、さらに必要に応じて、その他の塗料用添加剤、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、酸、触媒などを通常使用されている量で含有することができる。
【0108】
以上に述べたポリエーテル化合物、基体樹脂としてのアミン付加エポキシ樹脂及び硬化剤としてのブロック化ポリイソシアネート化合物は、適宜他の塗料用添加剤とともに水分散化してカチオン電着塗料用のエマルションとすることができる。
【0109】
該エマルションは、例えば、式(1)、(2)、(3)及び(4)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物と、基体樹脂、硬化剤及び場合によりその他の塗料用添加剤とを一緒にし、十分に混ぜ合わせて溶解ワニスを作製し、次いでそれに水性媒体中で、ぎ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、それらの1種もしくはそれ以上の混合物などから選ばれる中和剤を添加して水分散化することにより調製することができる。
【0110】
電着塗料に対する式(1)、(2)、(3)及び(4)よりなる群から選ばれるポリエーテル化合物の配合量は、配合すべき電着塗料の種類などによって変えることができるが、一般には、固形分として、基体樹脂と硬化剤の合計固形分100重量部あたり0.1〜20重量部、特に1〜10重量部、さらに特に2〜8重量部の範囲内が塗料安定性などの面から好適である。
【0111】
次に、上記のカチオン電着塗料用のエマルションに顔料分散ペーストを加え、必要により水性媒体で希釈してカチオン電着塗料を調製することができる。以上の如くして調製される電着塗料は、電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。
【0112】
電着塗装は、一般に、浴固形分濃度が約5〜約40重量%となるように脱イオン水などで希釈し、さらにpHを5.5〜9.0の範囲内に調整されたカチオン電着塗料浴を用い、通常、浴温15〜35℃及び印加電圧100〜400Vの条件下で行うことができる。
【0113】
カチオン電着塗料を用いて形成される塗膜の厚さは、特に制限されるものではないが、一般的には、硬化塗膜に基づいて10〜40μmの範囲内が好ましい。
【0114】
また、塗膜の焼き付け温度は、被塗物表面で一般に約120〜約200℃、特に約140〜約180℃の範囲内の温度が適しており、焼き付け時間は通常5〜60分、好ましくは10〜30分程度とすることができる。
【0115】
式(1)、(2)、(3)及び(4)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物を含有する本発明の電着塗料は、揮発性有機化合物の含有量が少なく、防食性、防錆鋼板に対する電着塗装性、造膜性などに優れているという特性を有しており、しかも、安定性に優れていて塗装ライン浴にて長期間開放攪拌しても、上記の特性はなんら変わることはない。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」である。

製造例1 添加剤No.1
反応容器に、ブチルグリシジルエーテル(分子量 約130)264部、及びエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(分子量 約174)261部を加え、100℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、平均分子量304の添加剤No.1(樹脂固形分100%)を得た。
【0117】
製造例2 添加剤No.2
反応容器に、デナコールEX-216L(ナガセケムテックス製、商品名、シクロヘキサンジグリシジルエーテル、分子量 約288)288部及びエチレングリコールモノブチルエーテル(分子量 約118)212.4部を加え、100℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、平均分子量406の添加剤No.2(樹脂固形分100%)を得た。
【0118】
製造例3 添加剤No.3
反応容器に、ブチルグリシジルエーテル(分子量 約130)264部及び1,4-ブタンジオール(多価アルコール、分子量 約90.1)90.1部を加え、100℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、平均分子量354の添加剤No.3(樹脂固形分100%)を得た。
【0119】
製造例4 基体樹脂No.1
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、50%ホルマリン240部、フェノール55部、98%工業用硫酸101部及びメタキシレン212部を仕込み、84〜88℃で4時間反応させる。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離し、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンを脱溶剤して、粘度1050センチポイズ(25℃)のキシレンホルムアルデヒド樹脂(1)を得た。
【0120】
別のフラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
【0121】
次に、上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂(1)300部、ジエタノールアミン140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル420部加え、アミン価52mgKOH/g、樹脂固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂(基体樹脂No.1)を得た。
【0122】
製造例5 基体樹脂No.2
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量400)400部にε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
【0123】
別に、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190、分子量350)1000部に、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
【0124】
その中にノニルフェノール120部を加え、130℃でエポキシ当量が1000になるまで反応させた。次いで、変性剤1 200部、ジエタノールアミン95部及びジエチレントリアミンのケチミン化物65部加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル414部を加え、アミン価40mgKOH/g及び樹脂固形分80%のノニルフェノールが付加されたポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(基体樹脂No.2)を得た。
【0125】
製造例6 硬化剤
コスモネートM−200(三井化学株式会社製、商品名、クルードMDI)270部にメチルイソブチルケトン46部を加え70℃に昇温した。さらにジエチレングリコールモノエチルエーテル281部をゆっくり加えた後、90℃に昇温した。
【0126】
この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの吸収がなくなったことを確認して反応を停止させ、溶剤量を調整し、固形分90%のブロックポリイソシアネート型の硬化剤を得た。
【0127】
製造例7 エマルションNo.1
製造例1で得た添加剤No.1 6.25部(固形分5部)、基体樹脂No.1 50部(固形分40部)、基体樹脂No.2 37.5部(固形分30部)、硬化剤33.3部(固形分30部)及び10%ギ酸8.2部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水173.8部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のエマルションNo.1を得た。
【0128】
製造例8〜12 エマルションNo.2〜No.6
表1に示す配合割合にて、製造例7と同様にして固形分34%のエマルションNo.2〜No.6を得た。
【0129】
【表1】

【0130】
(注2)ポリエーテルポリオール(a):HO−(CO)−Be−C(CH−Be−(OC−OH(ここで、Beはベンゼンを示す)。
【0131】
(注3)サンニックスPP−1000:三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール。
【0132】
製造例13 顔料分散ペースト
60%の第4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂5.83部(固形分3.5部)、チタン白14.5部、カーボンブラック0.3部、体質顔料7.0部、水酸化ビスマス1.0部、ジオクチル錫オキサイド1部及び脱イオン水20部を混合し、固形分55.0重量%の顔料分散ペーストを得た。
【0133】
実施例1
エマルションNo.1 309部(固形分105部)に、製造例13で得た顔料分散ペースト49.6部(固形分27.3部)及び脱イオン水302.9部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.1を得た。
【0134】
実施例2〜3、比較例1〜3
表2に示す配合割合にて、実施例1と同様にしてカチオン電着塗料No.2〜No.6を得た。
【0135】
【表2】

【0136】
試験板の作成
上記実施例及び比較例で得た各カチオン電着塗料を用い、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した冷延鋼板及び合金化溶融亜鉛メッキ鋼板のそれぞれに電着塗装を施した。
【0137】
得られた試験板を以下の試験条件に従い試験した。その結果を表3に示す。
【0138】
【表3】

【0139】
(注4)膜厚保持性:
各カチオン電着塗料浴に冷延鋼板をカソードとして浸漬し、浴温30℃にて、250Vで3分間電着塗装し、170℃で20分間焼き付けした後、膜厚を測定した。・・・初期膜厚(1)
その後、各カチオン電着塗料浴を30℃にて4週間、塗料容器の上面を開放して攪拌した。その浴を用いて、上記と同様に、30℃にて250Vで3分間電着塗装し、170℃で20分間焼き付けした後、膜厚を測定した。・・・経時膜厚(2)
初期膜厚(1)と経時膜厚(2)の膜厚差(μm)を求め、膜厚保持性の目安とした。
【0140】
(注5)防錆鋼板に対する電着塗装適性:
膜厚保持性(注4)の試験に用いた各カチオン電着浴を用いて、経時(4週間、30℃、開放にて攪拌)にて、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板をカソードとして浸漬し、浴温30℃で3分間の通電にて20μmの塗膜厚が得られる電圧をかけて塗装し、焼付け乾燥を行った。その後、試験板(10×10cm)中のピンホールの数を数えた。
○はピンホールの発生なし、
△は1〜5個発生、
×は6個以上発生、を示す。
【0141】
(注6)防食性:
冷延鋼板に電着塗装した各電着塗板(塗膜厚20μm)に、素地に達するように電着塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、それにJISZ−2371に記載の方法に準じて840時間耐塩水噴霧試験を行った。評価は、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は錆、フクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)、
○は錆、フクレの最大幅がカット部より2mm以上でかつ3mm未満(片側)、
△は錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上でかつ4mm未満(片側)、
×は錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)、であることを示す。
【0142】
(注7)シーラー付着性:
冷延鋼板に電着塗料No.1〜No.6を膜厚が20μmとなるように塗装してなる各試験板の上に、サンスター1065T(サンスター社製、シーラー、商品名)を10mm×6mm×6mm(縦×横×厚さ)で塗布し、塗装板を垂直に吊るして12時間後のシーラーのずれを測定した。
○はシーラーのずれがなく問題なし、
△はシーラーのずれが5mm以下である、
×はシーラーが塗板からずり落ちて落下した、ことを示す。
【0143】
(注8)塗料安定性:
30℃にて4週間、塗料の容器の上面を開放して攪拌した各カチオン電着塗料浴を400メッシュ濾過網を用いて濾過し、濾過残さを測定した。
○は10mg/L未満、
△は10mg/Lを以上で、かつ15mg/L未満、
×は15mg/Lを越えること、を示す。
【0144】
製造例14 添加剤No.4
攪拌機及び温度計を備えたステンレス製オートクレーブに、ブチルエチルプロパンジオール(協和発酵ケミカル(株)製、商品名、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、分子量160.3)160.3部及び触媒として水酸化カリウム1.0部を仕込み、容器内を窒素で置換した後、脱水を行った。ついで、エチレンオキサイド(分子量:約44)88部を130℃で1.5時間かけて導入した。その後、反応液中のアルカリ触媒を酢酸1.0部で中和し、平均分子量248の添加剤No.4(固形分100%)を得た。
【0145】
製造例15 添加剤No.5
攪拌機及び温度計を備えたステンレス製オートクレーブに、ブチルエチルプロパンジオール(協和発酵ケミカル(株)製、商品名、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、分子量160.3)160.3部及び触媒として水酸化カリウム1.0部を仕込み、容器内を窒素で置換した後、脱水を行った。ついで、プロピレンオキサイド(分子量:約58)116部を130℃で1.5時間かけて導入した。その後、反応液中のアルカリ触媒を酢酸1.0部で中和し、平均分子量276の添加剤No.5(固形分100%)を得た。
【0146】
製造例16 添加剤No.6
攪拌機及び温度計を備えたステンレス製オートクレーブに、ブチルエチルプロパンジオール(協和発酵ケミカル(株)製、商品名、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、分子量160.3)160.3部及び触媒として水酸化カリウム1.0部を仕込み、容器内を窒素で置換した後、脱水を行った。ついで、エチレンオキサイド(分子量:約44)88部及びプロピレンオキサイド(分子量:約58)116部を130℃で1.5時間かけて導入した。その後、反応液中のアルカリ触媒を酢酸1.0部で中和し、平均分子量364の添加剤No.6(固形分100%)を得た。
【0147】
製造例17 添加剤No.7(特公平6−45772号公報の実施例Iに記載のもの)
反応容器に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル324部、95%パラホルムアルデヒド31.6部及びメタンスルホン酸0.3部を加え、反応器内を窒素で置換した後、約100〜約120℃で加熱還流し、還流の状態で少なくとも2時間保持する。ついで、トルエンを加え、反応容器に還流冷却器とディーンスタークウォータートラップを取り付け、再び加熱還流し、共沸させて水を全て除去する。その後、反応液中のメタンスルホン酸を炭酸ナトリウム水溶液で中和し、添加剤No.7(固形分100%)を得た。
【0148】
製造例18 エマルションNo.7の製造
製造例14で得た添加剤No.4 5部(固形分5部)、基体樹脂No.1 87.5部(固形分70部)、硬化剤33.3部(固形分30部)及び10%ギ酸8.2部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水175部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のエマルションNo.7を得た。
【0149】
製造例19〜21 エマルションNo.8〜No.10の製造
表4に示す配合割合にて、製造例18と同様にして固形分34%のエマルションNo.8〜No.10を得た。
【0150】
【表4】

【0151】
製造例22〜29 エマルションNo.11〜No.18の製造
表5に示す配合割合にて、製造例18と同様にして固形分34%のエマルションNo.11〜No.18を得た。
【0152】
【表5】

【0153】
製造例30 顔料分散ペーストの製造
60%の第4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂5.83部(固形分3.5部)、チタン白14.5部、カーボンブラック0.3部、体質顔料7.0部、水酸化ビスマス1.0部、ジオクチル錫オキサイド1部及び脱イオン水20部を混合し、固形分55.0重量%の顔料分散ペーストを得た。
【0154】
実施例4
エマルションNo.7 309部(固形分105部)に、製造例29で得た顔料分散ペースト49.6部(固形分27.3部)及び脱イオン水302.9部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.7を得た。
【0155】
実施例5〜7
表6に示す配合割合にて、実施例4と同様にしてカチオン電着塗料No.8〜No.10を得た。
【0156】
【表6】

【0157】
比較例4〜11
表7に示す配合割合にて、実施例4と同様にしてカチオン電着塗料No.11〜No.18を得た。
【0158】
【表7】

【0159】
試験板の作成
上記実施例及び比較例で得た各カチオン電着塗料を用い、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、リン酸亜鉛処理剤、商品名)で化成処理した冷延鋼板及び合金化溶融亜鉛メッキ鋼板のそれぞれに電着塗装を施した。
【0160】
得られた試験板を前記と同じ試験条件に従い試験した。実施例4〜7の結果を表8にそして比較例4〜11の結果を表9に示す。
【0161】
【表8】

【0162】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

式中、
及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を表し、
は水素原子又はメチル基を表し、ここでp及びqがそれぞれ2以上である場合、式(1)又は式(2)中の複数個のRはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよく、
は炭素数2〜10のr価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基を表し、
は炭素数4〜24の直鎖状もしくは分枝鎖状アルキレン基を表し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、ここでm及びnがそれぞれ2以上である場合、式(4)中の複数個のR及び複数個のRはそれぞれ同一であっても互いに異なっていてもよく、
pは0〜4の整数であり、
qは1〜4の整数であり、
rは2〜4の整数であり、そして
m及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数である、
よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物を含有する電着塗料。
【請求項2】
ポリエーテル化合物が1,000以下の分子量を有するものである請求項1に記載の電着塗料。
【請求項3】
ポリエーテル化合物が250〜800の範囲内の分子量を有するものである請求項1に記載の電着塗料。
【請求項4】
式(1)のポリエーテル化合物が式
【化2】

式中、Rは請求項1に記載したと同義である、
で示されるグルシジルエーテル化合物を式
【化3】

式中、R、R及びpは請求項1に記載したと同義である、
で示されるアルコール化合物と反応させることにより得られたものである請求項1に記載の電着塗料。
【請求項5】
式(2)のポリエーテル化合物が式
【化4】

式中、R及びrは請求項1に記載したと同義である、
で示されるポリグリシジル化合物を式
【化5】

式中、R、R及びqは請求項1に記載したと同義である、
で示されるアルコール化合物と反応させることにより得られたものである請求項1に記載の電着塗料。
【請求項6】
式(3)のポリエーテル化合物が式
【化6】

式中、Rは請求項1に記載したと同義である、
で示されるグリシジルエーテル化合物を式
(OH)r (9)
式中、R及びrは請求項1に記載したと同義である、
で示される多価アルコールと反応させることにより得られたものである請求項1に記載の電着塗料。
【請求項7】
式(4)のポリエーテル化合物が式
【化7】

式中、Rは請求項1に記載したと同義である、
で示されるジオールを式
【化8】

及び
【化9】

式中、R及びRは請求項1に記載したと同義である、
で示されるアルキレンオキサイドと反応させることにより得られたものである請求項1に記載の電着塗料。
【請求項8】
請求項1に記載の電着塗料を塗装してなる塗装物品。

【公開番号】特開2006−274234(P2006−274234A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137602(P2005−137602)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】