説明

電磁変換器

【課題】音圧を低下させずに振動板のたるみを抑制する。
【解決手段】テープエッジ46が振動板30の外端に貼り付けられるとともに、一対のフレーム11,12の折り曲げ部11a,12aの隙間に挟み込まれ、振動板30を振動可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、永久磁石と振動膜とを組み合わせて、オーディオ信号をオーディオ振動に変換し音声再生を行う電磁変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、永久磁石板と振動板とを組み合わせた電磁変換器は、様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1に開示されている電磁変換器は、永久磁石板としてのリアマグネット(背面永久磁石板)および前面(フロントマグネット)永久磁石板と、これらを覆う支持部材とを備えている。これらの永久磁石板は、帯状の異なる磁極が、一定の間隔をおいて交互に形成された、いわゆる多極着磁パターンが形成されたものである。
また、振動板は、永久磁石板の異なる磁極同士の間隙部分のいわゆる着磁のニュートラルゾーンと称される部分に対向する位置に、蛇行形状の導体パターンからなるボイスコイルが形成されたフレキシブル基板である。振動板は、支持部材により厚み方向に全面で変位可能に支持されている。
【0003】
振動板のボイスコイルに電流(音声信号)が流れると、ボイスコイルと永久磁石板の多極着磁パターンが電磁的に作用し、フレミング左手の法則に従い、振動板としてのフレキシブル基板が音声振動を発生し、発生した音声振動は、永久磁石板と支持部材とに開けられた音放射穴を通り外部に放射される。
なお、永久磁石板と振動板との間には、シートを積載させた緩衝部材が設けられており、振動板が振動する際に永久磁石板と直接接触することを防止している。
【0004】
また、一般的には、振動板と永久磁石とを接触させないために、振動板にエッジを形成する又は振動板と同質のエッジを接着剤で接着するなどして、エッジを介して振動板を支持部材に振動可能に支持する構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−331596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フレキシブル基板は、たるみやすいため、従来の電磁変換器のように振動板基材としてのフレキシブル基板の一部を固定して支持すると、たるみが発生し、異音の原因となるという課題があった。
また、振動板とエッジを接着剤で接着すると、接着剤の質量で重くなり音圧低下を招くという課題があった。
【0007】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、音圧を低下させずに振動板のたるみを抑制する電磁変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電磁変換器は、折り曲げ部を有するとともに、組み合わせた際に上記折り曲げ部が嵌合可能に形成された一対のフレームと、一対のフレームの相対する内壁面に対向して配置された棒状の永久磁石と、ボイスコイルを有し永久磁石間に配置された振動板と、振動板の外端に貼り付けられると共に、一対のフレームの折り曲げ部に挟み込まれたテープエッジとを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る電磁変換器によれば、テープエッジを振動板の外周に貼り付けるとともに、テープエッジが一対のフレームに挟み込まれて貼り付けられるように構成したので、接着剤を使用せずにエッジを貼り付けることができるとともに、振動板を張った状態で振動可能に支持することができる。その結果、音圧を低下させずに振動板のたるみを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1の電磁変換器の構成を示し、図1(a)は、電磁変換器の全体斜視図、図1(b)は、電磁変換器の分解斜視図である。
【図2】実施の形態1の電磁変換器の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の電磁変換器の構成を示す図であり、図1(a)は、組み立てられた電磁変換器を斜めから見た全体斜視図、図1(b)は、分解した電磁変換器を斜めから見た分解斜視図である。
【0012】
図1(a)、図1(b)に示すように、電磁変換器1は、フロントフレーム11及びリアフレーム12を組み合わせたフレーム10が中空の筺体構造を形成しており、フレーム10には、中空の内部と外部とを連通する音放射穴10aが設けられている。
【0013】
フレーム10の中空内部には、フロントマグネット(永久磁石)23、リアマグネット(永久磁石)24、フレキシブル基板(振動板)30が収容されている。
【0014】
フロントマグネット23及びリアマグネット24は、棒状に成形された永久磁石である。また、振動板としてのフレキシブル基板30は、薄く柔軟な樹脂からなる基材35の表裏面にボイスコイル36を蛇行形状に形成しており、フレキシブル基板30の外周には、テープエッジ46が取り付けられている。
【0015】
ここで、フレキシブル基板30のエッジを接着剤で接着する構成にした場合、接着剤により振動板の重みが増して振動に影響を与えるため、音圧が低下してしまう。そこで、本発明のテープエッジ46は、柔らかく曲がる可とう性の良い粘着テープを用いている。
【0016】
図2は、電磁変換器1の組み立て後の内部構造を示すために、図1のA−A線で切断した電磁変換器1の一部断面図である。
フロントフレーム11のフレキシブル基板30に対向する内壁面には、フロントマグネット23が所定の間隔を空け、交互に異なる磁極となるように固定されており、リアフレーム12のフレキシブル基板30に対向する内壁面には、リアマグネット24が所定の間隔を空け、交互に異なる磁極となるように固定されている。すなわち、フロントマグネット23及びリアマグネット24は、フロントフレーム11及びリアフレーム12の相対する内壁面に配置される。
【0017】
フレキシブル基板30は、フロントマグネット23及びリアマグネット24に対向する位置に配置され、フロントマグネット23間に対向する位置及びリアマグネット24間に対向する位置にボイスコイル36を形成している。また、フレキシブル基板30は、フレキシブル基板30の外周に貼り付けられたテープエッジ46を介してフロントフレーム11及びリアフレーム12に支持されている。
【0018】
フロントフレーム11は折り曲げ部11aを有しており、リアフレーム12は折り曲げ部12aを有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12に比べて外径が大きく、組み立てられると、フロントフレーム11の折り曲げ部11aがリアフレームの折り曲げ部12aの外側になって嵌合する。この折り曲げ部11aと折り曲げ部12aとの僅かな隙間にテープエッジ46が挟み込まれるように構成されることで、テープエッジ46の一端がリアフレーム12方向に引っ張られるため、テープエッジ46を接着したフレキシブル基板30がたるまずに張力のかかった状態で支持される。
【0019】
ここで、フロントフレーム11、リアフレーム12、フロントマグネット23、リアマグネット24、フレキシブル基板30及びテープエッジ46の組み立て順序について説明する。
【0020】
まず、フロントマグネット23をフロントフレーム11に接着固定するとともに、リアマグネット24をリアフレーム12に接着固定する。次に、リアマグネット24を固定したリアフレーム12の折り曲げ部12aに、フレキシブル基板30に貼り付けたテープエッジ46の外端を貼り付ける。テープエッジ46の外周は、リアフレーム12よりも一回り大きいため、テープエッジ46の外周がリアフレーム12の折り曲げ部12aを少しはみ出るように貼り付けられる。そして、フロントマグネット23を固定したフロントフレーム11をフレキシブル基板30に覆い被せるようにして取り付けると、リアフレーム12の折り曲げ部12aよりはみ出たテープエッジ46の外周が、フロントマグネット11の折り曲げ部11aにより折り曲げられる。折り曲げられたテープエッジ46の外周は、リアフレーム12の折り曲げ部12aとフロントフレーム11の折り曲げ部11aとの隙間に挟まれる。
【0021】
上述のように、実施の形態1の電磁変換器によれば、フロントフレーム11でテープエッジ46の外端がリア側に引っ張られる構造となるため、フレキシブル基板30に張力がかかり、フレキシブル基板30がたるまずに張られた構造となり、異音の原因となるフレキシブル基板30のたるみを抑制することができる。
【0022】
また、テープエッジ46として可とう性の良い粘着テープを用いているので、接着剤を使用する必要がなく、接着剤によって質量が増加することもないので、音圧の低下を抑制することができる。
【0023】
また、フレキシブル基板30に貼り付けたテープエッジ46を、フロントフレーム11の折り曲げ部11aとリアフレーム12の折り曲げ部12aとで挟み込んで支持するので、作業性の面でもテープエッジ46の粘着力でリアフレーム12に仮止めしてから、フロントフレーム11を組み合わせることができるので製造効率が良い。
【0024】
なお、以上の説明ではフレキシブル基板30の全周にテープエッジ46を取り付けた例で説明したが、フレキシブル基板30の長手方向だけ、又はフレキシブル基板30の短手方向だけにテープエッジ46を取り付ける構成にしてもよく、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0025】
1 電磁変換器、10 フレーム、10a 音放射穴、11 フロントフレーム、12 リアフレーム、23 フロントマグネット(永久磁石)、24 リアマグネット(永久磁石)、30 フレキシブル基板(振動板)、35 基材、36 ボイスコイル、46 テープエッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ部を有するとともに、組み合わせた際に上記折り曲げ部が嵌合可能に形成された一対のフレームと、
上記一対のフレームの相対する内壁面に対向して配置された棒状の永久磁石と、
ボイスコイルを有し上記永久磁石間に配置された振動板と、
上記振動板の外端に貼り付けられると共に、上記一対のフレームの折り曲げ部に挟み込まれたテープエッジとを備えた電磁変換器。
【請求項2】
上記テープエッジは可とう性の良い粘着テープであることを特徴とする請求項1記載の電磁変換器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−252245(P2010−252245A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101940(P2009−101940)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】